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特開2023-155708潤滑剤供給体及び潤滑剤供給体を備えた直動案内装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155708
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】潤滑剤供給体及び潤滑剤供給体を備えた直動案内装置
(51)【国際特許分類】
   F16N 9/04 20060101AFI20231016BHJP
   F16C 29/06 20060101ALI20231016BHJP
   F16C 41/00 20060101ALI20231016BHJP
   F16N 7/38 20060101ALI20231016BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
F16N9/04
F16C29/06
F16C41/00
F16N7/38 F
F16C33/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065193
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】筒井 燦
(72)【発明者】
【氏名】中川 匠
【テーマコード(参考)】
3J104
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
3J104AA02
3J104AA34
3J104AA64
3J104AA74
3J104DA05
3J217JA02
3J217JA16
3J217JB88
3J701AA02
3J701AA43
3J701AA64
3J701CA01
3J701CA14
3J701EA31
3J701FA32
(57)【要約】
【課題】レール等の潤滑部位への放油量を確保しつつ、潤滑剤供給以外の他の機能をも付加することができ、かつ軽量化を図ることのできる潤滑剤供給体、及びその潤滑剤供給体を備えた直動案内装置を提供する。
【解決手段】軸方向に直進移動する直動体の端部に備えられ、潤滑部位に接して潤滑剤を供給する潤滑剤供給体であって、直動体の端面形状と同じ端面形状に形成されるとともに、前記直動体の移動方向に垂直な面部において、前記潤滑部位に接触する領域を含み段差状に肉厚に突出する突部17を設け、前記供給体の全体あるいは、少なくとも前記突部が潤滑剤含有ポリマ部材からなり、前記突部の上方には段差スペース19が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に直進移動する直動体の端部に備えられ、潤滑部位に接して潤滑剤を供給する潤滑剤供給体であって、
直動体の端面形状と同じ端面形状に形成されるとともに、前記直動体の移動方向に垂直な面部において、前記潤滑部位に接触する領域を含み段差状に肉厚に突出する突部を設け、
前記供給体の全体あるいは、少なくとも前記突部が潤滑剤含有ポリマ部材からなり、
前記突部の上方には段差スペースが形成されていることを特徴とする潤滑材供給体。
【請求項2】
前記突部を、直動体の移動方向と直交する方向から前記潤滑部位に向けて押圧する押圧ユニットを備えたことを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤供給体。
【請求項3】
前記段差スペースに付加ユニットを備えたことを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤供給体。
【請求項4】
前記付加ユニットは、合成樹脂繊維材からなる潤滑剤保持供給ユニットであることを特徴とする請求項3に記載の潤滑剤供給体。
【請求項5】
前記付加ユニットは、温度センサーユニットであることを特徴とする請求項3に記載の潤滑剤供給体。
【請求項6】
軸方向に延びる転動体転動溝を有する案内レールと、前記案内レールの前記転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有すると共に前記案内レールに跨設されて軸方向に相対移動可能なスライダーと、前記双方の転動体転動溝間に転動自在に組み込まれた転動体と、前記スライダーの軸方向端部に取り付けられると共に、前記案内レールの転動体転動溝に摺接して潤滑剤を供給する潤滑剤供給体と、を含み、
前記摺動部位が、前記案内レールの転動体転動溝で、
