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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155576
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】ニオイ検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20231016BHJP
   G01N 5/02 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
G01N1/00 101R
G01N5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064984
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田沼 敦郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 学
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AB25
2G052AD09
2G052BA12
2G052CA04
2G052CA14
2G052EA03
2G052FD17
2G052HC23
2G052JA10
(57)【要約】
【課題】粒子状の物質や水分からセンサ素子を保護することができるニオイ検出装置を提供すること。
【解決手段】試料Sが収容された容器2と、容器2内に第1の通路21aを通じて気体を送り込む気体供給部3と、容器2内に送り込まれた気体とともに容器2内から第2の通路22aを通じて押し出されたニオイを検出する検出部4と、を備え、検出部4は、複数のセンサ素子40を有し、センサ素子40は、気体中に含まれるニオイ物質を吸着する吸着膜41と、吸着膜41に対するニオイ物質の吸着状態を検知する検知部42と、を有し、吸着膜41は、複数のセンサ素子40ごとにニオイ物質の吸着特性が異なるよう構成されており、第2の通路22aには、容器2内から検出部4に押し出される気体中に含まれる粒子状の物質及び水分を捕集する第1のフィルタ11及び第2のフィルタ12が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(S)が収容された容器(2)と、
前記容器内に第1の通路(21a)を通じて気体を送り込む気体供給部(3)と、
前記容器内に送り込まれた前記気体とともに前記容器内から第2の通路(22a)を通じて押し出されたニオイを検出する検出部(4)と、を備え、
前記検出部は、センサ素子(40)を有し、
前記センサ素子は、前記気体中に含まれるニオイ物質を吸着する吸着膜(41)と、前記吸着膜に対する前記ニオイ物質の吸着状態を検知する検知部(42)と、を有し、
前記第2の通路には、前記容器内から前記検出部に押し出される気体中に含まれる粒子状の物質及び水分を捕集するフィルタ(11、12)が設けられていることを特徴とするニオイ検出装置。
【請求項2】
前記フィルタは、前記粒子状の物質を捕集する第1のフィルタ(11)と、前記水分を捕集する第2のフィルタ(12)と、を有することを特徴とする請求項1に記載のニオイ検出装置。
【請求項3】
試料(S)が収容された容器(2)と、
前記容器内に第1の通路(61a、62a)を通じて気体を送り込む気体供給部(13)と、
前記容器内に送り込まれた前記気体とともに前記容器内から第2の通路(71a、72a)を通じて押し出されたニオイを検出する検出部(4)と、を備え、
前記検出部は、センサ素子(40)を有し、
前記センサ素子は、前記気体中に含まれるニオイ物質を吸着する吸着膜(41)と、前記吸着膜に対する前記ニオイ物質の吸着状態を検知する検知部(42)と、を有し、
前記第1の通路には、前記気体供給部から供給される気体を除湿する除湿部(6)が設けられており、
前記第2の通路には、前記容器内から前記検出部に押し出される気体中に含まれる粒子状の物質を捕集するフィルタ(11)が設けられており、
前記第1の通路は、前記除湿部の下流において前記第2の通路とバイパス通路(63a)を通じて接続されていることを特徴とするニオイ検出装置。
【請求項4】
前記第2の通路において、前記バイパス通路との接続箇所よりも上流側には、前記第2の通路を連通又は遮断する電磁弁(7)が設けられており、
前記電磁弁は、前記試料のニオイの検出時以外は前記第2の通路を遮断することを特徴とする請求項3に記載のニオイ検出装置。
【請求項5】
前記第2の通路は、前記電磁弁を挟んで、上流側の上流通路(71a)と、下流側の下流通路(72a)と、を有し、
