(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155724
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】汚泥状態表示報知システム、汚泥状態表示報知方法および汚泥状態表示報知プログラム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20231016BHJP
G01N 33/18 20060101ALI20231016BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20231016BHJP
G06T 7/62 20170101ALI20231016BHJP
【FI】
C02F1/00 V
G01N33/18 A
G01N33/18 F
G01N21/17 A
G06T7/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065223
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】間嶋 義喜
(72)【発明者】
【氏名】野田 周平
(72)【発明者】
【氏名】松代 武士
(72)【発明者】
【氏名】助川 寛
【テーマコード(参考)】
2G059
5L096
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB06
2G059CC16
2G059KK04
2G059MM09
2G059MM10
5L096BA18
5L096DA03
5L096DA04
5L096FA34
5L096FA59
5L096FA65
5L096FA68
5L096FA70
(57)【要約】
【課題】 水処理装置の運転条件の最適化を支援する汚泥状態表示報知システムを提供する。
【解決手段】 一実施形態による汚泥状態表示報知システムは、汚泥を撮影した画像を取得可能な入力手段100と、画像中の微細な生物または物質から形成される凝集物を解析する解析装置203と、解析装置203の解析結果から得られる指標値を用いて汚泥状態を判定する判定装置204と、を含む演算手段200と、演算手段200から供給された判定結果に基づいて、視覚的、聴覚的、又は触覚的に、ユーザに汚泥状態を提示する提示手段300、400と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を撮影した画像を取得可能な入力手段と、
前記画像中の微細な生物または物質から形成される凝集物を解析する解析装置と、前記解析装置の解析結果から得られる指標値を用いて汚泥状態を判定する判定装置と、を含む演算手段と、
前記演算手段から供給された判定結果に基づいて、視覚的、聴覚的、又は触覚的に、ユーザに汚泥状態を提示する提示手段と、を備えた汚泥状態表示報知システム。
【請求項2】
前記提示手段は、前記演算手段から供給された前記判定結果を、ユーザが視認可能な態様で提示する表示手段を備えた、請求項1記載の汚泥状態表示報知システム。
【請求項3】
前記表示手段は、前記指標値を時系列に沿って表示するグラフ、時系列に沿って並んだ前記指標値に対応する領域に前記指標値に対応する前記判定結果を表示するヒートマップ、および、複数の前記指標値の相関性を表示する散布図、少なくともいずれかにより、ユーザに前記判定結果を提示する、請求項2記載の汚泥状態表示報知システム。
【請求項4】
前記提示手段は報知手段を備え、
前記判定装置は、前記指標値又は前記判定結果が予め設定された条件を満たすときに、報知指令を出力し、
前記報知手段は、前記報知指令を受信したときに、前記指標値又は前記判定結果が前記条件を満たすものであることを、視覚的、聴覚的、又は触覚的にユーザに提示する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の汚泥状態表示報知システム。
【請求項5】
前記解析装置は、前記凝集物の形状、前記凝集物が持つ構造の緻密性、前記凝集物と水相との境界面の強さ、および、前記凝集物の大きさの少なくともいずれかについての前記指標値を演算する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の汚泥状態表示報知システム。
【請求項6】
汚泥を撮影した画像を取得し、
前記画像中の微細な生物または物質から形成される凝集物を解析し、
解析結果から得られる指標値を用いて汚泥状態を判定し、
判定結果に基づいて、視覚的、聴覚的、又は触覚的に、ユーザに汚泥状態を提示する、汚泥状態表示報知方法。
【請求項7】
コンピュータに、請求項6に記載の方法を実行させる汚泥状態表示報知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、汚泥状態表示報知システム、汚泥状態表示報知方法および汚泥状態表示報知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人々の暮らしや自然環境を支えるために発生する汚水を浄化することは必須であり、下水処理場及び上水処理場を中心に、汚水の浄化が実施されている。汚水を公共用水域に放流可能な処理水へと変化させるためには、各処理場の水処理装置の運転条件を最適化することが求められる。
【0003】
従来、水処理装置の運転条件を最適化するために、汚泥状態および水処理装置の運転条件を評価する様々な提案が成されている。例えば、従来技術では、精度良く汚泥状態を診断するために多様な生物の同定や、制御装置と合わせた評価一覧表を事前に作成することや、フロックの大きさや輝度による凝集性を調査することが提案されている。またこれに加え、水相との境界面の強さや構造の緻密性・形状などとも合わせて評価することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59-148977号公報
【特許文献2】特開平06-31292号公報
【特許文献3】特開平06-34556号公報
