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  • 特開-不燃シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155666
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】不燃シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20231016BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231016BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20231016BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231016BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20231016BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20231016BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20231016BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20231016BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20231016BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
B32B17/10
B32B27/00 E
B32B27/20 A
B32B27/30 101
B32B27/36
B32B27/40
B32B7/12
E04B1/94 V
E04F13/07 B
E04F13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065125
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 幹之
【テーマコード(参考)】
2E001
2E110
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA14
2E001GA24
2E001HA33
2E001HD11
2E110AA02
2E110AB03
2E110BA05
2E110BB02
2E110GA32X
2E110GA42X
2E110GB32X
2E110GB42Z
2E110GB46W
2E110GB52W
2E110GB52Z
4F100AA01C
4F100AA01E
4F100AG00A
4F100AK15D
4F100AK22D
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100AK51B
4F100AK51E
4F100AL01D
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100CA02B
4F100CA13C
4F100CA13E
4F100CB02B
4F100DG12A
4F100EJ65E
4F100GB07
4F100HB31D
4F100JJ07A
4F100JK02
4F100JK03
4F100JK06
4F100JK08
4F100JL11B
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】不燃性を向上させることが可能な不燃シートを提供する。
【解決手段】ガラスクロス1の一方の面に、ポリエステル系樹脂をウレタン架橋させた接着剤を含む接着剤層5を介して貼り付けられた化粧シート2が、ポリエステル樹脂を含有する樹脂フィルム2Cと、樹脂フィルム2Cのガラスクロス1と反対側の面に形成された印刷インキ層2Bと、印刷インキ層2Bの樹脂フィルム2Cと反対側の面に形成された表面保護層2Aと、樹脂フィルム2Cのガラスクロス1と対向する面に形成された裏面プライマー層2Dを有する不燃シート10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスクロスの一方の面に、接着剤層を介して化粧シートが貼り付けられており、
