(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155610
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】車両用ドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
E05B 85/16 20140101AFI20231016BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
E05B85/16 Z
B60J5/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065036
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 佳憲
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ32
2E250LL01
2E250PP12
2E250QQ01
(57)【要約】
【課題】ハンドル部材が開動作限界位置に達するときの衝撃の緩和を、その衝撃を受ける部位の強度に影響することなく達成できる車両用ドアハンドル装置を提供する。
【解決手段】 ハンドル部材2のドア開動作に連動して第一回転方向R1に回転するベルクランク4が、ねじりコイルばねにより第一回転方向R1とは逆の第二回転方向R2に付勢される車両用ドアハンドル装置1において、ねじりコイルばね5は、ドア開動作によりハンドル部材が開動作限界位置に達する直前において、一端部51が、他端部52を支持するベース部材3(支持部材)に接触し、当該接触から前記開動作限界位置に達するまでの間において、接触した一端部51自身がベース部材3に押し付けられて弾性変形を生じてベルクランク4を第二回転方向R2に追加付勢し、ドア開動作を減速させる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアアウターパネルの車両内側に組み付けられるベース部材と、
車両のドアアウターパネルの車両外側から前記ベース部材に対し、車両外向きに引き起こされるドア開動作とそれとは逆向きの戻り動作が可能に組み付けられる長手状のハンドル部材と、
前記ハンドル部材のドア開動作に連動して所定の回転軸線周りを第一回転方向に回転し、前記戻り動作に連動して前記第一回転方向とは逆の第二回転方向に回転するよう前記ベース部材に回転可能に支持されるベルクランクと、
一端部と他端部との間にコイル部を有し、前記コイル部のコイル中心軸線が前記ベルクランクの回転軸線と同軸配置され、前記ドア開動作による前記ベルクランクの前記第一回転方向への回転により前記一端部と前記他端部が前記コイル中心軸線周りの周方向において接近するよう前記一端部が前記ベルクランクに、前記他端部が前記ベース部材に支持されるとともに、その接近により生じる弾性変形に基づいて前記ベルクランクを前記第二回転方向に付勢して、前記ハンドル部材に対し前記ドア開動作とは逆向きに引き込む力を付与するねじりコイルばねと、
を備える車両用ドアハンドル装置であって、
前記ねじりコイルばねは、前記ドア開動作によって前記ハンドル部材が予め定められた開動作限界位置に達する直前において、前記一端部又は前記他端部が、自身とは逆側の端部を支持する支持部材に接触し、当該接触から前記開動作限界位置に達するまでの間において、前記支持部材に接触した端部自身が当該支持部材に押し付けられて弾性変形を生じる形状をなしており、当該端部の弾性変形に基づいて前記ベルクランクが前記第二回転方向に追加付勢されることで、前記ハンドル部材に付与される前記引き込む力を増すことを特徴とする車両用ドアハンドル装置。
【請求項2】
前記ねじりコイルばねの前記一端部は、前記ハンドル部材の前記ドア開動作が前記開動作限界位置に達する直前において、前記支持部材としての前記ベース部材に接触し、
当該一端部は、前記コイル部の端から延びる基端部と、その先の第一屈曲部にて向きを変えて延びる中間部と、さらにその先の第二屈曲部にて向きを変えて延びる先端部と、を有し、前記ハンドル部材が前記ドア開動作により前記開動作限界位置に達する直前において、前記ベース部材に対し前記第二屈曲部が最初に接触し、当該接触から前記ハンドル部材が前記開動作限界位置に達するまでの間において、前記ベース部材に対し接触した前記第二屈曲部を支点にして前記第一屈曲部側を当該ベース部材に対し接近させる弾性変形が生じる屈曲形状をなす請求項1に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項3】
