(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155604
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】補修材
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20231016BHJP
C04B 14/06 20060101ALI20231016BHJP
C04B 14/28 20060101ALI20231016BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20231016BHJP
C04B 20/00 20060101ALI20231016BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20231016BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B14/06 Z
C04B14/28
C04B18/14 A
C04B20/00 B
C04B24/26 F
C04B24/26 G
E04G23/02 B
E04G23/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065025
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(71)【出願人】
【識別番号】599098563
【氏名又は名称】二瀬窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】森田 翔
(72)【発明者】
【氏名】新地 正敏
(72)【発明者】
【氏名】松原 道彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 菜穂
(72)【発明者】
【氏名】平位 亮介
(72)【発明者】
【氏名】鶴 勝彦
【テーマコード(参考)】
2E176
4G112
【Fターム(参考)】
2E176AA03
2E176BB04
2E176BB16
4G112MD00
4G112PA04
4G112PA10
4G112PA29
4G112PB31
(57)【要約】
【課題】補修材の使用性を高めることが可能となる、補修材を提供すること。
【解決手段】補修材30は、建設部材1を補修するためのものであって、細骨材と、樹脂材と、水と、細骨材、樹脂材、及び水を結合させるための結合材と、を含み、細骨材は、比較的吸水性の低い低吸水性細骨材を含み、当該補修材30に対する水の含水率を10.7重量%から16.7重量%程度とし、低吸水性細骨材は、川砂、山砂、珪砂、石灰石、又は/及び高炉スラグを含み、結合材に対する粒径0.6mm以下の細骨材の含有量を、100重量%から200重量%程度とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設部材を補修するための補修材であって、
細骨材と、
樹脂材と、
水と、
前記細骨材、前記樹脂材、及び前記水を結合させるための結合材と、を含み、
前記細骨材は、比較的吸水性の低い低吸水性細骨材を含み、
当該補修材に対する前記水の含水率を10.7重量%から16.7重量%程度とした、
補修材。
【請求項2】
前記低吸水性細骨材は、川砂、山砂、珪砂、石灰石、又は/及び高炉スラグを含む、
請求項1に記載の補修材。
【請求項3】
前記結合材に対する粒径0.6mm以下の細骨材の含有量を、100重量%から200重量%程度とした、
請求項1又は2に記載の補修材。
【請求項4】
前記樹脂材は、アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、又はスチレンアクリル酸エステル共重合体を含む、
請求項1又は2に記載の補修材。
【請求項5】
前記結合材に対する前記樹脂材の含有量を、5重量%から20重量%程度とした、
請求項1又は2に記載の補修材。
【請求項6】
前記建設部材は、床スラブ材、又は/及び床用タイル材を含む、
請求項1又は2に記載の補修材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補修材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物を構成する床材を補修するための補修材の一つとして、細骨材、セメント用ポリマー、及び水を含む補修材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記従来の補修材においては、上述したように、水を含むものの、補修材に対する水の含水率の設定の詳細については開示されていないので、例えば上記含水率が比較的高い場合には、補修材の収縮量が高くなると共に、上記含水率が比較的低い場合には補修材の流動性が低下するおそれがあることから、補修材の使用性を高める観点からは改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、補修材の使用性を高めることが可能となる、補修材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の補修材は、建設部材を補修するための補修材であって、細骨材と、樹脂材と、水と、前記細骨材、前記樹脂材、及び前記水を結合させるための結合材と、を含み、前記細骨材は、比較的吸水性の低い低吸水性細骨材を含み、当該補修材に対する前記水の含水率を10.7重量%から16.7重量%程度とした。