【特許文献4】特開2021-47039号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】O. Ronneberger, P. Fischer, T. Brox, U-net: Convolutional networks for biomedical image segmentation, International Conference on Medical image computing and computer-assisted intervention, Springer, 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、良好な良否判定を行うためには、同定する生物の種類数の増加が求められる。また、フロックの水相との境界面の強さや構造の緻密性・形状などの多面的な情報が得られない状況では、フロックの大きさや輝度だけで水処理装置の運転条件の最適化を行わなければならず、水処理装置の運転条件の最適化に必要な情報が不足する可能性があった。
【0007】
さらに、多様なグラフを用いて運転状態をモニタリングする方法について提案されているが、最適化のための情報を管理者に報知する仕組みがなく、管理者が必要な情報を見逃す可能性があった。
【0008】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、管理者による水処理装置の運転条件の最適化を支援する汚泥状態表示報知システム、汚泥状態表示報知方法および汚泥状態表示報知プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態による汚泥状態表示報知システムは、汚泥を撮影した画像を取得可能な入力手段と、前記画像中の微細な生物または物質から形成される凝集物を解析する解析装置と、前記解析装置の解析結果から得られる指標値を用いて汚泥状態を判定する判定装置と、を含む演算手段と、前記演算手段から供給された判定結果に基づいて、視覚的、聴覚的、又は触覚的に、ユーザに汚泥状態を提示する提示手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態の汚泥状態表示報知システムの一構成例を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、凝集物の大きさ(円相当径)における汚泥状態を判定する閾値の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に一つの指標値を提示する態様の一例を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に一つの指標値を提示する態様の他の例を概略的に示す図である。
【
図5】
図5は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に一つの指標値を提示する態様の他の例を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に複数の指標値を提示する態様の一例を概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に複数の指標値の関係性を提示する態様の一例を概略的に示す図である。
【
図8】
図8は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に複数の指標値の関係性を提示する態様の他の例を概略的に示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の汚泥情報表示報知方法の一例を概略的に示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、第2実施形態の汚泥状態表示報知システムの一構成例を概略的に示す図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の汚泥情報表示報知方法の一例を概略的に示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第3実施形態の汚泥状態表示報知システムの一構成例を概略的に示す図である。
【
図13】
図13は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に報知指令を提示する態様の一例を概略的に示す図である。
【
図14】
図14は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に報知指令を提示する態様の他の例を概略的に示す図である。
【
図15】
図15は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に報知指令を提示する態様の他の例を概略的に示す図である。
【
図16】
図16は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に複数の指標値を提示する態様の一例を概略的に示す図である。
【
図17】
図17は、第3実施形態の汚泥情報表示報知方法の一例を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の汚泥状態表示報知システム、汚泥状態表示報知方法および汚泥状態表示報知プログラムについて、図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態の汚泥状態表示報知システムの一構成例を概略的に示す図である。
【0012】
本実施形態の汚泥状態表示報知システムは、曝気槽などの水処理装置内に含まれる汚泥状態を撮影した情報(汚泥情報)を解析することによって得られる指標値を、管理者(ユーザ)が解釈可能な態様で表示するシステムである。
本実施形態の汚泥状態表示報知システムは、入力手段100と、演算手段200と、表示手段300と、を備えている。入力手段100と、演算手段200と、表示手段300とは、ハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェアにより実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせにより実現されてもよい。また、汚泥状態表示報知システムは、複数のコンピュータにより構成されてもよく、単一のコンピュータであっても構わない。
【0013】
入力手段100は、撮影された汚泥の情報を取得する。すなわち、入力手段100は、撮影装置を含んでいる必要はなく、撮影装置や記録媒体から供給された画像(静止画像)や映像(動画像)を取得可能に構成されていればよい。入力手段100が撮影装置を含まないことにより、本実施形態の汚泥状態表示報知システムは、撮影装置の機能に限定されずに様々な態様の汚泥の情報を取得することが可能である。
【0014】
