(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155728
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】回路モジュールとその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20231016BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
H01L25/08 Y
H01L25/08 B
H01L21/92 603Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065227
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 良隆
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 和弘
(57)【要約】
【課題】 導電性接合材の破損を補強材によって抑制するとともに、補強材の内部でのボイドの発生を抑制する。
【解決手段】 回路モジュールであって、特定表面(11a)に複数の電極パッド(12)を有する第1回路部品(11)と、特定表面(21a)に複数の電極パッド(22)を有する第2回路部品(21)を有する。導電性接合材が、前記第1回路部品の前記各電極パッドを、前記第2回路部品の対応する前記電極パッドに接合している。第1補強接合材が、前記導電性接合材に接触しておらず、前記第1回路部品の前記特定表面を前記第2回路部品の前記特定表面に接合している。前記第2補強接合材が、前記導電性接合材の周囲を覆うとともに前記第1補強接合材に接触する範囲に分布するとともに前記第1回路部品の前記特定表面を前記第2回路部品の前記特定表面に接合している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路モジュールであって、
特定表面(11a)に複数の電極パッド(12)を有する第1回路部品(11)と、
特定表面(21a)に複数の電極パッド(22)を有する第2回路部品(21)と、
導電性接合材(30)と、
第1補強接合材(41)と、
前記導電性接合材及び前記第1補強接合材とは異なる材料によって構成されている第2補強接合材(42)、
を有し、
前記第1回路部品の前記複数の電極パッドが前記第2回路部品の前記複数の電極パッドに対向するように、前記第1回路部品と前記第2回路部品が配置されており、
前記導電性接合材が、前記第1回路部品の前記各電極パッドを、前記第2回路部品の対応する前記電極パッドに接合しており、
前記第1補強接合材が、前記導電性接合材に接触しておらず、前記第1回路部品の前記特定表面を前記第2回路部品の前記特定表面に接合しており、
前記第2補強接合材が、前記導電性接合材の周囲を覆うとともに前記第1補強接合材に接触する範囲に分布するとともに前記第1回路部品の前記特定表面を前記第2回路部品の前記特定表面に接合している、
回路モジュール。
【請求項2】
前記導電性接合材が、導電性材料と樹脂の混合体である、請求項1に記載の回路モジュール。
【請求項3】
前記第1回路部品の前記複数の電極パッドが、前記第1回路部品の前記特定表面において第1方向に沿って線状に配列された列(14a)を構成するように配置されており、
前記第2回路部品の前記複数の電極パッドが、前記列に対向する位置で前記第1方向に沿って線状に配列されており、
前記第1補強接合材が、前記列から前記第1方向に対して交差する第2方向にずれた位置に配置されており、
前記第1補強接合材が、前記第1方向において、前記列の一方の端部(15a-1)の位置から前記列の他方の端部(15a-2)の位置まで連続して分布している、
請求項1または2に記載の回路モジュール。
【請求項4】
前記第1回路部品の前記複数の電極パッドが、前記第1回路部品の前記特定表面において第1方向に沿って線状に配列された第1列(14a、14c)と、前記第1列から前記第1方向に対して交差する第2方向にずれた位置で前記第1方向に沿って線状に配列された第2列(14b)を構成するように配置されており、
前記第2回路部品の前記複数の電極パッドが、前記第1列に対向する位置で前記第1方向に沿って線状に配列された列(24a、24c)と、前記第2列に対向する位置で前記第1方向に沿って線状に配列された列(24b)とを構成するように配置されており、
前記第1補強接合材が、前記第2方向において、前記第1列と前記第2列の間に配置されている、
請求項1または2に記載の回路モジュール。
【請求項5】
前記第1回路部品と前記第2回路部品の一方が、ゲート型のスイッチング素子を有しており、
前記第1回路部品と前記第2回路部品の他方が、前記スイッチング素子のゲート電圧を制御するゲート制御回路を有している、
請求項1に記載の回路モジュール。
【請求項6】
前記第2補強接合材の線膨張率が、前記導電性接合材の線膨張率よりも高い、請求項1に記載の回路モジュール。
【請求項7】
前記第1補強接合材の線膨張率が、前記導電性接合材の線膨張率よりも低い、請求項1に記載の回路モジュール。
【請求項8】
