(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155615
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
G03G15/20 535
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065044
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】福江 修平
(72)【発明者】
【氏名】入山 翔太
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA06
2H033BA11
2H033BA12
2H033BB03
2H033BB13
2H033BB15
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB35
2H033BB38
2H033BE00
(57)【要約】
【課題】第1加圧パッドと第2加圧パッドの間の領域で、エンドレスベルトが加圧パッドに押圧されていない部分の割合を小さくする。
【解決手段】定着装置8は、加熱ローラ81と、エンドレスベルト130と、第1加圧パッドP1と、第2加圧パッドP2と、中間加圧パッドP3とを備える。第1加圧パッドP1は、エンドレスベルト130を押圧する。第2加圧パッドP2は、第1加圧パッドP1の搬送方向の下流側に位置し、エンドレスベルト130を押圧する。中間加圧パッドP3は、搬送方向において、第1加圧パッドP1と第2加圧パッドP2の間に位置し、エンドレスベルト130を押圧する。第1加圧パッドP1、第2加圧パッドP2および中間加圧パッドP3が弾性変形していない状態において、第1加圧パッドP1と中間加圧パッドP3の間には搬送方向に隙間G1があり、中間加圧パッドP3と第2加圧パッドP2の間には搬送方向に隙間G2がある。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱ローラと、
前記加熱ローラに接触し、前記加熱ローラと共にシートをニップして搬送方向に搬送するエンドレスベルトと、
弾性体からなり、前記エンドレスベルトを前記加熱ローラに押圧する第1加圧パッドと、
前記第1加圧パッドの前記搬送方向の下流側に位置し、弾性体からなり、前記エンドレスベルトを前記加熱ローラに押圧する第2加圧パッドと、
前記搬送方向において、前記第1加圧パッドと前記第2加圧パッドの間に位置し、弾性体からなり、前記エンドレスベルトを前記加熱ローラに押圧する中間加圧パッドと、を備え、
前記第1加圧パッド、前記第2加圧パッドおよび前記中間加圧パッドは、前記加熱ローラに対して前記加熱ローラに向かう移動方向に相対移動可能であり、
前記第1加圧パッド、前記第2加圧パッドおよび前記中間加圧パッドが弾性変形していない状態において、前記第1加圧パッドと前記中間加圧パッドの間には前記搬送方向において隙間があり、前記中間加圧パッドと前記第2加圧パッドの間には前記搬送方向において隙間があることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記第1加圧パッドを保持する第1保持面と、前記第2加圧パッドを保持する第2保持面と、前記中間加圧パッドを保持する中間保持面と、を有し、前記移動方向に移動可能なパッドホルダを備えることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第1加圧パッドは、前記エンドレスベルトを押圧する第1押圧面を有し、
前記中間加圧パッドは、前記エンドレスベルトを押圧する中間押圧面を有し、
前記第1加圧パッド、前記第2加圧パッドおよび前記中間加圧パッドが弾性変形していない状態において、前記第1保持面から前記中間押圧面までの前記移動方向における寸法は、前記第1保持面から前記第1押圧面までの前記移動方向における寸法より小さいことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記第2加圧パッドは、前記エンドレスベルトを押圧する第2押圧面を有し、
前記中間加圧パッドは、前記エンドレスベルトを押圧する中間押圧面を有し、
前記第2加圧パッドは、前記第1加圧パッドおよび前記中間加圧パッドよりも硬く、
