(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155616
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
G03G15/20 535
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065045
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】今枝 寛雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 訓史
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA06
2H033BA11
2H033BA12
2H033BB03
2H033BB13
2H033BB15
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB35
2H033BB38
2H033BE00
(57)【要約】
【課題】第1加圧パッドと第2加圧パッドの間の領域で、エンドレスベルトが加圧パッドに押圧されていない部分の割合を小さくする。
【解決手段】定着装置8は、加熱ローラ81と、エンドレスベルト130と、第1加圧パッドP1と、第2加圧パッドP2とを備える。第2加圧パッドP2は、第1加圧パッドP1の搬送方向の下流側に位置する。第1加圧パッドP1は、ベース部P11と、ベース部から搬送方向の下流側に向けて延出する延出部P12と、を有する。第1加圧パッドP1が変形していない状態において、延出部P12の移動方向における寸法S2は、ベース部P11の移動方向における寸法S1より小さい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱ローラと、
前記加熱ローラに接触し、前記加熱ローラと共にシートをニップして搬送方向に搬送するエンドレスベルトと、
弾性体からなり、前記エンドレスベルトを前記加熱ローラに押圧する第1加圧パッドと、
前記第1加圧パッドの前記搬送方向の下流側に位置し、弾性体からなり、前記エンドレスベルトを前記加熱ローラに押圧する第2加圧パッドと、を備え、
前記第1加圧パッドおよび前記第2加圧パッドは、前記加熱ローラに対して前記加熱ローラに向かう移動方向に相対移動可能であり、
前記第1加圧パッドは、ベース部と、前記ベース部から前記搬送方向の下流側に向けて延出する延出部と、を有し、
前記第1加圧パッドが変形していない状態において、前記延出部の前記移動方向における寸法は、前記ベース部の前記移動方向における寸法より小さいことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記第1加圧パッドを保持する第1保持面と、前記第2加圧パッドを保持する第2保持面と、を有し、前記移動方向に移動可能なパッドホルダを備えることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第1加圧パッドが変形していない状態において、前記ベース部の前記エンドレスベルトを押圧する第1押圧面と、前記延出部の前記エンドレスベルトを押圧する第2押圧面とは、前記移動方向における位置が等しいことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記パッドホルダは、前記第1保持面から前記加熱ローラに向けて突出し、前記延出部を前記移動方向における前記加熱ローラとは反対側から支持する支持面を有することを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項5】
前記第1加圧パッドが変形していない状態において、前記支持面は、前記延出部と接触せず、
前記第1加圧パッドが変形している状態において、前記支持面は、前記延出部と接触することを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記第2加圧パッドは、前記第1加圧パッドよりも硬く、
前記第1加圧パッドおよび前記第2加圧パッドが変形していない状態において、前記第1保持面から前記第1押圧面までの前記移動方向における寸法は、前記第1保持面から前記第2押圧面までの前記移動方向における寸法より大きいことを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項7】
前記ベース部は、前記第1保持面に保持される第1底面を有し、
前記第1底面は、前記移動方向における前記延出部の前記加熱ローラとは反対側の第2底面と同一平面上に位置することを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項8】
前記延出部が前記エンドレスベルトを押圧する圧力の最低値は、
前記ベースが前記エンドレスベルトを押圧する圧力の最高値より小さく、