前記ねじりコイルばねの前記他端部は、前記ハンドル部材の前記ドア開動作が前記開動作限界位置に達する直前において、前記支持部材としての前記ベルクランクに接触し、
当該他端部は、前記コイル部の端から延びる基端部と、その先の屈曲部にて向きを変えて延びる先端部と、を有し、前記ハンドル部材が前記ドア開動作により前記開動作限界位置に達する直前において、前記ベルクランクに対し前記先端部が最初に接触し、当該接触から前記ハンドル部材が前記開動作限界位置に達するまでの間において、前記ベルクランクに接触した前記先端部が当該ベルクランクによって押し付けられて弾性変形が生じる屈曲形状をなす請求項1に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項4】
前記ベルクランクは、前記ハンドル部材のドア開動作に連動して前記第一回転方向に回転する際に車両内側へと回転移動する錘部を有し、前記他端部の先端部は、前記錘部の前記車両内側への移動を妨げる位置に延び出している請求項3に記載の車両用ドアハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用ドアハンドル装置は、車両のドアアウターパネルの内側に組み付けられるベース部材(フレーム部材)と、そのベース部材に対しドアアウターパネルの外側から組み付けられ、車両外向きに引き起こされるドア開動作とその逆向きの動作とが可能とされた長手状のハンドル部材と、を備える。ハンドル部材の一端側には、車両内向きに延び出してドアアウターパネルの開口に挿入されるアーム部が設けられる。アーム部は、ハンドル部材のドア開動作及びその逆向き動作によって車両の内外方向に往復動作する。また、アーム部は、ベース部材に回転可能に支持されたベルクランクの係合レバーと係合する。この係合により、ベルクランクは、アーム部の往復運動に連動して往復回転(揺動)する。一方、ベルクランクは、車両ドアを閉状態に保持するドア閉状態保持機構と連結しており、ハンドル部材のドア開動作に伴い係合レバーが回転したときには、ドア閉状態保持機構が車両ドアが開状態となるのを許可する解除状態に切り替わる。
【0003】
こうした車両用ドアハンドル装置において、ハンドル部材にドア開動作が生じる場合、アーム部先端がベース部材のストッパー部と接触する等により、所定の開動作限界位置においてドア開動作が止まり、最大ストロークとなる。ところが、この開動作限界位置における接触により、ベース部材には衝撃が加わるとともに打音が発生する。このため従来は、例えば特許文献1のように、シール部材(パッド)に衝撃吸収形状を設定して衝撃の緩和と打音の低減を図る等の対策をしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の場合、ベース部材のストッパー部に嵌合溝を形成し、この嵌合溝にシール部材の嵌合部をはめ込むことにより、シール部材がベース部材に組付けられる。この嵌合溝が形成されることにより、ベース部材の強度に影響する場合が出てくるため、例えば生産性向上や環境改善のためにベース部材の材料変更を行う際には、その嵌合溝形状が原因で材料の選択肢が狭まってしまうという課題がある。また、嵌め込みによる組付けは作業性が悪い(手間がかかる)という問題もあるし、シール部材の嵌合部の形成も金型が複雑になってコスト高となるという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、ハンドル部材が開動作限界位置に達するときの衝撃の緩和を、その衝撃を受ける部位の強度に影響することなく達成できる車両用ドアハンドル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の車両用ドアハンドル装置は、
車両のドアアウターパネルの車両内側に組み付けられるベース部材と、
車両のドアアウターパネルの車両外側から前記ベース部材に対し、車両外向きに引き起こされるドア開動作とそれとは逆向きの戻り動作が可能に組み付けられる長手状のハンドル部材と、
前記ハンドル部材のドア開動作に連動して所定の回転軸線周りを第一回転方向に回転し、前記戻り動作に連動して前記第一回転方向とは逆の第二回転方向に回転するよう前記ベース部材に回転可能に支持されるベルクランクと、