前記潤滑剤供給体が、請求項1乃至5のいずれかに記載の潤滑剤供給体であることを特徴とする直動案内装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動案内装置に備えられる潤滑剤供給体の改良、及びその潤滑剤供給体を備えた直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直動案内装置は、例えば、軸方向に延びる案内レールと、案内レールに跨設されるとともに、軸方向に相対移動するスライダーと、を含んで構成されている。案内レールの両側面には、それぞれ軸方向に延びる転動体転動溝が形成されており、スライダーのスライダー本体には、その両袖部の内側面に、案内レール側の転動体転動溝に対向する転動体転動溝がそれぞれ形成されている。そして、それらの対向する両転動体転動溝間には、多数のボール(転動体)が転動自在に組み込まれており、これら多数のボールの転動を介してスライダーが案内レール上を軸方向に相対移動する。
【0003】
従来、このような直動案内装置における転動体への潤滑剤安定供給のため、特許文献1や特許文献2のように、スライダーの移動方向端部に潤滑剤供給体を配設する技術が提案されている。
【0004】
特許文献1は、直動案内装置の構成部品数を多くすることなく潤滑剤供給体をスライダーに取り付けるために、スライダーの端部に取り付けられる保護板に、相対向する二つの突起を備え、その突起間に、突起間幅よりも大きな幅で形成されている潤滑剤含有部材を嵌め込むことにより、潤滑剤含有部材を案内レール側へと押圧付勢する発明である。
しかし、特許文献1に開示の発明の場合、潤滑剤供給体は、潤滑剤供給と案内レールへの押圧機能しか持つことができないものであった。また、押圧量を変更して使用したい場合、スライダーを分解しないと変更できないといった課題を有していた。
【0005】
また、特許文献2は、潤滑剤塗布部、潤滑剤含有体を入れたユニット、これらを有する箱体から構成された潤滑剤供給体であって、コンパクトな構造と潤滑剤補給の手間の軽減が両立された発明である。
しかし、特許文献2に開示の潤滑剤供給体の場合にあっても、その構造上、特許文献1と同様、潤滑剤供給以外の機能を持つことができないものであった。さらに、潤滑剤塗布、潤滑剤保持にスペースを要するといった課題も有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-232350号公報
【特許文献2】特開2011-080601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は従来技術の有するこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、レール等の潤滑部位への放油量を確保しつつ、潤滑剤供給以外の他の機能をも付加することができ、かつ軽量化を図ることのできる潤滑剤供給体、及びその潤滑剤供給体を備えた直動案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、第1の本発明は、軸方向に直進移動する直動体の端部に備えられ、潤滑部位に接して潤滑剤を供給する潤滑剤供給体であって、
直動体の端面形状と同じ端面形状に形成されるとともに、前記直動体の移動方向に垂直な面部において、前記潤滑部位に接触する領域を含み段差状に肉厚に突出する突部を設け、
前記供給体の全体あるいは、少なくとも前記突部が潤滑剤含有ポリマ部材からなり、
前記突部の上方には段差スペースが形成されていることを特徴とする潤滑材供給体としたことである。
【0009】
第2の本発明は、第1の本発明において、前記突部を、直動体の移動方向と直交する方向から前記潤滑部位に向けて押圧する押圧ユニットを備えたことを特徴とする潤滑剤供給体としたことである。
【0010】
第3の本発明は、第1の本発明において、前記段差スペースに付加ユニットを備えたことを特徴とする潤滑剤供給体としたことである。
【0011】
第4の本発明は、第3の本発明において、前記付加ユニットは、合成樹脂繊維材からなる潤滑剤保持供給ユニットであることを特徴とする潤滑剤供給体としたことである。
【0012】
第5の本発明は、第3の本発明において、前記付加ユニットは、温度センサーユニットであることを特徴とする潤滑剤供給体としたことである。
【0013】
第6の本発明は、軸方向に延びる転動体転動溝を有する案内レールと、前記案内レールの前記転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有すると共に前記案内レールに跨設されて軸方向に相対移動可能なスライダーと、前記双方の転動体転動溝間に転動自在に組み込まれた転動体と、前記スライダーの軸方向端部に取り付けられると共に、前記案内レールの転動体転動溝に摺接して潤滑剤を供給する潤滑剤供給体と、を含み、
