(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155623
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】単独運転計画装置、単独運転計画方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20231016BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20231016BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20231016BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/00 170
H02J3/46
H02J13/00 311S
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065057
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 将士
(72)【発明者】
【氏名】小野 哲嗣
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC09
5G064DA03
5G064DA11
5G066AA03
5G066HA15
5G066HB09
(57)【要約】
【課題】適切な単独運転計画を策定できる単独運転計画装置を実現する。
【解決手段】電力系統から切り離された電力系統区間を単独運転するために、切り離された前記電力系統区間に含まれ隣接する開閉器によって区分されるエリアのうち、少なくとも内部に分散電源を有し、または電源車を配備可能な前記エリアを単独運転区間として、単独運転計画案DPを立案する単独運転計画部7と、前記単独運転計画案DPに基づき系統解析を行い、単独運転の可否を判定する系統解析部10と、前記系統解析部10が単独運転不可と判定した場合に、前記単独運転計画案DPを立案する際の制約条件CCを追加して、前記単独運転計画部7に対して前記単独運転計画案DPを再立案させる制約追加部11と、を単独運転計画装置1に設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統から切り離された電力系統区間を単独運転するために、切り離された前記電力系統区間に含まれ隣接する開閉器によって区分されるエリアのうち、少なくとも内部に分散電源を有し、または電源車を配備可能な前記エリアを単独運転区間として、単独運転計画案を立案する単独運転計画部と、
前記単独運転計画案に基づき系統解析を行い、単独運転の可否を判定する系統解析部と、
前記系統解析部が単独運転不可と判定した場合に、前記単独運転計画案を立案する際の制約条件を追加して、前記単独運転計画部に対して前記単独運転計画案を再立案させる制約追加部と、を備える
ことを特徴とする単独運転計画装置。
【請求項2】
前記系統解析部は、単独運転不可と判定した場合は、単独運転不可となる事象が生じたタイミングを含む採用不可情報を出力するものであり、
前記単独運転計画部は、前記開閉器の最終的な開閉状態と、前記開閉器の開閉状態を変更する時系列情報、または前記開閉器の開閉状態を変更する順序のうち何れかと、を前記単独運転計画案に含ませる
ことを特徴とする請求項1に記載の単独運転計画装置。
【請求項3】
前記単独運転計画案は、複数のタイムステップの各々における単独運転系統の構成を計画するものである
ことを特徴とする請求項2に記載の単独運転計画装置。
【請求項4】
前記制約追加部は、前記単独運転計画部に対して、単独運転不可となる前記事象が生じた前記タイミングにおいて前記事象を解消する前記制約条件を出力する
ことを特徴とする請求項2に記載の単独運転計画装置。
【請求項5】
単独運転不可となる前記事象が生じた前記タイミング、前記開閉器の最終的な開閉状態、前記開閉器の開閉状態を変更する時系列情報、または前記開閉器の開閉状態を変更する順序のうち何れかを表示装置に表示させる画面出力部をさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載の単独運転計画装置。
【請求項6】
前記単独運転計画部は、全ての前記エリアを単独運転しない前記単独運転計画案を立案可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の単独運転計画装置。
【請求項7】
電力系統から切り離された電力系統区間を単独運転するために、切り離された前記電力系統区間に含まれ隣接する開閉器によって区分されるエリアのうち、少なくとも内部に分散電源を有し、または電源車を配備可能な前記エリアを単独運転区間として、単独運転計画案を立案する単独運転計画過程と、
前記単独運転計画案に基づき系統解析を行い、単独運転の可否を判定する系統解析過程と、
前記系統解析過程において単独運転不可と判定されると、前記単独運転計画案を立案する際の制約条件を追加して、単独運転計画過程を再実行させる制約追加過程と、をコンピュータに実行させる
ことを特徴とする単独運転計画方法。
【請求項8】
前記系統解析過程は、単独運転不可と判定された場合に、単独運転不可となる事象が生じたタイミングを含む採用不可情報を出力する過程であり、
単独運転計画過程は、前記開閉器の最終的な開閉状態と、前記開閉器の開閉状態を変更する時系列情報、または前記開閉器の開閉状態を変更する順序のうち何れかと、を前記単独運転計画案に含ませる過程である
ことを特徴とする請求項7に記載の単独運転計画方法。
【請求項9】
前記単独運転計画案は、複数のタイムステップの各々における単独運転系統の構成を計画するものである
ことを特徴とする請求項8に記載の単独運転計画方法。
【請求項10】
前記制約追加過程は、前記単独運転計画過程に対して、単独運転不可となる前記事象が生じた前記タイミングにおいて前記事象を解消する前記制約条件を出力する
ことを特徴とする請求項8に記載の単独運転計画方法。
【請求項11】
単独運転不可となる前記事象が生じた前記タイミング、前記開閉器の最終的な開閉状態、前記開閉器の開閉状態を変更する時系列情報、または前記開閉器の開閉状態を変更する順序のうち何れかを表示装置に表示させる画面出力過程を、前記コンピュータにさらに実行させる
ことを特徴とする請求項8に記載の単独運転計画方法。
【請求項12】
前記単独運転計画過程は、全ての前記エリアを単独運転しない前記単独運転計画案を立案可能である
ことを特徴とする請求項7に記載の単独運転計画方法。
