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特開2023-155565電力消費機器特定方法及び電力消費機器特定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155565
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】電力消費機器特定方法及び電力消費機器特定システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 22/06 20060101AFI20231016BHJP
   G01R 21/00 20060101ALI20231016BHJP
   G01R 11/00 20060101ALI20231016BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
G01R22/06 130Z
G01R21/00 Q
G01R11/00 A
H02J13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064957
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】▲菅▼原 聖和
【テーマコード(参考)】
5G064
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064CB08
5G064DA05
(57)【要約】
【課題】設置の手間及びコストを削減し、処理のための構成を簡易にすると共に電力を消費している機器を特定することができる電力消費機器特定方法及び電力消費機器特定システムを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る電力消費機器特定方法は、電力使用量から電力分析システムが電力量と発生時間数との関係を示す度数分布B7を生成する工程と、電力量が境界値Vより大きい度数分布B7を製品の製造時間の度数分布B71、電力量が境界値V以下である度数分布B7を製品の非製造時間の度数分布B72、として区分する工程と、非製造時間の度数分布B72から電力を消費している機器を特定する工程と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を製造する工場において電力を使用する複数の機器を含む機器群ごとに設けられており、前記機器群の電力使用量を測定する電力測定器と、
前記電力測定器によって測定された前記電力使用量を分析する電力分析システムと、を用いて電力を消費している前記機器を特定する電力消費機器特定方法であって、
前記電力使用量から前記電力分析システムが電力量と発生時間数との関係を示す度数分布を生成する工程と、
前記電力量が境界値より大きい前記度数分布を前記製品の製造時間の度数分布、前記電力量が前記境界値以下である前記度数分布を前記製品の非製造時間の度数分布、として区分する工程と、
前記非製造時間の前記度数分布から電力を消費している前記機器を特定する工程と、
を備える電力消費機器特定方法。
【請求項2】
前記機器を特定する工程は、前記非製造時間の前記度数分布の波形から、特定する前記機器の電力の使用状況を解析する工程を含む、
請求項1に記載の電力消費機器特定方法。
【請求項3】
前記度数分布として得られた前記電力量の最大値から最小値に向かうときにおける前記発生時間数の累積値が時間閾値以下となる前記電力量を前記境界値とする工程を備え、
前記区分する工程では、前記境界値より大きい前記電力量における前記度数分布を前記製造時間の前記度数分布とし、前記境界値以下の前記電力量における前記度数分布を前記非製造時間の前記度数分布とする、
請求項1又は2に記載の電力消費機器特定方法。
【請求項4】
前記度数分布を生成する工程において生成された度数分布から前記製造時間を算出する工程を備える、
請求項1又は2に記載の電力消費機器特定方法。
【請求項5】
製品を製造する工場において電力を使用する複数の機器を含む機器群ごとに設けられており、前記機器群の電力使用量を測定する電力測定器と、
前記電力測定器によって測定された前記電力使用量を分析する電力分析システムと、
を備え、
前記電力分析システムは、
前記電力使用量から電力量と発生時間数との関係を示す度数分布を生成する度数分布生成部と、
前記電力量が境界値より大きい前記度数分布を前記製品の製造時間の度数分布、前記電力量が前記境界値以下である前記度数分布を前記製品の非製造時間の度数分布、として区分する時間設定部と、
前記非製造時間の前記度数分布から電力を消費している前記機器を特定する機器特定部と、
