(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155725
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】空調用吹出口装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/06 20060101AFI20231016BHJP
F24F 13/062 20060101ALI20231016BHJP
F24F 13/068 20060101ALI20231016BHJP
F24F 13/10 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
F24F13/06 A
F24F13/062
F24F13/068 B
F24F13/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065224
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390022666
【氏名又は名称】協立エアテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】小川 健次
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄介
(72)【発明者】
【氏名】上野 武司
(72)【発明者】
【氏名】重松 拓也
【テーマコード(参考)】
3L080
3L081
【Fターム(参考)】
3L080BA08
3L080BA10
3L080BB01
3L081AA02
3L081AB02
3L081HA05
(57)【要約】
【課題】簡素な構造であり、供給される空調空気の供給量が変化してもパーソナルノズルからの吹出風量を一定に保つことができる空調用吹出口装置を提供する。
【解決手段】空調用吹出口装置100は、ダクト接続口1を有するチャンバ2と、チャンバ2の下面2a寄りに配置されたパン部材9と、パン部材9の周縁部9aに沿って設けられたアンビエント吹出部3と、周縁部9aで囲まれた領域に配置されたパーソナル吹出部4と、を備え、チャンバ2内に、その内部に導入した空調空気を、パーソナル吹出部4に誘導するパーソナル側流路5と、アンビエント吹出部3に誘導するアンビエント側流路6と、パーソナル側流路5とアンビエント側流路6を区画し、チャンバ2内圧力を所定値に維持する差圧ダンパユニット10と、パーソナル吹出部4の上流側にて空調空気をパーソナル吹出部4側とアンビエント吹出部3側に分配する切替機構20と、を設けている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機から供給される空調空気を建物内に吹き出すために建物内の天井部に配置される空調用吹出口装置であって、
空調機からダクトを経由して供給される空調空気を導入するダクト接続口を有するチャンバと、前記チャンバの下面寄りに配置されたパン部材と、前記パン部材の周縁部に沿って設けられたアンビエント吹出部と、前記チャンバの下面の前記周縁部で囲まれた領域内に配置されたパーソナル吹出部と、を備え、
前記チャンバ内に、前記チャンバ内に導入した空調空気を前記パーソナル吹出部に誘導するパーソナル側流路と、前記空調空気を前記アンビエント吹出部に誘導するアンビエント側流路と、前記パーソナル側流路と前記アンビエント側流路を区画し、前記チャンバ内圧力が所定値に達したときに作動し、前記チャンバ内圧力を所定値に維持する差圧ダンパユニットと、前記パーソナル吹出部の上流側にて前記空調空気を前記パーソナル吹出部側と前記アンビエント吹出部側に分配する分配比変更可能な切替機構と、を設けた空調用吹出口装置。
【請求項2】
前記差圧ダンパユニットが、前記チャンバ内において上方開口部を前記ダクト接続口に対向させ、下方開口部を前記パン部材の上面に接続した状態で前記チャンバ内に配置されたケーシングと、前記ケーシングを形成する周壁部に開設された通気口を開閉可能な羽根と、前記チャンバ内の圧力が所定値に達するまでは前記羽根が前記通気口を閉鎖した状態に保ち、前記チャンバ内の圧力が前記所定値に達すると前記羽根が前記通気口を開放して前記チャンバ内の圧力を前記所定値に維持する圧力調整用ウエイトと、を備えた請求項1記載の空調用吹出口装置。
【請求項3】
