(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155647
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】線材巻掛け装置
(51)【国際特許分類】
B65H 54/02 20060101AFI20231016BHJP
B65H 57/26 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
B65H54/02 D
B65H57/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065096
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】503237806
【氏名又は名称】株式会社NHVコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】水谷 睦
【テーマコード(参考)】
3F056
3F110
【Fターム(参考)】
3F056AA02
3F056AB01
3F056GB05
3F110CA04
3F110DB05
(57)【要約】
【課題】作業者が手作業で線材を巻き掛けするのに比べて、作業の労力を軽減することができる線材巻掛け装置を提供する。
【解決手段】線材巻掛け装置3は、対向する一対のドラム11に対して、線材7を巻き掛けする装置である。線材巻掛け装置3は、線材7の一端部を保持する保持部31と、一対のドラム11を回転軸方向に沿って見て、一対のドラム11に巻き掛けられる線材7の巻掛け予定位置に沿う経路で、保持部31を移動させる移動機構4と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対のドラムに対して、線材を巻き掛けする線材巻掛け装置であって、
前記線材の一端部を保持する保持部と、
前記一対のドラムを回転軸方向に見て、前記一対のドラムに巻き掛けられる前記線材の巻掛け予定位置に沿う経路で、前記保持部を移動させる移動機構と、
を備える、
線材巻掛け装置。
【請求項2】
前記移動機構は、
前記一対のドラムの回転軸に平行な回転軸を有する少なくとも1つの回転部材と、
前記保持部が固定され、前記回転部材によって前記経路に沿って動かされる長尺部材と、
を有する、
請求項1に記載の線材巻掛け装置。
【請求項3】
前記回転部材を一対備え、
前記一対の回転部材の各々は、前記一対のドラムの各々の回転軸の同軸上に位置している、
請求項2に記載の線材巻掛け装置。
【請求項4】
前記長尺部材は、無端状に形成されており、前記一対の回転部材に巻き掛けられている、
請求項3に記載の線材巻掛け装置。
【請求項5】
前記移動機構は、一方のドラムに対応する回転部材の上端部、他方のドラムに対応する回転部材の下端部、他方のドラムに対応する回転部材の上端部、一方のドラムに対応する回転部材の下端部、及び一方のドラムに対応する回転部材の上端部をつなぐようなクロス掛け状の経路を形成するガイドレールを有し、
前記長尺部材は、長手方向の両側に端部を有する形状に形成されており、前記ガイドレールに案内されて移動する、
請求項3に記載の線材巻掛け装置。
【請求項6】
前記移動機構は、前記回転部材と前記長尺部材とを前記一対のドラムの回転軸に沿う方向に移動させる軸方向駆動部を有する、
請求項2に記載の線材巻掛け装置。
【請求項7】
前記移動機構は、一方のドラムの上端部、他方のドラムの下端部、他方のドラムの上端部、一方のドラムの下端部、及び一方のドラムの上端部をつなぐようなクロス掛け状の経路を形成するガイドレールを有し、
前記長尺部材は、長手方向の両側に端部を有する形状に形成されており、前記ガイドレールに案内されて移動するように構成され、
前記軸方向駆動部は、前記ガイドレールを、前記長尺部材と一緒に、前記一対のドラムの回転軸に沿う方向に移動させる、
