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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155707
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】ギヤドモータ及びそのハウジング
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
H02K5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065192
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 清康
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 優樹
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA02
5H605BB05
5H605CC01
5H605CC02
5H605DD17
(57)【要約】
【課題】ギヤドモータの防水性や防塵性を向上させる。
【解決手段】一実施形態のハウジング30は、開口部41と開口部41の周囲に設けられた環状の接着凹部60とが設けられたケース40と、接着凹部60に嵌め込まれる環状の接着凸部70が設けられ、開口部41を閉塞するカバー50と、を備える。接着凹部60は、接着凸部70の接着凹部60に対する嵌め込み方向で重なり、かつ、連通する第1凹部61及び第2凹部62から構成される二段構造を有する。接着凸部70は、第2凹部62の底面を越えて第1凹部61に進入しており、接着凹部60と接着凸部70との間には、第1凹部61と第2凹部62とに亘って接着剤81が充填されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤドモータのハウジングであって、
開口部を備えるケースと、
前記ケースの前記開口部を閉塞するカバーと、
前記ケースの前記開口部の周囲に設けられた環状の接着凹部と、
前記カバーに設けられ、前記接着凹部に嵌め込まれる環状の接着凸部と、を備え、
前記接着凹部は、前記接着凸部の前記接着凹部に対する嵌め込み方向で重なり、かつ、連通する第1凹部および第2凹部から構成される二段構造を有し、
前記第1凹部は、前記接着凸部の一部を挟んで対向する2つの内側面と、前記接着凹部の一段目の底を形成する底面と、を含み、
前記第2凹部は、前記接着凸部の他の一部を挟んで対向する2つの内側面と、前記接着凹部の二段目の底を形成する底面と、を含み、
前記接着凸部は、前記第2凹部の前記底面を越えて前記第1凹部に進入しており、
前記接着凹部と前記接着凸部との間には、前記第1凹部と前記第2凹部とに亘って接着剤が充填されている、ハウジング。
【請求項2】
前記第2凹部の前記底面は、前記2つの内側面の一方に連接する外側底面と、前記2つの内側面の他方に連接する内側底面と、を含み、
前記接着凸部は、前記外側底面と前記内側底面との間を通って前記第1凹部に進入している、請求項1に記載のハウジング。
【請求項3】
前記第2凹部の容積をVとし、
前記第2凹部の前記底面を越えて前記第1凹部に進入している前記接着凸部の一部の体積をV1とし、
前記第2凹部の前記底面を越えずに前記第2凹部内に位置している前記接着凸部の他の一部の体積をV2としたときに、
V-V2≧V1の関係を満たす、請求項1に記載のハウジング。
【請求項4】
前記第2凹部の前記2つの内側面の対向間隔は、前記第1凹部の前記2つの内側面の対向間隔よりも広い、請求項1に記載のハウジング。
【請求項5】
前記第1凹部の前記2つの内側面は、前記第1凹部の前記底面に近づくに連れて次第に対向間隔が狭くなるように傾斜している、請求項4に記載のハウジング。
【請求項6】
前記接着凸部の先端面と前記第1凹部の前記底面とは、隙間を介して対向している、請求項1に記載のハウジング。
【請求項7】
前記接着凸部は、前記嵌め込み方向に沿って次第に先細りになるテーパ形状を有する、請求項1に記載のハウジング。
【請求項8】