前記差圧ダンパユニットの前記ケーシングは、前記パーソナル吹出部に向かって水平断面積が減少した四角筒形状をなし、前記ケーシングの対向する二つの周壁部に前記通気口が開設され、前記ケーシングの他の二つの周壁部寄りの位置にそれぞれ垂下状に軸支された羽根アームに前記羽根が前記通気口に接近・離隔する方向に揺動可能な状態で取り付けられ、
前記羽根アームの揺動と連動して回動し、上端部側が前記ケーシングの上面より突出するように軸支されたウエイトアームを前記ケーシングの前記他の周壁部寄りの位置にそれぞれ立設し、一対の前記ウエイトアームをウエイトバーで連接し、
前記圧力調整用ウエイトを前記羽根の平面部並びに前記ウエイトバーに設けた請求項2記載の空調用吹出口装置。
【請求項4】
前記差圧ダンパユニットの前記羽根の受風部を、前記切替機構により前記アンビエント側流路に分配された前記空調空気流が当たる部分に配置した請求項2記載の空調用吹出口装置。
【請求項5】
前記差圧ダンパユニットの前記羽根の受風部を、前記切替機構により前記アンビエント側流路に分配された前記空調空気流が当たる部分に配置した請求項3記載の空調用吹出口装置。
【請求項6】
前記切替機構を作動させるモータと、前記モータを起動させるための無線信号を受信する受信部と、前記受信部が受信した信号を前記モータに伝達する制御手段と、を設けた請求項1~5の何れかの項に記載の空調用吹出口装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機から供給される空調空気を建物内に吹き出すために建物内の天井部に配置され、アンビエント空調並びにパーソナル空調を行うことができる空調用吹出口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機から供給される空調空気を建物内に吹き出すために建物内の天井部に配置され、アンビエント空調並びにパーソナル空調を行うことができる空調用吹出口装置については、従来、様々な構造、機能を有するものが提案されているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1に記載された吹出口装置がある。
【0003】
特許文献1に記載された吹出口装置は、吹出口本体の開口部に、調和空気の気流を複数方向に案内する気流案内部を配設すると共に、局所吹出し用の案内ノズル及び送風用ファンを配設し、送風用ファンの作動により案内ノズルから調和空気の局所吹出しを行える状態と、主に気流案内部により調和空気を広く拡散させる状態と、を選択できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された吹出口装置は、パーソナルノズルからの吹出風量を制御するためにパーソナルノズルに個別にファンが設けられ、各パーソナルノズルからの吹出風量を個別に制御可能とする構造である。また、流路に気流を切り替える遮蔽部を備えており、パーソナルノズルの使用、不使用により流路切替を行うので、構造が複雑であり、製造工程も煩雑である。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、アンビエント空調並びにパーソナル空調を行うことができ、簡素な構造であり、空調機から供給される空調空気の供給量が変化してもパーソナルノズルからの吹出風量を一定に保つことができる空調用吹出口装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空調用吹出口装置は、空調機から供給される空調空気を建物内に吹き出すために建物内の天井部に配置される空調用吹出口装置であって、
空調機からダクトを経由して供給される空調空気を導入するダクト接続口を有するチャンバと、前記チャンバの下面寄りに配置されたパン部材と、前記パン部材の周縁部に沿って設けられたアンビエント吹出部と、前記チャンバの下面の前記周縁部で囲まれた領域内に配置されたパーソナル吹出部と、を備え、
前記チャンバ内に、前記チャンバ内に導入した空調空気を前記パーソナル吹出部に誘導するパーソナル側流路と、前記空調空気を前記アンビエント吹出部に誘導するアンビエント側流路と、前記パーソナル側流路と前記アンビエント側流路を区画し、前記チャンバ内圧力が所定値に達したときに作動し、前記チャンバ内圧力を所定値に維持する差圧ダンパユニットと、前記パーソナル吹出部の上流側にて前記空調空気を前記パーソナル吹出部側と前記アンビエント吹出部側に分配する分配比変更可能な切替機構と、を設けたことを特徴とする。
【0008】
