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特開2023-155659樹脂製のサイレンサの製造方法および樹脂製のサイレンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155659
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】樹脂製のサイレンサの製造方法および樹脂製のサイレンサ
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/40 20210101AFI20231016BHJP
   B29C 69/02 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
F25B41/40 A
B29C69/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065115
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】侯 剛
(72)【発明者】
【氏名】栗林 延全
(72)【発明者】
【氏名】梶 聡
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AG10
4F213AG28
4F213AH81
4F213AR12
4F213WA05
4F213WA15
4F213WA43
4F213WB01
(57)【要約】
【課題】自動車用エアコンディショナーの配管に接続され、軽量でありながら内圧に対する十分な耐圧性を有する樹脂製のサイレンサおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】胴部3の外周面に周方向リブ10aが突設され、胴部3の軸心方向一端部に挿入部4、他端部に拡管部8を介して連接されたパイプ部9を有する樹脂製の挿入側部品2と、胴部12の外周面に周方向リブ21aが突設され、胴部12の軸心方向他端部に受け部13、一方端部に拡管部19を介して連接されたパイプ部20を有する樹脂製の受け側部品11とを、挿入部4を受け部13の円環状溝14に挿入し、挿入部4と円環状溝14との接触部分をスピン溶着して接合された胴部3、12どうしが円筒部になり、この接合部分の外周側に離間して連接された円筒状の流れ止め壁部18と、この接合部分の内周側に離間して連接された円筒状の流れ止め壁部16とを有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用エアコンディショナーの配管に接続される樹脂製のサイレンサの製造方法であって、
円筒状の胴部の外周面に円環状の周方向リブが突設され、この胴部の軸心方向一端部に挿入部を有し、軸心方向他端部にこの胴部よりも細径のパイプ部がこの胴部に向かって拡径する拡管部を介して連接された挿入側部品と、
円筒状の胴部の外周面に円環状の周方向リブが突設され、この胴部の軸心方向他端部に前記挿入部が挿入される受け部を有し、軸心方向一方端部にこの胴部よりも細径のパイプ部がこの胴部に向かって拡径する拡管部を介して連接された受け側部品と、をそれぞれ樹脂射出成形により成形し、
前記受け部は、円筒状の前記挿入部が挿入される円環状溝と、この円環状溝の外周側に離間して連接された円筒状の流れ止め壁部を有し、
前記円環状溝に挿入した前記挿入部の先端面を前記円環状溝の底面に接触させて押圧するとともに、前記挿入部の外周面と前記円環状溝の外周側周壁とを接触させ、かつ、前記挿入部の内周面を前記円環状溝の内周側周壁とはすき間をあけて非接触状態にして、前記挿入側部品と前記受け側部品とを相対的に軸心周りに回転させることにより、前記挿入部と前記円環状溝との接触部分をスピン溶着することで、前記挿入側部品の前記胴部と前記受け側部品の前記胴部とを接合して一体化した円筒部にする樹脂製のサイレンサの製造方法。
【請求項2】
前記挿入側部品の外周面に軸心方向に延在する軸方向リブを前記樹脂射出成形により突設し、前記受け側部品の外周面に軸心方向に延在する軸方向リブを前記樹脂射出成形により突設する請求項1に記載の樹脂製のサイレンサの製造方法。
【請求項3】
前記挿入側部品の前記胴部の内周面に円環状の周方向リブを前記樹脂射出成形により突設し、前記受け側部品の前記胴部の内周面に円環状の周方向リブを前記樹脂射出成形により突設する請求項1または2に記載の樹脂製のサイレンサの製造方法。
【請求項4】