【請求項13】
コンピュータを、
電力系統から切り離された電力系統区間を単独運転するために、切り離された前記電力系統区間に含まれ隣接する開閉器によって区分されるエリアのうち、少なくとも内部に分散電源を有し、または電源車を配備可能な前記エリアを単独運転区間として、単独運転計画案を立案する単独運転計画手段、
前記単独運転計画案に基づき系統解析を行い、単独運転の可否を判定する系統解析手段、
前記系統解析手段が単独運転不可と判定した場合に、前記単独運転計画案を立案する際の制約条件を追加して、前記単独運転計画手段に対して前記単独運転計画案を再立案させる制約追加手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単独運転計画装置、単独運転計画方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギー電源などの分散電源の電力系統への導入が進められている。その一方で、台風や洪水といった大規模災害が増加傾向にあり、これに伴う基幹系統事故や配電系統での多重事故による大規模停電や復旧長期化の事例が顕在化している。電力インフラは、これらの電力供給支障への対応が求められている。今後は、電力系統に連系する分散電源を最大限に活用しつつ、広範囲、早期の停電復旧と、その後の安定した電力供給を実現するために、新たな電力系統運用が必要である。
【0003】
特に、電力インフラの中でも、配電系統においては、太陽光発電をはじめとする分散電源の導入が顕著に進められ、有事における単独運転の検討がなされている。一方、単独運転においては、単独運転系統内の需要や分散電源の出力、単独運転時の過渡現象により、安定に電力供給できないことが課題となることが予想される。このため、有事の際、配電系統での単独運転を安定に継続可能、かつ停電から復旧する需要家を最大限に拡大したいニーズが存在する。
【0004】
本技術分野の背景技術として、特許文献1に記載のものがある。この文献の要約書には、「パワーコンディショナ100は、第1自立運転出力端子107及び第2自立運転出力端子108と、インバータ102と、インバータ102が出力する第1電流を検出する第1電流センサ105と、第1自立運転出力端子107及び前記第2自立運転出力端子108の何れか一方に供給される第2電流を検出する第2電流センサ106と、第1電流が所定の第1閾値以上となるか、又は、第2電流が所定の第2閾値以上となる場合に、警告を発する、又は、インバータ102の動作を停止させる制御部111と、記憶部109とを備え、制御部111は、優先度が低い側の自立運転出力端子に流れる電流と、優先度が高い側の自立運転出力端子に接続される負荷の電流とに応じて、インバータ102を制御する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した技術において、一層適切な単独運転計画を策定したいという要望がある。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、適切な単独運転計画を策定できる単独運転計画装置、単独運転計画方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明の単独運転計画装置は、電力系統から切り離された電力系統区間を単独運転するために、切り離された前記電力系統区間に含まれ隣接する開閉器によって区分されるエリアのうち、少なくとも内部に分散電源を有し、または電源車を配備可能な前記エリアを単独運転区間として、単独運転計画案を立案する単独運転計画部と、前記単独運転計画案に基づき系統解析を行い、単独運転の可否を判定する系統解析部と、前記系統解析部が単独運転不可と判定した場合に、前記単独運転計画案を立案する際の制約条件を追加して、前記単独運転計画部に対して前記単独運転計画案を再立案させる制約追加部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、適切な単独運転計画を策定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態による単独運転計画装置のブロック図である。
【
図3】系統情報のデータ構成の一例を示す図である。
【
図4】設備被害情報のデータ構成の一例を示す図である。
【
図5】停電情報のデータ構成の一例を示す図である。
【
図6】重要負荷情報のデータ構成の一例を示す図である。
【
図7】地図情報のデータ構成の一例を示す図である。
【
図8】リソース情報のデータ構成の一例を示す図である。
【
図9】過去需要データのデータ構成の一例を示す図である。
【
図10】過去分散電源出力データのデータ構成の一例を示す図である。
【
図11】単独運転計画案作成ルーチンのフローチャートである。
【
図12】単独運転データ行列Cの一例を示す図である。
【
図13】系統解析ルーチンのフローチャートである。
【
図14】制約追加ルーチンのフローチャートである。
【
図15】表示処理ルーチンのフローチャートである。
【
図16】画面出力部が表示装置に表示させる画面の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態の前提]
本出願人は、特願2021-075032号にて、単独運転に関する技術を提案している。
この技術によれば、可能な限り多くの負荷を可能な限り早く復旧できるように、単独運転における最終的な系統構成を計画することができる。しかしながら、各開閉器区間(エリア)の復電順序が考慮されておらず、最終的な系統構成に至るまでの系統安定性を評価することが難しい。これにより、最終的な系統構成に至る過程で再停電を引き起こし、停電から復旧する負荷容量を最大化できない可能性がある。
そこで、後述する実施形態は、配電系統の単独運転において時刻毎の系統構成を計画し、各時刻において停電なく電力供給できることを確認しつつ、停電から復旧する負荷容量を最大化できる単独運転計画装置、および単独運転計画方法を提供するものである。
【0011】
より具体的には、後述する実施形態においては、「電力系統の事故により切り離された電力系統区間を停電復旧するための単独運転計画装置であって、切り離された電力系統区間について、隣接する開閉器で区分される開閉器区間(エリア)」を定義する。また、後述する実施形態においては、少なくとも内部に分散電源を有する、または電源車を配備するエリアを単独運転区間として、各エリアへの電力供給時刻を考慮した単独運転計画案を立案する単独運転計画部を備える。さらに、後述する実施形態においては、選定された単独運転計画案について、各時刻断面での系統安定性を評価する系統解析部と、系統解析結果を受けて安定な計画を推定し、単独運転計画部へ計画選定制約を追加する制約追加部と、を備える。
