(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155618
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】自律移動体における地図作成方法及び地図作成機能を有する自律移動体
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20231016BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065052
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】小林 慎平
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB11
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD02
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG06
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG10
5H301GG19
5H301LL01
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】作成される地図の完成度を従来に比べて向上させることができる自律移動体における地図作成方法及び地図作成機能を有する自律移動体を提供する。
【解決手段】自律移動体としての自走式床清掃装置1は、第1情報表示部41と、測域センサ55と、測域センサ55で取得された障害物との距離情報に基づき障害物を含む地図データを作成する地図データ作成部102と、地図データ中の障害物の途切れ部を検出する途切れ部検出部103と、検出された障害物の途切れ部を地図データ上で強調表示するための途切れ部データを作成するデータ作成部104とを有し、障害物の途切れ部が強調表示された状態の地図データを第1情報表示部41に表示することにより、地図データ中の障害物の途切れ部を操作者に通知する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律移動体における地図作成方法であって、
操作者の操作によって前記自律移動体が移動すること、
前記自律移動体の測域センサで取得された障害物との距離情報に基づき前記障害物を含む地図データを作成すること、
前記地図データ中の前記障害物の途切れ部を検出すること、及び、
前記障害物の途切れ部を前記操作者に通知すること、
を含む、地図作成方法。
【請求項2】
前記地図データを表示部に表示することを含み、
前記障害物の途切れ部を前記操作者に通知することは、前記表示部に表示された前記地図データ上で前記障害物の途切れ部を強調表示することを含む、
請求項1に記載の地図作成方法。
【請求項3】
前記地図データは、画素値が高いほどその画素に障害物が存在する可能性が高いことを示す多階調の画像データであり、
前記障害物の途切れ部を検出することは、前記地図データに対して二値化処理及び細線化処理を施して細線化画像を得ること、及び、前記細線化画像の端点を検出することを含む、
請求項1又は2に記載の地図作成方法。
【請求項4】
地図作成機能を有し、操作者の操作により移動して周囲の環境に応じた地図を作成する自律移動体であって、
測域センサと、
前記測域センサで取得された障害物との距離情報に基づき前記障害物を含む地図データを作成する地図データ作成部と、
前記地図データ中の前記障害物の途切れ部を検出する途切れ部検出部と、
前記障害物の途切れ部を前記操作者に通知する通知部と、
を有する、自律移動体。
【請求項5】
前記地図データを表示する表示部を有し、
前記通知部は、前記表示部に表示された前記地図データ上で前記障害物の途切れ部を強調表示することにより、前記障害物の途切れ部を前記操作者に通知する、
請求項4に記載の自律移動体。
【請求項6】
前記地図データ作成部は、前記地図データを、画素値が高いほどその画素に障害物が存在する可能性が高いことを示す多階調の画像データとして作成し、
前記途切れ検出部は、前記地図データに対して二値化処理及び細線化処理を施して得られた細線化画像の端点を検出することにより、前記地図データ中の前記障害物の途切れ部を検出する、
請求項4又は5に記載の自律移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律移動体における地図作成方法及び地図作成機能を有する自律移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