を備える電力消費機器特定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工場に設けられた複数の機器のうち電力を消費している機器を特定する電力消費機器特定方法及び電力消費機器特定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012-168018号公報には、使用電力管理システムが記載されている。使用電力管理システムは、オフィスの複数のOA機器のそれぞれに接続されるスマート電源タップである複数の電源接続機器と、複数の電源接続機器から電力値を収集する中継器と、中継器と通信可能とされたエネルギー管理サーバーである情報処理装置とを備える。
【0003】
情報処理装置は、通信部と、電源接続機器を利用する利用者を記憶する利用者記憶部と、電力値を評価する評価部とを備える。通信部は、複数の電気接続機器のそれぞれのプラグ接続部に対応付けた電力値である検出値を取得する。利用者記憶部は、利用者を識別する利用者識別情報を各電気接続機器と対応付けて記憶する。評価部は、検出値に基づく電力値が所定の許容範囲を超過したことが確認された場合に、利用者識別情報を基に、当該検出値が検出された電気接続機器の利用者宛に使用電力の改善を促すメッセージを設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-168018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、製品を製造する工場では、電力を使用する機器の数が非常に多くなることが想定される。よって、前述した使用電力管理システムのように、複数の機器のそれぞれに電源接続機器が接続されると、システム構成が複雑化する可能性がある。すなわち、機器の数の電力測定器を設置しなければならないため、電力測定器の設置の手間及びコストがかかるという問題が生じうる。更に、前述した使用電力管理システムでは、利用者識別情報を各電力接続機器とを対応付けて記憶する処理、及び使用電力の改善を促すメッセージを設定する処理等が必要となるため、処理のための構成が複雑であるという問題も生じうる。
【0006】
本開示は、設置の手間及びコストを削減し、処理のための構成を簡易にすると共に電力を消費している機器を特定することができる電力消費機器特定方法及び電力消費機器特定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本開示に係る電力消費機器特定方法は、製品を製造する工場において電力を使用する複数の機器を含む機器群ごとに設けられており、機器群の電力使用量を測定する電力測定器と、電力測定器によって測定された電力使用量を分析する電力分析システムと、を用いて電力を消費している機器を特定する電力消費機器特定方法である。電力消費機器特定方法は、電力使用量から電力分析システムが電力量と発生時間数との関係を示す度数分布を生成する工程と、電力量が境界値より大きい度数分布を製品の製造時間の度数分布、電力量が境界値以下である度数分布を製品の非製造時間の度数分布、として区分する工程と、非製造時間の度数分布から電力を消費している機器を特定する工程と、を備える。
【0008】
この電力消費機器特定方法では、製品を製造する工場において複数の機器を含む機器群ごとに電力使用量を測定する電力測定器が設けられ、電力測定器によって測定された電力使用量が電力分析システムによって分析される。複数の機器を含む機器群ごとに電力測定器が設けられ、機器の数に対して電力測定器の数を減らせるので、電力測定器の設置の手間及びコストを削減することができる。従って、電力を消費している機器の特定に関する処理のための構成を簡易にすることができる。電力分析システムは、電力測定器によって測定された電力使用量から電力量と発生時間数との関係を示す度数分布を生成する。度数分布を生成することにより、どの程度の電力量がどのくらいの頻度で使用されているかを容易に把握することができる。また、工場では、製品を製造している製造時間のときの方が非製造時間のときよりも機器の電力使用量が大きい。そこで、この電力消費機器特定方法では、度数分布のうち、電力量が境界値より大きい箇所を製造時間の度数分布、電力量が当該境界値以下の箇所を非製造時間の度数分布として区分する。更に、工場の複数の機器においては、製造時間の度数分布からよりも、非製造時間の度数分布からの方が電力を消費している機器を特定しやすい。そして、製造時間に電力を消費している機器の電力量よりも、非製造時間に電力を消費している機器の電力量を低減させることが省エネルギーの観点でより有効である場合も多くある。従って、この電力消費機器特定方法では、非製造時間の度数分布から電力を消費している機器を特定する。その結果、非製造時間に電力を消費している機器を確実に特定することができ、特定した機器に省エネ対策を施すことで省エネルギー化をより効果的に進めることができる。
