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特開2023-155607車両ドア制御装置及び車両ドア開閉装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155607
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】車両ドア制御装置及び車両ドア開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/54 20060101AFI20231016BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20231016BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20231016BHJP
   E05F 15/643 20150101ALN20231016BHJP
【FI】
E05F11/54 A
B60J5/06 A
B60J5/04 C
E05F15/643
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065032
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亨基
(72)【発明者】
【氏名】岡部 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】原田 丈晴
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA03
2E052DB03
2E052EA15
2E052EB01
2E052EC01
2E052GB12
2E052GC02
2E052GC06
2E052GD07
(57)【要約】
【課題】車両ドアの開閉速度を高めることができる車両ドア制御装置及び車両ドア開閉装置を提供する。
【解決手段】ドア制御装置200は、サンギヤ、リングギヤ及びキャリアを有する遊星歯車機構170と、サンギヤを駆動する第1電気モータ111と、リングギヤを駆動する第2電気モータ112と、キャリアから伝達される動力に基づきスライドドアを開閉する開閉機構と、を備えるドア駆動部100に適用される。ドア制御装置200は、開閉速度を第1速度とする第1モード又は開閉速度を第1速度よりも高速の第2速度とする第2モードで、スライドドアを開閉作動させる。第1モードでは、第1電気モータ111のみが駆動される。第2モードでは、第1電気モータ111及び第2電気モータ112の双方が駆動され、第1モードよりも第2電気モータ112の回転速度が増速される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンギヤ、リングギヤ及びキャリアの3つの回転要素を有する遊星歯車機構と、3つの前記回転要素のうちの1つを駆動する第1電気モータと、残りの2つの前記回転要素のうちの1つを駆動する第2電気モータと、最後の1つの前記回転要素から伝達される動力に基づき車両ドアを開閉する開閉機構と、を備えるドア駆動部に適用されるドア制御装置であって、
前記第1電気モータ及び前記第2電気モータを制御することにより、前記車両ドアの開閉速度を第1速度とする第1モード又は前記車両ドアの開閉速度を前記第1速度よりも高速の第2速度とする第2モードで、前記車両ドアを開閉作動させるドア制御部を備え、
前記第1モードでは、前記第1電気モータ及び前記第2電気モータのうち少なくとも前記第1電気モータが駆動され、
前記第2モードでは、前記第1電気モータ及び前記第2電気モータの双方が駆動され、前記第1モードよりも前記第2電気モータの回転速度が増速される
車両ドア制御装置。
【請求項2】
前記第1モードでは、前記第2電気モータを停止させた状態で前記第1電気モータが駆動される
請求項1に記載の車両ドア制御装置。
【請求項3】
前記ドア制御部は、前記車両ドアの開閉作動を前記第1モードで開始した後に前記第2モードに切り換え、前記車両ドアの開閉作動を終了する前に前記第2モードから前記第1モードに切り替える
請求項1又は請求項2に記載の車両ドア制御装置。
【請求項4】
前記ドア制御部は、前記車両ドアの開閉速度が判定速度未満である場合、前記第1モードから前記第2モードへの切り替えを制限する
請求項3に記載の車両ドア制御装置。
【請求項5】
前記ドア制御部は、前記第1モード及び前記第2モードの一方から他方への切り替え時において、前記第2電気モータの回転速度を次第に変化させる
請求項3に記載の車両ドア制御装置。
【請求項6】
前記ドア駆動部は、前記第1電気モータの回転量を検出する第1センサと、前記第2電気モータの回転量を検出する第2センサと、を有するものであり、
前記第1センサ及び前記第2センサの検出信号に基づいて、前記車両ドアの位置を取得する位置取得部を備え、
前記ドア制御部は、前記車両ドアの位置に基づいて、前記第1モード及び前記第2モードを切り換える
請求項3に記載の車両ドア制御装置。
【請求項7】
サンギヤ、リングギヤ及びキャリアの3つの回転要素を有する遊星歯車機構と、3つの前記回転要素のうちの1つを駆動する第1電気モータと、残りの2つの前記回転要素のうちの1つを駆動する第2電気モータと、最後の1つの前記回転要素から伝達される動力に基づき車両ドアを開閉する開閉機構と、を有するドア駆動部と、
前記第1電気モータ及び前記第2電気モータを制御することにより、前記車両ドアの開閉速度を第1速度とする第1モード又は前記車両ドアの開閉速度を前記第1速度よりも高速の第2速度とする第2モードで、前記車両ドアを開閉作動させるドア制御部と、を備え、
前記第2電気モータの駆動対象は、前記リングギヤであり、
前記ドア駆動部は、前記第2電気モータの動力を前記リングギヤに伝達するウォームを有し、
前記リングギヤは、前記キャリアに回転可能に支持される遊星歯車と噛み合う内歯と、前記ウォームに噛み合う外歯と、を含んで構成され、
前記ドア制御部は、前記第1モードにおいて、前記第2電気モータを停止させた状態で前記第1電気モータを駆動し、前記第2モードにおいて、前記第1電気モータ及び前記第2電気モータの双方を駆動する