地図作成機能を有する自律移動体の一例として、特許文献1に記載された清掃用のロボット(自律走行体)が知られている。特許文献1に記載されたロボットは、駆動輪と、レーザレンジファインダ(LRF:Lase Range Finder)と、駆動輪の回転角度を出力するエンコーダとを有する。特許文献1に記載されたロボットは、操作者の操作によって移動し、LRFの出力であるロボットと壁などの障害物との距離を示す距離情報と、エンコーダからの出力である駆動輪の回転数を示す回転数情報とを基に地図を作成するように構成されている。
【0003】
ここで、LRFには測距範囲があるため、地図の作成中は、ロボットと障害物との距離を適切に保つ必要がある。この点に関し、特許文献1に記載されたロボットは、LRFの出力(距離情報)に基づきロボットが移動すべき方向を判定し、判定された移動すべき方向を操作者に通知するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の手法によれば、地図の作成中、障害物を精度よく測距できる方向にロボットを移動させることが可能である。しかし、特許文献1では、例えば、障害物情報が不足している可能性がある場所にロボットを移動させて障害物情報の追加取得を行うようなことはできない。このため、作成される地図の完成度を向上させるという観点からは依然として改良の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、作成される地図の完成度を従来に比べて向上させることができる自律移動体における地図作成方法及び地図作成機能を有する自律移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、自律移動体における地図作成方法が提供される。この自律移動体における地図作成方法は、操作者の操作によって前記自律移動体が移動すること、前記自律移動体の測域センサで取得された障害物との距離情報に基づき前記障害物を含む地図データを作成すること、前記地図データ中の前記障害物の途切れ部を検出すること、及び、前記障害物の途切れ部を前記操作者に通知することを含む。
【0008】
本発明の他の側面によると、地図作成機能を有し、操作者の操作により移動して周囲の環境に応じた地図を作成する自律移動体が提供される。この自律移動体は、測域センサと、前記測域センサで取得された障害物との距離情報に基づき前記障害物を含む地図データを作成する地図データ作成部と、前記地図データ中の前記障害物の途切れ部を検出する途切れ部検出部と、前記障害物の途切れ部を前記操作者に通知する通知部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作成される地図の完成度を従来に比べて向上させることができる自律移動体における地図作成方法及び地図作成機能を有する自律移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】自律移動体の一例としての自走式床清掃装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示された自走式床清掃装置の模式的な底面図である。
【
図3】
図1のA-A断面図に相当する図であり、
図1に示された自走式床清掃装置の内部の要部を示す図である。
【
図4】
図1に示された自走式床清掃装置が内部に有する清掃ユニットの斜視図である。
【
図5】
図1に示された自走式床清掃装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図1に示された自走式床清掃装置の地図作成モードでの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】地図データ中の障害物の途切れ部を検出する途切れ部検出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】途切れ部検出処理の概要を説明するための図である。
【
図9】途切れ部検出処理の概要を説明するための図である。
【
図10】途切れ部検出処理の概要を説明するための図である。
【
図11】途切れ部検出処理の概要を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、ここでは自律移動体が自走式床清掃装置である場合について説明するが、本発明は、自走式床清掃装置に限定されるものではなく、地図作成機能を有する様々な自律移動体に適用可能である。
【0012】
図1~
図5は、本発明の一実施形態に係る自律移動体の一例としての地図作成機能を有する自走式床清掃装置を示している。
図1は、自律移動体の一例としての自走式床清掃装置の斜視図である。