前記第1加圧パッド、前記第2加圧パッドおよび前記中間加圧パッドが弾性変形していない状態において、前記第1保持面から前記中間押圧面までの前記移動方向における寸法は、前記第1保持面から前記第2押圧面までの前記移動方向における寸法以上であることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項5】
前記中間保持面は、前記第1保持面から前記加熱ローラに向けて突出していることを特徴とする請求項2に記載に定着装置。
【請求項6】
前記中間加圧パッドは、前記エンドレスベルトを押圧する先端が前記中間保持面に保持される底面よりも前記搬送方向における寸法が小さいことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項7】
前記中間加圧パッドが前記エンドレスベルトを押圧する圧力の最低値は、
前記第1加圧パッドが前記エンドレスベルトを押圧する圧力の最高値より小さく、
前記第2加圧パッドが前記エンドレスベルトを押圧する圧力の最高値より小さいことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートにトナー像を熱定着する定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに加熱ローラとエンドレスベルトでニップして熱定着する定着装置が知られている。エンドレスベルトの内側には加圧パッドが配置されており、加圧パッドは、エンドレスベルトを加熱ローラに向けて押圧する。特許文献1には、ニップ領域を大きくするために、シートの搬送方向に離れた2つの加圧パッド(第1加圧パッドおよび第2加圧パッド)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、2つの加圧パッドとして第1加圧パッドおよび第2加圧パッドが設けられた定着装置においては、第1加圧パッドと第2加圧パッドの間の領域のうち、エンドレスベルトが加圧パッドに押圧されていない部分の割合が大きくなっている。
【0005】
そこで、本開示は、第1加圧パッドと第2加圧パッドの間の領域で、エンドレスベルトが加圧パッドに押圧されていない部分の割合を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための定着装置は、加熱ローラと、エンドレスベルトと、第1加圧パッドと、第2加圧パッドと、中間加圧パッドと、を備える。
エンドレスベルトは、加熱ローラに接触する。エンドレスベルトは、加熱ローラと共にシートをニップして搬送方向に搬送する。第1加圧パッドは、弾性体からなる。第1加圧パッドは、エンドレスベルトを加熱ローラに押圧する。第2加圧パッドは、第1加圧パッドの搬送方向の下流側に位置する。第2加圧パッドは、弾性体からなる。第2加圧パッドは、エンドレスベルトを加熱ローラに押圧する。中間加圧パッドは、搬送方向において、第1加圧パッドと第2加圧パッドの間に位置する。中間加圧パッドは、弾性体からなる。中間加圧パッドは、エンドレスベルトを加熱ローラに押圧する。
第1加圧パッド、第2加圧パッドおよび中間加圧パッドは、加熱ローラに対して加熱ローラに向かう移動方向に相対移動可能である。
第1加圧パッド、第2加圧パッドおよび中間加圧パッドが弾性変形していない状態において、第1加圧パッドと中間加圧パッドの間には搬送方向において隙間があり、中間加圧パッドと第2加圧パッドの間には搬送方向において隙間がある。
【0007】
このような構成によれば、第1加圧パッドおよび第2加圧パッドの間に中間加圧パッドが配置されることによって、第1加圧パッドと第2加圧パッドに間の領域において、エンドレスベルトが加圧パッドに押圧されていない部分の割合を小さくすることができる。また、第1加圧パッドと中間加圧パッドの間に隙間があることで、第1加圧パッドによるニップ圧に中間加圧パッドが影響を与えにくい。また、第2加圧パッドと中間加圧パッドの間に隙間があることで、第2加圧パッドによるニップ圧に中間加圧パッドが影響を与えにくい。
【0008】
前記した定着装置において、第1加圧パッドを保持する第1保持面と、第2加圧パッドを保持する第2保持面と、中間加圧パッドを保持する中間保持面と、を有し、移動方向に移動可能なパッドホルダを備える構成としてもよい。
【0009】