車両ドア開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドア制御装置及び車両ドア開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドア開口部を有する車体と、ドア開口部を開閉するスライドドアと、スライドドアを開閉する開閉装置と、を備える車両が開示されている。開閉装置は、ドア開口部を全閉する全閉位置とドア開口部を全開する全開位置との間でスライドドアを開閉作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-220795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような車両では、ユーザに危害感を与えない程度にスライドドアの開閉速度を高めることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する車両ドア制御装置は、サンギヤ、リングギヤ及びキャリアの3つの回転要素を有する遊星歯車機構と、3つの前記回転要素のうちの1つを駆動する第1電気モータと、残りの2つの前記回転要素のうちの1つを駆動する第2電気モータと、最後の1つの前記回転要素から伝達される動力に基づき車両ドアを開閉する開閉機構と、を備えるドア駆動部に適用されるドア制御装置であって、前記第1電気モータ及び前記第2電気モータを制御することにより、前記車両ドアの開閉速度を第1速度とする第1モード又は前記車両ドアの開閉速度を前記第1速度よりも高速の第2速度とする第2モードで、前記車両ドアを開閉作動させるドア制御部を備え、前記第1モードでは、前記第1電気モータ及び前記第2電気モータのうち少なくとも前記第1電気モータが駆動され、前記第2モードでは、前記第1電気モータ及び前記第2電気モータの双方が駆動され、前記第1モードよりも前記第2電気モータの回転速度が増速される。
【0006】
車両ドア制御装置は、第1モードにおいて、遊星歯車機構の3つの回転要素のうちの少なくとも1つを第1電気モータで駆動することにより、低速の第1速度で車両ドアを開閉作動できる。また、車両ドア制御装置は、第2モードにおいて、遊星歯車機構の2つの回転要素をそれぞれ第1電気モータ及び第2電気モータで駆動することにより、高速の第2速度で車両ドアを開閉作動できる。そして、車両ドア制御装置は、車両ドアを低速で開閉作動させたい場合には第1モードを選択でき、車両ドアを高速で開閉作動させたい場合には第2モードを選択できる。こうして、車両ドア制御装置は、必要に応じて車両ドアの開閉速度を高めることができる。
【0007】
上記車両ドア制御装置において、前記第1モードでは、前記第2電気モータを停止させた状態で前記第1電気モータが駆動されることが好ましい。
第1モードにおいて、第1電気モータ及び第2電気モータを駆動させると、ドア駆動部の負荷が大きくなる場合に、第1電気モータ及び第2電気モータに流れる電流の合計値が大きくなりやすい。この点、車両ドア制御装置は、第1モードにおいて、第2電気モータを駆動しない。このため、車両ドア制御装置は、第1モードにおいて、第1電気モータ及び第2電気モータに流れる電流の合計値が大きくなることを抑制できる。
【0008】
上記車両ドア制御装置において、前記ドア制御部は、前記車両ドアの開閉作動を前記第1モードで開始した後に前記第2モードに切り換え、前記車両ドアの開閉作動を終了する前に前記第2モードから前記第1モードに切り替えることが好ましい。
【0009】
車両ドア制御装置は、車両ドアの開閉作動を開始する場合、言い換えれば、ドア駆動部の負荷が大きい場合には、車両ドアの作動モードを第1モードとする。また、車両ドア制御装置は、車両ドアの開閉作動を終了する場合には、車両ドアが急停止しないように、車両ドアの作動モードを第1モードとする。一方、車両ドア制御装置は、その他の場合には、車両ドアの作動モードを第2モードとする。こうして、車両ドア制御装置は、車両ドアの開閉速度を適切に選択できる。
【0010】
上記車両ドア制御装置において、前記ドア制御部は、前記車両ドアの開閉速度が判定速度未満である場合、前記第1モードから前記第2モードへの切り替えを制限することが好ましい。
【0011】
車両が坂道に停車している状況などには、車両ドアの開閉作動が開始されてから暫く時間が経過した後も、ドア駆動部の負荷が小さくならない場合がある。このような場合において、第1モードが第2モードに切り換わると、第1電気モータ及び第2電気モータに流れる電流の合計値が大きくなるおそれがある。この点、上記構成の車両ドア制御装置は、車両ドアの開閉速度が判定速度未満の場合、言い換えれば、ドア駆動部の負荷が小さくならない場合には、第1モードから第2モードへの切り替えを制限する。したがって、車両ドア制御装置は、第2モードに切り替えた後に、第1電気モータ及び第2電気モータに流れる電流の合計値が大きくなることを抑制できる。
【0012】
上記車両ドア制御装置において、前記ドア制御部は、前記第1モード及び前記第2モードの一方から他方への切り替え時において、前記第2電気モータの回転速度を次第に変化させることが好ましい。
【0013】
車両ドア制御装置は、車両ドアの作動モードの切り替え時において、車両ドアの開閉速度が急変することを抑制できる。
上記車両ドア制御装置において、前記ドア駆動部は、前記第1電気モータの回転量を検出する第1センサと、前記第2電気モータの回転量を検出する第2センサと、を有するものであり、前記第1センサ及び前記第2センサの検出信号に基づいて、前記車両ドアの位置を取得する位置取得部を備え、前記ドア制御部は、前記車両ドアの位置に基づいて、前記第1モード及び前記第2モードを切り換えることが好ましい。
【0014】
車両ドア制御装置は、第1センサ及び第2センサの検出信号に基づいて、車両ドアの位置を取得できる。そして、車両ドア制御装置は、車両ドアの位置に基づいて、車両ドアの作動モードを切り替えるタイミングを適切に把握できる。
【0015】
上記課題を解決する車両ドア開閉装置は、サンギヤ、リングギヤ及びキャリアの3つの回転要素を有する遊星歯車機構と、3つの前記回転要素のうちの1つを駆動する第1電気モータと、残りの2つの前記回転要素のうちの1つを駆動する第2電気モータと、最後の1つの前記回転要素から伝達される動力に基づき車両ドアを開閉する開閉機構と、を有するドア駆動部と、前記第1電気モータ及び前記第2電気モータを制御することにより、前記車両ドアの開閉速度を第1速度とする第1モード又は前記車両ドアの開閉速度を前記第1速度よりも高速の第2速度とする第2モードで、前記車両ドアを開閉作動させるドア制御部と、を備え、前記第2電気モータの駆動対象は、前記リングギヤであり、前記ドア駆動部は、前記第2電気モータの動力を前記リングギヤに伝達するウォームを有し、前記リングギヤは、前記キャリアに回転可能に支持される遊星歯車と噛み合う内歯と、前記ウォームに噛み合う外歯と、を含んで構成され、前記ドア制御部は、前記第1モードにおいて、前記第2電気モータを停止させた状態で前記第1電気モータを駆動し、前記第2モードにおいて、前記第1電気モータ及び前記第2電気モータの双方を駆動する。
【0016】
