(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155709
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】永久磁石モータの磁束測定装置
(51)【国際特許分類】
H02K 11/20 20160101AFI20231016BHJP
G01R 31/34 20200101ALI20231016BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
H02K11/20
G01R31/34 C
G01R33/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065196
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 香織
(72)【発明者】
【氏名】中山 真
【テーマコード(参考)】
2G017
2G116
5H611
【Fターム(参考)】
2G017AA05
2G017AD04
2G116BA03
2G116BB04
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB06
5H611PP05
5H611QQ00
5H611RR02
5H611UA02
(57)【要約】
【課題】ステータコイルの占有率及びモータ性能の低下を抑制しつつ、信頼性の高い磁束測定を可能とする永久磁石モータの磁束測定装置をもたらす。
【解決手段】磁束測定装置100は、マグネット35を含むロータ33と、複数のティース部34bと、ティース部34bに巻かれスロット34dに配置されたステータコイル36と、を含む筒状のステータ34と、を有するモータ3における、マグネット35の磁束を測定する装置である。磁束測定装置100は、スロット34dにおける径方向内側であり且つステータコイル36から離間した位置に配置され、隣り合うティース部34bを架橋する架橋部材120と、ステータコイル36と独立し且つロータ33と対向するように架橋部材120に設けられ、マグネット35の磁束を検出するためのサーチコイル110と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を含むロータと、
前記ロータの外周側に配置され、複数のティース部と、該ティース部に巻かれ隣り合う該ティース部間のスロットに配置されたステータコイルと、を含む筒状のステータと、
を有する永久磁石モータにおける、前記永久磁石の磁束を測定する装置であって、
前記スロットにおける径方向内側であり且つ前記ステータコイルから離間した位置に配置され、隣り合う前記ティース部を架橋する架橋部材と、
前記ステータコイルと独立し且つ前記ロータと対向するように前記架橋部材に設けられ、前記永久磁石の磁束を検出するためのサーチコイルと、を備えた
ことを特徴とする永久磁石モータの磁束測定装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記架橋部材は、
隣り合う前記ティース部に接続された基部と、
前記基部における径方向内側に設けられ、前記サーチコイルを巻回するためのボビン部と、を備えた
ことを特徴とする永久磁石モータの磁束測定装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記ボビン部は、前記基部に一体的に設けられている
ことを特徴とする永久磁石モータの磁束測定装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3において、
前記基部は、径方向内側に平面部を備えており、
前記ボビン部は、前記平面部から径方向内側に突出する突出部である
ことを特徴とする永久磁石モータの磁束測定装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2において、
前記ティース部及び前記架橋部材における互いの接触部に、前記サーチコイルの径方向の位置を決定するための係合部が設けられている
ことを特徴とする永久磁石モータの磁束測定装置。
【請求項6】
請求項2において、
前記ボビン部は、前記基部とは別体である
ことを特徴とする永久磁石モータの磁束測定装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記基部は、前記ボビン部を取り付けるための第1取付部を有し、
前記ボビン部は、前記第1取付部に嵌合されることにより、該ボビン部を前記基部に固定可能な第2取付部を有する
ことを特徴とする永久磁石モータの磁束測定装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記第1取付部は、前記基部から径方向内側に突出する突起であり、
前記第2取付部は、前記ボビン部を径方向に貫通する貫通孔である