入力手段100で取得される画像情報は、例えば、浮動小数点または整数などの固定小数点方式の値が多次元に格納をされた配列の情報である。例えば、8bitの整数で輝度値を表現した多次元配列であれば、入力された画像情報はグレースケールの画像または映像である。例えば、8bitの整数でRGB値を表現した多次元配列であれば、入力された画像情報はRGBカラーモデルを持つ画像または映像である。なお、画像情報は、画像が撮影された日時や、撮影された場所やなどの情報を含んでいてもよい。
【0015】
なお、入力手段100は、取得した画像や映像を加工する手段を備えていてもよい。入力手段100において画像や映像を統一した形式に加工することにより、演算手段200は共通の形式の画像や映像を解析することができる。
【0016】
演算手段200は、入力された画像情報を解析することで指標値を算出し、指標値を用いて汚泥状態を判定した判定結果を表示手段300に伝達する。演算手段200は、記録装置201と、読込装置202と、解析装置203と、判定装置204と、を備えている。
【0017】
記録装置201は、解析装置203による解析結果を記録可能である。記録装置201は、解析結果を記憶媒体等に保存しても良い。また、記録装置201は、入力手段100から入力された画像情報を取得して、記録媒体等に保存しても良い。記憶媒体とは、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)、SDカード等の不揮発性の記憶媒体、及びRAM(Random Access Memory)、レジスタ等の揮発性の記憶媒体などを用いることができる。
【0018】
記憶媒体は、演算手段200に含まれていてもよく、演算手段200の外部において演算手段200と通信可能に接続されてもよい。後者の場合には、記憶媒体と演算手段200とが通信手段を含み、インターネットやイーサネット(登録商標)等のネットワーク(無線と有線とのいずれでもよい)を介して接続され得る。また、記憶媒体は、一部が演算手段200に含まれ、他の部分が外部に接続されてもよい。
【0019】
読込装置202は、解析装置203からの要求にしたがって、記憶媒体に記録された情報を読み出すことができる。読込装置202は、読み出した情報を解析装置203に供給する。
解析装置203は、入力手段100から得られた画像情報を解析できる。また、解析装置203は、これまで記憶媒体に記録してきた画像情報や過去の解析結果を読み出して画像情報を解析できる。また、解析装置203は、入力手段100から得た最新の画像情報と読み出された他の画像情報および過去の解析結果等とを統合した上で、画像情報の解析を行うこともできる。
【0020】
例えば、解析装置203は、ソフトウェアにより、入力手段100および読込装置202から得られる情報を解析することができる。解析装置203で実行されるプログラムは、記録媒体に記録され得る。記録装置201や読込装置202は、記憶媒体への記録や読込を実現するハードウェアまたはソフトウェアによって実現され得る。
【0021】
解析装置203の解析対象は、入力された画像情報に含まれる汚泥である。解析装置203は、例えば、入力情報の画像(静止画像又は動画像)に対し、設定されたしきい値による二値化や適応的二値化、大津の二値化、または深層学習や機械学習を用いた二値化やピクセル単位でのクラス分類によって検出するSemantic Segmentation、矩形によって検出する物体検出などによって、汚泥(特に微細な生物または物質から形成される凝集物(フロック))の領域を特定することができる。Semantic Segmentationは、例えば複数の畳み込み層、活性化関数、Batch Normalization層、Pooling層を用いたU-Netモデル(例えば非特許文献1)やこれをベースに拡張されたモデルを用いてもよい。
【0022】
解析装置203は、特定された凝集物の領域から汚泥情報を解析(凝集物の形状、構造の緻密性、水相との境界面の強さ、または大きさなどの算出)をした後、グラフで表示可能な指標値に変換する。
【0023】
解析装置203において、汚泥を解析することによって得られる数値化された指標値は、凝集物の形状、構造の緻密性、水相との境界面の強さ、大きさ、濃度、直径、半径、面積、輪郭の長さ、ピクセル数、エッジ量、個数(例えば画像に含まれる凝集物の個数)、割合(例えば画像全体の面積に対する凝集物の領域の面積の割合や、画像全体の凝集物の個数に対する所定の大きさの凝集物の割合等)、それぞれの指標値の前日比、基本統計量(平均値、中央値、最頻値、分散、標準偏差など)などである。このとき時系列によって各指標値の推移を確認できるように、日時も指標値に含んでよい。その場合、汚泥を解析する際に解析した日時も取得しておいてもよい。なお、エッジ量は、例えば対象画像にエッジ抽出フィルタを適用した結果の値の積分値であって、凝集物の輪郭線の強度を示す数値である。
【0024】
凝集物の形状とは、凝集物の滑らかさを表す指標であり、例えば次のような式で表現される。
【数1】
凝集物の円相当の周囲の長さとは、凝集物の面積と同じ面積となる真円の周囲の長さである。解析装置203は、まず画像解析によって凝集物の面積を算出し、その面積から真円を仮定した場合の直径(円相当径)を算出する。解析装置203は、算出した円相当径を用いて真円の周囲の長さ(円周)を求めることで、凝集物の円相当の周囲の長さを算出する。
【0025】
上記より、凝集物の滑らかさが1.0に近いほど、凝集物の形状が滑らかであり、凝集物の滑らかさが1.0より大きな値であるほど、凝集物はとげ状やひも状などの不規則な形状を持つとすることができる。
【0026】
上記指標の他にも、凝集物の形状の滑らかさや形状の特徴などを表すために、円形度、周囲長包絡度、面積包絡度、真円度、アスペクト比、離心率、エクステントなどを用いても良い。
【0027】
円形度とは、例えば次のような式で表現される。形状が複雑になるほど、円形度は小さい値となる。
【数2】
【0028】
周囲長包絡度とは、例えば次のような式で表現される。凝集物の凸包の長さとは、凝集物の形状を表す点群の一部を包含する最小の凸多角形の周囲の長さである。円形度と同じく、形状が複雑になるほど、周囲長包絡度は低い値となる。
【数3】
【0029】
面積包絡度とは、例えば次のような式で表現される。円形度と同じく、形状が複雑になるほど、低い値となる。
【数4】
【0030】
真円度とは、例えば次のような式で表現される。円形度と同じく、形状が複雑になるほど、真円度は低い値となる。
【数5】
【0031】
アスペクト比とは、例えば次のような式で表現される。正方形と類似した形状を持つ凝集物ほど、アスペクト比が高い値となる。