【0007】
請求項2に記載の補修材は、請求項1に記載の補修材において、前記低吸水性細骨材は、川砂、山砂、珪砂、石灰石、又は/及び高炉スラグを含む。
【0008】
請求項3に記載の補修材は、請求項1又は2に記載の補修材において、前記結合材に対する粒径0.6mm以下の細骨材の含有量を、100重量%から200重量%程度とした。
【0009】
請求項4に記載の補修材は、請求項1又は2に記載の補修材において、前記樹脂材は、アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、又はスチレンアクリル酸エステル共重合体を含む。
【0010】
請求項5に記載の補修材は、請求項1又は2に記載の補修材において、前記結合材に対する前記樹脂材の含有量を、5重量%から20重量%程度とした。
【0011】
請求項6に記載の補修材は、請求項1又は2に記載の補修材において、前記建設部材は、床スラブ材、又は/及び床用タイル材を含む。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の補修材によれば、細骨材が、比較的吸水性の低い低吸水性細骨材を含み、補修材に対する水の含水率を10.7重量%から16.7重量%程度としたので、補修材の流動性を確保しながら、補修材の収縮量を低減し、且つ補修材によって形成される補修部の強度(具体的には、剥離強度、表面接着強度、耐動荷重性能、及び圧縮強度等)を高めることができ、補修材の使用性を高めることが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の補修材によれば、低吸水性細骨材が、川砂、山砂、珪砂、石灰石、又は/及び高炉スラグを含むので、低吸水性細骨材を簡易に構成でき、低吸水性細骨材の製造性を高めることが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の補修材によれば、結合材に対する粒径0.6mm以下の細骨材の含有量を、100重量%から200重量%程度としたので、補修材によって形成される補修部を薄膜状に形成しやすくなるため、例えば補修材を形成する際の補修材の使用量を低減できる。
【0015】
請求項4に記載の補修材によれば、樹脂材が、アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、又はスチレンアクリル酸エステル共重合体を含むので、他の樹脂材に比べて、補修材によって形成される補修部の強度を確保しやすくなるため、当該補修部の使用性を高めることが可能となる。
【0016】
請求項5に記載の補修材によれば、結合材に対する樹脂材の含有量を、5重量%から20重量%程度としたので、他の含有量に比べて、補修材によって形成される補修部の強度を確保しやすくなるため、当該補修部の使用性を高めることが可能となる。
【0017】
請求項6に記載の補修材によれば、建設部材が、床スラブ材、又は/及び床用タイル材を含むので、床スラブ材、又は/及び床用タイル材の欠損部に所望の補修材を形成しやすいことから、補修材の使用性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る建設部材を概念的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A矢視断面図である。
【
図2】含水率確認試験で用いられた補修材の構成の詳細を示す図である。
【
図4】第1樹脂材種別確認試験で用いられた補修材の構成の詳細を示す図である。
【
図5】第1樹脂材種別確認試験の試験結果を示す図である。
【
図6】第2樹脂材種別確認試験で用いられた補修材の構成の詳細を示す図である。
【
図7】第2樹脂材種別確認試験の試験結果を示す図である。
【
図8】樹脂材含有量確認試験で用いられた補修材の構成の詳細を示す図である。
【
図9】樹脂材含有量確認試験の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る補修材の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、建設部材を補修するための補修材に関する。
【0021】
ここで、「建設部材」とは、構造物を構成する部材を意味し、例えば、壁材、天井材、床材、柱材、梁材等を含む概念であるが、実施の形態では、床スラブ材として説明する。
【0022】
また、「構造物」の具体的な構造や種類は任意であり、例えば、建築構造物(一例として、戸建て住宅、アパートやマンションの如き集合住宅、オフィスビル、商業施設等)や土木構造物(一例として、橋梁、トンネル、ダム等)を含む概念であるが、実施の形態では、既設のオフィスビルとして説明する。
【0023】
また、「建設部材を補修する」とは、例えば、劣化した建設部材の劣化進行を抑制又は回避すること、劣化した建設部材の機能を復元すること、建設部材の欠損部分を平滑すること、又は/及び、建設部材の表面の仕上りを整えること等を含む概念である。
【0024】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0025】
(構成)
最初に、実施の形態に係る補修材30の構成と、補修材30によって補修される建設部材1の構成とについて説明する。
【0026】
(構成-建設部材)
まず、建設部材1の構成について説明する。
【0027】
以下の説明では、
図1のX方向を建設部材1の左右方向(-X方向を建設部材1の左方向、+X方向を建設部材1の右方向)、
