(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155722
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/483 20070101AFI20231016BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
H02M7/483
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065220
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】真木 康次
(72)【発明者】
【氏名】餅川 宏
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BA12
5H740BB05
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH05
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H770CA06
5H770DA01
5H770DA31
5H770DA32
5H770DA44
5H770FA03
5H770GA01
5H770GA07
5H770JA20X
(57)【要約】
【課題】 低コスト化および小型化を実現する電力変換装置を提供する。
【解決手段】 実施形態による電力変換装置は、直流リンクLPと交流端E1との間に接続され、直列に接続された複数の半導体素子S1、S2を備えた上アームと、直流リンクLNと交流端E1との間に接続され、直列に接続された複数の半導体素子S3、S4を備えた下アームと、半導体素子S1-S4の制御端子に制御信号を印加する複数の駆動回路GDCと、を備え、駆動回路GDCは、半導体素子S1-S4の高電位側端Pと制御端子との間に接続された第1分圧抵抗器14と、半導体素子S1-S4の低電位側端Nと制御端子との間に接続された第2分圧抵抗器16と、半導体素子S1-S4の制御信号とハイインピーダンス状態とのいずれかの出力状態に切り替えられ、半導体素子S1-S4の制御端子に電気的に接続された出力端子を備えた、ドライブ回路10と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電位側の直流リンクと交流端との間に接続され、直列に接続された複数の半導体素子を備えた上アームと、
低電位側の直流リンクと前記交流端との間に接続され、直列に接続された複数の半導体素子を備えた下アームと、
前記半導体素子の制御端子に制御信号を印加する複数の駆動回路と、を備え、
前記駆動回路は、
前記半導体素子の高電位側端と前記制御端子との間に接続された第1分圧抵抗器と、
前記半導体素子の低電位側端と前記制御端子との間に接続された第2分圧抵抗器と、
前記半導体素子の制御信号とハイインピーダンス状態とのいずれかの出力状態に切り替えられ、前記半導体素子の前記制御端子に電気的に接続された出力端子を備えた、ドライブ回路と、を備えた、
電力変換装置。
【請求項2】
前記ドライブ回路は、前記半導体素子の制御信号とイネーブル信号とが入力されるスリーステートドライバを含み、
前記スリーステートドライバは、イネーブル信号が第1レベルのときに前記半導体素子の制御信号を出力し、イネーブル信号が第2レベルのときに出力状態がハイインピーダンス状態となる、請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記ドライブ回路は、前記半導体素子の制御信号が入力されるドライブと、イネーブル信号により前記ドライブの出力端子と前記半導体素子の前記制御端子との電気的接続状態を切り替える双方向スイッチと、を含み、
イネーブル信号が第1レベルのときに、前記双方向スイッチがオンされ、前記ドライブ回路の出力端子と前記半導体素子の前記制御端子とが電気的に接続され、前記半導体素子の制御信号が前記制御端子に印加され、
イネーブル信号が第2レベルのときに、前記双方向スイッチがオフされ、前記制御端子がハイインピーダンス状態となる、請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1分圧抵抗器の抵抗値は、前記第2分圧抵抗器の抵抗値よりも大きい、請求項1記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1分圧抵抗器と前記半導体素子の高電位側端との間において、前記第1分圧抵抗器から前記半導体素子の高電位側端へ向かう方向を順方向として接続されたツェナーダイオードを備える、請求項1記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記上アームは、第1半導体素子と、高電位側端が前記第1半導体素子の低電位側端に電気的に接続された第2半導体素子と、を含み、