図2は、
図1に示された自走式床清掃装置の模式的な底面図である。
図3は、
図1のA-A断面図に相当する図であり、
図1に示された自走式床清掃装置の内部の要部を示す図である。
図4は、
図1に示された自走式床清掃装置が有する清掃ユニットの斜視図である。
図5は、
図1に示された自走式床清掃装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。なお、
図1に示された自走式床清掃装置は、バッテリ等の電源を内蔵しているが、当該電源については
図5に電源VBとして示し、説明等は省略する。
【0013】
図1~
図5を参照すると、実施形態に係る自走式床清掃装置(以下単に「床清掃装置」という)1は、床面を自走するための走行部2を有する。走行部2は、床清掃装置1の下部に配置されている。本実施形態において、走行部2は、左右一対の走行用モータ21,21と、走行用モータ21,21によって駆動される左右一対の駆動輪22,22と、左右一対の従動輪23,23とを含む。左右一対の駆動輪22,22は、床清掃装置1の下部後側に配置され、左右一対の従動輪23,23は、床清掃装置1の下部前側に配置されている。そして、床清掃装置1は、走行用モータ21,21が制御ユニット10の制御に基づき一対の駆動輪22,22を駆動することにより、床面を移動(走行)するように構成されている。なお、ここでは、左右一対の従動輪23,23が設けられているが、これに限られるものではなく、従動輪は1つであってもよい。
【0014】
また、実施形態に係る床清掃装置1は、床面を清掃するための清掃ユニット3を有している。清掃ユニット3は、床清掃装置1の前後方向における左右一対の駆動輪22,22と左右一対の従動輪23,23との間に配置されている。
【0015】
主に
図3及び
図4を参照すると、清掃ユニット3は、上下方向に延びる駆動シャフト31と、駆動シャフト31を駆動するシャフト駆動部32と、駆動シャフト31に取り付けられた清掃パッド33とを有する。
【0016】
シャフト駆動部32は、駆動シャフト31の上端側を収容している。シャフト駆動部32は、駆動シャフト31を上下方向に進退させること及び回転(回動を含む。以下同じ)させることが可能に構成されている。具体的には、本実施形態において、シャフト駆動部32は、駆動シャフト31を下方に進出させること、進出させた駆動シャフト31を上方に後退させること、及び任意の進出位置において駆動シャフト31を正転方向及び逆転方向のそれぞれに回転させることが可能に構成されている。シャフト駆動部32は、一例として、正転及び逆転が可能な駆動モータと、前記駆動モータの回転を駆動シャフト31に伝達する回転伝達機構と、前記モータの回転を駆動シャフト31の軸方向の直線運動に変換する変換機構と、前記駆動モータと前記回転伝達機構又は前記変換機構とを連結させる連結機構とを含んで構成され得る。但し、これに限られるものではなく、シャフト駆動部32は、駆動シャフト31を進退させる第1駆動部と、駆動シャフト31を回転させる第2駆動部とを別々に有してもよい。
【0017】
清掃パッド33は、平面視で円形に形成され、その上面中心部が駆動シャフト31の下端部に取り付けられている。清掃パッド33は、駆動シャフト31の下端部に固定されたパッド保持部331と、パッド保持部331の下面に取り外し可能に取り付けられたパッド部材332とで構成されている。パッド保持部331は、剛体として形成されている。パッド部材332は、床面に接触する部材であり、弾性体で形成されている。
【0018】
ここで、清掃ユニット3の動作を簡単に説明する。床清掃装置1が床面の清掃を行わない場合、清掃ユニット3において、駆動シャフト31は、所定の初期位置にある。このとき、清掃パッド33は、床面の上方の待機位置に位置しており、清掃パッド33(のパッド部材332)は、床面に接触しない。床清掃装置1が床面の清掃を行う場合、清掃ユニット3において、シャフト駆動部32は、制御ユニット10の制御に基づき、駆動シャフト31を前記初期位置から下方の所定位置まで進出させる。これにより、清掃パッド33が前記待機位置から清掃位置まで下降してパッド部材332が床面に接触する。そして、シャフト駆動部32は、清掃パッド33が床面に接触した状態で駆動シャフト31を回転させることで清掃パッド33を回転させる。つまり、清掃ユニット3は、清掃パッド33(のパッド部材332)を床面に接触させた状態で、さらに言えば、清掃パッド33(のパッド部材332)を床面に押圧した状態で回転させることで床面の清掃を行うように構成されている。
【0019】
床清掃装置1の説明に戻り、