請求項6に記載の線材巻掛け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材巻掛け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、対向配置された一対のドラムに線材を巻き掛けし、例えば、線材に対して電子線を照射する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の照射機用通線装置では、対向配置された一対のドラムに対して、作業員が、手作業で巻き掛けする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の照射機用通線装置では、互いに離れた一対のドラムに対して、線材を何十ターンも巻き掛けする必要があるため、手作業で行う作業だと、多大な労力が必要である。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、作業者が手作業で線材を巻き掛けするのに比べて、作業の労力を軽減することができる線材巻掛け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様の線材巻掛け装置は、対向する一対のドラムに対して、線材を巻き掛けする線材巻掛け装置であって、前記線材の一端部を保持する保持部と、前記一対のドラムを回転軸方向に沿って見て、前記一対のドラムに巻き掛けられる前記線材の巻掛け予定位置に沿う経路で、前記保持部を移動させる移動機構と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る上記態様の線材巻掛け装置は、作業者が手作業で線材を巻き掛けするのに比べて、作業の労力を軽減することができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る一対のドラムを有するキャプスタン装置の概略正面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るキャプスタン装置の概略側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る線材巻掛け装置及びドラムの概略斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る線材巻掛け装置の長尺部材の拡大図である。
【
図5】
図5(A)から(E)は、ドラムに対して線材を巻き掛けした際の動作を説明する概略説明図である。
【
図6】
図6は、変形例1に係る線材巻掛け装置及びドラムの概略斜視図である。
【
図7】
図7は、変形例2に係る一対のドラムを有するキャプスタン装置の概略正面図である。
【
図8】
図8は、変形例2に係る線材巻掛け装置及びドラムの概略斜視図である。
【
図9】
図9(A)(B)は、変形例2に係る線材巻掛け装置の動作を示す概略正面図である。
【
図10】
図10は、変形例3に係る線材巻掛け装置及びドラムの概略斜視図である。
【
図11】
図11(A)(B)は、変形例3に係る線材巻掛け装置の動作を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
本実施形態に係る線材巻掛け装置3は、
図1に示すようなキャプスタン装置1が有する一対のドラム11に対して、線材7を巻き掛けする装置である。キャプスタン装置1は、線材7が巻き掛けられた状態で、一対のドラム11を回転させる。キャプスタン装置1は、一対のドラム11と、ドラム11を支持する一対の支持部12と、一対のモータ13と、を備える。本実施形態に係る一対のドラム11に巻き掛けられる線材7としては、特に制限はなく、例えば、電線、光ケーブル、ワイヤー、ゴムホース、チューブ等が挙げられる。本実施形態では線材7の一例として、電線を挙げて説明する。
【0010】
一対のドラム11は、一対の支持部12に対して回転可能に支持されている。各ドラム11は、円柱状に形成されており、中心軸に沿って回転軸を有している。一対のドラム11は、間隔をおいて対向するように配置されている。本実施形態において、一対のドラム11の回転軸は、互いに平行である。
【0011】
ここで、本明細書にいう「平行」とは、2つの直線、辺、面等において、延長しても交わらない場合だけでなく、2つの直線、辺、面等がなす角度が10°以内の範囲で交わる場合も含むこととする。本実施形態に係る一対のドラム11の回転軸は互いに平行であるが、本発明では、ドラム11の回転軸同士は、必ずしも平行である必要はない。
【0012】