【0009】
[2]上記[1]において、機器を特定する工程は、非製造時間の度数分布の波形から、特定する機器の電力の使用状況を解析する工程を含んでもよい。電力量と発生時間数との関係を示す度数分布の波形が急峻であれば発停が少ない機器、又はサンプリング周期の整数分の一の周期で規則的に発停している機器が電力を消費していることがわかり、当該波形がなだらかであれば発停が多い機器が電力を消費していることがわかる。前述したように、当該波形から機器の電力の使用状況を解析することにより、機器をより確実に特定できる。
【0010】
[3]上記[1]又は[2]において、電力消費機器特定方法は、度数分布として得られた電力量の最大値から最小値に向かうときにおける発生時間数の累積値が時間閾値以下となる電力量を境界値とする工程を備えてもよい。前述した区分する工程では、境界値より大きい電力量における度数分布を製造時間の度数分布とし、境界値以下の電力量における度数分布を非製造時間の度数分布としてもよい。この場合、電力量の最大値から最小値に向かうときにおける発生時間数の累積値を用いて前述した境界値を設定できる。そして、当該境界値を用いて、製造時間の度数分布、及び非製造時間の度数分布を区分できるので、製造時間と非製造時間との区分けをより高精度に行うことができる。
【0011】
[4]上記[1]~[3]のいずれかにおいて、電力消費機器特定方法は、度数分布を生成する工程において生成された度数分布から製造時間を算出する工程を備えてもよい。この場合、度数分布から製品の製造時間を求めることができる。
【0012】
[5]本開示に係る電力消費機器特定システムは、製品を製造する工場において電力を使用する複数の機器を含む機器群ごとに設けられており、機器群の電力使用量を測定する電力測定器と、電力測定器によって測定された電力使用量を分析する電力分析システムと、を備える。電力分析システムは、電力使用量から電力量と発生時間数との関係を示す度数分布を生成する度数分布生成部と、電力量が境界値より大きい度数分布を製品の製造時間の度数分布、電力量が境界値以下である度数分布を製品の非製造時間の度数分布、として区分する時間設定部と、非製造時間の度数分布から電力を消費している機器を特定する機器特定部と、を備える。
【0013】
この電力消費機器特定システムは、工場の複数の機器を含む機器群ごとに電力測定器を備える。従って、機器の数に対して電力測定器の数を減らせるので、電力測定器の設置の手間及びコストを削減することができる。更に、電力を消費している機器の特定に関する処理のための構成を簡易にすることができる。この電力消費機器特定システムは測定された電力使用量を分析する電力分析システムを備え、電力分析システムは電力量と発生時間数との関係を示す度数分布を生成する度数分布生成部を有する。従って、前述した電力消費機器特定方法と同様、どの程度の電力量がどのくらいの頻度で使用されているかを容易に把握することができる。また、電力分析システムは時間設定部を備え、時間設定部は、度数分布のうち、電力量が境界値より大きい箇所を製造時間の度数分布、電力量が当該境界値以下である箇所を非製造時間の度数分布として区分する。そして、電力分析システムは機器特定部を備え、機器特定部は、非製造時間の度数分布から電力を消費している機器を特定する。従って、前述した電力消費機器特定方法と同様、非製造時間に電力を消費している機器を確実に特定することができ、特定した機器に省エネ対策を施すことで省エネルギー化をより効果的に進めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、設置の手間及びコストを削減し、処理のための構成を簡易にすると共に電力を消費している機器を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る電力消費機器特定システムの構成の例を示すブロック図である。
図2】電力量と発生時間数との関係を示す度数分布の模式的なグラフである。
図3】時間と機器が使用する電力量との関係を模式的に示すグラフである。
図4】電力量と発生時間数との関係を示す度数分布の例示的なグラフである。
図5】度数分布の他の例を示すグラフである。
図6】製造時間の度数分布と非製造時間の度数分布との境界値を説明するためのグラフである。
図7】度数分布を得ることによって省エネルギー化の効果が得られた例を示すグラフである。
図8】度数分布の別の例を示すグラフである。
図9】実施形態に係る電力消費機器特定方法の工程の例を示すフローチャートである。
図10】月ごとに生成した度数分布の例を示すグラフである。
図11】度数分布の更に別の例を示すグラフである。