モータ,ギヤおよびハウジングを備えるギヤドモータであって、
前記ハウジングは、
前記モータおよび前記ギヤを収容し、かつ、開口部を備えるケースと、
前記ケースの前記開口部を閉塞するカバーと、
前記ケースの前記開口部の周囲に設けられた環状の接着凹部と、
前記カバーに設けられ、前記接着凹部に嵌め込まれる環状の接着凸部と、を有し、
前記接着凹部は、前記接着凸部の前記接着凹部に対する嵌め込み方向において重なり合い、かつ、連通する第1凹部および第2凹部から構成される二段構造を有し、
前記第1凹部は、前記接着凸部の一部を挟んで対向する2つの内側面と、前記接着凹部の一段目の底を形成する底面と、を含み、
前記第2凹部は、前記接着凸部の他の一部を挟んで対向する2つの内側面と、前記接着凹部の二段目の底を形成する底面と、を含み、
前記接着凸部は、前記第2凹部の前記底面を越えて前記第1凹部に進入しており、
前記接着凹部と前記接着凸部との間には、前記第1凹部と前記第2凹部とに亘って接着剤が充填されている、ギヤドモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤドモータに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源と当該駆動源を収容するハウジングとを備えた駆動装置やアクチュエータが知られており、ギヤドモータは、そのような駆動装置やアクチュエータの一種である。特許文献1には、モータと、モータを収容する筒状のフレームと、フレームの開口部を塞ぐカバーと、を備える駆動装置が記載されている。フレームには接着凹部が設けられており、カバーには接着凸部が設けられている。さらに、接着凹部と当該接着凹部に挿入された接着凸部との間の空間には接着シール剤が充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-188652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ギヤドモータには、防水性や防塵性が求められる。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態のハウジングは、開口部を備えるケースと、前記ケースの前記開口部を閉塞するカバーと、前記ケースの前記開口部の周囲に設けられた環状の接着凹部と、前記カバーに設けられ、前記接着凹部に嵌め込まれる環状の接着凸部と、を備える。前記接着凹部は、前記接着凸部の前記接着凹部に対する嵌め込み方向で重なり、かつ、連通する第1凹部および第2凹部から構成される二段構造を有する。前記第1凹部は、前記接着凸部の一部を挟んで対向する2つの内側面と、前記接着凹部の一段目の底を形成する底面と、を含む。前記第2凹部は、前記接着凸部の他の一部を挟んで対向する2つの内側面と、前記接着凹部の二段目の底を形成する底面と、を含む。前記接着凸部は、前記第2凹部の前記底面を越えて前記第1凹部に進入する。前記接着凹部と前記接着凸部との間には、前記第1凹部と前記第2凹部とに亘って接着剤が充填される。
【発明の効果】
【0006】
一実施形態によれば、ギヤドモータの防水性や防塵性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ギヤドモータの外観斜視図である。
図2】ギヤドモータの分解斜視図である。
図3】ケース及びカバーの斜視図である。
図4】ハウジングの断面図である。
図5】接着凹部および接着凸部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施形態を説明するために参照する全ての図面において、同一または実質的に同一の構成には同一の符号を用いる。また、既に説明した構成については、原則として繰り返しの説明は行わない。
【0009】
<ギヤドモータの概略>
図1は、本実施形態に係るギヤドモータ1の外観斜視図である。図2は、本実施形態に係るギヤドモータ1の分解斜視図である。
【0010】
本実施形態に係るギヤドモータ1は、モータ10と、減速機構20と、これらを収容するハウジング30と、を備えている。ギヤドモータ1の用途は特定に限定されないが、例えば、車載用アクチュータに用いられる。より特定的には、ギヤドモータ1は、電気自動車の充電口(ポート)に設けられる蓋を開閉させる蓋開閉モジュールの駆動源として用いられる。
