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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155697
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】光ケーブル
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
G02B6/44 366
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065179
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 竹將
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】平間 隆郎
【テーマコード(参考)】
2H201
【Fターム(参考)】
2H201AX06
2H201AX07
2H201BB06
2H201BB07
2H201BB08
2H201BB43
2H201BB55
2H201BB65
2H201BB75
2H201DD13
2H201KK06
2H201KK08
2H201KK12
2H201KK33A
2H201KK36A
2H201KK36B
2H201KK73
(57)【要約】
【課題】敷設するのに適切な曲げ剛性や牽引張力の範囲を規定した光ケーブルを提供する。
【解決手段】光ケーブルであって、複数の光ファイバ心線と、前記複数の光ファイバ心線の外周を覆うケーブル外被と、を備え、前記光ケーブルの曲げ剛性が20N・m以下であって、前記光ケーブルを牽引するために必要な張力である牽引張力が294N以下である、光ケーブル。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ケーブルであって、
複数の光ファイバ心線と、
前記複数の光ファイバ心線の外周を覆うケーブル外被と、を備え、
前記光ケーブルの曲げ剛性が20N・m以下であって、前記光ケーブルを牽引するために必要な張力である牽引張力が294N以下である、光ケーブル。
【請求項2】
前記光ケーブルはスロット型であり、
前記光ケーブルのケーブル外径が34.5mm以下であり、
前記複数の光ファイバ心線の数が1000以上である、請求項1に記載の光ケーブル。
【請求項3】
前記ケーブル外被はシリコン系滑剤を、重量百分率で2%以上含む、請求項1または請求項2に記載の光ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ケーブルをダクト内、マンホール内、ハンドホール内などに敷設する際、曲がったルートを通す必要があるため、作業者は、光ケーブルを曲げた状態で牽引する必要がある。光ケーブルなどの線条体は、一般的に曲げ剛性を高くすると可撓性が低くなる特性を有するため、光ケーブルを曲げた状態で牽引する場合、牽引するのに必要な張力が大きくなり、作業者にとって敷設しにくくなる。
曲げ剛性を低く抑えるために、例えば、特許文献1には、光ケーブルに収容された光ファイバ心線の本数と、光ケーブルの曲げ剛性との相間関係に基づいて、光ファイバ心線の本数を増加しても曲げ剛性の増加を抑制する光ケーブルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-142285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光ケーブルの敷設のしやすさは、作業者の感覚で判断されるのが一般的である。そのため、光ケーブルを敷設するのに適切な光ケーブルの曲げ剛性や牽引張力の範囲が一般的に定量化されておらず、作業者が敷設するのに適した光ケーブルを提供することが困難である。
【0005】
本開示は、敷設するのに適切な曲げ剛性や牽引張力の範囲を規定した光ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る光ケーブルは、複数の光ファイバ心線と、前記複数の光ファイバ心線の外周を覆うケーブル外被と、を備え、前記光ケーブルの曲げ剛性が20N・m以下であって、前記光ケーブルを牽引するために必要な張力である牽引張力が294N以下である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、敷設するのに適切な曲げ剛性や牽引張力の範囲を規定した光ケーブルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る光ケーブルの軸線直交方向の断面図である。