【0012】
これにより、後述する実施形態によれば、電力系統での単独運転における最終的な系統構成までの過程における再停電を回避しながら、停電エリアを可能な限り早く広く復旧するために、各エリアの復電タイミングを含む適切な単独運転計画を策定することができる。
【0013】
[第1実施形態]
〈第1実施形態の構成〉
図1は、第1実施形態による単独運転計画装置1(コンピュータ)のブロック図である。
単独運転計画装置1は、単独運転計画部7(単独運転計画手段)と、系統解析部10(系統解析手段)と、制約追加部11(制約追加手段)と、画面出力部12(画面出力過程)と、表示装置13と、データベース部DBと、を備えている。なお、表示装置13は、例えば液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネルなどを備えたディスプレイであることが好ましい。
【0014】
単独運転計画部7は、単独運転計画案DP(詳細は後述する)を出力する。系統解析部10は、当該単独運転計画案DPが採用可能であるか否かを判定する。そして、採用可能であれば、画面出力部12を介して表示装置13にその旨を出力する。一方、単独運転計画案DPが採用不可能であれば、制約追加部11に対して、その旨を示す採用不可情報DNを出力する。制約追加部11は、採用不可情報DNに応じて、単独運転計画案DPを作成する際の制約となる制約条件CCを単独運転計画部7に出力する。これら単独運転計画部7、系統解析部10および制約追加部11の詳細は後述する。
【0015】
データベース部DBは、系統情報D1と、設備被害情報D2と、停電情報D3と、重要負荷情報D4と、地図情報D5と、リソース情報D6と、過去需要データD8と、過去分散電源出力データD9と、を格納している。
【0016】
図17は、コンピュータ980のブロック図である。
図1に示した単独運転計画装置1は、
図17に示すコンピュータ980を、1台または複数台備えている。すなわち、単独運転計画装置1は1台のコンピュータ980によって構成してもよく、複数のコンピュータ980を連系して構成してもよい。
図17において、コンピュータ980は、CPU981と、記憶部982と、通信I/F(インタフェース)983と、入出力I/F984と、メディアI/F985と、を備える。
【0017】
ここで、記憶部982は、RAM982aと、ROM982bと、HDD982cと、を備える。通信I/F983は、通信回路986に接続される。入出力I/F984は、入出力装置987に接続される。メディアI/F985は、記録媒体988からデータを読み書きする。ROM982bには、CPUによって実行される制御プログラム、各種データ等が格納されている。CPU981は、RAM982aに読み込んだアプリケーションプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。先に
図1に示した、単独運転計画装置1の内部は、アプリケーションプログラム等によって実現される機能をブロックとして示したものである。
【0018】
図2は、本実施形態に適用可能な配電系統L(電力系統区間)の構成例を示す図である。
配電系統Lは、複数の需要家LD1~LD14と、複数の分散電源G1~G3と、複数の開閉器SW1~SW4と、を備えている。ここで、「開閉器」は、遮断器等も含む概念である。配電系統Lは、電力系統GLの一部であり、開閉器SW3を介して電力系統GLの他の部分に接続される。電力系統GLにおいて、配電系統Lの外部には、外部電源GXが設けられている。
【0019】
また、図示の例において、配電系統Lには、2箇所の被害箇所AC1,AC2が生じている。ここで、「被害箇所」とは、事故や故障等の原因により、配電に支障が生じている箇所である。前記のように、開閉器SW1~SW4で区切られた区間を「エリア」と呼ぶ。図示の例において、配電系統Lには、4個のエリアL1~L4が含まれている。
【0020】
被害箇所AC1,AC2が生じておらず、例えば通常運転が実行されている状態では、開閉器SW1~SW4は閉じられている。これにより、各需要家LD1~LD14は、外部電源GXおよび分散電源G1~G3から電力供給を受けることができる。しかし、被害箇所AC1,AC2に事故が生じると、開閉器SW1~SW4が開放され、配電系統Lが外部電源GXから切り離される。そして事故が除去された後、開閉器SW1~SW4を再度閉じると、配電系統Lを復旧することができる。
【0021】
本実施形態の単独運転計画装置1(
図1参照)は、事故が発生した後、復旧に至るまでの復旧待ちの期間における系統運用を如何にすべきかを立案するものである。例えば、地震などによる大規模停電が発生した場合に、順次復旧期間を拡大していくが、復旧に至るまでの期間は、数日から十数日に至る場合も想定され、本実施形態は長期間停電が発生する場合に特に有用である。
【0022】
この種の復旧待ちの状態において、当初の状態では、開閉器SW1~SW4が全て解放されている。しかし、配電系統Lにおける一または複数のエリアを含む区間であって、需要家と分散電源とを含む区間は、単独運転区間を形成できる可能性がある。例えば、
図2において、開閉器SW1,SW3で区分されたエリアL2は、需要家LD1~LD3と、分散電源G3と、を含むため、単独運転区間を形成できる可能性がある。
【0023】
同様に、開閉器SW1,SW2,SW4で区分されたエリアL1は、需要家LD4~LD7と、分散電源G1と、を含んでいるため、単独運転区間を形成できる可能性がある。同様に、開閉器SW2で区分されたエリアL4は、需要家LD9~LD14と、分散電源G2と、を含んでいるため、単独運転区間を形成できる可能性がある。但し、開閉器SW4で区分されたエリアL3は、需要家LD8を含むが、分散電源は含まない。従って、エリアL3は、開閉器SW4が解放された場合には、単独運転区間を形成することができない。
【0024】
なお、上述の説明では、隣接する開閉器で区分されたエリアを単独運転区間としているが、エリアL1~L4のうち隣接する複数のエリアを単独運転区間としてもよい。また、分散電源G1~G3とは、太陽光発電、風力発電等の再生可能エネルギー電源であってもよく、コジェネレーション機器、蓄電設備、移動可能な電源車、電気自動車等であってもよい。また、上述のように、エリアL1,L2,L4は単独運転区間を形成できる可能性があるが、実際に単独運転区間を形成できるか否かを判定するためには、他の条件を確認する必要がある。このような、単独運転区間を形成するための他の条件については、詳細は後述する。