【数6】
【0032】
離心率とは、例えば次のような式で表現される。凝集物が真円に近い形状をもつほど、離心率が低い値となる。
【数7】
【0033】
エクステント(Extent)とは、次のような式で表現される。矩形と類似した形状を持つ凝集物ほど、エクステントが高い値となる。
【数8】
【0034】
構造の緻密性とは、凝集物の固着度合い(密度)を表す指標であり、例えば画像上における凝集物の領域内の平均輝度値を算出することで表現される。この場合、解析装置203は、例えば画像解析により画像における凝集物の領域を特定し、特定した領域に含まれるピクセルにおける画像の輝度平均値を算出する。凝集物の領域の平均輝度値が高いほど密度は小さく、平均輝度値が低いほど密度は大きいとされる。
【0035】
なお、解析装置203は、凝集物の周囲の領域における画像の平均輝度値をもとに、凝集物の領域における画像の平均輝度値を正規化し、凝集物の領域の平均輝度値に対応する構造の緻密性の数値を算出しても良い。例えば、凝集物の周囲の領域における画像の平均輝度値を構造の緻密性がゼロに対応する値とし、凝集物の領域の平均輝度値と凝集物の周囲の領域の平均輝度値から差分を求め、その値を構造の緻密性を表す数値としてもよい。上記のように正規化した値を指標値とすることにより、例えば画像の撮影環境により指標値がバラつくことを回避することができ、汚泥状態の判定の精度が低下することがなくなる。
【0036】
凝集物の水相との境界面の強さとは、凝集物の崩れにくさを表す指標であり、例えば凝集物の輪郭領域(例えば凝集物と特定された領域を囲むラインを含む所定の幅の部分)の平均輝度値によって表現される。解析装置203は、凝集物の領域の平均輝度値を算出する場合と同様に、凝集物の輪郭領域の平均輝度値を算出することができる。凝集物の輪郭領域の平均輝度値が高いほど、水相と凝集物との境界面は明瞭であり、凝集物の輪郭領域の平均輝度値が低いほど、水相と凝集物との境界面が曖昧であって水が凝集物内部に入り込みやすいとされる。
【0037】
凝集物の大きさとは、例えば凝集物の最大フェレー径や円相当径などの長さで表現される指標である。凝集物の最大フェレー径とは、凝集物の外接矩形を取ったときの長径の長さのことである。したがって、最大フェレー径や円相当径が長いほど大きな凝集物であり、短いほど小さい凝集物であるとされる。
【0038】
判定装置204は、解析装置203の解析結果を取得し、最新の指標値、若しくは、最新の指標値および過去の指標値から汚泥状態を判定する。判定装置204は、例えば、指標値に対して設定された閾値を用いて、汚泥状態を判定することができる。判定装置204で用いられる閾値は、事前に管理者が設定した値であっても、過去の指標値およびその他のパラメータを用いて学習(深層学習や機械学習)された値であってもよい。いずれの場合であっても、判定装置204は、一つの指標値だけでなく複数の指標値を考慮して、動的に閾値を変更してもよい。また、判定装置204は、解析装置203の解析結果が、予め設定された条件を満たすか否かにより汚泥状態を判定してもよい。
【0039】
図2は、凝集物の大きさ(円相当径)における汚泥状態を判定する閾値の一例を示す図である。
この例では、凝集物の大きさ(円相当径)[μm]の指標値に対して閾値を設けて、汚泥状態が「正常」と判定される範囲(1.5未満)と、「注意」と判定される範囲(1.5以上2.0未満)と、「異常」と判定される範囲(2.0以上)とが設定されている。
【0040】
なお、判定結果(状態ラベル)が「正常」であるときは、例えば、汚泥状態が良好であり、施設の運転条件を見直す必要がないときである。判定結果が「注意」であるときは、例えば、汚泥状態が悪くなる兆候があり、汚泥状態の更なる悪化に備えて運転条件の見直しを行うことが望ましいときである。判定結果が「異常」であるときとは、例えば、汚泥状態が悪いために、直ちに施設の運転条件を見直す必要があるときである。
【0041】
判定装置204は、判定結果(状態ラベル)と指標値とを表示手段300へ出力する。このとき、判定装置204は、判定結果と指標値とを識別する識別情報を合わせて出力してもよい。識別情報は、指標名称、画像が撮影された日付、画像が撮影された場所、撮影したカメラの設置位置などを含み得る。
【0042】
表示手段300は、算出された指標値と判定結果とを予め設定された表示方法(グラフなど)に従い、端末を通して、管理者が視認可能な態様で提示する提示手段である。なお、指標値は、加工せずに(数値として)表示されてもよく、グラフ等の図として表示されてもよい。管理者は、表示手段300に提示された情報から、汚泥状態を定量的に把握することができる。
【0043】
表示手段300によって指標値および判定結果が提示される端末は、例えば、ディスプレイ(液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、電光掲示板など)やプロジェクタ、スマートウォッチ、スマートフォン、タブレット端末など、指標値および判定結果を視覚情報として管理者に提示可能な端末であり得る。
【0044】
表示手段300は、マウスや、キーボードや、タッチパネル等の入力手段を備えていてもよい。管理者は、入力手段を用いて、表示される指標値の種類や、表示態様の種類を切り替える操作を行うことが可能である。表示手段300は、管理者の操作に応じて、提示する指標値の種類や、表示態様の種類を切り替えることが可能であって、演算手段200から表示の切り替えに必要な指標値および指標値の判断結果を取得することができる。
【0045】
図3は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に一つの指標値を提示する態様の一例を概略的に示す図である。
この例は、所定の大きさ(例えば所定のしきい値よりも小さい)の凝集物の個数を時系列にて折れ線グラフで表示したものであって、グラフの縦軸は所定の大きさの凝集物の個数と汚泥状態とを表し、横軸は指標値に対応する日時を表している。
【0046】
汚泥状態を判断するためのしきい値は、例えば、管理者が予め汚泥情報表示報知システムにおいて設定した値を採用してもよく、汚泥情報表示報知システムにおいて過去の指標値と汚泥状態との関係等から学習された値を採用してもよい。本実施形態では、汚泥状態を判断するしきい値は、一例として100個未満であれば汚泥状態は「正常」、100個以上かつ500個未満であれば「注意」、500個以上であれば「異常」、としている。
【0047】