前記第1補強接合材の線膨張率が、前記第2補強接合材の線膨張率の半分よりも高い、請求項1に記載の回路モジュール。
【請求項9】
前記第1補強接合材が、互いから分離された複数の島を構成するように配置されており、
前記第2補強接合材が、前記各島の周囲を覆っている、
請求項1に記載の回路モジュール。
【請求項10】
前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の少なくとも一方が、凹部(50)を有しており、
前記第1補強接合材が、前記凹部内に配置されている、
請求項1に記載の回路モジュール。
【請求項11】
前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の少なくとも一方が、環状に伸びる溝(52)を有しており、
前記第1補強接合材が、前記溝に囲まれた範囲(53)内に配置されており、
前記第1補強接合材の外周縁が、前記溝内に配置されている、
請求項1に記載の回路モジュール。
【請求項12】
前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の少なくとも一方が、第1表面(61)と前記第1表面よりも表面粗さが粗い第2表面(62)を有しており、
前記第1補強接合材が、前記第1表面に接している、
請求項1に記載の回路モジュール。
【請求項13】
前記第1補強接合材が、前記導電性接合材と同じ材料によって構成されている、請求項1に記載の回路モジュール。
【請求項14】
前記第1回路部品と前記第2回路部品の対向部において前記導電性接合材による接合範囲の面積の割合が15%以下である、請求項1に記載の回路モジュール。
【請求項15】
回路モジュールの製造方法であって、
第1回路部品と第2回路部品の間に導電性接合材と第1補強接合材を配置する工程であって、第1回路部品の特定表面に設けられた複数の電極パッドが第2回路部品の特定表面に設けられた複数の電極パッドに対向し、前記導電性接合材が前記第1回路部品の前記各電極パッドと前記第2回路部品の前記各電極パッドに接触し、前記第1補強接合材が前記導電性接合材に接触しない位置で前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面に接触するように前記第1回路部品、前記第2回路部品、前記導電性接合材、及び、前記第1補強接合材を配置する工程と、
前記第1回路部品と前記第2回路部品の積層体を加熱することによって、前記導電性接合材を前記第1回路部品の前記各電極パッドと前記第2回路部品の前記各電極パッドに固着させ、前記第1補強接合材を前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面に固着させる工程と、
前記導電性接合材及び前記第1補強接合材とは異なる材料によって構成されている第2補強接合材を前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の間に塗布する工程であって、前記第2補強接合材が前記導電性接合材の周囲を覆うとともに前記第1補強接合材に接触する範囲に分布するとともに前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面に接触するように前記第2補強接合材を塗布する工程と、
前記積層体を加熱することによって、前記第2補強接合材を、前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面に固着させる工程、
を有する製造方法。
【請求項16】
前記第1補強接合材が、前記導電性接合材と同じ材料によって構成されており、
前記第1回路部品と前記第2回路部品の間に前記導電性接合材と前記第1補強接合材を配置する工程が、前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の一方に前記導電性接合材と前記第1補強接合材を一度に塗布する工程を有する、
請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記第1回路部品が前記第1回路部品の前記特定表面に開口する貫通孔(70)を有している、または、前記第2回路部品が前記第2回路部品の前記特定表面に開口する貫通孔(70)を有しており、
前記第2補強接合材を塗布する前記工程が、前記貫通孔を介して前記第2補強接合材を前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の間に注入する工程を有する、請求項15または16に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、回路モジュールとその製造方法に関する。
【0002】
特許文献1には、チップ部品を回路基板に接合して回路モジュールを製造する技術が開示されている。この技術では、チップ部品に設けられた電極パッドを、回路基板に設けられた電極パッドに導電性接合材(具体的には、はんだ)を介して接合する。その後、導電性接合材の周囲に補強材としてアンダーフィル樹脂を塗布して、導電性接合材を保護する。導電性接合材を電極パッドに固着させるときに、回路モジュールが加熱される。導電性接合材が電極パッドに固着した後に回路モジュールの温度が低下する過程で、導電性接合材に高い熱応力が加わる。特許文献1の技術では、導電性接合材を電極パッドに固着させる段階ではアンダーフィル樹脂が設けられていないので、熱応力によって導電性接合材が破損する場合がある。