【0025】
次に、データベース部DB(
図1参照)に含まれる各種データについて詳述する。
図3は、系統情報D1のデータ構成の一例を示す図である。
図3において、系統情報D1は、エリア毎のレコード(行)を含んでおり、各レコードは、開閉器番号D11と、隣接開閉器番号D12と、負荷容量D13と、需要家番号D14と、分散電源番号D15と、分散電源容量D16と、電圧源有無情報D17と、を含む。
【0026】
図3に示した系統情報D1と、単独運転計画装置1が管理する配電系統L(
図2参照)と、は紐づけられている。開閉器番号D11は、当該レコードに係るエリアを区分する一つの開閉器を示す。隣接開閉器番号D12は、当該エリアを区分する他の開閉器を示す。負荷容量D13は、当該エリアに含まれる需要家の負荷容量の合計を示す。
【0027】
需要家番号D14は、当該エリアに含まれる需要家の識別番号を示す。分散電源番号D15は、当該エリアに含まれる分散電源の識別番号を示す。分散電源容量D16は、当該エリアに含まれる分散電源の合計の電源容量を示す。電圧源有無情報D17は、当該エリアを単独運転区間として運用するために必要な容量の電圧源が存在するか否かを示す。
【0028】
図4は、設備被害情報D2のデータ構成の一例を示す図である。
図4において、設備被害情報D2は、被害箇所(
図2の例ではAC1,AC2)毎のレコード(行)を含んでおり、各レコードは、設備被害番号D21と、開閉器番号D22と、設備被害種別D23と、を含む。設備被害番号D21には、配電系統L内の事故や設備被害を特定する通し番号の情報が格納される。図示の例では、被害箇所AC1,AC2(
図2参照)を特定する情報が格納されている。
【0029】
ここで、設備被害番号D21に対応する被害箇所は、一般的には一対の開閉器で挟まれている。これら一対の開閉器で挟まれた区間を開閉器区間と呼ぶ。開閉器番号D22は、開閉器区間を挟む開閉器番号が格納される。例えば、被害箇所AC1に対しては、開閉器SW1,SW2の開閉器番号が格納される。また、被害箇所AC2に対しては、開閉器SW2,SW4の開閉器番号が格納される。
【0030】
設備被害種別D23は、設備被害番号D21に対応する事故や設備被害等を示す情報、例えば「電柱折損」、「高圧線損傷」等が格納される。図示の例では、被害箇所AC1には「電柱折損」が生じ、被害箇所AC2には「高圧線損傷」が生じていることが解る。設備被害情報D2には、さらに被害箇所の詳細位置を示す情報、例えば、配電系統Lと紐づいた座標情報等を含ませてもよい。
【0031】
図5は、停電情報D3のデータ構成の一例を示す図である。
図5において、停電情報D3は、開閉器区間毎のレコード(行)を含んでおり、各レコードは、開閉器番号D31と、停電フラグD32と、を含む。開閉器番号D31は、当該レコードにおける開閉器区間を挟む開閉器番号が格納される。停電フラグD32は、当該開閉器区間について“1”(停電状態)または“0”(通電状態)になる停電フラグを格納する。
【0032】
図6は、重要負荷情報D4のデータ構成の一例を示す図である。
図6において、重要負荷情報D4は、複数の需要家LD1~LD14(
図2参照)の一部である、重要負荷(重要な需要家)毎のレコード(行)を含んでいる。ここで、「重要な需要家」とは、例えば病院や避難所等であるが、その範囲は任意に定めることができる。
重要負荷情報D4は、各レコードについて、需要家番号D41と、負荷容量D42と、重要度D43と、を含んでいる。
【0033】
需要家番号D41は、当該レコードに係る需要家を特定する一意の識別番号であり、系統情報D1(
図3参照)における需要家番号D14に対応する。負荷容量D42は、当該需要家における負荷容量である。重要度D43は、当該需要家の重要度を示す。重要度D43は、例えば、数字の大きいほど重要と評価する「1」~「5」の数字である。重要度D43は、後述する単独運転計画部7、および復旧作業計画部9での処理で扱える形態であればこの限りではない。なお、詳細は後述するが、単独運転計画部7は、必ずしも重要度D43を用いなくてもよい。
【0034】
図7は、地図情報D5のデータ構成の一例を示す図である。
図7において、地図情報D5は、道路情報D51と、通行不可能情報D52と、を含んでいる。道路情報D51は、配電系統L(
図2参照)が含まれる地域の道路を示す情報である。そして、通行不可能情報D52は、これら道路のうち、通行不可能になっている部分を示す情報である。なお、地図情報D5は、さらに、配電系統Lに属する建物等を示す情報も含んでいる。
【0035】
図8は、リソース情報D6のデータ構成の一例を示す図である。
図8において、リソース情報D6は、配電系統Lにて活用可能な作業車等のリソース毎のレコード(行)を含んでいる。
そして、リソース情報D6は、各レコードについて、リソース種D61と、リソース数D62と、を含んでいる。
【0036】
リソース種D61は、車両リソースの種別を示す情報である。車両とは、例えば高圧発電機車(以下、電源車と呼ぶ)であり、例えば「電源車(1200kVA)」、「電源車(1500kVA)」のように、容量の情報を保持し、容量の異なる電源車は異なるリソース種として格納するとよい。
【0037】
図9は、過去需要データD8のデータ構成の一例を示す図である。
図9において、過去需要データD8は、需要家LD1~LD14毎のレコード(行)を含んでいる。
そして、過去需要データD8は、各レコードについて、需要家番号D81と、電力消費量実績D82と、を含んでいる。
【0038】
需要家番号D81は、当該レコードに係る需要家を特定する一意の識別番号であり、系統情報D1(
図3参照)における需要家番号D14に対応する。電力消費量実績D82は、当該需要家の使用電力に関する過去の時系列データである。電力消費量実績D82は、例えば電力会社が有するスマートメータなどによる計測結果を適用するとよい。また、電力消費量実績D82には、例えば低圧太陽光発電等、各種分散電源の出力が含まれていてもよい。
【0039】
図10は、過去分散電源出力データD9のデータ構成の一例を示す図である。
図10において、過去分散電源出力データD9は、分散電源G1~G3毎のレコード(行)を含んでいる。
そして、過去分散電源出力データD9は、各レコードについて、分散電源番号D91と、分散電源出力実績D92と、を含んでいる。
【0040】
分散電源番号D91は、当該レコードに係る分散電源を特定する一意の識別番号であり、系統情報D1(