一端部と他端部との間にコイル部を有し、前記コイル部のコイル中心軸線が前記ベルクランクの回転軸線と同軸配置され、前記ドア開動作による前記ベルクランクの前記第一回転方向への回転により前記一端部と前記他端部が前記コイル中心軸線周りの周方向において接近するよう前記一端部が前記ベルクランクに、前記他端部が前記ベース部材に支持されるとともに、その接近により生じる弾性変形に基づいて前記ベルクランクを前記第二回転方向に付勢して、前記ハンドル部材に対し前記ドア開動作とは逆向きに引き込む力を付与するねじりコイルばねと、
を備える車両用ドアハンドル装置であって、
前記ねじりコイルばねは、前記ドア開動作によって前記ハンドル部材が予め定められた開動作限界位置(フルストローク位置)に達する直前において、前記一端部又は前記他端部(先行接触部)が、自身とは逆側の端部を支持する支持部材(ベルクランク又はベース部材)に接触し、当該接触から前記開動作限界位置に達するまでの間において、前記支持部材に接触した端部自身が当該支持部材に押し付けられて弾性変形を生じる形状(例えば屈曲形状等)をなしており、当該端部の弾性変形に基づいて前記ベルクランクが前記第二回転方向に追加付勢されることで、前記ハンドル部材に付与される前記引き込む力を増すことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、ねじりコイルばねは、ハンドル部材にドア開動作が生じるとき、はじめはコイル中心軸線周りのねじりモーメントに基づいてドア開動作に抗する付勢力を発生させるが、ハンドル部材が開動作限界位置(フルストローク位置)に達する直前になると、一方の端部が支持部材に押し付けられて端部自身に弾性変形が生じ、その弾性変形に基づいた付勢力を追加発生させる。この追加の付勢力は、ハンドル部材のドア開動作に抗する力を増す力であるから、これにより、ハンドル部材を引き起こすドア開動作は、開動作限界位置(フルストローク位置)に達する直前に大きな減速を強いられ、開動作限界位置で生じる衝撃を緩和できる。
【0009】
前記ねじりコイルばねの前記一端部は、前記ハンドル部材の前記ドア開動作が前記開動作限界位置に達する直前に前記支持部材としての前記ベース部材に接触する接触側端部(ベース部材接触端部)であり、
当該一端部は、前記コイル部の端から延びる基端部と、その先の第一屈曲部にて向きを変えて延びる中間部と、さらにその先の第二屈曲部にて向きを変えて延びる先端部と、を有し、前記ハンドル部材が前記ドア開動作により開動作限界位置に達する直前においては前記ベース部材に対し前記第二屈曲部が最初に接触し、当該接触から前記ハンドル部材が前記開動作限界位置に達するまでの間においては前記ベース部材に対し接触した前記第二屈曲部を支点にして前記第一屈曲部側を当該ベース部材に対し接近させる弾性変形が生じる屈曲形状にて形成できる。
【0010】
上記構成においては、ねじりコイルばねの一端部に屈曲形状を設けるだけで、ハンドル部材のドア開動作に抗する付勢力を開動作限界位置(フルストローク位置)に達する直前で追加発生させて当該ドア開動作を減速させることができる。また、第二屈曲部が湾曲形状をなすことで、接触対象である支持部材との最初で傷を与える恐れも無くなる。
【0011】
前記ねじりコイルばねの前記他端部は、前記ハンドル部材の前記ドア開動作が前記開動作限界位置に達する直前において、前記支持部材としての前記ベルクランクに接触する接触側端部(ベルクランク接触端部)であり、
当該他端部は、前記コイル部の端から延びる基端部と、その先の屈曲部にて向きを変えて延びる先端部と、を有し、前記ハンドル部材が前記ドア開動作により前記開動作限界位置に達する直前において、前記ベルクランクに対し前記先端部が最初に接触し、当該接触から前記ハンドル部材が前記開動作限界位置に達するまでの間において、前記ベルクランクに接触した前記先端部が当該ベルクランクによって押し付けられて弾性変形が生じる屈曲形状にて形成できる。
【0012】
上記構成においても、ねじりコイルばねの他端部に屈曲形状を設けるだけで、ハンドル部材のドア開動作に抗する付勢力を開動作限界位置(フルストローク位置)に達する直前で追加発生させて当該ドア開動作を減速させることができる。また、この構成では、ベース部材に支持される他端部の基端部に対し、その先端部を、回転するベルクランクの移動先に回り込むよう屈曲させただけのシンプルな屈曲形状であるから、容易に実現できる。
【0013】
また、この構成における前記ベルクランクは、前記ハンドル部材のドア開動作に連動して前記第一回転方向に回転する際に車両内側へと回転移動する錘部(カウンターウェイト部)を有し、前記他端部の先端部は、前記錘部の前記車両内側への移動を妨げる位置に延び出すように形成できる。