前記下アームは、第3半導体素子と、高電位側端が前記第3半導体素子の低電位側端に電気的に接続された第4半導体素子と、を含み、
一端が第2半導体素子の高電位側端と電気的に接続され、他端が前記第3半導体素子の低電位側端と電気的に接続された、フライングキャパシタを更に備えた、請求項1記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直列に接続された複数の半導体素子(主素子)を備えた電力変換装置では、例えば、主素子と並列に抵抗器を接続し、抵抗分圧により素子電圧をバランスさせるとともに、動作開始前の初期充電を実現している。
上記の電力変換装置では、抵抗器に流れる電流が主素子に流れる漏れ電流以上でなければ、分圧が担保されない。
【0003】
また、抵抗器に漏れ電流以上の電流を流すことで、抵抗器自体が発熱するため、電力変換装置を冷却するためのコストが必要となる。さらに、抵抗器に電圧が印加されている間は抵抗器にも電流が流れるため、電力変換効率が低下するとともに、初期充電が完了後の運転中も電力変換装置を冷却する必要がある。
【0004】
例えば、初期充電完了後に抵抗器と主素子とを電気的に切り離すためのスイッチ設けると、主素子と同等の耐圧を持つスイッチのコスト、そのスイッチの制御、駆動信号の絶縁、駆動電源の絶縁等が必要となり、コストがかかるだけでなく、大きなスペースを要するため、装置を小型化することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、低コスト化および小型化を実現する電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態による電力変換装置は、高電位側の直流リンクと交流端との間に接続され、直列に接続された複数の半導体素子を備えた上アームと、低電位側の直流リンクと交流端との間に接続され、直列に接続された複数の半導体素子を備えた下アームと、前記半導体素子の制御端子に制御信号を印加する複数の駆動回路と、を備え、前記駆動回路は、前記半導体素子の高電位側端と前記制御端子との間に接続された第1分圧抵抗器と、前記半導体素子の低電位側端と前記制御端子との間に接続された第2分圧抵抗器と、前記半導体素子の制御信号とハイインピーダンス状態とのいずれかの出力状態に切り替えられ、前記半導体素子の前記制御端子に電気的に接続された出力端子を備えた、ドライブ回路と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電力変換装置の一構成例を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す駆動回路の一構成例を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の電力変換装置の他の構成例を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の電力変換装置の他の構成例を概略的に示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態の電力変換装置に搭載された駆動回路の一構成例を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態の電力変換装置に搭載された駆動回路の一構成例を概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態の電力変換装置に搭載された駆動回路の他の例を概略的に示す図である。
【
図8】
図8は、第4実施形態の電力変換装置に搭載された駆動回路の一構成例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の電力変換装置について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1実施形態の電力変換装置の一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の電力変換装置は、例えば直流電源(若しくは直流負荷)PSと交流端E1との間に接続され、上アームと、下アームと、複数の駆動回路GDCと、フライングキャパシタCと、を備えている。
【0010】
上アームは、高電位側の直流リンクと交流端との間に接続されている。上アームは、半導体素子(主素子)S1-S2を含む。上アームにおいて、半導体素子(第1半導体素子)S1と半導体素子(第2半導体素子)S2とは直列に接続されている。
下アームは、低電位側の直流リンクと交流端との間に接続されている。下アームは、半導体素子(主素子)S3-S4を含む。下アームにおいて、半導体素子(第3半導体素子)S3と半導体素子(第4半導体素子)S4とは直列に接続されている。
【0011】