このような構成によれば、定着装置がパッドホルダを備えることで、第1加圧パッド、第2加圧パッドおよび中間加圧パッドを相対位置と移動量を変えずに移動させることができる。
【0010】
前記した定着装置において、第1加圧パッドは、エンドレスベルトを押圧する第1押圧面を有し、中間加圧パッドは、エンドレスベルトを押圧する中間押圧面を有し、第1加圧パッド、第2加圧パッドおよび中間加圧パッドが弾性変形していない状態において、第1保持面から中間押圧面までの移動方向における寸法は、第1保持面から第1押圧面までの移動方向における寸法より小さい構成としてもよい。
【0011】
このような構成によれば、加熱ローラと中間加圧パッドとのニップ圧の最低値が、加熱ローラと第1加圧パッドとのニップ圧の最高値よりも大きくなることを抑制できる。
【0012】
前記した定着装置において、第2加圧パッドは、エンドレスベルトを押圧する第2押圧面を有し、中間加圧パッドは、エンドレスベルトを押圧する中間押圧面を有し、第2加圧パッドは、第1加圧パッドおよび中間加圧パッドよりも硬く、第1加圧パッド、第2加圧パッドおよび中間加圧パッドが弾性変形していない状態において、第1保持面から中間押圧面までの移動方向における寸法は、第1保持面から第2押圧面までの移動方向における寸法以上である構成としてもよい。
【0013】
このような構成によれば、柔らかい中間加圧パッドの上面が、硬い第2加圧パッドの上面よりも高い位置に位置することで、加熱ローラと第2加圧パッドに間でニップを形成しやすくなる。
【0014】
前記した定着装置において、中間保持面は、第1保持面から加熱ローラに向けて突出している構成としてもよい。
【0015】
このような構成によれば、中間保持面の突出量によって中間加圧パッドによるニップ圧を適正にすることができる。
【0016】
前記した定着装置において、中間加圧パッドは、エンドレスベルトを押圧する先端が中間保持面に保持される底面よりも搬送方向における寸法が小さい構成としてもよい。
【0017】
このような構成によれば、中間加圧パッドが弾性変形した場合に、第1加圧パッドと第2加圧パッドに干渉しにくい。
【0018】
前記した定着装置において、中間加圧パッドがエンドレスベルトを押圧する圧力の最低値は、第1加圧パッドがエンドレスベルトを押圧する圧力の最高値より小さく、第2加圧パッドがエンドレスベルトを押圧する圧力の最高値より小さい構成としてもよい。
【0019】
このような構成によれば、中間加圧パッドがエンドレスベルトを押圧する圧力が第1加圧パッドおよび第2加圧パッドがエンドレスベルトを押圧する圧力より大きくなることを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1加圧パッドと第2加圧パッドの間の領域で、エンドレスベルトが加圧パッドに押圧されていない部分の割合を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示に係る定着装置を備えた画像形成装置の断面図である。
【
図2】実施形態に係る定着装置を示す断面図である。
【
図3】ニップしていない状態の定着装置の断面図である。
【
図4】
図3における加圧パッド付近の拡大図(a)と、
図2における加圧パッド付近の拡大図(b)と、搬送方向におけるパッドの圧力の分布を示すグラフ(c)である。
【
図5】第2実施形態における
図4に対応する図(a),(b),(c)である。
【
図6】第3実施形態における
図4に対応する図(a),(b),(c)である。
【
図7】第4実施形態における
図4に対応する図(a),(b),(c)である。
【
図8】比較例における
図4に対応する図(a),(b),(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、開示の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、実施形態に係る定着装置8は、レーザプリンタなどの画像形成装置1で使用される。画像形成装置1は、本体筐体2と、シート供給部3と、露光装置4と、現像剤像形成部5と、定着装置8とを備えている。
【0023】
シート供給部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、紙などのシートSが収容されるシートトレイ31と、シート供給機構32とを備えている。シートトレイ31内のシートSは、シート供給機構32により現像剤像形成部5に供給される。
