(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155654
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】液体塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05C 3/20 20060101AFI20231016BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20231016BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
B05C3/20
B05C11/10
B05C13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065108
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】左武 康司
【テーマコード(参考)】
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
4F040AA17
4F040AA31
4F040AB01
4F040AB08
4F040BA36
4F040CC02
4F040CC14
4F040CC15
4F040CC20
4F040DA13
4F040DA14
4F040DA15
4F042AA13
4F042AA27
4F042BA05
4F042BA08
4F042BA10
4F042BA12
4F042CA01
4F042CB24
4F042CC02
4F042CC09
4F042CC30
4F042DD41
4F042DD45
4F042DF07
4F042DF28
4F042DF29
4F042DF32
(57)【要約】
【課題】ワークの外周に液体を簡単かつ均一に塗布可能な液体塗布装置を提供する。
【解決手段】液体塗布装置(オイル塗布装置)1は、回転部材3と、回転部材3を回転させる電動モータ4と、回転部材3の軸心に設けられ、ワーク10が挿入される凹部6と、回転する回転部材3にオイルPを供給するオイル容器2と、回転する回転部材3に付着したオイルPを凹部6に誘導する掻き取り部材5とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの外周に液体を塗布するための液体塗布装置であって、
回転部材と、前記回転部材を軸心周りに回転させる駆動手段と、前記回転部材の軸心に設けられ、前記ワークが挿入されるワーク挿入部と、回転する前記回転部材に液体を供給する液体供給部と、回転する前記回転部材に供給された液体を前記ワーク挿入部に誘導する液体誘導手段とを備えた液体塗布装置。
【請求項2】
前記回転部材の軸心が水平方向に配された請求項1に記載の液体塗布装置。
【請求項3】
前記液体供給部が内部に液体を貯留した液体容器であり、
前記回転部材の下部が、前記液体容器に貯留された液体に浸漬された請求項2に記載の液体塗布装置。
【請求項4】
前記液体誘導手段が、前記回転部材に付着した液体を掻き取って前記ワーク挿入部に誘導する掻き取り部材である請求項1~3の何れか1項に記載の液体塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの外周にオイル等の液体を塗布するための液体塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの部品を嵌合して組み付ける場合、これらの嵌合面にゴム製のOリングを介在させることがある。この場合、一方の部品の外周面にOリングを装着した後、これを他方の部品の内周に押し込みながら、Oリングを弾性的に圧縮変形させることで、両部品が組み付けられる。このとき、Oリングの破損(カジリ)を防止するために、予めOリングにオイルを塗布する作業が行われる。
【0003】
Oリングに対するオイルの塗布は、例えば、ハケ等を用いて行ったり、容器に貯留したオイルに浸漬したりすることにより行われる。しかし、ハケ等でOリングの全周にオイルを塗布する作業は非常に手間がかかる。また、Oリングをオイルに浸漬すると、不要な部位にもオイルが付着するため、塗布後の拭き取り作業を要し、工数が増える。
【0004】