【0003】
引用文献2には、回路モジュールに使用される補強材として、先塗布型の封止材が開示されている。先塗布型の封止材は、半導体チップと回路基板の間に導電性接合材を配置するときに、導電性接合材の周囲に塗布される。その後、回路モジュールを加熱して、導電性接合材を電極パッドに固着させる。このとき、封止材も硬化する。その後、回路モジュールの温度が低下するときに導電性接合材に熱応力が加わる。しかし、導電性接合材だけでなく封止材によっても半導体チップと回路基板が接続されているので、導電性接合材に加わる熱応力が低減される。これによって、導電性接合材の破損が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-130961号公報
【特許文献2】特開2017-143310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電性接合材を加熱するときに、導電性接合材からアウトガスが発生する。例えば、導電性接合材が導電性ペースト(すなわち、導電性材料と樹脂の混合体)である場合には、加熱によって導電性ペーストから溶剤が蒸発してアウトガスが発生する。また、導電性接合材がはんだである場合には、加熱によってフラックスが蒸発してアウトガスが発生する。特許文献2の技術では、導電性接合材が封止材に覆われた状態で加熱されるので、導電性接合材から発生したアウトガスによって封止材の内部にボイドが形成される。その結果、回路モジュールの信頼性が低下する。本明細書では、回路モジュールにおいて、導電性接合材の破損を補強材によって抑制するとともに、補強材の内部でのボイドの発生を抑制する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する回路モジュールは、特定表面に複数の電極パッドを有する第1回路部品と、特定表面に複数の電極パッドを有する第2回路部品と、導電性接合材と、第1補強接合材と、前記導電性接合材及び前記第1補強接合材とは異なる材料によって構成されている第2補強接合材、を有する。前記第1回路部品の前記複数の電極パッドが前記第2回路部品の前記複数の電極パッドに対向するように、前記第1回路部品と前記第2回路部品が配置されている。前記導電性接合材が、前記第1回路部品の前記各電極パッドを、前記第2回路部品の対応する前記電極パッドに接合している。前記第1補強接合材が、前記導電性接合材に接触しておらず、前記第1回路部品の前記特定表面を前記第2回路部品の前記特定表面に接合している。前記第2補強接合材が、前記導電性接合材の周囲を覆うとともに前記第1補強接合材に接触する範囲に分布するとともに前記第1回路部品の前記特定表面を前記第2回路部品の前記特定表面に接合している。
【0007】
この回路モジュールの製造時には、導電性接合材が第1回路部品の各電極パッドと第2回路部品の各電極パッドに接触し、第1補強接合材が導電性接合材に接触しない位置で第1回路部品の特定表面と第2回路部品の特定表面に接触するように導電性接合材、及び、第1補強接合材を配置して、第1回路部品と第2回路部品の積層体を加熱することができる。加熱を行うと、導電性接合材が第1回路部品の各電極パッドと第2回路部品の各電極パッドに固着する。また、第1補強接合材が、第1回路部品の特定表面と第2回路部品の特定表面に固着する。また、加熱時に導電性接合材からアウトガスが発生するが、第1補強接合材が導電性接合材に接触していないので、第1補強接合材中にボイドが生じることが抑制される。その後、積層体の温度が低下すると、導電性接合材に熱応力が加わる。しかしながら、第1補強接合材が第1回路部品と第2回路部品を接合しているので、導電性接合材に加わる熱応力が軽減される。これにより、導電性接合材の破損が抑制される。その後、導電性接合材の周囲を覆うように第2補強接合材が形成されることで、導電性接合材が保護され、回路モジュールの信頼性が確保される。また、第2補強接合材は、導電性接合材が各電極パッドに固着した後に形成されるので、導電性接合材から生じるアウトガスの影響を受けない。このため、第2補強接合材中にボイドが生じることが抑制される。このように、この回路モジュールでは、加熱後の温度低下時における導電性接合材の破損を抑制できるとともに、第1補強接合材と第2補強接合材の内部におけるボイドの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1のII-II線(
図3の直線16a)における回路モジュールの断面図。
【
図5】距離L1とせん断応力Sの関係を示すグラフ。
【
図8】補強接合材41が存在しない場合に導電性接合材に加わるせんだん応力の面積比率Mに対する変化を示すグラフ。
【
図15】実施例8の回路モジュールの製造工程の説明図。
【
図16】実施例8の回路モジュールの製造工程の説明図。
【
図17】実施例8の回路モジュールの製造工程の説明図。
【
図18】実施例9の回路モジュールの製造工程の説明図。
【
図19】実施例9の回路モジュールの製造工程の説明図。
