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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155645
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】水素ガス濃度計
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/32 20060101AFI20231016BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
G01N25/32
B01J23/44 M
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065088
(22)【出願日】2022-04-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 辰志
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 香那子
(72)【発明者】
【氏名】小澤 尚史
(72)【発明者】
【氏名】名川 良春
【テーマコード(参考)】
2G040
4G169
【Fターム(参考)】
2G040AA03
2G040AB15
2G040AB18
2G040BA23
2G040BB01
2G040CA02
2G040DA03
2G040GA01
4G169AA04
4G169BA01B
4G169BB02B
4G169BC72B
4G169BC75B
4G169CD08
4G169EA02Y
(57)【要約】
【課題】測定ガスに水素以外の可燃性ガスが含まれている場合でも、測定ガス中の水素ガス濃度を正確に検知することの可能な水素ガス濃度計の提供。
【解決手段】水素を常温で触媒燃焼させる常温触媒が装着されるとともに測定ガスを常温で触媒燃焼させる燃焼部と、前記燃焼部での燃焼による発熱を検知する温度センサと、測定ガスを所定体積に計量して前記燃焼部へ供給する計量部と、前記温度センサが検知した発熱による温度上昇によって前記測定ガスの水素濃度を導出する導出部と、を備える水素ガス濃度計。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを常温で触媒燃焼させる常温触媒が装着されるとともに測定ガスを常温で触媒燃焼させる燃焼部と、
前記燃焼部での燃焼による発熱を検知する温度センサと、
測定ガスを所定体積に計量して前記燃焼部へ供給する計量部と、
前記温度センサが検知した発熱による温度上昇によって前記測定ガスの水素ガス濃度を導出する導出部と、
を備える水素ガス濃度計。
【請求項2】
前記計量部と前記燃焼部との間に、前記計量された測定ガスと空気とを混合する予混合部を備える、請求項1に記載の水素ガス濃度計。
【請求項3】
前記燃焼部の下流に、前記燃焼部において常温での触媒燃焼に供された後の排ガスが供給されるとともに、加熱を伴う触媒燃焼が行われる第2燃焼部をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の水素ガス濃度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定ガス中の水素ガス濃度を測定する水素ガス濃度計に関する。
【背景技術】
【0002】
測定ガスに含有される水素ガスを検知する試みとして、下記特許文献1~4に記載の技術が開示されている。下記特許文献1には、温度の異なる2つの接触燃焼式センサを用いて、低温側のセンサでは一酸化炭素を、また、高温側のセンサでは水素及びメタン等の炭化水素を検知するガス検知装置が開示されている。下記特許文献2には、一酸化炭素と水素の混合ガス中の一酸化炭素を選択的に酸化する触媒と、逆に水素を選択的に酸化する触媒とが開示されている。下記特許文献3及び下記特許文献4には、2つの異なるセンサを直列に繋ぎ、前段のセンサの出力情報によって後段のセンサにガスが流れたり流れなかったりするガスセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開1990-145956号公報
【特許文献2】特開2001-137708号公報
【特許文献3】特開2012-251951号公報
【特許文献4】特開2016-85131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測定ガスに水素ガス以外の可燃性ガス、たとえばメタンのような炭化水素が含まれていると、センサを構成する触媒に測定ガスが接触した際に、水素とともにその可燃性ガスも燃焼してしまうため、純粋に水素のみを検知することはできない。
【0005】
本開示の実施態様は、測定ガスに水素ガス以外の可燃性ガスが含まれている場合でも、測定ガス中の水素のみを検知し、測定ガス中の水素濃度を正確に測定することの可能な水素ガス濃度計の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)第1態様
第1態様に係る水素ガス濃度計は、水素ガスを常温で触媒燃焼させる常温触媒が装着されるとともに測定ガスを常温で触媒燃焼させる燃焼部と、前記燃焼部での燃焼による発熱を検知する温度センサと、測定ガスを所定体積に計量して前記燃焼部へ供給する計量部と、前記温度センサが検知した発熱による温度上昇によって前記測定ガスの水素ガス濃度を導出する導出部と、を備える。