【0011】
<モータ>
モータ10は、モータケース11及び回転軸12を備えている。回転軸12の一端側は、モータケース11に収容されているロータに固定されており、回転軸12の他端側は、モータケース11の一方の端面から突出している。
【0012】
モータ10には、モータケース11に収容されているコイルに電力を供給するためのリード線13a,13bが接続されている。これらリード線13a,13bは、ハウジング30に設けられている引出口14に嵌め込まれているグロメット15を通してハウジング30の外に引き出されている。
【0013】
グロメット15はゴム製またはプラスチック製である。グロメット15は、リード線13a,13bと引出口14との間の隙間を塞ぎ、ハウジング30の防水性,防塵性,防音性の確保や向上に寄与する。
【0014】
<減速機構>
減速機構20は、モータ10の回転軸12に装着されているウォーム21と、それぞれが回転自在に支持されている複数の平歯車(外歯車)22から構成されている。
【0015】
減速機構20を構成している平歯車22には、ウォーム21と噛み合っている平歯車22aと、ギヤドモータ1の出力シャフト2に固定されている平歯車22bと、平歯車22aと平歯車22bとの間に介在している複数の平歯車22cと、が含まれる。
【0016】
以下の説明では、平歯車22aを“入力ギヤ22a”、平歯車22bを“出力ギヤ22b”、平歯車22cを“中間ギヤ22c”と呼ぶ場合がある。
【0017】
互いに噛み合っているウォーム21及び入力ギヤ22aは、ウォームギヤを構成している。また、ウォーム21と入力ギヤ22aの回転軸は、互いに直交している。
【0018】
モータ10から出力される回転駆動力は、減速機構20を介して出力シャフト2に伝達される。より特定的には、回転駆動力は、ウォーム21→入力ギヤ(ウォームホイール)22a→中間ギヤ22c→出力ギヤ22b→出力シャフト2の順で伝達される。つまり、出力ギヤ22bは、減速機構20の最終段のギヤ(ファイナルギヤ)である。
【0019】
なお、ギヤドモータ1の出力シャフト2は、ハウジング30によって保持されている2つの軸受3,4によって回転自在に支持されている。軸受3,4は、同一または実質的に同一のボールベアリングである。
【0020】
<ハウジング>
図3は、ハウジング30を構成するケース40及びカバー50の斜視図である。ケース40は開口部41を有しており、カバー50は、ケース40の開口部41を閉塞する。より特定的には、カバー50は、モータ10や減速機構20が収容されたケース40に被せられ、ケース40の開口部41を閉塞する。
【0021】
別の見方をすると、カバー50によってケース40の開口部41が塞がれることにより、モータ10や減速機構20を収容可能な密閉空間を備えるハウジング30が形成される。
【0022】
ケース40やカバー50の材料は特に限定されない。ケース40やカバー50は、例えば、エンジニアリングプラスチックを含む樹脂材料や、アルミニウムを含む金属材料によって形成される。
【0023】
<ケース>
ケース40は、一体成形された底部42及び側壁部43を有する。ケース40は、ハウジング30の底面および側面を形成する。より特定的には、底部42はハウジング30の底面を形成し、側壁部43はハウジング30の側面を形成する。
【0024】
U形のモータ保持部44,45が底部42に設けられている。それぞれのモータ保持部44,45は、底部42の内面42aから側壁部43と同方向に立ち上がっている。
【0025】
モータ10は、対向する2つのモータ保持部44,45の間に配置される。さらに、モータケース11の一方の端面に設けられている膨出部がモータ保持部44に嵌め込まれ、モータケース11の他方の端面に設けられている膨出部がモータ保持部45に嵌め込まれる。
【0026】
ケース40の底部42には、軸受4を保持するベアリング保持部46(図4)が設けられている。ベアリング保持部46は、底部42に設けられた円形の窪みである。軸受3は、ベアリング保持部46に嵌め込まれ、ケース40によって保持される。