前記電磁弁には、気体を装置外部に排出する排出通路(73a)が接続されており、
前記電磁弁は、前記試料のニオイの検出時は前記上流通路と前記下流通路とを連通し、前記試料のニオイの検出時以外は前記上流通路と前記排出通路とを連通することを特徴とする請求項4に記載のニオイ検出装置。
【請求項6】
前記気体供給部及び前記除湿部が駆動を開始してから所定時間経過後に前記試料のニオイの検出を行うことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のニオイ検出装置。
【請求項7】
前記検知部の出力値を分析してニオイを数値化する演算部(51)と、
前記演算部により数値化されたニオイが所定値範囲内か否かを判定する判定部(52)と、
前記判定部による判定結果を外部に出力する出力部(53)と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のニオイ検出装置。
【請求項8】
前記検知部の出力値を分析してニオイを数値化する演算部(51)と、
前記演算部により数値化されたニオイが所定値範囲内か否かを判定する判定部(52)と、
前記判定部による判定結果を外部に出力する出力部(53)と、をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載のニオイ検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニオイ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体の試料が入った試料瓶の上部空間に2本のシリンジ針が設けられ、一方のシリンジ針を介して試料瓶内に乾燥空気を送り込み、その乾燥空気と、試料から発生した蒸発気体である匂いガスと、を混合して他のシリンジ針から排出して並列型センサセルに送る構成の匂い測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-271204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の匂い測定装置にあっては、例えば試料瓶内の試料が固体である場合、試料瓶内に送り込まれる乾燥空気によって試料に付着した粒子状の物質が舞い上がりやすく、舞い上がった粒子状の物質が乾燥空気とともに並列型センサセルに送り込まれてしまうおそれがある。
【0005】
また、例えば試料瓶内の試料が熱を有する食品等である場合には、湯気が発生し、その湯気が乾燥空気とともに並列型センサセルに送り込まれてしまうおそれがある。例えば、冷凍食品製造工程における調理直後の食品などを測定対象の試料として試料瓶内に収容する場合、この試料瓶内には調理直後の食品から発生する湯気が充満し、匂い測定装置にも多量の湯気が送り込まれてしまう。一方で、冷凍後の食品からは湯気が発生しないが、匂いを測定するという点においては温かいうちに測定する方が好ましい。
【0006】
このように、粒子状の物質や水分が並列型センサセルに送り込まれてしまうと、特定の匂いについて選択的に反応する匂いセンサであっても測定値が変動して誤差が生じるだけでなく、多量の水分を含む雰囲気にさらされることによりセンサ自体に不可逆の破壊的損傷を与えてしまいセンサ保護の観点からも望ましくない。
【0007】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、粒子状の物質や水分からセンサ素子を保護することができるニオイ検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るニオイ検出装置は、試料が収容された容器と、前記容器内に第1の通路を通じて気体を送り込む気体供給部と、前記容器内に送り込まれた前記気体とともに前記容器内から第2の通路を通じて押し出されたニオイを検出する検出部と、を備え、前記検出部は、センサ素子を有し、前記センサ素子は、前記気体中に含まれるニオイ物質を吸着する吸着膜と、前記吸着膜に対する前記ニオイ物質の吸着状態を検知する検知部と、を有し、前記第2の通路には、前記容器内から前記検出部に押し出される気体中に含まれる粒子状の物質及び水分を捕集するフィルタが設けられている構成を有する。
【0009】
この構成により、本発明に係るニオイ検出装置は、試料が収容された容器とニオイを検出する検出部との間の第2の通路にフィルタが設けられているので、容器内から気体やニオイとともに押し出されてくる粒子状の物質や水分をフィルタによって捕集することができる。これにより、粒子状の物質や水分からセンサ素子を保護することができる。
【0010】
また、本発明に係るニオイ検出装置において、前記フィルタは、前記粒子状の物質を捕集する第1のフィルタと、前記水分を捕集する第2のフィルタと、を有する。