このような構成とすれば、アンビエント空調を行いながら、パーソナル空調も行うことができ、切替機構によりパーソナル吹出部側に流動する空調空気の風量を増減調整することができる。また、空調機から本発明に係る空調用吹出口装置に供給される空調空気の風量が変化してもパーソナル吹出部から所定の吹出風量を維持することができるので、パーソナル空調の快適性を向上させることができる。具体的には、チャンバ内の圧力が所定値に達した場合はパーソナル吹出部からの吹出風量は最大~最小の範囲内で制御することができ、チャンバ内の圧力が所定値以下の場合はパーソナル吹出部からの吹出風量となる。
【0009】
前記空調用吹出口装置においては、前記差圧ダンパユニットが、前記チャンバ内において上方開口部を前記ダクト接続口に対向させ、下方開口部を前記パン部材の上面に接続した状態で前記チャンバ内に配置されたケーシングと、前記ケーシングの周壁部に開設された通気口を開閉可能な羽根と、前記チャンバ内の圧力が所定値に達するまでは前記羽根が前記通気口を閉鎖した状態に保ち、前記チャンバ内の圧力が前記所定値に達すると前記羽根が前記通気口を開放して前記チャンバ内の圧力を前記所定値に維持する圧力調整用ウエイトと、を備えることができる。
【0010】
このような構成とすれば、圧力調整用ウエイトを調整することによって、パーソナル吹出部から吹き出す空調空気の風量を所定値に設定することができ、空調機から空調用吹出口装置に供給される空調空気の風量が変化してもパーソナル吹出部から吹き出す空調空気の風量を一定に維持することができる。
【0011】
前記空調用吹出口装置においては、前記差圧ダンパユニットの前記ケーシングは、前記パーソナル吹出部に向かって水平断面積が減少した四角筒形状をなし、前記ケーシングの対向する二つの周壁部にそれぞれ前記通気口が開設され、前記ケーシングの前記他の周壁部寄りの位置にそれぞれ垂下状に軸支された羽根アームに前記羽根が前記通気口に接近・離隔する方向に揺動可能な状態で取り付けられ、
前記羽根アームの揺動と連動して回動し、上端部側が前記ケーシングの上面より突出するように軸支されたウエイトアームを前記ケーシングの前記他の周壁部寄りの位置にそれぞれ立設し、一対の前記ウエイトアームをウエイトバーで連接し、
前記圧力調整用ウエイトを前記羽根の平面部並びに前記ウエイトバーに設けることができる。
【0012】
このような構成とすれば、ケーシングがパーソナル吹出部に向かって水平断面積が減少した四角筒形状をなしていることにより、差圧ダンパユニットの羽根が開き始めてからチャンバ内面に接触するまでの羽根の揺動可能範囲を適度に確保することができ、差圧ダンパユニットを、スペースの限られたチャンバ内に収めることができる。
【0013】
また、羽根の平面部並びにウエイトバーに圧力調整用ウエイトを設けたことにより、差圧ダンパユニットの作動圧力を適正に調整することができる。具体的には、差圧ダンパユニットの羽根とウエイトアーム間にリンク機構を設け、ウエイトアームの支点から圧力調整用ウエイトまでの距離を支点からリンク機構までの距離より長くすることにより、羽根の揺動に対するウエイトアーム上部のウエイトの揺動を大きく確保すること(羽根の小さな揺動に対してウエイトアーム上部を大きく揺動させること)ができる。これにより、小型軽量のウエイトでも羽根を大きな力で閉鎖することができ、差圧ダンパユニットの作動圧力以下の圧力で羽根が開くことを防止することができる。
【0014】
前記空調用吹出口装置においては、前記差圧ダンパユニットの羽根の受風部を、前記切替機構によりアンビエント側流路に分配された前記空調空気流が当たる部分に配置することができる。
【0015】
このような構成とすれば、アンビエント側に分配された空調空気が差圧ダンパユニットの羽根の受風部に直接当たることにより、チャンバ内の圧力上昇に伴う差圧ダンパユニットの開放方向への動作に付勢することができるので、差圧ダンパユニットの開放動作の確実性が向上する。
【0016】
前記空調用吹出口装置においては、前記切替機構を作動させるモータと、前記モータを起動させるための無線信号を受信する受信部と、前記受信部が受信した信号を前記モータに伝達する制御手段と、を設けることができる。
【0017】
このような構成とすれば、パーソナル吹出部からの空調空気の吹出風量を、離れた場所から無線制御できるので、利便性が向上する。なお、モータによる切替機構の開度制御は、全開・全閉の二択制御、風量を各段階に設定する段階制御あるいは風量を任意に設定する無段階制御などとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、アンビエント空調並びにパーソナル空調を行うことができ、簡素な構造であり、空調機から供給される空調空気の供給量が変化してもパーソナルノズルからの吹出風量を一定に保つことができる空調用吹出口装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態である空調用吹出口装置を示す一部省略平面図である。