一対のドラム11の直径は、互いに同じ長さである。ただし、本発明では、一対のドラム11の直径は、互いに異なる長さであってもよい。モータ13は、ドラム11に対して回転力を加える。一対のモータ13は、一対のドラム11に対して、一対一で対応している。各モータ13の出力軸は、各ドラム11に対して、ベルト等の動力伝達部材を介して、接続されている。
【0013】
本実施形態に係るキャプスタン装置1では、線材7は、
図1に示すように、一方のドラム11の上端部、他方のドラム11の上端部、他方のドラム11の下端部、一方のドラム11の下端部、及び一方のドラム11の上端部を順に通るように、巻き掛けられる。線材7は、
図2に示すように、ドラム11の軸方向に沿って繰り返し巻き掛けられる。本明細書では、この線材7の巻掛け方式を「円周方式」という場合がある。
【0014】
一対のドラム11に巻き掛けられた線材7には、例えば、電子線照射装置2によって電子線が照射される。電子線照射装置2は、走査管21の下方の開口面が電子線照射窓箔22で覆われている。電子線照射窓箔22の下方が電子線照射領域であり、電子線照射領域は、
図1に示すように、一対のドラム11の間に位置している。これによって、一対のドラム11に巻き掛けられた線材7を動かしながら電子線を照射することで、線材7の全長にわたって電子線を照射することができる。
【0015】
(線材巻掛け装置3)
線材巻掛け装置3は、上述したように、対向する一対のドラム11に対して、線材7を巻き掛けする装置である。本実施形態に係る線材巻掛け装置3は、一対のドラム11に対して、線材7を円周方式で巻き掛けることができる。線材巻掛け装置3は、
図3に示すように、保持部31と、保持部31を移動させる移動機構4と、を備える。移動機構4は、保持部31が固定された長尺部材42と、長尺部材42を動かす一対の回転部材41と、を備える。
【0016】
(保持部31)
保持部31は、線材7の一端部を保持する。保持部31は、
図4に示すように、長尺部材42に固定されており、長尺部材42の動きに応じて移動する。保持部31は、本実施形態では、長尺部材42であるチェーンの外プレート421の幅方向(移動方向に直交する方向)の端縁のうちの一方の端縁に設けられている。保持部31は、外プレート421に対して略直交したプレート(トッププレート)で構成されている。ただし、保持部31が設けられる位置は、外プレート421の幅方向の端縁に限らず、例えば、外プレート421の幅方向の中央部であってもよいし、内プレート422であってもよい。
【0017】
保持部31は、線材7の一端部が取り付けられる取付部32を有する。取付部32としては、線材7の一端部を保持することができればよく、例えば、穴、ピン、切欠き、溝等であってもよい。本実施形態に係る取付部32は、一対の穴である。一対の穴に線材7の一端部を通すことで、線材7は穴に取り付けられる。なお、取付部32としては、線材7の一端部にねじ等の固定具を取り付け、固定具が取り付けられるねじ穴等の固定穴で構成されてもよい。ここでいう「一端部」は、線材7の長手方向の端の近傍であればよく、端を含む一部が取付部32からはみ出していてもよい。
【0018】
(移動機構4)
移動機構4は、一定の経路で、保持部31を移動させる。移動機構4は、上述したように、一対の回転部材41と、長尺部材42と、を備える。ここでいう「経路」は、一対のドラム11を回転軸方向に沿って見て(一対のドラム11を回転軸方向の外側から見て)、線材7の巻掛け予定位置に沿う経路である。「線材7の巻掛け予定位置」とは、一対のドラム11に対して線材7を巻き掛けした場合に、線材7が配置される設計上の位置を意味する。「線材7の巻掛け予定位置」には、実際には線材7が巻き掛けされていない場合と、実際に線材7が巻き掛けされた場合との両方を含む。
【0019】
回転部材41は、ドラム11の回転軸に平行な回転軸を有する。本実施形態に係る回転部材41の回転軸は、ドラム11の回転軸の同軸上に位置している。回転部材41は、ドラム11と一体になって回転する。
【0020】
ここでいう「ドラム11の回転軸の同軸上」は、ドラム11の回転軸に回転部材41が取り付けられている場合だけでなく、ドラム11の回転軸の延長線上に回転部材41の回転軸がある場合も含む。ドラム11の回転軸の延長線上に回転部材41の回転軸がある場合、例えば、ドラム11の回転軸と回転部材41の回転軸とが、カップリングを介して連結される。