【0007】
すなわち、第1態様に係る水素ガス濃度計は、燃焼部と、温度センサと、計量部と導出部とを備える。燃焼部には、常温触媒が装着される。常温触媒とは、水素ガスが常温で接触すると水素ガスの燃焼が起こる触媒をいう。このような常温触媒としては、たとえば、白金を0.2質量%以上含有する触媒が挙げられる。また、ここでいう常温とは、特段の加熱又は冷却を行わない温度をいい、具体的には概ね15~30℃の範囲の温度をいう。常温での触媒燃焼とは、触媒に測定ガスを接触させる際、燃焼部にヒータ等での加熱が行われないことをいう。温度センサは、燃焼部での燃焼による発熱による温度上昇を検知する。温度センサとしては、たとえば、熱電対を使用することができる。
【0008】
計量部は、測定ガスを所定体積に計量する。この計量は、たとえば、所定体積を有する計量管に測定ガスを一旦保持することで行うことができる。計量された所定体積の測定ガスは、たとえば空気のようなキャリアガスで押し出されることで、燃焼部へと供給される。これにより、燃焼部による触媒燃焼で生じた発熱は、当該所定体積の測定ガスに含まれる水素ガスに起因することとなる。この発熱による温度上昇を温度センサが検知する。
【0009】
導出部は、たとえば、中央演算素子(CPU)並びにRead-Only Memory(ROM)及びRandom Access Memory(RAM)のような記憶装置を備えたコンピュータとして構成することができる。そして、あらかじめ既知の水素ガス濃度を有する測定ガスについて、前記所定体積の触媒燃焼によって生じる温度上昇(ΔT)を測定しておき、水素ガス濃度とΔTとの相関関係から検量線データを導出し、これが導出部のたとえば記憶装置に記憶される。
【0010】
そして、水素ガス濃度が未知の測定ガスについて、燃焼部での触媒燃焼で温度センサが検知したΔTを、導出部が検量線データを参照して、当該測定ガスの水素ガス濃度が導出される。このとき、燃焼部は常温のため、測定ガスにメタンのような水素ガス以外の可燃性ガスが含有されていても、常温での燃焼は発生しない。よって、温度センサが検知したΔTは水素ガスにのみ起因するものであり、これにより測定ガス中の水素ガス濃度を特定することが可能となっている。
【0011】
(2)第2態様
第2態様に係る水素ガス濃度計は、第1態様の構成に加え、前記計量部と前記燃焼部との間に、前記計量された測定ガスと空気とを混合する予混合部を備える。予混合部において、計量部で計量された測定ガスが、燃焼部に供給する前に空気と十分混合されることで、測定ガスに含まれる水素ガスが十分に燃焼することが可能となっている。
【0012】
(3)第3態様
第3態様に係る水素ガス濃度計は、第1態様又は第2態様の構成に加え、前記燃焼部の下流に、前記燃焼部において常温での触媒燃焼に供された後の排ガスが供給されるとともに、加熱を伴う触媒燃焼が行われる第2燃焼部をさらに備える。測定ガスに、水素ガス以外の可燃性ガスとしてたとえばメタンが含まれていた場合、燃焼部で水素ガスが燃焼した後の排ガスにはメタンが残留している。これを第2燃焼部で加熱による触媒燃焼に供することで、メタンを排出する代わりに二酸化炭素を排出することができるので、排ガスによる環境負荷を低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の実施態様は、上記のように構成されているので、測定ガスに水素ガス以外の可燃性ガスが含まれている場合でも、測定ガス中の水素のみを検知し、測定ガス中の水素ガス濃度を正確に測定することの可能な水素ガス濃度計を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の第1実施形態に係る水素ガス濃度計の構成を示した模式図である。
図2図1に示す水素ガス濃度計における燃焼部の構成を模式的に示した断面図である。
図3図2に示す燃焼部の一部を拡大して示す断面図である。
図4図3に示す燃焼部のストッパー部材を示す平面図である。
図5図1の水素ガス濃度計において濃度を測定する工程を説明する模式図である。
図6図1の水素ガス濃度計において濃度を測定する工程を説明する模式図である。
図7図1の水素ガス濃度計において濃度を測定する工程を説明する模式図である。
図8図1の水素ガス濃度計において濃度を測定する工程を説明する模式図である。
図9図1の水素ガス濃度計において濃度を測定する工程を説明する模式図である。
図10図1の水素ガス濃度計において濃度を測定する工程を説明する模式図である。
図11図1の水素ガス濃度計に備えられた情報処理部の構成を示すブロック図である。
図12図1の水素ガス濃度計に備えられた導出部にあらかじめ入力された上昇温度と水素濃度との関係を示したグラフである。
図13図1の水素ガス濃度計に備えられた温度センサによって検知される温度と時間との関係を示したグラフである。
図14】本開示の第2実施形態に係る水素ガス濃度計における第2燃焼部の構成を模式的に示した断面図である。
図15】実施例における燃焼部の概略構成を示す。