【0014】
上記構成によれば、ベルクランクの既存部位である錘部(カウンターウェイト部)を利用して、ハンドル部材のドア開動作に抗する力を増す構造を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の車両用ドアハンドル装置を備える車両を示した側面図。
【
図2】車両用ドアハンドル装置を幅方向中央で切断した断面図。
【
図3】開動作限界位置にあるハンドル部材を示した斜視図。
【
図4】初期位置にあるハンドル部材とベルクランクとの係合状態を示した断面図。
【
図5】開動作限界位置にあるハンドル部材とベルクランクとの係合状態を示した断面図。
【
図6】車両用ドアハンドル装置に配置されるねじりコイルばねの斜視図。
【
図7】
図6のねじりコイルばねの配置部分を車両用ドアハンドル装置の底側から見た部分拡大斜視図。
【
図8】
図6のねじりコイルばねの配置部分を車両用ドアハンドル装置の側方から見た部分拡大斜視図。
【
図9】ハンドル部材が初期位置にあるときの車両用ドアハンドル装置の部分拡大斜視図。
【
図10】ハンドル部材が開動作限界位置にあるときの車両用ドアハンドル装置の部分拡大斜視図。
【
図11A】ハンドル部材が初期位置にあるときの
図6のねじりコイルばねを示した部分拡大底面図。
【
図11B】ハンドル部材が初期位置から開動作限界位置に向かう途中にあるときの
図6のねじりコイルばねを示した部分拡大底面図。
【
図11C】ハンドル部材が開動作限界位置にあるときの
図6のねじりコイルばねを示した部分拡大底面図。
【
図13】
図6のねじりコイルばねの変形例を示す斜視図。
【
図14】
図13のねじりコイルばねの配置部分を車両用ドアハンドル装置の底側から見た部分拡大斜視図。
【
図15A】ハンドル部材が初期位置にあるときの
図13のねじりコイルばねを示した部分拡大正面図。
【
図15B】ハンドル部材が初期位置から開動作限界位置に向かう途中にあるときの
図13のねじりコイルばねを示した部分拡大正面図。
【
図15C】ハンドル部材が開動作限界位置にあるときの
図13のねじりコイルばねを示した部分拡大正面図。
【
図16】従来の車両用ドアハンドル装置に配置されるねじりコイルばねの斜視図。
【
図17A】ハンドル部材が初期位置にあるときの
図16のねじりコイルばねを示した部分拡大正面図。
【
図17B】ハンドル部材が開動作限界位置にあるときの
図16のねじりコイルばねを示した部分拡大正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0017】
本実施例の車両用ドアハンドル装置1は、
図1に示すように、車両100(ここでは自動車)の左右側面や背面のドア101に取り付けられる。また、
図2に示すように、車両用ドアハンドル装置1は、車両100(ここでは自動車)のドア101のアウターパネル101A(ドアアウターパネル)の内側に組み付けられるベース部材3(フレーム部材)と、そのベース部材3に対しアウターパネル101Aの外側から組み付けられ、車両外向きY1に引き起こされるドア開動作とその逆向きY2の戻り動作が可能とされた長手状のハンドル部材2と、を備える。
【0018】
ここでのハンドル部材2は、
図2に示すように、ハンドル長手方向Xの第一側(車両前方側)に第一アーム2Aを有し、その逆の第二側(車両後方側)に第二アーム2B(アーム部)を有する。それらのアーム2A、2Bは車両内向きY2に延び出して、アウターパネル101Aに形成されたそれぞれに対応する開口を通過し、アウターパネル101Aの車両内側に固定されたベース部材3に対し取り付けられる。
【0019】
第一アーム2Aは、ハンドル部材2のハンドル長手方向Xの第一側から車両内向きY2に延び出すとともにその先のアーム先端部2ARがハンドル長手方向Xの第一側へと延び出す。第一アーム2Aは、そのアーム先端部2ARが所定の軸線RA周りを所定角度範囲内で回転可能となるようベース部材3の回転支持部3Aに対し支持され、支点アーム部として機能する。
【0020】
第二アーム2B(アーム部)は、ハンドル部材2のハンドル長手方向Xの第二側(一端側)から車両内側へと延び出すとともにその先のアーム先端部2BKがハンドル長手方向Xの第一側(他端側)へと突出している。第二アーム2Bは、ハンドル部材2の上記の回転の際に生じる車両内外方向(Y1、Y2)の往復動作をガイドするガイド部をなすベース部材3のアーム案内部3Bに対し嵌め込まれ、ガイドアーム部として機能する。
【0021】