図3参照)における分散電源番号D15に対応する。分散電源出力実績D92は、当該分散電源の使用電力に関する過去の時系列データである。分散電源出力実績D92は、例えば電力会社が有する分散電源の出力に関する過去の時系列データを適用することができる。
【0041】
〈第1実施形態の動作〉
次に、第1実施形態の動作について説明する。
まず、
図11は、単独運転計画案作成ルーチンのフローチャートである。
本ルーチンは、単独運転計画部7(
図1参照)によって実行されるルーチンである。
図11において処理がステップS71(単独運転計画過程)に進むと、単独運転計画部7は単独運転データ行列Cを作成する。
【0042】
図12は、単独運転データ行列Cの一例を示す図である。
単独運転データ行列Cの各行は、エリア(例えば
図2に示すL1~L4)のうち、単独運転区間になり得るエリアに対応する。「単独運転区間になり得るエリア」とは、内部に分散電源G1~G3を有し、または、電源車を配置できるエリアである。
【0043】
上述のステップS71において、単独運転計画部7は、系統情報D1(
図3参照)から、単独運転計画装置1が管理する配電系統Lに属する開閉器番号D11を全て抽出し、これを開閉器番号C1として、単独運転データ行列Cに含める。さらに、単独運転計画部7は、系統情報D1から、上述した開閉器番号D11に隣接する全ての隣接開閉器番号D12を読み出し、これを隣接開閉器番号C2として、単独運転データ行列Cに含める。
【0044】
さらに、単独運転計画部7は、単独運転データ行列Cの各行に対して、「L1」、「L2」等(
図2参照)のエリア番号を付与し、これをエリア番号C3として、単独運転データ行列Cに含める。これらの処理により、各エリアを識別するために必要な開閉器の開閉器番号と、隣接するエリアすなわち同一の開閉器によってそれぞれ区切られるエリアは、エリア番号によって一元的に識別可能となる。
【0045】
さらに、単独運転計画部7は、各エリアの負荷容量D13、分散電源容量D16および電圧源有無情報D17(
図3参照)を読み出し、これらを、それぞれ負荷容量C4、分散電源容量C5および電圧源有無情報C6として、系統情報D1から読み出し、これを負荷容量C4として、単独運転データ行列Cに含める。
【0046】
さらに、単独運転計画部7は、設備被害情報D2(
図4参照)の開閉器番号D22に基づいて、各被害箇所が属するエリアを特定する。
図4に示した例では、被害箇所AC1,AC2は、共にエリアL1(
図2参照)に属することが判明する。そして、単独運転計画部7は、被害箇所が存在する場合には“1”、被害箇所が存在しない場合には“0”となる二値情報である設備被害有無情報C7を、単独運転データ行列Cに含める。但し、設備被害有無情報C7は、二値情報に限られるものではなく、被害箇所における詳細な情報を含んでいてもよい。例えば、設備被害情報D2の設備被害種別D23(
図4参照)の内容を含んでもよく、被害箇所の座標情報等を含んでもよい。
【0047】
さらに、単独運転計画部7は、停電情報D3(
図5参照)から各開閉器区間の停電フラグD32を読み出す。あるエリアに属する何れかの開閉器区間の停電フラグD32が“1”(停電状態)であれば、当該エリアは「停電」状態である。また、エリアに属する全ての開閉器区間の停電フラグD32が“0”(通電状態)であれば、当該エリアは「通電」状態である。単独運転計画部7は、この「停電」または「通電」状態を、状態データC8として単独運転データ行列Cに含める。
【0048】
さらに、単独運転計画部7は、重要負荷情報D4(
図6参照)から、重要負荷毎に負荷容量D42と重要度D43とを読み出し、両者の積(D42×D43)を算出する。そして、単独運転計画部7は、エリア毎に、当該エリアに属する重要負荷に係る積(D42×D43)の総和を求め、求めた総和を重要負荷の重みつき容量C9として、単独運転データ行列Cに含める。ここで、重要負荷の重みつき容量C9は、必ずしも必要ではなく、重要負荷の重みつき容量C9を用いるか否かは、ユーザが任意に事前に決定できる。重要負荷の重みつき容量C9が不要である場合には、単独運転データ行列Cにおける重要負荷の重みつき容量C9は全て「0」にするとよい。
【0049】
さらに、単独運転計画部7は、地図情報D5の道路情報D51および通行不可能情報D52に基づいて、移動所要時間C10を算出し、単独運転データ行列Cに含める。ここで、移動所要時間C10の算出方法について説明する。まず、電源車や作業員等は、営業所等、既知である初期位置に滞在している。そして、停電状態であるエリアを通電状態に復帰させる復帰用開閉器の位置も既知である。単独運転計画部7は、電源車や作業員等が、初期位置から、復帰用開閉器まで移動するために必要な最短時間を求める。この求めた最短時間が移動所要時間C10である。
【0050】
なお、移動所要時間C10は、初期位置から復帰用開閉器までの最短経路の長さを、例えば30km/hなどの平均移動速度で除することにより計算することができる。また、初期位置から復帰用開閉器までの最短経路の中に通行不可能な道路区間を含む場合、当該区間を迂回する経路を最短経路に代えて適用してもよい。但し、通行不可能な道路区間を通行する間の平均移動速度を、例えば15km/hなどと減速することにより、迂回した場合の所要時間を推定し、推定した所要時間を移動所要時間C10としてもよい。なお、上述した30km/h、15km/hなどの平均移動速度は予め設定できるものとし、これらの速度に限定されるものではない。
【0051】
以上のように、
図12に示した単独運転データ行列Cの例によれば、単独運転区間となり得るエリアごとに、当該エリアにおける各種状態や復旧時の問題等が総括的に整理され、まとめられている。
【0052】
図11に戻り、次に、処理がステップS72(単独運転計画過程)に進むと、単独運転計画部7は、単独運転データ行列Cに基づいて、単独運転計画案DPを立案する。すなわち、単独運転計画部7は、以下に述べる目的関数と制約条件とを有する最適化計算を行い、単独運転計画案DPを立案する。これにより、単独運転可能な場合に停電復旧できる負荷容量を最大化、すなわち停電被害を最小化できるエリアを判別できる。また、単独運転の最終的な系統構成までの過程における各エリアの復電タイミングを含む単独運転計画案DPを立案できる。
【0053】
(目的関数)
まず、各エリアについて仮想する状態が停電状態なら“0”、単独運転状態なら“1”になるバイナリ変数BV(図示せず)を想定する。また、各エリアについて、
図12に示す負荷容量C4と、重要負荷の重みつき容量C9との和である仮想負荷容量LC(図示せず)を想定する。また、全エリアにおける仮想負荷容量LCの合計を合計仮想負荷容量LCA(図示せず)とする。