図16】燃焼部における温度上昇と水素ガス濃度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下で言及する各図面における各部位の大きさ及び各部位間の比率は、模式的に表現されており、実際の各部位の大きさ及び各部位間の比率を必ずしも反映していない。なお、各図において共通して付されている符号は、特に説明がない場合でも、同一の対象を指し示すものである。また、各図における流路の脇に付した矢印のうち、白抜き矢印は、ガス又はガスを含有するキャリアガスの流れを示し、実線矢印は、ガスを含有しないキャリアガスのみの流れを示す。
【0016】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る水素ガス濃度計及び水素ガス濃度計測方法について図1図13に従って説明する。
【0017】
(水素ガス濃度計10の構成)
本実施形態の水素ガス濃度計10の構成を図1に示す。水素ガス濃度計10は、測定ガス中の水素ガスを常温で触媒燃焼させる燃焼部20と、測定ガスを計量して予混合部へ押し出す計量部50と、計量された測定ガスを触媒燃焼前に空気と予め混合する予混合部60と、測定ガス中の水素ガス濃度を導出する導出部80及び各部を制御する制御部90を備えた情報処理部70(図2及び図11参照)とを備えている。
【0018】
〔燃焼部20〕
図2は、図1に示す燃焼部20の構成を模式的に示す断面図である。この図に示すように、燃焼部20は、管材211と、温度センサ212と、常温触媒214と、ストッパー部材215と、これらを収容する保護容器29を備える。管材211は、測定ガスの燃焼時の温度に対する耐熱性と、燃焼時の測定ガスの管材211外への放熱を抑える低い伝熱性とを有する管材である。本実施形態の管材211は、内径が4mmの円筒状のセラミックチューブである。なお、管材211の内径は、2mm以上10mm以下が好ましい。また、管材211はステンレスチューブでもよい。温度センサ212は、情報処理部70の一部である導出部80に接続される。
【0019】
管材211は縦向きに配されており、管材211の上端に、後述する予混合部60から混合ガスが供給される混合ガス供給路68が接続されている。管材211の下端の近傍には、排気孔211Aが形成されている。排気孔211Aから排気される排ガスは、保護容器29の下端近傍に設けられる排気路69から外界へ放出される。
【0020】
温度センサ212は熱電対として構成されており、熱電対素線212Aと、シース212Bと、スリーブ212Cと、アダプター212Dと、ケーブル212Eとを備え、ゼーベック効果を利用して温度を測定する。熱電対素線212Aは、一端(上端)に測温接点Pが設けられている。シース212Bは、直線性の高い形状を維持する硬質で細い管材であり、熱電対素線212Aを被覆している。本実施形態のシース212Bは、外径が0.5mmの金属製の管材である。シース212B内には絶縁物が充填されている。本実施形態の温度センサ212は、非接地型である。なお、温度センサ212を接地型や露出型に変えてもよい。
【0021】
スリーブ212Cは、直線性の高い形状を維持する硬質で細い管材であり、熱電対素線212Aの他端側を被覆している。このスリーブ212Cの一端とシース212Bの他端とが銀ろう付け等により接合されている。本実施形態のスリーブ212Cは、外径が6mmで金属製である。
【0022】
アダプター212Dは、円筒状の管材取付部212Zと、ナット形状の張出部212Yとを備える。管材取付部212Zと張出部212Yとは、一体で形成され同軸的に配されている。張出部212Yは、管材取付部212Zの外面から径方向外側に張り出す部位である。管材取付部212Zと張出部212Yとには、スリーブ212Cが挿通されている。管材取付部212Zは、管材211の下端から管材211内に挿入されている。張出部212Yとスリーブ212Cとは、溶接等により接合されている。また、張出部212Yと管材211の下端とは、接着等により接合されている。なお、張出部212Yは、ナット形状でなくてもよい。また、張出部212Yと管材211の下端とを接着等で接合することによりアダプター212Dと管材211の下端とを接合することは必須ではない。たとえば、管材取付部212Zと管材211の下端とを相互に螺合させることによりアダプター212Dと管材211の下端とを接合してもよい。
【0023】
ここで、管材211の下端は、アダプター212Dにより閉塞されている。他方で、管材211に形成された排気孔211Aは、管材取付部212Zの上端よりも上側に配されている。これによって、管材211内を下向きに流れた測定ガスは、排気孔211Aを通して管材211外へ流出し、排気路69を通じて外界へ放出される。
【0024】
ケーブル212Eは、柔軟性のある補償導線であり、このケーブル212Eの一端が熱電対素線212Aの他端(下端)に接続されている。このケーブル212Eの他端は導出部80に接続されている。ケーブル212Eの一部は、スリーブ212Cに挿入されている。
【0025】
常温触媒214は、水素を常温(室温)で燃焼させることが可能なものであり、たとえば、アルミナ担持白金触媒(Pt-Al)等の金属酸化物担持白金触媒を使用することができる。ここで、0.2質量%の白金をアルミナ担体が担持した触媒(0.2%Pt-Al触媒)を用いて、1000ppmの水素を燃焼させた場合に、燃焼開始温度が室温(room temp)となることが知られている(貞森 博己、「特殊燃焼技術特集 触媒燃焼技術の現状 触媒燃焼バーターを中心として」、燃料協会誌、第58巻第626号、1979年6月発行、422~423頁)。