管理者は、このグラフからある日時における所定の大きさ(例えば所定の閾値以下の大きさの)凝集物の量や汚泥状態を確認することができる。また、この例では、指標値を時系列で表示しているため、管理者は、凝集物の量等の汚泥状態の指標値の推移を確認することができる。また、管理者は、グラフから現在あるいはこれまでの汚泥状態を定量的に把握することが可能となり、水処理装置の運転条件を変更するための検討材料を得ることができる。
【0048】
図4は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に一つの指標値を提示する態様の他の例を概略的に示す図である。
この例は、
図3に示した指標値を他のグラフで表示して物であって、所定の大きさの凝集物の個数を時系列にて棒グラフで表示したものである。管理者に提示されるグラフの種類は限定されるものではなく、指標値を時系列で表示するグラフであれば、
図3の例と同様の効果を得ることができる。グラフの種類は、例えば、折れ線グラフや棒グラフの他、に積み上げ棒グラフ、面グラフ、積み上げ面グラフ、株価チャート、ヒストグラム、箱ひげ図、ウォーターフォールなどのグラフを用いることができる。
【0049】
図5は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に一つの指標値を提示する態様の他の例を概略的に示す図である。
この例は、所定の大きさ(例えば所定のしきい値よりも小さい)の凝集物の個数の前日比を指標値として、指標値を時系列で表示した折れ線グラフの一例である。管理者に提示される指標値の種類についても、凝集物の大きさや凝集物の個数の前日比に限定されるものではなく、先に説明した様々な指標値を時系列で表示することが可能である。
【0050】
図6は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に複数の指標値を提示する態様の一例を概略的に示す図である。
この例は、複数の指標値や指標値に対応する汚泥状態の一覧を管理者に提示するヒートマップ(時系列に沿って並んだ指標値に対応する領域に、対応する判定結果を提示するマップ)である。ヒートマップの縦軸は指標値に対応する日付を表し、横軸は複数の指標を表している。
図6のヒートマップには、例えば、凝集物(小)の個数、凝集物(中)の個数、凝集物(大)の個数について、8/1、8/8、8/15…の日付における汚泥状態が示されている。ヒートマップでは、指標値に対応する汚泥状態を一目で区別可能となるように、例えば、それぞれ対応する領域を「正常」「注意」「異常」それぞれに対応する色で表示してもよく、数値や文字により汚泥状態を表示してもよく、数値や文字を表示する色を汚泥状態それぞれで区別してもよい。
図6に示す例では、各日付に対応する凝集物の大きさの領域に汚泥状態を文字で表示しているが、文字での表示は必須ではなく、省略されても構わない。
【0051】
このグラフから、管理者は、ある日時における複数の指標値に対応する汚泥状態や複数の指標値の数値を一目で確認することができる。また、管理者は、ある指標値の時系列の変化をヒートマップから確認することもできる。また日時を特定の期間に絞った場合、その期間における汚泥状態や指標値を確認することができる。なお、ヒートマップに表示する複数の指標値は予め設定されていてもよく、管理者が入力手段を操作して適宜設定できるように構成されていてもよい。
【0052】
図7は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に複数の指標値の関係性を提示する態様の一例を概略的に示す図である。
図8は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に複数の指標値の関係性を提示する態様の他の例を概略的に示す図である。
図7および
図8の例は、ある時点における水処理装置の状態を確認するために、指標値同士の関係性(相関性)を提示した散布図の一例である。ここでは、横軸を凝集物の大きさとし、縦軸を凝集物の滑らかさとして、汚泥状態が「正常」、「注意」、「異常」であるときのこれら2つの指標の関係性を示している。
【0053】
図7に示す例では、汚泥状態が「異常」であるときには、凝集物の大きさが小さく、凝集物の形状の滑らかさが不規則である傾向が示されている。また、
図8に示す例では、汚泥状態が「正常」であるときには、凝集物の大きさが大きく、凝集物の形状の滑らかさが滑らかである傾向が示されている。これらの図から、管理者は、大きく形状が滑らかな凝集物ほど、水処理装置の運転において好ましい結果となることが確認できる。また管理者は、現在の水処理装置の状態についても確認することができる。なお、視認性の観点から、グラフ内の各領域に汚泥状態を文字で表示する必要はない。
【0054】
図9は、第1実施形態の汚泥情報表示報知方法の一例を概略的に示すフローチャートである。
先ず、入力手段100は、撮影された汚泥情報を取得する(ステップSA1)。入力手段100は、取得した汚泥情報を演算手段200に供給する。
演算手段200は、入力手段100から供給された汚泥情報を解析して指標値を得る(ステップSA2)。
【0055】
次に、管理者が指標値を記録しておくことを予め設定していたときには(ステップSA3)、演算手段200は、得られた指標値を記録装置201に記録する(ステップSA4)。
続いて、管理者が過去の指標値を読み込むことを予め設定していたときには(ステップSA5)、演算手段200は、読込装置202により記録装置201に記録された過去の指標値を読み出し(ステップSA6)、最新の指標値と過去の指標値とを統合する(ステップSA7)。
【0056】
この場合、演算手段200は、統合された指標値から属する汚泥状態を判定し、汚泥状態を表す状態ラベルを取得する。
【0057】
上記ステップSA3およびステップSA5において、管理者が指標値を記録しておくこと、および、過去の指標値を読み込むことを設定していないときには、演算手段200は、最新の指標値から属する汚泥状態を判定し、汚泥状態を表す状態ラベルを取得する(ステップSA8)。
【0058】
演算手段200は、取得した汚泥状態を表す状態ラベルを少なくとも表示手段300へ出力する。表示手段300は、演算手段200から取得した状態ラベルを端末に表示して管理者に提示する(ステップSA9)。
【0059】