前記摺動部位が、前記案内レールの転動体転動溝で、
前記潤滑剤供給体が、第1の本発明乃至第5の本発明のいずれかに記載の潤滑剤供給体であることを特徴とする直動案内装置としたことである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、潤滑剤含有部材のレールへの放油量を確保したまま、潤滑剤保持ユニットや給油ユニットなどのその他の機能を付加することができ、かつ軽量化を図ることができる潤滑剤供給体、及びその潤滑剤供給体を備えた直動案内装置を提供することができる。
また、複数の嵌め込み式押圧ユニットを用意することで、スライダーを分解することなく容易に押圧量の変更が可能となる。これにより、複数の用途毎の機能を付加でき、付加ユニット着脱が容易な潤滑剤供給体を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の潤滑剤供給体を備えた直動案内装置の一実施形態を示す概略側面図である。
図2】本発明の潤滑剤供給体の第一実施形態を示す概略断面図で、ケースに覆われている状態を示す。
図3】本発明の潤滑剤供給体の第一実施形態を示す概略斜視図である。
図4】本発明の第一実施形態の潤滑剤供給体の段差スペースに付加ユニットを備えた状態を示す概略斜視図である。
図5】本発明の潤滑剤供給体の第二実施形態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
なお、本実施形態は本発明の一実施形態に過ぎず、何等限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。
「第一実施形態」
【0017】
本実施形態では、例えば、図1に示す直動案内装置を想定している。
直動案内装置は、軸方向に延びる第一の転動体転動溝3を有する案内レール1と、案内レール1の第一の転動体転動溝3に対向する第二の転動体転動溝(不図示)を有すると共に案内レール1に跨設されて軸方向(図中L1の方向)に相対移動可能な断面視で略コの字状のスライダー(直動体)5と、第一の転動体転動溝3と第二の転動体溝との間に転動自在に組み込まれた転動体(不図示)と、スライダー5の軸方向端部に取り付けられると共に、案内レール1の第一の転動体転動溝3に摺接して潤滑剤を供給する断面視で略コの字状の潤滑剤供給体13と、潤滑剤供給体13を、スライダー5と共に挟持して配される断面視で略コの字状のシール材(サイドシール)9と、を含んで構成している。また、スライダー5の軸方向端部5aには、断面視で略コの字状のエンドキャップ11が備えられている。なお、スライダー5、エンドキャップ11、潤滑剤供給体13及びサイドシール9の断面視で略コの字状の形状は略同一の形状に構成されている。
本発明は、潤滑剤供給体13に特徴的な構成を有しており、案内レール1、スライダー5、サイドシール9、エンドキャップ11は周知の構成が本発明の範囲内で採用可能であるため、ここでの詳細な説明は省略し、以下では本発明の特徴的構成要素である潤滑剤供給体13について詳細に説明する。
【0018】
本実施形態において、潤滑剤供給体13は、スライダー5、サイドシール9及びエンドキャップ11と同一大きさの断面視略コの字状の外形に形成されたケース15によって外周が覆われ、サイドシール9とエンドキャップ11との間に挟持された状態で配設されている(図1及び図2参照。)。なお、ケース15の形状は任意であり本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0019】
潤滑材供給体13は、スライダー5の端面形状と同じ断面視で略コの字状の端面形状を有する所望厚みの矩形板状に形成されるとともに、スライダー5の移動方向(矢印L1で示す軸方向と同じ方向)に垂直な後面部23において、案内レール1の第一の転動体転動溝(潤滑部位)3に接触する領域(内周面)17cを含み段差状に肉厚に突出する突部(厚肉部ともいう。)17を設けている。
【0020】
突部17は、図1乃至図3において矢印A1で示す鉛直方向で、後面部23を上下二分した下方領域全体が段差状に所定肉厚でもって突出しており、鉛直方向A1で、突部17の上方には、段差スペース19が形成されている(図2及び図3参照。)。すなわち、本実施形態では、両側の袖部17a,17aと、袖部17a,17a間に架設される架設面部17bとからなる領域が突部17となり、架設面部17bの上面を含む上方領域が段差スペース19となる。