前記第2加圧パッドが前記エンドレスベルトを押圧する圧力の最高値より小さいことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートにトナー像を熱定着する定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに加熱ローラとエンドレスベルトでニップして熱定着する定着装置が知られている。エンドレスベルトの内側には加圧パッドが配置されており、加圧パッドは、エンドレスベルトを加熱ローラに向けて押圧する。特許文献1には、ニップ領域を大きくするために、シートの搬送方向に離れた2つの加圧パッド(第1加圧パッドおよび第2加圧パッド)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、2つの加圧パッドとして第1加圧パッドおよび第2加圧パッドが設けられた定着装置においては、第1加圧パッドと第2加圧パッドの間の領域のうち、エンドレスベルトが加圧パッドに押圧されていない部分の割合が大きくなっている。
【0005】
そこで、本開示は、第1加圧パッドと第2加圧パッドの間の領域で、エンドレスベルトが加圧パッドに押圧されていない部分の割合を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための定着装置は、加熱ローラと、エンドレスベルトと、第1加圧パッドと、第2加圧パッドと、中間加圧パッドと、を備える。
エンドレスベルトは、加熱ローラに接触し、加熱ローラと共にシートをニップして搬送方向に搬送する。第1加圧パッドは、弾性体からなり、エンドレスベルトを加熱ローラに押圧する。第2加圧パッドは、第1加圧パッドの搬送方向の下流側に位置する。第2加圧パッドは、弾性体からなり、エンドレスベルトを加熱ローラに押圧する。
第1加圧パッドおよび第2加圧パッドは、加熱ローラに対して加熱ローラに向かう移動方向に相対移動可能である。
第1加圧パッドは、ベース部と、ベース部から搬送方向の下流側に向けて延出する延出部と、を有する。
第1加圧パッドが変形していない状態において、延出部の移動方向における寸法は、ベース部の移動方向における寸法より小さい。
【0007】
このような構成によれば、第1加圧パッドが延出部を有することで、第1加圧パッドと第2加圧パッドに間の領域において、エンドレスベルトが加圧パッドに押圧されていない部分の割合を小さくすることができる。
【0008】
前記した定着装置において、第1加圧パッドを保持する第1保持面と、第2加圧パッドを保持する第2保持面と、を有し、移動方向に移動可能なパッドホルダを備える構成としてもよい。
【0009】
このような構成によれば、定着装置がパッドホルダを備えることで、第1加圧パッドおよび第2加圧パッドを相対位置と移動量を変えずに移動させることができる。
【0010】
前記した定着装置において、第1加圧パッドが変形していない状態において、ベース部のエンドレスベルトを押圧する第1押圧面と、延出部のエンドレスベルトを押圧する第2押圧面とは、移動方向における位置が等しい構成としてもよい。
【0011】
このような構成によれば、エンドレスベルトの内周面に対して連続的に第1加圧パッドを押圧させることができる。
【0012】
前記した定着装置において、パッドホルダは、第1保持面から加熱ローラに向けて突出し、延出部を移動方向における加熱ローラとは反対側から支持する支持面を有する構成としてもよい。
【0013】
このような構成によれば、延出部が支持面に支持されることで、加熱ローラと延出部の間で適切なニップ圧を発生することができる。
【0014】
前記した定着装置において、第1加圧パッドが変形していない状態において、支持面は、延出部と接触せず、第1加圧パッドが変形している状態において、支持面は、延出部と接触する構成としてもよい。
【0015】
前記した定着装置において、第2加圧パッドは、第1加圧パッドよりも硬く、第1加圧パッドおよび第2加圧パッドが変形していない状態において、第1保持面から第1押圧面までの移動方向における寸法は、第1保持面から第2押圧面までの移動方向における寸法より大きい構成としてもよい。
【0016】
前記した定着装置において、第1底面は、移動方向における延出部の加熱ローラとは反対側の第2底面と同一平面上に位置する構成としてもよい。
【0017】
このような構成によれば、パッドホルダが複雑な形状となることを抑制できる。
【0018】
前記した定着装置において、延出部がエンドレスベルトを押圧する圧力の最低値は、ベース部がエンドレスベルトを押圧する圧力の最高値より小さく、第2加圧パッドがエンドレスベルトを押圧する圧力の最高値より小さい構成としてもよい。
【0019】
このような構成によれば、延出部がエンドレスベルトを押圧する圧力がベース部および第2加圧パッドがエンドレスベルトを押圧する圧力より大きくなることを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1加圧パッドと第2加圧パッドの間の領域で、エンドレスベルトが加圧パッドに押圧されていない部分の割合を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示に係る定着装置を備えた画像形成装置の断面図である。