前記接着剤層は、ポリエステル系樹脂をウレタン架橋させた接着剤を含み、
前記接着剤層の質量は、62.0[g/m]以下であり、
前記化粧シートは、ポリエステル樹脂を含有する樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの前記ガラスクロスと反対側の面に形成された印刷インキ層と、前記印刷インキ層の前記樹脂フィルムと反対側の面に形成された表面保護層と、前記樹脂フィルムの前記ガラスクロスと対向する面に形成された裏面プライマー層と、を有し、
前記樹脂フィルムは、無機顔料を4.5質量%以上含み、
前記樹脂フィルムの厚さは、0.045[mm]以上0.093[mm]以下の範囲内であり、
前記印刷インキ層は、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を22.4質量%以上含み、
前記印刷インキ層の有機質量は、6.1[g/m]以下であり、
前記表面保護層の有機質量は、12.7[g/m]以下であり、
前記裏面プライマー層の有機質量は、1.0[g/m]以下であり、
前記裏面プライマー層は、無機顔料を37.7質量%以上含み、
前記樹脂フィルム、前記印刷インキ層、前記表面保護層、前記裏面プライマー層及び前記接着剤層の有機質量の合計値は、131.4[g/m]以下である不燃シート。
【請求項2】
前記接着剤層の厚さは、20[g/m]以上40[g/m]以下の範囲内である請求項1に記載した不燃シート。
【請求項3】
前記接着剤は、前記ポリエステル系樹脂に、硬化剤としてポリイソシアネート系樹脂を含む請求項1に記載した不燃シート。
【請求項4】
JIS L 1096 A法(ストリップ法)により測定した縦方向の引張強さが900以上であり、
JIS L 1096 A法(ストリップ法)により測定した横方向の引張強さが560以上である請求項1に記載した不燃シート。
【請求項5】
JIS L 1096 A法(ストリップ法)により測定した縦方向の伸び率が3.5以下であり、
JIS L 1096 A法(ストリップ法)により測定した横方向の伸び率が2.5以下である請求項1に記載した不燃シート。
【請求項6】
JIS L 1096 C法(トラベゾイド法)により測定した縦方向の引裂強さが90以下であり、
JIS L 1096 C法(トラベゾイド法)により測定した横方向の引裂強さが80以下である請求項1に記載した不燃シート。
【請求項7】
前記ガラスクロスと前記化粧シートとの間の強度である層間ラミネート強度が40以上である請求項1に記載した不燃シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の膜天井等に用いられるシート状の部材には、火災時の安全性を確保するため、不燃性が要求されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-040034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、一定の規模・用途に供する、居室や廊下・階段等の避難経路等に用いる膜天井等には、要求される性能に応じた防火材料を用いなければならないことが、法律(建築基準法施行令第129条)で義務付けられている。
本発明は、上述した問題点を鑑み、不燃性を向上させることが可能な不燃シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、ガラスクロスの一方の面に、接着剤層を介して化粧シートが貼り付けられている不燃シートである。接着剤層は、ポリエステル系樹脂をウレタン架橋させた接着剤を含み、質量が62.0[g/m]以下である。化粧シートは、樹脂フィルムと、印刷インキ層と、表面保護層と、裏面プライマー層を有する。樹脂フィルムは、ポリエステル樹脂を含有し、無機顔料を4.5質量%以上含み、厚さが0.045[mm]以上0.093[mm]以下の範囲内である。印刷インキ層は、樹脂フィルムのガラスクロスと反対側の面に形成されており、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を22.4質量%以上含み、有機質量が6.1[g/m]以下である。表面保護層は、印刷インキ層の樹脂フィルムと反対側の面に形成されており、有機質量が12.7[g/m]以下である。