前記挿入側部品の前記胴部の外周面に突設した前記周方向リブと内周面に突設した前記周方向リブを軸心方向にオフセットした配置にするとともに、前記受け側部品の前記胴部の外周面に突設した前記周方向リブと内周面に突設した前記周方向リブを軸心方向にオフセットした配置にする請求項3に記載の樹脂製のサイレンサの製造方法。
【請求項5】
自動車用エアコンディショナーの配管に接続される樹脂製のサイレンサであって、
円筒状の胴部の外周面に円環状の周方向リブが突設されていて、この胴部の軸心方向一端部に挿入部を有し、軸心方向他端部にこの胴部よりも細径のパイプ部がこの胴部に向かって拡径する拡管部を介して連接されている樹脂製の挿入側部品と、
円筒状の胴部の外周面に円環状の周方向リブが突設されていて、この胴部の軸心方向他端部に前記挿入部が挿入される受け部を有し、軸心方向一方端部にこの胴部よりも細径のパイプ部がこの胴部に向かって拡径する拡管部を介して連接されている樹脂製の受け側部品とが、前記挿入部が前記受け部に挿入された状態で接合されていて、この接合により一体化している前記挿入側部品の前記胴部と前記受け側部品の前記胴部とが円筒部を形成していて、
前記挿入部と前記受け部との接合部分の外周側に離間して連接されている円筒状の流れ止め壁部を有し、前記接合部分の内周側に離間して連接されている円筒状の流れ止め壁部を有する樹脂製のサイレンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用エアコンディショナーの配管に接続される樹脂製のサイレンサの製造方法および樹脂製のサイレンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用エアコンディショナーの配管には、循環する冷媒の流動に起因する騒音を抑制するためにサイレンサが接続されている(例えば特許文献1、2参照)。サイレンサは接続される配管よりも太径の円筒体であり、主に金属で形成されている。
【0003】
近年、自動車の軽量化に伴って配管の軽量化も要請されている。従来の金属製のサイレンサを軽量化のために樹脂製にする際には、流通する冷媒によって作用する内圧に対して十分な耐圧性を確保する必要がある。また、サイレンサはより細径の配管に接続されるので、太径の円筒部(胴部)から接続する配管に至るまでに太さを変化させる必要がある。この太さの変化具合によっては、内圧が作用したサイレンサに局部的に過大な応力が生じて十分な耐圧性を確保することが難しい場合がある。耐圧性を確保するために、円筒状のサイレンサの周壁を厚くすると軽量化には不利になる。それ故、軽量でありながら内圧に対する十分な耐圧性を有する樹脂製のサイレンサを製造するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-6668号公報
【特許文献2】特開2000-205701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、自動車用エアコンディショナーの配管に接続され、軽量でありながら内圧に対する十分な耐圧性を有する樹脂製のサイレンサの製造方法および樹脂製のサイレンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の樹脂製のサイレンサの製造方法は、自動車用エアコンディショナーの配管に接続される樹脂製のサイレンサの製造方法であって、円筒状の胴部の外周面に円環状の周方向リブが突設され、この胴部の軸心方向一端部に挿入部を有し、軸心方向他端部にこの胴部よりも細径のパイプ部がこの胴部に向かって拡径する拡管部を介して連接された挿入側部品と、円筒状の胴部の外周面に円環状の周方向リブが突設され、この胴部の軸心方向他端部に前記挿入部が挿入される受け部を有し、軸心方向一方端部にこの胴部よりも細径のパイプ部がこの胴部に向かって拡径する拡管部を介して連接された受け側部品と、をそれぞれ樹脂射出成形により成形し、前記受け部は、円筒状の前記挿入部が挿入される円環状溝と、この円環状溝の外周側に離間して連接された円筒状の流れ止め壁部を有し、前記円環状溝に挿入した前記挿入部の先端面を前記円環状溝の底面に接触させて押圧するとともに、前記挿入部の外周面と前記円環状溝の外周側周壁とを接触させ、かつ、前記挿入部の内周面を前記円環状溝の内周側周壁とはすき間をあけて非接触状態にして、前記挿入側部品と前記受け側部品とを相対的に軸心周りに回転させることにより、前記挿入部と前記円環状溝との接触部分をスピン溶着することで、前記挿入側部品の前記胴部と前記受け側部品の前記胴部とを接合して一体化した円筒部にすることを特徴とする。
【0007】