ことを特徴とする永久磁石モータの磁束測定装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記第1取付部は、前記基部における軸方向中央面に関して非対称に設けられた前記突起からなり、
前記第2取付部は、前記突起に対応するように、前記ボビン部における軸方向中央面に関して非対称に設けられた前記貫通孔からなる
ことを特徴とする永久磁石モータの磁束測定装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記突起は、複数設けられており、
前記貫通孔は、複数の前記突起に対応するように、複数設けられている
ことを特徴とする永久磁石モータの磁束測定装置。
【請求項11】
請求項1又は請求項2において、
前記架橋部材は、軸方向一端側に前記ティース部の軸方向一端側に当接する係止部を備えた
ことを特徴とする永久磁石モータの磁束測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、永久磁石モータの磁束測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石モータでは、永久磁石の磁束を測定するために、ステータコイルとは独立するサーチコイルが配置されることがある。
【0003】
例えば特許文献1では、ロータに対向してサーチコイルを配置することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、サーチコイルは、例えばステータのティース部やヨーク部に巻かれるのが一般的であるが、ステータコイルの占有率低下やモータ性能低下が懸念される。
【0006】
一方、特許文献1の
図3では、サーチコイルがスロットに配置されるように記載されている。しかしながら、スロットは隣り合うティース部間の空隙からなり、当該文献にはスロットにサーチコイルを配置させるための具体的な方法について一切記載されていない。
【0007】
そこで本開示では、ステータコイルの占有率及びモータ性能の低下を抑制しつつ、信頼性の高い磁束測定を可能とする永久磁石モータの磁束測定装置をもたらすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、ここに開示する永久磁石モータの磁束測定装置の一態様は、永久磁石を含むロータと、前記ロータの外周側に配置され、複数のティース部と、該ティース部に巻かれ隣り合う該ティース部間のスロットに配置されたステータコイルと、を含む筒状のステータと、を有する永久磁石モータにおける、前記永久磁石の磁束を測定する装置であって、前記スロットにおける径方向内側であり且つ前記ステータコイルから離間した位置に配置され、隣り合う前記ティース部を架橋する架橋部材と、前記ステータコイルと独立し且つ前記ロータと対向するように前記架橋部材に設けられ、前記永久磁石の磁束を検出するためのサーチコイルと、を備える。
【0009】
本構成では、隣り合うティース部における径方向内側を架橋する架橋部材にサーチコイルを取り付けている。これにより、スロットの径方向内側であり且つステータコイルから離間した位置に、ロータと対向するようにサーチコイルを配置できる。そうして、ステータコイルの占有率及びモータ性能の低下を抑制しつつ、信頼性の高い磁束測定を可能とする永久磁石モータの磁束測定装置をもたらすことができる。
【0010】
好ましくは、前記架橋部材は、隣り合う前記ティース部に接続された基部と、前記基部における径方向内側に設けられ、前記サーチコイルを巻回するためのボビン部と、を備える。
【0011】
本構成によれば、架橋部材は、基部における径方向内側、すなわち基部のロータ側に設けられた、サーチコイルを巻回するためのボビン部を備えるから、ロータに対向してサーチコイルを容易に設置できる。
【0012】
一実施形態では、前記ボビン部は、前記基部に一体的に設けられている。
【0013】
本構成によれば、ボビン部が基部に一体的に設けられているから、架橋部材、延いては磁束測定装置の部品点数を削減できる。
【0014】
前記基部は、径方向内側に平面部を備えており、前記ボビン部は、前記平面部から径方向内側に突出する突出部であることが好ましい。
【0015】
本構成によれば、平面部にボビン部が設けられていることにより、ティース部の先端部とボビン部との間の十分な空間を確保できる。そうして、ボビン部にサーチコイルを巻回する作業が容易になる。
【0016】
前記ティース部及び前記架橋部材における互いの接触部に、前記サーチコイルの径方向の位置を決定するための係合部が設けられていることが好ましい。
【0017】
本構成によれば、係合部により、架橋部材がティース部に確実に固定される。また、架橋部材、延いてはサーチコイルのロータに対する径方向位置を精度よく位置決めできる。
【0018】
一実施形態では、前記ボビン部は、前記基部とは別体である。