裏面プライマー層は、樹脂フィルムのガラスクロスと対向する面に形成されており、無機顔料を37.7質量%以上含み、有機質量が1.0[g/m]以下である。そして、樹脂フィルム、印刷インキ層、表面保護層、裏面プライマー層及び接着剤層の有機質量の合計値は、131.4[g/m]以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、不燃性を向上させることが可能な不燃シートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第一実施形態における不燃シートの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0009】
(第一実施形態)
以下、図1を参照して、不燃シート10の構成について説明する。
図1に示すように、不燃シート10は、ガラスクロス1と、化粧シート2と、接着剤層5を備えており、ガラスクロス1の一方の面(図1では、上面)に、接着剤層5を介して化粧シート2が貼り付けられて、シート状に形成されている。
不燃シート10の厚さは、例えば、0.215[mm]以上0.423[mm]以下の範囲内とし、より好ましくは、0.215[mm]以上0.374[mm]以下の範囲内とする。
不燃シート10の質量は、例えば、245[g/m]以上436.88[g/m]以下の範囲内とし、より好ましくは、245[g/m]以上414.81[g/m]以下の範囲内とする。
【0010】
<ガラスクロス>
ガラスクロス1は、ガラス繊維を織って形成したクロスである。ガラス繊維としては、例えば、Eガラス、表面処理剤(接着性を向上させる集束剤、シラン化合物等)を含むものを用いることが可能である。
ガラスクロス1の組成(ガラス繊維の組成)は、例えば、Eガラスを97質量以上99質量%以下の範囲内、表面処理剤を1質量%以上3質量%以下の範囲内で含むものとする。
【0011】
また、ガラス繊維の織り方は、例えば、平織りとする。さらに、糸番手は、例えば、縦糸を68.5[tex]、横糸を68.5[tex]とし、織密度は、例えば、縦糸を42[本/25mm]以上46[本/25mm]以下の範囲内、横糸を31[本/25mm]以上35[本/25mm]以下の範囲内とする。
ガラスクロス1の厚さは、例えば、0.17[mm]以上0.21[mm]以下の範囲内とする。
ガラスクロス1の質量は、例えば、190.8[g/m]以上233.2[g/m]以下(有機質量2.0[g/m]以上6.4[g/m]以下)の範囲内とする。
【0012】
<化粧シート>
化粧シート2は、樹脂フィルム2Cと、印刷インキ層2Bと、表面保護層2Aと、裏面プライマー層2Dを有する。
(樹脂フィルム2C)
樹脂フィルム2Cは、ポリエステル樹脂を含有するポリエステル樹脂系フィルムである。また、樹脂フィルム2Cには、必要に応じて,無機顔料(酸化チタン、酸化鉄等)を添加してもよい。
樹脂フィルム2Cの組成は、例えば,ポリエステル樹脂を67.0質量%以上96.5質量%以下の範囲内、無機顔料を3.5質量%以上33.0質量%以下の範囲内で含むものとする。
【0013】
樹脂フィルム2Cの厚さは、例えば、0.093[mm]以下(より好ましくは0.077[mm])とする。これにより、樹脂フィルム2Cを薄くして、燃焼量を低下させる。なお、樹脂フィルム2Cの厚さの下限値は、例えば、樹脂フィルム2Cの強度等を考慮して、0.045[mm]以上とする。
樹脂フィルム2Cの質量は、例えば、124.0[g/m]以下(有機質量111.0[g/m]以下)とし、好ましくは110.0[g/m]以下(有機質量78.76[g/m]以下)とする。
【0014】
(印刷インキ層2B)
印刷インキ層2Bは、樹脂フィルム2Cのガラスクロス1と反対側の面(図1では、上面)に形成されており、不燃シート10の意匠性を向上するために、ウレタン樹脂系インキによる印刷で形成された層である。ウレタン樹脂系インキとしては、例えば、ウレタン樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、有機顔料、無機顔料を含むものを用いることが可能である。
【0015】
印刷インキ層2Bの組成は、例えば、ウレタン樹脂を50.9質量%以上76.7質量%以下の範囲内、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を10.2質量%以上23.3質量%以下の範囲内、有機顔料を0質量%以上37.7質量%以下の範囲内、無機顔料を0質量%以上20.0質量%以下の範囲内で含むものとする。