【0011】
この構成により、本発明に係るニオイ検出装置は、粒子状の物質を捕集する第1のフィルタと水分を捕集する第2のフィルタとのそれぞれ捕集対象の異なるフィルタを2段に設けたので、粒子状の物質及び水分の除去能力を高めることができる。
【0012】
本発明に係るニオイ検出装置は、試料が収容された容器と、前記容器内に第1の通路を通じて気体を送り込む気体供給部と、前記容器内に送り込まれた前記気体とともに前記容器内から第2の通路を通じて押し出されたニオイを検出する検出部と、を備え、前記検出部は、センサ素子を有し、前記センサ素子は、前記気体中に含まれるニオイ物質を吸着する吸着膜と、前記吸着膜に対する前記ニオイ物質の吸着状態を検知する検知部と、を有し、前記第1の通路には、前記気体供給部から供給される気体を除湿する除湿部が設けられており、前記第2の通路には、前記容器内から前記検出部に押し出される気体中に含まれる粒子状の物質を捕集するフィルタが設けられており、前記第1の通路は、前記除湿部の下流において前記第2の通路とバイパス通路を通じて接続されている構成を有する。
【0013】
この構成により、本発明に係るニオイ検出装置は、試料が収容された容器とニオイを検出する検出部との間の第2の通路にフィルタが設けられているので、容器内から気体やニオイとともに押し出されてくる粒子状の物質をフィルタによって捕集することができる。また、第1の通路が除湿部の下流においてバイパス通路を通じて第2の通路に接続されているので、除湿部を通過した気体を容器内に送り込むとともに、バイパス通路を通じて検出部にも供給して混合するので、検出部に流入する気体の湿度を下げ、かつ安定させることができる。これにより、本発明に係るニオイ検出装置は、検出部に流入する気体の湿度の変動による測定誤差をなくすとともに、粒子状の物質や水分からセンサ素子を保護することができる。
【0014】
また、本発明に係るニオイ検出装置は、前記第2の通路において、前記バイパス通路との接続箇所よりも上流側には、前記第2の通路を連通又は遮断する電磁弁が設けられており、前記電磁弁は、前記試料のニオイの検出時以外は前記第2の通路を遮断する構成を有する。
【0015】
この構成により、本発明に係るニオイ検出装置は、試料のニオイの検出時以外は電磁弁が第2の通路を遮断するので、試料のニオイの検出時以外は常に検出部に、バイパス通路を通じて、除湿した気体を流入させることができる。このため、例えばニオイ検出装置の起動後、検出部の出力が安定するまでは試料から生ずるニオイ物質を検出部に供給させないようにすることができる。これにより、検出部の出力が安定しない状態でニオイを検出してしまうことにより正確な出力を得ることができないといった事態を防止することができる。
【0016】
また、本発明に係るニオイ検出装置において、前記第2の通路は、前記電磁弁を挟んで、上流側の上流通路と、下流側の下流通路と、を有し、前記電磁弁には、気体を装置外部に排出する排出通路が接続されており、前記電磁弁は、前記試料のニオイの検出時は前記上流通路と前記下流通路とを連通し、前記試料のニオイの検出時以外は前記上流通路と前記排出通路とを連通する構成を有する。
【0017】
この構成により、本発明に係るニオイ検出装置は、試料のニオイの検出時以外は電磁弁が上流通路と排出通路とを連通するので、試料のニオイの検出時以外は容器内の湿度を下げることができる。これにより、試料のニオイの検出時に電磁弁によって上流通路と下流通路とが連通した際には、試料のニオイ物質とともに湿度の低下した気体を第2の通路を通じて検出部に送り込むことができる。
【0018】
また、本発明に係るニオイ検出装置は、前記気体供給部及び前記除湿部が駆動を開始してから所定時間経過後に前記試料のニオイの検出を行う構成を有する。
【0019】
この構成により、本発明に係るニオイ検出装置は、気体供給部及び除湿部が駆動を開始してから所定時間経過後に試料のニオイの検出を行うので、検出部の出力が安定した状態でニオイを検出することができる。これにより、検出部において正確な出力を得ることができる。
【0020】
また、本発明に係るニオイ検出装置は、前記検知部の出力値を分析してニオイを数値化する演算部と、前記演算部により数値化されたニオイが所定値範囲内か否かを判定する判定部と、前記判定部による判定結果を外部に出力する出力部と、をさらに備える。
【0021】
この構成により、本発明に係るニオイ検出装置は、試料のニオイを数値化することによって定量的にニオイの判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、粒子状の物質や水分からセンサ素子を保護することができるニオイ検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係るニオイ検出装置の概略構成図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係るニオイ検出装置の概略構成図である。