ベース部材3は、車両100のアウターパネル101Aに対し車両内側から例えばボルト締結等によって組付けられる。ベース部材3には、
図2に示すように、ハンドル長手方向Xの第一側にハンドル部材2の第一アーム2Aを連結するための回転支持部3Aが形成され、その逆の第二側にハンドル部材2の第二アーム2Bの車両内外方向の往復動作をガイドするアーム案内部3Bが形成される。回転支持部3Aは、第一アーム2Aを挿入するために車両外向きY1に開口する第一側開口3AHを有する。他方、アーム案内部3Bは、第二アーム2Bを挿入するために車両外向きY1に開口する第二側開口3BHを有する。
【0022】
また、車両用ドアハンドル装置1は、ベース部材3に対し回転可能に支持されるベルクランク4(
図4及び
図5参照)と、引き起こし操作されたドア開動作中のハンドル部材2にそれとは逆に引き込む力を与えるねじりコイルばね5(
図6及び
図7参照)と、を有する。
【0023】
ベルクランク4は、
図4及び
図5に示すように、ハンドル部材2のドア開動作に連動して所定の回転軸線R周りを第一回転方向R1に回転し、ドア開動作の戻り動作に連動して第一回転方向R1とは逆の第二回転方向R2に回転するようベース部材3に回転可能に支持される。ここでのベルクランク4は、第二アーム2B(アーム先端部2BK)と係合し、第二アーム2Bの車両内外方向の往復動作に基づいて往復回転するようベース部材3に支持されている。第二アーム2Bは、
図2に示すように、車両内向きY2に延び出してアウターパネル101Aの開口に挿入され、その開口内をハンドル部材2のドア開動作によって車両外向きY1に移動するとともに、逆向きの動作(戻り動作)によって車両内向きY2に移動する。
【0024】
ベルクランク4は、この第二アーム2Bに係合する係合レバー41(第一レバー)を有する。この係合により、係合レバー41は、第二アーム2Bの車両外向きY1(
図4参照)の動作に伴い所定の第一回転方向R1に回転し、第二アーム2Bの車両内向きY2(
図5参照)の動作に伴い第一回転方向R1とは逆の第二回転方向R2に回転する。
【0025】
また、ベルクランク4は、車両100のドア101を閉状態に保持する周知のドア閉状態保持機構6と機械的に連結しており、ハンドル部材2のドア開動作に伴い係合レバー41が回転したときには、ドア閉状態保持機構6が車両100のドア101が開状態となるのを許可する解除状態に切り替わり(
図5参照)。つまり、ドア閉状態保持機構6は、ベルクランク4の回転に連動して、ドア101の開状態を許可する解除状態と、許可しないロック状態とを切り替える。具体的にいえば、ドア閉状態保持機構6は、ハンドル部材2の車両外向きY1のドア開動作に伴うベルクランク4の第一回転方向R1の回転によりドア101の開状態を許可する解除状態となり(
図4→
図5)、ハンドル部材2の車両内向きY2の動作に伴うベルクランク4の第二回転方向R2の回転により上記開状態を許可しないロック状態となる(
図5→
図4)。
【0026】
また、ベルクランク4は、第二アーム2Bの車両外向きY1の動作に伴い係合レバー41によって第一回転方向R1に回転する際に車両内側(方向Y2側)へと回転移動する錘部40(カウンターウェイト部)を有する。この錘部40は、ドア101に車両外側から内側に向けて衝撃を受けたときに、ハンドル部材2が車両外向きに引き出されないよう車両外向きに加速するカウンターウェイトとして機能する。
【0027】
ねじりコイルばね5は、
図6に示すように、第一側端部である一端部51とその逆の第二側端部である他端部52との間にコイル部53を有する。
図7及び
図8に示すように、ねじりコイルばね5は、コイル部53のコイル中心軸線Cがベルクランク4の回転軸線Rと同軸をなし、一端部51がベルクランク4(45)に支持され、他端部52がベース部材3(35)に支持されており、ハンドル部材2のドア開動作に伴うベルクランク4の第一回転方向R1(
図9→
図10)の回転により一端部51と他端部52がコイル中心軸線C周りにおいて接近するように配置される。
【0028】
この一端部51と他端部52のコイル中心軸線C周り(周方向)における接近により、ねじりコイルばね5は、コイル中心軸線C周りにねじりモーメント(
図9→
図10)を受けて弾性変形を生じる。そして、この弾性変形に基づいて、ハンドル部材2のドア開動作によって第一回転方向R1に回転しているベルクランク4には、それとは逆の第二回転方向R2(
図5及び
図10参照)の付勢力が作用する。その結果、ハンドル部材2には、ドア開動作とは逆向き(車両内向きY2:
図5参照)に引き込む力がベルクランク4から伝達付与され、予め定められた初期位置(
図2の実線位置)に向けて引き戻す力が作用する。
【0029】
さらにねじりコイルばね5は、ハンドル部材2がドア開動作によって予め定められた開動作限界位置(
図2の破線位置)に達する直前(
図11B及び
図12B参照)に、一端部51が、他端部52(一端部51自身とは逆側の端部)を支持するベース部材3(支持部材)に対し、コイル中心軸線C周りにおいてベルクランク4の第一回転方向R1の回転を妨げるように接触する。そして、当該接触からハンドル部材2が開動作限界位置(
図11C及び
図12C参照)に達するまでの間(
図11B→
図11C、
図12B→
図12C)、接触した一端部51自身がベース部材3(支持部材)に対し押し付けられて弾性変形を生じる形状をなす。
【0030】
この接触した一端部51自身の弾性変形に基づいて、ベルクランク4は第二回転方向R2に向けて追加付勢される(
図11C及び
図12C参照)。つまり、この時のベルクランク4には、コイル部53の弾性変形に基づく付勢力と、一端部51の弾性変形による付勢力との双方が作用することになる。その結果、ハンドル部材2には、ドア開動作とは逆向き(車両内向きY2)に引き込む力がベルクランク4から追加伝達される形で付与され、予め定められた初期位置(
図1実線位置)に向けて引き戻す力が当該接触の前よりも増した状態となる。これにより、ハンドル部材2のドア開動作が、開動作限界位置(
図1破線位置)に達する直前で減速するから、開動作限界位置に達した時のハンドル部材2と、ベース部材3ないしはベルクランク4との接触時の衝撃を緩和し、その時に発生する打音が小さくなる。
【0031】
なお、開動作限界位置(フルストローク位置:
図2破線位置)は、ハンドル部材2のドア開動作が生じたとき、当該ハンドル部材2のドア開動作及びそれと連動する別部材の動作のいずれか又は双方が、ベース部材3との接触により規制される位置と定めることができる。ここでの開動作限界位置は、
図3に示すように、ハンドル部材2において第二アーム2B(アーム部)の先端側に設けられたハンドル幅方向に突出する係止部2Kが、ベース部材3においてアーム案内部3Bの車両外側に設けられたストッパー部3K(衝撃を受ける部位)に対し車両外向きY1に係止(接触)する位置として定められている。なお、開動作限界位置は、本実施例のようなハンドル部材2とベース部材3との接触位置に限らず、例えばベルクランク4の係止部(例えば係合レバー41)が、第一回転方向R1においてベース部材3の所定の回転規制部(図示なし:衝撃を受ける部位)と接触する位置と定められてもよい。
【0032】
以下、本実施例におけるねじりコイルばね5の形状および配置を具体的に説明する。
【0033】
ねじりコイルばね5は、
図7~
図10に示すように、ベルクランク4の筒状の回転中心部43の外周に螺旋状のコイル部53が巻き付いた形で配置される。この筒状の回転中心部43の内部には回転軸7が同軸をなして配置される。回転軸7は、両端をベース部材3の回転軸支持部31、31(
図8参照)に挿通させる形で組み付けられる。筒状の回転中心部43は、回転軸支持部31、31の間に挟まれる形で配置され、回転軸支持部31、31に組み付けられた回転軸7の軸線(回転軸線R)周りを回転可能とされている。
【0034】
ベース部材3は、ハンドル幅方向の一方側(
図9及び
図10の右側)において、第二アーム2Bが通過する中央とその外側(ハンドル幅方向の一方側)とを隔てる外側壁部35を有しており、回転軸支持部31、31(
図8参照)は、互いが回転軸線Rの軸線方向に対向する形で外側壁部35からハンドル幅方向の外向きに突出する。
【0035】
ベルクランク4は、回転中心部43から径方向外側に延び出す係合レバー41(第一レバー)と、それとは異なる方向に向けて回転中心部43から径方向外側に延び出して錘部40(カウンターウェイト部)と連結する連結レバー42(第二レバー)と、を一体に有する。また、連結レバー42は、ドア閉状態保持機構6とも機械的に連結している。錘部40は、連結レバー42の先端に位置し、回転軸線Rの軸線方向に延びる柱状をなすとともに、回転中心部43及びコイル部53の双方に対し平行をなし、それらと径方向において対向する形で配置される。
【0036】
また、ベルクランク4の連結レバー42は、その中間部にて回転軸線Rの軸線方向に膨出する押付部45を有する。この押付部45は、ねじりコイルばね5の一端部51(5A1)を接触状態で支持するばね端支持部(45)であり、ハンドル部材2のドア開動作時(