印刷インキ層2Bの形成する印刷方法としては、例えば、インクジェットヘッドからインク滴を吹き付けるインクジェット印刷法や、くぼんでいる版面を用いるグラビア印刷法や、孔版を用いるシルクスクリーン印刷法を用いることが可能である。
印刷インキ層2Bの質量は、例えば、11.8[g/m]以下(固形量)(有機質量9.50[g/m]以下)とし、好ましくは8.36[g/m]以下(固形量)(有機質量6.71[g/m]以下)とする。
【0016】
(表面保護層2A)
表面保護層2Aは、印刷インキ層2Bの樹脂フィルム2Cと反対側の面(図1では、上面)に形成されており、不燃シート10の表面を保護するためにアクリル樹脂系塗料で形成された層である。アクリル樹脂系塗料としては、例えば、紫外線硬化型等の特性を有するアクリル樹脂を用いることが可能である。
【0017】
また、表面保護層2Aには、必要に応じて、無機質添加剤(シリカ等)を添加してもよい。
表面保護層2Aの組成は、例えば、アクリル樹脂を80質量%以上86質量%以下の範囲内、無機質添加剤を14質量%以上20質量%以下の範囲内で含むものとする。
表面保護層2Aの厚さは、例えば、0.062[mm]以下とし、好ましくは0.044[mm]以下とする。
表面保護層2Aの質量は、24.60([g/m]以下(固形量)(有機質量19.70[g/m]以下)とし、好ましくは17.49([g/m]以下(固形量)(有機質量13.97[g/m]以下)とする。
表面保護層2Aの形状は、平滑または凹凸形状とする。凹凸形状の最大深さは、例えば、0.044[mm]程度とする。
【0018】
すなわち、表面保護層2Aの表面には、意匠性を付与するために凹凸模様が形成されていてもよい。凹凸模様としては、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャー、梨地、砂目、ヘアライン等がある。凹凸模様の形成方法としては、例えば、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機によるエンボス加工法を用いることが可能である。
なお、表面保護層2Aは、印刷インキ層2Bが形成されていない場所、つまり、インキが塗布されていない場所においては、樹脂フィルム2Cの上面に形成されることになる。
【0019】
(裏面プライマー層2D)
裏面プライマー層2Dは、また、化粧シート2は、樹脂フィルム2Cのガラスクロス1と対向する面(図1では、下面)に形成されており、接着性の向上のためにウレタン樹脂系プライマーで形成された層である。ウレタン樹脂系プライマーとしては、例えば、ウレタン樹脂、無機顔料(シリカ等)を含むものを用いることが可能である。
裏面プライマー層2Dの組成は、例えば、ウレタン樹脂を56.2以上68.5以下の範囲内、無機顔料を34.0以上41.4以下の範囲内で含むものとする。
裏面プライマー層2Dの質量は、2.48[g/m]以下(固形量)(有機質量1.55[g/m]以下)とし、好ましくは1.76[g/m]以下(固形量)(有機質量1.10[g/m]以下)とする。
【0020】
<接着剤層>
接着剤層5は、ガラスクロス1と化粧シート2とを接着するために形成される層である。
また、接着剤層5は、ポリエステル系樹脂をウレタン架橋させた接着剤を含んで形成されている。
接着剤層5が含む接着剤は、主剤となるポリエステル系樹脂に、硬化剤としてポリイソシアネート系樹脂を含んで形成されている。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、東洋モートン株式会社製の「TM-593」を用いることが可能である。
ポリイソシアネート系樹脂としては、例えば、東洋モートン株式会社製の「CAT-RT85」を用いることが可能である。
主剤となるポリエステル系樹脂と、硬化剤としてのポリイソシアネート系樹脂との配合比は、例えば、主剤:硬化剤=100:15に設定する。
また、接着剤層5が含む接着剤は、例えば、総固形分を45.6%とし、有機固形分を45.6%とする。
接着剤層5の厚さは、例えば、20[g/m]以上40[g/m]以下の範囲内である。
【0021】
<有機質量>
上述した構成を有する不燃シート10では、樹脂フィルム2Cと、印刷インキ層2Bと、表面保護層2Aと、裏面プライマー層2Dと、接着剤層5の有機質量の合計値が、例えば、131.4[g/m]以下である。