【0024】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しない光源装置、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。露光装置4は、光源装置から出射される画像データに基づく光ビーム(一点鎖線参照)を感光体ドラム61の表面で高速走査することで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0025】
現像剤像形成部5は、露光装置4の下方に配置されている。現像剤像形成部5は、プロセスカートリッジとして構成され、本体筐体2の前部に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能となっている。現像剤像形成部5は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63と、現像ローラ64と、供給ローラ65と、乾式トナーからなる現像剤を収容する現像剤収容部66とを備えている。
【0026】
現像剤像形成部5は、帯電器62により感光体ドラム61の表面を一様に帯電する。その後、感光体ドラム61は、露光装置4からの光ビームにより表面が露光されることで、表面に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、現像剤像形成部5は、現像剤収容部66内の現像剤を、供給ローラ65を介して現像ローラ64に供給する。
【0027】
そして、現像剤像形成部5は、現像ローラ64上の現像剤を感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給する。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上に現像剤像が形成される。その後、現像剤像形成部5は、シート供給部3から供給されたシートSを感光体ドラム61と転写ローラ63との間で搬送することにより感光体ドラム61上の現像剤像をシートSに転写する。
【0028】
定着装置8は、現像剤像形成部5の後方に配置されている。定着装置8の詳細については後述する。定着装置8は、現像剤像が転写されたシートSを通過させることにより現像剤像をシートSに熱定着する。画像形成装置1は、現像剤像が熱定着されたシートSを搬送ローラ23と排出ローラ24により本体筐体2の外の排紙トレイ22上に排出する。
【0029】
定着装置8は、加熱ローラ81と、加圧ユニット82と、移動機構83とを備えている。
【0030】
移動機構83は、加圧ユニット82を直線状に移動させ、加熱ローラ81と加圧ユニット82の距離を変更する公知の機構である。具体的に、加圧ユニット82は、移動機構83によって、
図2に示すニップ位置と、
図3に示すリリース位置に移動される。
図2に示すように、加圧ユニット82がニップ位置に位置する場合、加圧ユニット82は、移動機構83によって加熱ローラ81に向けて付勢される。
図3に示すように、加圧ユニット82がリリース位置に位置する場合、加圧ユニット82は、移動機構83によって加熱ローラ81に向けて付勢されない。
なお、以下の説明では、加圧ユニット82が加熱ローラ81に向けて移動する方向を、「移動方向」と称する。本実施形態では、移動方向は、加熱ローラ81と加圧ユニット82が向かい合う方向である。
【0031】
図2に示すように、加熱ローラ81は、ヒータ110と、回転体120とを備えている。また、加圧ユニット82は、エンドレスベルト130と、加圧パッドPと、パッドホルダ140と、摺動シート150と、ベルトガイド160と、ステイ170とを備えている。なお、以下の説明では、エンドレスベルト130の幅方向を単に「幅方向」という。幅方向は、回転体120の回転軸線X1が延びる方向である。幅方向は、移動方向に直交している。
【0032】
ヒータ110は、回転体120とエンドレスベルト130との少なくとも一方を加熱する。本実施形態では、ヒータ110は、回転体120の内側に配置されており、回転体120を加熱する。
【0033】