【0027】
ケース40の開口部41の周囲に、環状の接着凹部60が設けられている。より特定的には、側壁部43の端面に接着凹部60が設けられている。この結果、開口部41の全周が接着凹部60によって囲まれている。接着凹部60の詳細については、後に改めて説明する。
【0028】
<カバー>
カバー50は、ケース40の開口部41と相似または略相似な平面形状を有する。カバー50はハウジング30の天井面を形成する。
【0029】
カバー50には、環状の接着凸部70が設けられている。接着凸部70は、カバー50の下面51(ケース40の底部内面42aと対向する面)に設けられている。より特定的には、接着凸部70は、カバー50の下面51の周縁に、カバー50の側面52に沿って設けられている。
【0030】
接着凸部70は、接着凹部60に対応しており、接着凹部60に嵌め込まれる。接着凸部70の詳細については、後に改めて説明する。
【0031】
H形のモータ支持部53がカバー50の下面51に設けられている。モータ支持部53は、下面51から側面52と同方向に立ち上がっている。モータ支持部53は、モータケース11の上面に当接してモータ10を支持する。
【0032】
カバー50には、軸受3を保持するベアリング保持部54が設けられている。ベアリング保持部54は、ケース40に設けられているベアリング保持部46(図4)と同様の円形の窪みである。軸受3は、ベアリング保持部54に嵌め込まれ、カバー50によって保持される。
【0033】
カバー50には、ベアリング保持部54と同軸の貫通孔55がさらに設けられている。出力シャフト2の一端側(上端側)は、貫通孔55を通ってハウジング30の外に突出する(図1)。なお、貫通孔55と出力シャフト2との間からハウジング30内に雨滴や埃などが侵入することを防止すべく、出力シャフト2の上端側にOリングが設けられる場合もある。
【0034】
カバー50の下面51には、減速機構20を構成している平歯車22の回転軸を支持する複数のシャフト支持部56が設けられている。シャフト支持部56は円筒形状を有しており、下面51からモータ支持部53と同方向に立ち上がっている。それぞれのシャフト支持部56は、平歯車22の回転軸が挿入される挿入穴を備えている。
【0035】
なお、図面には表れていないが、ケース40の底部内面42aには、それぞれのシャフト支持部56に対応する複数のシャフト支持部が設けられている。ケース40に設けられているシャフト支持部は、底部内面42aからモータ保持部44,45と同方向に立ち上がっている。
【0036】
<接着凹部>
図4は、ハウジング30の断面図である。図5は、接着凹部60及び接着凸部70の拡大断面図である。なお、図4に示されているハウジング30の断面は、図1中のX-X線に沿う断面である。また、図4では、ハウジング30に収容されているモータ10や減速機構20等の図示は省略されている。
【0037】
接着凹部60は、二段構造を有する。より特定的には、接着凹部60は、第1凹部61及び第2凹部62から構成される。さらに、第1凹部61と第2凹部62とは、接着凸部70の接着凹部60に対する嵌め込み方向で重なっており、かつ、連通している。別の見方をすると、接着凹部60は、下段の凹部(第1凹部61)と、上段の凹部(第2凹部62)と、から構成される二段構造を有している。
【0038】
なお、接着凸部70の接着凹部60に対する嵌め込み方向とは、図2図5に示されている矢印の方向である。また、この方向は、出力シャフト2の軸線方向、モータ保持部44,45の立ち上がり方向、シャフト支持部56の立ち上がり方向などと平行である。
【0039】
<第1凹部>
図5に示されるように、第1凹部61は、対向する2つの内側面(内側面61a,内側面61b)と、1つの底面(底面61c)と、を含んでいる。内側面61a,61bは、接着凸部70が接着凹部60に嵌め込まれると、接着凸部70の一部を挟んで対向する。また、底面61cは、接着凹部60の一段目(下段)の底を形成する。
【0040】
第1凹部61の内側面61a,61bは、底面61cに近づくに連れて次第に対向間隔が狭くなるように傾斜している。つまり、内側面61a,61bは、テーパ面である。
【0041】
<第2凹部>