【0022】
<各種の強度>
上述した構成を有する不燃シート10は、JIS L 1096 A法(ストリップ法)により測定した縦方向の引張強さが900以上であり、JIS L 1096 A法(ストリップ法)により測定した横方向の引張強さが560以上である。
また、上述した構成を有する不燃シート10は、JIS L 1096 A法(ストリップ法)により測定した縦方向の伸び率が3.5以下であり、JIS L 1096 A法(ストリップ法)により測定した横方向の伸び率が2.5以下である。
さらに、上述した構成を有する不燃シート10は、JIS L 1096 C法(トラベゾイド法)により測定した縦方向の引裂強さが90以下であり、JIS L 1096 C法(トラベゾイド法)により測定した横方向の引裂強さが80以下である。
また、上述した構成を有する不燃シート10は、ガラスクロス1と化粧シート2との間の強度である層間ラミネート強度が40以上である。
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0023】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の不燃シート10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)接着剤層5が、ポリエステル系樹脂をウレタン架橋させた接着剤を含む。
その結果、例えば、接着剤層5が、エチレン-酢酸ビニル共重合系樹脂を含む場合と比較して、不燃性を向上させることが可能な不燃シート10を提供することが可能となる。
なお、不燃シート10が有する不燃性は、ISO5660-1に準拠したコーンカロリ燃焼試験に準拠し、不燃シート10の時間に対する総発熱量及び時間に対する発熱速度を求めた際に、以下の条件Iから条件IIIを満足する不燃性である。
条件I:加熱を開始してから20分間が経過した後の総発熱量が、8[MJ/m]以下である。
条件II:加熱を開始してから20分間が経過するまでの間、最大発熱速度が10秒以上継続して200[kW/m]を超えない。
条件III:加熱を開始してから20分間が経過するまでの間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴が発生しない。
【0024】
また、例えば、接着剤層5が、エチレン-酢酸ビニル共重合系樹脂を含む場合と比較して、塗布量が少ない場合であっても、加熱伸縮性に優位性(収縮や伸縮がゼロ)があり、天井膜として固定した場合に、しわや歪みの発生を低減させることが可能となる。
さらに、例えば、接着剤層5が、エチレン-酢酸ビニル共重合系樹脂を含む場合と比較して、塗布量が少ない場合であっても、ガラスクロス1と化粧シート2との間のラミネート強度や、環境試験後のラミネート強度を向上させることが可能となる。
【0025】
(2)接着剤層5の厚さは、20[g/m]以上40[g/m]以下の範囲内である。
その結果、不燃シート10が有する不燃性の実現とともに、不燃シート10の軽量化が可能となる。
(3)接着剤層5が含む接着剤が、ポリエステル系樹脂に、硬化剤としてポリイソシアネート系樹脂を含む。
その結果、不燃シート10の不燃性を向上させるとともに、不燃シート10の強度を向上させることが可能となる。
【0026】
(4)JIS L 1096 A法(ストリップ法)により測定した縦方向の引張強さが900以上であり、JIS L 1096 A法(ストリップ法)により測定した横方向の引張強さが560以上である。
その結果、不燃シート10の強度を向上させることが可能となる。
(5)JIS L 1096 A法(ストリップ法)により測定した縦方向の伸び率が3.5以下であり、JIS L 1096 A法(ストリップ法)により測定した横方向の伸び率が2.5以下である。
その結果、不燃シート10の加熱伸縮性を向上させることが可能となる。
【0027】
(6)JIS L 1096 C法(トラベゾイド法)により測定した縦方向の引裂強さが90以下であり、JIS L 1096 C法(トラベゾイド法)により測定した横方向の引裂強さが80以下である。
その結果、不燃シート10の強度を向上させることが可能となる。
(7)層間ラミネート強度が40以上である。
その結果、ガラスクロス1と化粧シート2との間のラミネート強度や、環境試験後のラミネート強度を向上させることが可能となる。