【0026】
燃焼部20の燃焼室211Bに充填された常温触媒214の質量及び充填高さは、測温接点Pが常温触媒214から露出するように適宜設定すればよく、たとえば、管材211の内径が4mmの場合で0.075g、約3mm等である。温度センサ212の一端側(図中の上端側)の表面には、触媒層212Sが測温接点Pを覆うように形成されている(図3参照)。なお、測温接点Pが常温触媒214から露出することは必須ではなく、常温触媒214が測温接点Pを覆うように燃焼部20の燃焼室211Bに充填されてもよい。
【0027】
ストッパー部材215は、燃焼室211Bの下側に配されている。このストッパー部材215は、管材211の内周面に嵌合したステンレス等の金属製の板である。本実施形態のストッパー部材215は円板である。また、本実施形態のストッパー部材215の厚みは約1mmである。なお、ストッパー部材215は、ガラスウールにより構成してもよい。
【0028】
図4は、図3に示す燃焼部20のストッパー部材215を示す平面図である。図3及び図4に示すように、ストッパー部材215には複数の通気孔215Aが形成されている。この通気孔215Aの直径は、常温触媒214の粒径(平均値)よりも小さい。これにより、測定ガスは通気孔215Aを通過するが、常温触媒214は通気孔215Aを通過せずにストッパー部材215の上に堆積する。本実施形態の通気孔215Aの直径は0.3mmである。
【0029】
通気孔215Aは、ストッパー部材215の中心部を除く全域に密に形成されている。それに対して、ストッパー部材215の中心部には、通気孔215Aに比して大径の孔215Bが形成されている。この孔215Bにはシース212Bが挿通されている。ここで、ストッパー部材215の中心部とシース212Bとはセラミック接着剤等の接着剤により接着されている。この接着剤により、孔215Bとシース212Bとの隙間が埋められている。
【0030】
ここで、温度センサ212の先端の測温接点Pは、前記したように表面が触媒層212Sに覆われている。この触媒層212Sは、アルミナ担持白金触媒等の水素を常温で燃焼させる触媒により構成された塗膜である。触媒層212Sの形成方法としては、粉末状の触媒と蒸留水等とを混合した液状の触媒をシース212Bに塗布して乾燥させる方法を例示できる。測温接点Pの位置は、燃焼室211Bの径方向の中央部が好ましい。また、燃焼室211Bの下端(ストッパー部材215の上面)から測温接点Pまでの距離は、たとえば約4mmである。
【0031】
図2に示すように、保護容器29は、縦方向の寸法が横方向の寸法に比して大きい断熱性の筐体であり、管材211の上端側を除く全体を収容する。
【0032】
保護容器29の天板29Aには、管材211が挿通される開口が形成されている。他方で、保護容器29の底板29Bには、スリーブ212Cが挿通される開口が形成されている。保護容器29の側板29Cの下端近傍には、排気路69が設けられている。保護容器29の底板29Bは、温度センサ212の張出部212Yを支持している。
【0033】
保護容器29の側板29Cの下端近傍には、排気路69が形成されている。これにより、測定ガスの燃焼により燃焼室211Bで発生した排ガスが、排気孔211Aを通して管材211内から保護容器29へ排出され、この排気路69を通して保護容器29外へ排出される。
【0034】
〔計量部50〕
計量部50は、図1に示されるように、六方バルブにより構成される流路切替バルブ51と、測定ガスを流路切替バルブ51に供給するガス供給路53と、流路切替バルブ51からガスを排出するガス排出路56と、測定ガスを計量する所定容積の計量管52とを備えている。さらに、計量部50は、キャリアガスである空気を流路切替バルブ51に供給するキャリアガス供給路57を備えている。
【0035】
-流路切替バルブ51-
流路切替バルブ51は、6個のポート51a~51fを有する。これらのポート51a~51fは、ガス供給路53と連結するポート51aから図面上の時計回りにポート51e、ポート51f、ポート51b、ポート51c及びポート51dの順に円周状に配置されている。これらのポート51a~51f間の連結は、制御部90(図11参照)によって制御されるようになっている。
【0036】
具体的には、流路切替バルブ51は、ポート51aとポート51bとを連結し、ポート51cとポート51dとを連結し、かつ、ポート51eとポート51fとを連結する第1連結状態(図5及び図6参照)と、ポート51aとポート51dとを連結し、ポート51cとポート51eとを連結し、かつ、ポート51bとポート51fとを連結する第2連結状態(図7図10参照)との何れかの連結態様に切り替えられる。
【0037】
ポート51aは、ガス供給路53に連結され、ポート51bは、計量管52の一端と連結され、ポート51cは、計量管52の他端と連結されている。ポート51dは、ガス排出路56と連結されている。
【0038】
また、ポート51eは、キャリアガス供給路57に連結され、ポート51fは、計量管52により計量された所定体積のガスを予混合部60に供給する計量ガス供給路63に連結されている。
【0039】