半導体素子S1-S4は、例えば、MOSFET(半導体電界効果トランジスタ:metal-oxide semiconductor field-effect transistor)である。なお、半導体素子S1-S4はMOSFETに限定されるものではなく、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar transistor)等の他の半導体素子であっても構わない。
【0012】
フライングキャパシタCは、半導体素子S2および半導体素子S3と並列に接続されている。フライングキャパシタCの一端は、半導体素子S2の高電位側端と電気的に接続され、フライングキャパシタCの他端は、半導体素子S3の低電位側端と電気的に接続されている。
【0013】
複数の駆動回路GDCの各々は、複数の半導体素子S1-S4各々の制御端子に信号を印加する回路である。駆動回路GDCは、制御回路CCにより動作を制御される。制御回路CCは、例えば、電力変換装置が搭載された機器に含まれる複数の構成を統括制御する回路である。
【0014】
図2は、
図1に示す駆動回路の一構成例を概略的に示す図である。
なお、複数の駆動回路GDCは同じ構成であるので、
図2では、複数の半導体素子S1-S4のいずれかを駆動する1つの駆動回路GDCの構成について説明し、他の駆動回路GDCの構成についての説明は省略する。
【0015】
駆動回路GDCは、ドライブ回路と、ゲート抵抗器12と、第1分圧抵抗器14と、第2分圧抵抗器16と、を備えている。
ドライブ回路は、半導体素子S1-S4の制御信号と、ハイインピーダンス状態とのいずれかの出力状態に切り替えられ、半導体素子S1-S4の制御端子に電気的に接続された出力端子を備える。本実施形態では、ドライブ回路は、スリーステートドライバ10を備える。
【0016】
スリーステートドライバ10は、イネーブル信号と半導体素子S1-S4の制御信号とが入力される入力端子と、半導体素子S1-S4の制御端子と電気的に接続された出力端子(ドライブ回路の出力端子)と、を備える。
スリーステートドライバ10は、「1」、「0」、「ハイインピーダンス状態(HZ)」の3つの状態のいずれかを出力する回路である。スリーステートドライバ10には、制御回路CCから制御信号(ゲート信号)と、イネーブル信号とが入力される。
スリーステートドライバ10の出力は、イネーブル信号が「0」(第2レベル)のときにハイインピーダンス状態となり、イネーブル信号が「1」(第1レベル)のときに制御信号の値(「1」又は「0」)となる。
【0017】
第1分圧抵抗器14は、半導体素子S1-S4の高電位側端Pと制御端子(ゲート端子)との間に接続されている。
第2分圧抵抗器16は、半導体素子S1-S4の低電位側端Nと制御端子との間に接続されている。
第1分圧抵抗器14の抵抗値は、第2分圧抵抗器16の抵抗値よりも十分に大きい。例えば第1分圧抵抗器14の抵抗値をR1とし、第2分圧抵抗器16の抵抗値をR2とし、高電位側端Pと低電位側端Nとの間に電圧VSが印加されるとき、半導体素子S1-S4各々の高電位側端Pと低電位側端Nとの間に印加される電圧はVS×R2/(R1+R2)となる。ここで、第2分圧抵抗器16の抵抗値R2は、第1分圧抵抗器14の抵抗値R1よりも十分小さいため、半導体素子S1-S4各々に印加される電圧は、電圧VSに対して十分小さくなる。
【0018】
ゲート抵抗器12は、スリーステートドライバ10の出力端子と半導体素子S1-S4の制御端子との間に接続されている。本実施形態では、スリーステートドライバ10の出力端子と半導体素子S1-S2の制御端子との間において、ゲート抵抗器12は、第1分圧抵抗器14と第2分圧抵抗器16とが電気的に接続している位置よりも、スリーステートドライバ10の出力端子側に配置されている。なお、ゲート抵抗器12の抵抗値は、第1分圧抵抗器14および第2分圧抵抗器16の抵抗値よりも十分小さい。
【0019】
次に、上述の駆動回路GDCを備えた電力変換装置の動作の一例について説明する。
電力変換装置が動作を開始する前において、駆動回路GDCのイネーブル信号は「0」である。この状態では、スリーステートドライバ10の出力はハイインピーダンス状態であり、半導体素子S1-S4はリニアレギュレータとして動作する。半導体素子S1-S4がリニアレギュレータとして動作しているとき、漏れ電流の小さい半導体素子の電圧は所定の電圧でクランプ(固定)され、所定の電圧の状態を維持することができる。なお、リニアレギュレータ(半導体素子S1-S4)がクランプする所定の電圧は、設計上考えられる最大直流電圧を1レグあたりの直列素子数(
図1に示す例では4)で除算した電圧に対して、若干マージンを入れた数値とすることが好ましい。
【0020】
ここで、
図1に示す電力変換装置の最上段の半導体素子S1と最下段の半導体素子S4とが所定の電圧でクランプされると、直流電圧と当該所定の電圧の2倍の電圧との差分電圧が、瞬時にフライングキャパシタCに印加され、フライングキャパシタCが充電される。
【0021】
駆動回路GDCのイネーブル信号が「1」となると、スリーステートドライバ10の出力状態が制御信号の値となり、半導体素子S1-S4の制御端子に制御信号が印加される。