本発明の樹脂製のサイレンサは、自動車用エアコンディショナーの配管に接続される樹脂製のサイレンサであって、円筒状の胴部の外周面に円環状の周方向リブが突設されていて、この胴部の軸心方向一端部に挿入部を有し、軸心方向他端部にこの胴部よりも細径のパイプ部がこの胴部に向かって拡径する拡管部を介して連接されている樹脂製の挿入側部品と、円筒状の胴部の外周面に円環状の周方向リブが突設されていて、この胴部の軸心方向他端部に前記挿入部が挿入される受け部を有し、軸心方向一方端部にこの胴部よりも細径のパイプ部がこの胴部に向かって拡径する拡管部を介して連接されている樹脂製の受け側部品とが、前記挿入部が前記受け部に挿入された状態で接合されていて、この接合により一体化している前記挿入側部品の前記胴部と前記受け側部品の前記胴部とが円筒部を形成していて、前記挿入部と前記受け部との接合部分の外周側に離間して連接されている円筒状の流れ止め壁部を有し、前記接合部分の内周側に離間して連接されている円筒状の流れ止め壁部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記挿入側部品と前記受け側部品とが、前記挿入部が前記受け部に挿入された状態で接合されることで、接合された互いの前記胴部どうしを円筒部にした樹脂製のサイレンサを得ることができる。前記挿入部と前記受け部との接合部分の外周側に離間して連接された円筒状の流れ止め壁部と、この接合部分の内周側に離間して連接された円筒状の流れ止め壁部とを有するので、接合部分の接合の際に生じたバリがこれら流れ止め壁部によってサイレンサの内周面および外周面に突出することが防止されていて、前記挿入側部品と前記受け側部品とを安定して強固に接合するには有利になっている。また、それぞれの前記胴部と前記パイプ部とが前記拡管部を介して連接されているので、内圧が作用した際に、それぞれの前記胴部と前記パイプ部との間の領域に局部的に過大な応力が生じることを回避できる。さらには、それぞれの前記胴部の外周面に突設されている周方向リブは、内圧に対抗するので、それぞれの胴部、拡管部や接合部分に局部的に過大な応力が生じることを回避できる。それ故、軽量な樹脂製でありながらも内圧に対する十分な耐圧性を有するサイレンサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】サイレンサの実施形態を正面視で例示する説明図である。
図2図1のサイレンサを縦断面視で例示する説明図である。
図3図2の接合部分を拡大して例示する説明図である。
図4図1のサイレンサを構成する挿入側部品と受け側部品とを、分離した状態にして正面視で例示する説明図である。
図5図4の挿入側部品と受け側部品とを縦断面視で例示する説明図である。
図6図5の挿入側部品と受け側部品と篏合させた状態を縦断面視で例示する説明図である。
図7図6の篏合部分を拡大して例示する説明図である。
図8図6のA-A断面図である。
図9】サイレンサの別の実施形態を縦断面視で例示する説明図である。
図10】サイレンサの別の実施形態を正面視で例示する説明図である。
図11図10のB-B断面図である。
図12】サイレンサの別の実施形態を正面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の樹脂製のサイレンサの製造方法および樹脂製のサイレンサを、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1図3に例示する樹脂製のサイレンサ1の実施形態は、円筒部(胴部3、12)の軸心方向両端部にそれぞれ、胴部3、12よりも細径のパイプ部9、20が拡管部8、19を介して連接されている。パイプ部9、20にはそれぞれ自動車用エアコンディショナーの配管が接続される。中空のサイレンサ1の内部には、そのエアコンディショナーに使用される冷媒Cが循環して流れる。冷媒Cは、一方のパイプ部9から流入して他方のパイプ部20から流出する。図中の一点鎖線CLは、胴部3、12、拡管部8、19、パイプ部9、20の横断面中心を通るサイレンサ1の軸心を示している。軸心CLが延在する方向が軸心方向である。
【0012】
サイレンサ1は、図4図5に例示する樹脂製の挿入側部品2と樹脂製の受け側部品11とが接合されて一体化することで形成されている。挿入側部品2と受け側部品11とは基本的に同じ樹脂により形成されている。挿入側部品2および受け側部品11を形成する樹脂としては、射出成形可能な公知の樹脂が用いられる。例えば、ナイロン樹脂(66ナイロンなど)、ポリプロピレン、ABS樹脂などが使用される。
【0013】
この樹脂には補強のために短繊維(例えばガラス繊維または炭素繊維など)を所定割合(樹脂100質量部に対して例えば30%~40%質量部)で混合することもできる。短繊維のサイズは例えば外径0.001mm~1.0mm程度、長さは0.01mm~10mm程度である。