【実施例0028】
第一実施形態を参照しつつ、以下、実施例1の不燃シートと、比較例1の不燃シートについて説明する。
(実施例1)
実施例1の不燃シートは、以下の手順により形成した。
まず、樹脂フィルムの一方の面に、グラビア印刷法により印刷インキ層を形成した。樹脂フィルムの組成は、ポリエステル樹脂を95.5質量%、無機顔料を4.5質量%含む組成とした。また、樹脂フィルムの厚さは0.06[mm]とし、樹脂フィルムの質量は75[g/m](有機質量71.6[g/m])とした。
【0029】
印刷インキ層の組成は、ウレタン樹脂を75.3質量%、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を22.4質量%、有機顔料を2.3質量%、無機顔料を0質量%含む組成とした。また、質量は、6.1[g/m](固形量)(有機質量6.1[g/m])とした。
続いて、印刷インキ層の上面に表面保護層を形成した。表面保護層の組成は、アクリル樹脂を86質量%、無機質添加剤を14質量%含む組成とし、表面保護層の厚さは0.04[mm]とし、表面保護層の質量は14.9[g/m](固形量)(有機質量12.7[g/m])とした。
【0030】
そして、樹脂フィルムの他方の面に、裏面プライマー層を形成した。裏面プライマー層の組成は、ウレタン系樹脂を62.3質量%、無機顔料を37.7質量%含む組成とした。裏面プライマー層の質量は1.6[g/m](固形量)(有機質量1.0[g/m])とした。
接着剤層は、ポリエステル系樹脂(東洋モートン株式会社製:「TM-593」)を主剤とし、ポリイソシアネート系樹脂(東洋モートン株式会社製:「CAT-RT85」)を硬化剤とし、さらに、溶剤を用いて形成した。
【0031】
配合比は、主剤:硬化剤:溶剤=100:15:36に設定した。
接着剤層の総固形分は、45.6%とした。
接着剤層の有機固形分は、45.6%とした。
接着剤層の乾燥後の塗布量は、30.0[g/m]とした。
接着剤層の塗装時の塗布量は、65.8[g/m]とした。
ガラスクロスの組成は、Eガラスを98質量%、表面処理剤を2質量%含む組成とした。また、織り方は、平織りとし、糸番手は、縦糸を68.5[tex]、横糸を68.5[tex]とした。さらに、織密度は、縦糸を44[本/25mm]、横糸を33[本/25mm]とした。ガラスクロスの厚さは、0.190[mm]とし、質量は、212.0[g/m](有機質量4.2[g/m])とした。
【0032】
(比較例1)
比較例1の不燃シートは、接着剤層の構成を除き、実施例1と同様の構成として形成した。
接着剤層は、ジャパンコーティングレジン株式会社製の「BA-20」を主剤とし、ジャパンコーティングレジン株式会社製の「BA-11B」を硬化剤として含むエチレン-酢酸ビニル共重合系樹脂を用いて形成した。
配合比は、主剤:硬化剤=100:2.5に設定した。
接着剤層の総固形分は、48.6%とした。
接着剤層の有機固形分は、48.6%とした。
接着剤層の乾燥後の塗布量は、40.0[g/m]とした。
接着剤層の塗装時の塗布量は、82.3[g/m]とした。
(性能評価、評価結果)
実施例1の不燃シートと、比較例1の不燃シートに対し、それぞれ、不燃性と強度の性能評価を行った。
【0033】
<不燃性>
不燃シートに対し、コーンカロリーメーターを用いた試験方法(ISO5660-1に準拠)にて、燃焼性を確認した。試験は2つのサンプルにて実施した。
試験結果を表1に示す。
実施例1の不燃シートは、2つのサンプルにおいて、20分間の総発熱量の平均が2.65[MJ/m]であった。これに対し、比較例1の不燃シートは、2つのサンプルにおいて、20分間の総発熱量の平均が3.62[MJ/m]であった。すなわち、実施例1の不燃シートは、比較例1の不燃シートと比較して、20分間の総発熱量が1[MJ/m]程度低いことが確認された。
【0034】
また、実施例1の不燃シートは、2つのサンプルにおいて、最大発熱速度の平均が151.99[kW/m]であった。これに対し、比較例1の不燃シートは、2つのサンプルにおいて、最大発熱速度の平均が177.23[kW/m]であった。
したがって、実施例1の不燃シートは、不燃材の規格を満足していることが確認された。これに加え、実施例1の不燃シートは、比較例1の不燃シートと比較して、不燃性が高いことが確認された。
【0035】