【0054】
最適化計算を行う上での目的関数は、タイムステップ毎の合計仮想負荷容量LCAである。すなわち、タイムステップ毎の合計仮想負荷容量LCAを最大化することが本実施形態の目的になる。ここで、タイムステップは、例えば5分など、ユーザが任意に設定できる。これにより、可能な限り早く多くの負荷を停電復旧するように、各開閉器区間の復電タイミングを含む単独運転計画案DPを立案することができる。これにより、重要負荷を考慮する場合は、その重要度に応じて優先的に復電する単独運転計画を立案することができる。
【0055】
(制約条件)
また最適化計算を行う上での制約条件は、主として、以下に示す制約条件CA,CB,CCである。
・制約条件CAは、「設備被害有無情報C7(
図12参照)が“0”であること」、すなわち「当該エリアに事故や設備故障が無いこと」である。これは、事故や設備故障が存在するにもかかわらず、当該エリアで単独運転を実行すると、再停電や感電被害等が発生する可能性が生じるためである。
【0056】
・制約条件CBは、「電圧源有無情報C6(
図12参照)が“0”(電圧源が無い)であるエリアは、他のエリアと連系しない限り単独運転しないこと」である。ここで、隣接するエリアが互いに単独運転する際、必ず連系して運転するものとする。隣接するエリアは、隣接開閉器番号C2(
図12参照)に基づいて識別するとよい。これにより、単独運転を予定するエリアに電圧源が無い場合は、他のエリアと連系することにより単独運転が可能になる。
・制約条件CCは、制約追加部11(
図1参照)によって追加される条件である。制約条件CCについての詳細は後述するが、後述する系統解析ルーチン(
図13)が最初に実行される段階では、制約条件CCは特に設定されていない。
【0057】
図13は、系統解析部10において実行される系統解析ルーチンのフローチャートであり、本ルーチンは、ステップSS102~S112(系統解析過程)により系統解析を行うものである。
図13において処理がステップS102に進むと、系統解析部10は、先に単独運転計画部7が立案した単独運転計画案DPに対して、需要予測E1と、分散電源出力予測E2と、を作成する。ここで、需要予測E1とは、単独運転を行う各エリアにおける電力供給開始後の電力需要の予測である。また、分散電源出力予測E2とは、単独運転を行う各エリアにおける電力供給開始後の分散電源の出力の予測である。系統解析部10は、過去需要データD8(
図9参照)、過去分散電源出力データD9(
図10参照)等に基づいて、例えば回帰分析などにより、需要予測E1と、分散電源出力予測E2と、を作成する。
【0058】
次に、処理がステップS104に進むと、系統解析部10は、配電系統Lにおける電流等をシミュレートする。そのため、系統解析部10は、配電系統L(
図2参照)を模擬した配電系統モデルLM(図示せず)を作成する。この配電系統モデルLMは、電圧源、負荷、変圧器等を模擬する電圧源モデル、負荷モデル、変圧器モデル、縮約した負荷モデル等が含まれている。系統解析部10は、予めユーザが任意に設定した電流解析時間刻み(例えば1ミリ秒)で、これら各種モデルの時系列のパラメータを設定し、配電系統モデルLM内の挙動、特に電流等をシミュレートする。これにより、系統解析部10は、各時刻における突入電流を算出する。
【0059】
ところで、ユーザは、各分散電源を模擬的にトリップさせるべきトリップ判定基準を予め任意に決定しておく。この判定基準は、電流値に関する電流値トリップ判定基準と、周波数に関する周波数トリップ判定基準と、を含む。電流値トリップ判定基準とは、例えば、「分散電源の定格出力を1秒以上超える電流が発生した場合に当該分散電源を模擬的にトリップする」等の基準である。すると、配電系統モデルLMにおいては、当該電流値トリップ判定基準を満たしたタイミングで、当該分散電源は模擬的にトリップされることになる。なお、配電系統L内の変圧器や負荷については、例えば、それぞれの等価回路でモデリングするとよい。
【0060】
次に、処理がステップS106に進むと、系統解析部10は、配電系統Lにおける周波数安定性等をシミュレートする。すなわち、需要予測E1と、分散電源出力予測E2と、ステップS104のシミュレーション結果と、に基づいて、予めユーザが設定した周波数解析時間刻み(例えば1秒)で需給周波数安定性等をシミュレートする。上述したように、ユーザが任意に決定できるトリップ判定基準には、周波数トリップ判定基準も含まれている。この周波数トリップ判定基準は、例えば、「基準周波数を2.5Hz以上下回る事象が発生した」等の基準である。従って、配電系統モデルLMにおいては、同基準を満たした時間に分散電源がトリップされる。これにより、周波数偏差の時間変化および周波数逸脱による分散電源のトリップをシミュレートできる。
【0061】
なお、上述のステップS104,S106では、突入電流、および周波数などを解析するシミュレーションを行ったが、ここで解析する物理量はこの限りでない。例えば、潮流計算による電圧解析、蓄エネルギー設備などのエネルギー残量シミュレーションなどをステップS104,S106に追加してもよい。
【0062】
次に、処理がステップS108に進むと、系統解析部10は、ステップS104,S106等のシミュレーション結果に基づいて、先に単独運転計画部7が立案した単独運転計画案DPが採用可能か否かを判定する。
採用可能か否かの判定基準は、ユーザが任意に設定できる。例えば、ステップS104,S106等のシミュレーションにおいて、分散電源のトリップが一回でも生じた場合は「採用不可」と判定することが考えられる。このように、単独運転計画部7で立案した単独運転計画案DPを実行した場合に再停電を引き起こす可能性があるか等に応じて、採用の可否を決定するとよい。
【0063】
ステップS108において「Yes」(採用可能)と判定されると、処理はステップS110に進む。ここでは、系統解析部10は画面出力部12および表示装置13等(
図1参照)を介して、当該単独運転計画案DPを出力する。一方、ステップS108において「No」(採用不可能)と判定されると、処理はステップS112に進む。ここでは、系統解析部10は、制約追加部11(
図1参照)に対して、採用不可情報DNを出力する。この採用不可情報DNには、単独運転不可と判定された要因となる事象、およびその事象が発生したシミュレーション内時刻を含めるとよい。
【0064】
図14は、制約追加部11で実行される制約追加ルーチンのフローチャートであり、本ルーチンは、ステップS120~S126(制約追加過程)により、単独運転計画部7に対して上述の制約条件CCを追加するものである。