図1のY方向を建設部材1の前後方向(+Y方向を建設部材1の前方向、-Y方向を建設部材1の後方向)、
図1のZ方向を建設部材1の上下方向(+Z方向を建設部材1の上方向、-Z方向を建設部材1の下方向)と称する。
【0028】
建設部材1は、図示しない構造物(具体的には、既設のオフィスビル)を構成する部材である。この建設部材1は、例えば公知の床スラブ材(一例として、略平板状であるコンクリート製の床スラブ材)等を用いて構成されており、構造物の所定の階層に設けられている。具体的には、建設部材1が略水平に設けられており、隣接する他の建設部材(例えば、柱材、梁材等に対して接続されている。
【0029】
また、
図1に示すように、建設部材1には、欠損部10及び補修部20が設けられている。
【0030】
(構成-建設部材-欠損部)
欠損部10は、建設部材1の使用等に伴う劣化によって当該建設部材1の一部が欠損したものである。この欠損部10は、
図1に示すように、建設部材1の上面において略凹状に形成されており、具体的には、当該欠損部10の深さ(上下方向の長さ)が5mm以下程度(又は、5mmを上回る深さ)の略凹状に形成されている。
【0031】
(構成-建設部材-補修部)
補修部20は、補修材30によって欠損部10が補修されたものであり、
図1に示すように、後述する補修方法を用いて、欠損部10全体に補修材30が塗り付けられた後に乾燥されることで形成されている。
【0032】
このような補修部20によって、建設部材1の劣化進行を抑制し、且つ建設部材1の機能を復元することが可能となる。
【0033】
(構成-補修材)
次に、補修材30の構成について説明する。
【0034】
補修材30は、建設部材1を補修するためのものである。この補修材30は、実施の形態では、セルフレベリング機能(欠損部10に流し込んだ補修材30が自然に水平になる機能)を有するように構成されており、具体的には、細骨材、樹脂材、水、及び結合材を含んで構成されている(いずれも図示省略)
【0035】
(構成-補修材-細骨材)
細骨材は、補修材30の基本構造体の一部であり、第1細骨材及び第2細骨材を含んで構成されている。
【0036】
(構成-補修材-細骨材-第1細骨材)
第1細骨材は、細骨材の基本構造体の一部であり、比較的吸水性の低い低吸水性細骨材である。この第1細骨材は、例えば公知の細骨材等を用いて構成されており、具体的には、第1細骨材の製造性の観点から、川砂、山砂、珪砂、石灰石、又は/及び高炉スラグを含んで構成されている。
【0037】
このような第1細骨材により、第1細骨材を簡易に構成でき、第1細骨材の製造性を高めることが可能となる。
【0038】
(構成-補修材-細骨材-第2細骨材)
第2細骨材は、細骨材の基本構造体の他の一部であり、第1細骨材とは異なる種別の骨材である。この第2細骨材は、例えば公知の細骨材等を用いて構成されており、具体的には、砂類、無機材料(一例として、アルミナクリンカー、シリカ粉、粘土鉱物、廃FCC触媒又は/及び石灰石)、又は/及び樹脂粉砕物(一例として、ウレタン砕、EVAフォーム、又は/及び発砲樹脂)を含んで構成されている。
【0039】
(構成-補修材-細骨材-その他の構成)
また、細骨材(具体的には、第1細骨材、及び第2細骨材)の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では以下の通りに構成されている。
【0040】
すなわち、細骨材の粒径については、補修材30がセルフレベリング機能を有することが可能な大きさに設定している。より具体的には、粒径2mm以下に設定しており、一例として、粒径0.6mm以下に設定することが好ましい。
【0041】
これにより、補修材30のセルフレベリング機能を確保しやすくなる。
【0042】
ただし、これに限らず、例えば、粒径2mmを上回るように設定してもよい。
【0043】
また、細骨材の含有量については、補修部20を薄膜状に形成しやすくすることが可能な含有量に設定している。より具体的には、結合材に対する粒径0.6mm以下の細骨材の含有量を100重量%から200重量%程度に設定している。
【0044】
これにより、補修材30によって形成される補修部20を薄膜状に形成しやすくなるため、例えば補修材30を形成する際の補修材30の使用量を低減できる。
【0045】
ただし、これに限らず、例えば、結合材に対する粒径0.6mm以下の細骨材の含有量を100重量%程度未満に設定してもよく、あるいは、200重量%程度を上回るように設定してもよい。
【0046】
(構成-補修材-樹脂材)
樹脂材は、補修材30の基本構造体の他の一部であり、補修材30のドライアウト(補修材30の硬化不良)を抑制するためのものである。
【0047】
この樹脂材の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では以下の通りに構成されている。
【0048】
すなわち、樹脂材の種別については、後述する試験結果に基づいて、アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、又はスチレンアクリル酸エステル共重合体を含んで構成されている。
【0049】
これにより、他の樹脂材に比べて、補修材30によって形成される補修部20の強度(具体的には、剥離強度、表面接着強度、耐動荷重性能、及び圧縮強度等)を確保しやすくなるため、補修部20の使用性を高めることが可能となる。
【0050】