車両ドア開閉装置は、上述した車両ドア制御装置と同等の作用効果を得ることができる。また、車両ドア開閉装置は、第1モードで車両ドアを開閉作動する場合、リングギヤを停止させておく必要がある。この点、車両ドア開閉装置は、ウォームとリングギヤの外歯とで構成されるウォームギヤのセルフロック性により、新たな機構を追加しなくても、リングギヤの回転を停止しやすくなる。
【発明の効果】
【0017】
車両ドア制御装置は、車両ドアの開閉速度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、車両の概略図である。
図2図2は、ラッチがアンラッチ位置に位置するときのドアロック装置の概略図である。
図3図3は、ラッチがフルラッチ位置に位置するときのドアロック装置の概略図である。
図4図4は、ドア開閉装置の概略図である。
図5図5は、ドア開閉装置の伝達機構の分解斜視図である。
図6図6は、伝達機構の端面図である。
図7図7は、伝達機構の遊星歯車機構の断面図である。
図8図8は、遊星歯車機構の共線図である。
図9図9は、スライドドアの位置とスライドドアの開閉速度との関係を示すマップである。
図10図10は、スライドドアを開閉作動するために、ドア制御装置が実施する処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、車両ドア制御装置及び車両ドア開閉装置(以下、「ドア制御装置」及び「ドア開閉装置」という。)を備える車両の一実施形態について図面を参照して説明する。一部の図面では、説明理解の容易のために、樹脂部品に金属材料を示すハッチングを使用したり、断面に付すべきハッチングを省略したりしている。
【0020】
<本実施形態の構成>
図1に示すように、車両10は、車体20と、スライドドア30と、ドア開閉装置50と、を備える。
【0021】
<車体20>
図1に示すように、車体20は、側面に開口するドア開口部21と、ドア開口部21よりも上方に配置されるアッパレール22と、ドア開口部21の後方に配置されるセンターレール23と、ドア開口部21の下方に配置されるロアレール24と、を有する。また、車体20は、ドア開口部21の前端部に配置されるストライカ25を有する。アッパレール22、センターレール23及びロアレール24は、前後方向を長手方向とする長尺部材である。アッパレール22は、センターレール23及びロアレール24よりも上方に位置している。センターレール23は、上下方向において、アッパレール22及びロアレール24の間に位置している。ストライカ25は、ドア開口部21の前端部であって上下方向における中間部に位置している。ストライカ25は、例えば、U字状をなしている。ストライカ25は、スライドドア30との連結部である。
【0022】
<スライドドア30>
スライドドア30は、ドア本体31と、ドア本体31の前部上方に配置されるアッパヒンジユニット32と、ドア本体31の後部に配置されるセンターヒンジユニット33と、ドア本体31の前部下方に配置されるロアヒンジユニット34と、を有する。また、スライドドア30は、ストライカ25に係止するドアロック装置40を有する。スライドドア30は、「車両ドア」に相当している。
【0023】
アッパヒンジユニット32は、アッパレール22に沿って移動できるようにアッパレール22に係合している。センターヒンジユニット33は、センターレール23に沿って移動できるようにセンターレール23に係合している。ロアヒンジユニット34は、ロアレール24に沿って移動できるようにロアレール24に係合している。アッパヒンジユニット32、センターヒンジユニット33及びロアヒンジユニット34が、それぞれアッパレール22、センターレール23及びロアレール24に対して移動することにより、スライドドア30が車体20に対して移動する。つまり、スライドドア30は、ドア開口部21を全閉する全閉位置とドア開口部21を全開する全開位置との間をスライドする。
【0024】
図1に示すように、ドアロック装置40は、ドア本体31の前端部であって上下方向における中間部に配置されている。つまり、図1に示すように、スライドドア30が全閉位置よりも後方に位置している場合には、ドアロック装置40はストライカ25と前後方向に対向している。
【0025】
図2に示すように、ドアロック装置40は、ストライカ25に係止するラッチ41と、ラッチ41を回転可能に支持するラッチ支持軸42と、ラッチ41を付勢するラッチスプリング43と、を有する。また、ドアロック装置40は、ラッチ41に係止するポール44と、ポール44を回転可能に支持するポール支持軸45と、ポール44を付勢するポールスプリング46と、を有する。
【0026】
ラッチ41は、ラッチ支持軸42の軸線と交差する方向に延びる係合溝41aを有する。ラッチ41は、ストライカ25に係止するフルラッチ位置及びストライカ25に係止しないアンラッチ位置との間を回転可能となっている。ラッチスプリング43は、ラッチ41をフルラッチ位置からアンラッチ位置に向けて付勢している。ポール44は、フルラッチ位置に位置するラッチ41に係止する係止位置及びフルラッチ位置に位置するラッチ41から退避する退避位置の間を回転可能となっている。ポールスプリング46は、ポール44を退避位置から係止位置に向けて付勢している。
【0027】
スライドドア30が全閉位置に向かって閉作動する場合には、図2に白抜矢印で示すように、ドアロック装置40がストライカ25に向かって接近する。ドアロック装置40がストライカ25に接近する場合、ラッチ41の係合溝41aはストライカ25に向かって開口している。その後、スライドドア30が全閉位置の付近まで閉作動すると、ストライカ25がラッチ41の係合溝41aに進入し始める。そして、スライドドア30が全閉位置に向かって閉作動するにつれて、ストライカ25がラッチ41の係合溝41aの底部に向かって進む。このとき、ラッチ41は、ラッチスプリング43の付勢力に抗して、フルラッチ位置に向けて回転する。このように、図2に白抜矢印で示す方向に、ラッチ41をストライカ25に押し付けることにより、ラッチ41がアンラッチ位置からフルラッチ位置に向けて回転する。
【0028】
図3に示すように、ストライカ25がラッチ41の係合溝41aの底部まで進むと、ラッチ41はフルラッチ位置まで回転する。ラッチ41がフルラッチ位置まで回転すると、ポール44がラッチ41に係止する係止位置に配置される。その結果、ラッチ41がフルラッチ位置からアンラッチ位置に向けて回転できなくなる。こうして、車体20のストライカ25とスライドドア30のドアロック装置40とが連結される。つまり、スライドドア30は、全閉位置において車体20に拘束される。
【0029】