図3図3は、本発明の第2の実施形態に係るニオイ検出装置においてニオイを検出する際の気体の流れを示す図である。
図4図4は、本発明の第2の実施形態に係るニオイ検出装置の動作を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
図1に示すように、本実施形態のニオイ検出装置1は、容器2と、気体供給部3と、検出部4と、制御装置5と、を含んで構成されている。なお、「ニオイ」なる表記は、主観的な語義をもつ「臭い」、「匂い」もしくは「香り」といった嗅覚に作用する物体の特性や状態を指すものとして用いたものであるが、必ずしも人間の嗅覚において有意に識別可能か否かにより限定されるものではなく、例えば食品や飲料において一般に風味をもたらすといわれる官能的特性をも含む。
【0026】
[容器]
容器2には、ニオイを検出したい試料Sが収容されるようになっている。試料Sとしては、固体状の物質が挙げられ、例えば冷凍食品の製造工程における調理直後の食品としてチャーハンなどの温かい食品類が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0027】
容器2としては、繰り返し使用可能な例えばガラス瓶や、耐熱樹脂製の使い捨て容器などを用いることができる。容器2は、試料Sのニオイを検出する際には、図示しない蓋によって密閉される。
【0028】
[気体供給部]
気体供給部3は、吐出式のエアポンプによって構成されており、例えばシリコンチューブなどの配管部材21を介して容器2に接続されている。配管部材21内には、気体が通る第1の通路21aが形成されている。
【0029】
気体供給部3は、図示しない吸入口、吐出口、ファンモータを備え、吸入口から吸入した空気を吐出口から第1の通路21aに吐出する。
【0030】
このように、気体供給部3は、容器2内に第1の通路21aを通じて気体を送り込むようになっている。気体供給部3は、制御装置5に接続されており、制御装置5によって駆動を制御されるようになっている。
【0031】
[検出部]
検出部4は、通路部材22を介して容器2に接続されている。通路部材22としては、例えば、容器2の図示しない蓋に一体形成されているものや、当該蓋と別体のものを用いることができる。通路部材22内には、気体が通る第2の通路22aが形成されている。
【0032】
気体供給部3によって気体が容器2内に送り込まれると、この送り込まれた気体とともに試料Sのニオイが容器2内から第2の通路22aを通じて検出部4側に押し出される。
【0033】
検出部4は、容器2内に送り込まれた気体とともに容器2内から第2の通路22aを通じて押し出された試料Sのニオイを検出するニオイセンサによって構成されている。
【0034】
検出部4は、図示しない筐体を備え、この筐体に設けられた導入口に第2の通路22aが接続されている。検出部4は、筐体内に、ニオイを検出するためのセンサ素子40を複数備えている。センサ素子40は、検出したいニオイの種類や精度等に応じて任意の数に設定される。
【0035】
複数のセンサ素子40は、図示しないセンサ基板上に格子状や一列、又は環状に整列されて配置されている。複数のセンサ素子40は、センサ基板上にランダムに配置されていてもよい。なお、特定のニオイのみを検出する構成の場合には、センサ素子40は1つであってもよい。
【0036】
センサ素子40は、気体中に含まれるニオイ物質を吸着する吸着膜41と、吸着膜41に対するニオイ物質の吸着状態を検知する検知部42と、を有している。
【0037】
吸着膜41は、検知部42の表面を覆うようにして検知部42の表面に設けられている。吸着膜41は、各センサ素子40ごとにニオイ物質の吸着特性が異なるように構成されている。吸着膜41は、各センサ素子40間で同一の吸着特性となることがないように構成されるのが好ましい。
【0038】
吸着膜41としては、例えば、n電子共役高分子によって形成された薄膜など、その他、公知の膜を用いることができる。各吸着膜41は、ドーパントの種類や含有量を調整することによって互いに吸着特性を異ならせることができる。また、各吸着膜41は、互いに異なる種類のn電子共役高分子を用いることによって互いに吸着特性を異ならせてもよい。
【0039】
検知部42は、制御装置5に接続されている。検知部42は、吸着膜41に吸着されたニオイ物質によって生ずる、物理的、化学的又は電気的な吸着膜41の特性の変化を検知する。検知部42は、その検知結果を出力値として電気信号に変換して制御装置5に出力するようになっている。