ただし、これに限らず、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体の再乳化型粉末樹脂、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、又は塩化ビニルを含んで構成されてもよい。
【0051】
また、樹脂材の含有量については、後述する試験結果に基づいて、結合材に対する樹脂材の含有量を5重量%から20重量%程度に設定しており、より具体的には、10重量%程度に設定することが好ましい。
【0052】
これにより、他の含有量に比べて、補修材30によって形成される補修部20の強度を確保しやすくなるため、補修部20の使用性を高めることが可能となる。
【0053】
ただし、これに限らず、例えば、結合材に対する樹脂材の含有量を5重量%程度未満に設定してもよく、あるいは、20重量%程度を上回るように設定してもよい。
【0054】
(構成-補修材-水)
水は、補修材30の基本構造体の他の一部であり、補修材30のセルフレベリング機能(主に、補修材30の流動性)を担保するためのものであり、例えば公知の水(一例として、水道水、真水)等を用いて構成されている。
【0055】
また、補修材30に対する水の含水率の設定方法については任意であるが、実施の形態では、後述する試験結果に基づいて、10.7重量%から16.7重量%程度に設定しており、具体的には、14.5重量%程度に設定することが好ましい。
【0056】
これにより、補修材30の流動性を確保しながら、補修材30の収縮量を低減し、且つ補修材30によって形成される補修部の強度(具体的には、剥離強度、表面接着強度、耐動荷重性能、及び圧縮強度等)を高めることができ、補修材30の使用性を高めることが可能となる。
【0057】
(構成-補修材-結合材)
結合材は、補修材30の基本構造体の他の一部であり、細骨材、樹脂材、及び水を結合させるためのものである。この結合材は、例えば公知の結合材料等を用いて構成されており、具体的には、ポルトランドセメント、アルミナセメント、石膏、高炉スラグ微粉末、及び膨張材を含んで構成されている。ただし、これに限らず、これら以外の材料(一例として、カルシウムアルミネート類、カルシウムアルミノフェライト類、カルシウムシリケート類、又は/及び鉱物等)をさらに含んで構成されてもよい。
【0058】
また、結合材を構成する各種の材料の含有量の設定方法については任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。
【0059】
すなわち、補修材30のセルフレベリング機能を確保しやすくする観点から、結合材に対するポルトランドセメントの含有量については、40重量%から60重量%程度に設定している。また、結合材に対するアルミナセメントの含有量については、10重量%から20重量%程度に設定している。また、結合材に対する石膏の含有量については、1重量%から10重量%程度に設定している。また、結合材に対する高炉スラグ微粉末の含有量については、10重量%から20重量%程度に設定している。また、結合材に対する膨張材の含有量については、1重量%から10重量%程度に設定している。
【0060】
ただし、これに限らない。例えば、結合材に対するポルトランドセメントの含有量については、40重量%未満に(又は60重量%程度を上回るように)設定してもよい。また、結合材に対するアルミナセメントの含有量については、10重量%未満に(又は、20重量%程度を上回るように)設定してもよい。また、結合材に対する石膏の含有量については、1重量%未満に(又は、10重量%程度を上回るように)設定してもよい。また、結合材に対する高炉スラグ微粉末の含有量については、10重量%未満に(又は、20重量%程度を上回るように)設定してもよい。また、結合材に対する膨張材の含有量については、1重量%未満に(又は、10重量%程度を上回るように)設定してもよい。
【0061】
以上のような補修材30により、建設部材1(具体的には、床スラブ材)の欠損部10に所望の補修材30を形成しやすいことから、補修材30の使用性を高めることができる。
【0062】
(建設部材の補修方法)
次に、実施の形態に係る建設部材1の補修方法について説明する。
【0063】
実施の形態に係る建設部材1の補修方法は、補修材30を用いて建設部材1の欠損部10を補修するための方法であり、準備工程、第1形成工程、及び第2形成工程を含んでいる。
【0064】
なお、上記補修方法の前提として、建設部材1に欠損部10が既に形成されているものとして説明する。
【0065】
(建設部材の補修方法-準備工程)
最初に、準備工程について説明する。
【0066】
準備工程は、補修材30を建設部材1の欠損部10を補修する準備を行うための工程である。
【0067】
具体的には、まず、所定の工具(例えば、カップサンダー)等を用いて、建設部材1の欠損部10のうち、脆弱な部分を取り除く。次に、公知の洗浄剤等を用いて、建設部材1の欠損部10を洗浄する。そして、公知の下地処理剤又は/及び表面処理剤を建設部材1の欠損部10に塗布して乾燥させることを、少なくとも1回以上繰り返す(いわゆるプライマー処理を行う)。
【0068】
ただし、これに限らず、例えば、上記脆弱な部分を取り除くこと、上記建設部材1の欠損部10等を洗浄すること、又は上記下地処理剤等を塗布して乾燥させることのいずれか1つ又は2つを省略してもよい。
【0069】
(建設部材の補修方法-第1形成工程)
次に、第1形成工程について説明する。
【0070】
第1形成工程は、準備工程の後(又は準備工程の前)に、補修材30を形成する工程である。
【0071】