図14において処理がステップS120に進むと、制約追加部11は、「単独運転不可」と判定された配電系統モデルLMについて、単独運転不可となる事象が生じた実時間のタイムステップを算出する。すなわち、単独運転不可となる事象が生じたシミュレーション内時刻をタイムステップに変換する。これにより、当該単独運転計画案において、どのタイムステップに再停電を引き起こす要因となる事象が発生する可能性があるかを判断できる。
【0065】
次に処理がステップS122に進むと、再停電を引き起こす要因となる事象が発生し得るタイムステップに対し、単独運転計画部7に入力する制約式を生成する。この制約式は、上述した単独運転計画部7で扱う入力情報または変数のうち、再停電を引き起こす要因となる事象と相関関係のある物理量に関わるものであることが好ましい。
【0066】
一例として、再停電を引き起こす要因となる事象が周波数逸脱による分散電源のトリップである場合について検討する。この場合、周波数と相関のあるエリア内の、ある需要家における負荷容量を、当該タイムステップにおいて所定値未満に制約することが考えられる。この際、負荷容量をどの程度制約するかについては様々な方法が考えられるため、負荷容量の制約方法は限定されない。また、周波数逸脱やその他の現象と相関のある物理量として当該エリア内の負荷容量以外のものを選定してもよく、予めユーザが任意に設定できる。
【0067】
次に、
図14において処理がステップS124に進むと、制約追加部11は、上述のステップS122で生成した制約式を、制約条件CCとして単独運転計画部7に出力する。これにより、単独運転計画部7は、制約条件CCを、単独運転計画部7に対して設定する。次に、処理がステップS126に進むと、制約追加部11は、単独運転計画部7に対して、該制約条件CCを加味した単独運転計画案作成ルーチン(
図11)の再実行を指示する。以上により、本ルーチンの処理が終了する。
【0068】
これにより、単独運転計画部7は、新たに追加された制約条件CCに基づいて、単独運転計画案作成ルーチン(
図11)を再実行して単独運転計画案を再作成する。そして、系統解析部10は系統解析ルーチン(
図13)を再実行し、新たな単独運転計画案について、採用の可否を再判定する。上述したように、新たな単独運転計画案は、上述した制約条件CCを追加した上で作成されたものであるため、
図13のステップS108において「Yes」(採用可能)と判定される可能性が高いものになる。
【0069】
但し、新たな単独運転計画案についても、ステップS108において「No」(採用不可能)と判定される場合もある。この場合は、制約追加ルーチン(
図14)が再び実行され、制約追加部11は、制約条件CCの内容を更新する。以上のように、作成された単独運転計画案について「採用可能」が作成されるまで、単独運転計画部7による単独運転計画案作成ルーチン(
図11)の実行、系統解析部10による系統解析ルーチン(
図13)の実行、および制約追加部11による制約追加ルーチン(
図14)の実行が循環的に繰り返される。
【0070】
これにより、各エリアにおいて実際に単独運転系統を構成してゆく過程において、各タイムステップでの再停電を回避しながら、可能な限り多くの負荷を早く復旧することができる単独運転計画を策定することができる。ここで、上述した単独運転計画は、複数のエリアの組み合わせと、復電タイミング情報と、を含む。また、復電タイミング情報とは、各エリアの復電時刻(復電タイミング)、または復電順序のうち何れかを含む。
【0071】
また、一連の処理において、単独運転計画部7では、「全てのエリアについて単独運転を実行しない」解を選定可能とし、処理が永久に終了しないことを防止するとよい。例えば、単独運転計画部7が単独運転計画案を所定回数作成しても「採用可能」と判定されない場合は、全てのエリアについて単独運転を実行しないようにすることが考えられる。
【0072】
図15は、画面出力部12において実行される表示処理ルーチンのフローチャートである。
図15において処理がステップS20に進むと、画面出力部12は、表示装置13に画面表示すべき項目の選択入力をユーザから受け付ける。次に、処理がステップS21に進むと、画面出力部12は、表示装置13に対して、選択された項目に係る内容を表示させる。このように、画面出力部12は、表示装置13に表示する内容を選択して表示させる機能を備える。
【0073】
図16は、画面出力部12が表示装置13に表示させる画面131の構成例を示す図である。
図16において画面131は、横方向に沿って順次連結されたペイン132,133,134を備えている。
上述したように、画面出力部12は、ユーザに選択された内容を画面131として、表示装置13に表示させる。表示内容選択ペイン132は、画面出力部12で選択処理する表示内容を、運用者が操作して選択するために設けられている。これにより、他のペインには、表示内容選択ペイン132で選択された表示内容が表示される。
【0074】
画面出力部12は、例えばボタンやプルダウンなどを、表示内容選択ペイン132に表示するのがよい。表示装置13に表示されたボタンやプルダウンなどを運用者が単数、または複数押下し、あるいは選択することにより、画面出力部12は、運用者に選択された表示内容を表示装置13に表示された別ペインに出力する。
図16の例では、表示内容選択ペイン132において選択可能な項目は、例えば、単独運転計画部7が立案した単独運転計画案による電力供給エリア、開閉器状態、事故点情報、道路や住宅等の地図、単独運転シーケンスなどである。ユーザが、これらの項目のうち何れかを選択すると、画面出力部12は、表示処理ルーチン(
図15)のステップS21において、画面表示する項目の選択入力が受け付ける。その後、同ルーチンのステップS22において、画面出力部12は、選択内容に応じた表示画面を地図ペイン133と計画情報ペイン134とに表示させる。
【0075】
地図ペイン133には、単独運転計画と、これに位置関係が対応した道路や住宅等の地図と、が重畳表示される。単独運転計画は、各系統が識別できるように色付けされた系統図であり、系統図上には、例えば系統中の開閉器状態を示すために開状態と閉状態の開閉器を色分けして表示し、また例えば事故点の位置を、バツ印などの記号で表示する。地図上には、例えば単独運転で電力供給可能なエリアが色付けして表示される。
【0076】
計画情報ペイン134には、表示内容選択ペイン132で選択した項目の具体的な内容が表示される。