【0040】
検知部42としては、例えば、水晶振動子センサなど、その他、公知のセンサを用いることができる。つまり、検知部42としては、吸着膜41の物理的、化学的又は電気的な特性を検知可能であればよく、水晶振動子センサに限られるものではない。
【0041】
[制御装置]
制御装置5は、少なくとも、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0042】
制御装置5は、演算部51と、判定部52と、出力部53と、を含んで構成されている。本実施形態において、制御装置5は、検出部4と別体のパーソナルコンピュータによって構成される。なお、制御装置5は、ニオイ検出装置1が1つのユニットとして筐体に集約される場合には、検出部4と同一ユニットとしてニオイ検出装置1の筐体内に組み込まれる構成であってもよい。
【0043】
演算部51には、各センサ素子40から、それぞれの検知部42の出力値が入力されるようになっている。演算部51は、各検知部42の出力値を分析して試料Sのニオイを数値化するようになっている。
【0044】
演算部51は、例えば検知部42が水晶振動子センサで構成される場合には、各センサ素子40から出力値として得られた周波数データに対して、センサ素子40の数に応じた多次元量を解析して特徴量を抽出する。
【0045】
判定部52は、演算部51により数値化されたニオイが所定値範囲内か否かを判定するようになっている。具体的には、判定部52は、センサ素子40の数に応じた多次元量を解析して抽出された特徴量のうち上位2つを2次元化して、この2次元化したデータに基づき試料Sのニオイが適正か否かを判定する。例えば、試料Sが調理済みのチャーハンである場合に、演算部51により数値化されたニオイが所定値範囲内にないと判定部52によって判定された場合には、試料Sのチャーハンに、例えば調味料抜けや焦げ付き等が生じていると判定することができる。
【0046】
出力部53は、例えば、フラットパネルディスプレイやタッチパネルディスプレイなどによって構成されている。出力部53は、判定部52による判定結果を可視化した状態で外部に出力する。可視化の形態としては、例えば、ニオイが適正か否かを示す表示(例えば、OK又はNGといった表示)、各種グラフやレーダチャート、マトリックスなど、客観的に評価可能な表示形態であれば、いずれの表示形態を採用してもよく、またこれら表示形態を組み合わせてもよいし、各表示形態を切替可能であってもよい。
【0047】
このように、ニオイの検出は、検出部4および制御装置5が協働することによって実現される。すなわち、検出部4が、ニオイ物質の吸着により変化した吸着膜41の特性を検知部42により検知して検知結果を制御装置5に出力し、制御装置5においてこの出力値を演算部51により分析して数値化することにより、試料Sのニオイを検出する。
【0048】
[フィルタ]
上述の第2の通路22aには、容器2内から検出部4に押し出される気体中に含まれる粒子状の物質を捕集する第1のフィルタ11と、容器2内から検出部4に押し出される気体中に含まれる水分を捕集する第2のフィルタ12と、が設けられている。本実施形態の第1のフィルタ11及び第2のフィルタ12は、フィルタを構成する。
【0049】
第1のフィルタ11としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルタや、石英繊維フィルタ、又はHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタなど、種々のフィルタを用いることができる。また、不織布を複数重ねた構成のフィルタや、帯電するフィルタ、又は不織布を多孔質の濾過材で構成して予めプラス等に帯電したフィルタなどを用いてもよい。
【0050】
第1のフィルタ11は、PM2.5(微小粒子状物質)に代表されるような微細な粒子状の物質を捕集可能であって、容器2内から検出部4に押し出される気体中に含まれるニオイ物質を透過可能なフィルタであれば、いずれのフィルタを用いてもよい。
【0051】
第2のフィルタ12は、第2の通路22a上、気体の流れる方向に対して第1のフィルタ11の下流側に配置されている。
【0052】
第2のフィルタ12は、電子冷却式の除湿器によって構成されており、図示しない吸入口、吐出口、排水口、ファンモータや除湿ユニットを備え、吸入口から吸入した気体を除湿ユニットで除湿することによって、水分を除去又は一定量以下にするようになっている。
【0053】
なお、本実施形態における第1のフィルタ11と第2のフィルタ12との配置は、一例であって、これに限定されるものではなく、例えば第1のフィルタ11と第2のフィルタ12と配置を逆にしてもよい。
【0054】