-ガス供給路53-
ガス供給路53は、ポート51aと図示しないガス供給元とを連結し、その流路を開閉するガス供給弁53aを備えている。この構成において、このガス供給弁53aは、制御部90によって制御され、ガス供給路53の流路を開閉する。
【0040】
-ガス排出路56-
ガス排出路56は、ポート51dに連結される。なお、このガス排出路56を開閉する弁を備えていてもよい。
【0041】
-計量管41-
計量管52は、一方向に延びている所定容積の円筒形状を呈する。計量管52の長手方向の一端は連結路54を介してポート51bに連結されている。計量管52の長手方向の他端は連結路55を介してポート51cに連結されている。本実施形態では、計量管52の容積は、一例として、1.5〔ml〕である。
【0042】
-キャリアガス供給路57-
キャリアガス供給路57は一端がポート51eに連結され、他端側にはキャリアガスとしての空気を供給するポンプ57aを備えている。さらに、キャリアガス供給路57は、ポート51eとポンプ57aとの間に設けられたマスフローコントローラー57bを備えている。なお、マスフローコントローラー57bの代わりに、流体の流量を制御可能であれば、いかなる公知の装置を用いてもよい。
【0043】
〔予混合部60〕
予混合部60は、図1に示されるように、六方バルブにより構成される予混合流路バルブ61と、計量部50により計量された所定体積の測定ガスを予混合流路バルブ61に供給する計量ガス供給路63と、予混合流路バルブ61から測定ガスを排出するガス排出路66と、所定体積のガスを空気と予混合させる、計量管52の容積より大きな所定容積の予混合室62とを備えている。さらに、予混合部60は、キャリアガスである空気を予混合流路バルブ61に供給するキャリアガス供給路67を備えている。
【0044】
-予混合流路バルブ61-
予混合流路バルブ61は、6個のポート61a~61fを有する。これらのポート61a~61fは、計量ガス供給路63と連結するポート61aから図面上の時計回りにポート61e、ポート61f、ポート61b、ポート61c及びポート61dの順に円周状に配置されている。これらのポート61a~61f間の連結は、制御部90(図11参照)によって制御されるようになっている。
【0045】
具体的には、予混合流路バルブ61は、ポート61aとポート61bとを連結し、ポート61cとポート61dとを連結し、かつ、ポート61eとポート61fとを連結する第1連結状態(図5図9参照)と、ポート61aとポート61dとを連結し、ポート61cとポート61eとを連結し、かつ、ポート61bとポート61fとを連結する第2連結状態(図10参照)とのいずれかの連結態様に切り替えられる。
【0046】
ポート61aは、計量ガス供給路63に連結され、ポート61bは、予混合室62の一端と連結され、ポート61cは、予混合室62の他端と連結されている。ポート61dは、ガス排出路66と連結されている。
【0047】
また、ポート61eは、キャリアガス供給路67に連結され、ポート61fは、予混合室62により空気と混合された所定体積の測定ガスを燃焼部20に供給する混合ガス供給路68に連結されている。
【0048】
-計量ガス供給路63-
計量ガス供給路63は、ポート61aと、計量部50の流路切替バルブ51のポート51fとを連結し、その流路を開閉する計量ガス供給弁63aを備えている。この構成において、この計量ガス供給弁63aは、制御部90によって制御され、計量ガス供給路63の流路を開閉する。
【0049】
-ガス排出路66-
ガス排出路66は、ポート61dに連結される。このガス排出路66の途中には、その流路を開閉するガス排出弁66aが設けられている。
【0050】
-予混合室62-
予混合室62は、一方向に延びている所定容積の円筒形状を呈する。予混合室62の一端は連結路64を介してポート61bに連結されている。予混合室62の他端は連結路65を介してポート61cに連結されている。本実施形態では、予混合室62の容積は、一例として、5.0〔ml〕である。
【0051】
-キャリアガス供給路67-
キャリアガス供給路67は一端がポート61eに連結され、他端側にはキャリアガスとしての空気を供給するポンプ67aを備えている。さらに、キャリアガス供給路67は、ポート61eとポンプ67aとの間に設けられたマスフローコントローラー67bを備えている。なお、マスフローコントローラー67bの代わりに、流体の流量を制御可能であれば、いかなる公知の装置を用いてもよい。
【0052】
〔情報処理部70〕
情報処理部70は、図11に示されるように、ガスの熱量を導出する導出部80と、各部を制御する制御部90とを備えている。
【0053】
-制御部90-
制御部90は、各部を制御して水素ガス濃度計10を稼働させる。具体的には、ポート51a~51f間における第1連結状態と第2連結状態との切替を制御する。また、ポート61a~61f間における第1連結態様と第2連結態様との切替を制御する。また、ガス供給弁53a、計量ガス供給弁63a及びガス排出弁66aのそれぞれの開閉を制御する。また、ポンプ57a、67aのそれぞれの作動を制御する。
【0054】
-導出部80-
導出部80は、温度センサ212によって検知された温度に基づいてガスの熱量を導出する。
【0055】