図12A→
図12B→
図12C)において、当該一端部51を第一回転方向R1に向けて押し付ける。他方、ベース部材3の外側壁部35は、ねじりコイルばね5の他端部52を接触状態で支持するばね端支持部(35)であり、ハンドル部材2のドア開動作時においては、当該他端部52を第二回転方向R2に向けて押し付ける状態となる。つまり、ねじりコイルばね5は、ハンドル部材2のドア開動作時において、一端部51と他端部52がコイル中心軸線C周りにおいて接近する。そして、その接近によりコイル部53はねじりモーメントを受け、弾性変形を生じる。
【0037】
本実施例において、ねじりコイルばね5の一端部51は、ハンドル部材2のドア開動作が開動作限界位置(
図11B及び
図12B参照)に達する直前に、他端部52(支持部)を支持するばね端支持部35を有するベース部材3(支持部材)に対し接触する接触側端部(ベース部材接触端部)をなす。
【0038】
この一端部51は、螺旋状のコイル部53の端から延びる基端部5A1(第一端側基端部)と、その先の第一屈曲部5A2(第一端側第一屈曲部)にて向きを変えて延びる中間部5A3(第一端側中間部)と、さらにその先の第二屈曲部5A4(第一端側第二屈曲部)にて向きを変えて延びる先端部5A5(第一端側先端部)と、を有した屈曲形状をなす。具体的にいえば、基端部5A1(支持部)は、コイル部53の端からその接線方向に直線状に延び、第一屈曲部5A2に接続するとともに、ベルクランク4の押付部45に対し常時線接触状態で支持される。中間部5A3は、第一屈曲部5A2から、コイル中心軸線Cの軸線方向において他端部52に接近する方向側、かつコイル中心軸線Cの周り(周方向)において他端部52に接近する方向側に向かうよう、基端部5A1に対し斜め方向に直線状に延び、第二屈曲部5A4に接続する。先端部5A5は、第二屈曲部5A4から、コイル中心軸線Cの軸線方向で他端部52に接近する方向側、かつコイル中心軸線Cの周りで他端部52に接近する方向とは逆側に向かうよう、中間部5A3に対し斜め方向に直線状に延びる。このため、一端部51は、コイル中心軸線Cの周りで他端部52に接近する方向においては、その先頭位置に第二屈曲部5A4を有する。また、第一屈曲部5A2及び第二屈曲部5A4は、滑らかに湾曲する湾曲形状をなす。
【0039】
また、この一端部51は、ハンドル部材2がドア開動作により開動作限界位置に達する直前において、第二屈曲部5A4がベース部材3に対し最初に接触する。この接触からハンドル部材2が開動作限界位置に達するまでの間においては、ベース部材3に対し接触している第二屈曲部5A4を支点にして、この第二屈曲部5A4から第一屈曲部5A2側を当該ベース部材3に対し接近させる弾性変形が生じる。具体的には、一端部51において主に第二屈曲部5A4がねじりモーメントを受けて弾性変形を生じる。基端部5A1及び中間部5A3が撓む弾性変形を生じてもよい。これにより、ハンドル部材2は、開動作限界位置に達する直前に、当該弾性変形に基づいた、ドア開動作に抗する付勢力を追加で受けることになり、ドア開動作を減速できる。
【0040】
なお、ハンドル部材2が開動作限界位置に達したときには、第一屈曲部5A2から中間部5A3にかけての少なくとも一部が当該ベース部材3に対し接触又は近接する。本実施例においては、符号5A2~5A4の部位をベース部材3に対し先行して接触する先行接触部とすることが可能であるが、ここではベース部材3(35)に対し第二屈曲部5A4(先行接触部)が接触し、中間部5A3が近接状態となる。
【0041】
従来の車両用ハンドル装置においては、
図16に示すようなねじりコイルばね5’が配置されていた。ねじりコイルばね5’は、直線状の一端部51’と他端部52’との間に螺旋状のコイル部53’を有しており、上記実施例と同様、コイル中心軸線C’が所定の回転軸線R’に一致するよう配置され、一端部51’がベルクランク4’に、他端部52’がベース部材に支持されている。そして、
図17A及び
図17Bに示すように、それら端部51’、52’は、ハンドル部材2にドア開動作が生じたときに回転軸線R’周り(周方向)において接近するが、その途中で、互いを支持する支持部材以外の部材と接触しない。一方で、本実施例では、あえてその接触が生じるように、直線状の一端部51’に意図的な屈曲形状を設けて一端部51としている。この屈曲形状により、ハンドル部材2のドア開動作の終盤においてドア開動作とは逆向きの力を増加させることが可能となり、開動作限界位置に達したときの衝撃を緩和している。