【0019】
本構成によれば、ボビン部が基部とは別体であるから、サーチコイルを巻回したボビン部を、ティース部に設置された基部にセットするだけでサーチコイルを設置できる。そうして、サーチコイルの設置作業が容易になる。
【0020】
前記基部は、前記ボビン部を取り付けるための第1取付部を有し、前記ボビン部は、前記第1取付部に嵌合されることにより、該ボビン部を前記基部に固定可能な第2取付部を有することが好ましい。
【0021】
本構成によれば、第2取付部を第1取付部に嵌合させるだけで、ボビン部の基部への取付及び固定ができるから、サーチコイルの設置作業が容易になる。
【0022】
前記第1取付部は、前記基部から径方向内側に突出する突起であり、前記第2取付部は、前記ボビン部を径方向に貫通する貫通孔であることが好ましい。
【0023】
本構成によれば、突起及び貫通孔という簡単な構成で、ボビン部の基部への取付及び固定ができるから、サーチコイルの設置作業が容易になる。
【0024】
前記第1取付部は、前記基部における軸方向中央面に関して非対称に設けられた前記突起からなり、前記第2取付部は、前記突起に対応するように、前記ボビン部における軸方向中央面に関して非対称に設けられた前記貫通孔からなることが好ましい。
【0025】
本構成によれば、サーチコイルが巻回されたボビン部を基部に組み付けるときに、軸方向一端側と他端側とを逆方向に組み付ける誤組付けを抑制できる。
【0026】
前記突起は、複数設けられており、前記貫通孔は、複数の前記突起に対応するように、複数設けられていることが好ましい。
【0027】
本構成によれば、ボビン部の誤組付けを抑制しつつ、複数の取付点が備わることでボビン部の取付強度を向上できる。
【0028】
前記架橋部材は、軸方向一端側に前記ティース部の軸方向一端側に当接する係止部を備えることが好ましい。
【0029】
本構成によれば、係止部がティース部の軸方向一端側に当接することにより、架橋部材の軸方向他端側への移動が制限される。こうして、ボビン部に巻回されたサーチコイルの軸方向位置を精度よく位置決めできる。
【発明の効果】
【0030】
以上述べたように、本開示によると、ステータコイルの占有率及びモータ性能の低下を抑制しつつ、信頼性の高い磁束測定を可能とする永久磁石モータの磁束測定装置をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施形態1に係る磁束測定装置を備えた永久磁石モータの概略断面図。
【
図2】
図1の磁束測定装置の架橋部材及びサーチコイルが設けられた部分周辺を径方向内側から見た図。
【
図4】
図2の架橋部材及びサーチコイルを軸方向一端側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0033】
(実施形態1)
<永久磁石モータ>
図1は、本開示に係る磁束測定装置の一例を備えた永久磁石モータ3の概略断面図である。
【0034】
永久磁石モータ3(以下、単に「モータ3」ともいう。)は、三相の交流によって駆動する永久磁石型の同期モータである。モータ3の用途は、特に限定されるものではなく、例えばハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等の電動車両用の駆動モータ、エアコン、洗濯機、冷蔵庫等の家電用モータ等である。なお、モータ3の構成は一例であり、当該構成に限られない。本開示に係る磁束測定装置は、永久磁石備えたモータであれば適用できる。
【0035】
図1に示すように、モータ3は、大略、モータケース31、シャフト32、ロータ33、ステータ34などで構成されている。
【0036】
モータケース31は、その内部に、一端面及び他端面が封止された円筒状のスペースを有する容器からなる。ロータ33及びステータ34は、モータケース31に収容されている。
【0037】
シャフト32は、モータケース31に回転自在に軸支されている。なお、本明細書において、「軸方向」、「周方向」、「径方向」、「一端側」及び「他端側」等の方向に関する用語は、別途方向を特定する記載が無い限り、シャフト32を基準とする。
【0038】
ロータ33は、中心に軸孔を有する複数の金属板を積層して構成された円筒状の部材からなる。ロータ33の軸孔にシャフト32を固定することで、ロータ33はシャフト32と一体化されている。
【0039】
ロータ33は、その外周部分に、該ロータ33の全周にわたって配置されたマグネット35(永久磁石)を含む。マグネット35は、周方向にS極とN極とが等間隔で交互に並ぶように構成されている。マグネット35は、複数の磁極を有する1つの円筒状の磁石で構成してもよいし、各磁極を構成する複数の弧状の磁石で構成してもよい。なお、
図1に示すマグネット35の配置は、一例に過ぎず、当該配置に限定されるものではない。
図1では、表面磁石型のロータを記載しているが、例えば、磁石をロータコア内部に配置した埋込磁石型ロータであってもよい。