なお、スライドドア30を全閉位置から開作動させる場合には、不図示のアクチュエータによって、ポール44が退避位置まで回転される。つまり、ポール44がラッチ41に係止しなくなる位置まで回転される。すると、ラッチ41は、ラッチスプリング43の付勢力に従って、アンラッチ位置に向けて回転する。その結果、車体20のストライカ25とスライドドア30のドアロック装置40との連結が解消される。つまり、スライドドア30の車体20に対する拘束が解消される。
【0030】
<ドア開閉装置50>
図1及び図4に示すように、ドア開閉装置50は、スライドドア30を駆動するドア駆動部100と、ドア駆動部100を制御するドア制御装置200と、を備える。
【0031】
<ドア駆動部100>
ドア駆動部100は、ドア駆動部100の動力源に相当する第1電気モータ111及び第2電気モータ112と、スライドドア30を開閉する開閉機構120と、第1電気モータ111及び第2電気モータ112から開閉機構120に動力を伝達する伝達機構130と、を有する。
【0032】
図4に示すように、第1電気モータ111及び第2電気モータ112は、伝達機構130に動力を伝達する。第1電気モータ111は、第1電気モータ111の回転量を検出する第1センサSE1を含んで構成されている。第2電気モータ112は、第2電気モータ112の回転量を検出する第2センサSE2を含んで構成されている。第1センサSE1及び第2センサSE2は、例えば、ホールICである。第1センサSE1及び第2センサSE2は、回転量に応じた検出信号をドア制御装置200に出力する。
【0033】
図1に示すように、開閉機構120は、第1ケーブル121及び第2ケーブル122と、第1ケーブル121及び第2ケーブル122を巻き取るドラム123と、第1ケーブル121及び第2ケーブル122を案内する中継部124及び分岐部125と、を備える。
【0034】
ドラム123は、円柱状をなしている。ドラム123は第1ケーブル121及び第2ケーブル122を巻き取っているため、ドラム123からは第1ケーブル121及び第2ケーブル122が延びている。ドラム123は、伝達機構130に連結されている。そして、ドラム123は、伝達機構130を介して伝達される第1電気モータ111及び第2電気モータ112の動力に基づき回転する。
【0035】
中継部124は、ドア本体31のドアパネルなどに固定されている。中継部124は、ドラム123から延びる第1ケーブル121及び第2ケーブル122を分岐部125に向けて案内する。分岐部125は、センターヒンジユニット33に固定されている。分岐部125は、中継部124から揃って延びる第1ケーブル121及び第2ケーブル122を分岐させる。詳しくは、分岐部125は、中継部124から延びる第1ケーブル121をセンターレール23の後端部に向けて案内するとともに、中継部124から延びる第2ケーブル122をセンターレール23の前端部に向けて案内する。中継部124から延びる第1ケーブル121の端部は、センターレール23の後端部に固定されている。一方、中継部124から延びる第2ケーブル122の端部は、センターレール23の前端部に固定されている。
【0036】
ドラム123が第1回転方向に回転される場合、ドラム123は第1ケーブル121を巻き取るとともに第2ケーブル122を繰り出す。この場合、ドラム123が第1ケーブル121を牽引するため、センターヒンジユニット33及び分岐部125がセンターレール23の後端に向かって移動する。つまり、スライドドア30が全開位置に向かって後方に移動する。一方、ドラム123が第2回転方向に回転する場合、ドラム123は第2ケーブル122を巻き取るとともに第1ケーブル121を繰り出す。この場合、ドラム123が第2ケーブル122を牽引するため、センターヒンジユニット33及び分岐部125がセンターレール23の前端に向かって移動する。つまり、スライドドア30が全閉位置に向かって前方に移動する。
【0037】
図5図7に示すように、伝達機構130は、ハウジング140と、カバー150と、ウォーム160と、遊星歯車機構170と、複数の軸受181~186と、を備える。以降の説明では、伝達機構130において、遊星歯車機構170の回転要素の軸線が延びる方向を軸方向という。
【0038】
図5及び図6に示すように、ハウジング140は、底壁141と、周壁142と、固定壁143と、2つの支持壁144,145と、を有する。底壁141は、軸方向を板厚方向とする板状をなしている。底壁141は、軸方向から見たとき環状をなしている。周壁142は、円筒状をなしている。周壁142は、底壁141の外周縁から軸方向に延びている。周壁142には、周壁142の接線方向に延びる切り欠き146を有している。周壁142は、底壁141に近い位置で軸受181を支持している。2つの支持壁144,145は、周壁142の切り欠き146の両側で周壁142から延びている。2つの支持壁144,145の延びる方向は、切り欠き146の延びる方向及び軸方向の両方向と直交する方向となっている。2つの支持壁144,145は、切り欠き146の延びる方向を板厚方向とする板状をなしている。2つの支持壁144,145は、軸受182,183をそれぞれ支持している。固定壁143は、周壁142の端部から軸方向と直交する方向に延びている。固定壁143は、底壁141と同じく、軸方向を板厚方向とする板状をなしている。固定壁143は、軸方向から見たとき矩形状をなしている。ハウジング140は、底壁141と周壁142とに囲われる空間に遊星歯車機構170の構成部品を収容している。
【0039】
カバー150は、底壁151と、固定壁152と、を有する。底壁151は、軸方向を板厚方向とする板状をなしている。底壁151は、軸方向から見たとき環状をなしている。底壁151は、軸受184を支持している。固定壁152は、底壁151と同じく、軸方向を板厚方向とする板状をなしている。固定壁152は、軸方向から見たとき矩形状をなしている。
【0040】
ウォーム160は、ハウジング140の2つの支持壁144,145の間に配置されている。詳しくは、ウォーム160の軸方向における第1端は支持壁144の軸受182に支持され、ウォーム160の軸方向における第2端は支持壁145の軸受183に支持されている。こうして、ウォーム160は、ハウジング140に回転可能に支持されている。ウォーム160の軸方向は、伝達機構130の軸方向と直交している。
【0041】
図5図7に示すように、遊星歯車機構170は、サンギヤ171と、リングギヤ172と、キャリア173と、複数のプラネタリギヤ174と、支持軸175と、を有する。サンギヤ171、リングギヤ172及びキャリア173は、遊星歯車機構170の3つの回転要素に相当する。
【0042】