【0021】
回転部材41としては、例えば、スプロケット、プーリ、シーブ等が挙げられる。本実施形態に係る回転部材41は、スプロケットである。回転部材41の外径(スプロケットの歯先円直径)は、ドラム11の外径以上であることが好ましいが、ドラム11の外径よりも小さくてもよい。
【0022】
長尺部材42は、一対の回転部材41によって経路に沿って動かされる。長尺部材42は、無端状に形成されており、一対の回転部材41に巻き掛けられている。したがって、保持部31の経路は、一方の回転部材41の上端部、他方の回転部材41の上端部、他方の回転部材41の下端部、一方の回転部材41の下端部、及び一方の回転部材41の上端部を順につなぐような経路となる。経路は、上述したように、ドラム11を回転軸方向に沿って見た場合に、線材7の巻掛け予定位置に沿っている。本実施形態では、ドラム11の外径と回転部材41の外径とが略同一であるため、経路は、ドラム11を回転軸方向に沿って見た場合に、線材7の巻掛け予定位置に重なる。ただし、ドラム11の外径と回転部材41の外径との関係次第では、線材7の巻掛け予定位置と経路とは重ならない場合もあり得る。なお、ここでいう経路は、経路の形状を説明したものに過ぎず、長尺部材42が動く向きを特定するものではない。
【0023】
ここで、無端状とは、長尺な部材の長手方向の両端を連結し、輪状である状態を意味する。長尺部材42としては、例えば、チェーン、タイミングベルト、Vベルト、ワイヤー、紐等の動力伝達部材が挙げられる。ここでいう動力伝達部材は、長手方向のいずれかの部分に加えられた長手方向に沿う外力を、他の部分に伝達することができる部材を意味する。本実施形態に係る長尺部材42は、ローラ付きチェーン(センタローラチェーン)である。ただし、チェーンとしては、ローラ付きチェーンに限らず、例えば、ローラーチェーン、サイドローラ付きチェーン等であってもよい。
【0024】
各ドラム11のモータ13(
図1参照)が回転すると、ドラム11が回転し、これに従って一対の回転部材41が回転する。一対の回転部材41が回転すると、これに応じて、長尺部材42が動き、保持部31が経路に沿って移動する。
【0025】
経路に沿って保持部31が移動すると、
図5(A)(B)に示すように、保持部31に保持されている長尺部材42の一端部が引っ張られて移動する。ドラム11の回転と保持部31の移動を続けると、
図5(C)から(E)に示すように、線材7を一対のドラム11に巻き掛けすることができる。
【0026】
なお、線材7が、ドラム11の回転軸方向の一端部に偏り始めた場合、一旦、ドラム11のモータ13を停止し、作業者が線材7をドラム11の回転軸方向の他端部側に向かってならせばよい。
【0027】
<変形例>
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0028】
(変形例1)
本変形例に係る線材巻掛け装置3は、
図6に示すように、回転部材41と長尺部材42とをドラム11の回転軸に沿う方向に移動させる軸方向駆動部5を有する点で上記実施形態とは異なっている。以下では、共通する部材については、同符号を付して重複する説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0029】
長尺部材42は、無端状のローラ付きチェーンである。ローラ付きチェーンは、一対のドラム11のうちの一方のドラム11の上端部、他方のドラム11の上端部、他方のドラム11の下端部、一方のドラム11の下端部及び一方のドラム11の上端部を順に通るように、一対のドラム11に巻き掛けされている。ローラ付きチェーンは、
図4に示すように、内プレート422の幅及び外プレート421の幅よりも直径が長いセンターローラ423を有している。このため、ローラ付きチェーンは、一対のドラム11に対して、ドラム11の周方向に沿って、移動することができる。また、ローラ付きチェーンは、ローラでドラム11に接触している。したがって、ローラ付きチェーンは、接触面積が小さいため、ドラム11の回転軸に沿う方向にも移動することができる。
【0030】
ローラの材質としては、例えば、金属、ナイロン、フッ素樹脂等が挙げられ、この中でも滑り性の観点から、ナイロン又はフッ素樹脂が用いられることが好ましい。
【0031】
