(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155726
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】熱交換システム及びこれを備える応用機器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/32 20060101AFI20231016BHJP
F28F 17/00 20060101ALI20231016BHJP
F28F 19/00 20060101ALI20231016BHJP
F28D 1/04 20060101ALI20231016BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20231016BHJP
F24F 1/18 20110101ALI20231016BHJP
C23F 11/08 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
F28F1/32 H
F28F17/00 501A
F28F1/32 D
F28F1/32 Y
F28F19/00 511Z
F28D1/04 Z
F25B39/02 J
F24F1/18
C23F11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065225
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅本 大輝
(72)【発明者】
【氏名】大城 智史
(72)【発明者】
【氏名】谷 知子
(72)【発明者】
【氏名】中島 孝仁
【テーマコード(参考)】
3L054
3L103
4K062
【Fターム(参考)】
3L054BA05
3L054BB03
3L103AA12
3L103AA37
3L103AA40
3L103BB42
3L103BB44
3L103CC23
3L103DD08
3L103DD61
3L103DD70
4K062AA03
4K062BB04
4K062BC13
4K062BC14
4K062CA05
4K062FA04
4K062FA16
4K062GA06
(57)【要約】
【課題】熱交換システムにおいて、熱交換器の表面に水分が付着しても、比較的少ない作業負担で、熱交換器の腐食を防止すると共に熱交換器からの排水を促進することにより、優れた熱交換効率が長期間得られるようにする。
【解決手段】
熱交換システムは、空気と、内部を流通する熱媒体とを熱交換して空気を冷却する熱交換器と、熱交換器の表面に付着した空気中の水分の前記表面に対する接触角を減少させる添加剤を保持する供給部材とを備える。添加剤は、ノニオン系界面活性剤を含む。供給部材から前記表面に対し、添加剤が供給される。前記表面に付着した水分と、前記表面に供給された添加剤との混合液中のノニオン系界面活性剤の濃度が、25℃における臨界ミセル濃度以上の値である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気と、内部を流通する熱媒体とを熱交換して前記空気を冷却する熱交換器と、
前記熱交換器の表面に付着した前記空気中の水分の前記表面に対する接触角を減少させる添加剤を保持する供給部材と、を備え、
前記添加剤は、ノニオン系界面活性剤を含み、
前記供給部材から前記表面に対し、前記添加剤が供給され、
前記表面に付着した前記水分と、前記表面に供給された前記添加剤との混合液中の前記ノニオン系界面活性剤の濃度が、25℃における臨界ミセル濃度以上の値である、熱交換システム。
【請求項2】
前記混合液中の前記ノニオン系界面活性剤の濃度が、100ppm以上の範囲の値である、請求項1に記載の熱交換システム。
【請求項3】
前記熱交換器は、複数のフィンと、前記複数のフィンと接触して前記熱媒体を流通させる流通管と、を更に有し、
前記添加剤が供給される前記熱交換器の表面位置に、前記複数のフィンの少なくともいずれかの下端と、前記流通管に対する前記フィンの接触部であるフィンカラー部と前記流通管との間の隙間と、のうちの1以上が含まれる、請求項1に記載の熱交換システム。
【請求項4】
前記熱交換器に前記供給部材を固定する固定部材と、
前記表面から落下する水分を受け止めるドレンパンと、を更に備え、
前記添加剤が供給される前記熱交換器の表面位置に、前記熱交換器が前記固定部材と接触する接触位置と、前記熱交換器が前記ドレンパンと対向する対向位置と、のうちの1以上が含まれる、請求項1に記載の熱交換システム。
【請求項5】
前記供給部材は、前記添加剤を担持する複数の担持体と、前記複数の担持体を分散させた状態で、前記添加剤を前記担持体から前記供給部材の外部へ放出可能に支持する支持体とを含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱交換システム。
【請求項6】
前記担持体は、多孔質の粒状物である、請求項5に記載の熱交換システム。
【請求項7】
前記添加剤は、前記表面に付着した水分に対して、溶解、分散、又は拡散する、請求項1~4のいずれか1項に記載する熱交換システム。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載の熱交換システムを備える、応用機器。
【請求項9】
対象物を冷蔵又は冷凍する冷凍装置である、請求項8に記載の応用機器。
【請求項10】
室外機を備える空調装置であり、
前記熱交換器及び前記供給部材が、前記室外機に配置されている、請求項8に記載の応用機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換システム及びこれを備える応用機器に関し、特に熱交換システムの腐食防止を図ると共に優れた熱交換効率を得る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換システムは、例えば、空気と熱媒体との間で熱交換する熱交換器を備える。冷凍装置等に熱交換システムが用いられる場合、熱交換器が熱交換により冷却されると、空気中の水分が熱交換器の表面に付着する。水分は、冷却された霜や氷となる場合がある。以下、これらを含めて単に「水分」とも称する。
【0003】
熱交換器の表面に水分が付着すると、水分の比熱、熱伝導率、潜熱、又は顕熱等の影響により、熱交換システムの熱交換効率が低下する。また、熱交換器が有する複数のフィンに水分が付着すると、フィン同士の間隙が水分により閉塞される。これにより、フィン間の空気の流通が阻害されて熱交換システムの熱交換効率が低下する。
【0004】
また、熱交換器の金属製の表面に水分が付着すると、熱交換器の表面が腐食する問題がある。この問題に対し、例えば特許文献1には、熱交換機構の表面に樹脂皮膜を形成することで、雰囲気中の腐食性ガスが溶解した結露水等との接触による熱交換機構の劣化を抑制すると共に、樹脂皮膜中にアルミニウムフレークを混在させることで熱交換効率低下の抑制を図る技術が開示されている。また特許文献2には、銅系部材と接触する冷却水等の水系に腐食防止剤を添加する腐食抑制方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-360069号公報