図16の例では、単独運転シーケンスを選択した時の情報が詳細に表示された例を示している。なお単独運転シーケンスは、各エリアが各時間において単独運転状態、通電状態、停電状態の何れであるかを示す画面である。
【0077】
本実施形態の単独運転計画装置1には、単独運転計画以外の用途も考えられる。例えば、災害の発生していない平時に本実施形態を用い、蓄電池や太陽光発電設備などの分散電源設置候補地を入力として与える。そして、復電するエリアを模擬的に計画することにより、分散電源を候補地に設置した際の停電被害縮小効果を確認でき、分散電源の設置に関する意思決定に寄与する。また例えば、分散電源を電力源とした時限順送方式による事故区間判別を試みる場合、本実施形態を用いて復電時刻、タイミング、順序などを計画することもできる。これらの用途において、スマートメータによる消費電力制御やデマンドレスポンスなどにより需要側の状況が変化した際にも、その情報を入力データに反映することで計画を立案することができる。
【0078】
本実施形態を用いて事業を展開する際、例としていくつかの形態が考えられる。例えば、本実施形態による単独運転計画装置1を配電運用者以外の事業体が保有し、配電事業者が本実施形態によるサービスを必要とする際に必要な入力情報を上述した事業体に提供し、as a Serviceとして上述した事業体が計画案を提供する形態がありうる。また例えば、配電運用者が単独運転計画装置1を保有するために、上述した事業体が単独運転計画を策定する役務の売買を行ってもよい。また例えば、配電運用者の保有する既存の装置、システムなどに本実施形態による単独運転計画装置1を機能として搭載し、上述した事業体が単独運転計画を策定する役務の売買をすることもできる。
【0079】
[実施形態の効果]
以上のように上述した実施形態によれば、単独運転計画装置1は、電力系統GLから切り離された電力系統区間(L)を単独運転するために、切り離された電力系統区間(L)に含まれ隣接する開閉器SW1~SW4によって区分されるエリアL1~L4のうち、少なくとも内部に分散電源G1~G3を有し、または電源車を配備可能なエリアL1~L4を単独運転区間として、単独運転計画案DPを立案する単独運転計画部7と、単独運転計画案DPに基づき系統解析を行い、単独運転の可否を判定する系統解析部10と、系統解析部10が単独運転不可と判定した場合に、単独運転計画案DPを立案する際の制約条件CCを追加して、単独運転計画部7に対して単独運転計画案DPを再立案させる制約追加部11と、を備える。
【0080】
これにより、系統解析部10は、単独運転計画案DPに基づき系統解析を行い、制約追加部11は、系統解析結果に基づいて制約条件CCを追加できるため、単独運転を実現できる可能性の高い適切な単独運転計画を策定できる。
【0081】
また、系統解析部10は、単独運転不可と判定した場合は、単独運転不可となる事象が生じたタイミングを含む採用不可情報DNを出力するものであり、単独運転計画部7は、開閉器SW1~SW4の最終的な開閉状態と、開閉器SW1~SW4の開閉状態を変更する時系列情報、または開閉器SW1~SW4の開閉状態を変更する順序のうち何れかと、を単独運転計画案DPに含ませると一層好ましい。これにより、単独運転不可となる事象が生じたタイミングに応じて、開閉器SW1~SW4の開閉状態を規定でき、一層適切な単独運転計画案DPを策定できる。
【0082】
また、単独運転計画案DPは、複数のタイムステップの各々における単独運転系統の構成を計画すると一層好ましい。これにより、各々のタイムステップに対応した、一層適切な単独運転計画案DPを策定できる。
【0083】
また、制約追加部11は、単独運転計画部7に対して、単独運転不可となる事象が生じたタイミングにおいて事象を解消する制約条件CCを出力すると一層好ましい。これにより、単独運転が可能になる単独運転計画案DPを、単独運転計画部7が出力できる可能性を一層高めることができる。
【0084】
また、単独運転計画装置1は、単独運転不可となる事象が生じたタイミング、開閉器SW1~SW4の最終的な開閉状態、開閉器SW1~SW4の開閉状態を変更する時系列情報、または開閉器SW1~SW4の開閉状態を変更する順序のうち何れかを表示装置13に表示させる画面出力部12をさらに備えると一層好ましい。これにより、ユーザは、単独運転計画案DPの内容を視覚的に把握することができる。
【0085】
また、単独運転計画部7は、全てのエリアL1~L4を単独運転しない単独運転計画案DPを立案可能であると一層好ましい。これにより、ユーザは、単独運転が困難な場合に、その旨を認識できる。
【0086】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、もしくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0087】
(1)上記実施形態における単独運転計画装置1のハードウエアは一般的なコンピュータによって実現できるため、
図11,
図13~
図15に示したフローチャート、その他上述した各種処理を実行するプログラム等を記憶媒体(プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納し、または伝送路を介して頒布してもよい。
【0088】
(2)
図11,
図13~
図15に示した示した処理、その他上述した各処理は、上記実施形態ではプログラムを用いたソフトウエア的な処理として説明したが、その一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途向けIC)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いたハードウエア的な処理に置き換えてもよい。
【0089】
(3)上記実施形態において実行される各種処理は、図示せぬネットワーク経由でサーバコンピュータが実行してもよく、上記実施形態において記憶される各種データも該サーバコンピュータに記憶させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 単独運転計画装置(コンピュータ)
7 単独運転計画部(単独運転計画手段)
10 系統解析部(系統解析手段)
11 制約追加部(制約追加手段)
12 画面出力部(画面出力過程)
13 表示装置
L 配電系統(電力系統区間)
CC 制約条件
DN 採用不可情報
DP 単独運転計画案
GL 電力系統
G1~G3 分散電源
L1~L4 エリア
S71,S72 ステップ(単独運転計画過程)
SW1~SW4 開閉器
S102~S112 (系統解析過程)
S120~S126 (制約追加過程)