【
図2】実施形態に係る定着装置を示す断面図である。
【
図3】ニップしていない状態の定着装置の断面図である。
【
図4】
図3における加圧パッド付近の拡大図(a)と、
図2における加圧パッド付近の拡大図(b)と、搬送方向におけるパッドの押圧力の分布を示すグラフ(c)である。
【
図5】第2実施形態における
図4に対応する図(a),(b),(c)である。
【
図6】第3実施形態における
図4に対応する図(a),(b),(c)である。
【
図7】第4実施形態における
図4に対応する図(a),(b),(c)である。
【
図8】第5実施形態における
図4に対応する図(a),(b),(c)である。
【
図9】比較例における
図4に対応する図(a),(b),(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、開示の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、実施形態に係る定着装置8は、レーザプリンタなどの画像形成装置1で使用される。画像形成装置1は、本体筐体2と、シート供給部3と、露光装置4と、現像剤像形成部5と、定着装置8とを備えている。
【0023】
シート供給部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、紙などのシートSが収容されるシートトレイ31と、シート供給機構32とを備えている。シートトレイ31内のシートSは、シート供給機構32により現像剤像形成部5に供給される。
【0024】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しない光源装置、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。露光装置4は、光源装置から出射される画像データに基づく光ビーム(一点鎖線参照)を感光体ドラム61の表面で高速走査することで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0025】
現像剤像形成部5は、露光装置4の下方に配置されている。現像剤像形成部5は、プロセスカートリッジとして構成され、本体筐体2の前部に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能となっている。現像剤像形成部5は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63と、現像ローラ64と、供給ローラ65と、乾式トナーからなる現像剤を収容する現像剤収容部66とを備えている。
【0026】
現像剤像形成部5は、帯電器62により感光体ドラム61の表面を一様に帯電する。その後、感光体ドラム61は、露光装置4からの光ビームにより表面が露光されることで、表面に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、現像剤像形成部5は、現像剤収容部66内の現像剤を、供給ローラ65を介して現像ローラ64に供給する。
【0027】
そして、現像剤像形成部5は、現像ローラ64上の現像剤を感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給する。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上に現像剤像が形成される。その後、現像剤像形成部5は、シート供給部3から供給されたシートSを感光体ドラム61と転写ローラ63との間で搬送することにより感光体ドラム61上の現像剤像をシートSに転写する。
【0028】
定着装置8は、現像剤像形成部5の後方に配置されている。定着装置8の詳細については後述する。定着装置8は、現像剤像が転写されたシートSを通過させることにより現像剤像をシートSに熱定着する。画像形成装置1は、現像剤像が熱定着されたシートSを搬送ローラ23と排出ローラ24により本体筐体2の外の排紙トレイ22上に排出する。
【0029】
定着装置8は、加熱ローラ81と、加圧ユニット82と、移動機構83とを備えている。
【0030】
移動機構83は、加圧ユニット82を直線状に移動させ、加熱ローラ81と加圧ユニット82の距離を変更する公知の機構である。具体的に、加圧ユニット82は、移動機構83によって、
図2に示すニップ位置と、
図3に示すリリース位置に移動される。
図2に示すように、加圧ユニット82がニップ位置に位置する場合、加圧ユニット82は、移動機構83によって加熱ローラ81に向けて付勢される。
図3に示すように、加圧ユニット82がリリース位置に位置する場合、加圧ユニット82は、移動機構83によって加熱ローラ81に向けて付勢されない。
なお、以下の説明では、加圧ユニット82が加熱ローラ81に向けて移動する方向を、「移動方向」と称する。本実施形態では、移動方向は、加熱ローラ81と加圧ユニット82が向かい合う方向である。