具体的には、まず、所定の容器に細骨材、樹脂材、水、及び結合材を投入する。より具体的には、水を投入した後に、細骨材、樹脂材、及び結合材が混合したものを徐々に投入する。そして、公知の混合器具(例えば、ハンドミキサー)で、容器に投入された細骨材、樹脂材、水、及び結合材を所定時間(例えば、3分程度等)練り混ぜることにより、補修材30を形成する。
【0072】
(建設部材の補修方法-第2形成工程)
次いで、第2形成工程について説明する。
【0073】
第2形成工程は、第1形成工程の後に、建設部材1の欠損部10に補修部20を形成する工程である。
【0074】
具体的には、第1形成工程が終了してから所定時間内(例えば、10分以内等)に、建設部材1の欠損部10に補修材30を所定の厚みで略平滑に塗り付ける。その後、上記補修材30が硬化するまで所定期間養生することにより、補修部20を形成する。
【0075】
以上のような補修方法により、建設部材1の欠損部10に補修部20を簡易に形成でき、欠損部10を簡易に補修することが可能となる。
【0076】
(試験結果)
続いて、本件出願人が行った各種の試験結果について説明する。ここでは、含水率確認試験、第1樹脂材種別確認試験、第2樹脂材種別確認試験、及び樹脂材含有量確認試験の試験結果について説明する。
【0077】
(試験結果-含水率確認試験-概要)
最初に、含水率確認試験の概要について説明する。
【0078】
含水率確認試験は、補修材30に対する水の含水率に応じた補修材30の性能を確認するための試験である。この含水率確認試験の詳細については、以下に示す剥離試験、表面接着強度試験、及び引っかき試験を実施した。
【0079】
(試験結果-含水率確認試験-概要-剥離試験)
最初に、剥離試験の試験方法については、公知の90°剥離試験(例えば、JIS A 5536:2015の試験方法)を参照して、以下の通りに実施した。
【0080】
すなわち、まず、平板状の下地材の上面に各補修材30を塗り付けて乾燥させる。次に、上記補修材30の上面に床シート材(床材)を接着剤で張り付けて乾燥させる。次いで、上記床シート材を所定サイズにカットする。その後、上記下地材を水平面に設置した状態で、公知の試験機を用いて上記床シート材を垂直方向に引き上げながら、その引き上げ時の荷重を剥離強度として計測すると共に、床材、下地材、又は/及び各補修材30の破断位置を特定する。
【0081】
(試験結果-含水率確認試験-概要-表面接着強度試験)
また、表面接着強度試験の試験方法については、公知の表面接着強度試験を参照して、以下の通りに実施した。
【0082】
すなわち、まず、平板状の下地材の上面に各補修材30を塗り付けて乾燥させる。次に、上記補修材30の上面に試験機のアタッチメントを接着剤で塗り付けて乾燥させる。次いで、上記接着剤と上記補修材30の縁の一部を切った後に、試験機の引き上げ部によって試験機のアタッチメントを上方に引き上げながら、その引き上げ時の荷重を表面接着強度として計測する。
【0083】
(試験結果-含水率確認試験-概要-引っかき試験)
また、引っかき試験の試験方法については、公知の引っかき試験を参照して、以下の通りに実施した。
【0084】
すなわち、まず、平板状の下地材の上面に各補修材30を塗り付けて乾燥させる。そして、上記下地材の上面を加圧力1kgの針で引っかき、その傷の幅(すなわち、引っかき幅)を公知の計測器(例えば、クラックスケール)で計測する。
【0085】
(試験結果-含水率確認試験-概要-補修材)
また、含水率確認試験で用いられた補修材30については、
図2に示すように、補修材A1から補修材A5に分けられる。なお、これら補修材A1から補修材A5は、実施の形態に係る補修材と同様に、細骨材、樹脂材、水、及び結合材を含んで構成された。
【0086】
このうち、補修材A1の構成の詳細については、補修材の膜厚=3mm、樹脂材の種別=アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、結合材に対する樹脂材の含有量=8.1重量%、補修材に対する水の含水率=6.5重量%に設定した。
【0087】
また、補修材A2の構成の詳細については、補修材の膜厚=3mm、樹脂材の種別=アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、結合材に対する樹脂材の含有量=10重量%、補修材に対する水の含水率=10.7重量%に設定した。
【0088】
また、補修材A3の構成の詳細については、補修材の膜厚=3mm、樹脂材の種別=アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、結合材に対する樹脂材の含有量=10重量%、補修材に対する水の含水率=13重量%に設定した。
【0089】
また、補修材A4の構成の詳細については、補修材の膜厚=3mm、樹脂材の種別=アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、結合材に対する樹脂材の含有量=10重量%、補修材に対する水の含水率=14.5重量%に設定した。
【0090】
また、補修材A5の構成の詳細については、補修材の膜厚=3mm、樹脂材の種別=アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、結合材に対する樹脂材の含有量=10重量%、補修材に対する水の含水率=16.7重量%に設定した。
【0091】
(試験結果-含水率確認試験-試験結果の詳細)
次いで、含水率確認試験の試験結果の詳細について説明する。
【0092】