【特許文献2】特開2015-193876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、腐食性ガスの種類に応じて樹脂皮膜の成分を選択する必要がある。また、時間経過により樹脂皮膜が劣化し、熱交換効率が低下する場合がある。また特許文献2の開示技術では、腐食防止対象に応じて適切な腐食抑制剤を予め選択する必要がある。
【0007】
そこで本開示は、熱交換システムにおいて、熱交換器の表面に水分が付着しても、比較的少ない作業負担で、熱交換器の腐食を防止すると共に熱交換器からの排水を促進することにより、優れた熱交換効率が長期間得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る熱交換システムは、空気と、内部を流通する熱媒体とを熱交換して前記空気を冷却する熱交換器と、前記熱交換器の表面に付着した前記空気中の水分の前記表面に対する接触角を減少させる添加剤を保持する供給部材と、を備え、
前記添加剤は、ノニオン系界面活性剤を含み、前記供給部材から前記表面に対し、前記添加剤が供給され、前記表面に付着した前記水分と、前記表面に供給された前記添加剤との混合液中の前記ノニオン系界面活性剤の濃度が、25℃における臨界ミセル濃度以上の値である。
【0009】
上記構成によれば、供給部材から供給される添加剤により、熱交換器の表面に付着した水分の前記表面に対する接触角が減少し、熱交換器の表面が親水化される。混合液中のノニオン系界面活性剤の濃度が、25℃における臨界ミセル濃度以上の値であるため、熱交換器の表面上の混合液の表面張力が低下し、熱交換器の表面が高度に親水化される。よって、熱交換器の表面の濡れ性を向上させ、水膜の表面積を増大できる。このため、乾燥速度を速めて、熱交換器の表面から水分を速やかに排出できる。結果として、熱交換器の表面に付着した水分による熱交換システムの腐食、及び、熱交換効率の低下を防止できる。
【0010】
また、熱交換器の表面上の混合液の表面張力が低下し、熱交換器の表面が高度に親水化されることで、熱交換器の表面の液切れ性が向上し、乾燥初期から乾燥すべき水量を低減できる。このため、熱交換器の表面に水分が長時間付着することで、例えば水膜中の酸素拡散により熱交換器の表面の腐食が進行するのを防止できる。
【0011】
これらの諸効果は、熱交換器の表面に対して直接的な表面処理を行うことなく、熱交換器の表面に付着した水分を添加剤により改質することで得られる。よって例えば、熱交換器の表面に樹脂皮膜を形成し、樹脂皮膜を劣化前に交換したり、腐食防止対象毎に腐食防止剤を予め選択する必要がない。このため、熱交換システムにおいて、熱交換器の表面に水分が付着しても、比較的少ない作業負担で、熱交換器の腐食を防止すると共に熱交換器からの排水を促進することにより、優れた熱交換効率が長期間得られる。
【0012】
前記混合液中の前記ノニオン系界面活性剤の濃度が、100ppm以上の範囲の値であってもよい。これにより、ノニオン系界面活性剤の濃度を前記臨界ミセル濃度以上の値に設定し易くできる。
【0013】
前記熱交換器は、複数のフィンと、前記複数のフィンと接触して前記熱媒体を流通させる流通管と、を更に有し、前記添加剤が供給される前記熱交換器の表面位置に、前記複数のフィンの少なくともいずれかの下端と、前記流通管に対する前記フィンの接触部であるフィンカラー部と前記流通管との間の隙間と、のうちの1以上が含まれていてもよい。また、前記熱交換器に前記供給部材を固定する固定部材と、前記表面から落下する水分を受け止めるドレンパンと、を更に備え、前記添加剤が供給される前記熱交換器の表面位置に、前記熱交換器が前記固定部材と接触する接触位置と、前記熱交換器が前記ドレンパンと対向する対向位置と、のうちの1以上が含まれていてもよい。これにより、例えば、熱交換器の表面のうち比較的腐食し易い箇所での腐食を良好に防止できる。
【0014】
前記供給部材は、前記添加剤を担持する複数の担持体と、前記複数の担持体を分散させた状態で、前記添加剤を前記担持体から前記供給部材の外部へ放出可能に支持する支持体とを含んでいてもよい。
【0015】
上記構成によれば、分散された複数の担持体により添加剤を担持することで、各担持体から熱交換器の表面に付着した水分に対して広範囲に添加剤を供給し易くできる。また支持体により、添加剤を複数の担持体から供給部材の外部へ放出可能に複数の担持体を支持することで、担持体を支持しながら、供給部材から熱交換器の表面に対して添加剤を安定して供給できる。
【0016】
前記担持体は、多孔質の粒状物であってもよい。これにより、担持体の孔内に豊富な添加剤を保持させて、供給部材から熱交換器の表面に対して添加剤を徐放させ、熱交換器の表面に付着した水分に添加剤を熱交換システムの駆動初期から長期間にわたり供給できる。
【0017】
前記添加剤は、前記表面に付着した水分に対して、溶解、分散、又は拡散してもよい。これにより、熱交換器の表面に付着した水分に対して、供給部材から添加剤を迅速に行き渡らせることができる。
【0018】
本開示の一態様に係る応用機器は、上記したいずれかの熱交換システムを備える。この応用機器は、対象物を冷蔵又は冷凍する冷凍装置であってもよい。また、この応用機器は、室外機を備える空調装置であり、前記熱交換器及び前記供給部材が、前記室外機に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本開示の各態様によれば、熱交換システムにおいて、熱交換器の表面に水分が付着しても、比較的少ない作業負担で、熱交換器の腐食を防止すると共に熱交換器からの排水を促進することにより、優れた熱交換効率を長期間得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る応用機器の正面図である。
【
図2】
図2は、
図1の供給部材から熱交換器の表面に付着した水分に添加剤が供給される様子を示す模式図である。
【
図3】
図3は、
図1の供給部材の内部構造を示す拡大図である。
【
図4】
図4は、従来の水分除去前後における熱交換器の表面とその周辺の様子を模式的に示す図である。
図4(a)は、熱交換器の表面に水分が付着した様子を示す図である。
図4(b)は、熱交換器の表面に付着した水分により厚い水膜が形成される様子と、フィンに水分が残留する様子を示す図である。
図4(c)は、熱交換器の表面に霜が堆積した様子を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の水分除去前後における熱交換器の表面とその周辺の様子を模式的に示す図である。
図5(a)は、熱交換器の表面に水分が付着した様子を示す図である。
図5(b)は、熱交換器の表面に薄い水膜が形成され、水分が転落(滑落)する様子を示す図である。
図5(c)は、排水された熱交換器の表面を示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る応用機器の模式図である。
【
図7】
図7は、試験1における界面活性剤濃度(ppm)と水(混合液)の接触角(°)との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、試験2において実施例用の腐食溶液を噴霧したときの実施例1のサンプルの様子を示す写真である。
【
図9】
図9は、試験2において比較例用の腐食溶液を噴霧したときの比較例1のサンプルの様子を示す写真である。
【
図10】
図10は、試験2における最大浸食深さが93μmの実施例1のサンプルの腐食の様子を示す写真である。
【
図11】