サンギヤ171は、外歯歯車である。サンギヤ171は、支持軸175に固定されている。このため、入力軸が回転する場合には、サンギヤ171は入力軸と一体に回転する。リングギヤ172は、外歯172a及び内歯172bを有する。つまり、リングギヤ172は、外歯歯車であるとともに内歯歯車である。キャリア173は、開閉機構120のドラム123に連結されている。キャリア173は、複数のプラネタリギヤ174を回転可能に支持している。3つのプラネタリギヤ174は外歯歯車である。本実施形態において、サンギヤ171の歯数は「8」であり、リングギヤ172の内歯172bの歯数は「70」であり、プラネタリギヤ174の歯数は「31」である。
【0043】
図6に示すように、リングギヤ172は、軸受181を介して、ハウジング140に支持されている。こうして、リングギヤ172は、ハウジング140に対して回転可能となっている。また、リングギヤ172の外歯172aは、ウォーム160と噛み合っている。本実施形態では、ウォーム160とリングギヤ172の外歯172aとでウォームギヤ機構が構成されている。ウォームギヤ機構は、セルフロック性を有している。つまり、ウォームギヤ機構は、ウォーム160がリングギヤ172を駆動できても、リングギヤ172がウォーム160を駆動できないようになっている。キャリア173は、軸受185を介して、リングギヤ172に支持されている。こうして、キャリア173は、リングギヤ172に対して回転可能となっている。また、キャリア173に支持される複数のプラネタリギヤ174は、リングギヤ172の内歯172bと噛み合っている。支持軸175は、軸受184,186を介して、キャリア173とカバー150とに支持されている。こうして、支持軸175は、キャリア173とカバー150とに対して回転可能となっている。また、支持軸175に支持されるサンギヤ171は、複数のプラネタリギヤ174に噛み合っている。
【0044】
図4に示すように、サンギヤ171は、支持軸175を介して第1電気モータ111に連結されているため、第2電気モータ112が駆動される場合にはサンギヤ171が回転する。ウォーム160は、第2電気モータ112に連結されているため、第2電気モータ112が駆動される場合にはウォーム160が回転する。そして、ウォーム160が回転する場合には、ウォーム160と噛み合うリングギヤ172が回転する。さらに、サンギヤ171及びリングギヤ172のうち少なくともサンギヤ171が回転する場合には、複数のプラネタリギヤ174が回転することにより、キャリア173が回転する。
【0045】
図8に示すように、遊星歯車機構170において、サンギヤ171の回転速度、リングギヤ172の回転速度及びキャリア173の回転速度は互いに相関している。図8に示す共線図において、サンギヤ171の回転速度、リングギヤ172の回転速度及びキャリア173の回転速度は、直線で結べる関係にある。サンギヤ171の回転速度が速いほどキャリア173の回転速度が速くなり、リングギヤ172の回転速度が速いほどキャリア173の回転速度が速くなる。図8に実線で示すように、サンギヤ171の回転速度を速度Vsとし、リングギヤ172の回転速度を速度Vr1とする状態では、キャリア173の回転速度は速度Vc1となる。ここで、リングギヤ172の速度Vr1は「0」である。図8に一点鎖線で示すように、リングギヤ172の回転速度を速度Vr2とすると、キャリア173の回転速度は速度Vc1よりも高速の速度Vc2となる。こうして、遊星歯車機構170において、サンギヤ171の回転速度を一定に維持した状態で、リングギヤ172の回転速度を可変すると、キャリア173の回転速度が変化する。つまり、開閉機構120のドラム123の回転速度が変化し、さらには、スライドドア30の開閉速度Vdが変化する。
【0046】
<ドア制御装置200>
図4に示すように、ドア制御装置200は、スライドドア30の現在位置を取得する位置取得部201と、ドア駆動部100を制御するドア制御部202と、を有する。
【0047】
位置取得部201は、第1センサSE1及び第2センサSE2の検出信号に基づいてスライドドア30の現在位置を取得する。ここで、スライドドア30の作動量はドラム123の回転量と相関し、ドラム123の回転量はキャリア173の回転量と相関し、キャリア173の回転量はサンギヤ171の回転量及びリングギヤ172の回転量と相関している。さらに、サンギヤ171の回転量は第1電気モータ111の回転量と等しく、リングギヤ172の回転量はウォーム160の回転量、すなわち、第2電気モータ112の回転量と相関している。したがって、位置取得部201は、第1電気モータ111の回転量及び第2電気モータ112の回転量と伝達機構130の減速比とに基づいて、スライドドア30の作動量を演算できる。また、位置取得部201は、スライドドア30が全閉位置から開作動される場合には、全閉位置にスライドドア30の開方向における作動量を加算することでスライドドア30の現在位置を取得する。一方、位置取得部201は、スライドドア30が全開位置から閉作動される場合には、全開位置にスライドドア30の閉方向における作動量を加算することでスライドドア30の現在位置を取得する。
【0048】
ドア制御部202は、第1電気モータ111及び第2電気モータ112を駆動することにより、スライドドア30を開閉作動させる。ドア制御部202は、スライドドア30を開閉作動させる場合、スライドドア30の開閉速度Vdを第1速度Vd1とする第1モード又はスライドドア30の開閉速度Vdを第1速度Vd1よりも高速の第2速度Vd2とする第2モードを選択する。
【0049】
第1モードは、第1電気モータ111及び第2電気モータ112のうち、第1電気モータ111だけを駆動するモードである。第1モードでは、第2電気モータ112が駆動されないため、ウォーム160によってリングギヤ172が回転不能にロックされている。つまり、第1モードにおいて、サンギヤ171の回転速度、リングギヤ172の回転速度及びキャリア173の回転速度は、図8に実線で示すようになる。一方、第2モードは、第1電気モータ111及び第2電気モータ112の双方を駆動するモードである。つまり、第2モードにおける第2電気モータ112の回転速度は、第1モードにおける第2電気モータ112の回転速度よりも増速される。第2モードでは、第1モードと異なり、リングギヤ172が回転される。つまり、第2モードにおいて、サンギヤ171の回転速度、リングギヤ172の回転速度及びキャリア173の回転速度は、図8に一点鎖線で示すようになる。本実施形態では、第1モード及び第2モードにおいて、第1電気モータ111の回転速度は変更されないものとする。
【0050】