例えば、電力変換装置が、半導体素子S1-S4の各々に並列に接続された複数の抵抗器を、上記駆動回路GDCに代えて備えるときに、すべての半導体素子S1-S4をオフしている状態では、4つの半導体素子のうち3つの漏れ電流がばらつきの範囲内で非常に大きいと、漏れ電流が小さい1つの半導体素子に定格電圧が印加されている状態が定常状態となる。この状態で半導体素子S1-S4のスイッチングを開始すると、定格電圧が印加されている半導体素子に過大な電圧がかかる可能性があり、最悪の場合には素子が破壊されてしまう。
【0022】
また、フライングキャパシタ型の電力変換装置は、フライングキャパシタCを半導体素子S1-S4の漏れ電流で充電するため、フライングキャパシタCの充電に要する時間が非常に長くなる。フライングキャパシタCの充電が完了する前に半導体素子S1-S4をスイッチングすると、一般的に最上段素子S1と最下段素子S4とに設計電圧の2倍の電圧が印加され、半導体素子S1、S4が破壊されてしまう。
【0023】
これに対し、本実施形態の電力変換装置では、スリーステートドライバ10へのイネーブル信号が「0」から「1」となると同時、もしくは、電圧のバランスが崩れない程度の間を置かずに、半導体素子S1-S4のスイッチングを開始することで、半導体素子S1-S4の破壊なく、多直列化した電力変換装置を駆動することができる。
【0024】
また、本実施形態の電力変換装置では、最上段素子S1と最下段素子S4とが所定の電圧でクランプされ、フライングキャパシタCに直流電圧と所定の電圧の2倍の電圧との差分電圧が瞬時に印加され、フライングキャパシタCが高速で充電される。このため、フライングキャパシタCの充電時間が短くなる。
【0025】
更に、フライングキャパシタC充電中の最上段素子S1と最下段素子S4とにおける損失は、「所定の電圧×フライングキャパシタCの電荷量」であり、そのエネルギーは回路動作に伴う損失よりも十分小さいため、初期充電中に半導体素子S1、S4が破壊されることはない。
【0026】
以上の動作は全て初期充電動作中であって、半導体素子S1-S4のスイッチングを伴う回路動作中、駆動回路GDCは半導体素子S1-S4の制御端子に制御信号を印加する。このため、駆動回路GDCの上記初期充電動作が通常動作に影響を与えることはない。また、駆動回路GDCの上記初期充電動作は定常的に損失を発生させることはないため、電力変換装置の電力変換効率が低下することもなく、初期充電時に生じる熱の冷却に必要なコストを抑制することができる。
【0027】
なお、本実施形態の電力変換装置には、駆動回路GDCのスリーステートドライバ10と、イネーブル信号の受信部と、分圧抵抗器と、が必要となるが、これらは従来技術の大きな発熱を伴う分圧抵抗や冷却手段よりも十分安価であるとともに、電力変換装置を大型化させることもないものである。
上記のように、本実施形態によれば、低コスト化および小型化を実現する電力変換装置を提供することができる。
【0028】
なお、
図1に示す本実施形態の電力変換装置は、フライングキャパシタ型の電力変換装置であるが、駆動回路GDCを備える他の回路方式の電力変換装置であっても、本実施形態の電力変換装置の効果を得ることができる。
【0029】
図3は、第1実施形態の電力変換装置の他の構成例を概略的に示す図である。
図3に示す電力変換装置は、上アームが半導体素子S11、S12、S21、S22を備え、下アームが半導体素子S31、S32、S41、S42を備えている。上アームにおいて、半導体素子S11、S12、S21、S22は直列に接続されている。下アームにおいて、半導体素子S31、S32、S41、S42は直列に接続されている。
【0030】
フライングキャパシタCは、半導体素子S21、S22、S31、S32と並列に接続されている。すなわち、フライングキャパシタの一端は、半導体素子S21の高電位側端と電気的に接続され、フライングキャパシタの他端は、半導体素子S32の低電位側端と電気的に接続されている。
複数の駆動回路GDCは、複数の半導体素子S11-S42の各々の制御端子に信号を印加する回路である。駆動回路GDCは、制御回路CCにより動作を制御される。
【0031】
図3に示す電力変換装置は上記以外の構成は、
図1に示す電力変換装置と同様である。
換言すると、この例は、
図1に示す電力変換装置の1つの半導体素子を、複数の半導体素子を直列接続した構成に代えたものである。
【0032】
駆動回路GDCは、電力変換装置が動作を開始する前において、駆動回路GDCのイネーブル信号は「0」である。この状態では、スリーステートドライバ10の出力はハイインピーダンス状態であり、半導体素子S11-S42はリニアレギュレータとして動作する。半導体素子S11-S42がリニアレギュレータとして動作しているとき、漏れ電流の小さい半導体素子の電圧は所定の電圧でクランプ(固定)され、所定の電圧の状態を維持することができる。
【0033】
なお、リニアレギュレータがクランプする所定の電圧は、設計上考えられる最大直流電圧を1レグあたりの直列素子数で除算した電圧(