下記の特許文献1には、Oリングにオイルを塗布するオイル塗布装置が示されている。このオイル塗布装置は、重ね合わせた第1及び第2のプレートを有し、両プレートを貫通する孔(オイル塗布部)が設けられる。両プレートの間には、孔と連通したオイル流路が設けられる。オイル流路から孔の内周面にオイルを供給しながら、Oリングを装着した部品を孔に挿入することで、Oリングにオイルが塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のようなオイル塗布装置では、孔の内周面にオイルを均一に供給することが難しい。そのため、孔の内周面へのオイルの供給量が過小であると、Oリングの周方向一部にオイルが塗布されず、組み付け時にOリングが破損する恐れがある。一方、孔の内周面へのオイルの供給量が過多であると、Oリングに過剰なオイルが塗布され、塗布後にオイルを拭き取る作業を要し、工数が増大する。特に、Oリングをオイルシールとして用いる場合、Oリングにオイルが過剰に塗布されると、オイルが付着してはいけない領域にオイルが付着し、その後のオイル漏れ試験においてオイル漏れと誤認されるおそれがある。
【0007】
以上のような問題は、Oリングにオイルを塗布する場合に限らず、ワークの外周に他の液体(例えば、接着剤)を塗布する場合にも同様に生じ得る。
【0008】
そこで、本発明は、ワークの外周に液体を簡単かつ均一に塗布可能な液体塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、ワークの外周に液体を塗布するための液体塗布装置であって、
回転部材と、前記回転部材を軸心周りに回転させる駆動手段と、前記回転部材の軸心に設けられ、前記ワークが挿入されるワーク挿入部と、回転する前記回転部材に液体を供給する液体供給部と、回転する前記回転部材に供給された液体を前記ワーク挿入部に誘導する液体誘導手段とを備えた液体塗布装置を提供する。
【0010】
この液体供給装置では、回転する回転部材に供給された液体が、液体誘導手段によって回転部材の軸心に設けられたワーク挿入部に誘導される。このように、回転部材を回転させながら、その軸心に設けられたワーク挿入部に液体を供給することで、ワーク挿入部の内周面に均一な液体膜が形成される。このワーク挿入部にワークを挿入して、ワーク挿入部の内周面に形成された均一な液体膜にワークの外周面を接触させることで、ワークの外周面に液体を均一に塗布することができる。
【0011】
上記の液体供給装置では、回転部材の軸心を水平方向に配することができる。この場合、液体供給部を、内部に液体を貯留した液体容器で構成し、回転部材の下部を、液体容器に貯留された液体に浸漬した状態で回転部材を回転させることにより、回転部材の外周及びその周辺に液体を供給してもよい。
【0012】
液体誘導手段としては、例えば、回転部材に付着した液体を掻き取ってワーク挿入部に誘導する掻き取り部材を設けることができる。この場合、掻き取り部材の位置や角度等を調整することにより、この掻き取り部材で、回転部材の表面に付着した液体を掻き取りながら、回転部材の表面を伝って、軸心に設けられたワーク挿入部へ誘導することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の液体塗布装置によれば、ワークの外周に液体を簡単かつ均一に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るオイル塗布装置であり、
図2のC-C線における矢視断面図である。
【
図6】回転部材及び掻き取り部材を
図1のB方向から見た図である。
【
図10】回転部材の凹部付近の軸方向断面図である。
【
図11】回転部材の凹部付近の軸方向断面図である。
【
図12】他の実施形態に係る回転部材の凹部付近の軸方向断面図である。
【
図13】さらに他の実施形態に係る回転部材の凹部付近の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1~3に、本発明の一実施形態に係る液体塗布装置としてのオイル塗布装置1を示す。オイル塗布装置1は、液体供給部としてのオイル容器2と、回転部材3と、回転部材3を回転駆動する駆動手段としての電動モータ4と、液体誘導手段としての掻き取り部材5とを有する。尚、以下の説明では、回転部材3の軸心方向一方側(
図1の紙面手前側、
図2の下側、
図3の右側)を「手前側」と言い、回転部材3の軸心方向他方側(
図1の紙面奥側、
図2の上側、
図3の左側)を「奥側」と言う。
【0017】
オイル容器2は、内部にオイルPが貯留されている。図示例では、オイル容器2が、上面を開口した略直方体の箱である。
【0018】
回転部材3は、金属や樹脂で形成される。本実施形態の回転部材3は、円盤状を成しており、軸心が水平方向となるように配されている。回転部材3の下部は、オイル容器2に貯留されたオイルPに浸漬されている。回転部材3は、電動モータ4により軸心周りに回転駆動される。図示例では、回転部材3の奥側の端面3bの軸心に、電動モータ4の回転軸4aが固定される。電動モータ4を駆動することにより、回転部材3が軸心を中心に