図3に示すように、剥離試験の試験結果については、補修材A2から補修材A5の剥離強度が閾値(80N以上)を満たすことが確認されたものの、補修材A1の剥離強度が閾値を満たさないことが確認された。
【0093】
また、表面接着強度試験の試験結果については、補修材A1から補修材A5の表面接着強度が閾値(1.5N/mm2以上)を満たすことが確認された。
【0094】
また、引っかき試験の試験結果については、補修材A1から補修材A5の引っかき幅が0.4mm以下であることが確認された。
【0095】
以上のことから、補修材30に対する水の含水率を10.7重量%から16.7重量%程度に設定することの有効性が確認できた。また、含水率確認試験の試験結果及び補修部20の施工性の観点から、補修材A4が最適であったことから、上記含水率を14.5重量%に設定することが最適であることが確認できた。さらに、補修材A5の剥離強度(82.53N)が閾値の下限値に近似していることから、上記含水率の上限値が16.7重量%程度であることも確認できた。
【0096】
(試験結果-第1樹脂材種別確認試験-概要)
次に、第1樹脂材種別確認試験の概要について説明する。
【0097】
第1樹脂材種別確認試験は、樹脂材の種別に応じた補修材の性能を確認するための試験である。この第1樹脂材種別確認試験の詳細については、含水率確認試験と同様に、剥離試験、表面接着強度試験、及び引っかき試験を実施した。
【0098】
(試験結果-第1樹脂材種別確認試験-概要-補修材)
また、第1樹脂材種別確認試験で用いられた補修材については、
図4に示すように、補修材B1から補修材B3に分けられる。なお、これら補修材B1から補修材B3は、実施の形態に係る補修材と同様に、細骨材、樹脂材、水、及び結合材を含んで構成された。
【0099】
このうち、補修材B1の構成の詳細については、補修材の膜厚=3mm、樹脂材の種別=アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、結合材に対する樹脂材の含有量=10重量%、補修材に対する水の含水率=13重量%に設定した。
【0100】
また、補修材B2の構成の詳細については、補修材の膜厚=3mm、樹脂材の種別=スチレンアクリル酸エステル共重合体、結合材に対する樹脂材の含有量=10重量%、補修材に対する水の含水率=13重量%に設定した。
【0101】
また、補修材B3の構成の詳細については、補修材の膜厚=3mm、樹脂材の種別=酢酸ビニル/バーサチック酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、結合材に対する樹脂材の含有量=5重量%、補修材に対する水の含水率=13重量%に設定した。
【0102】
(試験結果-第1樹脂材種別確認試験-試験結果の詳細)
次いで、第1樹脂材種別確認試験の試験結果の詳細について説明する。
【0103】
図5に示すように、剥離試験の試験結果については、補修材B1及び補修材B2の剥離強度が閾値(80N以上)を満たすことが確認されると共に、ほぼ類似した剥離強度であることが確認された。一方で、補修材B3の剥離強度が閾値を満たさず、破壊位置が下地材と補修材B3との界面であることが確認された。この点については、補修材B3の樹脂材の含有量が補修材B1及び補修材B2の含有量よりも少なかったものの、後述する樹脂材含有量確認試験の補修材D2の剥離強度と補修材D3の剥離強度とが類似することを踏まえると、樹脂材の種別の違いが大きく影響したものと考えられる。
【0104】
また、表面接着強度試験の試験結果については、補修材B1から補修材B3の表面接着強度が閾値(1.5N/mm2以上)を満たすことが確認された。
【0105】
また、引っかき試験の試験結果については、補修材B1から補修材B3の引っかき幅が0.35mm以下であることが確認された。
【0106】
以上のことから、樹脂材をアクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、又はスチレンアクリル酸エステル共重合体で形成することの有効性が確認できた。
【0107】
(試験結果-第2樹脂材種別確認試験-概要)
次いで、第2樹脂材種別確認試験の概要について説明する。
【0108】
第2樹脂材種別確認試験は、第1樹脂材種別確認試験とは異なる試験であって、樹脂材の種別に応じた補修材の性能を確認するための試験である。この第2樹脂材種別確認試験の詳細については、公知のキャスター試験(JIS A 1454:2016の試験方法)を参照して、以下の通りに実施した。
【0109】
すなわち、まず、平板状の下地材の上面に各補修材を塗り付けて乾燥させた後に、各補修材の上面に対してビニル床シートを接着剤によって張り付ける。そして、所定の荷重(具体的には、2000N)を作用させるキャスターをビニル床シートの上面で所定サイクル(最大で1500サイクル)走行させた後、ビニル床シートにおける剥がれの有無、膨れの有無、及び浮きの有無等を確認する。
【0110】
(試験結果-第2樹脂材種別確認試験-概要-補修材)
また、第2樹脂材種別確認試験で用いられた補修材については、
図6に示すように、補修材C1及び補修材C2に分けられる。なお、これら補修材C1及び補修材C2は、実施の形態に係る補修材と同様に、細骨材、樹脂材、水、及び結合材を含んで構成された。
【0111】
このうち、補修材C1の構成の詳細については、補修材の膜厚=3mm、樹脂材の種別=アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、結合材に対する樹脂材の含有量=10重量%、補修材に対する水の含水率=14.5重量%に設定した。