回転部材41は、長尺部材42を動かす。回転部材41の回転軸は、ドラム11の回転軸に平行であるが、ドラム11の回転軸の同軸上にはない点で、上記実施形態とは異なる。すなわち、回転部材41の回転軸は、ドラム11の回転軸に平行であり、かつドラム11の回転軸とは異なる位置にある。
【0032】
回転部材41は、ドラム11を回転するモータ13とは別のモータ52によって回転する。回転部材41は、長尺部材42を動かすことができれば、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。2つ以上の回転部材41を有する場合、それぞれの回転部材41に対してモータ52が取り付けられる。
【0033】
2つの回転部材41を有する場合、例えば、2つの回転部材41の中心軸と、2つのドラム11の中心軸とが同一平面上に位置すること、すなわち、2つの回転部材41の間に、2つのドラム11が配置されることが好ましい。これにより、長尺部材42の回転力を補うことができるし、両方の回転部材41に対して、後述の軸方向駆動部5を設けることで、長尺部材42を、回転軸方向に平行移動させやすい。
【0034】
軸方向駆動部5は、上述した通り、回転部材41と長尺部材42とをドラム11の回転軸に沿う方向に移動させる。軸方向駆動部5は、
図6に示すように、回転部材41を支持するスライダ51と、スライダ51を回転軸に平行な方向に移動させるガイド部53と、を備える。
【0035】
ガイド部53は、ドラム11の回転軸に平行な方向に延びたガイド54と、ガイド54に沿ってスライダ51を移動するように駆動する駆動装置55と、を備える。本実施形態に係るガイド54は、ボールねじである。また、駆動装置55はモータである。ただし、ガイド部53としては、ボールねじとモータとを備えた構造に限らず、例えば、リニアブッシュを用いたリニアアクチュエータ、リニアガイド、ラックアンドピニオン、複数のプーリとタイミングベルト、複数の歯車とドライブチェーン、シリンダ、テレスコピック構造等であってもよい。
【0036】
スライダ51には、スライダ51の移動に応じて、長尺部材42を軸方向に移動させる位置規制部を設けてもよい。位置規制部は、例えば、長尺部材42に対して、回転軸方向の両側に位置し、スライダ51の移動に従って移動することで、長尺部材42を軸方向に移動させることができる。
【0037】
本変形例に係る線材巻掛け装置3は、1つの軸方向駆動部5を有するが、上述したように、2つ以上の回転部材41を有する場合には、回転部材41の各々に対応する2つ以上の軸方向駆動部5を有してもよい。
【0038】
次に動作を説明する。まず、ドラム11の回転軸方向のいずれかの部分(好ましくは、端部)に、長尺部材42を巻き掛けする。この状態で、モータ52を作動すると、回転部材41が回転し、これに応じて、長尺部材42が動き、保持部31が経路に沿って移動する。経路に沿って保持部31が移動すると、保持部31に保持されている長尺部材42の一端部が引っ張られて移動する。
【0039】
長尺部材42を動かしながら、軸方向駆動部5が、回転部材41及び長尺部材42を、ドラム11の回転軸方向に沿って移動させる。これによって、ドラム11に巻き掛けられた線材7が、ドラム11の回転軸方向の異なる位置に配置されるため、線材7が重なって巻き掛けられることを軽減することができる。
【0040】
軸方向駆動部5によるスライダ51の移動速度は、ユーザが任意に設定可能としてもよい。軸方向駆動部5によるスライダ51の移動速度は、ドラム11に巻き掛けられる線材の回転軸方向のピッチに応じて設定されるとよい。なお、回転部材を駆動するモータとガイド部の駆動装置とは、共通のモータを使用してもよい。この場合には、スライダ51の移動速度は可変にはできないが、モータを減らすことができるコスト上のメリットがある。
【0041】
(変形例2)
上記実施形態に係る線材巻掛け装置3は、線材7を円周方式で一対のドラム11に巻き掛けするものであったが、本変形例では、
図7に示すように、線材7を一対のドラム11に、クロス掛け方式(たすき掛け方式)で巻き掛けすることができる。クロス掛け方式とは、線材7が、一方のドラム11の上端部、他方のドラム11の下端部、他方のドラム11の上端部、及び一方のドラム11の下端部を通るように、巻き掛けられる方式を意味する。線材7を、一対のドラム11に対して、クロス掛け方式で巻き掛けすることで、電子線照射領域を通る際に、電子線照射窓箔22に対して、線材7のうら面を臨ませて動かした後、線材7のおもて面を臨ませて動かすことができ、線材7の両面に対して適切に電子線を照射することができる。