図1の矢印R方向に回転する。
【0019】
回転部材3の手前側の端面3aの軸心には、ワーク挿入部としての凹部6が設けられる。回転部材3のうち、凹部6よりも下方部分が、オイル容器2に貯留されたオイルPに浸漬される。凹部6は、オイル塗布装置1の手前側からアクセス可能な位置に設けられ、図示例では、凹部6全体がオイル容器2よりも上方に配されている。
【0020】
本実施形態では、
図4に示すように、凹部6が、回転部材3の手前側の端面3aに開口し、回転部材3の奥側の端面3bには開口していない。凹部6は、手前側の端部に設けられた導入部6aと、導入部6aの奥側に設けられた円筒面6bとを有する。導入部6aは、回転部材3の手前側の端面3aから奥側に延び、奥側に行くにつれて徐々に縮径している。図示例の導入部6aは、回転部材3の軸心と同軸のテーパ面である。円筒面6bは、回転部材3の軸心と同軸であり、導入部6aの奥側の端部から奥側に延びている。
【0021】
凹部6の円筒面6bの直径D1は、凹部6に挿入されるワークの外径と略同一とされる。本実施形態では、
図11に示すように、ワーク10が、円柱部材11とその外周に装着されたゴム製のOリング12とを有する。凹部6の円筒面6bの直径D1は、Oリング12の外径D2と同等とされ、例えば、Oリング12の外径D2よりも僅かに小さい。凹部6の円筒面6bの直径D1は、円柱部材11の先端の直径D3よりも大きい。凹部6の円筒面6bの軸方向寸法L1は、円柱部材11のうち、Oリング12よりも先端側の軸方向寸法L2と同等とされる。図示例では、円筒面6bの軸方向寸法L1が円柱部材11の先端部の軸方向寸法L2よりも僅かに大きい。
【0022】
掻き取り部材5は、回転部材3の外周に配された第1の掻き取り部5aと、回転部材3の手前側に配された第2の掻き取り部5bとを有する(
図1~3参照)。図示例では、掻き取り部材5が、両掻き取り部5a,5bを一体に有する略L字形状の平板からなる。
図5に示すように、第1の掻き取り部5aは、回転部材3の外周面3cと微小な半径方向隙間δ1を介して配される。第2の掻き取り部5bは、回転部材3の手前側の端面3aと微小な軸方向隙間δ2を介して配される。掻き取り部材5は、回転部材3のうち、オイルPに浸漬されていない領域と対向する位置に配される(
図1参照)。図示例では、回転部材3のオイルPに浸漬されていない領域のうち、上端よりも回転方向上流側の円周方向位置に掻き取り部材5が配される。
【0023】
図6に示すように、回転部材3を外周側(
図1の矢印B方向)から見たとき、第1の掻き取り部5aは、回転部材3の軸心Lに対して僅かに傾斜している。具体的には、第1の掻き取り部5aの手前側部分(図中下部)が奥側部分(図中上部)よりも回転部材3の回転方向Rの下流側(図中右側)に配されている。
【0024】
第2の掻き取り部5bは、
図1に示すように、回転部材3の手前側の端面3aに沿って、回転部材3の外周端から内径側に向けて延びている。本実施形態では、第2の掻き取り部5bが、回転部材3の半径方向に対して傾斜している。具体的には、第2の掻き取り部5bが、内径側に行くにつれて徐々に回転方向Rの下流側に変位する方向に延びている。
【0025】
以下、上記のオイル塗布装置を用いて、ワーク10の外周にオイルを塗布する方法を説明する。
【0026】
図1に示すように、回転部材3の下部をオイル容器2内のオイルPに浸漬した状態で、電動モータ4を駆動して回転部材3を矢印R方向に回転させると、回転部材3の外周面3cの全周と、両端面3a,3bの外周端付近(オイル容器2内のオイルPに浸漬された半径方向領域)の全周にオイルPが付着する。
【0027】
このとき、
図5及び6に示すように、回転部材3の外周面3cに付着したオイルPが、掻き取り部材5の第1の掻き取り部5aで掻き取られる。本実施形態では、第1の掻き取り部5aが回転部材3の軸心Lに対して傾斜していることで、第1の掻き取り部5aで掻き取られたオイルPが、第1の掻き取り部5aに沿って手前側に流動し、手前側の端面3aに供給される(矢印M参照)。
【0028】
また、
図5に示すように、回転部材3の手前側の端面3aの外周端付近に付着したオイルP(第1の掻き取り部5aで掻き取られて手前側の端面3aに供給されたオイルPを含む)が、第2の掻き取り部5bで掻き取られる。このとき、
図7に示すように、第2の掻き取り部5bが回転部材3の半径方向に対して傾斜していることで、第2の掻き取り部5bで掻き取られたオイルPが、第2の掻き取り部5bに沿って内径側に流動する(矢印N参照)。
【0029】
その後、回転部材3を回転させ続けてオイル容器2のオイルPを回転部材3に供給し続けることにより、回転部材3の手前側の端面3aに供給されたオイルPが内径側に流動し、軸心に設けられた凹部6の開口部の縁に到達する(