スライドドア30を開閉作動させる場合、スライドドア30の位置に応じて、ドア駆動部100の負荷は変化する。例えば、停止しているスライドドア30を作動し始める場合には、開閉作動しているスライドドア30の作動を継続する場合よりも、ドア駆動部100の負荷が大きくなりやすい。言い換えれば、停止しているスライドドア30を動かし始める場合には、すでに動いているスライドドア30を動かす場合よりも、ドア駆動部100の負荷が大きくなりやすい。また、スライドドア30を閉作動させる場合、全閉位置の付近において、ラッチ41をアンラッチ位置からフルラッチ位置まで回転させる必要がある。この点で、全閉位置の近傍でスライドドア30を閉作動する場合には、ドア駆動部100の負荷が大きくなりやすい。そして、ドア駆動部100の負荷が大きい場合に、スライドドア30の作動モードを第2モードとすると、第1電気モータ111及び第2電気モータ112の負荷トルクがともに大きくなる。この点で、第1電気モータ111及び第2電気モータ112に流れる電流の合計値が大きくなる。その結果、例えば、ドア駆動部100に給電する車載バッテリーの充電率が短時間で大きく減少するおそれがある。
【0051】
そこで、本実施形態では、ドア制御部202は、ドア駆動部100の負荷が大きい場合には、スライドドア30の作動モードを第1モードとすることにより、第1電気モータ111及び第2電気モータ112に流れる電流の合計値が大きくなることを抑制する。一方、ドア制御部202は、ドア駆動部100の負荷が大きくない場合には、スライドドア30の作動モードを第2モードとすることにより、スライドドア30の開閉速度Vdを高くする。また、ドア制御部202は、スライドドア30を停止させる場合には、スライドドア30が急停止しないように、スライドドア30の作動モードを第1モードとする。以下、詳しく説明する。
【0052】
図9に示すように、ドア制御部202は、スライドドア30を全開位置P4から閉作動させる場合、第1モードでスライドドア30の閉作動を開始する。つまり、スライドドア30は、第1速度Vd1で閉作動される。スライドドア30の閉作動を開始する場合には、スライドドア30の開閉速度Vdが次第に増速されるように、第1電気モータ111の回転速度を次第に増速させることが好ましい。
【0053】
続いて、スライドドア30が全閉位置P1よりも全開位置P4に近い位置に設定される開側基準位置P3に到達すると、ドア制御部202は、スライドドア30の作動モードを第1モードから第2モードに切り換える。第2モードへの切り替え時において、ドア制御部202は、第1電気モータ111の回転速度を維持しつつ、第2電気モータ112の回転速度を次第に増速させる。第2モードへの切り替えが完了した後は、スライドドア30は、第2速度Vd2で閉作動される。
【0054】
その後、スライドドア30が全開位置P4よりも全閉位置P1に近い位置に設定される閉側基準位置P2に到達すると、ドア制御部202は、スライドドア30の作動モードを第2モードから第1モードに切り換える。第1モードへの切り替え時において、ドア制御部202は、第1電気モータ111の回転速度を変化させずに、第2電気モータ112の回転速度を次第に減速させる。ここで、ドア制御部202は、スライドドア30が閉側基準位置P2に到達したタイミングで第1モードへの切り替えが完了するべく、スライドドア30が閉側基準位置P2に到達する前に第1モードへの切り替えを開始することが好ましい。第1モードへの切り替えが完了した後は、スライドドア30は、第1速度Vd1で閉作動される。
【0055】
最後に、スライドドア30が全閉位置P1に到達すると、ドア制御部202は、スライドドア30の閉作動を終了する。スライドドア30の閉作動を終了する場合には、スライドドア30の開閉速度Vdが次第に減速されるように、第1電気モータ111の回転速度を次第に減速させることが好ましい。
【0056】
図9を参照して説明したスライドドア30の開閉制御は、全閉位置からスライドドア30の開作動を開始する場合についても、全開位置及び全閉位置の間の中途位置からスライドドア30の開閉作動を開始する場合についても概ね同様である。また、閉側基準位置及び開側基準位置は、車両10の設計時に適切な位置に設定されることが好ましい。
【0057】
ところで、車両10が傾いた路面に駐車している場合には、スライドドア30の自重と路面の傾きとに応じた力がスライドドア30に作用する。このため、車両10が傾いた路面に駐車している場合には、車両10が水平な路面に駐車している場合よりも、スライドドア30の開閉作動時にドア駆動部100の負荷が大きくなることがある。よって、この場合には、スライドドア30の閉作動時において、スライドドア30が開側基準位置に到達しても、スライドドア30の作動モードを第1モードから第2モードに変更しないことが好ましい。同様に、スライドドア30の開作動時において、スライドドア30が閉側基準位置に到達しても、スライドドア30の作動モードを第1モードから第2モードに変更しないことが好ましい。
【0058】
そこで、ドア制御部202は、スライドドア30の開閉作動を第1モードで開始する状況下において、第1電気モータ111の負荷が大きい場合には、第1モードから第2モードへの切り替えを制限する。言い換えれば、ドア制御部202は、スライドドア30の開閉速度Vdが順当に増速しない場合には、第1モードから第2モードへの切り替えを制限する。一方、ドア制御部202は、同状況下において、第1電気モータ111の負荷が大きくない場合、言い換えれば、スライドドア30の開閉速度Vdが順当に増速する場合には、第1モードから第2モードへの切り替えを許容する。
【0059】
次に、図10を参照して、スライドドア30を閉作動させるために、ドア制御装置200が実施する処理の流れについて説明する。本処理は、ユーザからスライドドア30の閉作動要求があった場合に実施される処理である。ユーザは、例えば、スライドドア30のドアハンドルを操作したり携帯機に設けられるスイッチを操作したりすることで、スライドドア30の閉作動要求を行う。スライドドア30を開作動させる場合の処理の流れは、スライドドア30を閉作動させる場合の処理の流れと同等であるため省略する。
【0060】
図10に示すように、ドア制御装置200は、ユーザからスライドドア30の閉作動要求がある場合、第1電気モータ111を駆動する(S11)。つまり、ドア制御装置200は、第1モードでスライドドア30の閉作動を開始する。続いて、ドア制御装置200は、スライドドア30が開側基準位置に到達したか否かを判定する(S12)。スライドドア30が開側基準位置に到達していない場合(S12:NO)、ドア制御装置200はステップS12に処理を移行する。一方、スライドドア30が開側基準位置に到達した場合(S12:YES)、ドア制御装置200は、スライドドア30の開閉速度Vdが判定速度Vdth以上か否かを判定する(S13)。ステップS13において、判定速度Vdthは、スライドドア30の開閉速度Vdが想定している開閉速度Vdまで増速したか否かを判定するための値である。つまり、スライドドア30の開閉速度Vdが判定速度Vdth未満である場合には、ドア駆動部100の負荷が大きいことに起因して、スライドドア30が順当に増速できていないことを示している。判定速度Vdthは、第1速度Vd1未満に設定される。