第2凹部62は、対向する2つの内側面(内側面62a,内側面62b)と、隣接する2つの底面(外側底面62c,内側底面62d)と、を含んでいる。内側面62a,62bは、接着凸部70が接着凹部60に嵌め込まれると、接着凸部70の一部を挟んで対向する。また、外側底面62c及び内側底面62dは、接着凹部60の二段目(上段)の底を形成する。
【0042】
第2凹部62の内側面62a,62bの対向間隔は、第1凹部61の内側面61a,61bの対向間隔よりも広い。つまり、第2凹部62の幅は、第1凹部61の幅よりも広い。別の見方をすると、接着凹部60は、段付き溝である。
【0043】
第2凹部62の外側底面62cは、第2凹部62の一方の内側面62aには連接しているが、他方の内側面62bには連接していない。また、第2凹部62の内側底面62dは、第2凹部62の一方の内側面62bには連接しているが、他方の内側面62aには連接していない。つまり、外側底面62cと内側底面62dとは不連続である。
【0044】
<接着凸部>
接着凸部70は、接着凹部60への嵌め込み方向に沿って次第に先細りになるテーパ形状を有している。接着凸部70が接着凹部60に嵌め込まれる際、接着凸部70の一部は、第2凹部62の底面を越えて第1凹部61に進入する。より特定的には、接着凸部70の一部は、第2凹部62の外側底面62cと内側底面62dとの間を通って第1凹部61に進入する。
【0045】
別の見方をすると、接着凹部60に嵌め込まれた接着凸部70の一部は、第1凹部61内に位置し、接着凹部60に嵌め込まれた接着凸部70の他の一部(残部)は、第2凹部62内に位置する。
【0046】
以下の説明では、第2凹部62の底面を越えて第1凹部61に進入している接着凸部70の一部を“先端部71”と呼ぶ場合がある。また、第2凹部62の底面を越えずに第2凹部62内に位置している接着凸部70の他の一部を“基端部72”と呼ぶ場合がある。なお、図4図5中に示されている線分a-aは、先端部71と基端部72との境目を示す仮想線である。
【0047】
先端部71の長さと基端部72の長さとを合わせた接着凸部70の全長は、接着凹部60の深さよりも短い。したがって、接着凸部70が接着凹部60に嵌め込まれても、接着凸部70の先端面が接着凹部60の一段目の底(第1凹部61の底面61c)に突き当たることはない。別の見方をすると、接着凸部70の先端面と、接着凹部60の一段目の底(第1凹部61の底面61c)とは、第1の隙間を介して対向している。
【0048】
また、接着凸部70の最大幅は、接着凹部60の最小幅(=第1凹部61の内側面61a,61bの最小対向間隔)よりも狭い。したがって、接着凸部70の外側面と、接着凹部60の内側面とは、前記第1の隙間と繋がる第2の隙間を介して対向している。
【0049】
つまり、接着凸部70が接着凹部60に嵌め込まれると、接着凹部60と接着凸部70との間に隙間80が生まれる。図4に示されるように、ケース40とカバー50とは、この隙間80に充填されている接着剤81によって互いに固定されている。さらに、接着剤81は、接着凹部60の二段目の底を越えて第1凹部61と第2凹部62とに亘って充填されている。この結果、ケース40の開口部41がカバー50によって気密封止され、ハウジング30の防水性や防塵性が確保されている。
【0050】
<接着剤の充填>
上記のように、ケース40とカバー50とは、隙間80に充填されている接着剤81によって互いに固定される。したがって、ケース40にカバー50を装着する前に、隙間80に接着剤81を充填しておく必要がある。別の見方をすると、接着凹部60に接着凸部70を嵌め込む前に、接着凹部60に接着剤81を充填しておく必要がある。
【0051】
しかし、接着剤81の充填量が少ないと、ケース40とカバー50との固定が不十分になったり、ハウジング30の防水性や防塵性が低下したりする虞がある。一方、接着剤81の充填量が多いと、接着剤81が接着凹部60の外に溢れ出す虞がある。つまり、接着凹部60に必要十分な量の接着剤81を充填する必要がある。さらに、ハウジング30を短時間で組み立てるためには、容易かつ迅速に必要十分な量の接着剤81を接着凹部60に充填可能とすることが好ましい。