図8及び
図9参照)。さらに回転部材3を回転させ続けることにより、オイルPが回転部材3の凹部6の導入部6aに侵入し(
図10参照)、さらには凹部6の円筒面6bに侵入する(
図11参照)。このように、凹部6の開口端にテーパ状の導入部6aを設けることで、手前側の端面3aから凹部6へオイルPが侵入しやすくなる。
【0030】
その後、さらに回転部材3を回転させ続けてオイル容器2のオイルPを回転部材3に供給し続けても、凹部6の内周面の全周に形成されたオイルPの膜が適切な厚さで維持される。換言すると、凹部6の内周面、特に、凹部6の導入部6aの奥側端部に形成されたオイルPの膜が適切な厚さで維持されるように、オイル塗布装置1の各部を調整する。具体的には、以下のような項目を調整する。
【0031】
・第1の掻き取り部5aと回転部材3の軸心Lとの間の角度θ1(
図6参照)
角度θ1が0であると、第1の掻き取り部5aで掻き取ったオイルPが、手前側だけでなく、奥側にも流動するため、手前側の端面3aに供給されるオイルPの量が減る。また、角度θ1が大きすぎると、回転部材3の軸方向両端で回転部材3と第1の掻き取り部5aとの間の半径方向隙間が過大となり、第1の掻き取り部5aで掻き取られるオイルPの量が減る。以上を鑑みて角度θ1が設定され、例えば1~5°程度に設定される。
【0032】
・第2の掻き取り部5bと回転部材3の半径方向との間の角度θ2(
図1参照)
角度θ2が0であると、第2の掻き取り部5bで掻き取ったオイルPが、内径側だけでなく、外径側にも流動するため、凹部6に供給されるオイルPの量が減る。また、角度θ2が大きすぎると、第2の掻き取り部5bによるオイルPの掻き取り能力が低下し、凹部6に供給されるオイルPの量が減る。以上を鑑みて角度θ2が設定され、例えば5~20°程度に設定される。
【0033】
・第1の掻き取り部5aと回転部材3の外周面3cとの間の半径方向隙間δ1、及び、第2の掻き取り部5bと回転部材3の手前側の端面3aとの間の軸方向隙間δ2(
図5参照)
これらの半径方向隙間δ1及び軸方向隙間δ2が小さいほど、第1の掻き取り部5a及び第2の掻き取り部5bによりオイルPを掻き取る能力が高くなる。従って、半径方向隙間δ1及び軸方向隙間δ2は、掻き取り部材5と回転部材3とが接触しない範囲で、なるべく小さい値に設定される。
【0034】
・第2の掻き取り部5bの内径側端部の半径方向位置
第2の掻き取り部5bを内径側(回転部材3の軸心側)に延ばして凹部6に近づけると、凹部6にオイルPが供給されやすくなる。従って、凹部6に適切な量のオイルPが供給されるように、第2の掻き取り部5bの内径側端部の半径方向位置が設定される。
【0035】
・掻き取り部材5の回転部材3に対する円周方向位置
本発明者の検証によると、掻き取り部材5を回転部材3の上端に配した場合、回転部材3の手前側の端面3aに供給されたオイルPが、第2の掻き取り部5bよりも内径側に誘導されず、凹部6に到達しなかった。これに対し、
図1に示すように、掻き取り部材5を、回転部材3のオイルPに浸漬されていない領域のうち、上端よりも回転方向Rの上流側に配することで、オイルPが内径側に誘導されて凹部6に到達した。従って、掻き取り部材5は、回転部材3のオイルPに浸漬されていない領域の上端よりも回転方向Rの上流側の範囲内で、凹部6の内周面に適切な厚さのオイルPの膜が形成されるように設定される。
【0036】
・回転部材3の回転速度
回転部材3の回転速度を速くすると、オイル容器2から回転部材3に供給されるオイルPの量が増え、回転部材3の回転速度を遅くすると、オイル容器2から回転部材3に供給されるオイルPの量が減る。従って、凹部6の内周面に適切な厚さのオイルPの膜が形成されるように、回転部材3の回転速度が設定される。
【0037】
・回転部材3の凹部6の形状
例えば、凹部6の導入部6aの形状(角度)や大きさを変えることで、回転部材3の手前側の端面3aから凹部6内へのオイルPの供給具合(供給されやすさ)が変わる。従って、凹部6の内周面に適切な厚さのオイルPの膜が形成されるように、凹部6の形状が設定される。
【0038】
上記のように、オイル塗布装置1の各部の調整を行った上で、回転部材3を回転させながら回転部材3にオイルPを供給することで、回転部材3の凹部6の内周面の全周に均一なオイルPの膜を形成することができる。この状態で、
図11に点線で示すように、ワーク10の先端を凹部6の内周に挿入し、Oリング12を凹部6の内周面(詳しくは、導入部6aの奥部)に形成されたオイルPの膜に接触させることにより、Oリング12の外周の全周にオイルPを均一に塗布することができる。
【0039】
本実施形態のワーク10のOリング12は、オイルシールである。ワーク10のうち、Oリング12よりも先端側(