また、第1のフィルタ11及び第2のフィルタ12に代えて、第1のフィルタ11の機能と第2のフィルタ12の機能とを兼ね備えたフィルタを用いてもよい。例えば、第1のフィルタ11と第2のフィルタ12とを組み合わせたフィルタを用いてもよいし、気体を圧縮するとともに遠心分離によって圧縮空気中の水分及び粒子状の物質を除去する圧縮空気フィルタなど、を用いてもよい。
【0055】
[作用効果]
以上のように、本実施形態に係るニオイ検出装置は、試料Sが収容された容器2とニオイを検出する検出部4との間の第2の通路22aに第1のフィルタ11及び第2のフィルタ12が設けられているので、容器2内から気体やニオイとともに押し出されてくる粒子状の物質や水分を第1のフィルタ11及び第2のフィルタ12によって捕集することができる。これにより、粒子状の物質や水分からセンサ素子40を保護することができる。
【0056】
また、本実施形態に係るニオイ検出装置は、粒子状の物質を捕集する第1のフィルタ11と水分を捕集する第2のフィルタ12とのそれぞれ捕集対象の異なるフィルタを2段に設けたので、粒子状の物質及び水分の除去能力を高めることができる。
【0057】
また、本実施形態に係るニオイ検出装置は、検知部42の出力値を分析してニオイを数値化する演算部51と、演算部51により数値化されたニオイが所定値範囲内か否かを判定する判定部52とを備えるので、試料Sのニオイを数値化することによって定量的にニオイの判定を行うことができる。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、図2から図4を参照して、第2の実施形態について説明する。
【0059】
本実施形態に係るニオイ検出装置100は、容器2と、気体供給部13と、検出部4と、制御装置5と、除湿部6と、電磁弁7と、コントローラ8と、を含んで構成されている。これら各構成は、筐体101内に収容されている。
【0060】
ここで、容器2、検出部4、制御装置5及び第1のフィルタ11の各構成については、第1の実施形態に記載の各構成と同一である。したがって、以下においては、第1の実施形態と同一のこれら各構成については第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態における第1のフィルタ11は、フィルタを構成する。
【0061】
[気体供給部]
本実施形態において、気体供給部13は、吐出式のエアポンプによって構成されており、吸入口13a、吐出口13b、及び、図示しないファンモータを備えている。吸入口13aは、筐体101の外部に連通している。
【0062】
吐出口13bは、通路部材61を介して除湿部6に接続されている。通路部材61内には、気体が通る第1の上流通路61aが形成されている。気体供給部13は、吸入口13aから吸入した空気を吐出口13bから第1の上流通路61aに吐出する。第1の上流通路61aに吐出された空気は、除湿部6を通って、後述する第1の下流通路62aを通じて容器2内に送り込まれる。
【0063】
このように、気体供給部13は、容器2内に第1の上流通路61a及び第1の下流通路62aを通じて気体を常時送り込むようになっている。なお、気体供給部13は、コントローラ8に接続されて駆動を制御される構成であってもよい。本実施形態における第1の上流通路61a及び第1の下流通路62aは、第1の通路を構成する。
【0064】
[除湿部]
除湿部6は、電子冷却式の除湿器によって構成されており、吸入口6a、吐出口6b、排水口6c、図示しないファンモータや除湿ユニットを備えている。除湿部6は、吸入口6aから吸入した気体を除湿ユニットで除湿することによって水分を除去又は一定量以下にして、吐出口6bから送り出す。除湿ユニットによって除去された水分は、排水口6cを介して排出(ドレン)される。
【0065】
除湿部6は、通路部材62を介して容器2に接続されている。通路部材62内には、除湿された気体が通る第1の下流通路62aが形成されている。
【0066】
通路部材62の中間部分には、後述する通路部材72の途中に接続されるバイパス通路部材63が接続されている。バイパス通路部材63内には、除湿された気体が通るバイパス通路63aが形成されている。
【0067】
したがって、第1の下流通路62aは、除湿部6の下流において後述する第2の下流通路72aとバイパス通路63aを通じて接続されている。除湿部6によって除湿された気体は、容器2のほか、バイパス通路63aを通じて後述する第2の下流通路72aにも供給される。
【0068】
容器2には、通路部材71が接続されている。通路部材71は、上流側が容器2に接続され、下流側が電磁弁7に接続されている。通路部材71内には、容器2内から送り出される気体が通る第2の上流通路71aが形成されている。気体供給部13によって気体が容器2内に送り込まれると、この送り込まれた気体とともに試料Sのニオイが容器2内から第2の上流通路71aを通じて電磁弁7側に押し出される。