【
図2】
図1に示す空調用吹出口装置の一部省略正面図である。
【
図3】
図1に示す空調用吹出口装置の一部省略底面図である。
【
図4】
図1に示す空調用吹出口装置の一部省略右側面図である。
【
図5】
図1中のA-A線における一部省略垂直断面図である。
【
図6】
図1中のB-B線における一部省略垂直断面図である。
【
図7】
図1中のC-C線における一部省略垂直断面図である。
【
図8】
図2中のD-D線における一部省略水平断面図である
【
図9】
図7中の羽根が全閉状態にあるときの一部省略垂直断面図である。
【
図10】
図7中の羽根が中間状態にあるときの一部省略垂直断面図である。
【
図11】
図7中の羽根が全開状態にあるときの一部省略垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1~
図11に基づいて、本発明の実施形態である空調用吹出口装置100について説明する。
【0021】
図1~
図9に示すように、空調用吹出口装置100は、空調機(図示せず)から供給される空調空気を建物内に吹き出すために建物内の天井部に配置される。空調用吹出口装置100は、空調機からダクトを経由して供給される空調空気を導入するダクト接続口1を有するチャンバ2と、チャンバ2の下面2a寄りに配置されたパン部材9と、パン部材9の周縁部9aに沿って設けられたアンビエント吹出部3と、パン部材9の周縁部9aで囲まれた領域内に配置された複数のパーソナル吹出部4と、を備えている。
図3,
図5に示すように、アンビエント吹出部3は、チャンバ2の下面2aの周縁部2bと、パン部材9の周縁部9aとの間に位置している。
【0022】
チャンバ2内には、チャンバ2内に導入した空調空気をパーソナル吹出部4に誘導するパーソナル側流路5と、前記空調空気をアンビエント吹出部3に誘導するアンビエント側流路6と、パーソナル側流路5とアンビエント側流路6を区画し、チャンバ2内圧力が所定値に達したときに作動し、チャンバ2内圧力を所定値に維持する差圧ダンパユニット10と、パーソナル吹出部4の上流側にて前記空調空気をパーソナル吹出部4側とアンビエント吹出部3側に分配する分配比変更可能な切替機構20と、を設けている。
【0023】
図5~
図7に示すように、差圧ダンパユニット10のケーシング11の上縁部11gとチャンバ2の内周面との間にパッキン8を設けることにより、パーソナル側流路5とアンビエント側流路6とが気密状に区画されている。ケーシング11の上方開口部11aはダクト接続口1に対向し、ケーシング11の下方開口部11bはパン部材9の上面9b(
図6参照)に接続されている。チャンバ2内に供給された空調空気は、全てケーシング11内に流入した後、パーソナル側流路5とアンビエント側流路6に分配される。
【0024】
図3,
図5,
図7,
図8に示すように、切替機構20は、ケーシング11内に起立状に配置された円筒状の通気部材28と、通気部材28を上下に区画する隔壁29と、隔壁29の中心に回転可能に軸支された軸体21と、を備え、隔壁29において軸体21を挟んだ対称位置に軸体21を中心に広がる扇形状の複数の開口部29aが開設され、これらの開口部29aを開閉するシャッタ22が軸体21に固定されている。シャッタ22の上面は、軸体21から通気部材28の内周面に向かって拡径する半円錐形状をなしている。
【0025】
通気部材28において、隔壁29より上方領域には、軸体21を挟んで対称をなす複数の開口部26が開設されている。通気部材28の開口部26と、隔壁29の開口部29aとは、軸体21を中心に位相が90度異なるように配置されているので、隔壁29の開口部29aが無い部分の外側に通気部材28の開口部26が位置している。複数の開口部26はそれぞれ、後述する差圧ダンパユニット10のケーシング11の通気口12及び羽根13の受風部と対向する位置に開設されている。
【0026】
複数の切替機構20の軸体21,21はそれぞれ独立して回転可能であり、軸体21を正転・逆転させるとシャッタ22が一体的に回転し、通気部材28の開口部26の「開・閉」及び隔壁29の開口部29aの「閉・開」が連係して行われる。即ち、軸体21を正転させてシャッタ22を通気部材28の開口部26を全開状態にセットすると隔壁29の開口部29aが全閉状態となる。また、全閉状態から軸体21を逆転させていくと、通気部材28の開口部26が全開状態から全閉状態まで連続的に狭まっていき、これに伴って隔壁29の開口部29aが全閉状態から全開状態まで連続的に拡がっていく。