管理者は、上記手順により端末に表示された状態ラベル、および、状態ラベルと合わせて表示され得る指標値に基づいて、汚泥状態を把握し、水処理装置の運転条件の最適化を行うことができる。すなわち、本実施形態の汚泥状態表示報知システム、汚泥状態表示報知方法および汚泥状態表示報知プログラムによれば、水処理装置の運転条件最適化に向けて有益な情報を管理者が解釈可能な態様で提供することが可能となり、管理者による水処理装置の運転条件の最適化を支援することができる。
【0060】
次に、第2実施形態の汚泥状態表示報知システム、汚泥状態表示報知方法および汚泥状態表示報知プログラムについて図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明において、上述の第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
図10は、第2実施形態の汚泥状態表示報知システムの一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の汚泥状態表示報知システムは、入力手段100と、演算手段200と、報知手段400と、を備えている。
【0062】
本実施形態では、演算手段200の判定装置204は、解析装置203の解析結果から得られた指標値が予め設定されたしきい値を超えたとき、若しくは、解析結果又は判定結果が予め設定された条件を満たすときに、報知手段400に報知指令を送信する。判定装置204から報知手段400への報知指令は、例えば、解析結果から得られた指標値や、判定結果を含み得る。
【0063】
なお、判定装置204から報知手段400へ送信される報知指令により、予め設定された汚泥状態(判定結果)や指標値の複数の条件を区別可能であってもよい。例えば、設定された汚泥状態の条件毎に異なるフラグを設定し、報知指令に含まれるフラグによりいずれの条件が満たされた区別できるようにしてもよい。
【0064】
例えば、凝集物の大きさが予め設定されたしきい値を超えたときや、凝集物の大きさが所定の条件を満たす解析結果が得られたとき、判定装置204は汚泥状態が異常であると判定することが可能である。このとき、判定装置204は、解析結果から得られた指標値や判定結果を含む報知指令を、報知手段400へ送信する。なお、判定装置204には複数の管理者により、予め汚泥状態の条件を設定され得、判定装置204は、それぞれの管理者に対応する条件が満たされたときに対応する報知手段400へ報知指令を送信することができる。
【0065】
報知手段400は、解析結果から得られた指標値やその判定結果が、予め設定された条件を満たすものであることを、視覚的、聴覚的、又は触覚的に、管理者へ提示する提示手段である。
【0066】
報知手段400は、演算手段200から報知指令を受けると、汚泥状態(判定結果)や指標値が予め設定された条件を満たしていることを管理者に報知する。報知手段400は、例えば、振動発生器や、スピーカや、光源などの手段を含み、報知手段400そのものの振動(バイブレーション)やアラート音、音声、ランプの点灯などにより、汚泥状態(判定結果)や指標値が予め設定された条件を満たしていることを管理者へ報知することができる。また、報知手段400は、例えば、振動発生器や、スピーカや、光源などの手段を含む他の通信端末に、振動(バイブレーション)やアラート音、音声、光源の点灯などにより、汚泥状態(判定結果)や指標値が予め設定された条件を満たしていることを管理者へ報知させてもよい。
【0067】
なお、報知指令に汚泥状態に設定した条件を区別するフラグが含まれているときには、報知手段400は、フラグに応じて、管理者に報知する手段を変更してもよい。例えば、報知手段400は、報知指令に含まれるフラグに応じて、振動発生器の振動周期を変更してもよく、スピーカからのアラート音や音声の種類を変更してもよく、点灯させる光源の色や光源の点灯と消灯との周期などを変更してもよい。
【0068】
報知手段400によって汚泥状態に関する報知が成される端末は、管理者が携帯可能な通信端末であることが望ましく、例えば、スマートウォッチ、スマートフォン、タブレット端末など、触覚情報、聴覚情報、視覚情報、若しくはこれらの組み合わせにより、汚泥状態に関する通知を管理者に提示可能な端末であり得る。報知手段400は、当該端末に含まれていてもよく、当該端末と通信可能である当該端末とは別の通信端末に含まれていてもよい。例えば、報知手段400は管理者が携帯するスマートフォンが備えるアプリケーションであってもよく、当該スマートフォンと通信可能なスマートウォッチにより管理者に対して汚泥状態に関する報知が成されてもよい。
【0069】
管理者は、多様な指標値を常に監視することが難しい。しかしながら、管理者がモニタ画面で汚泥状態を確認できない状況であっても、直ちに水処理装置の運転条件を見直す必要があるときには、管理者が汚泥状態の状況を把握して対応することが望ましい。
【0070】
上記本実施形態の汚泥状態表示報知システムによれば、管理者は、指標値を提示するモニタなどを監視できない状況においても、予め設定された条件を満たす汚泥状態(判定結果)や指標値である旨を、報知手段400の報知によって知ることが可能となる。これにより、管理者は、報知手段400から報知されたときに、直ちに水処理装置の運転状態を確認し、最適な運転状態とするための対応をとることができる。
【0071】
図11は、第2実施形態の汚泥情報表示報知方法の一例を概略的に示すフローチャートである。
先ず、入力手段100は、撮影された汚泥情報を取得する(ステップSB1)。入力手段100は、取得した汚泥情報を演算手段200に供給する。
【0072】
演算手段200は、入力手段100から供給された汚泥情報を解析して指標値を得る(ステップSB2)。
次に、管理者が指標値を記録しておくことを予め設定していたときには(ステップSB3)、演算手段200は、得られた指標値を記録装置201に記録する(ステップSB4)。
【0073】
続いて、管理者が過去の指標値を読み込むことを予め設定していたときには(ステップSB5)、演算手段200は、読込装置202により記録装置201に記録された過去の指標値を読み出し(ステップSB6)、最新の指標値と過去の指標値とを統合する(ステップSB7)。
【0074】
この場合、演算手段200は、統合された指標値から属する汚泥状態を判定し、汚泥状態を表す状態ラベルを取得する。
上記ステップSA3およびステップSA5において、管理者が指標値を記録しておくこと、および、過去の指標値を読み込むことを設定していないときには、演算手段200は、最新の指標値から属する汚泥状態を判定し、汚泥状態を表す状態ラベルを取得する(ステップSB8)。
【0075】