【0042】
以上、本発明の一実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。例えば上記実施例において一部の構成要件を省略する、さらには他の構成要件を追加する等、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【0043】
以下、本発明の他の実施例について説明する。なお、上記実施例と共通の機能部や同様の機能部については詳細な説明を省略する。また、上記実施形態と下記変形例は、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。
【0044】
上記実施例においては、ハンドル部材2のドア開動作とその逆の戻り動作は、軸線RA周りの回転動作であったが、ドア開動作は必ずしもそうした回転動作でなくてもよい。
【0045】
また、上記実施例においては、ハンドル部材2の第二アーム2Bがベルクランク4と係合することにより、ハンドル部材2のドア開動作と連動してベルクランク4が回転するが、それとは異なる形でハンドル部材2とベルクランク4が連動してもよい。
【0046】
第二実施例では、上記実施例のねじりコイルばね5を、
図13に示すねじりコイルばね5とする。このねじりコイルばね5は、
図14に示すように上記実施例と同様にして車両用ハンドル装置1に配置されるが、一端部51ではなく他端部52が、ハンドル部材2のドア開動作が開動作限界位置(フルストローク位置)に達する直前(
図15B参照)にベルクランク4(支持部材)に接触する接触側端部(ベルクランク接触端部)をなす。
【0047】
具体的にいえば、他端部52は、
図13に示すように、コイル部53の端から延びる基端部5B1(第二端側基端部)と、その先の屈曲部5B2(第二端側屈曲部)にて向きを変えて延びる先端部5B3(第二端側先端部)と、を有した屈曲形状をなす。基端部5B1(支持部)は、螺旋状のコイル部53の端からその接線方向に直線状に延び、屈曲部5B2に接続する。先端部5B3は、屈曲部5B2からコイル中心軸線Cの周り(周方向)において一端部51に接近する方向に向かうよう、基端部5B1に対し斜め方向に直線状に延びる。屈曲部5B2は、滑らかに湾曲する湾曲形状をなす。
【0048】
この他端部52は、ハンドル部材2がドア開動作により開動作限界位置に達する直前(
図15B参照)において、先端部5B3(先行接触部)がベルクランク4に対し最初に接触する。この接触からハンドル部材2が開動作限界位置に達するまでの間においては、ベルクランク4によって先端部5B3が押し付けられ、他端部52自身において弾性変形が生じる。
【0049】
具体的にいえば、他端部52は、ハンドル部材2のドア開動作(アーム部2Bの車両外向きY1の動作:
図15A→
図15B→
図15C)に伴いベルクランク4が第一回転方向R1に回転する際に車両内側へと回転移動するベルクランク4の錘部40(カウンターウェイト部)に対し先端部5B3が接触してその移動を妨げる形状をなす。ここでの先端部5B3は、ベルクランク4の錘部40を、直線状をなす自身の中間位置に接触させる形状をなす。この接触からハンドル部材2が開動作限界位置に達するまでの間(
図15B→
図15C)においては、ベルクランク4の錘部40によって先端部5B3の中間位置が押し付けられ、直線状に延びる先端部5B3の先端側(屈曲部5B2とは逆側)が第一回転方向R1に撓む弾性変形が生じる。これにより、ハンドル部材2は、開動作限界位置に達する直前に、当該弾性変形に基づいた、ドア開動作に抗する付勢力を追加で受けることになり、ドア開動作を減速できる。
【符号の説明】
【0050】
1 車両用ドアハンドル装置
100 車両
101 ドア
101A アウターパネル(ドアアウターパネル)
2 ハンドル部材
2B 第二アーム(アーム部)
2BK アーム先端部
3 ベース部材
31 回転軸支持部
35 ばね端支持部(外側壁部)
4 ベルクランク
40 錘部(カウンターウェイト部)
41 係合レバー
42 連結レバー
45 ばね端支持部(押付部)
5 ねじりコイルばね
51 一端部(第一側端部)
5A1 基端部
5A2 第一屈曲部
5A3 中間部
5A4 第二屈曲部
5A5 先端部
52 他端部(第二側端部)
5B1 基端部
5B2 屈曲部
5B3 先端部
53 コイル部
6 ドア閉状態保持機構
X ハンドル長手方向
Y1 車両外向き
Y2 車両内向き
C コイル中心軸線
R 回転軸線
R1 第一回転方向
R2 第二回転方向