図1に示す電力変換装置のリニアレギュレータがクランプする電圧を、1つの半導体素子に代えて直列接続した半導体素子数(
図3の場合は2)で除算した電圧)に対して、若干マージンを入れた数値とすることが好ましい。
上記電力変換装置についても本実施形態の効果、すなわち、低コスト化および小型化を実現する電力変換装置を提供することができる。
【0034】
図4は、第1実施形態の電力変換装置の他の構成例を概略的に示す図である。
図4に示す電力変換装置は、ANPC(アクティブ中性点クランプ)型の電力変換装置であって、
図1示すフライングキャパシタ型の電力変換装置(フライングキャパシタ回路)と直流電源との間に接続された、3レベルの中性点電圧出力回路を備えている。
【0035】
中性点電圧出力回路は、複数の半導体素子S5-S8と、複数の駆動回路GDCと、を備えている。
半導体素子S5、S6は、第1直流電源PS1と並列に接続されている。半導体素子S7、S8は、第2直流電源PS2と並列に接続されている。半導体素子S6、S7は、半導体素子S1-S4と並列に接続されている。
【0036】
中性点電圧出力回路の複数の駆動回路GDCは、複数の半導体素子S5-S8の各々の制御端子に信号を印加する回路である。駆動回路GDCは、制御回路CCにより動作を制御される。
【0037】
駆動回路GDCは、電力変換装置が動作を開始する前において、駆動回路GDCのイネーブル信号は「0」である。この状態では、スリーステートドライバ10の出力はハイインピーダンス状態であり、半導体素子S1-S8はリニアレギュレータとして動作する。半導体素子S1-S8がリニアレギュレータとして動作しているとき、漏れ電流の小さい半導体素子の電圧は所定の電圧でクランプ(固定)され、所定の電圧の状態を維持することができる。
【0038】
なお、フライングキャパシタ回路においてリニアレギュレータ(半導体素子S1-S4)がクランプする所定の電圧は、「フライングキャパシタ回路の1レグに含まれる半導体素子数(
図4に示す例では4)」×「フライングキャパシタ素子(複数の半導体素子S1-S4各々)がクランプする所定の電圧」に対して、若干マージンを入れた数値とすることが好ましい。
【0039】
上記電力変換装置についても本実施形態の効果、すなわち、低コスト化および小型化を実現する電力変換装置を提供することができる。
以上のように,
図2に示す駆動回路GDCを備えた電力変換装置は、回路方式問わず、本実施形態の電力変換装置の効果を得ることができる。
【0040】
次に、第2実施形態の電力変換装置について図面を参照し詳細に説明する。
なお、以下の説明において、上述の第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の電力変換装置は、駆動回路GDCの構成が上述の第1実施形態と異なっている。
【0041】
図5は、第2実施形態の電力変換装置に搭載された駆動回路の一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の電力変換装置は、駆動回路GDCにおけるゲート抵抗器12と第1分圧抵抗器14と第2分圧抵抗器16との配置位置が、上述の第1実施形態の電力変換器と異なっている。
【0042】
スリーステートドライバ10の出力端子と半導体素子S1-S2の制御端子との間において、ゲート抵抗器12は、第1分圧抵抗器14と第2分圧抵抗器16とが電気的に接続している位置よりも、半導体素子S1-S2の制御端子側に配置されている。
【0043】
ゲート抵抗器12の抵抗値は、第1分圧抵抗器14および第2分圧抵抗器16の抵抗値よりも十分小さいため、スリーステートドライバ10の出力端子と半導体素子S1-S2の制御端子との間に配置されていればよく、第1分圧抵抗器14と第2分圧抵抗器16との位置関係は限定されない。
したがって、本実施形態によれば、上述の第1実施形態と同様に、低コスト化および小型化を実現する電力変換装置を提供することができる。
【0044】
なお、上記駆動回路GDCの構成は、他の実施形態の電力変換装置にも適用可能であって、その場合にも上述の第1実施形態と同様の効果を得ることが出来る。また、本実施形態の電力変換装置は、
図1、
図3、および
図4のいずれの構成であっても構わない。
【0045】
次に、第3実施形態の電力変換装置について図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態の電力変換装置は、駆動回路GDCの構成が上述の第1実施形態と異なっている。
図6は、第3実施形態の電力変換装置に搭載された駆動回路の一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の電力変換装置は、駆動回路GDCがツェナーダイオード18を更に備えている点において、上述の第1実施形態の電力変換装置と相違している。
【0046】