演算手段200は、指標値が予め設定されたしきい値を超えたとき、若しくは、汚泥状態又は指標値が予め設定された条件を満たすときに(ステップSB9)、報知手段400へ報知指令を出力する。
【0076】
報知手段400は、演算手段200から報知指令を受けると、管理者の携帯端末等により、汚泥状態(判定結果)や指標値が予め設定された所定の条件を満たしている旨の報知を行う(ステップSB10)。
【0077】
管理者は、上記手順により報知を受けると、直ちに汚泥状態を把握し、水処理装置の運転条件の最適化を行うことができる。
上記のように、本実施形態の汚泥状態表示報知システム、汚泥状態表示報知方法および汚泥状態表示報知プログラムによれば、水処理装置の運転条件最適化に向けて有益な情報を管理者が解釈可能な態様で提供することが可能となり、管理者による水処理装置の運転条件の最適化を支援することができる。
【0078】
次に、第3実施形態の汚泥状態表示報知システム、汚泥状態表示報知方法および汚泥状態表示報知プログラムについて図面を参照して詳細に説明する。
図12は、第3実施形態の汚泥状態表示報知システムの一構成例を概略的に示す図である。
【0079】
本実施形態の汚泥状態表示報知システムは、入力手段100と、演算手段200と、表示手段300と、報知手段400と、を備えている。
すなわち、本実施形態の汚泥状態表示報知システムは、第1実施形態の汚泥状態表示報知システムと、第2実施形態の汚泥状態表示報知システムの報知手段400とを組み合わせた構成である。
【0080】
本実施形態では、演算手段200の判定装置204は、解析装置203の解析結果から得られる指標値と、判定結果(状態ラベル)とを表示手段300へ出力する。
また、判定装置204は、解析装置203の解析結果から得られた指標値が予め設定されたしきい値を超えたとき、若しくは、解析結果による汚泥状態(判定結果)や指標値が予め設定された条件を満たすときに、報知手段400に報知指令を送信する。判定装置204から報知手段400への報知指令は、例えば、解析結果から得られた指標値や、判定結果を含み得る。
【0081】
表示手段300および報知手段400は、共通の端末に搭載され得る。表示手段300および報知手段400が搭載される端末は、例えば、ディスプレイ(液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、電光掲示板など)やプロジェクタ、スマートウォッチ、スマートフォン、タブレット端末など、指標値および判定結果を視覚情報として管理者に提示可能な端末であり得る。
【0082】
表示手段300は、算出された指標値と判定結果とを予め設定された表示方法(グラフなど)に従い端末を通して管理者に提示することができる。なお、指標値は、加工せずに(数値として)表示されてもよく、グラフ等の図として表示されてもよい。管理者は、表示手段300に提示された情報から、汚泥状態を定量的に把握することができる。
【0083】
管理者は、マウスや、キーボードや、タッチパネル等の入力手段を用いて、表示される指標値の種類や、表示態様の種類を切り替える操作を行うことが可能である。表示手段300は、管理者の操作に応じて、提示する指標値の種類や、表示態様の種類を切り替えることが可能であって、演算手段200から表示の切り替えに必要な指標値および指標値の判断結果を取得することができる。
【0084】
報知手段400は、演算手段200から報知指令を受けると、汚泥状態(判定結果)や指標値が予め設定された条件を満たしていることを管理者に報知する。報知手段400は、例えば、振動発生器や、スピーカや、光源などの手段を含み、報知手段400そのものの振動(バイブレーション)やアラート音、音声、ランプの点灯などにより、汚泥状態(判定結果)や指標値が予め設定された条件を満たしていることを管理者へ報知することができる。また、報知手段400は、例えば、振動発生器や、スピーカや、光源などの手段を含む他の通信端末に、振動(バイブレーション)やアラート音、音声、光源の点灯などにより、汚泥状態(判定結果)や指標値が予め設定された条件を満たしていることを管理者へ報知させてもよい。
また、報知手段400は、表示手段300により提示された指標値や判定結果を用いて、予め設定された条件が満たされていることを管理者に報知してもよい。
【0085】
図13は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に報知指令を提示する態様の一例を概略的に示す図である。
この例は、表示手段300により、所定の大きさ(例えば所定のしきい値よりも小さい)の凝集物の個数を時系列にて折れ線グラフで表示したものであって、グラフの縦軸は所定の大きさの凝集物の個数と汚泥状態とを表し、横軸は指標値に対応する日時(日付)を表している。本実施形態では、汚泥状態を判断するしきい値は、一例として100個未満であれば汚泥状態は「正常」、100個以上かつ500個未満であれば「注意」、500個以上であれば「異常」、としている。
【0086】
また、この例では、報知手段400により、汚泥状態が「異常」と判定された指標値のプロット近傍に、「警告」との文字が表示され、さらにその文字が振動するように表示されている。
管理者は、このグラフからある日時における所定の大きさ(例えば所定の閾値以下の大きさの)凝集物の量や汚泥状態を確認することができる。また、この例では、指標値を時系列で表示しているため、管理者は、凝集物の量等の汚泥状態の指標値の推移を確認することができる。また、管理者は、グラフから現在あるいはこれまでの汚泥状態を定量的に把握することが可能となり、水処理装置の運転条件を変更するための検討材料を得ることができる。更に、管理者は、グラフにおいて、予め設定された条件を満たす指標値を確認することが可能であり、緊急性があると判断したときには直ちに水処理装置の運転条件を見直すことが可能となる。
【0087】
図14は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に報知指令を提示する態様の他の例を概略的に示す図である。
この例は、
図13に示した指標値を他のグラフで表示して物であって、所定の大きさの凝集物の個数を時系列にて棒グラフで表示したものである。この例でも、報知手段400により、汚泥状態が「異常」と判定された指標値の棒グラフ近傍に、「警告」との文字が表示され、さらにその文字が振動するように表示されている。管理者に提示されるグラフの種類は限定されるものではなく、指標値を時系列で表示するグラフであれば、