図1を参照すると、床清掃装置1の上面には、操作パネル4が設けられている。本実施形態において、操作パネル4は、各種情報を表示する第1情報表示部41を有する。第1情報表示部41は、主に操作者に対する情報を表示する。第1情報表示部41は、操作者がタッチ操作で指示などを入力可能なタッチパネルであってもよい。また、操作パネル4には、床清掃装置1の動作モードを選択するためのモード選択スイッチ42及び床清掃装置1を緊急停止させるための緊急停止ボタン43などが配置されている。なお、本実施形態において、床清掃装置1の動作モードは、操作者の操作により移動及び床面の清掃を行う手動清掃モードと、移動及び床面の清掃を自動的に行う自動清掃モードと、操作者の操作により移動して周囲の環境に応じた地図を作成する地図作成モードとを含む。
【0020】
また、床清掃装置1の前面には、第2情報表示部51、3D画像センサ52、ドライブレコーダ53、超音波センサ54、LRFやLiDAR(Light Detection And Ranging)などの測域センサ55、及びバンパーセンサ56が上から下に向かってこの順で配置されている。
【0021】
第2情報表示部51は、床清掃装置1の状態、例えば、床清掃装置1が清掃中であることや床清掃装置1に異常が発生したことなどを表示することが可能に構成されている。第2情報表示部は、主に床清掃装置1の周囲にいる人に対する情報を表示する。3D画像センサ52は、床面の段差を含む床清掃装置1の前方の形状や床清掃装置1の前方の障害物を検知するために利用される。ドライブレコーダ53は、カメラを有し、床清掃装置1の動作時(すなわち、清掃時)の状況を記録(録画)することが可能である。超音波センサ54は、主に床清掃装置1の前方の障害物、特にガラスなどの透明な障害物を検知するために利用される。バンパーセンサ56は、障害物等との接触(衝突)を検知して緊急停止信号を出力するように構成されている。
【0022】
測域センサ55は、床清掃装置1の周囲(主に前方の所定範囲)にある壁などの障害物までの距離情報を取得する。具体的には、測域センサ55は、レーザ光などの測距光を走査してその反射光を受信して各反射点までの距離を計測し、計測された各反射点までの距離を障害物までの距離情報として取得する。測域センサ55で取得された障害物までの距離情報は、床清掃装置1が地図データを作成したり、床清掃装置1が自身の位置を認識したりするために利用される。測域センサ55は、床清掃装置1の前方の障害物を検知するためにも利用され得る。
【0023】
以上のような構成を有する床清掃装置1の動作は、制御ユニット10によって統括的に制御される。本実施形態において、制御ユニット10は、動作制御部101と、地図データ作成部102と、途切れ部検出部103と、途切れ部データ作成部104と、メモリ部105とを含む(
図5参照)。
【0024】
動作制御部101は、操作者による指示の入力や各種センサからの入力などに基づき、走行部2(の走行用モータ21,21)を制御して床清掃装置1の移動/停止を制御すると共に、清掃ユニット3(のシャフト駆動部32)を制御して床面の清掃を行う。
【0025】
地図データ作成部102は、床清掃装置1が地図作成モードで動作しているとき、床清掃装置1に移動に伴って測域センサ55で取得された障害物までの距離情報に基づき、障害物を含む地図データを作成する。本実施形態において、地図データ作成部102で作成される地図データは、画素値が高いほどその画素に障害物が存在する可能性が高いことを示す多階調の画像データである。また、基本的には地図データにおける障害物の内側の領域が床清掃装置1の走行可能領域となる。なお、作成中の地図データ、すなわち、完成前の地図データは、第1情報表示部41に出力されて第1情報表示部41に表示される。
【0026】
途切れ部検出部103は、床清掃装置1が地図作成モードで動作しているとき、地図データ中の障害物の途切れ部を検出する。本実施形態において、途切れ部検出部103による障害物の途切れ部の検出は、地図データ作成部102による地図データの作成と並行して行われる。つまり、途切れ部検出部103は、地図データ作成部102が作成中の地図データにおける障害物の途切れ部を検出する。
【0027】
途切れ部データ作成部104は、床清掃装置1が地図作成モードで動作しているとき、途切れ部検出部103で検出された障害物の途切れ部を地図データ上で強調表示するための画像データを途切れ部データとして作成する。作成された途切れ部データは、作成中の地図データと同様、第1情報表示部41に出力されて第1情報表示部41に表示される。このため、床清掃装置1が地図作成モードで動作しているとき、第1情報表示部41には障害物の途切れ部が強調表示された状態の地図データが表示され、これによって、地図データ中の障害物の途切れ部を操作者に通知することが可能である。さらに言えば、地図データ中に障害物の途切れ部があること及び障害物の途切れ部の場所を操作者に通知することが可能である。なお、本実施形態において、障害物の途切れ部の強調表示は、地図データ上で障害物の途切れ部(の場所)を円形や楕円形の枠線(好ましくは、色付きの枠線(例えば、赤色の枠線))で囲むことによって行われるが、これに限られない。