【0014】
挿入側部品2は、胴部3と拡管部8とパイプ部9とを有している。胴部3は、軸心方向一端部(図では下端部)に挿入部4を有するとともに軸心方向他端部(図では上端部)には拡管部8が配置されている。拡管部8は、パイプ部9から胴部3に向かって拡径する円筒体であり、胴部3とパイプ部9とは拡管部8を介して連接されている。
【0015】
拡管部8の周壁の軸心CLに対する傾斜角度は例えば30°~60°程度である。また、拡管部8と胴部3との境界は凸状の円弧状になっていて、この境界の外表面の円弧半径(R1寸法)は例えば10mm~20mm程度である。この境界の内表面の円弧半径(R2寸法)は、厚さ(外表面と内表面との厚さ)が一定になるように設定されている。拡管部8とパイプ部9との境界は凹状の円弧状になっていて、この境界の外表面の円弧半径(R3寸法)は例えば10mm~20mm程度である。この境界の内表面の円弧半径(R4寸法)は、厚さ(外表面と内表面との厚さ)が一定になるように設定されている。したがって、円筒状の胴部3と円筒状のパイプ部9とは、内径および外径を徐々に変化させている拡管部8によって滑らかにつながっている。
【0016】
胴部3の外周面には、胴部3を補強するために、周方向に連続する周方向リブ10aが突設されている。この実施形態では、複数(5つ)の周方向リブ10aが軸心方向に間隔をあけて配置されているが、その数は例えば1~6の範囲である。周方向リブ10aは軸心方向に等間隔で配置するとよい。軸方向リブ10は、胴部3の少なくとも軸心方向中央部に配置する。
【0017】
周方向リブ10aの突出高さ(胴部3の外周面からの半径方向外側への突出量)は例えば2mm~5mm程度であり、リブ幅は例えば1mm~5mm程度である。周方向リブ10aの数、寸法は、サイレンサ1に要求される耐圧性などに基づいて、適宜決定される。
【0018】
この実施形態では、胴部3の内周面には、周方向に連続する周方向リブ10bが突設されている。この周方向リブ10bは主に、消音効果を向上させることを目的としているが、胴部3を補強する効果もある。この実施形態では、複数(5つ)の周方向リブ10bが軸心方向に間隔をあけて配置されているが、周方向リブ10bの数は例えば1~6の範囲である。周方向リブ10bは軸心方向に等間隔で配置するとよい。尚、周方向リブ10bは任意で設けることができる。
【0019】
周方向リブ10bの突出高さ(胴部3の内周面からの半径方向内側への突出量)は例えば2mm~5mm程度であり、リブ幅は例えば1mm~5mm程度である。周方向リブ10bの数、寸法は、サイレンサ1に要求される消音性などに基づいて、適宜決定される。
【0020】
周方向リブ10a、10bの横断面形状は、半円形などの頂部が円弧状の形状に限定されず、三角形状、四角形状、その他の多角形状などを採用することができる。頂部が円弧状の形状にすることで周方向リブ10a、10bの耐久性を向上させるには有利になる。
【0021】
周方向リブ10aと周方向リブ10bとは、この実施形態のように、軸心方向にオフセットさせた配置にすることが望ましい。即ち、周方向リブ10aと周方向リブ10bとが、軸心方向で非重複の配置にするとよい。周方向リブ10aと周方向リブ10bとが軸心方向で重複した配置であると、胴部3での樹脂量の偏在が過大になるため良好に射出成形するには不利になる。
【0022】
円筒状の挿入部4は、外周側周壁5a、5bと内周側周壁6と先端面7とを有している。外周側周壁5aは外周側周壁5bよりも小径になっていて、両者の境が段差になっている。
【0023】
受け側部品11は、胴部12と拡管部19とパイプ部20とを有している。胴部12は、軸心方向一端部(図では上端部)に受け部13を有するとともに軸心方向他端部(図では下端部)には拡管部19が配置されている。胴部12とパイプ部20とは拡管部19を介して連接されている。胴部12の外周面には、胴部12を補強するために、周方向に連続する周方向リブ21aが突設されている。また、この実施形態では、胴部12の内周面には、周方向に連続する周方向リブ21bが突設されている。
【0024】
挿入側部品2と受け側部品11とは、挿入部4と受け部13とが異なっているが、その他の部分(胴部3と胴部12、拡管部8と拡管部19、パイプ部9とパイプ部20、周方向リブ10aと周方向リブ21a、周方向リブ10bと周方向リブ21b)は実質的に同じ仕様である。胴部3、12の内径は例えば30mm~60mm程度である。パイプ部9、20の内径は例えば10mm~20mm程度である。胴部3、12、拡管部8、19、パイプ部9、20のそれぞれの周壁の厚さは例えば2mm~5mm程度で概ね同じ厚さになっている。