図3の例と同様の効果を得ることができる。グラフの種類は、例えば、折れ線グラフや棒グラフの他、に積み上げ棒グラフ、面グラフ、積み上げ面グラフ、株価チャート、ヒストグラム、箱ひげ図、ウォーターフォールなどのグラフを用いることができる。
【0088】
図15は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に報知指令を提示する態様の他の例を概略的に示す図である。
この例は、所定の大きさ(例えば所定のしきい値よりも小さい)の凝集物の個数の前日比を指標値として、指標値を時系列で表示した折れ線グラフの一例である。この例でも、報知手段400により、汚泥状態が「異常」と判定された指標値のプロット近傍に、「警告」との文字が表示され、さらにその文字が振動するように表示されている。管理者に提示される指標値の種類についても、凝集物の大きさや凝集物の個数の前日比に限定されるものではなく、先に説明した様々な指標値を時系列で表示することが可能である。
【0089】
図16は、一実施形態の汚泥情報表示報知システムにおいて、管理者に複数の指標値を提示する態様の一例を概略的に示す図である。
この例は、複数の指標値や指標値に対応する汚泥状態の一覧を管理者に提示するヒートマップである。ヒートマップの縦軸は指標値に対応する日付を表し、横軸は複数の指標を表している。
図16のヒートマップには、例えば、凝集物(小)の個数、凝集物(中)の個数、凝集物(大)の個数について、8/1、8/8、8/15…の日付における汚泥状態が示されている。ヒートマップでは、指標値に対応する汚泥状態を一目で区別可能となるように、例えば、それぞれ対応する領域を「正常」「注意」「異常」それぞれに対応する色で表示してもよく、数値や文字により汚泥状態を表示してもよく、数値や文字を表示する色を汚泥状態それぞれで区別してもよい。
【0090】
また、この例でも、報知手段400により、汚泥状態が「異常」と判定された指標値の棒グラフ近傍に、「警告」との文字が表示され、さらにその文字が振動するように表示されている。
管理者は、これらのグラフにおいて、予め設定された条件を満たす指標値を確認することが可能であり、緊急性があると判断したときには直ちに水処理装置の運転条件を見直すことが可能となる。
【0091】
なお、報知指令に汚泥状態に設定した条件を区別するフラグが含まれているときには、報知手段400は、フラグに応じて、管理者に報知する手段を変更してもよい。例えば、報知手段400は、報知指令に含まれるフラグに応じて、振動発生器の振動周期を変更してもよく、スピーカからのアラート音や音声の種類を変更してもよく、点灯させる光源の色や光源の点灯と消灯との周期などを変更してもよく、表示を振動させる周期やリズムを変更してもよく、文字等を表示する色や書体を変更してもよく、文字等を表示させたり消去したりする周期を変更してもよい。
【0092】
また、上記
図13乃至
図16に示した例では、いずれも「警告」との文字を表示し、さらに文字が揺れるように動くことにより、管理者へ報知を行っているが、視覚による報知は上記手段に限定されるものではない。文字ではなく記号を表示させてもよく、文字や記号が点滅するような表示が成されてもよく、グラフの背景の色や輝度を変更させたり、グラフのプロットや棒グラフやヒートマップの該当領域自体が点滅したり、他のプロットや棒グラフや領域と異なる色で表示されたりしてもよい。
【0093】
図17は、第3実施形態の汚泥情報表示報知方法の一例を概略的に示すフローチャートである。
先ず、入力手段100は、撮影された汚泥情報を取得する(ステップSC1)。入力手段100は、取得した汚泥情報を演算手段200に供給する。
【0094】
演算手段200は、入力手段100から供給された汚泥情報を解析して指標値を得る(ステップSC2)。
次に、管理者が指標値を記録しておくことを予め設定していたときには(ステップSC3)、演算手段200は、得られた指標値を記録装置201に記録する(ステップSC4)。
【0095】
続いて、管理者が過去の指標値を読み込むことを予め設定していたときには(ステップSC5)、演算手段200は、読込装置202により記録装置201に記録された過去の指標値を読み出し(ステップSC6)、最新の指標値と過去の指標値とを統合する(ステップSC7)。
この場合、演算手段200は、統合された指標値から属する汚泥状態を判定し、汚泥状態を表す状態ラベルを取得する。
【0096】
上記ステップSC3およびステップSC5において、管理者が指標値を記録しておくこと、および、過去の指標値を読み込むことを設定していないときには、演算手段200は、最新の指標値から属する汚泥状態を判定し、汚泥状態を表す状態ラベルを取得する(ステップSC8)。
演算手段200は、取得した汚泥状態を表す状態ラベルと指標値との少なくともいずれかを表示手段300へ出力する。表示手段300は、演算手段200から取得した指標値と状態ラベルとの少なくともいずれかを端末に表示して管理者に提示する(ステップSC9)。
【0097】
演算手段200は、指標値が予め設定されたしきい値を超えたとき、若しくは、汚泥状態(判定結果)や指標値が予め設定された条件を満たすときに(ステップSC10)、報知手段400へ報知指令を出力する。報知手段400は、演算手段200から報知指令を受けると、管理者の携帯端末等により、指標値又は汚泥状態(判定結果)が予め設定された所定の条件を満たしている旨の報知を行う(ステップSC11)。
なお、上記手順において、表示手段300により指標値等を管理者に提示する工程(ステップSC9)と、報知手段400により管理者に報知を行う工程(ステップSC10、SC11)とは順序が逆になることがあり得る。
【0098】
管理者は、上記手順により端末に表示された状態ラベル、および、状態ラベルと合わせて表示され得る指標値に基づいて、汚泥状態を把握し、水処理装置の運転条件の最適化を行うことができる。また、管理者は、報知をうけることにより、表示された指標値などにより直ちに汚泥状態を把握し、水処理装置の運転条件を見直すことが可能となる。
【0099】
すなわち、本実施形態の汚泥状態表示報知システム、汚泥状態表示報知方法および汚泥状態表示報知プログラムによれば、水処理装置の運転条件最適化に向けて有益な情報を管理者が解釈可能な態様で提供することが可能となり、管理者による水処理装置の運転条件の最適化を支援することができる。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
100…入力手段、200…演算手段、201…記録装置、202…読込装置、203…解析装置、204…判定装置、300…表示手段、400…報知手段