【0042】
本変形例に係る線材巻掛け装置3は、
図8に示すように、一対の回転部材41と、長尺部材42と、ガイドレール6と、を備える。
【0043】
長尺部材42は、
図9に示すように、長手方向の両側に端部を有する形状に形成されている。本実施形態に係る長尺部材42は、ローラーチェーンである。長尺部材42は、ドラム11の回転軸に直交する仮想平面上において、長尺部材42の長手方向に交差する方向に変形可能に構成されている。
【0044】
回転部材41は、ドラム11の回転軸に平行な回転軸を有する。本実施形態に係る回転部材41の回転軸は、ドラム11の回転軸の同軸上に位置している。回転部材41は、ドラム11と一体になって回転する。本変形例に係る回転部材41は、スプロケットである。回転部材41は、ガイドレール6に対して回転可能に取り付けられている。
【0045】
ガイドレール6は、長尺部材42の経路を形成する凹部61を有する。凹部61は、一方のドラム11に対応する回転部材41の上端部、他方のドラム11に対応する回転部材41の下端部、他方のドラム11に対応する回転部材41の上端部、一方のドラム11に対応する回転部材41の下端部、及び一方のドラム11に対応する回転部材41の上端部をつなぐようなクロス掛け状の通路である。凹部61の奥行き及び幅は、長尺部材42が収まるサイズに形成されている。長尺部材42は、凹部61に沿って案内されて移動することができる。すなわち、本変形例では、凹部61によって経路が形成されている。なお、ここでの経路の説明は、経路の形状を説明したものに過ぎず、長尺部材42が進む向きを一方向に特定するものではない。
【0046】
ガイドレール6の材質としては、特に制限はなく、例えば、金属、合成樹脂、カーボン、ゴム、ファブリック、パルプ等が挙げられるが、長尺部材42の摺動性及び強度の観点から、合成樹脂であることが好ましい。また、ガイドレール6として、金属を加工して凹部61を形成した場合には、凹部61の内面に、摺動性を高めるためのコーティングを施してもよい。
【0047】
ここにおいて、
図9(A)に示すように、一対の回転部材41に対して、両方に接する非平行な2つの接線を引いた場合に、接点をT1、T2、T3、T4とし、2つの接線の交点をX1とする。X1、T1、T2及びX1までの長さをL1とし、X1、T3、T4及びX1までの長さをL2とすると、長さL1及びL2の各々は、T2とT3との間の長さ(T4とT1との間の長さ)よりも長い必要がある。これにより、経路に沿って長尺部材42が移動しても、長尺部材42が干渉することを防ぐことができる。
【0048】
各ドラム11のモータ13が回転すると、一方のドラム11が正方向に回転し、他方のドラム11が逆方向に回転する。ドラム11の回転に従って一対の回転部材41が回転する。一対の回転部材41が回転すると、これに応じて、長尺部材42が動き、
図9(A)に示すように、長尺部材42が、一方の回転部材41の下端部と、他方の回転部材41の上端部とに架け渡される。
【0049】
回転部材41の回転が続くと、長尺部材42は、
図9(B)に示すように、一方の回転部材41にのみに噛み合い、この後、一方の回転部材41の上端部と他方の回転部材41の下端部とに架け渡される。このようにして、長尺部材42は経路に沿って移動する。この結果、保持部31は、クロス掛け状の経路に沿って移動する。
【0050】
経路に沿って保持部31が移動すると、保持部31に保持されている長尺部材42の一端部が引っ張られて移動する。ドラム11の回転と保持部31の移動を続けると、
図8に示すように、線材7を一対のドラム11に、クロス掛け状に巻き掛けすることができる。
【0051】
(変形例3)
本変形例に係る線材巻掛け装置3は、
図10に示すように、線材7を、一対のドラム11に対して、クロス掛け方式で巻き掛けする点については、変形例2と同じであるが、軸方向駆動部5を有する点で変形例2とは異なっている。以下では、共通する部材については、同符号を付して重複する説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0052】