【0040】
マグネット35の種類や素材は、永久磁石であれば特に限定されるものではなく、仕様に応じて適宜選択可能である。永久磁石の具体例としては、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石等が挙げられる。永久磁石としては、モータ性能向上の観点から、保磁力(抗磁力)が大きく、磁力が長期にわたって保持できる磁石を採用することが好ましい。
【0041】
また、マグネット35は、磁力の大きさを大小に可変できるように構成された磁力可変マグネットであってもよい。この場合、磁力を比較的容易に変更できるように、保持力の比較的小さい永久磁石をマグネット35として採用してもよい。
【0042】
ロータ33の外周側には、ロータ33の外周面から僅かな隙間(ギャップ)を隔てて円筒状のステータ34が設置されている(インナーロータ型)。ステータ34は、複数の金属板を積層して構成されたステータコア34aを有している。
【0043】
ステータコア34aは、円環状のヨーク部34cと、該ヨーク部34cからロータ33の外周面に近接する位置まで径方向内側に延びる複数のティース部34bと、を有している。複数のティース部34bは、周方向に所定の間隔を空けて設けられており、隣り合うティース部34b間の間隙は複数のスロット34dを形成している。ティース部34bに電線を所定の順序で巻回することにより、スロット34dに配置された複数のステータコイル36が形成されている。これらステータコイル36は、U相、V相、及びW相からなる三相のコイル群を構成している。
【0044】
<永久磁石モータの磁束測定装置>
図1に示すように、モータ3は、マグネット35の磁束を測定するための磁束測定装置100を備えている。
【0045】
図2~
図4に示すように、磁束測定装置100は、架橋部材120と、サーチコイル110と、を備える。
【0046】
[架橋部材]
架橋部材120は、隣り合うティース部34bの径方向内側、好ましくは先端部341を架橋するように設けられた部材である。
【0047】
具体的に、架橋部材120は、
図1に示すように、スロット34dにおける径方向内側、すなわちロータ33側であり且つステータコイル36から離間した位置に配置されている。
【0048】
架橋部材120は、サーチコイル110を支持して、該サーチコイル110をスロット34dに配置するための支持部材である。
【0049】
図2~
図4に示すように、架橋部材120は、基部121と、ボビン部123と、を備える。
【0050】
基部121は、ボビン部123を支持する部位であり、隣り合うティース部34bに接続されている。
【0051】
基部121は、ステータ34の一端側から他端側、好ましくは一端から他端まで軸方向に延びる部材である。基部121の軸方向の長さは、限定する意図ではないが、例えばティース部34bの軸方向厚さの1/2以上11/10以下、好ましくはティース部34bの軸方向厚さと略同一である。これにより、ボビン部123の十分な軸方向長さを確保できる。
【0052】
基部121の径方向厚さは、基部121がステータコイル36に接触しない限り、特に限定されるものではなく、サーチコイル110の設置の安定性や架橋部材120の強度等を考慮して適宜決定される。
【0053】
ティース部34bの先端部341における基部121との接触面341a(接触部)には、先端部341の軸方向一端側から他端側まで延びる溝342(係合部)が形成されている。基部121における先端部341との接触面121b(接触部)には、基部121の軸方向一端側から先端側まで延びて、溝342と係合可能に構成されたリブ122(係合部)が設けられている。溝342とリブ122とよりなる係合部は、ティース部34bと基部121との2個所の接触部の各々に設けられている。リブ122が溝342に係合することにより、基部121がティース部34bに確実に固定される。また、本構成によれば、基部121、延いてはサーチコイル110のロータ33に対する径方向位置を精度よく位置決めできる。
【0054】
ボビン部123は、サーチコイル110を巻回するための部位である。
【0055】
ボビン部123は、基部121に一体的に設けられている。これにより、磁束測定装置100の部品点数を削減できる。
【0056】
基部121の径方向内側には、平面形状の平面部121aが設けられている。平面部121aは、基部121の軸方向一端から他端に至るまで延びている。
【0057】
ボビン部123は、平面部121aから径方向内側に突出する突出部からなる。平面部121aにボビン部123が設けられていることにより、ティース部34bの先端部341とボビン部123との間の十分な空間を確保できる。そうして、ボビン部123にサーチコイル110を巻回する作業が容易になる。
【0058】