図12】度数分布の更に別の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る電力消費機器特定方法及び電力消費機器特定システムの実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0017】
本実施形態に係る電力消費機器特定システム及び電力消費機器特定方法は、複数の機器が稼動する工場において、電力を消費している機器を特定し、省エネルギー化を行うためのものである。本実施形態では、工場において製品を製造している製造時間よりも製品を製造していない非製造時間に着目し、非製造時間における機器の電力の使用量を分析することによって省エネルギー化を効率的に進められる。
【0018】
本実施形態では、電力使用量から電力量と発生時間数との関係を示す度数分布が生成される。「度数分布」とは、測定された値のなかで同じ値が現れる度数を並べた分布を示している。本実施形態では、測定された電力使用量の中で発生した時間数(発生時間数)の分布を度数分布として生成する。この度数分布を生成することにより、どの程度の電力量がどのくらいの時間使用されているかを容易に把握することができる。
【0019】
本実施形態では、度数分布に電力量の境界値が設定され、当該境界値より大きい電力量の度数分布が製造時間の度数分布、当該境界値以下である度数分布が非製造時間の度数分布として区分される。「製造時間」とは、工場において製品を製造する時間を示している。例えば、「製造時間」は、製品を製造するために工場の内部において機器が稼動する時間帯である。「非製造時間」とは、工場において製品を製造しない時間を示している。例えば、「非製造時間」は、工場の内部において機器が稼動し且つ製品を製造していない時間帯である。
【0020】
本実施形態では、非製造時間の度数分布から電力を消費している機器が特定される。本実施形態において、「電力を消費している機器」とは、他の機器と比較してより多くの電力を使用している機器を示している。「電力を消費している機器」が特定されることにより、当該機器に省エネ対策を施すことによって工場全体としての使用エネルギーを効果的に減らすことができ、より効率的な省エネルギー化に寄与する。
【0021】
図1は、一実施形態に係る電力消費機器特定システム1の機能構成の例を示すブロック図である。図1に示されるように、電力消費機器特定システム1は、工場Kに設けられた複数の機器Xが使用する電力使用量を測定する電力測定器2と、電力測定器2と通信可能とされており電力測定器2によって測定された電力使用量を分析する電力分析システム10とを備える。
【0022】
工場Kは、製品を製造する工場である。「製品」は、あらゆる種類の製品を含んでおり、例えば、飲食品、医薬品、半導体、電気機器、又は輸送機であってもよい。「製品」は、一例として、ビールを含む飲料であってもよい。工場Kの機器Xは、電力を使用して稼動する機器である。機器Xは、液体を収容するタンク、冷却装置、加熱装置、空調機、又は、飲料を収容する飲料容器(一例として瓶、缶、又は樽等)を搬送する搬送装置である。より具体的には、機器Xは、洗瓶機、コンベア、検査機、ポンプ、ファン、又は、飲料容器に飲料を充填するフィラーであってもよい。
【0023】
電力測定器2は、複数の機器Xを含む機器群Gごとに設けられる。工場Kは複数の機器群Gを備えており、例えば、複数の機器群Gは第1機器群G1、第2機器群G2、第3機器群G3及び第4機器群G4を含む。本実施形態において、工場Kは、オフィス等とは異なり、非常に多くの機器Xを備える。従って、機器群Gごとに電力測定器2が設けられるのは、電力の測定に関する構成の複雑化を回避する点で有効である。例えば、電力消費機器特定システム1は複数の電力測定器2を備える。一例として、電力測定器2は工場Kに予め設けられた既存の電気メータであってもよい。
【0024】
一例として、電力分析システム10は工場Kの外部に設けられる。しかしながら、電力分析システム10は工場Kの内部に設けられていてもよく、電力分析システム10の場所は特に限定されない。電力分析システム10は、例えば、工場Kにおける複数の機器Xの電力使用量を分析するコンピュータシステムである。
【0025】
電力分析システム10は、コンピュータによって構成されていてもよい。電力分析システム10は、例えば、タブレット端末、高機能携帯電話機(スマートフォン)、又はラップトップ型のパーソナルコンピュータ等の情報端末を含んでいてもよい。電力分析システム10は、複数のコンピュータによって構成される分散処理システムであってもよいし、クライアントサーバーシステム、又はクラウドシステムであってもよい。電力分析システム10は、電力分析プログラムを備えていてもよい。電力分析プログラムは、例えば、メインモジュール、データ取得モジュール、計算モジュール、及び出力モジュールを含む。