【0061】
スライドドア30の開閉速度Vdが判定速度Vdth以上の場合(S13:YES)、言い換えれば、第1電気モータ111の負荷トルクが大きくない場合、ドア制御装置200は、第2電気モータ112を駆動する(S14)。つまり、ドア制御装置200は、第1モードを第2モードに切り換える。続いて、ドア制御装置200は、スライドドア30が閉側基準位置に到達したか否かを判定する(S15)。スライドドア30が閉側基準位置に到達していない場合(S15:NO)、ドア制御装置200はステップS15に処理を移行する。一方、スライドドア30が閉側基準位置に到達した場合(S15:YES)、ドア制御装置200は、第2電気モータ112を停止する(S16)。つまり、ドア制御装置200は、第2モードを第1モードに切り換える。
【0062】
続いて、ドア制御装置200は、スライドドア30が全閉位置に到達したか否かを判定する(S17)。ここで、ドア制御装置200は、第1センサSE1及び第2センサSE2の検出信号に基づいて、スライドドア30が全閉位置に到達したか否かを判定してもよい。あるいは、ドア制御装置200は、ドアロック装置40のラッチ41がフルラッチ位置まで回転したか否かに基づいて、スライドドア30が全閉位置に到達したか否かを判定してもよい。後者の場合、ドアロック装置40は、ラッチ41がフルラッチ位置に位置しているか否かで異なる信号をドアロック装置40に出力するスイッチを有することが好ましい。スライドドア30が全閉位置に到達していない場合(S17:NO)、ドア制御装置200は、ステップS17に処理を移行する。一方、スライドドア30が全閉位置に到達した場合(S17:YES)、ドア制御装置200は、第1電気モータ111を停止する(S18)。その後、ドア制御装置200は、本処理を終了する。
【0063】
一方、ステップS13において、スライドドア30の開閉速度Vdが判定速度Vdth未満の場合(S13:NO)、言い換えれば、第1電気モータ111の負荷トルクが大きい場合、ドア制御装置200は、ステップS17に処理を移行する。つまり、この場合には、第1モードが第2モードに切り替えられることなく、スライドドア30が閉作動される。
【0064】
なお、以上説明した処理において、ドア制御部202は、ユーザ及び異物の挟み込みを防止するための処理を実施することが好ましい。詳しくは、ドア制御部202は、第1電気モータ111の負荷トルクが急に増大した場合、言い換えれば、スライドドア30の開閉速度Vdが急に減少した場合には、スライドドア30の開閉作動を中止することが好ましい。
【0065】
<本実施形態の作用及び効果>
(1)ドア制御装置200は、第1モードにおいて、遊星歯車機構170のリングギヤ172を停止させた状態で、遊星歯車機構170のサンギヤ171を第1電気モータ111で駆動することにより、低速の第1速度Vd1でスライドドア30を開閉作動できる。また、ドア制御装置200は、第2モードにおいて、遊星歯車機構170のサンギヤ171及びリングギヤ172をそれぞれ第1電気モータ111及び第2電気モータ112で駆動することにより、高速の第2速度Vd2でスライドドア30を開閉作動できる。つまり、ドア制御装置200は、スライドドア30を低速で開閉作動させたい場合には第1モードを選択でき、スライドドア30を高速で開閉作動させたい場合には第2モードを選択できる。こうして、ドア制御装置200は、必要に応じてスライドドア30の開閉速度Vdを高めることができる。
【0066】
(2)例えば、第1モードにおいて、第1電気モータ111及び第2電気モータ112を駆動し、第2モードよりも低回転速度で第2電気モータ112を駆動する比較例を考える。この比較例は、第1モードでスライドドア30を開閉作動する状況下において、ドア駆動部100の負荷が大きくなる場合には、第1電気モータ111及び第2電気モータ112に流れる電流の合計値が大きくなるおそれがある。この点、ドア制御装置200は、第1モードにおいて第2電気モータ112を駆動しない。このため、ドア制御装置200は、第1モードでスライドドア30を開閉作動する状況下において、ドア駆動部100の負荷が大きくなっても、第2電気モータ112に電流は流れない。よって、ドア制御装置200は、第1モードにおいて、第1電気モータ111及び第2電気モータ112に流れる電流の合計値が大きくなることを抑制できる。
【0067】
(3)車両10が坂道に停車している状況などには、スライドドア30の開閉作動が開始されてから暫く時間が経過した後も、ドア駆動部100の負荷が小さくならない場合がある。このような場合において、第1モードが第2モードに切り換わると、第1電気モータ111及び第2電気モータ112の双方の負荷トルクが増大することにより、第1電気モータ111及び第2電気モータ112に流れる電流の合計値が大きくなるおそれがある。この点、ドア制御装置200は、スライドドア30の開閉速度Vdが判定速度Vdth未満の場合、言い換えれば、ドア駆動部100の負荷が小さくならない場合には、第1モードから第2モードへの切り替えを制限する。したがって、ドア制御装置200は、第2モードに切り替えた後に、第1電気モータ111及び第2電気モータ112に流れる電流の合計値が大きくなることを抑制できる。
【0068】
(4)ドア制御装置200は、ドア駆動部100の負荷が大きくなる場合には、第1モードでスライドドア30を開閉作動する。一方、ドア制御装置200は、ドア駆動部100の負荷が大きくならない場合には、第2モードでスライドドア30を開閉作動する。このため、ドア制御装置200は、スライドドア30の開閉速度Vdを適切に選択できる。このため、第1モードだけでスライドドア30を開閉作動させる比較例に比べ、スライドドア30の開閉作動に要する時間が短縮される。また、第2モードだけでスライドドア30を開閉作動させる比較例に比べ、ドア駆動部100の負荷が増大するときに第1電気モータ111及び第2電気モータ112に流れる電流の合計値が大きくなりにくい。
【0069】
(5)ドア制御装置200は、第1モード及び第2モードの一方から他方への切り替え時において、第2電気モータ112の回転速度を次第に変化させる。このため、ドア制御装置200は、モードの切り替え時において、スライドドア30の開閉速度Vdが急に変化することを抑制できる。
【0070】