【0069】
通路部材71は、電磁弁7を介して、通路部材72及び通路部材73に接続されている。通路部材72は、上流側が電磁弁7に接続され、下流側が第1のフィルタ11を介して検出部4に接続されている。通路部材72の中間部分には、バイパス通路部材63が接続されている。
【0070】
通路部材72内には、気体が通る第2の下流通路72aが形成されている。通路部材72には、電磁弁7を通過した気体が通るとともに、途中でバイパス通路63aを通じて除湿された気体が合流するようになっている。
【0071】
本実施形態において、電磁弁7を挟んで上流側の第2の上流通路71aと、下流側の第2の下流通路72aとは、第2の通路を構成する。また、第2の上流通路71aは上流通路を構成し、第2の下流通路72aは下流通路を構成する。
【0072】
通路部材73は、上流側が電磁弁7に接続され、下流側が装置外部、すなわち筐体101の外部に連通している。通路部材73内には、電磁弁7を通過した気体を筐体101の外部に排出する排出通路73aが形成されている。
【0073】
[電磁弁]
電磁弁7は、容器2から押し出される気体が通る第2の上流通路71a及び第2の下流通路72aにおいて、バイパス通路63aとの接続箇所よりも上流側に設けられている。電磁弁7は、コントローラ8に接続されており、当該コントローラ8からの指令に応じて、第2の上流通路71aと第2の下流通路72aとを連通、又は、第2の上流通路71aと排出通路73aと、を連通するようになっており、例えばコントローラ8からの指令がないときなどの初期状態においてはいずれの通路にも連通しない閉鎖通路74を形成し、電磁弁7が遮断弁としても機能するようになっているとよい。本実施形態において、閉鎖通路74の排出口は封止されている。
【0074】
つまり、電磁弁7は、第2の上流通路71aとの連通先を、第2の下流通路72aと排出通路73aとのいずれかに切替可能に構成され、さらに好ましくは第2の上流通路71aを遮断可能に構成されている。
【0075】
ここで、図2では、電磁弁7が第2の上流通路71aとの連通先を、排出口が封止された閉鎖通路74から排出通路73aに切り替えたとき、すなわち、試料Sのニオイの検出時以外の場合における気体の流れを示している。第2の上流通路71aと排出通路73aとが連通した場合、図2中、点線矢印で示すように、容器2から押し出された気体は、第2の上流通路71a及び排出通路73aを通じて装置外部に排出される。このときの容器2から押し出された気体の流路を、第1流路とする。
【0076】
電磁弁7によって第2の上流通路71aと排出通路73aとが連通された場合には、第2の上流通路71aと第2の下流通路72aとの間は遮断される。つまり、試料Sのニオイの検出時以外は、電磁弁7は第2の上流通路71aと第2の下流通路72aとの間を遮断する。これにより、試料Sのニオイの検出時以外は、容器2から押し出された気体が検出部4に導入されないようにする。
【0077】
これに対し、図3は、電磁弁7が第2の上流通路71aとの連通先を、排出口が封止された閉鎖通路74から第2の下流通路72aに切り替えたとき、すなわち、試料Sのニオイの検出時における気体の流れを示す図である。第2の上流通路71aと第2の下流通路72aとが連通した場合、図3中、点線矢印で示すように、容器2から押し出された気体は、第2の上流通路71a及び第2の下流通路72aを通じて検出部4に流れる。このときの容器2から押し出された気体の流路を、第2流路とする。
【0078】
[コントローラ]
コントローラ8は、制御装置5に接続されており、制御装置5から入力される信号に基づき、プログラムにしたがって電磁弁7の動作を制御する。
【0079】
[動作]
次に、図2から図4を参照して、本実施形態のニオイ検出装置100の動作について、説明する。
【0080】
図4に示すように、ニオイ検出装置100は、ステップS1で容器2に試料Sがセットされ、ステップS2で電源が投入されると、容器2から押し出された気体の流れが第1流路(図2に示す流路)となるよう、電磁弁7が切り替えられる(ステップS3)。また、電源の投入によって気体供給部13及び除湿部6も駆動を開始する。
【0081】
これにより、図2に示すように、容器2から押し出された気体が第2の上流通路71a及び排出通路73aを通じて装置外部に排出され、容器2内が換気される。
【0082】
その後、ニオイ検出装置100は、所定時間運転される(ステップS4)。ここで、電源の投入から所定時間運転を行うのは、気体供給部13及び除湿部6が駆動を開始してから検出部4の出力が安定するのを待つためである。