【0021】
そして、本実施形態では、少なくともこの突部17の全領域が潤滑剤含有ポリマ部材からなっているものを想定する。
なお、潤滑剤供給体13の全体が潤滑剤含有ポリマ部材からなる形態であってもよく本発明の範囲内である。
潤滑剤含有ポリマ部材は、例えば、潤滑剤と樹脂が練り混ぜられた潤滑剤含有ポリマ部材を想定している。
【0022】
段差スペース19は、平坦面に形成された突部17の架設面部17bと、架設面部17bの後端から垂直(鉛直方向)に立ち上げ形成された後面部23とで側面視で略L字形状の段差状に形成されている(図2乃至図4参照。)。
【0023】
また、潤滑剤含有ポリマ部材13からなる突部17を、軸方向L1に直交する上方及び左右方向から押圧する押圧ユニット(不図示)を配設することも想定している。
【0024】
押圧ユニットは、特に図示省略するが、突部17を押圧可能な構成であればよく、本発明の範囲内で設計変更可能である。
例えば、ケース15の内面と突部17との間に空間を形成し、その空間に、突部17の外周よりも内周を小さく形成し、弾性変形して嵌め込まれる弾性部材からなる押圧部材等が想定される。
弾性部材はゴム材あるいは軟質合成樹脂材、又はバネ部材など任意に設計変更可能である。
【0025】
このように構成することにより、押圧部材が、潤滑剤含有ポリマ部材からなる突部17の内周面17cを外周から案内レール1の転動体転動溝3に押し付けることとなるため、案内レール1の転動体軌道溝3への安定した接触(潤滑剤供給)が実現できる(図3中、矢印Pは押し付け方向を示す。)。
また、弾性力の異なる押圧部材を変更するだけで押圧量を容易に変更することができるため、作業性・取り扱い性が向上する。
【0026】
本実施形態によれば、このように段差スペース19を備えた構造により、案内レール1の転動体軌道溝3への放油量を確保したまま、段差スペース19に種々の付加ユニット21を配設することができるため、レールへの潤滑剤含有部材押し付け、合成樹脂繊維材からなる潤滑剤補給部、温度センサー等、その他の機能の付加を実現できる(図4)。
【0027】
例えば、段差スペース19に、付加ユニット21として、合成樹脂繊維材からなる潤滑剤保持供給ユニットを配設するものとすれば、案内レール1の転動体軌道溝3への放油量を確保したまま、潤滑剤の保持、潤滑剤含有ポリマ部材への潤滑剤の供給を実現できる。
また、段差スペース19に、付加ユニット21として、温度センサーユニットを設けることも想定され本発明の範囲内である。
温度センサーユニットを設けることにより、案内レール1の転動体軌道溝3への放油量を確保したまま、使用環境温度・含油材温度を測定できるため、含油材の環境試験、直動案内装置使用中の温度管理,メンテナンス時期の予測が実現できる。
【0028】
また、突部17を設け、上半分に段差スペース19を形成するために上半分の領域を薄肉状にすることができたため、潤滑剤供給体の軽量化を図ることができる。
「第二実施形態」
【0029】
図5は本発明の第二実施形態を示し、突部17の別形態である。
本実施形態では、突部17の形状が第一実施形態と相違する。
【0030】
突部17は、袖部17a,17aの一部と、袖部17a,17aにわたって架設される架設面部17bにて形成されている。すなわち、案内レール1の転動体転動溝3と接する潤滑部位領域(内面領域)を含め、第一実施形態の袖部17aの約1/3程度の突出幅としている。
従って、段差スペース19を構成する架設面部17bの幅(軸方向L1と直交する方向の幅)も第一実施形態と比して狭く構成されている。
その他の構成及び作用効果にあっては第一実施形態と同じであるため、第一実施形態の説明を援用し、ここでの詳細な説明は省略する。
なお、本実施形態において、第一実施形態と同様に押圧ユニットを配設する場合、突部17が小さく形成されているため、ケース15で潤滑剤供給体13の外周を覆うと、ケース15の内面と突部17の外周との間には必然的に空間が形成されるため、この空間に押圧部材を嵌め入れればよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、直動案内装置全般に利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 案内レール
3 転動体転動溝(潤滑部位)
5 スライダー(直動体)
7 転動体転動溝
9 サイドシール
11 エンドキャップ
13 潤滑剤供給体
15 ケース
17 突部
19 段差スペース
21 付加ユニット

図1
図2
図3
図4
図5