ボビン部123は、平面部121aの周方向中央部において、平面部121aの軸方向一端側から他端側、好ましくは軸方向一端から他端まで延びるように設けられている。すなわち、ボビン部123の軸方向高さは、限定する意図ではないが、例えばティース部34bの軸方向厚さの1/2以上11/10以下、好ましくはティース部34bの軸方向厚さと略同一である。ボビン部の軸方向長さは、サーチコイルに鎖交する磁束量を十分確保できるのであれば、ティース部の軸方向長さよりも短くてもよいし、長くてもよい。ボビン部123の軸方向高さが小さすぎると、サーチコイル110と鎖交する磁束量が十分得られず計測が困難になる。また、ボビン部123の軸方向長さが長すぎると、磁束量は確保できるが、磁束が鎖交しない部分も増加し、架橋部材120やサーチコイル110の材料調達、コスト等の観点から望ましくない。ボビン部の軸方向高さは、ティース部軸方向厚さと略同一が好ましい。これにより、サーチコイル110と鎖交する磁束量を十分確保でき、より信頼性の高い磁束の測定が可能となる。
【0059】
ボビン部123の径方向高さは、サーチコイル110の径方向厚さよりも大きく、ボビン部123がロータ33に接触しない高さであればよい。ボビン部123の径方向高さは、当該範囲であれば特に限定されるものではなく、サーチコイル110を構成する電線の径、巻き数等に応じて適宜決定される。
【0060】
なお、ボビン部123の径方向高さは、基部121の平面部121aからティース部34bの径方向内側面、すなわち先端部341の先端面までの径方向の距離と同一又は当該距離よりも小さいことが好ましい。これにより、ボビン部123の先端はティース部34bの先端部341よりも径方向外側に位置するから、例えばモータ3の作動時等においても、ボビン部123のロータ33への接触を確実に抑制できる。
【0061】
ボビン部123の周方向幅は、サーチコイル110を安定して保持可能であり、サーチコイル110がティース部34bに接触しない幅であれば、特に限定されない。具体的には例えば、ボビン部123の周方向幅の下限は、サーチコイル110の周方向幅の約1/3程度としてもよい。また、ボビン部123の周方向幅の上限は、サーチコイル110の周方向幅が隣り合うティース部34bの先端部341間の周方向距離よりも小さくなるように設定すればよい。
【0062】
また、架橋部材120は、基部121の軸方向一端側に設けられた、隣り合う2つのティース部34bの軸方向一端側の一端面344の各々に当接する2つの係止部124を備えている。係止部124の軸方向他端側の面124aが一端面344に当接することにより、架橋部材120の軸方向他端側への移動が制限され、架橋部材120の軸方向の位置が決定される。こうして、ボビン部123に巻回されたサーチコイル110の軸方向位置を精度よく位置決めできる。
【0063】
なお、架橋部材120の材質は、モータ性能への影響を抑制する観点から、非磁性材料、絶縁性材料であることが好ましい。架橋部材120の材質としては、具体的には例えば樹脂材料等が挙げられる。
【0064】
[サーチコイル]
サーチコイル110は、マグネット35の磁束を検出するためのコイルであり、ステータコイル36とは独立して巻回された電線からなる。
【0065】
サーチコイル110を、ロータ33に対向するように且つ近接して配置すると、マグネット35により発生した磁束がサーチコイル110に鎖交する。サーチコイルに鎖交する磁束の時間変化に比例して、サーチコイルの両端に電位が生じる。マグネットの磁束は磁石の磁化状態(磁力)によって異なる。マグネットの磁化状態とサーチコイルに発生する電位のピークもしくは時間積分により得られる磁束は、比例関係にあることが知られている。従って、サーチコイルに発生する電位を計測することにより、モータの発熱などの温度変化による磁力変化やマグネットとして磁力可変マグネットを採用している場合に磁石の磁力を可変した時の磁力変化、つまり、マグネットの磁化状態(磁力)が測定できる。
【0066】
サーチコイル110は、ボビン部123に巻回され、ロータ33に近接する位置に、当該ロータ33と対向するように設けられている。
【0067】
サーチコイル110を構成する電線の両端は、ステータ34の一端側に導出され、係止部124に配置された端子112に接続されている。端子112は、
図1に示すように、ケーブル113を介して、例えばフラックスメータ114等に接続されている。フラックスメータ114は、サーチコイル110の両端に発生する電位に基づいてマグネット35の磁化状態(磁力)を測定する。
【0068】
本実施形態に係る磁束測定装置100では、隣り合うティース部34bにおける径方向内側を架橋する架橋部材120にサーチコイルを取り付けている。これにより、スロット34dの径方向内側であり且つステータコイル36から離間した位置に、ロータ33と対向するようにサーチコイル110を配置できる。そうして、ステータコイル36の占有率及びモータ性能の低下を抑制しつつ、信頼性の高い磁束測定が可能となる。