【0026】
メインモジュールは、電力分析システム10の機能を統括的に管理するモジュールである。データ取得モジュール、計算モジュール、及び出力モジュールが実行されることで電力分析システム10の機能的構成要素が機能する。電力分析プログラムは、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、又は半導体メモリ等の記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、電力分析プログラムは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0027】
一例として、電力分析システム10はエネルギーデータ解析ツールを有する。電力分析システム10は、例えば、表計算ソフトを用いて一定時間(一例として1時間)ごとのエネルギーデータを収集、分析及び可視化する。電力分析システム10によって、電力を著しく消費している機器Xを容易に特定できる。そして、電力分析システム10によって機器Xごとの電力の使用量が一定時間ごとに更新且つ可視化されるので、工場Kで勤務する職員は特定の機器Xによるエネルギーロスに気付きやすい。その結果、一層の省エネルギー化が促進される。
【0028】
電力分析システム10は、機能的構成要素として、データ入力部11と、度数分布生成部12と、電力使用状況解析部13と、時間設定部14と、非製造時間解析部15と、製造時間解析部16と、機器特定部17とを備える。データ入力部11は、電力測定器2によって測定された電力使用量を電力分析システム10に入力する。
【0029】
例えば、電力測定器2は、機器群Gを構成する複数の機器Xの電力使用量をまとめて測定する。この場合、電力測定器2は、複数の機器Xにおける電力使用量の合算値を測定する。データ入力部11が電力測定器2によって測定された電力使用量を電力分析システム10に入力すると、度数分布生成部12が当該電力使用量から電力量と発生時間数との関係を示す度数分布を生成する。
【0030】
図2は、度数分布生成部12によって生成される例示的な度数分布B1,B2を示している。図2のグラフの横軸は電力量であり、図2のグラフの縦軸は発生時間数である。例えば、度数分布B1は第1機器群G1の度数分布を示しており、度数分布B2は第2機器群G2の度数分布を示している。
【0031】
図3は、第1機器群G1及び第2機器群G2における電力使用量の時系列データを模式的に示すグラフである。図1図2及び図3に示されるように、例えば、電力使用状況解析部13は、度数分布B1,B2の波形から機器Xの電力の使用状況を解析する。一例として、度数分布B1の波形は度数分布B2の波形と比較して急峻である。
【0032】
例えば、電力使用状況解析部13は度数分布B1の波形が度数分布B2の波形と比較して急峻であることから第1機器群G1の機器Xの発停が少ない(電力量の時系列データが安定している)と解析する。また、電力使用状況解析部13は、度数分布B2の波形が度数分布B1の波形よりもなだらかであることから第2機器群G2の機器Xの発停が多い(ON/OFFの繰り返しが多い)と解析する。
【0033】
図4は、度数分布生成部12によって生成される例示的な度数分布B3,B4を示している。図5は、度数分布生成部12によって生成された図4とは異なる例である度数分布B5,B6を示している。図4は機器Xが洗瓶機である場合のグラフ、図5は機器Xが空調機である場合のグラフ、をそれぞれ示している。
【0034】
図4及び図5に示されるように、度数分布生成部12は、一定期間ごとに度数分布B3,B4,B5,B6を生成してもよい。図4及び図5では、一年ごと(昨年と今年)に度数分布生成部12が度数分布B3,B4,B5,B6を生成した例を示している。より具体的には、図4は1年分の度数分布B3,B4を示しており、図5は1月分の度数分布B5,B6を示している。図5の例では、一年前(昨年)に度数分布生成部12が度数分布B5を生成し、空調機に省エネ対策を施した後に、度数分布生成部12が度数分布B6を生成している。
【0035】
図5に示されるように、度数分布B5が生成された後に省エネ対策が施され、その後度数分布B6が生成されることにより、度数分布B6の電力量が低いところの発生時間数が増えているので、空調機において省エネ対策の効果を発揮できていることがわかる。
【0036】
図6は、度数分布生成部12によって生成される度数分布B7,B8を示している。図1及び図6に示されるように、本実施形態では、度数分布B7,B8に対して電力量の境界値Vが設定され、時間設定部14が境界値Vに応じて度数分布B7,B8を区分する。境界値Vは、製造時間及び非製造時間を区分するための電力量の値である。