【0052】
そこで、本実施形態では、所定の関係を満たすように、接着凹部60の容積や接着凸部70の体積が設定されている。具体的には、本実施形態では、第2凹部62の容積をV、接着凸部70の先端部71の体積をV1、接着凸部70の基端部72の体積をV2としたときに、V-V2≧V1の関係が満たされる。
【0053】
つまり、本実施形態では、第2凹部62の容積(V)から接着凸部70の基端部72の体積(V2)を除いた残りの容積(V-V2)が、接着凸部70の先端部71の体積(V1)よりも大きい。
【0054】
したがって、接着凹部60の二段目の底(第2凹部62の底面)を目安に接着剤81を充填すれば、接着凹部60に必要十分な量の接着剤81が確実に充填される。
【0055】
例えば、液面が接着凹部60の二段目の底(第2凹部62の底面)と同じ高さかになるまで接着凹部60に接着剤81を充填する。その後、接着凹部60に接着凸部70を嵌め込む。すると、第2凹部62の底面を越えて第1凹部61に進入した接着凸部70の先端部71によって、接着剤81が第1凹部61から押し出される。このとき、第1凹部61から押し出される接着剤81の量は、接着凸部70の先端部71の体積(V1)と等しい。
【0056】
一方、接着凸部70の基端部72によって一部が占拠されている第2凹部62の空き容積(V-V2)は、接着凸部70の先端部71の体積(V1)を上回っている。したがって、第1凹部61から押し出された接着剤81は、その全てが第2凹部62に吸収され、第2凹部62の外に溢れ出すことはない。
【0057】
なお、ケース40とカバー50との間には、ハウジング30の全周に亘って液溜め溝90が設けられている。液溜め溝90は、ケース40に設けられている斜面91とカバー50に設けられている斜面92とによって形成されている。より特定的には、互いに対向する2つの斜面91,92によって液溜め溝90が形成されている。
【0058】
ケース40に設けられている斜面91は、側壁部43の端面の縁に設けられており、接着凹部60を囲んでいる。一方、カバー50に設けられている斜面92は、カバー50の下面51の縁に設けられており、接着凸部70を囲んでいる。
【0059】
ケース40にカバー50を被せると、斜面91と斜面92とが対向し、その間に液溜め溝90が形成される。液溜め溝90は、接着凹部60に充填された接着剤81が何らかの原因で接着凹部60から漏洩した場合に、接着剤81を受け止める役割を果たす。
【0060】
例えば、接着剤81が硬化する前にハウジング30を傾けてしまうと、接着剤81が接着凹部60から漏洩する虞がある。しかし、漏洩量がある程度の範囲内であれば、接着剤81は液溜め溝90によって保持され、ハウジング30の側面を垂れ落ちることはない。なお、液溜め溝90と同様の溝をハウジング30の内側に設けてもよい。
【0061】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、ケース40の材料とカバー50の材料とが異なる実施形態もある。
【0062】
また、第1凹部61の内側面61a,61bがテーパ面ではない実施形態や、接着凸部70がテーパ形状ではない実施形態もある。例えば、第1凹部61の内側面61a,61bと第2凹部62の内側面62a,62bとが平行な実施形態も本発明の実施形態の1つである。また、接着凸部70の幅(厚み)が嵌め込み方向において変化しない実施形態も本発明の実施形態の1つである。
【0063】
出力シャフト2の両端がハウジング30を貫通している実施形態もある。例えば、貫通孔55と同様の貫通孔がケース40の底部42に設けられ、この貫通孔を通って出力シャフト2の一端側(下端側)がハウジング30の外に突出している実施形態もある。この場合、出力シャフト2の両側(上端側および下端側)に、Oリングがそれぞれ設けられる場合もある。また、ハウジング30から突出している出力シャフト2の下端側に、出力ギヤ22bの回転数を検出するための部品が装着される場合もある。
【0064】
本技術は以下のような構成をとることが可能である。
【0065】
(1)
ギヤドモータのハウジングであって、
開口部を備えるケースと、
前記ケースの前記開口部を閉塞するカバーと、