具体的には、導出部80には、測定ガス中の水素ガス濃度と、水素ガスの触媒燃焼によって生ずる上昇温度ΔTとの関係が、たとえば図12に示すグラフで表される関係としてあらかじめ記録されている。ここで、図12に示すグラフの横軸は上昇温度ΔTであり、縦軸は測定ガス中の水素ガス濃度である。このように、測定ガス中の水素ガス濃度は、上昇温度ΔTに比例して大きくなる。導出部80には、この関係が入力されている。
【0056】
また、上昇温度ΔTについては、導出部80が、温度センサ212によって検知された温度に基づいて算出する。図13に示すグラフの横軸は経過時間であり、縦軸は温度センサ212によって検知された温度である。導出部80は、このグラフに示されるように、温度センサ212によって検知される温度をモニタリングし、測定ガス中の水素ガスの触媒燃焼によって上昇した上昇温度ΔTを算出する。
【0057】
この構成において、導出部80は、温度センサ212によって検知される温度をモニタリングすることで算出された上昇温度ΔT(ピーク値)によって、測定ガス中の水素ガス濃度を導出する。
【0058】
(水素ガス濃度計測方法)
図1の水素ガス濃度計10による水素ガス濃度計測方法について以下に説明する。
【0059】
〔流し工程〕
流し工程では、計量部50が備える所定容積の計量管52に測定ガスが流される。すなわち、図5に示すように、制御部90によって、ポート51a~51fが第1連結状態に切り替えられることでガス供給路53と連結路54とが連絡し、連結路55とガス排出路56とが連絡し、及び、キャリアガス供給路57と計量ガス供給路63とが連絡する。さらに、制御部90によってガス供給路53のガス供給弁53aが開放されることで、流路切替バルブ51の流路は流し状態に切り替えられる。すなわち、測定ガスはガス供給路53及び連結路54を経て計量管52を満たし、さらに連結路55を経てガス排出路56から排出される。
【0060】
一方、ポンプ57aの駆動によってキャリアガスはキャリアガス供給路57から計量ガス供給路63へ流れ、予混合部60へ流入する。このとき、予混合部60では、制御部90によって、ポート61a~61fが第1連結状態に切り替えられることで計量ガス供給路63と連結路64とが連絡し、連結路65とガス排出路66とが連絡し、及び、キャリアガス供給路67と混合ガス供給路68とが連絡する。この状態で、計量ガス供給路63から流入したキャリアガスとしての空気は連結路64を経て予混合室62を満たし、さらに連結路65を経てガス排出路66から排出される。また、ポンプ67aの駆動によってキャリアガスはキャリアガス供給路67からポート61e、61fを経て混合ガス供給路68を介して燃焼部20へ供給される。
【0061】
〔保持工程〕
保持工程では、計量管52を満たす所定体積のガスG1が保持される。すなわち、図6に示すように、流路切替バルブ51のポート51a~51fは第1連結状態のままで、制御部90によってガス供給路53のガス供給弁53aが閉鎖されることで、流路切替バルブ51の流路は保持状態に切り替えられる。この保持状態において、計量管52へのガスの流れは遮断され、計量管52を満たしている所定体積の測定ガスG1はそのまま計量管52内に保持される。なお、予混合部60におけるキャリアガスの流動は流し工程と同様の状態を保っている。
【0062】
〔押出工程〕
押出工程では、保持工程で計量管52に保持された所定体積の測定ガスG1が、計量部50から予混合部60へ押し出される。すなわち、図7に示すように、ガス供給路53のガス供給弁53aは閉鎖されたまま、制御部90によって、ポート51a~51fが第2連結状態に切り替えられることでガス供給路53とガス排出路56とが連絡し、キャリアガス供給路57と連結路55とが連絡し、及び、連結路54と計量ガス供給路63とが連絡することで、流路切替バルブ51の流路は押出状態に切り替えられる。この押出状態において、計量管52内に保持されていた所定体積のガスG1は、キャリアガス供給路57から連結路55を経て計量管52へ流入してきたキャリアガスによって押し出され、連結路54からポート51b、51fを経て、計量ガス供給路63へ流れ込み、予混合部60へと向かう。本実施形態では、計量管52に保持された所定体積の測定ガスG1を押し出すキャリアガスの流速は、一例として、120〔ml/min〕である。なお、予混合部60におけるキャリアガスの流動は保持工程と同様の状態を保っている。
【0063】
〔予混合工程〕
予混合工程では、押出工程で押し出された所定体積の測定ガスG1と空気とが燃焼部20の触媒燃焼前にあらかじめ混合される。すなわち、計量ガス供給路63へ押し出された所定体積のガスG1(図7参照)が、予混合流路バルブ61のポート61a、61bを経て、連結路64を通って予混合室62に達したタイミングで、図8に示すように、制御部90は、計量ガス供給弁63a及びガス排出弁66aを閉鎖する。この状態で、所定体積の測定ガスG1は、流速がほぼゼロとなり、予混合室62内で滞留している間に拡散し、図9に示すように、キャリアガスとしての空気と混合された混合ガスG2となる。なお、予混合部60においてキャリアガス供給路67から混合ガス供給路68を経て燃焼部20へ至るキャリアガスの流れは押出工程と同様である。
【0064】
〔燃焼行程〕