図11は、試験2における最大浸食深さが373μmの比較例1のサンプルの腐食の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して各実施形態を説明する。
(第1実施形態)
[応用機器及び熱交換システム]
図1は、第1実施形態に係る応用機器1の正面図である。
図2は、
図1の供給部材6から熱交換器3の表面に付着した水分に添加剤が供給される様子を示す模式図である。
図1に示される応用機器1は、一例として、対象物を冷蔵又は冷凍する冷凍装置である。応用機器1は、熱交換システム2と、筐体7とを備える。筐体7の内部には、複数の庫内スペースS1~S4が設けられている。庫内スペースS1~S4は、一例として、冷蔵室、冷凍室、及び野菜室を含む。熱交換システム2は、熱交換器(エバポレータ)3、除霜機構4、及び制御部5を備える。また熱交換システム2は、コンプレッサー11、コンデンサー12、及びファン14を備える。
【0022】
熱交換システム2は、庫内スペースS1~S4内の空気を熱媒体との間で熱交換し、冷気を生成する。熱交換器3は、庫内スペースS1~S4内の水分を含有する空気と接触し、内部を流通する熱媒体と前記空気とを熱交換して前記空気を冷却する。熱交換器3は、複数のフィン31と、複数のフィン31と接触して熱媒体を流通させる流通管30とを有する。複数のフィン31は、流通管30内の熱媒体を前記空気と熱交換させる。複数のフィン31は、一例として鉛直方向に延びると共に、鉛直方向に交差する交差方向(ここでは水平方向)に間隔をあけて並ぶように配置されている。フィン31は、一例として熱伝導性に優れる金属材料(アルミニウム等)を含有するが、フィン31の材質はこれに限定されない。流通管30には、複数のフィン31が、ロウ付けや拡管等の固定方法により固定される。流通管30は、熱媒体を流通させる。複数のフィン31は、流通管30と熱結合している。一例として、隣接するフィン31は、平行な表面を有する。フィン31は、流通管30に対するフィン31の接触部であるフィンカラー部31cを有する。フィンカラー部31cは、流通管30とフィン31との密着性を向上させる。一例として、フィンカラー部31cは、フィン31の一部を流通管30の外周面に沿って折り曲げられている。これによりフィンカラー部31cは、流通管30の外周面と面接触する。
【0023】
また熱交換システム2は、熱交換器3に供給部材6を固定する固定部材16と、熱交換器3の表面から落下する水分を受け止めるドレンパン17とを有する。固定部材16は、一例として、締結部材を含む。これにより、供給部材6は熱交換器3に対して着脱自在に固定される。固定部材16はこれに限定されず、例え接着部材を含んでいてよい。ドレンパン17は、熱交換器3の下方に配置される。ドレンパン17は、一例として、各フィン31から落下する水分を適切に受け止めるため、全てのフィン31の下方を覆うように配置されているが、これに限定されない。
【0024】
コンプレッサー11は、熱交換器3を通過した液体の熱媒体を圧縮する。コンデンサー12は、コンプレッサー11から送られる気体の熱媒体を冷却して液化し、熱交換器3へ流通させる。ファン14は、庫内スペースS1~S4内の空気と熱交換器3の周辺の空気とを循環させる。
【0025】
除霜機構4は、熱交換器3の表面に付着した霜を融解することにより除霜する。除霜機構4の除霜対象には、熱交換システム2の駆動に伴って熱交換器3の表面に付着する霜や氷の他、例えば寒冷地での応用機器1の使用環境において、応用機器1の外部から内部に侵入した霜や氷雪も含まれる。以下では、これらを併せて単に霜と称する。
【0026】
除霜機構4は、一例としてヒーター方式であり、除霜ヒーター13を有する。応用機器1の除霜運転では、熱交換器3の周囲の空気が、除霜ヒーター13により暖められて暖気となり、対流する。この暖気が熱交換器3の表面と接触することで除霜がなされる。また、除霜ヒーター13の輻射等によっても除霜がなされる。本実施形態の除霜機構4は、除霜を行う際、熱交換器3の表面に付着した水分の融点以上の温度に熱交換器3の表面の温度を調整する。除霜機構4の形式は、ヒーター方式に限定されず、ホットガス方式、散水方式、オフサイクル方式等、その他の公知の形式のいずれかでもよい。
【0027】
また熱交換システム2は、除霜温度検知部15を有する。除霜温度検知部15は、熱交換システム2の配管温度(例えば流通管30の温度)が、除霜機構4の除霜運転を終了させるための所定温度に達したか否かを検知する。除霜温度検知部15は、一例として公知の温度センサを含む。
【0028】
制御部5は、コンプレッサー11、除霜ヒーター13、ファン14、及び、流通管30の流量を調整するバルブを個別に制御する。制御部5は、一例として、タイマー機能を有し、このタイマー機能を用いて、応用機器1の冷却運転時間が一定時間(例えば13時間)に達する毎に除霜機構4を自動で駆動させる。また制御部5には、除霜温度検知部15の検知信号が入力される。制御部5は、一例として、除霜温度検知部15の検知信号に基づき、除霜機構4を自動で駆動停止させる。本実施形態の制御部5は、CPU等を含むプロセッサと、ROM、RAM等を含む記録媒体とを備えたコンピュータにより実現される。前記記録媒体には、CPUが前記バルブ、コンプレッサー11、ファン14等を制御するための熱交換器制御プログラムと、除霜運転時に除霜機構4を制御するための除霜制御プログラムとを含む複数の制御プログラムが記憶されている。応用機器1が、熱交換器3の流通管30内に熱媒体を流通させるためのポンプを備える場合、制御部5は、当該ポンプを制御してもよい。
【0029】
熱交換システム2は、少なくとも1つの供給部材6を備える。供給部材6は、熱交換器3の表面に付着した水分の前記表面に対する接触角を減少させる添加剤を保持する。添加剤は、熱交換器3の表面に形成される水膜を広がり易くすることで、水膜を薄くすることができる。供給部材6は、例えば雰囲気中に含まれる水分と接触することにより、水中に添加剤を分散させながら添加剤を外部に放出する。これにより、供給部材6から熱交換器3の表面に添加剤が供給される。この供給の際、添加剤は、一例として、熱交換器3の表面に付着した水分に対し、自由落下により供給される。この添加剤の供給は、いずれのタイミングで行われてもよい。熱交換システム2では、熱交換器3の表面に付着した水分に対し、所定期間(例えば数年程度)にわたり添加剤が供給されるように添加剤が徐放される。
【0030】
供給部材6は、一例として長尺状であり、熱交換器3の表面(例えば各フィン31の端面)と接触するように配置されている。本実施形態の供給部材6は、短冊状に形成され、複数のフィン31の配列方向に長手方向が沿うようにして配置されている。供給部材6は、固定部材16により、熱交換システム2に対して着脱自在に固定されることで、所定のタイミングで交換可能である。本実施形態の熱交換システム2は、互いに離隔して配置された複数の供給部材6を備える。1つの供給部材6は、熱交換器3の複数のフィン31の厚み方向に延びながら各フィン31の端面と接触している。
【0031】
ここで応用機器1は、冷凍装置であるため、応用機器1(熱交換システム2)の駆動時には、熱交換器3の表面は熱媒体との熱交換により氷点下の温度まで冷却される。しかしながら応用機器1では、除霜運転時に除霜機構4を駆動させることで、供給部材6の雰囲気が暖められる。供給部材6の雰囲気が高温多湿状態となることや、供給部材6に水分が付着することで、供給部材6中の添加剤が水分と接触する。これにより熱交換システム2では、供給部材6から熱交換器3の表面に添加剤が供給可能となる。