回転体120は、円筒状のローラであり、素管121と、弾性層122とを有している。素管121は、金属製のパイプである。弾性層122は、回転軸線X1を中心に回転可能である。回転体120は、画像形成装置1に設けられた図示しないモータによって駆動されて、
図2の反時計回りに回転する。弾性層122は、素管121の外周に設けられている。別の言い方をすると、回転体120は、表面に弾性層122を有する。弾性層122は、弾性を有している。
【0034】
エンドレスベルト130は、金属などからなる無端状のベルトである。エンドレスベルト130は、画像形成装置1で搬送される最大のシートSの幅よりも大きな幅を有する。エンドレスベルト130は、加熱ローラ81の外周面に接触する。エンドレスベルト130は、加熱ローラ81と共にシートSをニップして搬送方向に搬送する。エンドレスベルト130は、回転体120が回転したときに回転体120またはシートSとの摩擦によって
図2の時計回りに従動回転する。
【0035】
加圧パッドPは、回転体120との間でエンドレスベルト130、摺動シート150およびシートSを挟んでニップ部NPを形成する部材である。なお、以下の説明では、ニップ部NPでのシートSの搬送方向を単に「搬送方向」という。搬送方向は、幅方向に直交している。
【0036】
加圧パッドPは、第1加圧パッドP1と、第2加圧パッドP2と、中間加圧パッドP3とを有する。第2加圧パッドP2は、第1加圧パッドP1の搬送方向の下流側に位置する。中間加圧パッドP3は、搬送方向において、第1加圧パッドP1と第2加圧パッドP2の間に位置する。
【0037】
図3に示すように、第1加圧パッドP1、第2加圧パッドP2および中間加圧パッドP3が弾性変形していない状態において、第1加圧パッドP1と中間加圧パッドP3の間には搬送方向において隙間G1があり、中間加圧パッドP3と第2加圧パッドP2の間には搬送方向において隙間G2がある。第1加圧パッドP1と中間加圧パッドP3の間に隙間G1があることで、第1加圧パッドP1によるニップ圧に中間加圧パッドP3が影響を与えにくい。また、第2加圧パッドP2と中間加圧パッドP3の間に隙間G2があることで、第2加圧パッドP2によるニップ圧に中間加圧パッドP3が影響を与えにくい。
【0038】
第2加圧パッドP2は、第1加圧パッドP1および中間加圧パッドP3よりも硬い。具体的には、第2加圧パッドP2は、第1加圧パッドP1および中間加圧パッドP3よりデュロメータ硬さが高い。中間加圧パッドP3は、第1加圧パッドP1とデュロメータ硬さが同じである。デュロメータ硬さは、ISO7619-1に規定されている。デュロメータ硬さは、規定した条件下で試験片に規定の押針を押し込んだときの押針の押込み深さから得られる値である。例えば、弾性層122のデュロメータ硬さが5の場合、第1加圧パッドP1および中間加圧パッドP3のデュロメータ硬さは6~10、第2加圧パッドP2のデュロメータ硬さは70~90であることが好ましい。
【0039】
第1加圧パッドP1は、直方体状の部材である。第1加圧パッドP1は、シリコンゴムなどのゴムからなる。第1加圧パッドP1は、弾性体からなり、弾性変形可能である。
図2に示すように、第1加圧パッドP1は、弾性層122よりも厚みが大きいので、回転体120と第1加圧パッドP1が互いに押し付けられた場合に、弾性層122の変形量は、第1加圧パッドP1の変形量より小さい。第1加圧パッドP1は、回転体120との間でエンドレスベルト130を挟んで第1ニップ部NP1を形成する。第1加圧パッドP1は、エンドレスベルト130を加熱ローラ81に押圧する。
【0040】
第2加圧パッドP2は、直方体状の部材である。第2加圧パッドP2は、シリコンゴムなどのゴムからなる。第2加圧パッドP2は、弾性体からなり、弾性変形可能である。第2加圧パッドP2は、弾性層122よりもデュロメータ硬さが高いが、第2加圧パッドP2は、弾性層122よりも厚みが大きいので、回転体120と第1加圧パッドP1が互いに押し付けられた場合に、弾性層122の変形量は、第2加圧パッドP2の変形量より小さい。第2加圧パッドP2は、回転体120との間でエンドレスベルト130を挟んで第2ニップ部NP2を形成する。第2加圧パッドP2は、エンドレスベルト130を加熱ローラ81に押圧する。
【0041】