【0037】
例えば、時間設定部14は、度数分布B7,B8として得られた電力量の最大値(図6の例では40kWh)から最小値(図6の例では0kWh)に向かうときにおける発生時間数の累積値が時間閾値以下となる電力量を境界値Vとする。図6は、時間閾値が今年においては400時間であって境界値Vが20kWhである例を示している。
【0038】
但し、時間閾値及び境界値Vは、400時間、20kWhに限定されず、適宜変更される。例えば、時間閾値は、予め取得している製造時間の電力量、及び非製造時間の電力量から定められる。時間設定部14は、境界値Vより大きい電力量における度数分布B7,B8を製造時間の度数分布B71,B81とし、境界値V以下の電力量における度数分布B7,B8を非製造時間における度数分布B72,B82として区分する。
【0039】
図7は、図6の非製造時間における度数分布B72,B82を拡大したグラフである。非製造時間解析部15は、非製造時間における度数分布B72,B82を解析する。例えば、非製造時間解析部15は、非製造時間における度数分布B72,B82の波形から機器Xの電力の使用状況を解析する。
【0040】
一例として、非製造時間解析部15は、電力使用状況解析部13と同様、電力の使用量及び発生時間数の他、機器群Gごとにおける発停の頻度を解析する。例えば、機器Xが瓶の搬送装置である場合、操業度が低下している場合があり、このような場合に非製造時間のエネルギーの使用割合が高くなる。
【0041】
よって、非製造時間解析部15が非製造時間における度数分布B72,B82から機器Xの電力の使用状況を解析する場合、非製造時間における電力量を把握できるため、非製造時間における電力使用量の割合が大きい場合には、非製造時間に着目した省エネ対策を行う上で有効である。非製造時間解析部15が電力の使用状況を解析することにより、度数分布B7よりも小さい電力量の度数分布B8があらわれており、その翌年(今年)に省エネ対策の効果が出ていることを把握できる。更に、電力使用量と度数の総和(Σ(電力量×度数))の結果から非製造時間と製造時間のどちらで省エネを行うことがより効果的かを判断することができる。
【0042】
製造時間解析部16は、製造時間における度数分布B71,B81を解析する。製造時間解析部16は、製造時間における度数分布B71,B81の波形から機器Xの電力の使用状況を解析する。製造時間解析部16によって解析される内容は、例えば、非製造時間解析部15によって解析される内容と同一である。
【0043】
図8は、図6を月別の度数分布B9にしたものである。機器特定部17は、非製造時間の度数分布B9から電力を消費している機器Xを特定する。図8の例では、非製造時間において、夏期(例えば6月~9月)の度数分布B9における電力量が冬期(例えば12月~3月)の度数分布B9における電力量より大きくなっているという特徴が示されている。機器特定部17は、この特徴から機器Xを特定する。図8の例では、機器特定部17は、例えば、機器Xが夏期により多くの電力量を消費する空調機であると特定する。
【0044】
次に、本実施形態に係る電力消費機器特定方法について図9を参照しながら説明する。図9は、本実施形態に係る電力消費機器特定方法の工程の例を示すフローチャートである。まず、図1に示されるように、複数の電力測定器2のそれぞれが各機器群Gの電力使用量を測定し、電力分析システム10が当該電力使用量を取得する(ステップS1)。このとき、電力測定器2によって測定された電力使用量がデータ入力部11によって電力分析システム10に入力される。
【0045】
次に、電力測定器2によって測定された電力使用量から度数分布生成部12が度数分布を生成する(度数分布を設定する工程、ステップS2)。一例として、度数分布生成部12は図4及び図6に示される度数分布B3,B7を生成する。そして、電力使用状況解析部13により、度数分布B3,B7の波形から、特定する機器Xの電力の使用状況を解析する。具体例として、度数分布B3の機器Xは度数分布B7の機器Xよりも発停が多いと解析する。
【0046】
続いて、時間設定部14によって製造時間及び非製造時間が設定される(ステップS3)。具体的には、時間設定部14は、度数分布B3,B7として得られた電力量の最大値から最小値に向かうときにおける発生時間の累積値が時間閾値以下となる電力量(図6の例では20kWh)を境界値Vとする(時間閾値以下となる電力量を境界値とする工程)。
【0047】
時間設定部14は、電力量が境界値Vより大きい度数分布B3,B7を製造時間の度数分布B31,B71、電力量が境界値V以下である度数分布B3,B7を非製造時間の度数分布B32,B72、として区分する(区分する工程)。例えば、非製造時間解析部15が度数分布B32,B72を解析し、製造時間解析部16が度数分布B31,B71を解析してもよい(ステップS4)。