【0032】
なお応用機器1の駆動時には、供給部材6は、空気中の水分を含んだ状態で凍結する場合がある。このような場合、応用機器1では、除霜運転時に除霜機構4を駆動させることで供給部材6の雰囲気が高温多湿状態となり、供給部材6に含まれる水分の氷が融解する。よって、応用機器1の駆動時に供給部材6が凍結する場合でも、供給部材6から熱交換器3の表面に添加剤が供給可能となる。
【0033】
[供給部材の具体例]
図3は、
図1の供給部材6の内部構造を示す拡大図である。
図3に示すように、供給部材6は、添加剤を担持する複数の担持体60と、複数の担持体60を分散させた状態で、添加剤を担持体60から供給部材6の外部へ放出可能に支持する支持体61とを含有する。
【0034】
本実施形態の担持体60は、多孔質の粒状物である。この粒状物の外径は、適宜設定可能であり、例えば数μmの値に設定できる。また一例として、この粒状物は、細孔容積を数mL/gの値、細孔径を十数nmの値、比表面積を数百m2/gの値にそれぞれ設定できる。粒状物の粒径、比表面積、細孔径は、例えば供給部材6に要求される添加剤の徐放性に適した値に設定される。一例として、多孔質の粒状物により担持体60を構成することで、担持体60の内部に豊富な添加剤を担持させることができる。本実施形態の担持体60は、無機成分を含有する。一例として、担持体60は、アモルファスシリカ等のガラスを含有する多孔質ガラスで構成されている。担持体60の材質としては、多孔質ガラス、活性炭、ゼオライト、ポーラスコンクリートのうちの少なくともいずれかを例示できる。
【0035】
本実施形態の支持体61は、水不溶性成分を含有する。一例として、この水不溶性成分は、水不溶性樹脂である。水不溶性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及び、アクリル変性ポリエチレン(例えば住友化学(株)製「アクリフト」)のうちの少なくともいずれかを例示できる。
【0036】
供給部材6では、複数の担持体60の間隙に支持体61が充填される。これにより、複数の担持体60は、互いに接触し又は離間した状態で、支持体61に支持されている。供給部材6が水分と接触すると、例えば、供給部材6の表層に位置する担持体60から添加剤が供給されて水分に溶出する。これにより、表層の担持体60の添加剤の濃度が低下する。その後、供給部材6の内部に位置する担持体60から供給部材6の表層に位置する担持体60に向けて添加剤が移動し、表層の担持体60の添加剤の濃度が上昇する。この表層の担持体60の添加剤が、再び水分に溶出する。この繰り返しにより、供給部材6から外部の水分に添加剤が供給される。添加剤としては、熱交換器3の表面に付着した水分に対し、熱交換器3の表面に対する接触角を減少可能なものを適宜選択可能である。一例として、添加剤は界面活性剤を含む。ここで言う界面活性剤とは、ノニオン(非イオン)系界面活性剤である。この界面活性剤は、親水基と疎水基とを分子構造に有する。
【0037】
ノニオン性界面活性剤としては、脂肪酸グリセリンエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ショ糖エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤を例示できる。界面活性剤はこれに限定されず、使用対象や環境等に応じて好適に選択することができる。
【0038】
供給部材6は、一例として、20重量%以上50重量%以下の支持体61と、10重量%以上30重量%以下の担持体60と、残部から形成される組成物とを含有する。添加剤は、この残部が含有している。供給部材6の組成比率は、これに限定されない。
【0039】
添加剤は、複数の熱交換器3の表面に付着した水分に対して添加剤を供給した場合、前記接触角を良好に低減させ、各熱交換器3の表面の広範囲な面積にわたって添加剤を拡散させることができる。この効果は、添加剤がノニオン系界面活性剤を含むことで更に向上する。添加剤は、界面活性剤の他に水溶性の有機溶剤等も含むことができる。有機溶剤としてはアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類等が挙げられる。このうち例えば、低級アルコールが好適である。低級アルコールとしては、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等が例示できる。
【0040】
本実施形態の添加剤は、熱交換器3の表面に付着した水分に対して、溶解、分散、又は拡散する。これにより、例えば鉛直方向と交差する方向においても、熱交換器3の表面に付着した水分に対して、供給部材6から添加剤を迅速に行き渡らせることができる。また一例として、本実施形態の添加剤は、界面活性剤のみを含有する。
【0041】
本実施形態では、熱交換器3の表面に付着した水分と、熱交換器3の表面に供給された添加剤との混合液中のノニオン系界面活性剤の濃度が、25℃における臨界ミセル濃度( CMC : critical micelle concentration )以上の値である。ここで言う臨界ミセル濃度は、溶液中で最初にミセルが形成される濃度を表す。一例として、混合液中のノニオン系界面活性剤の濃度が、100ppm以上の範囲の値である。これにより、混合液中のノニオン系界面活性剤の濃度が、混合液を改質し、熱交換器3の表面において排水及び乾燥に適した非常に薄い水膜を形成できるように調整されている。
【0042】
また本実施形態では、構造的に水が溜まり易く、熱交換器3の表面が水分により比較的腐食し易い位置において、熱交換器3の表面に対して添加剤の供給を促すように図られている。具体例として本実施形態では、熱交換器3は、複数のフィン31と、流通管30とを有する。またフィン31は、フィンカラー部31cを有する。よって、添加剤が供給される熱交換器3の表面位置には、複数のフィン31の少なくともいずれかの下端31aと、フィンカラー部31cと流通管30との間の隙間Gとのうちの1以上が含まれている。
【0043】
また本実施形態の熱交換システム2は、固定部材16と、ドレンパン17とを備える。よって、添加剤が供給される熱交換器3の表面位置には、熱交換器3が固定部材16と接触する接触位置と、熱交換器3がドレンパン17と対向する対向位置31bとのうちの1以上が含まれている。本実施形態では、下端31aの一部は対向位置31bと重なっている。
【0044】
次に供給部材6の製造方法を例示する。一例として、担持体60、支持体61、及び添加剤を加熱混練してストランドを形成する。このストランドを所定寸法に切断した後、切片を射出成形することで、所望形状の供給部材6が得られる。供給部材6を射出成形により製造すれば、例えば熱交換器3の形状な熱交換システム2の内部スペース等に合わせて供給部材6の形状やサイズを容易に設定できる。このように、材料を加熱混練し且つ射出成形して供給部材6を製造する場合、担持体60の材質としては、混練に耐えうる強度を有し、且つ、射出成形時の温度域での耐熱性を有するものが好適である。また支持体61及び添加剤の材質としては、前記射出成形時の温度域での耐熱性を有するものが好適である。
【0045】