本変形例に係る線材巻掛け装置3は、
図10に示すように、一対の回転部材41と、長尺部材42と、ガイドレール6と、一対の軸方向駆動部5と、を備える。
【0053】
長尺部材42は、変形例1と同様、ローラ付きチェーンである。ローラ付きチェーンは、ドラム11の表面上を経路に沿って移動する。ローラ付きチェーンは、
図11に示すように、一方のドラム11の上端部、他方のドラム11の下端部、他方のドラム11の上端部、一方のドラム11の下端部、及び一方のドラム11の上端部を順につなぐようなクロス掛け状の経路に沿って移動する。なお、この経路についても、長尺部材42の進む方向は一方向に特定するものではない。
【0054】
回転部材41は、長尺部材42を動かす。回転部材41の回転軸は、ドラム11の回転軸に平行であるが、ドラム11の回転軸の同軸上にはない。すなわち、回転部材41の回転軸は、ドラム11の回転軸に平行であり、かつドラム11の回転軸とは異なる位置にある。回転部材41は、
図10に示すように、ドラム11を回転するモータ13とは別のモータ52によって回転する。
【0055】
ガイドレール6は、ドラム11が通される一対の穴62が形成されている。一対の穴62は、ガイドレール6を貫通しており、かつガイドレール6の中央部でつながっている。各穴62にはドラム11が通され、穴62の内側面とドラム11との間が、長尺部材42の経路(すなわち、保持部31の経路)を形成する。穴62の内側面とドラム11との間の通路は、一方のドラム11の上端部、他方のドラム11の下端部、他方のドラム11の上端部、一方のドラム11の下端部及び一方のドラム11の上端部を順につなぐように、クロス掛け状に形成されている。したがって、長尺部材42は、通路内に案内されて移動することができる。
【0056】
軸方向駆動部5は、回転部材41及び長尺部材42と一緒に、ガイドレール6を、ドラム11の回転軸に沿う方向に移動させる。軸方向駆動部5は、
図10に示すように、回転部材41を支持するスライダ51と、スライダ51を回転軸に平行な方向に移動させるガイド部53と、を備える。なお、軸方向駆動部5の構成は、変形例1のものと同じであるため説明を省略する。
【0057】
まず、ドラム11の回転軸方向のいずれかの部分(好ましくは、端部)に長尺部材42を配置する。この状態で、モータ52を作動すると、
図11(A)(B)に示すように、回転部材41が回転し、これに応じて、長尺部材42が動き、保持部31が経路に沿って移動する。経路に沿って保持部31が移動すると、保持部31に保持されている長尺部材42の一端部が引っ張られて移動する。
【0058】
長尺部材42を動かしながら、軸方向駆動部5が、回転部材41及び長尺部材42と一緒に、ガイドレール6を、回転軸方向に沿って移動させる。これによって、ドラム11に巻き掛けられた線材7が、ドラム11の回転軸方向の異なる位置に配置されるため、線材7が重なって巻き掛けられることを軽減することができる。
【0059】
(その他の変形例)
上記実施形態では、保持部31は、チェーンの外プレート421に設けられたトッププレートであったが、本発明ではこれに限らず、例えば、外プレート421又は内プレート422に設けられた穴であってもよい。
【0060】
上記実施形態では、回転部材41は、回転部材41の回転軸とドラム11の回転軸とが連結されることで、ドラム11と一体になって回転するように構成されたが、例えば、回転部材41を駆動するモータを別途設けてもよい。この場合、回転部材41の回転数を、ドラム11の回転数と略同じとなるように設定し、回転部材41とドラム11とが同期して、回転すればよい。
【0061】
上記変形例2,3に係るガイドレールは、一部材を加工することで構成されたが、分割構造であってもよい。
【0062】
本明細書にて、「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略直交」とは、実質的に「直交」であることを意味し、なす角度が、厳密に90°であることだけでなく、±10°程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0063】