【0031】
図2に示すように、加熱ローラ81は、ヒータ110と、回転体120とを備えている。また、加圧ユニット82は、エンドレスベルト130と、パッドホルダ140と、加圧パッドPと、摺動シート150と、ベルトガイド160と、ステイ170とを備えている。なお、以下の説明では、エンドレスベルト130の幅方向を単に「幅方向」という。幅方向は、回転体120の回転軸線X1が延びる方向である。幅方向は、移動方向に直交している。
【0032】
ヒータ110は、回転体120とエンドレスベルト130との少なくとも一方を加熱する。本実施形態では、ヒータ110は、回転体120の内側に配置されており、回転体120を加熱する。
【0033】
回転体120は、円筒状のローラであり、素管121と、弾性層122とを有している。素管121は、金属製のパイプである。弾性層122は、回転軸線X1を中心に回転可能である。回転体120は、画像形成装置1に設けられた図示しないモータによって駆動されて、
図2の反時計回りに回転する。弾性層122は、素管121の外周に設けられている。別の言い方をすると、回転体120は、表面に弾性層122を有する。弾性層122は、弾性を有している。
【0034】
エンドレスベルト130は、金属などからなる無端状のベルトである。エンドレスベルト130は、画像形成装置1で搬送される最大のシートSの幅よりも大きな幅を有する。エンドレスベルト130は、加熱ローラ81の外周面に接触する。エンドレスベルト130は、加熱ローラ81と共にシートSをニップして搬送方向に搬送する。エンドレスベルト130は、回転体120が回転したときに回転体120またはシートSとの摩擦によって
図2の時計回りに従動回転する。
【0035】
図4(a)に示すように、パッドホルダ140は、加圧パッドPを保持する部材である。パッドホルダ140は、第1保持面141と、第2保持面142と、支持面143と、を有する。
【0036】
第1保持面141と第2保持面142は、同一平面状に位置する。支持面143は、第1保持面141から加熱ローラ81に向けて突出している。すなわち、支持面143は、第1保持面141および第2保持面142よりシートSの搬送経路の近くに位置する。支持面143は、後述する延出部P12を移動方向における加熱ローラ81とは反対側から支持する面である。本実施形態では、第1保持面141、第2保持面142および支持面143は、移動方向に直交する面である。
【0037】
加圧パッドPは、回転体120との間でエンドレスベルト130、摺動シート150およびシートSを挟んでニップ部NPを形成する部材である。なお、以下の説明では、ニップ部NPでのシートSの搬送方向を単に「搬送方向」という。搬送方向は、幅方向に直交している。
【0038】
加圧パッドPは、第1加圧パッドP1と、第2加圧パッドP2とを有する。第2加圧パッドP2は、第1加圧パッドP1の搬送方向の下流側に位置する。
【0039】
第1加圧パッドP1および第2加圧パッドP2が弾性変形していない状態において、第1加圧パッドP1と第2加圧パッドP2の間には搬送方向において隙間G1がある。
【0040】
第2加圧パッドP2は、第1加圧パッドP1よりデュロメータ硬さが高い。すなわち、第2加圧パッドP2は、第1加圧パッドP1よりも硬い。デュロメータ硬さは、ISO7619-1に規定されている。デュロメータ硬さは,規定した条件下で試験片に規定の押針を押し込んだときの押針の押込み深さから得られる値である。例えば、弾性層122のデュロメータ硬さが5の場合、第1加圧パッドP1のデュロメータ硬さは6~10、第2加圧パッドP2のデュロメータ硬さは70~90であることが好ましい。
【0041】
第1加圧パッドP1は、弾性体からなり、弾性変形可能である。例えば、第1加圧パッドP1は、シリコンゴムなどのゴムからなる。第1加圧パッドP1は、ベース部P11と、延出部P12とを有する。
【0042】
ベース部P11は、直方体形状を有している。ベース部P11は、第1押圧面PM1と、第1底面QM1とを有する。第1押圧面PM1は、エンドレスベルト130を押圧する面である。第1押圧面PM1は、第1加圧パッドP1が変形している状態において、摺動シート150に接触している(
図4(b)参照)。第1底面QM1は、第1保持面141に保持される面である。
【0043】
ベース部P11は、弾性層122よりも厚みが大きいので、回転体120と第1加圧パッドP1が互いに押し付けられた場合に、弾性層122の変形量は、ベース部P11の変形量より小さい。ベース部P11は、回転体120との間でエンドレスベルト130を挟んで第1ニップ部NP1を形成する。ベース部P11は、エンドレスベルト130を加熱ローラ81に押圧する。
【0044】
延出部P12は、ベース部P11から搬送方向の下流側に向けて延出する部分である。延出部P12は、ベース部P11より小さい直方体形状を有している。第1加圧パッドP1が変形していない状態において、延出部P12の移動方向における寸法D2は、ベース部P11の移動方向における寸法D1より小さい。