【0048】
時間設定部14が製造時間及び非製造時間を区分した後、機器特定部17が非製造時間の度数分布B32,B72から、度数分布B32,B72のそれぞれの電力量を消費している機器Xの特徴を特定する(機器を特定する工程、ステップS5)。
【0049】
また、度数分布B72に対し、非製造時間解析部15は、発停が一定値未満であることを解析する。そして、当該解析の結果から、機器特定部17は、度数分布B72の電力量を消費している機器Xが夏季の非製造時間に一定の出力で運転している機器であると特定する。なお、上記の機器Xは、洗瓶機又は空調機に限られず、工場Kの種々の機器が含まれる。
【0050】
電力量を消費している機器Xを特定した後には、特定した機器Xに対して省エネ対策を行う。具体例として、特定した機器Xが工場Kの内部に設けられたファンである場合、ファンに対して空調範囲を絞り込み風量を減少させる手段を講じることにより、機器Xが消費する電力量を効果的に削減できる。
【0051】
次に、本実施形態に係る電力消費機器特定方法及び電力消費機器特定システム1から得られる作用効果について説明する。本実施形態に係る電力消費機器特定方法及び電力消費機器特定システム1では、図1に示されるように、製品を製造する工場Kにおいて複数の機器Xを含む機器群Gごとに電力使用量を測定する電力測定器2が設けられ、電力測定器2によって測定された電力使用量が電力分析システム10によって分析される。複数の機器Xを含む機器群Gごとに電力測定器2が設けられ、機器Xの数に対して電力測定器2の数を減らせるので、電力測定器2の設置の手間及びコストを削減することができる。従って、電力を消費している機器Xの特定に関する処理のための構成を簡易にすることができる。
【0052】
図2に示されるように、電力分析システム10は、電力測定器2によって測定された電力使用量から電力量と発生時間数との関係を示す度数分布B1,B2を生成する。度数分布B1,B2を生成することにより、どの程度の電力量がどのくらいの頻度で使用されているかを容易に把握することができる。更に、度数分布B1,B2における山の部分を含む箇所においてΣ(電力量×度数)を求めることにより、容易に電力使用量を計算することができ、省エネ対策をした場合の効果を想定しやすくなる。そして、実際に省エネ対策をした場合に、省エネ対策の前後について度数分布B1,B2を算出して比較を行うことにより、省エネ対策によって削減できた電力使用量を容易に求めることができる。また、従来は、機器の容量、又は電力測定値から求めた電力量と、対象とする機器の想定運転時間を計算することで省エネ量を計算していたが、本実施形態では、度数分布グラフから簡単に計算で省エネ量を求めることができる。
【0053】
また、工場Kでは、製品を製造している製造時間のときの方が非製造時間のときよりも機器Xの電力使用量が大きい。図6に示されるように、本実施形態では、度数分布B7のうち、電力量が境界値Vより大きい箇所を製造時間の度数分布B71、電力量が境界値V以下の箇所を非製造時間の度数分布B72として区分する。更に、工場Kの複数の機器Xにおいては、製造時間の度数分布B71からよりも、非製造時間の度数分布B72からの方がピークが顕著であるため電力を消費している機器Xを特定しやすい。
【0054】
そして、製造時間に電力を消費している機器Xの電力量よりも、非製造時間に電力を消費している機器Xの電力量を低減させることが省エネルギーの観点でより有効である。従って、本実施形態では、非製造時間の度数分布B72から電力を消費している機器Xを特定する。その結果、非製造時間に電力を消費している機器Xを確実に特定することができ、特定した機器Xに省エネ対策を施すことで省エネルギー化をより効果的に進めることができる。
【0055】
前述したように、機器を特定する工程は、非製造時間の度数分布B72の波形から、特定する機器Xの電力の使用状況を解析する工程を含んでもよい。電力量と発生時間数との関係を示す度数分布B7の波形が急峻であれば発停が少ない機器X(例えば空調機)が電力を消費していることがわかり、当該波形がなだらかであれば発停が多い機器Xが電力を消費していることがわかる。前述したように、当該波形から機器Xの電力の使用状況を解析することにより、機器Xをより確実に特定できる。
【0056】