<強度>
不燃シートに対し、強度として、引張強さ、伸び率、引裂強さ、加熱伸縮性、層間ラミネート強度を計測し、さらに、耐熱層間クリープ試験を実施した。
引張強さ(N/30mm)としては、JIS L 1096 A法(ストリップ法)により、縦方向の引張強さと、横方向の引張強さを測定した。
伸び率(%)としては、JIS L 1096 A法(ストリップ法)により、縦方向の伸び率と、横方向の伸び率を測定した。
【0036】
引裂強さ(N)としては、JIS L 1096 C法(トラベゾイド法)により、縦方向の引裂強さと、横方向の引裂強さを測定した。
加熱伸縮性(%)としては、温度を80±5[℃]に設定したオーブンの中に30分間に亘って不燃シートを投入した後、前後の寸法を測定することで、縦方向の加熱伸縮性と、横方向の加熱伸縮性を測定した。なお、不燃シートには、12[cm]角に10[cm]のマーキングを付けて、加熱伸縮性を測定した。
【0037】
層間ラミネート強度は、層間ラミネート強度(N/25mm)、層間ラミネート強度(60℃環境下、N/25mm)、層間ラミネート強度(80℃環境下、N/25mm)、層間ラミネート強度(40℃×90%RH環境下、N/25mm)、層間ラミネート強度(60℃×90%RH環境下、N/25mm)、層間ラミネート強度(寒熱繰り返し環境下、N/25mm)を測定した。
層間ラミネート強度(N/25mm)としては、不燃シートの端部をアセトン溶液に浸漬し、ガラスクロスと化粧シートとを剥離させ、1時間かけて乾燥させた後に、引張り試験機にて測定した。その際、N=3として、不燃シートの両端と、不燃シート中央に対し、層間ラミネート強度を測定した。また、引張り速度は、50[mm/min]とした。
【0038】
層間ラミネート強度(60℃環境下、N/25mm)としては、不燃シートの端部をアセトン溶液に浸漬し、ガラスクロスと化粧シートとを剥離させ、1時間かけて乾燥させた後に、温度が60[℃]の環境下において、500時間、1000時間、1500時間、2000時間が経過した状態の不燃シートに対し、それぞれ、引張り試験機にて測定した。その際、N=3として、不燃シートの両端と、不燃シート中央に対し、層間ラミネート強度を測定した。また、引張り速度は、50[mm/min]とした。
【0039】
層間ラミネート強度(80℃環境下、N/25mm)としては、不燃シートの端部をアセトン溶液に浸漬し、ガラスクロスと化粧シートとを剥離させ、1時間かけて乾燥させた後に、温度が80[℃]の環境下において、500時間、1000時間、1500時間、2000時間が経過した状態の不燃シートに対し、それぞれ、引張り試験機にて測定した。その際、N=3として、不燃シートの両端と、不燃シート中央に対し、層間ラミネート強度を測定した。また、引張り速度は、50[mm/min]とした。
【0040】
層間ラミネート強度(40℃×90%RH環境下、N/25mm)としては、不燃シートの端部をアセトン溶液に浸漬し、ガラスクロスと化粧シートとを剥離させ、1時間かけて乾燥させた後に、温度が40[℃]であるとともに湿度が90[%]の環境下において、500時間、1000時間、1500時間、2000時間が経過した状態の不燃シートに対し、それぞれ、引張り試験機にて測定した。その際、N=3として、不燃シートの両端と、不燃シート中央に対し、層間ラミネート強度を測定した。また、引張り速度は、50[mm/min]とした。
【0041】
層間ラミネート強度(60℃×90%RH環境下、N/25mm)としては、不燃シートの端部をアセトン溶液に浸漬し、ガラスクロスと化粧シートとを剥離させ、1時間かけて乾燥させた後に、温度が60[℃]であるとともに湿度が90[%]の環境下において、500時間、1000時間、1500時間、2000時間が経過した状態の不燃シートに対し、それぞれ、引張り試験機にて測定した。その際、N=3として、不燃シートの両端と、不燃シート中央に対し、層間ラミネート強度を測定した。また、引張り速度は、50[mm/min]とした。
【0042】
層間ラミネート強度(寒熱繰り返し環境下、N/25mm)としては、不燃シートの端部をアセトン溶液に浸漬し、ガラスクロスと化粧シートとを剥離させ、1時間かけて乾燥させた後に、温度が-20[℃]の環境下で2時間経過させた後に温度が60[℃]の環境下で2時間経過させるサイクルを、40回繰り返した状態の不燃シートに対し、それぞれ、引張り試験機にて測定した。その際、N=3として、不燃シートの両端と、不燃シート中央に対し、層間ラミネート強度を測定した。また、引張り速度は、50[mm/min]とした。