【0045】
延出部P12は、第2押圧面PM2と、第2底面QM2とを有する。第2押圧面PM2は、エンドレスベルト130を押圧する面である。第1加圧パッドP1が変形していない状態において、第1押圧面PM1と、第2押圧面PM2とは、連続した同一平面である。すなわち、第1加圧パッドP1が変形していない状態において、第1押圧面PM1と、第2押圧面PM2とは、移動方向における位置が等しい。
【0046】
第2押圧面PM2は、第1加圧パッドP1が変形している状態において、摺動シート150に接触している(
図4(b)参照)。第2底面QM2は、支持面143に支持される面である。第1加圧パッドP1が変形していない状態において、第1底面QM1と、第2底面QM2とは、連続した同一平面ではない。第1加圧パッドP1が変形していない状態において、第1底面QM1と、第2底面QM2とは、移動方向における位置が異なる。具体的には、移動方向において、第2底面QM2は、第1底面QM1より加熱ローラ81の近くに位置する。
【0047】
延出部P12は、弾性層122よりも厚みが大きいので、回転体120と第1加圧パッドP1が互いに押し付けられた場合に、弾性層122の変形量は、延出部P12の変形量より小さい。延出部P12は、回転体120との間でエンドレスベルト130を挟んで第2ニップ部NP2を形成する(
図2参照)。延出部P12は、エンドレスベルト130を加熱ローラ81に押圧する。
【0048】
第1加圧パッドP1が変形していない状態において、支持面143は、延出部P12と接触していない。
図4(b)に示すように、第1加圧パッドP1が変形している状態において、支持面143は、延出部P12と接触する。
【0049】
第2加圧パッドP2は、直方体状の部材である。第2加圧パッドP2は、弾性体からなり、弾性変形可能である。例えば、第2加圧パッドP2は、シリコンゴムなどのゴムからなる。
【0050】
図2に示すように、第2加圧パッドP2は、弾性層122よりもデュロメータ硬さが高いが、第2加圧パッドP2は、弾性層122よりも厚みが大きいので、回転体120と第1加圧パッドP1が互いに押し付けられた場合に、弾性層122の変形量は、第2加圧パッドP2の変形量より小さい。第2加圧パッドP2は、回転体120との間でエンドレスベルト130を挟んで第2ニップ部NP2を形成する。第2加圧パッドP2は、エンドレスベルト130を加熱ローラ81に押圧する。
【0051】
図4(a)に示すように、第2加圧パッドP2は、第3押圧面PM3と、第3底面QM3とを有する。第3押圧面PM3は、エンドレスベルト130を押圧する面である。第3底面QM3は、支持面142に支持される面である。
【0052】
第1加圧パッドP1および第2加圧パッドP2が弾性変形していない状態において、第2保持面142から第3押圧面PM3までの移動方向における寸法D3は、第1保持面141から第1押圧面PM1までの移動方向における寸法D1より小さい。
また、第1加圧パッドP1および第2加圧パッドP2が弾性変形していない状態において、第2保持面142から第3押圧面PM3までの移動方向における寸法D3は、第2底面QM2から第2押圧面PM2までの移動方向における寸法D2より大きい。
【0053】
ここで、パッドホルダ140は、移動機構83によって、移動方向に移動可能である。このため、第1加圧パッドP1および第2加圧パッドP2は、加熱ローラ120に対して移動方向に相対移動可能である。
【0054】
図2に戻り、摺動シート150は、エンドレスベルト130の内周面131と加圧パッドPとの間で挟まれて配置されている。摺動シート150は、エンドレスベルト130の内周面131に接する。回転体120が回転した場合、摺動シート150は、エンドレスベルト130と常に接触する。これに対し、回転体120が回転した場合、エンドレスベルト130の内周面131の各部は、摺動シート150と接触する状態と接触しない状態を交互に繰り返す。
【0055】
ベルトガイド160は、エンドレスベルト130の移動を案内する部材である。ベルトガイド160は、エンドレスベルト130が滑らかに回転できるような曲面を有する。
【0056】
ステイ170は、パッドホルダ140、ベルトガイド160を支持する部材である。ステイ170は、金属板をプレス成形してなる。
【0057】
ここで、第1ニップ部NP1、第2ニップ部NP2および第3ニップ部NP3における圧力(ニップ圧)を
図4(c)のグラフに実線で示す。なお、
図4(c)のグラフの破線は、延出部を有さない従来の定着装置(
図8参照)における圧力(ニップ圧)を示している。
【0058】
図4(c)に示すように、第1ニップ部NP1および第3ニップ部NP3における圧力は、
図9の形態と比較して大きな違いはない。これに対し、第2ニップ部NP2においては、
図9の形態と比較して圧力が高くなっており、第2ニップ部NP2の圧力と、第1ニップ部NP1および第3ニップ部NP3における圧力との差が