前述したように、本実施形態に係る電力消費機器特定方法は、度数分布B7として得られた電力量の最大値から最小値に向かうときにおける発生時間数の累積値が時間閾値以下となる電力量を境界値Vとする工程を備えてもよい。前述した区分する工程では、境界値Vより大きい電力量における度数分布B7を製造時間の度数分布B71とし、境界値V以下の電力量における度数分布B7を非製造時間の度数分布B72としてもよい。この場合、電力量の最大値から最小値に向かうときにおける発生時間数の累積値を用いて境界値Vを設定できる。そして、境界値Vを用いて、製造時間の度数分布B71、及び非製造時間の度数分布B72を区分できるので、製造時間と非製造時間との区分けをより高精度に行うことができる。
【0057】
以上、本開示に係る電力消費機器特定方法及び電力消費機器特定システムの実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本開示は、特許請求の範囲に記載した要旨を変更しない範囲において種々の変形が可能であり、電力消費機器特定システムの各部の機能、並びに、電力消費機器特定方法の各工程の内容及び順序は、上記の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0058】
例えば、本開示に係る電力消費機器特定方法は、度数分布を生成する工程において生成された度数分布から製造時間を算出する工程を備えてもよい。例えば、製造時間解析部16が度数分布から製造時間を求めてもよい。図12は、廃水槽間で廃水が移動している時間を製造時間(運転時間)としたグラフである。図12に示されるグラフを度数分布生成部12が作成した場合、製造時間解析部16は、今年については、100m/h、80m/h、及び50m/hの3箇所にピークが出ていることから40m/h以上の度数を積算した2973時間を製造時間として算出してもよい。また、製造時間解析部16は、昨年については、100m/h、90m/h、80m/h、及び70m/hの4箇所にピークが出ていることから60m/h以上の度数を積算した3468時間を製造時間として算出してもよい。
【0059】
以上のように、電力消費機器特定方法が度数分布を生成する工程において生成された度数分布から製造時間を算出する工程を備えてもよい。この場合、度数分布から製品の製造時間を求めることができる。このように、電力消費機器特定方法が製造時間を算出する工程を備える場合には、度数分布から製品の製造時間を求めることができる。
【0060】
前述の実施形態では、図8に示されるように、度数分布B7から機器Xを空調機と特定する例について説明した。前述したように、機器Xの種類としてはあらゆるものが含まれる。図10は、度数分布生成部12が度数分布B11を生成し、度数分布B11から機器特定部17が機器Xを凍結防止ヒータと特定する例を示している。図10に示されるように、夏季(例えば6月~8月)は制御電源のみの使用により電力使用量が一定となり度数分布B11の山が鋭くなっているのに対し、冬季(例えば12月~2月)は凍結防止ヒータ類が発停することにより度数分布B11の山がなだらかになっていることが分かる。
【0061】
図10では、度数分布生成部12が一月ごとに度数分布B11を生成する例を示している。しかしながら、度数分布生成部12が度数分布を生成する頻度は特に限定されない。図11に示されるように、度数分布生成部12は年ごとに度数分布B12,B13を生成してもよい。前述したように、一年前に度数分布生成部12が度数分布B12を生成して機器特定部17が機器Xを特定し、機器Xに対して省エネ対策を行った後に再度度数分布生成部12が度数分布B13を生成することにより、機器Xに対する省エネの効果を明確に把握できる。その結果、機器Xに対する今後の省エネ対策の質を高めることも可能である。
【0062】
前述の実施形態では、データ入力部11、度数分布生成部12、電力使用状況解析部13、時間設定部14、非製造時間解析部15、製造時間解析部16及び機器特定部17を備える電力分析システム10について説明した。しかしながら、電力分析システムの構成は、上記の例に限られない。例えば、データ入力部11、度数分布生成部12、電力使用状況解析部13、時間設定部14、非製造時間解析部15、製造時間解析部16及び機器特定部17のいずれかを有しない電力分析システムであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…電力消費機器特定システム、2…電力測定器、10…電力分析システム、11…データ入力部、12…度数分布生成部、13…電力使用状況解析部、14…時間設定部、15…非製造時間解析部、16…製造時間解析部、17…機器特定部、B1,B2,B3,B4,B5,B6,B7,B8,B9,B11,B12,B13,B31,B32,B71,B72,B81,B82…度数分布、G…機器群、G1…第1機器群、G2…第2機器群、G3…第3機器群、G4…第4機器群、K…工場、V…境界値、X…機器。
図1
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図12