【0027】
隔壁29から下方に突出した軸体21の下端部には、それぞれ自在継手25及び支軸30を介して吹出ノズル24が傾動可能に取り付けられている。吹出ノズル24は無底椀形状の本体部24aと、本体部24aから下方に連設された短円筒形状の口縁部24bと、で形成され、本体部24aの内周面にそれぞれ支軸30の両端部が回動可能に固定されている。
【0028】
差圧ダンパユニット10は、チャンバ2内において上方開口部11aをダクト接続口1に対向させ、下方開口部11bをパン部材9の上面9bに接続した状態でチャンバ2内に配置されたケーシング11と、ケーシング11に開設された通気口12を開閉可能な羽根13と、チャンバ2内の圧力が所定値に達するまでは羽根13が通気口12を閉鎖状態に保つ圧力調整用ウエイト14(
図6参照)と、を備えている。また、羽根13の平面部の外面にも圧力調整用ウエイト15が配置されている。圧力調整用ウエイト14,15の機能については後述する。
【0029】
差圧ダンパユニット10のケーシング11は、パーソナル吹出部4に向かって水平断面積が連続的に減少した四角筒形状をなし、ケーシング11の対向する二つの周壁部11c,11dにそれぞれ通気口12が開設され、通気口12に接近・離隔する方向に揺動可能な状態でケーシング11の他の二つの周壁部11e,11f寄りの位置にそれぞれ垂下状に軸支された羽根アーム16に羽根13が取り付けられている。ケーシング11内部の上方領域の四隅部分にはそれぞれ平板状の支持部材27が垂下状態に取り付けられ、羽根アーム16の上端部が支点16aを介して支持部材27に揺動可能に取り付けられている。羽根13の受風部は、通気部材28の開口部26と対向する位置に配置されている。
【0030】
図9に示すように、ケーシング11内の他の周壁部11f寄りの位置に取り付けられた支持部材27に、支点17aを介してウエイトアーム17が傾動可能に立設されている。図示していないが、ケーシング11内の他の周壁部11e寄りの位置に取り付けられた支持部材27にも、支点17aを介してウエイトアーム17が傾動可能に立設されている。
【0031】
ウエイトアーム17は、羽根アーム16とリンク19を介して連接され羽根アーム16の揺動と連動して周壁部11c,11dの対向方向に回動するように軸支されている。ウエイトアーム17の上端部側はケーシング11の上方開口部11aより突出するように支点17aに軸支されている。二つの周壁部11e,11fの対向方向に対向するウエイトアーム17,17はそれぞれウエイトバー18で連接され、それぞれのウエイトバー18の長手方向の中央に圧力調整用ウエイト14が取り付けられている。二つの周壁部11c,11dの対向方向に対向するウエイトアーム17,17はL字状の連動部材7によって連接されている。
【0032】
次に、
図9~
図11に基づいて空調用吹出口装置100の機能、作用効果などについて説明する。以下、パーソナル吹出部4からの吹出風量を最大30m
3/hとした場合(チャンバ2内の圧力が30Paに達したときに差圧ダンパユニット10の羽根13が開放するように設定した場合)についての説明をする。
【0033】
図8,
図9に示すように、差圧ダンパユニット10のシャッタ22,22が全開の状態において、空調用吹出口装置100のチャンバ2内の圧力が30Pa未満であるときは、差圧ダンパユニット10のケーシング11の通気口12は羽根13によって閉鎖されている。これは、ウエイトバー18に設けられた圧力調整用ウエイト14(
図6参照)に作用する重力によって羽根13を通気口12に接触する方向に作用する力が、圧力調整用ウエイト15に作用する重力によって羽根13を鉛直姿勢に戻そうとする力より大であるからである。
【0034】
この状態においては、切替機構20によりシャッタ22の開度を変更することにより、パーソナル吹出部4側に流動する空調空気の風量を増減調整することができる。シャッタ22の開度を絞ってパーソナル吹出部4側に流動する空調空気の風量を減少させた場合、ケーシング11内の圧力が上昇して30Paに達すると、差圧ダンパユニット10の羽根13が通気口12を開放し、アンビエント吹出部3側にも空調空気が流動して、チャンバ2内の圧力は30Paに維持される。
【0035】
次に、
図10に示すように、空調機から供給される空調空気の風量が増加して空調用吹出口装置100のチャンバ2内の圧力が30Paに達し、ウエイトバー18に設けられた圧力調整用ウエイト14(