【0069】
また、サーチコイル110は、架橋部材120の基部121の径方向内側に設けられたボビン部123に巻回されているから、ロータ33に近接する位置にロータ33に対向して配置されている。これにより、永久磁石により発生する磁束がサーチコイル110に効果的に鎖交する。そうして、サーチコイル110の両端に発生する電位の検出精度が向上するから、永久磁石の磁化状態を精度よく推定できる。
【0070】
なお、サーチコイルの電線の径と巻き数は、特に限定されるものではなく、計測に必要な電位を得るための巻き数と線径が適宜決定される。なお、モータ性能への影響を少なくするために、線径は十分に小さいことが好ましい。また、モータの回転数が低い場合には、磁束の時間変化が小さく、サーチコイルに発生する電位が小さくなる。サーチコイルに発生する電位は、サーチコイルの巻き数に比例するので、ノイズ対策の観点から、巻き数は多い方が好ましい。
【0071】
<サーチコイルの設置方法>
サーチコイル110の設置方法は、特に限定されるものではない。架橋部材120をティース部34bに接続後、ボビン部123にサーチコイル110用の電線を巻回することにより、サーチコイル110を設置してもよい。また、逆に、ボビン部123にサーチコイル110用の電線を巻回後、架橋部材120をティース部34bに接続してもよい。
【0072】
架橋部材120のティース部34bへの接続方法は、例えば以下の通りである。まず、基部121のリブ122の他端側をティース部34bの溝342の一端側から挿入する。そして、係止部124,124が一端面344,344に当接する位置まで、リブ122を溝342内においてスライドさせる。これにより、架橋部材120をティース部34bへ接続、固定できる。
【0073】
(実施形態2)
以下、本開示に係る他の実施形態について詳述する。なお、これらの実施形態の説明において、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0074】
図5~
図8は、実施形態2に係る磁束測定装置100の構成を示している。なお、
図8の(a)及び(b)は架橋部材120のボビン部123以外の部分をそれぞれ軸方向一端側及び径方向内側から見た図である。
図8の(c)及び(d)はボビン部123をそれぞれ軸方向一端側及び径方向内側から見た図である。
【0075】
実施形態2に係る磁束測定装置100では、ボビン部123は、基部121とは別体の部材として構成されている。本構成によれば、サーチコイル110を巻回したボビン部123を、ティース部34bに設置された基部121にセットするだけでよいから、サーチコイル110の設置作業が容易になる。
【0076】
図8等に示すように、基部121は、ボビン部123を取り付けるための第1取付部126を有する。第1取付部126は、基部121に設けられた径方向内側に突出する3個(複数)の突起126a,126b,126cにより構成されている。
【0077】
また、ボビン部123は、第1取付部126に嵌合されることにより、該ボビン部123を基部121に固定可能な第2取付部128を有する。第2取付部128は、第1取付部126に対応する位置に設けられている。第2取付部128は、ボビン部123を径方向に貫通する3個(複数)の貫通孔128a,128b,128cにより構成されている。すなわち、本構成では、第1取付部126は3個の突起126a,126b,126c、第2取付部128は3個の貫通孔128a,128b,128cにより構成されているから、3個の取付点において、ボビン部123は、基部121に取り付けられる。
【0078】
本構成によれば、第1取付部126は突起、第2取付部128は貫通孔という簡単な構成からなり、第2取付部128を第1取付部126に嵌合させるだけで、ボビン部123の基部121への取付及び固定ができる。これにより、サーチコイル110の設置作業が容易になる。
【0079】
なお、突起126a,126b,126cは、径方向に延びる円柱状である。突起126a,126bの径方向に垂直な断面は、略真円形状である。そして、突起126cの径方向に垂直な断面は、長円形状である。
【0080】
すなわち、第1取付部126を構成する3個の突起126a,126b,126cは、基部121における軸方向中央の軸方向に垂直な断面、すなわち軸方向中央面P1に関して非対称に設けられている。
【0081】
また、第2取付部128を構成する貫通孔128a,128b,128cの各々も、突起126a,126b,126cの各々に対応する形状を有している。
【0082】
すなわち、第2取付部128を構成する3個の貫通孔128a,128b,128cは、ボビン部123における軸方向中央の軸方向に垂直な断面、すなわち軸方向中央面P2に関して非対称に設けられている。
【0083】