図9の形態と比較して小さくなっている。一例として、
図9の形態における最低圧力K8に対して、延出部P12がエンドレスベルト130を押圧する圧力の最低値K3が高い。
また、延出部P12がエンドレスベルト130を押圧する圧力の最低値K3は、ベース部P11がエンドレスベルト130を押圧する圧力の最高値K1より小さく、第2加圧パッドP2がエンドレスベルト130を押圧する圧力の最高値K2より小さい。
【0059】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
図8(a)に示すように、定着装置においてニップ領域を大きくするために、シートの搬送方向に離れた2つの加圧パッドが設けたものがある。この場合、
図8(b),(c)に示すように、2つの加圧パッド(第1加圧パッドP1と第2加圧パッドP2)の間の領域のうち、エンドレスベルト110が2つの加圧パッドに押圧されていない部分の割合が大きくなっている。このように加圧パッドに押圧されていない部分の割合が大きいと、ニップ領域を搬送されるシートSが滑ったり、ニップ領域でシートSがシワになったりすることで画質が低下する可能性があった。
しかし、本実施形態の定着装置8では、第1加圧パッドP1が延出部P12を有することで、ベース部P11と第2加圧パッドP2の間の領域において、延出部P12がエンドレスベルト130を加熱ローラ81に押圧する。このため、第1加圧パッドと第2加圧パッドに間の領域において、エンドレスベルトが加圧パッドに押圧されていない部分の割合を小さくすることができる。また、
図4(c)に示すように、第2ニップ部NP2における圧力の最低値K3が、
図8の形態における圧力の最低値K8より大きくなっている。また、
図4(c)に示すように、
図8の形態(破線)と比較して、第1加圧パッドP1と第2加圧パッドP2に間の領域のニップ圧が弱くなることを抑制できる。このため、第1加圧パッドP1と第2加圧パッドP2に間の領域において、圧力の変化を抑制することができる。
この結果、ニップ領域を搬送されるシートSが滑ったり、ニップ領域でシートSがシワになったりすることで画質が低下することを抑制できる。
【0060】
また、パッドホルダ140が第1保持面141および第2保持面142を有するので、第1加圧パッドP1および第2加圧パッドP2を相対位置と移動量を変えずに移動させることができる。
【0061】
また、第1加圧パッドP1が変形していない状態において、ベース部P11の第1押圧面PM1と、延出部P12の第2押圧面PM2とは、移動方向における位置が等しい。このため、エンドレスベルト130の内周面131に対して連続的に第1加圧パッドP1を押圧させることができる。
【0062】
また、パッドホルダ140は、第1保持面141から加熱ローラに向けて突出し、延出部P12を移動方向における加熱ローラとは反対側から支持する支持面143を有する。このため、加熱ローラと延出部の間で適切なニップ圧を発生することができる。
【0063】
また、延出部P12がエンドレスベルト130を押圧する圧力の最低値K3は、ベース部P11がエンドレスベルト130を押圧する圧力の最高値K1より小さく、第2加圧パッドP2がエンドレスベルト130を押圧する圧力の最高値K2より小さい。このため、延出部P12がエンドレスベルト130を押圧する圧力がベース部P11および第2加圧パッドP2がエンドレスベルト130を押圧する圧力より大きくなることを抑制できる。
【0064】
なお、本開示は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0065】
上述した実施形態では、
図4(a)に示すように、第1加圧パッドP1が変形していない状態において、支持面143は、延出部P12と接触していない構成であったが、本開示はこれに限定されない。
【0066】
例えば、
図5(a),(b)に示す第1加圧パッドP101は、ベース部P11と延出部P112を有している。この形態では、
図5(a)で示すように、第1加圧パッドP101が変形していない状態において、支持面143は、延出部P112と接触している。
図5(b)に示すように、第1加圧パッドP101が変形している状態においても、支持面143は、延出部P112と接触する。
この形態においても、第1加圧パッドと第2加圧パッドに間の領域において、エンドレスベルトが加圧パッドに押圧されていない部分の割合を小さくすることができる。また、
図5(c)に示すように、第2ニップ部NP2の圧力と、第1ニップ部NP1および第3ニップ部NP3における圧力との差が
図9の形態と比較して小さくなっている。
【0067】
上述した実施形態では、
図4(a)に示すように、第1加圧パッドP1が変形していない状態において、第1押圧面PM1と第2押圧面PM2とは連続した同一平面であり、第1底面QM1と第2底面QM2とは連続した同一平面ではない構成であったが、本開示はこれに限定されない。
【0068】
例えば、
図6(a),(b)に示す第1加圧パッドP201は、ベース部P11と延出部P212を有している。この形態では、