供給部材6の形状は、長尺状に限定されず、例えば楕円球等の球状や直方体等でもよい。例えば、円柱状の供給部材6を、複数のフィン31の配列方向に長手方向が沿うように熱交換器3の頂部に配置することで、各熱交換器3の表面の広範囲な面積にわたって添加剤を効率よく拡散させることができる。
【0046】
供給部材6は、その他の成分を含んでいてもよい。当該成分としては、例えば、前記添加剤とは別の界面活性剤、エステル、塩類、消泡剤、粘度調整剤、香料、着色料、pH調整剤、酸化防止剤、タルクやシリカ等の無機物のうちの少なくとも1つを例示できるが、これに限定されない。また、熱交換システム2が備える供給部材6の数は限定されない。
【0047】
[熱交換システム及び応用機器の駆動]
応用機器1の冷却運転時には、熱交換器3から排出されるガス状の熱媒体が、コンプレッサー11により圧縮されて高温高圧状態となった後、コンデンサー12に送られる。ガス状の熱媒体は、コンデンサー12により冷却されて液体状の熱媒体となる。この液体状の熱媒体は、応用機器1が別途備えるキャピラリチューブを流通することにより低温低圧状態となった後、熱交換器3に供給される。
【0048】
また熱交換器3の周囲には、ファン14の駆動により、庫内スペースS1~S4の空気が供給されて複数のフィン31と接触する。これにより、熱交換器3の周囲の空気は、複数のフィン31を介して、熱交換器3の内部を流通する熱媒体との間で熱交換されて冷気となる。ファン14の駆動により、冷気は庫内スペースS1~S4に供給されて対象物の冷却に用いられる。熱交換に用いられた熱媒体は、流通管30を流通した後、再びコンプレッサー11に送られる。
【0049】
ここで庫内スペースS1~S4の空気は、水分を含有している。空気と熱媒体との熱交換により冷却された熱交換器3の表面は、当該空気と触れることで水分が付着する。この水分は、凝集して水滴となる。また水滴は、熱交換器3により更に冷却されると氷結する。氷結した水滴が累積的に熱交換器3の表面に付着することで、熱交換器3の表面に霜が付着する。
【0050】
従来、熱交換器の表面に水分が付着すると、熱交換器の表面が腐食する。また、水の比熱、熱伝導率、潜熱、又は顕熱等の影響により、熱交換器の熱交換効率が低下する。また、フィン31同士の間隙が水分により閉塞されると、熱交換器内の空気の流通が阻害されて熱交換器の熱交換効率が低下する。
【0051】
ここで本実施形態の熱交換システム2では、供給部材6の雰囲気が高温多湿状態となることや、供給部材6に水分が付着することで、添加剤が水分と接触する。これにより、供給部材6から熱交換器3の表面に添加剤が供給される。添加剤により、熱交換器3の表面に対する水分の接触角が減少する。熱交換システム2では、添加剤がノニオン系界面活性剤を含み、混合液中の前記ノニオン系界面活性剤の濃度が、25℃における臨界ミセル濃度以上の値であるため、混合液の表面張力(言い換えると表面エネルギー)が低下し、熱交換器3の表面が高度に親水化される。これにより、熱交換器3の濡れ性が向上して、水膜の表面積が増大して水分の乾燥速度が向上する。また、熱交換器3の表面の液切れ性が向上するため、水滴が相当に小さい場合でも、水滴が熱交換器3の表面から容易に転落する。よって、例えばフィン31に水滴が付着しても、フィン31の下端31aから水滴を容易に落下させることができる。その結果、熱交換器3の表面から水分が早期に排出される。
【0052】
また、熱交換器3の表面の濡れ性が向上することで、混合液の熱交換器3の表面に非常に薄い水膜が形成される。これにより、乾燥処理から熱交換器3の表面に付着する水分量が低減される。このため、熱交換器3の表面に水分が長時間付着して熱交換器3の表面が腐食したり、熱交換システム2の熱交換率が低下したりするのを防止できる。
【0053】
ここで一般に、金属表面に薄い水膜が形成される場合、雰囲気中の酸素成分が水膜へ拡散し、水膜中の拡散酸素量の増大によって金属表面の腐食が進行し易くなることも考えられる。しかしながら本実施形態では、熱交換器3の表面に薄い水膜が形成されても、熱交換器3の表面から水分が早期に排出されるため、熱交換器3の表面が濡れた状態が持続しにくく、このような腐食の進行を回避できる。言い換えると、熱交換器3の表面の腐食が進行する時間である濡れ時間を短縮できる。その結果、熱交換器3の表面の腐食を良好に防止できる。
【0054】
また、熱交換器3の表面に薄い水膜が形成されることで、熱交換器3の表面に空気中の不純物が付着した場合でも、不純物が水膜と共に速やかに排出され、熱交換器3の表面を清浄な状態に維持できる。また、熱交換器3の周囲からの排水が促進されるため、熱交換システム2の内部での不要な湿度上昇を抑制できる。これにより、熱交換システム2の内部に腐食が生じ易い環境が形成されるのを抑制できる。
【0055】
応用機器1の冷却運転時間が所定時間に達したと制御部5が判定すると、制御部5は、除霜運転を開始させるように除霜機構4を制御する。除霜機構4は、一例として、除霜ヒーター13により、熱交換器3の周囲の空気を加熱すると共に、筐体7の内部で加熱空気を対流させる。これにより、熱交換器3の表面の霜は、加熱空気と接触して融解する。また除霜機構4は、一例として、除霜ヒーター13の輻射により、熱交換器3の表面の霜を融解する。ここで本実施形態では、上記したように、熱交換器3の表面に非常に薄い水膜が形成されることで、熱交換器3の表面に付着する水分量を低減できる。従って、熱交換器3の表面で水膜が凍結する場合でも、除霜機構4の駆動により水膜が融解し、熱交換器3の表面から水分が早期に排出されることとなる。
【0056】
除霜機構4による除霜運転が継続し、除霜温度検知部15の検知信号により、熱交換システム2の配管温度が所定温度に達したと制御部5が判定すると、制御部5は、除霜機構4を停止させる。その後、制御部5は、再冷却運転を開始させるように、バルブ、コンプレッサー11、ファン14等を制御する。
【0057】
(添加剤の効果に関する詳細)
図4は、従来の水分前後における熱交換器の表面(ここでは一例としてフィン)とその周辺の様子を模式的に示す図である。
図4に示すように、従来の冷凍装置では、熱交換器の表面が空気と熱媒体との熱交換により冷却されると、表面に水分(結露水)が付着する(
図4(a))。この水分は、雰囲気や、熱交換器の表面の温度低下により、凍結して霜となる場合がある。
【0058】
熱交換器の表面に水分が付着することで、多数の水滴や、厚い水膜が形成される。また、フィンの下端等の熱交換器の表面の下端には、水滴が溜まる(
図4(b))。このようにフィンに水分が付着した状態で、除霜運転後に冷凍装置が庫内を設定温度まで再冷却する再冷却運転を行うと、水分が再凍結されて氷として残留する。この氷の上に更なる霜の付着が起こるため、累積的に霜が堆積する(
図4(c))。これにより、熱交換器の正常な熱交換が妨げられ、冷凍装置の熱交換率が低下する。また、水分の付着により、熱交換器の表面が腐食する。
【0059】
図5は、第1実施形態の水分除去前後における熱交換器3の表面(ここでは一例としてフィン31)とその周辺の様子を模式的に示す図である。
図5に示すように、応用機器1では、熱交換器3の表面に水分が付着すると、(
図5(a))、熱交換器3の表面に水分と添加剤とを含む混合液が生じる。この混合液中の水分は、供給部材6により供給される添加剤により改質される。また、隣接する水滴は、親水性により容易に結合し、自重によりフィン31の表面を転落(滑落)する。また、微小な水滴であっても、添加剤により、水分の表面張力が低減されるため、フィン31の表面を容易に転落する。これによりフィン31の表面から効率よく排水される(