【0112】
また、補修材C2の構成の詳細については、補修材の膜厚=3mm、樹脂材の種別=スチレンアクリル酸エステル共重合体、結合材に対する樹脂材の含有量=10重量%、補修材に対する水の含水率=14.5重量%に設定した。
【0113】
(試験結果-第2樹脂材種別確認試験-試験結果の詳細)
次いで、第2樹脂材種別確認試験の試験結果の詳細について説明する。
【0114】
図7に示すように、補修材C1及び補修材C2の各々の上面に張り付けられたビニル床シートには、浮きが生じている部分が3箇所から5箇所程度確認されたものの、剥がれや膨れが生じておらず、床シートが破壊しており、補修材C1及び補修材C2自体は健全であった。よって、補修材C1及び補修材C2が高い(良好な)耐動荷重性能及び圧縮強度を有することが確認された。
【0115】
以上のことから、樹脂材をアクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、又はスチレンアクリル酸エステル共重合体にすることの有効性が確認できた。
【0116】
(試験結果-樹脂材含有量確認試験-概要)
続いて、樹脂材含有量確認試験の概要について説明する。
【0117】
樹脂材含有量確認試験は、結合材に対する樹脂材の含有量に応じた補修材の性能を確認するための試験である。この樹脂材含有量確認試験の詳細については、含水率確認試験と同様に、剥離試験、表面接着強度試験、及び引っかき試験を実施した。
【0118】
(試験結果-樹脂材含有量確認試験-概要-補修材)
また、樹脂材含有量確認試験で用いられた補修材については、
図8に示すように、補修材D1から補修材D4に分けられる。なお、これら補修材D1から補修材D4は、実施の形態に係る補修材と同様に、細骨材、樹脂材、水、及び結合材を含んで構成された。
【0119】
このうち、補修材D1の構成の詳細については、補修材の膜厚=3mm、樹脂材の種別=アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、結合材に対する樹脂材の含有量=3.5重量%、補修材に対する水の含水率=13.8重量%に設定した。
【0120】
また、補修材D2の構成の詳細については、補修材の膜厚=3mm、樹脂材の種別=アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、結合材に対する樹脂材の含有量=5重量%、補修材に対する水の含水率=14.5重量%に設定した。
【0121】
また、補修材D3の構成の詳細については、補修材の膜厚=3mm、樹脂材の種別=アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、結合材に対する樹脂材の含有量=10重量%、補修材に対する水の含水率=14.5重量%に設定した。
【0122】
また、補修材D4の構成の詳細については、補修材の膜厚=3mm、樹脂材の種別=アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、結合材に対する樹脂材の含有量=20重量%、補修材に対する水の含水率=14.5重量%に設定した。
【0123】
(試験結果-樹脂材含有量確認試験-試験結果の詳細)
次いで、樹脂材含有量確認試験の試験結果の詳細について説明する。
【0124】
図9に示すように、剥離試験の試験結果については、補修材D2から補修材D4の剥離強度が閾値(80N以上)を満たすことが確認されたた。また、補修材D2及び補修材D4の破壊位置が下地材と補修材D2(又は補修材D4)との界面であることが確認された。一方で、補修材D1の剥離強度が閾値を満たさないことが確認された。
【0125】
また、表面接着強度試験の試験結果については、補修材D1から補修材D4の表面接着強度が閾値(1.5N/mm2以上)を満たすことが確認された。
【0126】
また、引っかき試験の試験結果については、補修材D1の引っかき幅が0.3mmであることが確認されたものの、補修材D2から補修材D4の引っかき幅が0.3mmを上回ることが確認された。
【0127】
以上のことから、結合材に対する樹脂材の含有量を5重量%から20重量%程度に設定することの有効性が確認できた。また、破壊位置の観点から、補修材D3を用いたことが最適であったことから、上記含有量を10重量%に設定することが最適であることが確認できた。さらに、補修材D4の表面接着強度(1.54N/mm2)が閾値に近似していることから、上記含有量の上限値が20重量%程度であることも確認できた。
【0128】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、細骨材が、比較的吸水性の低い低吸水性細骨材を含み、補修材30に対する水の含水率を10.7重量%から16.7重量%程度としたので、補修材30の流動性を確保しながら、補修材30の収縮量を低減し、且つ補修材30によって形成される補修部の強度(具体的には、剥離強度、表面接着強度、耐動荷重性能、及び圧縮強度等)を高めることができ、補修材30の使用性を高めることが可能となる。
【0129】
また、低吸水性細骨材が、川砂、山砂、珪砂、石灰石、又は/及び高炉スラグを含むので、低吸水性細骨材を簡易に構成でき、低吸水性細骨材の製造性を高めることが可能となる。
【0130】
また、結合材に対する粒径0.6mm以下の細骨材の含有量を、100重量%から200重量%程度としたので、補修材30によって形成される補修部20を薄膜状に形成しやすくなるため、例えば補修材30を形成する際の補修材30の使用量を低減できる。