燃焼行程では、予混合工程によって空気と混合された測定ガスである混合ガスG2が、燃焼部20での触媒燃焼に供される。すなわち、図10に示すように、計量ガス供給弁63a及びガス排出弁66aは閉鎖されたまま、制御部90によって、予混合流路バルブ61のポート61a~61fが第2連結状態に切り替えられることで計量ガス供給路63とガス排出路66とが連絡し、キャリアガス供給路67と連結路65とが連絡し、及び、連結路64と混合ガス供給路68とが連絡する。この状態において、予混合室62内に保持されていた混合ガスG2は、キャリアガス供給路67から連結路65を経て予混合室62へ流入してきたキャリアガスによって押し出され、連結路64から予混合流路バルブ61のポート61b、61fを経て、混合ガス供給路68へ流れ込み、そして燃焼部20に供給される。本実施形態では、予混合室62に保持された混合ガスG2を押し出すキャリアガスの流速は、一例として、120〔ml/min〕である。
【0065】
混合ガス供給路68から燃焼部20に供給された混合ガスG2は、常温のまま常温触媒214により触媒燃焼に供される。ここで、混合ガスG2は、測定ガスの燃焼に必要な空気を十分含んでいるため、混合ガスG2に含まれる測定ガスに含まれる水素ガスがより効率よく、かつより完全に燃焼することが可能となっている。
【0066】
〔導出工程〕
導出工程では、燃焼工程により上昇した温度によって所定体積の測定ガスG1に対応する水素ガス濃度が導出される。すなわち、この混合ガスG2に含まれる水素ガスが常温触媒214に接触することで生ずる触媒燃焼により常温触媒214の温度が上昇し、その温度上昇を温度センサ212が検知する。
【0067】
図11に示す導出部80は、温度センサ212によって検知された温度をモニタリングし、水素ガスの触媒燃焼によって生じた上昇温度ΔT(図10参照)を導出する。さらに、導出部80は、導出された上昇温度ΔTと、あらかじめ入力されている水素ガス濃度と上昇温度ΔTとの関係とから、水素ガス濃度を導出する。
【0068】
ここで、燃焼工程で生じた温度上昇ΔTは、直接的には混合ガスG2の燃焼に起因するものであるが、この混合ガスG2は、所定体積の測定ガスG1に起因するものである。さらに、常温触媒による触媒燃焼は、測定ガスG1に含まれる水素ガスに起因するものである。仮に、測定ガスG1にメタンガス等の水素ガス以外の可燃性ガスが含まれていても、このような可燃性ガスは常温では触媒燃焼を起こさない。よって、この燃焼工程で生じた温度上昇は所定体積の測定ガスG1に含まれる水素ガスにのみ起因するものである。
【0069】
このような工程を繰り返すことで、計量部50及び予混合部60は、周期的に測定ガスを空気と十分に混合させた状態で燃焼部20に供給し、燃焼部20は、周期的に供給された混合ガスG2を常温で触媒燃焼させる。さらに、導出部80は、常温で触媒燃焼することで上昇した上昇温度ΔTによって所定体積の測定ガスG1に対応した水素ガス濃度を周期的に導出する。換言すれば、流し工程、保持工程、押出工程、燃焼工程、及び導出工程は、この順番で周期的に実施される。
【0070】
なお、計量部50において計量される測定ガスに、水素ガスが燃焼するのに十分な量の空気が含まれている場合には、予混合部60を設けずに、計量された測定ガスを計量ガス供給路63から直接、燃焼部20へ供給することとしてもよい。
【0071】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る水素ガス濃度計は、燃焼部20の下流に、図14に示す第2燃焼部30が設けられている点で、第1実施形態とは相違する。
【0072】
図14は、第2燃焼部30の構成を模式的に示す断面図である。この図に示すように、第2燃焼部30は、管材311と、温度センサ312と、ヒーター313と、顆粒状触媒314と、ストッパー部材315とを備える。管材311については、第1実施形態の管材211と同様である。また、温度センサ312については第1実施形態の温度センサ212と同様であり、その構造である熱電対素線312A、シース312B、スリーブ312C、アダプター312D(張出部312Y及び管材取付部312Zを含む)並びにケーブル312Eについても、第1実施形態の温度センサ212の構造である熱電対素線212A、シース212B、スリーブ212C、アダプター212D(張出部212Y及び管材取付部212Zを含む)並びにケーブル212Eとそれぞれ同様である。
【0073】
管材311は縦向きに配されており、管材311の上端に、燃焼部20からの排気路69が接続されている。管材311の下端の近傍には、排気孔311Aが形成されている。
【0074】
ここで、管材311の下端は、保護容器39の底板39Bにより閉塞されている。他方で、管材311に形成された排気孔311Aは、底板39Bよりも上側寄りに配されている。これによって、管材311内を下向きに流れ、管材311内で触媒燃焼に供された後の排ガスは、排気孔311Aを通して管材311外へ流出する。
【0075】
ヒーター313は、管材311が挿通されたコイル型のヒーターである。このヒーター313のコイル部313Aは、少なくとも管材311の燃焼室311Bを含む範囲の周囲に巻回されている。コイル部313Aは、リード部313Bを介して定圧電源32に接続されており、定圧電源32から電圧を印加されることにより発熱する。なお、管材311内に図示しない温度センサが設けられ、
【0076】