図5(b))。また、フィン31の表面上の水分が添加剤により改質されて親水化され、フィン31の表面に広く広がり、非常に薄い水膜が形成される。この水膜に対し、雰囲気の空気、及び、フィン31の熱が伝熱され易くなる。その結果、排水効果が更に高められ、フィン31からほとんどの水分が速やかに排出される(
図5(c))。
【0060】
これにより応用機器1では、熱交換器3の表面の腐食を防止しながら、長期間にわたって応用機器1の優れた熱交換率が得られる。このため、応用機器1の全体での省電力性を向上できる。また、熱交換器3の表面に対する累積的な霜の堆積が防止されることにより、1回の除霜運転で除霜すべき除霜量を低減できる。これにより、除霜時間が短縮される。また、除霜のために必要な熱量が抑制されることで、除霜運転中における庫内温度の上昇も比較的抑制される。このため、冷蔵又は冷凍される庫内の対象物の温度上昇も抑制できる。また、除霜運転の頻度を低減できる。
【0061】
以上説明したように、熱交換システム2及び応用機器1によれば、供給部材6から供給される添加剤により、熱交換器3の表面に付着した水分の前記表面に対する接触角が減少し、熱交換器3の表面が親水化される。混合液中のノニオン系界面活性剤の濃度が、25℃における臨界ミセル濃度以上の値であるため、熱交換器3の表面上の混合液の表面張力が低下し、熱交換器3の表面が高度に親水化される。よって、熱交換器3の表面の濡れ性を向上させ、水膜の表面積を増大できる。このため、乾燥速度を速めて、熱交換器3の表面から水分を速やかに排出できる。結果として、熱交換器3の表面に付着した水分による熱交換システム2の腐食、及び、熱交換効率の低下を防止できる。
【0062】
また、熱交換器3の表面上の混合液の表面張力が低下し、熱交換器3の表面が高度に親水化されることで、熱交換器3の表面の液切れ性が向上し、乾燥初期から乾燥すべき水量を低減できる。このため、熱交換器3の表面に水分が長時間付着することで、例えば水膜中の酸素拡散により熱交換器3の表面の腐食が進行するのを防止できる。
【0063】
これらの諸効果は、熱交換器3の表面に対して直接的な表面処理を行うことなく、熱交換器3の表面に付着した水分を添加剤により改質することで得られる。よって例えば、熱交換器3の表面に樹脂皮膜を形成し、樹脂皮膜を劣化前に交換したり、腐食防止対象毎に腐食防止剤を予め選択したりする必要がない。このため、熱交換システム2において、熱交換器3の表面に水分が付着しても、比較的少ない作業負担で、熱交換器3の腐食を防止すると共に熱交換器3からの排水を促進することにより、優れた熱交換効率が長期間得られる。
【0064】
また本実施形態では、混合液中のノニオン系界面活性剤の濃度が、100ppm以上の範囲の値である。これにより、ノニオン系界面活性剤の濃度を前記臨界ミセル濃度以上の値に設定し易くできる。
【0065】
また一例として、熱交換システム2では、添加剤が供給される熱交換器3の表面位置に、複数のフィン31の少なくともいずれかの下端31aと、フィンカラー部31cと流通管30との間の隙間Gとのうちの1以上が含まれている。また熱交換システム2では、添加剤が供給される熱交換器3の表面位置に、熱交換器3が固定部材16と接触する接触位置と、熱交換器3がドレンパン17と対向する対向位置31bとのうちの1以上が含まれていてもよい。これにより、例えば、熱交換器3の表面のうち比較的腐食し易い箇所での腐食を良好に防止できる。
【0066】
また供給部材6は、添加剤を担持する複数の担持体60と、複数の担持体を分散させた状態で、添加剤を担持体から供給部材6の外部へ放出可能に支持する支持体61とを含む。
【0067】
上記構成によれば、分散された複数の担持体60により添加剤を担持することで、各担持体60から熱交換器3の表面に付着した水分に対して広範囲に添加剤を供給し易くできる。また支持体61により、添加剤を複数の担持体60から供給部材6の外部へ放出可能に複数の担持体60を支持することで、担持体60を支持しながら、供給部材6から熱交換器3の表面に対して添加剤を安定して供給できる。
【0068】
また一例として、担持体60は、多孔質の粒状物である。これにより、担持体60の孔内に豊富な添加剤を保持させて、供給部材6から熱交換器3の表面に対して添加剤を徐放させ、熱交換器3の表面に付着した水分に添加剤を熱交換システム2の駆動初期から長期間にわたり供給できる。
【0069】
また本実施形態の添加剤は、熱交換器3の表面に付着した水分に対して、溶解、分散、又は拡散する。これにより、熱交換器3の表面に付着した水分に対して、供給部材6から添加剤を迅速に行き渡らせることができる。
【0070】
なお、リンを含む銅管を用いて熱交換器3が構成される場合、熱交換器3に応力が掛かると、熱交換器3の表面が腐食して割れ(応力腐食割れ)を生じることがある。また、ステンレス管を用いて熱交換器3が構成される場合、熱交換器3の表面に塩化物ガスが接触すると、熱交換器3の表面が腐食して割れ(応力腐食割れ)を生じることがある。また熱交換システム2の内部において、空気の流れが生じ易い場所に熱交換器3が配置されている場合、塩化物ガスや、その他の腐食性ガスが熱交換器3の表面に接触する場合がある。これに対して本実施形態では、上記したように熱交換器3の表面の腐食が防止されるため、このような割れを防止することもできる。以下、第2実施形態について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
【0071】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る応用機器101の模式図である。
図6に示される本実施形態に係る応用機器101は、空調装置であり、熱交換システム102を備える。また応用機器101は、室内機120と室外機121とを備える。熱交換システム102は、室内空気と熱媒体とを熱交換する室内側熱交換器103、外気と熱媒体とを熱交換する室外側熱交換器106、室外側熱交換器106に添加される前記添加剤を保持する供給部材6、室外側熱交換器106を除霜する除霜機構104、及び、制御部105を備える。室内機120は、室内側熱交換器103を有する。室外機121は、室外側熱交換器106、供給部材6、除霜機構104、及び制御部105を有する。
【0072】
また熱交換システム102は、室外側熱交換器106の表面温度が、除霜機構104が除霜運転を開始する際の開始温度に達したか否かを検知する除霜温度検知部115を備える。また熱交換システム102は、室内側熱交換器103から排出される熱媒体を減圧する減圧器107と、室外側熱交換器106から排出される熱媒体を加圧するコンプレッサー111とを有する。熱交換器103、106は、配管R1、R2により接続される。熱媒体は、配管R1、R2を通じて、熱交換器103、106を循環する。制御部105は、除霜機構104を制御する。熱交換システム102では、供給部材6から室外側熱交換器106の表面に添加剤が供給される。ここで除霜機構104は、一例として、コンプレッサー111と配管R1、R2とにより構成される。制御部105は、一時的に応用機器101を冷房運転することにより、熱交換器106を暖める。
【0073】