【0028】
地図データは、主に床清掃装置1が自動清掃モードで動作するときに利用される。このため、地図データは、できるだけ正確に作成されるのが好ましい。他方、地図データ中の障害物の途切れ部は、測域センサ55による障害物の距離情報の取得が十分に行われなかった場所、つまり、障害物情報が不足している場所である可能性がある。したがって、正確な地図データを作成するためには、そのような場所について障害物情報の追加取得を行う必要がある。そこで、本実施形態において、床清掃装置1は、地図データ中の障害物の途切れ部を検出し、障害物の途切れ部を地図データ上で強調表示することにより、すなわち、障害物の途切れ部が強調表示された状態の地図データを第1情報表示部41に表示することにより、地図データ中の障害物の途切れ部を操作者に通知するようにしている。
【0029】
このような通知により、操作者は、障害物の途切れ部、すなわち、障害物情報が不足している可能性がある場所を容易に認識することができ、障害物情報の追加取得を行うために、検出された障害物の途切れ部に向けて床清掃装置1を移動させることが可能になる。したがって、障害物の途切れ部が強調表示された状態の地図データを第1情報表示部41に表示すること、及び/又は、地図データ中の障害物の途切れ部を操作者に通知することは、障害物の途切れ部に向けて床清掃装置1を移動させることを操作者に促すことであるということもできる。
【0030】
メモリ部105には、各種プログラムや各種データが格納されている。各種データは、地図データ作成部102で作成された地図データを含み、地図データは、上述のように、主に床清掃装置1が自動清掃モードで動作するときに利用される。
【0031】
次に、床清掃装置1の動作モード(手動清掃モード、自動清掃モード、及び地図作成モード)について説明する。
【0032】
[手動動作モード]
モード選択スイッチ42により手動清掃モードが選択されると、制御ユニット10は、床清掃装置1を手動清掃モードで動作させる。この場合、床清掃装置1の後部上側に設けられた左右一対のハンドル6,6が操作者によって把持され、制御ユニット10は、操作者よる操作パネル4やハンドル6,6などを介した指示の入力に基づいて床清掃装置1を動作させる。
【0033】
手動清掃モードにおいては、操作者が清掃開始指示を入力すると、制御ユニット10の動作制御部101が、清掃ユニット3のシャフト駆動部32を制御して清掃ユニット3による床面の清掃を開始させると共に、走行部2の走行用モータ21,21を制御して床清掃装置1の移動を開始させる。また、操作者が移動方向の変更指示を入力すると、動作制御部101は、走行部2の走行用モータ21,21を制御して床清掃装置1の移動方向を変更指示に応じた方向に変更する。そして、操作者が清掃終了指示を入力すると、動作制御部101は、清掃ユニット3のシャフト駆動部32を制御して清掃ユニット3による床面の清掃を終了させると共に、走行部2の走行用モータ21,21を制御して床清掃装置1の移動を停止させる。
【0034】
[自動清掃モード]
モード選択スイッチ42により自動清掃モードが選択されると、制御ユニット10は、床清掃装置1を自動清掃モードで動作させる。この場合、制御ユニット10は、メモリ部105から読み出した地図データと、測域センサ55で取得された障害物との情報とに基づいて床清掃装置1の位置(すなわち、自己位置)を推定し、予め作成された清掃ルートに従って床清掃装置1を移動させながら、清掃ユニット3によって床面の清掃を行う。
【0035】
自動清掃モードにおいては、操作者が清掃開始指示を入力するか、又は予め設定された清掃開始時刻になると、制御ユニット10の動作制御部101が、走行部2の走行用モータ21,21を制御して床清掃装置1を清掃ルートの始点まで移動させ、及び清掃ユニット3のシャフト駆動部32を制御して清掃ユニット3による床面の清掃を開始させる。その後、動作制御部101は、走行部2の走行用モータ21,21を適宜制御して床清掃装置1を清掃ルートに沿って移動させ、床清掃装置1が清掃ルートの終点に到達すると、清掃ユニット3のシャフト駆動部32を制御して清掃ユニット3による床面の清掃を終了させ、及び走行部2の走行用モータ21,21を制御して床清掃装置1の所定位置に移動させた後に移動を停止させる。また、制御ユニット10は、清掃中、床清掃装置1の前方に障害物が検知された場合には、床清掃装置1の走行を停止させて床清掃装置1を待機状態とし、その後、床清掃装置1の前方に障害物が検知されなくなると床清掃装置1の走行を再開させる。さらに、制御ユニット10は、緊急停止ボタン43が操作され、又はバンパーセンサ56から緊急停止信号が入力されると、床清掃装置1を緊急停止させる。