図6参照)に作用する重力による通気口12に対する羽根13の閉止力を超えると、羽根13は通気口12から離れる方向に傾動し、通気口12は開放した状態となり、パーソナル吹出部4からの吹出風量は30m
3/hに維持され、余剰分はアンビエント吹出部3へ流動する。この状態において、羽根13の開度は、チャンバ2内の圧力と、圧力調整用ウエイト14(
図6参照),15に作用する重力とのバランスによって制御される。
【0036】
次に、
図11に示すように、空調機から供給される空調空気の風量が更に増加すると、複数の羽根13は通気口12から最も遠くまで離れ、複数の通気口12は何れも概ね全開状態となる。この状態において、羽根13の開度は、チャンバ2内の圧力と、圧力調整用ウエイト15に作用する重力とのバランスによって制御される。
【0037】
このように、空調用吹出口装置100においては、アンビエント空調を行いながら、パーソナル空調も行うことができ、切替機構20によりシャッタ22の開度を変更することにより、各パーソナル吹出部4に流動する空調空気の風量を0~30m3/hの範囲で増減調整することができる。また、空調機から空調用吹出口装置100に供給される空調空気の風量が変化してもパーソナル吹出部4から所定の吹出風量を維持することができるので、パーソナル空調の快適性を向上させることができる。具体的には、チャンバ2内の圧力が30Paに達した場合はパーソナル吹出部4からの吹出風量は0~30m3/hの範囲内で制御することができ、チャンバ2内の圧力が30Pa未満の場合はパーソナル吹出部4からの吹出風量となる。
【0038】
上記の例においては、空調機から空調用吹出口装置100に供給される空調空気の風量が所定の範囲内(60m3/h(2つのパーソナル吹出部4,4が開状態で吹出風量30m3/hを確保できる風量)~150m3/h(2つのパーソナル吹出部4,4が閉状態で差圧ダンパユニット10の羽根13が全開となる風量))においてパーソナル吹出部4の風量を一定に維持することができる。
【0039】
空調用吹出口装置100においては、差圧ダンパユニット10が、チャンバ2内において上方開口部11aをダクト接続口1に対向させ、下方開口部11bがパーソナル吹出部4の上流側を包囲した状態でチャンバ2内に配置されたケーシング11と、ケーシング11を形成する周壁部11c,11dに開設された通気口12を開閉可能な羽根13と、チャンバ2内の圧力が所定値(例えば、30Pa)に達するまでは羽根13が通気口12を閉鎖した状態に保ち、チャンバ2内の圧力が所定値に達すると羽根13が通気口12を開放してチャンバ2内の圧力を所定値に維持する圧力調整用ウエイト14,15と、を備えている。
【0040】
従って、圧力調整用ウエイト14、15を調整することによって、パーソナル吹出部4から吹き出す空調空気の風量を所定値に設定することができ、空調機から空調用吹出口装置100に供給される空調空気の風量が変化してもパーソナル吹出部4から吹き出す空調空気の風量を一定に維持することができる。
【0041】
また、ケーシング11がパーソナル吹出部4,4に向かって水平断面積が連続的に減少した四角筒形状をなしていることにより、差圧ダンパユニット10の羽根13が開き始めてからチャンバ2内面に接触するまでの羽根13の揺動可能範囲を適度に確保することができ、差圧ダンパユニット10を、スペースの限られたチャンバ2内に収めることができる。
【0042】
また、羽根13の平面部に圧力調整用ウエイト15を設け、ウエイトバー18に圧力調整用ウエイト14を設けたことにより、差圧ダンパユニット10の作動圧力を適正に調整することができる。具体的には、差圧ダンパユニット10の羽根13の羽根アーム16とウエイトアーム17と間にリンク19を設け、ウエイトアーム17の支点17aから圧力調整用ウエイト14までの距離を支点17aからリンク19までの距離より長くすることにより、羽根13の揺動に対するウエイトアーム17上部の圧力調整用ウエイト14の揺動を大きく確保すること(羽根13の小さな揺動に対してウエイトアーム17上部を大きく揺動させること)ができる。これにより、小型軽量のウエイトでも羽根13を大きな力で閉鎖することができ、差圧ダンパユニット10の作動圧力以下の圧力で羽根13が開くことを防止することができる。
【0043】
図10,