一例として応用機器101は、室内を暖房する暖房装置である。応用機器101の暖房運転時には、例えば、室内側熱交換器103において、室内側熱交換器103の内部を流通する高温高圧状態のガス状の熱媒体と、低温の室内空気とが熱交換される。これにより、室内空気が暖められる。熱媒体は、室内側熱交換器103から液体状となって排出され、配管R2を通じて室外機121に送られる。熱媒体は、室外機121において、減圧器107により減圧され、室外側熱交換器106に送られる。熱媒体は、室外側熱交換器106において、外気との熱交換によりガス状となる。この熱交換により、室外側熱交換器106の表面温度が低下する。室外側熱交換器106から排出されたガス状の熱媒体は、コンプレッサー111により圧縮されて高温高圧状態となり、配管R1を通じて室内機120に送られる。その後、当該熱媒体は、再び室内の暖房に用いられる。
【0074】
ここで、熱媒体により冷却された室外側熱交換器106の表面が、水分を含有する外気に触れることで、室外側熱交換器106の表面に水分が付着する。応用機器101の暖房運転時には、室外側熱交換器106は、外気と熱媒体とを熱交換させることにより冷却される。これにより、熱交換器106の表面に付着した水分は氷結する。この氷結した水分が累積的に付着することで、熱交換器106の表面に霜が付着する。
【0075】
本実施形態の応用機器101の暖房運転時において、熱交換器106の表面の霜の付着量が増大し、除霜温度検知部115の検知信号により、除霜温度検知部115の検知温度が閾値を超えたと制御部105が判定すると、制御部105は、制御部5と同様に除霜運転を開始させるように除霜機構104を制御する。除霜機構104は、応用機器101が一時的に冷房運転されることにより、熱交換器106を暖める。これにより、熱交換器106に付着していた霜が融解する。また、供給部材6に付着していた霜が融解する。
【0076】
以上の構成を有する熱交換システム102及び応用機器101においても、熱交換システム2及び応用機器1と同様の効果が得られる。即ち、室外側熱交換器106の表面に水分が付着した状態で、供給部材6から室外側熱交換器106の表面に添加剤が供給される。これにより、室外側熱交換器106の表面で水分の室外側熱交換器106の表面に対する接触角が減少し、室外側熱交換器106の表面の濡れ性が向上する。その結果、室外側熱交換器106の表面からの水分の排出が促進され、排水効果が向上される。よって、水分による室外側熱交換器106の表面の腐食を防止できると共に、熱交換システム102の熱交換効率の低下を防止できる。また、供給部材6から室外側熱交換器106の表面に対して添加剤を徐放することで、長期にわたって供給部材6の添加剤の保持量を維持できる。その結果、熱交換システム102及び応用機器101において、室外側熱交換器106の表面の腐食を防止できると共に、長期間にわたり優れた熱交換効率が得られる。
【0077】
なお、暖房装置として駆動される応用機器101は、熱媒体を使用する形式に限定されない。応用機器101は、例えば、ヒートポンプ式の給湯器、ヒートポンプ式の温水暖房装置、給湯による温水暖房装置、及び、電気自動車(EV)専用のヒートポンプ式暖房装置等であってもよい。
【0078】
(確認試験)
次に、本開示についての確認試験とその結果について以下に説明するが、本開示は以下の実施例の構成に限定されない。
[試験1]
以下の方法に基づき、ノニオン系界面活性剤の濃度と接触角との関係について調べた。まず、ノニオン系界面活性剤として、花王株式会社製「エマルゲンLS-106」を用いた。この界面活性剤を含む水溶液を前記混合液に見立てて調整した。水溶液中の界面活性剤濃度を0ppm以上1000ppm以下の範囲で変化させた。上記水溶液の液滴(5μL)を、無垢のアルミニウム板の表面に垂らし、接線法に基づいて接触角(°)を測定した。その結果を表1に示す。
図7は、試験1における界面活性剤濃度(ppm)と水(混合液)の接触角(°)との関係を示すグラフである。
【0079】
【0080】
表1及び
図7に示されるように、界面活性剤濃度が0ppmから上昇するのに伴い、接触角は急激に減少する。その後、界面活性剤濃度がおよそ約100ppm以上の範囲の値に達すると、水接触角の減少幅が小さくなることが確認された。これにより、当該界面活性剤では、界面活性剤濃度が約100ppm以上の範囲になると、水溶液(混合液)の親水化の効果が飽和することが確認された。
【0081】
ここで通常、液滴の表面張力は、液滴の接触角と相関関係にあり、液滴の接触角が飽和する状態では、表面張力も飽和するものと考えられる。ここで、界面活性剤を含む溶液の表面張力が、界面活性剤の濃度により飽和する場合、界面活性剤の濃度は、臨界ミセル濃度以上の濃度になっていると考えられる。本試験で使用した界面活性剤の場合、25℃における臨界ミセル濃度は、約100ppmであると考えられる。
【0082】
[試験2]
次に、以下の方法により、水分の付着により腐食が促進される条件下に熱交換器を配置した場合に上記各実施形態で奏される腐食防止効果を確認した。実施例1及び比較例1として、応用機器であるパナソニック(株)製冷蔵庫「NRーF606WPX」の熱交換器を一部切り出したサンプルを用いた。各サンプルは、複数の流通管30と、複数のフィン31とを有する。流通管30及びフィン31は、アルミニウム製である。次に、H2SO4
-(5ppm)、HCl(5ppm)、HNO3(5ppm)、CH3COOH(50ppm)を含む、比較例用の腐食溶液を準備した。また、前記比較例用の腐食溶液に対し、更にノニオン系界面活性剤(20000ppm)を含む実施例用の腐食溶液を準備した。このノニオン系界面活性剤としては、花王株式会社製「エマルゲンLS-106」を用いた。
【0083】
実施例1のサンプルに実施例用の腐食溶液を噴霧し、噴霧後のサンプルを50℃の恒温槽内で20分間保持した。この噴霧と保持のサイクルを繰り返し500回行った。また、比較例1のサンプルに比較例用の腐食溶液を噴霧し、噴霧後のサンプルを50℃の恒温槽内で20分間保持した。この噴霧と保持のサイクルを繰り返し500回行った。これにより、熱交換器の表面が結露したときと、熱交換器の表面の水分が乾燥したときとのサイクルを模擬して行い、熱交換器の表面の腐食を促進させた。
【0084】
ここで
図8は、試験2において実施例用の腐食溶液を噴霧したときの実施例1のサンプルの様子を示す写真である。
図9は、試験2において比較例用の腐食溶液を噴霧したときの比較例1のサンプルの様子を示す写真である。
図8に示すように、実施例1のサンプルでは、熱交換器の表面には、非常に薄く平滑な水膜が形成されることが確認された。
図9に示すように、これに対して比較例1のサンプルでは、熱交換器の表面には、大きく且つ厚みのある多数の水滴が付着することが確認された。
【0085】
上記試験を終えた後の実施例1及び比較例1の各サンプルについて、異なる6カ所の部分を切り出した。そして、実施例1の各切出し片(No.1~6)、及び、比較例1の各切出し片(No.7~12)の各表面から深さ方向に浸食するように形成された腐食の程度を確認し、最大腐食深さ(μm)を測定した。この結果を表2及び3に示す。
【0086】
【0087】
【0088】
表2に示すように、実施例1のサンプルでは、最大腐食深さは11μm以上93μm以下の範囲の値に抑制されることが確認された。表3に示すように、これに対して比較例1のサンプルでは、最大腐食深さは96μm以上373μm以下の範囲の値に達することが確認された。ここで