図11の左側)がオイルと接触する領域(以下、「オイル接触領域13」と言う。)であり、Oリング12よりも基端側(
図11の右側)がオイルと接触しない領域(以下、「オイル非接触領域14」と言う。)である。オイル接触領域13は、凹部6の円筒面6bの内周に挿入されるが、オイル非接触領域14は、凹部6の円筒面6bの内周には挿入されないため、オイル非接触領域14にはオイルPが付着しにくい。特に、本実施形態では、凹部6の開口端にテーパ状の導入部6aを設けているため、Oリング12を導入部6aの奥部に接触させたときに、オイル非接触領域14は導入部6aの中間部(奥部よりも大径な部分)と対向するため、オイル非接触領域14をオイルPの膜から離反させて、オイル非接触領域14へのオイルPの付着を回避できる。
【0040】
また、本実施形態では、凹部6の円筒面6bの直径D1がOリング12の外径D2よりも僅かに小さいため、Oリング12を円筒面6bの内周に挿入しようとすると、Oリング12と円筒面6bとが干渉して抵抗が生じる。これにより、ワーク10のOリング12やオイル非接触領域14が凹部6の奥(円筒面6b)まで挿入されることを回避できるため、Oリング12に過剰のオイルPが付着したり、オイル非接触領域14にオイルPが付着したりする事態を防止できる。特に、本実施形態では、凹部6の円筒面6bの軸方向寸法L1が、ワーク10のオイル接触領域13の軸方向寸法L2と同等であるため、ワーク10のOリング12全体が凹部6の円筒面6bの内周に挿入される前に、ワーク10の先端が凹部6の底面に突き当たる。これにより、ワーク10のOリング12やオイル非接触領域14が凹部6の奥まで挿入されることを確実に防止できる。
【0041】
本発明は上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記の実施形態と同様の点については重複説明を省略する。
【0042】
回転部材3の軸心に設けられる凹部6の形状は上記に限れない。例えば、
図12に示すように、凹部6の導入部6aを凸曲面(例えば、断面円弧状の凸曲面)としてもよい。あるいは、
図13に示すように、導入部6aを、テーパ面6a1と凸曲面6a2(例えば、断面円弧状の凸曲面)とを有する構成としてもよい。凸曲面6a2は、テーパ面6a1と回転部材3の手前側の端面3aとを滑らかに連続する。また、テーパ面6a1と円筒面6bとを連続する凸曲面を設けてもよい。また、ワーク挿入部は凹部6に限らず、例えば、回転部材3の軸心を貫通した貫通孔としてもよい。
【0043】
上記の実施形態では、掻き取り部材5が、第1の掻き取り部5a及び第2の掻き取り部5bを有する場合を示したが、これに限られない。例えば、第2の掻き取り部5bのみで凹部6の内周面に適切なオイルPの膜を形成することができる場合は、第1の掻き取り部5aを省略してもよい。一方、第1の掻き取り部5aにより回転部材3の外周面3cから手前側の端面3aに供給されたオイルPを、第2の掻き取り部5bが無くても凹部6まで誘導することができる場合は、第2の掻き取り部5bを省略してもよい。
【0044】
液体誘導手段は、掻き取り部材5に限られない。例えば、回転部材3の回転速度を制御することにより、液体誘導手段を構成することもできる。例えば、回転部材3を間欠的に回転させることで、オイルPを凹部6に誘導することができる。具体的には、回転部材3の回転速度を一時的に低下あるいは停止させることで、回転部材3の手前側の端面3aのうち、凹部6の上方に付着したオイルPを自重により端面3aを伝って降下させ、凹部6に誘導することができる。
【0045】
液体供給部は、オイル容器2に限られない。例えば、回転部材3に向けて液体(オイル)を噴射するノズルや、上方から回転部材3に液体(オイル)を滴下する滴下部で、液体供給部を構成してもよい。
【0046】
以上の実施形態では、回転部材3の軸心を水平方向にした場合を示したが、これに限らず、回転部材3の軸心を水平方向に対して傾斜させてもよい。例えば、回転部材3の軸心を鉛直方向としてもよい。
【0047】
以上の実施形態では、ワークの外周に塗布する液体がオイルの場合を示したが、オイル以外の液体、例えば接着剤をワークの外周に塗布する装置に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 オイル塗布装置(液体塗布装置)
2 オイル容器(液体供給部)
3 回転部材
4 電動モータ(駆動手段)
5 掻き取り部材(液体誘導手段)
5a 第1の掻き取り部
5b 第2の掻き取り部
6 凹部(ワーク挿入部)
6a 導入部
6b 円筒面
10 ワーク
11 円柱部材
12 Oリング
13 オイル接触領域
14 オイル非接触領域
P オイル(液体)