図2】本実施形態に係る光ケーブルの曲げ剛性の測定方法を説明する図である。
図3】本実施形態に係る光ケーブルの牽引張力の測定方法を説明する図である。
図4】本実施形態に係る光ケーブルを牽引した際の、牽引長と牽引張力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本発明の実施形態の説明)
本発明の実施形態の概要を説明する。
(1)光ケーブルであって、
複数の光ファイバ心線と、
前記複数の光ファイバ心線の外周を覆うケーブル外被と、を備え、
前記光ケーブルの曲げ剛性が20N・m以下であって、前記光ケーブルを牽引するために必要な張力である牽引張力が294N以下である、光ケーブル。
【0010】
上記構成によれば、敷設するのに適切な曲げ剛性や牽引張力の範囲を規定した光ケーブルを提供できる。
【0011】
(2)前記光ケーブルはスロット型であり、前記光ケーブルのケーブル外径が34.5mm以下であり、前記複数の光ファイバ心線の数が1000以上である、項目(1)に記載の光ケーブル。
【0012】
上記構成によれば、光ファイバ心線を高密度に実装した場合でも、敷設するのに適切な曲げ剛性や牽引張力の範囲を規定した光ケーブルを提供できる。
【0013】
(3)前記ケーブル外被はシリコン系滑剤を、重量百分率で2%以上含む、項目(1)または(2)に記載の光ケーブル。
【0014】
上記構成によれば、光ケーブルのケーブル外被の摩擦係数を低減し、光ケーブルの敷設のしやすさを向上することができる。
【0015】
(本発明の実施形態の詳細)
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、本実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0016】
図1は、本実施形態に係る光ケーブル1の軸線直交方向の断面図である。図1に示すように、光ケーブル1は、複数の光ファイバ心線2と、複数の光ファイバ心線2の外周を覆うケーブル外被3と、スロットロッド4と、抗張力体5と、押さえ巻きテープ6と、を備えている。
【0017】
光ケーブル1は、ケーブル外径Dが34.5mm以下であり、複数の光ファイバ心線2からなる光ファイバユニット8を収納するためのスロット溝7が複数(本例では6条)設けられている、いわゆるスロット型光ケーブルである。スロット溝7は、スロットロッド4の外周側に向かって解放されており、スロットロッド4の周方向に等間隔に設けられている。スロット溝7は、両側壁部7aがスロットロッド4の外周側から中心部側へ向かって次第に近接される形状に形成されている。また、スロット溝7は、底部7bがスロットロッド4の中心部側へ向かって湾曲する湾曲面を有する。
【0018】
スロットロッド4は、例えば、ポリカーボネート(PC)とポリブチレンテレフタレート(PBT)の合成樹脂または高密度ポリエチレン(HDPE)などの硬質樹脂材料から形成されている。
【0019】
抗張力体5は、例えば断面視が円形状に形成されていて、光ケーブル1の軸線方向に沿ってスロットロッド4の中心部に埋設されている。抗張力体5は、敷設時の引っ張り及び圧縮に対する耐力を有する線材、例えば、鋼線やFRP(Fiber Reinforced Plastics)などが用いられる。
【0020】
スロットロッド4の各スロット溝7には、複数の光ファイバ心線2で構成される光ファイバユニット8が収納されている。各光ファイバユニット8は、288心の光ファイバ心線から構成されており、例えば、単心の光ファイバ心線が288本集合されたものでもよいし、12心の光ファイバテープ心線が24本集合されたものでもよい。本実施形態の光ファイバテープ心線は、例えば、複数の光ファイバ心線の長手方向と直交する方向に並列に配置された状態で、複数の光ファイバ心線間の一部、または全てにおいて、隣接する光ファイバ心線間が連結された連結部と、隣接する光ファイバ心線間が連結されていない非連結部とが長手方向に間欠的に設けられている、間欠連結型の光ファイバテープ心線である。
【0021】
押さえ巻きテープ6は、例えば、不織布をテープ状に形成したものや、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の基材と不織布とを貼り合わせたものなどが用いられる。なお、押さえ巻きテープ6に吸水剤(例えば、吸水パウダ)を付与してもよい。押さえ巻きテープ6を吸水層として機能させれば、光ファイバユニット8などへの止水が可能になる。押さえ巻きテープ6の外側は、ケーブル外被3で覆われ、例えば、丸型に形成されている。
【0022】