【0036】
[地図作成モード]
モード選択スイッチ42により地図作成モードが選択されると、制御ユニット10は、床清掃装置1を地図作成モードで動作させる。なお、地図作成モードは、主に床清掃装置1を自動清掃モードで動作させる前に、自動清掃モードで動作する床清掃装置1が移動すべき領域、換言すれば、清掃エリアを定めるために選択される。この場合、手動清掃モードの場合と同様、床清掃装置1の後部上側に設けられた左右一対のハンドル6,6が操作者によって把持され、制御ユニット10は、操作者による操作パネル4やハンドル6,6などを介した指示の入力に基づいて床清掃装置1を動作させる。
【0037】
地図作成モードにおいては、操作者が移動開始指令を入力すると、制御ユニット10の動作制御部101は、走行部2の走行用モータ21,21を制御して床清掃装置1の移動を開始させる。また、動作制御部101は、操作者が移動方向の変更指示を入力すると、走行部2の走行用モータ21,21を制御して床清掃装置1の移動方向を変更指示に応じた方向に変更する。さらに、操作者が地図作成開始指示を入力すると、制御ユニット10の地図データ作成部102は、障害物を含む地図データの作成を開始し、制御ユニット10の途切れ部検出部103は、地図データ中の障害物の途切れ部を検知し、及び制御ユニット10の途切れ部データ作成部104は、途切れ部データを作成する。なお、上述のように、作成中の地図データは、第1情報表示部41に表示され、障害物の途切れ部は、第1情報表示部41に表示された地図データ上で強調表示される。そして、操作者が地図作成終了指示を入力すると、地図データ作成部102は、障害物を含む地図データの作成を終了し、作成された障害部を含む地図データをメモリ部105に格納する。また、操作者が移動終了指示を入力すると、走行部2の走行用モータ21,21を制御して床清掃装置1の移動を停止させる。
【0038】
図6は、地図作成モードにおける床清掃装置1の動作の一例を示すフローチャートである。床清掃装置1は、移動開始指令が入力されると(ステップS1:YES)、移動を開始する(ステップS2)。また、床清掃装置1は、移動開始後に移動方向の変更指示が入力されると、自身の移動方向を変更指示に応じた移動方向に変更する。ここで、移動開始指示及び移動方向の変更指示は、操作者によって入力される。したがって、地図作成モードにおいて、床清掃装置1は、操作者による操作によって移動する。そして、床清掃装置1は、地図作成開始指示が入力されると(ステップS3:YES)、周囲の環境に応じた地図データの作成を開始する(ステップS4)。
【0039】
地図作成開始指示が入力されると、床清掃装置1、より具体的には、制御ユニット10の地図データ作成部102は、測域センサ55で取得された障害物までの距離情報に基づき、障害物を含む地図データを作成する。本実施形態において、地図データ作成部102は、空マップ上に測域センサ55の計測結果を時系列で重ね合わせることにより、換言すれば、床清掃装置1の移動に伴って測域センサ55で距離情報が取得された各反射点を空マップ上にプロットしていくことにより、障害物を含む地図データを作成する。したがって、地図データは、床清掃装置1の移動に伴って更新される。
【0040】
ステップS5において、床清掃装置1は、作成中の地図データを第1情報表示部41に表示する。すなわち、地図データ作成部102は、地図データを作成しつつ、作成中の地図データを第1情報表示部41に出力することにより、作成中の地図データを第1情報表示部41に表示させる。なお、上述のように、地図データは、画素値が高いほどその画素に障害物が存在する可能性が高いことを示す多階調の画像データであり、ここではグレースケール画像で構成されているものとする。
【0041】
ステップS6において、床清掃装置1は、地図データ中の障害物の途切れ部を検出する(途切れ部検出処理)。上述のように、本実施形態においては、制御ユニット10の途切れ部検出部103が地図データ中の障害物の途切れ部を検出する。
【0042】
図7は、ステップS6において途切れ部検出部103が行う途切れ部検出処理の一例を示すフローチャートである。
図7のステップS61において、途切れ部検出部103は、地図データ作成部102から地図データ、ここでは、一例として
図8(a)に示されるような地図データ(グレースケール画像)を入力する(地図データ入力)。
【0043】