ツェナーダイオード18は、第1分圧抵抗器14と高電位側端Pとの間において、第1分圧抵抗器14から高電位側端Pへ向かう方向を順方向として接続されている。駆動回路GDCがツェナーダイオード18を備えることにより、高電位側端Pと半導体素子S1-S4の制御端子との間に印加される電圧を一定電圧にすることができる。このことにより、半導体素子S1-S4の高電位側端Pと低電位側端Nとの間に印加される電圧を一定値にすることが可能であり、半導体素子S1-S4の破壊を回避する等の効果を得ることができる。
したがって、本実施形態によれば、上述の第1実施形態と同様に、低コスト化および小型化を実現する電力変換装置を提供することができる。
【0047】
なお、上記ツェナーダイオード18を備える駆動回路GDCは、他の実施形態の電力変換装置に搭載されても構わない。また、本実施形態の電力変換装置は、
図1、
図3、および
図4のいずれの構成であっても構わない。
【0048】
図7は、第3実施形態の電力変換装置に搭載された駆動回路の他の例を概略的に示す図である。
図7に示す例は、第2実施形態の電力変換装置において、駆動回路GDCがツェナーダイオード18を更に備えたものである。この駆動回路GDCを備えた電力変換装置も、本実施形態の効果を得ることが出来る。
【0049】
次に、第4実施形態の電力変換装置について図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態の電力変換装置は、駆動回路GDCの構成が上述の第1実施形態と異なっている。
図8は、第4実施形態の電力変換装置に搭載された駆動回路の一構成例を概略的に示す図である。
【0050】
駆動回路GDCは、ドライブ回路と、ゲート抵抗器12と、第1分圧抵抗器14と、第2分圧抵抗器16と、を備えている。ドライブ回路は、ドライブ11と、双方向スイッチ19と、を含む。
ドライブ11の入力端子には制御信号(ゲート信号)が入力される。ドライブ11の出力端子は、ゲート抵抗器12を介して双方向スイッチ19の一端に接続されている。
【0051】
双方向スイッチ19の一端はドライブ11の出力端子と電気的に接続され、双方向スイッチ19の他端(ドライブ回路の出力端子)は、第1分圧抵抗器14および第2分圧抵抗器16の接続箇所よりもドライブ11側で、半導体素子S1-S4の制御端子と電気的に接続されている。双方向スイッチ19の動作は、制御回路CCから供給されるイネーブル信号により制御され、ドライブ11の出力端子と半導体素子S1-S4の制御端子との電気的接続状態を切り替える。
本実施形態の電力変換装置は、上記以外の構成は上述の第1実施形態と同様である。
【0052】
制御回路CCから供給されるイネーブル信号が「1」(第1レベル)のとき、双方向スイッチ19がオンされてドライブ11の出力端子と半導体素子S1-S4の制御端子とが電気的に接続される。このことで、ドライブ11の出力が半導体素子S1-S4の制御端子に印加される。
【0053】
制御回路CCから供給されるイネーブル信号が「0」(第2レベル)のとき、双方向スイッチ19がオフされてドライブ11の出力端子と半導体素子S1-S4の制御端子とが電気的に絶縁される。このことにより、半導体素子S1-S4の制御端子はハイインピーダンス状態となる。
【0054】
制御回路CCは、電力変換装置の半導体素子S1-S4がスイッチング動作を開始する前(キャパシタの初期充電時)には、イネーブル信号を「0」(オフ)として、双方向スイッチ19をオフする。制御回路CCは、電力変換装置において初期充電が完了すると、イネーブル信号を「1」(オン)として、双方向スイッチ19をオンする。本実施形態の電力変換装置において、上記のように双方向スイッチ19を動作させることにより、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることが出来る。
したがって、本実施形態によれば、上述の第1実施形態と同様に、低コスト化および小型化を実現する電力変換装置を提供することができる。
【0055】
なお、本実施形態の電力変換装置は、
図1、
図3、および
図4のいずれの構成であっても構わない。また、本実施形態においても、ゲート抵抗器12は、ドライブ11の出力端子と、半導体素子S1-S4の制御端子との間に配置されていればよく、
図8の駆動回路GDCの構成に限定されるものではない。また、駆動回路GDCが、ツェナーダイオード18を備えていても構わない。いずれの場合であっても、上述の効果を得ることができる。
また、本実施形態の説明で用いている半導体素子はスイッチング回路の一例であって、半導体素子に限定されるものではなく、スイッチング機能を有する他の構成であっても構わない。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
10…スリーステートドライバ、11…ドライブ、12…ゲート抵抗器、14…第1分圧抵抗器、16…第2分圧抵抗器、18…ツェナーダイオード、19…双方向スイッチ、E1…交流端、LP、LN…直流リンク、PS、PS1、PS2…直流電源、S1-S8、S11-S42…半導体素子