【0043】
耐熱層間クリープ試験は、耐熱層間クリープ試験(60℃、1時間、mm)と、耐熱層間クリープ試験(70℃、24時間、mm)を測定した。
耐熱層間クリープ試験(60℃、1時間、mm)としては、ガラスクロスを、エチレン酢酸ビニル系接着剤を用いてMDFとラミネートさせた後、化粧シートに500[g]の重りをぶら下げた状態で、温度が60[℃]の環境下において、1時間が経過した後の剥離距離を測定した。
【0044】
耐熱層間クリープ試験(70℃、24時間、mm)としては、ガラスクロスを、エチレン酢酸ビニル系接着剤を用いてMDFとラミネートさせた後、化粧シートに500[g]の重りをぶら下げた状態で、温度が70[℃]の環境下において、24時間が経過した後の剥離距離を測定した。
試験結果を表1に示す。
実施例1の不燃シートは、全ての強度が、比較例1の不燃シートよりも優れていることが確認された。
【0045】
【表1】
【0046】
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、実施例1の不燃シートは、比較例1の不燃シートと比較して、全ての評価試験に対し、優れた性能を示すことが可能であった。
なお、本技術は、以下のような構成を取ることが可能である。
(1)
ガラスクロスの一方の面に、接着剤層を介して化粧シートが貼り付けられており、
前記接着剤層は、ポリエステル系樹脂をウレタン架橋させた接着剤を含み、
前記接着剤層の質量は、62.0[g/m]以下であり、
前記化粧シートは、ポリエステル樹脂を含有する樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの前記ガラスクロスと反対側の面に形成された印刷インキ層と、前記印刷インキ層の前記樹脂フィルムと反対側の面に形成された表面保護層と、前記樹脂フィルムの前記ガラスクロスと対向する面に形成された裏面プライマー層と、を有し、
前記樹脂フィルムは、無機顔料を4.5質量%以上含み、
前記樹脂フィルムの厚さは、0.045[mm]以上0.093[mm]以下の範囲内であり、
前記印刷インキ層は、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を22.4質量%以上含み、
前記印刷インキ層の有機質量は、6.1[g/m]以下であり、
前記表面保護層の有機質量は、12.7[g/m]以下であり、
前記裏面プライマー層の有機質量は、1.0[g/m]以下であり、
前記裏面プライマー層は、無機顔料を37.7質量%以上含み、
前記樹脂フィルム、前記印刷インキ層、前記表面保護層、前記裏面プライマー層及び前記接着剤層の有機質量の合計値は、131.4[g/m]以下である不燃シート。
【0047】
(2)
前記接着剤層の厚さは、20[g/m]以上40[g/m]以下の範囲内である前記(1)に記載した不燃シート。
(3)
前記接着剤は、前記ポリエステル系樹脂に、硬化剤としてポリイソシアネート系樹脂を含む前記(1)又は(2)に記載した不燃シート。
【0048】
(4)
JIS L 1096 A法(ストリップ法)により測定した縦方向の引張強さが900以上であり、
JIS L 1096 A法(ストリップ法)により測定した横方向の引張強さが560以上である前記(1)~(3)のいずれかに記載した不燃シート。
(5)
JIS L 1096 A法(ストリップ法)により測定した縦方向の伸び率が3.5以下であり、
JIS L 1096 A法(ストリップ法)により測定した横方向の伸び率が2.5以下である前記(1)~(4)のいずれかに記載した不燃シート。
【0049】
(6)
JIS L 1096 C法(トラベゾイド法)により測定した縦方向の引裂強さが90以下であり、
JIS L 1096 C法(トラベゾイド法)により測定した横方向の引裂強さが80以下である前記(1)~(5)のいずれかに記載した不燃シート。
(7)
前記ガラスクロスと前記化粧シートとの間の強度である層間ラミネート強度が40以上である前記(1)~(6)のいずれかに記載した不燃シート。
【符号の説明】
【0050】
1…ガラスクロス、2…化粧シート、2A…表面保護層、2B…印刷インキ層、2C…樹脂フィルム、2D…裏面プライマー層、5…接着剤層、10…不燃シート
図1