図6(a)で示すように、第1加圧パッドP301が変形していない状態において、第1底面QM1と第2底面QM2とは連続した同一平面であり、第1押圧面PM1と第2押圧面PM2とは連続した同一平面ではない
この形態においても、第1加圧パッドと第2加圧パッドに間の領域において、エンドレスベルトが加圧パッドに押圧されていない部分の割合を小さくすることができる。また、
図6(c)に示すように、第2ニップ部NP2の圧力と、第1ニップ部NP1および第3ニップ部NP3における圧力との差が
図9の形態と比較して小さくなっている。
【0069】
例えば、
図7(a),(b)に示す第1加圧パッドP301は、ベース部P11と延出部P312を有している。この形態では、
図7(a)で示すように、第1加圧パッドP301が変形していない状態において、第1押圧面PM1と第2押圧面PM2とは連続した同一平面ではなく、第1底面QM1と第2底面QM2も連続した同一平面でない。
この形態においても、第1加圧パッドと第2加圧パッドに間の領域において、エンドレスベルトが加圧パッドに押圧されていない部分の割合を小さくすることができる。また、
図7(c)に示すように、第2ニップ部NP2の圧力と、第1ニップ部NP1および第3ニップ部NP3における圧力との差が
図9の形態と比較して小さくなっている。
【0070】
図6、
図7の形態におけるパッドホルダ340は、第1保持面341から突出する支持面を有しておらず、上述した実施形態に比べてシンプルな形状である。このため、パッドホルダ340が複雑な形状となることを抑制できる。
【0071】
上述した実施形態では、
図4(a)に示すように、第1加圧パッドP1が変形していない状態において、延出部P12が直方体形状を有する構成であったが、本開示はこれに限定されない。
【0072】
例えば、
図8(a),(b)に示す第1加圧パッドP401は、ベース部P11と延出部P412を有している。この形態では、
図8(a)で示すように、第1加圧パッドP401が変形していない状態において、延出部P412が直方体形状を有していない。この形態における延出部P412の第2底面QM2は、搬送方向の下流側にいくにつれて第2押圧面PM2に近づくように傾斜している平面である。
この形態においても、第1加圧パッドと第2加圧パッドに間の領域において、エンドレスベルトが加圧パッドに押圧されていない部分の割合を小さくすることができる。また、
図8(c)に示すように、第2ニップ部NP2の圧力と、第1ニップ部NP1および第3ニップ部NP3における圧力との差が
図9の形態と比較して小さくなっている。
さらに、
図8(a)に示した第2底面QM2は平面であったが、曲面である構成としてもよい。
【0073】
上述した実施形態では、移動機構83は、加圧ユニット82を移動させていたが、移動機構は、加熱ローラを移動させてもよいし、加熱ローラおよび加圧ユニットの両方を移動させてもよい。すなわち、移動機構は、加熱ローラおよび加圧ユニットの少なくとも一方を移動方向に移動させ、加熱ローラと加圧ユニット(パッドホルダ140)の距離を変更する構成とすることができる。
【0074】
上述した実施形態では、第1保持面141および第2保持面142は、移動方向に直交する面であったが、第1保持面141および第2保持面142は、移動方向に直交する面でなくてもよい。
【0075】
上述した実施形態では、第1加圧パッドP1および第2加圧パッドP2が弾性変形していない状態において、第2保持面142から第2押圧面PM3までの移動方向における寸法D3が第2底面QM2から第2押圧面PM2までの移動方向における寸法D2より大きい構成であったが、第2保持面142から第2押圧面PM3までの移動方向における寸法D3が第2底面QM2から第2押圧面PM2までの移動方向における寸法D2より小さくてもよい。
【0076】
上述した実施形態では、回転体として、ヒータ110を内蔵した円筒状のローラを例示したが、本開示はこれに限定されず、例えば、ヒータによって内周面が加熱されるエンドレスベルトであってもよい。また、ヒータを回転体の外部に配置し、回転体の外周面を加熱する外部加熱方式や、IH(Induction Heating)方式でもよい。また、エンドレスベルトの内部にヒータを配置し、エンドレスベルトの外周面に接触する回転体を間接的に加熱してもよい。また、回転体とエンドレスベルトがそれぞれヒータを内蔵していてもよい。
【0077】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0078】
8 定着装置
81 加熱ローラ
82 加圧ユニット
83 移動機構
130 エンドレスベルト
140 パッドホルダ
141 第1保持面
142 第2保持面
143 支持面
150 摺動シート
160 ベルトガイド
170 ステイ
P 加圧パッド
P1 第1加圧パッド
P11 ベース部
P12 延出部
P2 第2加圧パッド
PM1 第1押圧面
PM2 第2押圧面
PM3 第3押圧面
QM1 第1底面
QM2 第2底面
QM3 第3底面