顆粒状触媒314の形状及び燃焼室211Bにおける充填の態様は、第1実施形態における常温触媒214と同様である。顆粒状触媒314は、たとえば、パラジウム(Pd)や白金(Pt)等の金属や金属酸化物が担持したもの等である。なお、顆粒状触媒314として、常温触媒214と同じ触媒を用いてもよい。
【0077】
ストッパー部材315については、第1実施形態のストッパー部材215と同様である。
【0078】
コイル部313Aが定圧電源32から電圧を印加されることにより発熱すると、顆粒状触媒314が所定の温度に加熱される。この加熱により、排ガス中に残留している水素ガス以外の可燃性ガスが触媒燃焼する。この加熱の際、温度センサ312により常に顆粒状触媒314の温度がモニターされ、その温度情報は導出部80から制御部90に入力され、制御部90は適宜、定圧電源32の出力を制御する。
【0079】
図14に示すように、保護容器39は、縦方向の寸法が横方向の寸法に比して大きい断熱性の筐体であり、管材311の上端側を除く全体を収容する。
【0080】
保護容器39の天板39Aには、管材311が挿通される開口が形成されている。保護容器39の側板39Cには、リード部313Bが挿通される溝が形成されている。他方で、保護容器39の底板39Bには、スリーブ312Cが挿通される開口が形成されている。保護容器39の底板29Bは、温度センサ312の張出部312Yを支持している。
【0081】
保護容器39の背板39Dには、開口39Fが形成されており、この開口39Fには、金属製の網目状の部材である金網39Gが設けられている。すなわち、背板39Dには、網目状に仕切られた多数の開口が形成されている。これにより、燃焼部20からの排ガスが燃焼室211Bで燃焼に供されて発生した最終排ガスが、排気孔311Aを通して管材311内から保護容器39へ排出され、背板39Dの多数の開口を通して保護容器39外へ排出される。
【0082】
ここで、燃焼部20からの排ガスには、常温触媒214で触媒燃焼しなかったメタンのような炭化水素が含まれている。このような排ガスが、第2燃焼部30において、加熱を伴う顆粒状触媒314による触媒燃焼が行われることで、最終的にメタンよりも遙かに環境負荷の低い二酸化炭素が生成され、これが、最終排ガスとして外界へ排出される。
【実施例0083】
図15に模式的に示す実験装置によって、燃焼部20で正しく水素ガス濃度が検出できているかどうかを検証した。まず、常温触媒214(図2参照)が装着されている燃焼部20に、後述する試験ガスを、混合ガス供給路68(図1参照)に相当する導入路100から導入し、触媒燃焼に供した。燃焼部20での触媒燃焼を経た排ガスは、保護容器29の排気路69(図2参照)に相当する排気路110から排出した。常温触媒214として、6.6質量%の白金を含む触媒(6.6%Pt-15%Pd/Al)を使用した。この常温触媒214は、図2に示すように燃焼室211Bに充填した。ただし、温度センサ212の先端表面には、図2に示すような触媒層212Sは設けず、常温触媒214が測温接点Pを覆うように燃焼部20の燃焼室211Bに充填した。
【0084】
導入路100からは、下記表1に示す組成で水素ガスとメタンガスとブタンガスとを混合した各試験ガス0.36mlを、流速85ml/minのキャリアガスとしての空気で、25℃、常圧の環境下で燃焼部20へ送出して、常温触媒214での触媒燃焼に供した。燃焼部20の温度は概ね25℃とした。燃焼部20で測定された上昇温度ΔTを、下記表1に併せて掲げる。
【0085】
【表1】
【0086】
すなわち、水素ガスが0体積%、メタンガスが100体積%であった試験ガス1では、燃焼部20での上昇温度ΔTは0℃であった。また、水素ガスが20.1体積%、メタンガスが79.9体積%であった試験ガス2では、燃焼部20での上昇温度ΔTは13.85℃であった。また、水素ガスが50体積%、メタンガスが50体積%であった試験ガス3では、燃焼部20での上昇温度ΔTは37℃であった。また、水素ガスが50.6体積%、メタンガスが41.3体積%、ブタンガスが8.1体積%であった試験ガス4では、燃焼部20での上昇温度ΔTは37.55℃であった。さらに、水素ガスが100体積%、メタンガスが0体積%であった試験ガス5では、燃焼部20での上昇温度ΔTは73.75℃であった。
【0087】
上記の結果、常温の燃焼部20では、試験ガスのうち水素ガスのみが触媒燃焼し、メタンガス及びブタンガスは触媒燃焼しないことが分かった。換言すると、メタンガスは常温環境下では常温触媒214での触媒燃焼せずに燃焼部20を素通りすることが分かった。
【0088】
また、上記表1の結果から、水素ガス濃度と上昇温度ΔTとの関係をプロットしたグラフを図16に示す。
【0089】
まず、図16より、水素ガス濃度(x)と上昇温度ΔT(y)との関係は、下記式(1)の一次回帰直線で近似できることが分かった。
【0090】
y=0.7374x・・・式(1)
【0091】
上記式(1)の決定係数(R)は0.9997と、ほぼ100%の相関関係があることが推測された。
【符号の説明】
【0092】
10 水素ガス濃度計
20 燃焼部
214 常温触媒
30 第2燃焼部
50 計量部
60 予混合部
80 導出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16