【0025】
受け部13は、円環状溝14と、この円環状溝14の外周側に離間して連接された円筒状の流れ止め壁部18とを有している。円環状溝14は、外周側周壁15a、15bと内周側周壁16と底面17とを有している。外周側周壁15aは外周側周壁15bよりも小径になっていて、両者の境が段差になっている。
【0026】
アッセンブリ品1では、挿入側部品2と受け側部品11とは、挿入部4が受け部13に挿入された状態で接合されている。図2では、挿入部4と受け部13との接合部分を細い破線によって示している。即ち、挿入部4が受け部13に挿入された状態で対向する面どうし、具体的には、先端面7と底面17、外周側周壁5aと外周側周壁15a、外周側周壁5bと外周側周壁15bがそれぞれ接合されている。
【0027】
この接合により胴部3と胴部12とが一体化して1つの円筒部を形成している。そして、挿入部4と受け部13との接合部分の外周側に、すき間g2をあけて離間して円筒状の流れ止め壁部18が連接されている。流れ止め壁部18は、外周側周壁5bの先端面から軸心方向に突出していて、その突出量は例えば5mm~10mmである。挿入部4と受け部13との接合部分の内周側には、すき間g1をあけて離間して流れ止め壁部として機能する円筒状の内周側周壁16が連接されている。内周側周壁16の底面17からの軸心方向への突出量は例えば10mm~15mmである。すき間g1、g2は例えば0.5mm~2mm程度である。尚、内周側周壁16の先端面16aと、挿入側部品2(挿入部4)とはすき間をあけて離間している。
【0028】
以下、本発明の製造方法によってこのサイレンサ1を製造する手順の一例を説明する。
【0029】
まず、図4図5に例示する挿入側部品2および受け側部品11を樹脂射出成形により成形する。公知の射出成形機を用いて公知の方法によって、挿入側部品2および受け側部品11を射出成形すればよい。したがって、挿入側部品2、受け側部品11を射出成形する際に、周方向リブ10a、10b、21a、21bも同時に一体的に成形される。
【0030】
次いで、図6図8に例示するように、挿入部4を受け部13に挿入して嵌合させる。詳述すると、受け側部品11をスピン溶着機の固定部に固定し、挿入側部品2をスピン溶着機の可動部に固定し、互いの軸心CLを一致させた状態で、挿入側部品2を下方移動させて挿入部4を円環状溝14に挿入する。スピン溶着機は公知のものを用いればよい。
【0031】
そして、挿入部4の先端面7を円環状溝14の底面17に接触させて押圧するとともに、挿入部4の外周面と円環状溝14の外周側周壁15a、15bとを接触させ、かつ、挿入部4の内周側周壁6を円環状溝14の内周側周壁16とはすき間g1をあけて非接触状態にする。また、挿入部4の外周面と流れ止め壁部18とはすき間g2をあけて非接触状態にする。
【0032】
次いで、受け側部品11を所定位置に固定した状態で、挿入側部品2を軸心CL周りに回転させることにより、挿入部4と円環状溝14との接触部分をスピン溶着する。即ち、先端面7と底面17、外周側周壁5aと外周側周壁15a、外周側周壁5bと外周側周壁15bをそれぞれ溶着して接合する。これにより、挿入側部品2の胴部3と受け側部品11の胴部12とが接合されて1つの円筒部になる。尚、挿入側部品2を所定位置に固定した状態で受け側部品11を軸心CL周りに回転させることもでき、挿入側部品2と受け側部品11とを相対的に軸心CL周りに回転させてスピン溶着をすればよい。
【0033】
スピン溶着する際のスピン回転速度、先端面7を円環状溝14の底面17に押圧する押圧力(挿入側部品2の下方移動量)は、事前テストによって良好な溶着ができる適切な範囲を把握しておく。そして、スピン回転速度、押圧力をその適切な範囲に設定してスピン溶着をすればよい。
【0034】
このように挿入側部品2と受け側部品11とがスピン溶着によって接合されて一体化することで図1図3に例示するサイレンサ1が製造される。挿入部4と受け部13との接合部分(先端面7と底面17、外周側周壁5aと外周側周壁15a、外周側周壁5bと外周側周壁15b)の外周側に、上方に突出してすき間g2で離間して連接された円筒状の流れ止め壁部18は、スピン溶着による接合の際に溶融した樹脂の流れを遮断する。これにより、溶融した樹脂が固化して生じるバリがサイレンサ1(胴部3、12)の外周面に突出することが防止される。また、この接合部分の内周側にすき間g1で離間して連接された円筒状の内周側周壁16も流れ止め壁部として機能するので、スピン溶着による接合の際に溶融した樹脂の流れを遮断する。これにより、溶融した樹脂が固化して生じるバリがサイレンサ1(胴部3、12)の内周面に突出することが防止される。