中間加圧パッドP3は、直方体状の部材である。中間加圧パッドP3は、シリコンゴムなどのゴムからなる。中間加圧パッドP3は、弾性体からなり、弾性変形可能である。中間加圧パッドP3は、中間加圧パッドP3は、弾性層122よりも厚みが大きいので、回転体120と中間加圧パッドP3が互いに押し付けられた場合に、弾性層122の変形量は、中間加圧パッドP3の変形量より小さい。中間加圧パッドP3は、回転体120との間でエンドレスベルト130を挟んで第3ニップ部NP3を形成する。中間加圧パッドP3は、エンドレスベルト130を加熱ローラ81に押圧する。
【0042】
パッドホルダ140は、加圧パッドPを保持する部材である。パッドホルダ140は、第1保持面141と、第2保持面142と、中間保持面143と、を有する。
【0043】
第1保持面141は、第1加圧パッドP1を保持する面である。本実施形態では、第1保持面141は、移動方向に直交する面である。
【0044】
第2保持面142は、第2加圧パッドP2を保持する面である。第2保持面142は、第1保持面141と同一平面状に位置する。本実施形態では、第2保持面142は、移動方向に直交する面である。
【0045】
中間保持面143は、中間加圧パッドP3を保持する面である。中間保持面143は、第1保持面141および第2保持面142から加熱ローラ81に向けて突出している。すなわち、中間保持面143は、第1保持面141および第2保持面142よりシートSの搬送経路の近くに位置する。本実施形態では、中間保持面143は、移動方向に直交する面である。
【0046】
パッドホルダ140は、移動機構83によって、移動方向に移動可能である。このため、第1加圧パッドP1、第2加圧パッドP2および中間加圧パッドP3は、加熱ローラ120に対して移動方向に相対移動可能である。
【0047】
ここで、
図3に示すように、第1加圧パッドP1、第2加圧パッドP2および中間加圧パッドP3が弾性変形していない状態において、シートSの搬送経路から第1加圧パッドP1、第2加圧パッドP2および中間加圧パッドP3までの距離は、搬送方向の下流にいくにつれて大きくなっている。
【0048】
詳しくは、
図4(a)に示すように、第1加圧パッドP1は、エンドレスベルト130を押圧する第1押圧面PM1を有している。第2加圧パッドP2は、エンドレスベルト130を押圧する第2押圧面PM2を有している。中間加圧パッドP3は、エンドレスベルト130を押圧する中間押圧面PM3を有している。
第1加圧パッドP1、第2加圧パッドP2および中間加圧パッドP3が弾性変形していない状態において、第1保持面141から中間押圧面PM3までの移動方向における寸法D3は、第1保持面141から第1押圧面PM1までの移動方向における寸法D1より小さい。
第1加圧パッドP1、第2加圧パッドP2および中間加圧パッドP3が弾性変形していない状態において、第1保持面141から中間押圧面PM3までの移動方向における寸法D3は、第1保持面141から第2押圧面PM2までの移動方向における寸法D2より大きい。
【0049】
図2に戻り、摺動シート150は、エンドレスベルト130の内周面131と加圧パッドPとの間で挟まれて配置されている。摺動シート150は、エンドレスベルト130の内周面131に接する。回転体120が回転した場合、摺動シート150は、エンドレスベルト130と常に接触する。これに対し、回転体120が回転した場合、エンドレスベルト130の内周面の各部は、摺動シート150と接触する状態と接触しない状態を交互に繰り返す。
【0050】
ベルトガイド160は、エンドレスベルト130の移動を案内する部材である。ベルトガイド160は、エンドレスベルト130が滑らかに回転できるような曲面を有する。
【0051】
ステイ170は、パッドホルダ140、ベルトガイド160を支持する部材である。ステイ170は、金属板をプレス成形してなる。
【0052】
ここで、第1ニップ部NP1、第2ニップ部NP2および第3ニップ部NP3における圧力(ニップ圧)を
図4(c)のグラフに実線で示す。なお、
図4(c)のグラフの破線は、中間加圧パッドP3が配置されていない従来の定着装置(
図8参照)における圧力(ニップ圧)を示している。
【0053】
図4(c)に示すように、第1ニップ部NP1および第2ニップ部NP2における圧力は、
図8の形態と比較して大きな違いはない。これに対し、第3ニップ部NP3においては、