(6)ドア制御装置200は、第1センサSE1及び第2センサSE2の検出信号に基づいて、スライドドア30の位置を取得できる。そして、ドア制御装置200は、スライドドア30の位置に基づいて、スライドドア30の作動モードを切り替えるタイミングを適切に把握できる。
【0071】
(7)ドア開閉装置50は、第1モードにおいて、遊星歯車機構170のリングギヤ172をロックする必要がある。この点、リングギヤ172の外歯172aとウォーム160とは、セルフロック性を有するウォームギヤ機構を構成している。このため、ドア開閉装置50は、別途の構成を設けることなく、第1モードにおいて、遊星歯車機構170のリングギヤ172をロックできる。
【0072】
(8)ドア開閉装置50は、全閉位置の近傍でスライドドア30を閉作動する場合には、スライドドア30の作動モードを第1モードに切り換える。このため、ドア開閉装置50は、ドア駆動部100の第1電気モータ111及び第2電気モータ112に流れる電流の増大を抑制しつつ、ラッチ41をアンラッチ位置からフルラッチ位置まで回転させることができる。つまり、ドア開閉装置50は、ラッチ41をアンラッチ位置からフルラッチ位置まで回転させるためのクローズアクチュエータを別途に備える必要がない。
【0073】
(9)例えば、1つの電気モータと一般的な変速機とでドラム123を駆動する比較例を考える。この場合、変速時にドラム123に衝撃が作用することで、スライドドア30が円滑に開閉作動しないおそれがある。この点、本実施形態のドア開閉装置50は、遊星歯車機構170のリングギヤ172の回転速度を調整して変速を行うため、変速時にドラム123に衝撃が作用することを抑制できる。
【0074】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0075】
・ドア制御装置200は、スライドドア30を第2モードで開閉作動している状況下において、ドア駆動部100の負荷が大きくなる場合には、スライドドア30の作動モードを第2モードから第1モードに切り替えてもよい。
【0076】
・ドア制御装置200は、スライドドア30の閉作動時において、スライドドア30が開側基準位置に到達したときの開閉速度Vdが判定速度Vdth未満の場合であっても(S13:NO)、スライドドア30の作動モードを第1モードに維持しなくてもよい。例えば、上記の場合であっても、スライドドア30が閉側基準位置に到達するまでに、スライドドア30の開閉速度Vdが判定速度Vdth以上となれば、スライドドア30の作動モードを第2モードに切り替えてもよい。
【0077】
・ドア制御装置200において、第1モード及び第2モードを切り換えるタイミングは適宜に変更可能である。例えば、スライドドア30が所定の位置を通過したときに信号を出力するセンサを車両10が備える場合には、ドア制御装置200は、当該センサの出力する信号に基づいて、スライドドア30の作動モードを切り替えてもよい。
【0078】
・ドア制御装置200は、第1モードにおいて、第2電気モータ112を駆動してもよい。ただし、第1モードにおける第2電気モータ112の回転速度は第2モードにおける第2電気モータ112の回転速度よりも低速に設定される。
【0079】
・ドア制御装置200は、第1モードを第2モードに切り換える際、第1電気モータ111の回転速度を増速させてもよい。同様に、ドア制御装置200は、第2モードを第1モードに切り換える際、第1電気モータ111の回転速度を減速させてもよい。
【0080】
・ドア制御装置200は、スライドドア30の開閉速度Vdと判定速度Vdthとを比較することで、第1モードを第2モードに切り換えるか否かを判定しなくてもよい。例えば、ドア制御装置200は、第1電気モータ111に流れる電流の大きさに基づいて、第1モードを第2モードに切り換えるか否かを判定してもよい。
【0081】
図9において、スライドドア30が全開位置P4の近傍を開閉作動するときの開閉速度Vdは、スライドドア30が全閉位置P1の近傍を開閉作動するときの開閉速度Vdと同じ速度でなくてもよい。
【0082】
図9において、スライドドア30が全開位置P4の近傍を開閉作動するときの開閉速度Vdは、スライドドア30が開作動する場合とスライドドア30が閉作動する場合とで同じ速度でなくてもよい。同様に、スライドドア30が全閉位置P1の近傍を開閉作動するときの開閉速度Vdは、スライドドア30が開作動する場合とスライドドア30が閉作動する場合とで同じ速度でなくてもよい。
【0083】
・ドア駆動部100は、第1電気モータ111と支持軸175との間に減速機を有してもよいし、キャリア173とドラム123との間に減速機を有してもよい。
・開閉機構120は、ケーブル駆動タイプの開閉機構ではなく、ベルト駆動タイプの開閉機構であってもよい。この場合、開閉機構120は、駆動プーリと従動プーリと駆動プーリ及び従動プーリに巻き掛けられるベルトとを有することが好ましい。そして、伝達機構130のキャリア173は、駆動プーリに連結されることが好ましい。
【0084】
・遊星歯車機構170において、サンギヤ171、リングギヤ172及びキャリア173の3つの回転要素のうち、第1電気モータ111の駆動対象となる回転要素は、リングギヤ172であってもよいし、キャリア173であってもよい。同様に、第2電気モータ112の駆動対象となる回転要素は、サンギヤ171であってもよいし、キャリア173であってもよい。同様に、開閉機構120のドラム123に動力を伝達する回転要素は、サンギヤ171であってもよいし、リングギヤ172であってもよい。
【0085】
・上記実施形態の遊星歯車機構170は、いわゆる2K-H型である。他の実施形態において、遊星歯車機構170は、3K型としてもよいし、K-H-V型としてもよい。
・スライドドア30は、「車両ドア」の一例としてのスイングドア又はバックドアであってもよい。つまり、ドア駆動部100の駆動対象となる車両ドアは、スライドドア30である必要はない。
【0086】
・本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0087】
10…車両
20…車体
21…ドア開口部
25…ストライカ
30…スライドドア
40…ドアロック装置
50…ドア開閉装置
100…ドア駆動部
111…第1電気モータ
112…第2電気モータ
120…開閉機構
130…伝達機構
160…ウォーム
170…遊星歯車機構
171…サンギヤ(回転要素)
172…リングギヤ(回転要素)
173…キャリア(回転要素)
174…プラネタリギヤ
200…ドア制御装置
201…位置取得部
202…ドア制御部
SE1…第1センサ
SE2…第2センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10