図11に示すように、チャンバ2内が作動圧力に達し羽根13が開き始め、羽根13の平面方向が鉛直状態となる位置を超えて開くと、羽根13の平面部の圧力調整用ウエイト15により、開いた状態の羽根13を閉鎖する方向への負荷を維持し、パーソナル吹出部4,4からの吹出風量を一定に保つことができる。例えば、作動圧力が30Paの場合は、チャンバ2内の圧力が25Paで羽根13が開いてしまうことがなく、空調空気量が増加すると羽根13が開いてチャンバ2内の圧力を30Paに維持し、パーソナル吹出部4,4の吹出風量を一定に保つことができる。
【0044】
また、空調用吹出口装置100においては、アンビエント側流路6に分配された空調空気が差圧ダンパユニット10の羽根13の受風部に直接当たることにより、チャンバ2内の圧力上昇に伴う差圧ダンパユニット10の開方向への動作に付勢することができるので、差圧ダンパユニット10の開放動作の確実性が向上する。
【0045】
また、差圧ダンパユニット10の隔壁11c,11dの対向方向に対向するウエイトアーム17,17同士を連動部材7で連結し、両側の羽根13,13を連動して常に同じ開度とすることにより、アンビエント側流路6から吹き出す風量の偏りを防止することができる。さらに、空調用吹出口装置100は、電力を消費せずにパーソナル吹き出し口4,4からの吹出風量を一定に維持することができる。
【0046】
羽根13の羽根アーム16とウエイトアーム17と間にリンク19を設け、ウエイトアーム17とウエイトアーム17上部の圧力調整用ウエイト14(
図6参照)の位置を差圧ダンパユニット10の垂直断面の中央側(両側のウエイトアーム17,17同士が接近する方向)へずらすことにより、ウエイトアーム17,17がケーシング11の内面に接触せずに動作することができ、スペースの限られたチャンバ2内に収めることができる。
【0047】
空調用吹出口装置100に供給される空調空気量が減少すると差圧ダンパユニット10の羽根13の開度が減少するので、通気口12を通過する空気の流路が狭くなるが、これにより、空調空気量が減少しても差圧ダンパユニット10から通気口12を通過してアンビエント吹出部3へ向かう空調空気の流速が上昇し、アンビエント吹出部3から吹き出す空気流の拡散性を維持することができる。
【0048】
前述のように、パーソナル吹出部4からの吹出風量を最大30m3/hとした場合(チャンバ2内の圧力が30Paに達したときに差圧ダンパユニット10の羽根13が開放するように設定した場合)について説明したが、パーソナル吹出部4からの最大風量を増やしたい場合(例えば、40m3/hとしたい場合)はチャンバ2内の圧力を53Paに設定することにより対応可能である。ただし、チャンバ2内の圧力が50Paを超えると空調用吹出口装置100からの騒音増大が懸念されるため、15Pa~50Paの範囲に設定することが望ましい。
【0049】
空調用吹出口装置100においては、切替機構20を作動させるモータ23と、モータ23を起動させるための無線信号を受信する受信部(図示せず)と、受信部が受信した信号をモータ23に伝達する制御手段と、を設けているので、パーソナル吹出部4からの空調空気の吹出風量を、離れた場所から無線制御することができ、利便性に優れている。なお、モータ23による切替機構20のシャッタ22の開度制御は、全開・全閉の二択制御、段階制御(例えば、30m3/h,20m3/h,10m3/h,0m3/hの4段階制御)あるいは無段階制御などを行うことができる。
【0050】
なお、
図1~
図11に基づいて説明した空調吹出口装置100は、本発明に係る空調用吹出口装置の一例を示すものであり、本発明に係る空調用吹出口装置は前述した空調用吹出口装置100に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る空調用吹出口装置は、オフィスビルなどの建物内の空調システムの構成機材として、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 ダクト接続口
2 チャンバ
2a 下面
2b,9a 周縁部
3 アンビエント吹出部
4 パーソナル吹出部
5 パーソナル側流路
6 アンビエント側流路
7 連動部材
8 パッキン
9 パン部材
9b 上面
10 差圧ダンパユニット
11 ケーシング
11a 上方開口部
11b 下方開口部
11c,11d,11e,11f 周壁部
11g 上縁部
12 通気口
13 羽根
14,15 圧力調整用ウエイト
16 羽根アーム
17 ウエイトアーム
16a,17a 支点
18 ウエイトバー
19 リンク
20 切替機構
21 軸体
22 シャッタ
23 モータ
24 吹出ノズル
24a 本体部
24b 口縁部
25 自在継手
26,29a 開口部
27 支持部材
28 通気部材
29 隔壁
30 支軸
100 空調用吹出口装置