ステップS62において、途切れ部検出部103は、ステップS61で入力された地図データを二値化する(二値化処理)。これにより、
図8(b)に示されるような、地図データ中の障害物がある部分が抽出された二値化画像が得られる。
【0044】
ステップS63において、途切れ部検出部103は、ステップS62で得られた二値化画像(
図8(b))を細線化する(細線化処理)。これにより、
図8(c)に示されるような細線化画像が得られる。
【0045】
ステップS64において、途切れ部検出部103は、ステップS63で得られた細線化画像に対して、障害物ありの画素(黒画素)が連続しているかを判定した上で、ラベル付きクラスタリングを行う。これにより、
図8(d)に示されるように、細線化画像を構成する複数の画素(黒画素)は、連続している黒画素群毎に別のラベル(ここでは、ラベル「1」~「6」)が付される(グループ分けされる)。
【0046】
ここで、ステップS64で行われるラベル付きクラスタリングについて
図9~
図11を参照して説明する。ラベル付きクラスタリングは、以下のようにして行われる。
【0047】
(1)途切れ部検出部103は、
図9(a)に示されるように、細線化画像に対して、3×3画素を対象に、左上から右下に向かってスキャン(ラスタスキャン)を行う。
(2)中心画素が黒画素(すなわち、障害物ありの画素)であり、且つ中心画素を囲む8画素にラベルが付されていない場合、途切れ部検出部103は、
図9(b)に示されるように、中心画素に対して新しいラベル(ここでは「1」)を付す。
(3)新しいラベルを付した中心画素の右の画素、左下の画素、下の画素、右下の画素(
図9(b)の画素a~画素d)が黒画素である場合、途切れ部検出部103は、
図10(a)に示されるように、当該黒画素(ここでは画素c)にも同じラベル(すなわち、「1」)を付す。
(4)ラベルを付した黒画素(ここでは画素c)を囲む8画素の中にラベルが付されていない黒画素がある場合、途切れ部検出部103は、
図10(b)に示されるように、ラベルが付されていない黒画素(ここでは画素cの下の画素)にも同じラベル(すなわち、「1」)を付す。
(5)(4)の処理を繰り返し、ラベルを付す画素がなくなったら(1)のスキャンの続きを行う。そして、スキャンが最後まで行われると、
図11に示されるように、細線化画像は、連続している黒画素群毎に別のラベル(ここでは「1」~「3」)が付されてグループ分けされる。
【0048】
図7に戻り、ステップS65において、途切れ部検出部103は、細線化画像の端点を抽出する(端点の抽出)。本実施形態において、途切れ部検出部103は、ステップS64のラベル付きクラスタリングの結果に基づき、同じラベルが付された黒画素群の大きさが所定の画素数未満であれば、当該黒画素群(又は当該黒画素)を細線化画像の端点とみなして抽出する。また、途切れ部検出部103は、同じラベルが付された黒画素群の大きさが所定の画素数以上であれば、次のようにして各黒画素群の端点を探索して細線化画像の端点として抽出する。
【0049】
途切れ部検出部103は、同じラベルが付された黒画素群のうちの1画素を注目画素とし、注目画素を囲む8画素のうちの1画素が黒画素である場合に、その注目画素を黒画素群の端点と判定して細線化画像の端点として抽出する。あるいは、途切れ部検出部103は、同じラベルが付された黒画素群のうちの1画素を注目画素とし、注目画素を囲む8画素のうちの1画素が黒画素であるか又は連続する2画素が黒画素である場合であって、且つ、前記8画素を囲む16画素のうちの1画素が黒画素であるか又は連続する2画素が黒画素である場合に、その注目画素を黒画素群の端点と判定して細線化画像の端点として抽出する。但し、これらに限られるものではなく、途切れ部検出部103は、他の方法を用いて細線化画像の端点を抽出してもよい。
【0050】
ステップS66において、途切れ部検出部103は、ステップS65で抽出された細線化画像の各端点を地図データ中の障害物の途切れ部として検出する(途切れ部の検出)。具体的には、
図8(e)において、ラベル「1」、「2」、「3」が付された黒画素群の円形の枠線で囲まれた部位、及び、ラベル「4」~「6」が付された黒画素(群)を、細線化画像の端点、すなわち、地図データ中の障害物の途切れ部として検出する。
【0051】
図6に戻り、ステップS7において、床清掃装置1は、第1情報表示部41に表示されている作成中の地図データにおいて、ステップS6で検出された障害物の途切れ部を強調表示する。具体的には、上述のように、制御ユニット10の途切れ部データ作成部104がステップS6で検出された障害物の途切れ部についての途切れ部データを作成して第1情報表示部41に出力する。これにより、