図8の形態と比較して圧力が高くなっており、第3ニップ部NP3の圧力と、第1ニップ部NP1および第2ニップ部NP2における圧力との差が
図8の形態と比較して少なくなっている。
また、中間加圧パッドP3がエンドレスベルト130を押圧する圧力の最低値K3は、第1加圧パッドP1がエンドレスベルト130を押圧する圧力の最高値K1より小さく、第2加圧パッドP2がエンドレスベルト130を押圧する圧力の最高値K2より小さい。
【0054】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
図8(a)に示すように、定着装置においてニップ領域を大きくするために、シートの搬送方向に離れた2つの加圧パッドが設けたものがある。この場合、
図8(b),(c)に示すように、2つの加圧パッド(第1加圧パッドP1と第2加圧パッドP2)の間の領域のうち、エンドレスベルト110が2つの加圧パッドに押圧されていない部分の割合が大きくなっている。このように加圧パッドに押圧されていない部分の割合が大きいと、ニップ領域を搬送されるシートSが滑ったり、ニップ領域でシートSがシワになったりすることで画質が低下する可能性があった。
しかし、本実施形態の定着装置8では、第1加圧パッドP1および第2加圧パッドP2の間に中間加圧パッドP3が配置されている。これにより、2つの加圧パッド(第1加圧パッドP1および第2加圧パッドP2)の間の領域において、エンドレスベルト110が加圧パッドに押圧されていない部分の割合を小さくすることができる。また、
図4(c)に示すように、第3ニップ部NP3における圧力の最低値K3が、
図8の形態における圧力の最低値K8より大きくなっている。また、
図4(c)に示すように、
図8の形態(破線)と比較して、第1加圧パッドP1と第2加圧パッドP2に間の領域のニップ圧が弱くなることを抑制できる。このため、第1加圧パッドP1と第2加圧パッドP2に間の領域において、圧力の変化を抑制することができる。
この結果、ニップ領域を搬送されるシートSが滑ったり、ニップ領域でシートSがシワになったりすることで画質が低下することを抑制できる。
【0055】
また、パッドホルダ140が第1保持面141、第2保持面142および中間保持面143を有するので、第1加圧パッドP1、第2加圧パッドP2および中間加圧パッドP3を相対位置と移動量を変えずに移動させることができる。
【0056】
また、第1加圧パッドP1、第2加圧パッドP2および中間加圧パッドP3が弾性変形していない状態において、第1保持面141から中間押圧面PM3までの移動方向における寸法D3は、第1保持面141から第1押圧面PM1までの移動方向における寸法D1より小さい。このため、第3ニップ部NP3における圧力の最低値K3が、第1加圧パッドP1の圧力の最高値K1よりも大きくなることを抑制できる。
【0057】
また、第1加圧パッドP1、第2加圧パッドP2および中間加圧パッドP3が弾性変形していない状態において、第1保持面141から中間押圧面PM3までの移動方向における寸法D3は、第1保持面141から第2押圧面PM2までの移動方向における寸法D2より大きい。
このため、柔らかい中間加圧パッドP3の中間押圧面PM3が、硬い第2加圧パッドP2の第2押圧面PM2よりも高い位置に位置することで、加熱ローラ81と第2加圧パッドP2に間でニップを形成しやすくなる。
【0058】
また、中間保持面143は、第1保持面141から加熱ローラ81に向けて突出している。このため、中間保持面143の突出量によって中間加圧パッドP3によるニップ圧を適正にすることができる。
【0059】
また、中間加圧パッドP3がエンドレスベルト130を押圧する圧力の最低値K3は、第1加圧パッドP1がエンドレスベルト130を押圧する圧力の最高値K1より小さく、第2加圧パッドP2がエンドレスベルト130を押圧する圧力の最高値K2より小さい。このため、中間加圧パッドP3がエンドレスベルト130を押圧する圧力が第1加圧パッドP1および第2加圧パッドP2がエンドレスベルト130を押圧する圧力より大きくなることを抑制できる。
【0060】
なお、本開示は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0061】