また、本明細書において「端部」及び「端」などのように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端」は物体の末の部分を意味するが、「端部」は「端」を含む一定の範囲を持つ域を意味する。端を含む一定の範囲内にある点であれば、いずれも、「端部」であるとする。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【0064】
<効果>
以上説明したように、第1の態様に係る線材巻掛け装置3は、対向する一対のドラム11に対して、線材7を巻き掛けする線材巻掛け装置3である。線材巻掛け装置3は、線材7の一端部を保持する保持部31と、一対のドラム11を回転軸方向に沿って見て、一対のドラム11に巻き掛けられる線材7の巻掛け予定位置に沿う経路で、保持部31を移動させる移動機構4と、を備える。
【0065】
この態様によれば、移動機構4によって、線材7の端部を保持する保持部31を経路に沿って移動させることができるため、作業者が手作業で線材7を巻き掛けするのに比べて、作業の労力を軽減することができる。
【0066】
第2の態様に係る線材巻掛け装置3では、第1の態様において、移動機構4は、一対のドラム11の回転軸に平行な回転軸を有する少なくとも1つの回転部材41と、保持部31が固定され、回転部材41によって経路に沿って動かされる長尺部材42と、を有する。
【0067】
この態様によれば、回転部材41と長尺部材42を用いて、移動機構4を構成することができる。
【0068】
第3の態様に係る線材巻掛け装置3では、第2の態様において、回転部材41を一対備え、一対の回転部材41の各々は、一対のドラム11の各々の回転軸の同軸上に位置している。
【0069】
この態様によれば、回転部材41を、ドラム11の各々の回転軸の同軸上に位置させることができるため、回転部材41がドラム11の回転軸とは別の位置にある構造に比べて、設置スペースを省略することができる。
【0070】
第4の態様に係る線材巻掛け装置3では、第3の態様において、長尺部材42は、無端状に形成されており、一対の回転部材41に巻き掛けられている。
【0071】
この態様によれば、一対のドラム11に対して、線材7を、円周方式で巻き掛けすることができる。
【0072】
第5の態様に係る線材巻掛け装置3では、第3の態様において、移動機構4は、一方のドラム11に対応する回転部材41の上端部、他方のドラム11に対応する回転部材41の下端部、他方のドラム11に対応する回転部材41の上端部、一方のドラム11に対応する回転部材41の下端部、及び一方のドラム11に対応する回転部材41の上端部を順につなぐようなクロス掛け状の経路を形成するガイドレール6を有する。長尺部材42は、長手方向の両側に端部を有する形状に形成されており、ガイドレール6に案内されて移動する。
【0073】
この態様によれば、一対のドラム11に対して、線材7をクロス掛け方式で巻き掛けすることができる。
【0074】
第6の態様に係る線材巻掛け装置3では、第2の態様において、移動機構4は、回転部材41と長尺部材42とを一対のドラム11の回転軸に沿う方向に移動させる軸方向駆動部5を有する。
【0075】
この態様によれば、ドラム11に巻き掛けられた線材7が、ドラム11の回転軸方向の異なる位置に配置されるため、線材7が重なって巻き掛けられることを軽減することができる。
【0076】
第7の態様に係る線材7巻掛け装置3では、第6の態様において、移動機構4は、一方のドラム11の上端部、他方のドラム11の下端部、他方のドラム11の上端部、及び一方のドラム11の下端部を順につなぐようなクロス掛け状の経路を形成するガイドレール6を有する。長尺部材42は、長手方向の両側に端部を有する形状に形成されており、ガイドレール6に案内されて移動するように構成される。軸方向駆動部5は、ガイドレール6を、長尺部材42と一緒に、一対のドラム11の回転軸に沿う方向に移動させる。
【0077】
この態様によれば、一対のドラム11に対して、線材7をクロス掛け方式で巻き掛けするものにおいて、線材7が重なって巻き掛けられることを軽減することができる。
【符号の説明】
【0078】
11 ドラム
3 線材巻掛け装置
31 保持部
4 移動機構
41 回転部材
42 長尺部材
5 軸方向駆動部
6 ガイドレール
7 線材