本構成によれば、サーチコイル110が巻回されたボビン部123を基部121に組み付けるときに、軸方向一端側と他端側とを逆方向に組み付ける誤組付けを抑制できる。
【0084】
また、本構成では、複数の取付点が設けられていることで、ボビン部123の取付強度を向上できる。なお、取付点は複数に限定されず、軸方向中央面P1,P2に関して非対称に設けられる構成であれば、単一であってもよい。
【0085】
実施形態2では、ティース部34bの先端部341は、溝342を有していない。溝342に代えて、先端部341の先端面における基部121側に切欠部343が形成されている。言い換えると、先端部341の先端は、径方向内側に向かって、先端部341の周方向の幅が小さくなるように構成されている。そして、基部121のリブ122は、切欠部343に対応する径方向の位置に設けられている。
【0086】
本構成では、基部121の接触面121b全体が基部121の軸方向一端側から他端側に延びる溝を構成しているともいえる。そして、ティース部34bの接触面341a全体が当該溝に係合するリブを構成しているともいえる。
【0087】
また、本構成では、切欠部343に対応する径方向の位置にリブ122が設けられているから、基部121の平面部121aの周方向の幅は、実施形態1の構成に比べて小さくなっている。
【0088】
図8の(c)及び(d)に示すように、ボビン部123は、サーチコイル110の電線を巻回する位置を規定する案内溝127を有する。案内溝127は、ボビン部123の軸方向両端に設けられた案内溝127aと、案内溝127aと連続して周方向両端に設けられた案内溝127bと、よりなる。言い換えると、案内溝127は、サーチコイル110の巻回方向の全周に亘って設けられている。案内溝127が形成されていることにより、ボビン部123へのサーチコイル110の巻回が容易になるとともに、巻回後のサーチコイル110の保持が容易となる。
【0089】
ボビン部123の周方向両端に設けられた案内溝127bは、ボビン部123の軸方向一端側から他端側まで延びるように形成されている。ボビン部123の周方向両端に設けられた案内溝127bの軸方向高さが、ティース部34bの軸方向高さと略同一となるように、ボビン部123が構成されていることが好ましい。これにより、サーチコイル110の十分な軸方向長さを確保でき、十分な鎖交磁束を確保できる。
【0090】
(その他の実施形態)
実施形態1のボビン部123は、案内溝127を有さない構成であったが、案内溝127を設けてもよい。
【0091】
実施形態2の第1取付部126の突起及び第2取付部128の貫通孔の形状、数は、両者が対応して設けられている限り、上記構成に限られない。
【0092】
また、実施形態2では、第1取付部126は突起、第2取付部128は貫通孔で構成されていたが、ボビン部123を基部121に取り付け可能な構成であれば、実施形態2の構成に限られない。具体的には例えば、第1取付部126は基部121の径方向内側の面に設けられた孔、第2取付部128はボビン部123の径方向外側の面に設けられた突起等であってもよい。
【0093】
なお、取付点は、実施形態2のように、軸方向中央面P1,P2に関して非対称に設けられる構成であることが好ましいが、当該構成に限られるものではない。
【0094】
上記実施形態では、係止部124は2つ設ける構成であったが、サーチコイル110の軸方向の位置決めを確実に行うことができれば上記構成に限られない。具体的には例えば、2つの係止部124のうちいずれか一方だけでもよいし、2つの係止部124は繋がっていてもよい。
【0095】
上記実施形態では、端子112は、2つの係止部124の各々に設けられる構成であったが、当該構成に限られない。端子112は、基部121等の別の位置に設けられてもよい。
【0096】
上記実施形態では、架橋部材120及びサーチコイル110をモータ3の1個所に設ける構成であったが、複数個所のスロット34dに設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本開示は、ステータコイルの占有率及びモータ性能の低下を抑制しつつ、信頼性の高い磁束測定を可能とする永久磁石モータの磁束測定装置をもたらすことができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0098】
3 モータ(永久磁石モータ)
33 ロータ
34 ステータ
34b ティース部
34d スロット
35 マグネット(永久磁石)
36 ステータコイル
100 磁束測定装置
110 サーチコイル
120 架橋部材
121 基部
121a 平面部
122 リブ(係合部)
123 ボビン部
124 係止部
342 溝(係合部)
343 切欠部(係合部)
126 第1取付部
126a,126b,126c 突起
127 案内溝
128 第2取付部
128a,128b,128c 貫通孔
P1 (基部における)軸方向中央面
P2 (ボビン部における)軸方向中央面