上述した実施形態では、第1加圧パッドP1、第2加圧パッドP2および中間加圧パッドP3が弾性変形していない状態において、第1保持面141から中間押圧面PM3までの移動方向における寸法D3は、第1保持面141から第2押圧面PM2までの移動方向における寸法D2より大きい構成であったが、
図5(a),(b)に示すように、第1保持面141から中間押圧面PM3までの移動方向における寸法D3が第1保持面141から第2押圧面PM2までの移動方向における寸法D2と同じであってもよい。この形態では、中間加圧パッドP32の移動方向における寸法が上述した実施形態よりも小さくなっている。
この
図5(a),(b)の形態においても、第1加圧パッドP1と第2加圧パッドP2の間の領域で、エンドレスベルト130が加圧パッドに押圧されていない部分の割合を小さくできる。また、
図5(c)に示すように、第1加圧パッドP1と第2加圧パッドP2に間の領域のニップ圧が弱くなることを抑制できる。
【0062】
上述した実施形態では、中間保持面143が第1保持面141および第2保持面142から加熱ローラ81に向けて突出している構成であったが、この構成に限られない。例えば、
図6(a),(b)に示すように、パッドホルダ340の中間保持面343が第1保持面341および第2保持面342と同一平面であってもよい。この形態では、中間加圧パッドP33の移動方向における寸法が上述した実施形態よりも大きくなっている。
この
図6(a),(b)の形態においても、第1加圧パッドP1と第2加圧パッドP2の間の領域で、エンドレスベルト130が加圧パッドに押圧されていない部分の割合を小さくできる。また、
図6(c)に示すように、第1加圧パッドP1と第2加圧パッドP2に間の領域のニップ圧が弱くなることを抑制できる。
【0063】
上述した実施形態では、中間加圧パッドP3は、直方体状の部材であったが、直方体径形状に限られない。例えば、
図7(a),(b)に示す中間加圧パッドP34は、エンドレスベルト130を押圧する先端が中間保持面143に保持される底面よりも搬送方向における寸法が小さい。具体的には、搬送方向において、中間加圧パッドP34の先端の寸法T1は、底面の寸法T2より小さい。
この
図7(a),(b)の形態においても、第1加圧パッドP1と第2加圧パッドP2の間の領域で、エンドレスベルト130が加圧パッドに押圧されていない部分の割合を小さくできる。また、
図7(c)に示すように、第1加圧パッドP1と第2加圧パッドP2に間の領域のニップ圧が弱くなることを抑制できる。さらに、この構成では、中間加圧パッドP3が弾性変形した場合に、第1加圧パッドP1と第2加圧パッドP2に干渉しにくい。
【0064】
上述した実施形態では、移動機構83は、加圧ユニット82を移動させていたが、移動機構は、加熱ローラを移動させてもよいし、加熱ローラおよび加圧ユニットの両方を移動させてもよい。すなわち、移動機構は、加熱ローラおよび加圧ユニットの少なくとも一方を移動方向に移動させ、加熱ローラと加圧ユニット(パッドホルダ140)の距離を変更する構成とすることができる。
【0065】
上述した実施形態では、第1保持面141、第2保持面142および中間保持面143は、移動方向に直交する面であったが、第1保持面141、第2保持面142および中間保持面143は、移動方向に直交する面でなくてもよい。
【0066】
上述した実施形態では、回転体として、ヒータ110を内蔵した円筒状のローラを例示したが、本開示はこれに限定されず、例えば、ヒータによって内周面が加熱されるエンドレスベルトであってもよい。また、ヒータを回転体の外部に配置し、回転体の外周面を加熱する外部加熱方式や、IH(Induction Heating)方式でもよい。また、エンドレスベルトの内部にヒータを配置し、エンドレスベルトの外周面に接触する回転体を間接的に加熱してもよい。また、回転体とエンドレスベルトがそれぞれヒータを内蔵していてもよい。
【0067】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0068】
8 定着装置
81 加熱ローラ
82 加圧ユニット
83 移動機構
130 エンドレスベルト
140 パッドホルダ
141 第1保持面
142 第2保持面
143 中間保持面
150 摺動シート
160 ベルトガイド
170 ステイ
P 加圧パッド
P1 第1加圧パッド
P2 第2加圧パッド
P3 中間加圧パッド