ケーブル外被3は、複数の光ファイバユニット8の外周と押さえ巻きテープ6の外側を覆う。ケーブル外被3は、例えば、内層3Aと外層3Bの二層構造である。ケーブル外被3の内層3Aは、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の樹脂材料から形成されている。ケーブル外被3の外層3Bは、塩化ビニル樹脂、ノンハロゲン樹脂等から形成されていて、シリコン系滑剤を重量百分率で2%以上含んでもよい。なお、シリコン系滑剤の添加量は、5%より多く添加するとケーブル外被が柔らかくなってしまうため、5%以下とするのがよい。シリコン系滑剤は、例えば、シリコンオイルが用いられる。
【0023】
ケーブル外被3の外層3Bにシリコン系滑剤が含まれることで、ケーブル外被3と光ケーブル1が敷設されるダクト等との摩擦係数を低減し、光ケーブル1の敷設のしやすさを向上することができる。
【0024】
本発明者らは、光ケーブル1の曲げ剛性と牽引張力を測定し、曲げ剛性と牽引張力との相関関係から、光ケーブル1を敷設するのに適切な曲げ剛性の範囲を検討した。
【0025】
図2は、本実施形態に係る光ケーブル1の曲げ剛性の測定方法を説明する図である。図2に示すように、光ケーブル1を2点で把持し、その中央部に光ケーブル1の長手方向と直交する方向に外力Fを加えて変位量Aを測定し、ヤング率Eを求めた。さらに、光ケーブル1の形状から断面二次モーメントIを計算し、ヤング率Eと断面二次モーメントIとの積EIを算出することで、曲げ剛性を算出した。なお、曲げ剛性は、光ケーブル1の曲げにくさを表すパラメータである。
【0026】
図3は、本実施形態に係る光ケーブル1の牽引張力の測定方法を説明する図である。図3に示すように、水平な平面Hに対してポール8A~8Dを立設し、光ケーブル1を敷設した。具体的には、光ケーブル1を中空のポール8Aの挿入口Pinから垂直方向に挿通し、屈曲点P1で水平方向に90°に曲げた。次に、ポール8Bの外周を沿うように屈曲点P2で水平方向に90°に曲げた。同様に、ポール8Cの外周を沿うように屈曲点P2で水平方向に90°に曲げた。屈曲点P1~P4のうち少なくとも1つの曲げ半径RDをケーブル外径Dの20倍に設定し、その他の屈曲点における曲げ半径は、ケーブル外径Dの20倍以上とした。
このように、光ケーブル1を敷設した状態で、光ケーブル1を牽引するのに必要な張力である牽引張力を測定した。
【0027】
図4は、本実施形態に係る光ケーブルを牽引した際の、牽引長と牽引張力との関係を示す図である。サンプル1は実施例、サンプル2は比較例であり、ケーブル外被3の厚みや材質を変えることで、サンプル1、2の曲げ剛性を変化させた。なお、サンプル1、2は、共にケーブル外径Dが34.5mmで同一、ケーブル外被3の摩擦係数μが同一、光ファイバ心線2の数が1000以上で同一である。
このようなサンプル1、2の光ケーブルを製造して、図2に示す測定方法で曲げ剛性を、図3に示す測定方法でケーブル牽引長に対する牽引張力を測定した。
【0028】
実施例であるサンプル1の曲げ剛性は20N・mであった。このサンプル1を牽引した場合、牽引長に対する牽引張力は、図4に示すように、294N以下であった。
牽引張力が294N以下であれば、作業者が一人で牽引することが可能なため、サンプル1が敷設するのに適した光ケーブルであることが分かった。
【0029】
一方、比較例であるサンプル2の曲げ剛性は26N・mであった。このサンプル2を牽引した場合、牽引長に対する牽引張力は、図4に示すように、294Nを超える場合があった。
牽引張力が294Nを超えると、作業者が一人で牽引することが困難なため、サンプル2が敷設するのに適した光ケーブルでないことが分かった。
なお、同程度の径のケーブルであれば、通常のケーブルで使用される材料を使用した場合、曲げ剛性の値は5N・mより大きくなり、牽引張力の値は5Nより大きくなる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態はあくまでも一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解される。このように、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0031】
1:光ケーブル
2:光ファイバ心線
3:ケーブル外被
3A:内層
3B:外層
4:スロットロッド
5:抗張力体
6:押さえ巻きテープ
7:スロット溝
7a:両側壁部
7b:底部
8A~8B:ポール
F:外力
A:変位量
AP1~P4:屈曲点
RD:曲げ半径
H:平面
図1
図2
図3
図4