【0083】
ニオイ検出装置100は、例えば、予め設定された時間をカウントすることによって所定時間が経過したと判断する構成であってもよいし、検出部4の出力値が安定して所定値となったタイミングで所定時間が経過したと判断する構成であってもよい。
【0084】
次いで、ニオイ検出装置100は、所定時間運転された後、容器2から押し出された気体の流れが第2流路(図3に示す流路)となるよう、電磁弁7が切り替えられる(ステップS5)。
【0085】
これにより、図3に示すように、容器2から押し出されたニオイを含む気体が第2の上流通路71a及び第2の下流通路72aを通じて検出部4に導入される。このとき、バイパス通路63aを通じて除湿された気体が、容器2から押し出されたニオイを含む気体に合流して検出部4に導入される。つまり、検出部4には、除湿された気体と、試料Sのニオイを含む気体とが混合した状態で導入される。
【0086】
次いで、ニオイ検出装置100は、検出部4において、容器2から押し出された気体に含まれるニオイを検出する(ステップS6)。
【0087】
その後、ニオイ検出装置100は、各検知部42(図1参照)の出力値を分析して試料Sのニオイを数値化し、その数値化されたニオイが所定値範囲内か否かを判定する(ステップS7)。
【0088】
次いで、ニオイ検出装置100は、ステップS7で行われた判定の判定結果を、出力部53(図1参照)を介して外部に出力する(ステップS8)。
【0089】
[作用効果]
以上のように、本実施形態に係るニオイ検出装置は、試料Sが収容された容器2とニオイを検出する検出部4との間の第2の下流通路72aに第1のフィルタ11が設けられているので、容器2内から気体やニオイとともに押し出されてくる粒子状の物質を第1のフィルタ11によって捕集することができる。
【0090】
また、第1の下流通路62aが除湿部6の下流においてバイパス通路63aを通じて第2の下流通路72aに接続されているので、除湿部6を通過した気体を容器2内に送り込むとともに、バイパス通路63aを通じて検出部4にも供給して混合するので、検出部4に流入する気体の湿度を下げ、安定させることができる。これにより、本実施形態に係るニオイ検出装置は、検出部4に流入する気体の湿度の変動により生じる測定誤差をなくすとともに、粒子状の物質や水分からセンサ素子40を保護することができる。
【0091】
また、本実施形態に係るニオイ検出装置は、試料Sのニオイの検出時以外は電磁弁7が第2の上流通路71aと第2の下流通路72aとの間を遮断するので、試料Sのニオイの検出時以外は常に検出部4に、バイパス通路63aを通じて、除湿した気体を流入させることができる。このため、例えばニオイ検出装置100の起動後、検出部4の出力が安定するまでは試料Sから生ずるニオイ物質を検出部4に供給させないようにすることができる。これにより、検出部4の出力が安定しない状態でニオイを検出してしまうことにより正確な出力を得ることができないといった事態を防止することができる。
【0092】
また、本実施形態に係るニオイ検出装置は、試料Sのニオイの検出時以外は電磁弁7が第2の上流通路71aと排出通路73aとを連通するので、試料Sのニオイの検出時以外は容器2内の湿度を下げることができる。これにより、試料Sのニオイの検出時に電磁弁7によって第2の上流通路71aと第2の下流通路72aとが連通した際には、試料Sのニオイ物質とともに湿度の低下した気体を第2の上流通路71a及び第2の下流通路72aを通じて検出部4に送り込むことができる。
【0093】
また、本実施形態に係るニオイ検出装置は、気体供給部13及び除湿部6が駆動を開始してから所定時間経過後に試料Sのニオイの検出を行うので、検出部4の出力が安定した状態でニオイを検出することができる。これにより、検出部4において正確な出力を得ることができる。
【0094】
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0095】
1、100 ニオイ検出装置
2 容器
3、13 気体供給部
4 検出部
5 制御装置
6 除湿部
7 電磁弁
8 コントローラ
11 第1のフィルタ(フィルタ)
12 第2のフィルタ(フィルタ)
21 配管部材
21a 第1の通路
22 通路部材
22a 第2の通路
40 センサ素子
41 吸着膜
42 検知部
51 演算部
52 判定部
53 出力部
61、62、71、72、73 通路部材
61a 第1の上流通路(第1の通路)
62a 第1の下流通路(第1の通路)
63 バイパス通路部材
63a バイパス通路
71a 第2の上流通路(第2の通路、上流通路)
72a 第2の下流通路(第2の通路、下流通路)
73a 排出通路
74 閉鎖通路
101 筐体
S 試料
図1
図2
図3
図4