前記ケースの前記開口部の周囲に設けられた環状の接着凹部と、
前記カバーに設けられ、前記接着凹部に嵌め込まれる環状の接着凸部と、を備え、
前記接着凹部は、前記接着凸部の前記接着凹部に対する嵌め込み方向で重なり、かつ、連通する第1凹部および第2凹部から構成される二段構造を有し、
前記第1凹部は、前記接着凸部の一部を挟んで対向する2つの内側面と、前記接着凹部の一段目の底を形成する底面と、を含み、
前記第2凹部は、前記接着凸部の他の一部を挟んで対向する2つの内側面と、前記接着凹部の二段目の底を形成する底面と、を含み、
前記接着凸部は、前記第2凹部の前記底面を越えて前記第1凹部に進入しており、
前記接着凹部と前記接着凸部との間には、前記第1凹部と前記第2凹部とに亘って接着剤が充填されている、ハウジング。
【0066】
(2)
前記第2凹部の前記底面は、前記2つの内側面の一方に連接する外側底面と、前記2つの内側面の他方に連接する内側底面と、を含み、
前記接着凸部は、前記外側底面と前記内側底面との間を通って前記第1凹部に進入している、(1)に記載のハウジング。
【0067】
(3)
前記第2凹部の容積をVとし、
前記第2凹部の前記底面を越えて前記第1凹部に進入している前記接着凸部の一部の体積をV1とし、
前記第2凹部の前記底面を越えずに前記第2凹部内に位置している前記接着凸部の他の一部の体積をV2としたときに、
V-V2≧V1の関係を満たす、(1)又は(2)に記載のハウジング。
【0068】
(4)
前記第2凹部の前記2つの内側面の対向間隔は、前記第1凹部の前記2つの内側面の対向間隔よりも広い、(1)~(3)のいずれかに記載のハウジング。
【0069】
(5)
前記第1凹部の前記2つの内側面は、前記第1凹部の前記底面に近づくに連れて次第に対向間隔が狭くなるように傾斜している、(4)に記載のハウジング。
【0070】
(6)
前記接着凸部の先端面と前記第1凹部の前記底面とは、隙間を介して対向している、(1)~(5)のいずれかに記載のハウジング。
【0071】
(7)
前記接着凸部は、前記嵌め込み方向に沿って次第に先細りになるテーパ形状を有する、(1)~(6)のいずれかに記載のハウジング。
【0072】
(8)
モータ,ギヤおよびハウジングを備えるギヤドモータであって、
前記ハウジングは、
前記モータおよび前記ギヤを収容し、かつ、開口部を備えるケースと、
前記ケースの前記開口部を閉塞するカバーと、
前記ケースの前記開口部の周囲に設けられた環状の接着凹部と、
前記カバーに設けられ、前記接着凹部に嵌め込まれる環状の接着凸部と、を有し、
前記接着凹部は、前記接着凸部の前記接着凹部に対する嵌め込み方向において重なり合い、かつ、連通する第1凹部および第2凹部から構成される二段構造を有し、
前記第1凹部は、前記接着凸部の一部を挟んで対向する2つの内側面と、前記接着凹部の一段目の底を形成する底面と、を含み、
前記第2凹部は、前記接着凸部の他の一部を挟んで対向する2つの内側面と、前記接着凹部の二段目の底を形成する底面と、を含み、
前記接着凸部は、前記第2凹部の前記底面を越えて前記第1凹部に進入しており、
前記接着凹部と前記接着凸部との間には、前記第1凹部と前記第2凹部とに亘って接着剤が充填されている、ギヤドモータ。
【符号の説明】
【0073】
1…ギヤドモータ、2…出力シャフト、3,4…軸受、10…モータ、11…モータケース、12…回転軸、13a,13b…リード線、14…引出口、15…グロメット、20…減速機構、21…ウォーム、22…平歯車、22a…平歯車(入力ギヤ)、22b…平歯車(出力ギヤ)、22c…平歯車(中間ギヤ)、30…ハウジング、40…ケース、41…開口部、42…底部、42a…内面(底部内面)、43…側壁部、44,45…モータ保持部、46…ベアリング保持部、50…カバー、51…下面、52…側面、53…モータ支持部、54…ベアリング保持部、55…貫通孔、56…シャフト支持部、60…接着凹部、61…第1凹部、61a,61b…内側面、61c…底面、62…第2凹部、62a,62b…内側面、62c…外側底面、62d…内側底面、70…接着凸部、71…先端部、72…基端部、80…隙間、81…接着剤、90…液溜め溝、91,92…斜面
図1
図2
図3
図4
図5