【0131】
また、樹脂材が、アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、又はスチレンアクリル酸エステル共重合体を含むので、他の樹脂材に比べて、補修材30によって形成される補修部20の強度を確保しやすくなるため、補修部20の使用性を高めることが可能となる。
【0132】
また、結合材に対する樹脂材の含有量を、5重量%から20重量%程度としたので、他の含有量に比べて、補修材30によって形成される補修部20の強度を確保しやすくなるため、補修部20の使用性を高めることが可能となる。
【0133】
また、建設部材1が、床スラブ材を含むので、床スラブ材の欠損部10に所望の補修材30を形成しやすいことから、補修材30の使用性を一層高めることができる。
【0134】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0135】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0136】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0137】
(建設部材について)
実施の形態では、建設部材1が、床スラブ材であると説明したが、これに限らない。例えば、床用タイル材、壁用タイル材、又はコンクリート製の壁材であってもよい。
【0138】
(細骨材について)
実施の形態では、細骨材が、第2細骨材を備えていると説明したが、これに限らず、例えば、第2細骨材を省略してもよい。
【0139】
(結合材について)
実施の形態では、結合材が、ポルトランドセメント、アルミナセメント、石膏、高炉スラグ微粉末、及び膨張材を含んで構成されていると説明したが、これに限らず、例えば、ポルトランドセメント、アルミナセメント、石膏、高炉スラグ微粉末、又は膨張材のいずれかを省略してもよい。
【0140】
(建設部材の補修方法について)
実施の形態では、建設部材1の補修方法が、準備工程及び第1形成工程を含んでいると説明したが、これに限らない。例えば、建設部材1の欠損部10に脆弱な部分がなく、欠損部10が清潔であり、且つ欠損部10のプライマー処理を必要としない場合には、準備工程を省略してもよい。また、補修材30が所定方法で入手できる場合には、第1形成工程を省略してもよい。
【0141】
(付記)
付記1の補修材は、建設部材を補修するための補修材であって、細骨材と、樹脂材と、水と、前記細骨材、前記樹脂材、及び前記水を結合させるための結合材と、を含み、前記細骨材は、比較的吸水性の低い低吸水性細骨材を含み、当該補修材に対する前記水の含水率を10.7重量%から16.7重量%程度とした。
【0142】
付記2の補修材は、付記1に記載の補修材において、前記低吸水性細骨材は、川砂、山砂、珪砂、石灰石、又は/及び高炉スラグを含む。
【0143】
付記3の補修材は、付記1又は2に記載の補修材において、前記結合材に対する粒径0.6mm以下の細骨材の含有量を、100重量%から200重量%程度とした。
【0144】
付記4の補修材は、付記1又は2に記載の補修材において、前記樹脂材は、アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、又はスチレンアクリル酸エステル共重合体を含む。
【0145】
付記5の補修材は、付記1又は2に記載の補修材において、前記結合材に対する前記樹脂材の含有量を、5重量%から20重量%程度とした。
【0146】
付記6の補修材は、付記1又は2に記載の補修材において、前記建設部材は、床スラブ材、又は/及び床用タイル材を含む。
【0147】
(付記の効果)
付記1に記載の補修材によれば、細骨材が、比較的吸水性の低い低吸水性細骨材を含み、補修材に対する水の含水率を10.7重量%から16.7重量%程度としたので、補修材の流動性を確保しながら、補修材の収縮量を低減し、且つ補修材によって形成される補修部の強度(具体的には、剥離強度、表面接着強度、耐動荷重性能、及び圧縮強度等)を高めることができ、補修材の使用性を高めることが可能となる。
【0148】
付記2に記載の補修材によれば、低吸水性細骨材が、川砂、山砂、珪砂、石灰石、又は/及び高炉スラグを含むので、低吸水性細骨材を簡易に構成でき、低吸水性細骨材の製造性を高めることが可能となる。
【0149】
付記3に記載の補修材によれば、結合材に対する粒径0.6mm以下の細骨材の含有量を、100重量%から200重量%程度としたので、補修材によって形成される補修部を薄膜状に形成しやすくなるため、例えば補修材を形成する際の補修材の使用量を低減できる。
【0150】
付記4に記載の補修材によれば、樹脂材が、アクリル酸エステル・メタアクリル酸エステル共重合体、又はスチレンアクリル酸エステル共重合体を含むので、他の樹脂材に比べて、補修材によって形成される補修部の強度を確保しやすくなるため、当該補修部の使用性を高めることが可能となる。
【0151】
付記5に記載の補修材によれば、結合材に対する樹脂材の含有量を、5重量%から20重量%程度としたので、他の含有量に比べて、補修材によって形成される補修部の強度を確保しやすくなるため、当該補修部の使用性を高めることが可能となる。
【0152】
付記6に記載の補修材によれば、建設部材が、床スラブ材、又は/及び床用タイル材を含むので、床スラブ材、又は/及び床用タイル材の欠損部に所望の補修材を形成しやすいことから、補修材の使用性を一層高めることができる。
【符号の説明】
【0153】
1 建設部材
10 欠損部
20 補修部
30 補修材