【0035】
即ち、接合の際に発生したバリはすき間g1、g2に収容されて、流れ止め壁部18の外側および内周側周壁16の内側には突出しない。そのため、バリ取り加工が不要になり、バリを発端として接合部分が破損するリスクも低減して、挿入側部品2と受け側部品11とを安定して強固に接合するには有利になっている。
【0036】
また、それぞれの胴部3、12とパイプ部9、20とが拡管部8、19を介して連接されているので、サイレンサ1の使用時に内圧が作用した際に、胴部3とパイプ部9、20との間の領域、胴部12とパイプ部20との間の領域のそれぞれに、局部的に過大な応力が生じることを回避できる。さらには、それぞれの胴部3、12の外周面に突設されている周方向リブ10a、21aは、サイレンサ1に作用する内圧に対抗する。そのため、それぞれの胴部3、12、拡管部8、19や接合部分に局部的に過大な応力が生じることを回避できる。それ故、このサイレンサ1によれば、軽量な樹脂製でありながらも内圧に対する十分な耐圧性を確保することができる。
【0037】
図2に例示するように、冷媒Cは一方のパイプ部9から流入し、拡管部8、胴部3、12、拡管部19を経て他方のパイプ部18から流出して循環する。冷媒Cは、拡管部8、19ではその内周面に沿って流れる。この実施形態では、流通する冷媒Cが胴部3、12の内周面に突設させた周方向リブ10b、21bに干渉されることで、流通する冷媒Cに起因する騒音、脈動が相殺されるようになり、騒音、脈動をより低減させることができる。
【0038】
図9に例示するように突出高さを異ならせた周方向リブ10b、21bを軸心方向に並べて配置した仕様にすることもできる。周方向リブ10b、21bは、上述した実施形態のように軸心方向に対して直交した向きに突出した仕様に限定されず、軸心方向一方側(パイプ部20側)に向かって傾斜させて突出した仕様にすることもできる。
【0039】
図10図11に例示するように、それぞれの胴部3、12の外周面に、周方向リブ10a、21aに加えて、軸心方向に延在する軸方向リブ10c、21cが突設された仕様にすることもできる。軸方向リブ10c、21cは、挿入側部品2、受け側部品11を射出成形する際に同時に一体的に成形される。軸方向リブ10c、21cは実質的に同じ仕様にする。
【0040】
軸方向リブ10c、21cは、胴部3、12の少なくとも軸心方向中央部に配置し、周方向リブ10a、21aが配置されている範囲に配置するとよい。軸方向リブ10c、21cの突出高さ、リブ幅は、周方向リブ10a、21aと同等にする。軸方向リブ10c、21cはそれぞれ、周方向に等間隔で3本以上配置し3本~12本が望ましい。また、軸方向リブ10cと軸方向リブ21cとは、周方向位置を一致させることが望ましい。
【0041】
周方向リブ10a、21aに加えて、軸方向リブ10c、21cを備えた仕様にすることで、胴部3、12(サイレンサ1)の耐久性を一段と向上させるには有利になる。
【0042】
図10に例示する軸方向リブ10c、21cに代えて、図12に例示するように、胴部3、12の外周面に軸心方向に対して例えば30°~60°で傾斜して延在する斜め方向リブ10d、21d突設された仕様にすることもできる。斜め方向リブ10d、21dは、挿入側部品2、受け側部品11を射出成形する際に同時に一体的に成形される。斜め方向リブ10d、21dは実質的に同じ仕様にする。斜め方向リブ10d、21dの突出高さ、リブ幅は、周方向リブ10a、21aと同等にする。
【0043】
挿入側部品2と受け側部品11とはスピン溶着による接合に限らず、その他の公知の方法によって接合することもできる。例えば、高周波溶着、熱板溶着、超音波溶着などによって、挿入側部品2と受け側部品11と接合して一体化させることもできる。
【符号の説明】
【0044】
1 サイレンサ
2 挿入側部品
3 胴部(円筒部)
4 挿入部
5a、5b 外周側周壁
6 内周側周壁
7 先端面
8 拡管部
8a 拡流部
9 パイプ部
10a、10b 周方向リブ
10c 軸方向リブ
10d 斜め方向リブ
11 受け側部品
12 胴部(円筒部)
13 受け部
14 円環状溝
15a、15b 外周側周壁
16 内周側周壁(流れ止め壁部)
17 底面
18 流れ止め壁部
19 拡管部
20 パイプ部
21a、21b 周方向リブ
21c 軸方向リブ
21d 斜め方向リブ
C 冷媒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12