図8(f)に示されるように、第1情報表示部41において、地図データ中の障害物の途切れ部が円形や楕円形の枠線で囲まれることになり、地図データ中の障害物の途切れ部、すなわち、障害物情報が不足している可能性のある場所が操作者に通知される。
【0052】
ステップS8において、床清掃装置1は、地図作成終了指示が入力されたか否かを判定する。地図作成終了指示が入力されていない場合(ステップS8:NO)、床清掃装置1は、ステップS5の処理に戻り、地図データの作成を継続する。他方、地図作成終了指示が入力された場合(ステップS8:YES)、床清掃装置1は、ステップS9の処理に進む。
【0053】
ステップS9において、床清掃装置1は、地図データの作成を終了する。また、ステップS10において、床清掃装置1は、作成した地図データをメモリ部105に格納する。その後、ステップS11において、床清掃装置1は、移動終了指示が入力されたか否かを判定し、移動終了指令が入力されると(ステップS11:YES)、ステップS12の処理に進み、床清掃装置1は、移動を停止して本フローを終了する。
【0054】
以上説明したように、実施形態に係る床清掃装置1は、動作モードとして地図作成モードを有する。地図作成モードにおいて、床清掃装置1は、操作者の操作により移動して周囲の環境に応じた地図を作成する。具体的には、床清掃装置1は、地図データ作成部102を有し、地図データ作成部102は、床清掃装置1に移動に伴って測域センサ55で取得された障害物までの距離情報に基づき、障害物を含む地図データを作成する。また、床清掃装置1は、地図データ中の障害物の途切れ部を検出する途切れ部検出部103と、途切れ部検出部103で検出された障害物の途切れ部を地図データ上で強調表示するための途切れ部データを作成する途切れ部データ作成部104とを有する。そして、床清掃装置1は、障害物の途切れ部が強調表示された状態の地図データを第1情報表示部41に表示することにより、地図データ中の障害物の途切れ部を操作者に通知するように構成されている。したがって、本実施形態における「第1情報表示部41」が本発明の「表示部」に相当し、本実施形態における「途切れ部データ生成部104」及び「第1情報表示部41」が本発明の「通知部」に相当する。
【0055】
実施形態に係る床清掃装置1によれば、地図データの作成中、障害物の途切れ部が強調表示された状態の地図データが第1情報表示部41に表示されるため、操作者は、地図データ中の障害物の途切れ部、すなわち、障害物情報が不足している可能性がある場所を容易に認識することができる。このため、操作者は、障害物情報の追加取得を行うために、障害物の途切れ部に向けて床清掃装置1を移動させることができる。したがって、従来に比べて地図の完成度を向上させることができる。
【0056】
なお、上述の実施形態において、床清掃装置1は、障害物の途切れ部が強調表示された状態の地図データを第1情報表示部41に表示することにより、地図データ中の障害物の途切れ部を操作者に通知している。しかし、これに限られるものではなく、床清掃装置1は、障害物の途切れ部を強調表示することに加えて又は代えて、障害物の途切れ部に向けて床清掃装置1を移動させることを促すテキスト情報を第1情報表示部41に表示するようにしてもよい。前記テキスト情報は、例えば「障害物情報を取得するため、床清掃装置を強調表示された場所の近傍に向かわせてください。」とすることができる。また、床清掃装置1が音声出力部を有する場合には、障害物の途切れ部に向けて床清掃装置1を移動させることを促す音声を音声出力部から出力させるようにしてもよい。
【0057】
また、上述の実施形態において、移動開始指示と地図作成開始指示とが別々に入力されている。しかし、これに限られるものではなく、床清掃装置1は、地図作成開始指示が入力されると、移動及び地図データの作成を開始してもよい。この場合、床清掃装置1は、地図作成終了指示が入力されると、地図データの作成を終了すると共に移動を停止するように構成され得る。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて変形や変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0059】
1…自走式床清掃装置(自律移動体)、2…走行部、3…清掃ユニット、4…操作パネル、6…ハンドル、10…制御ユニット、21…走行用モータ、22…駆動輪、23…従動輪、31…駆動シャフト、32…シャフト駆動部、33…清掃パッド、41…第1情報表示部(表示部,通知部)、42…モード選択スイッチ、55…測域センサ、101…動作制御部、102…地図データ作成部、103…途切れ部検出部、104…途切れ部データ作成部(通知部)、105…メモリ部