図10は、試験2における最大浸食深さが93μmの実施例1のサンプルの腐食の様子を示す写真である。
図11は、試験2における最大浸食深さが373μmの比較例1のサンプルの腐食の様子を示す写真である。
図10及び
図11に示すように、実施例1のサンプルは、比較例1のサンプルに比べて、腐食深さと共に腐食の広がりも抑制されることが確認された。具体的に実施例1のサンプルは、比較例1に比べて、腐食深さが1/4以下まで抑制されることが確認された。
【0089】
[試験3]
次に、以下の方法により、第1実施形態に基づき、応用機器が冷凍装置(冷蔵庫)である場合において、水分の付着により腐食が促進される条件下に熱交換器を配置した場合に奏される腐食防止効果をACM(Atmospheric Corrosion Monitor )型腐食センサ(以下、ACMセンサとも称する。)を用いて確認した。ACMセンサとしては、株式会社シュリンクス製「Al-Ag ACMセンサ」を用いた。
【0090】
実施例2及び比較例2として、応用機器であるパナソニック(株)製冷蔵庫「NR-F606WPX」を用いた。この応用機器の熱交換器の上部に対して供給部材6を固定したものを実施例2とした。この応用機器の熱交換器に対して供給部材6を取り付けなかったものを比較例2とした。実施例2及び比較例2の各熱交換器に対してACMセンサを取り付け、実施例2及び比較例2の各応用機器を約2週間にわたり駆動させ、応用機器の駆動中に熱交換器に流れる腐食電流を測定した。この測定結果を表4に示す。
【0091】
試験3において、熱交換器から排出されるドレン水中の供給部材6由来のノニオン系界面活性剤の濃度は、200ppm以上500ppm以下の範囲であり、平均すると340ppmであった。このことから、実施例2では、熱交換器の表面の混合液中のノニオン系界面活性剤の濃度は、25℃における臨界ミセル濃度以上の値であったことを確認した。
【0092】
【0093】
表4中、単位「mC/day」で表される数値は、1日当たりに流れる腐食電気量(mC単位)の実測値を示す。また単位「ng/day」で表される数値は、1日当たりの腐食による純AL基材の重量減少量(ng)の計算値を示す。また単位「ng/cm2day」で表される数値は、1日当たりの単位面積(cm2)の腐食による純AL基材の重量減少量(ng)の計算値を示す。また単位「μg/cm2 year」で表される数値は、1年当たりの単位面積(cm2)の腐食による純AL基材の重量減少量(μg)の計算値を示す。前記各計算値は、AL原子がイオン化したときのALイオンと電子との比率から、電気量の1/3相当のALの重量として計算した。
【0094】
表4に示されるように、実施例2の応用機器では、比較例2の応用機器に比べて、熱交換器の表面に付着した水分による腐食速度が半分以下(約40%以下)に抑制できることが確認された。なお、試験3で測定される腐食電流は、ACMセンサに用いられるAg部材と、応用機器に用いられる熱交換器のAl部材との間の強制ガルバニック腐食による腐食電流である。このため、実際の応用機器の腐食速度は、試験3での応用機器の腐食速度よりも緩慢になるものと推測される。
【0095】
(開示項目)
以下の項目は、本開示の熱交換システム、及び、応用機器の好ましい形態の開示である。
[項目1]
空気と、内部を流通する熱媒体とを熱交換して前記空気を冷却する熱交換器と、
前記熱交換器の表面に付着した前記空気中の水分の前記表面に対する接触角を減少させる添加剤を保持する供給部材と、を備え、
前記添加剤は、ノニオン系界面活性剤を含み、
前記供給部材から前記表面に対し、前記添加剤が供給され、
前記表面に付着した前記水分と、前記表面に供給された前記添加剤との混合液中の前記ノニオン系界面活性剤の濃度が、25℃における臨界ミセル濃度以上の値である、熱交換システム。
【0096】
[項目2]
前記混合液中の前記ノニオン系界面活性剤の濃度が、100ppm以上の範囲の値である、項目1に記載の熱交換システム。
【0097】
[項目3]
前記熱交換器は、複数のフィンと、前記複数のフィンと接触して前記熱媒体を流通させる流通管と、を更に有し、
前記添加剤が供給される前記熱交換器の表面位置に、前記複数のフィンの少なくともいずれかの下端と、前記流通管に対する前記フィンの接触部であるフィンカラー部と前記流通管との間の隙間と、のうちの1以上が含まれる、項目1又は2に記載の熱交換システム。
【0098】
[項目4]
前記熱交換器に前記供給部材を固定する固定部材と、
前記表面から落下する水分を受け止めるドレンパンと、を更に備え、
前記添加剤が供給される前記熱交換器の表面位置に、前記熱交換器が前記固定部材と接触する接触位置と、前記熱交換器が前記ドレンパンと対向する対向位置と、のうちの1以上が含まれる、項目1~3のいずれか1項に記載の熱交換システム。
【0099】
[項目5]
前記供給部材は、前記添加剤を担持する複数の担持体と、前記複数の担持体を分散させた状態で、前記添加剤を前記担持体から前記供給部材の外部へ放出可能に支持する支持体とを含有する、項目1~4のいずれか1項に記載の熱交換システム。
【0100】
[項目6]
前記担持体は、多孔質の粒状物である、項目5に記載の熱交換システム。
【0101】
[項目7]
前記添加剤は、前記表面に付着した水分に対して、溶解、分散、又は拡散する、項目1~6のいずれか1項に記載する熱交換システム。
【0102】
[項目8]
項目1~7のいずれかに記載の熱交換システムを備える、応用機器。
【0103】
[項目9]
対象物を冷蔵又は冷凍する冷凍装置である、項目8に記載の応用機器。
【0104】
[項目10]
室外機を備える空調装置であり、
前記熱交換器及び前記供給部材が、前記室外機に配置されている、項目8に記載の応用機器。
【0105】
本開示は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成及び方法を変更、追加、又は削除できる。供給部材6により供給される添加剤は、複数の成分を含有していてもよい。添加剤が複数の成分を含有する場合、添加剤は、例えば、熱交換器の表面に対する水分の接触角を減少させる機能を有する第1成分と、前記接触角を減少させるように第1成分の機能を活性化させる第2成分とを含んでいてもよい。
【0106】
また供給部材6は、熱交換器の表面に付着した水分に添加剤を供給可能に配置されていればよい。このため、例えば供給部材6と熱交換器の表面とは離隔して配置されていてもよい。この場合、熱交換器の表面に付着した水分に対し、供給部材6の添加剤が滴下されてもよいし、供給部材6とは別個の部材を介して添加剤が供給されてもよい。
【0107】
応用機器1、101は、自動により除霜運転を開始する構成に限定されず、例えば、ユーザの指示により除霜運転を開始する構成であってもよい。この場合、応用機器1の有する入力部に対して、除霜運転指示の入力がユーザによりなされると、制御部5は、除霜運転を開始させるように除霜機構4を制御してもよい。また熱交換システム102は、室内機120において、室内側熱交換器103の表面に付着した水分の前記表面に対する接触角を減少させる添加剤を保持する供給部材6を備えていてよい。
【符号の説明】
【0108】
1、101 応用機器
2、102 熱交換システム
3 熱交換器
6 供給部材
16 固定部材
17 ドレンパン
31c フィンカラー部
60 担持体
61 支持体
103 室内側熱交換器(熱交換器)
106 室外側熱交換器(熱交換器)
121 室外機