【
図20】実施例9の回路モジュールの製造工程の説明図。
【
図21】実施例10の回路モジュールの製造工程の説明図。
【
図22】実施例10の回路モジュールの製造工程の説明図。
【
図23】実施例10の回路モジュールの製造工程の説明図。
【
図27】実施例14の回路モジュールの電極パッド周辺の拡大平面図。
【
図28】実施例15の回路モジュールの電極パッド周辺の拡大平面図。
【
図29】実施例16の回路モジュールの電極パッド周辺の拡大平面図。
【
図30】実施例14~16の回路モジュールの製造方法の一例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書が開示する一例の回路モジュールでは、前記導電性接合材が、導電性材料と樹脂の混合体であってもよい。
【0010】
この構成では、導電性接合材からアウトガスが出やすいので、ボイドの発生を抑制する効果がより有効である。
【0011】
本明細書が開示する一例の回路モジュールでは、前記第1回路部品の前記複数の電極パッドが、前記第1回路部品の前記特定表面において第1方向に沿って線状に配列された列を構成するように配置されていてもよい。前記第2回路部品の前記複数の電極パッドが、前記列に対向する位置で前記第1方向に沿って線状に配列されていてもよい。前記第1補強接合材が、前記列から前記第1方向に対して交差する第2方向にずれた位置に配置されていてもよい。前記第1補強接合材が、前記第1方向において、前記列の一方の端部の位置から前記列の他方の端部の位置まで連続して分布していてもよい。
【0012】
この構成によれば、両端部の電極パッドに接する部分で導電性接合材に加わる熱応力を効果的に低減できる。
【0013】
本明細書が開示する一例の回路モジュールでは、前記第1回路部品の前記複数の電極パッドが、前記第1回路部品の前記特定表面において第1方向に沿って線状に配列された第1列と、前記第1列から前記第1方向に対して交差する第2方向にずれた位置で前記第1方向に沿って線状に配列された第2列を構成するように配置されていてもよい。前記第2回路部品の前記複数の電極パッドが、前記第1列に対向する位置で前記第1方向に沿って線状に配列された列と、前記第2列に対向する位置で前記第1方向に沿って線状に配列された列とを構成するように配置されていてもよい。前記第1補強接合材が、前記第2方向において、前記第1列と前記第2列の間に配置されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、各電極パッドに接する部分で導電性接合材に加わる熱応力を効果的に低減できる。
【0015】
本明細書が開示する一例の回路モジュールでは、前記第1回路部品と前記第2回路部品の一方が、ゲート型のスイッチング素子を有していてもよい。前記第1回路部品と前記第2回路部品の他方が、前記スイッチング素子のゲート電圧を制御するゲート制御回路を有していてもよい。
【0016】
本明細書が開示する一例の回路モジュールでは、前記第2補強接合材の線膨張率が、前記導電性接合材の線膨張率よりも高くてもよい。
【0017】
この構成によれば、第2補強接合材の形成後に導電性接合材で生じる残留応力を効果的に低減できる。
【0018】
本明細書が開示する一例の回路モジュールでは、前記第1補強接合材の線膨張率が、前記導電性接合材の線膨張率よりも低くてもよい。
【0019】
この構成によれば、第2補強接合材の形成後に第2補強接合材の端部で生じる残留応力を効果的に低減できる。
【0020】
本明細書が開示する一例の回路モジュールでは、前記第1補強接合材の線膨張率が、前記第2補強接合材の線膨張率の半分よりも高くてもよい。
【0021】
この構成によれば、第2補強接合材の形成後に第1補強接合材と第2補強接合材の界面で生じる残留応力を効果的に低減できる。
【0022】
本明細書が開示する一例の回路モジュールでは、前記第1補強接合材が、互いから分離された複数の島を構成するように配置されていてもよい。前記第2補強接合材が、前記各島の周囲を覆っていてもよい。
【0023】
本明細書が開示する一例の回路モジュールでは、前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の少なくとも一方が、凹部を有していてもよい。前記第1補強接合材が、前記凹部内に配置されていてもよい。
【0024】
この構成によれば、第1補強接合材の接合範囲のばらつきを抑制できる。
【0025】
本明細書が開示する一例の回路モジュールでは、前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の少なくとも一方が、環状に伸びる溝を有していてもよい。前記第1補強接合材が、前記溝に囲まれた範囲内に配置されていてもよい。前記第1補強接合材の外周縁が、前記溝内に配置されていてもよい。
【0026】
この構成によれば、第1補強接合材の接合範囲のばらつきを抑制できる。
【0027】
本明細書が開示する一例の回路モジュールでは、前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の少なくとも一方が、第1表面と前記第1表面よりも表面粗さが粗い第2表面を有していてもよい。前記第1補強接合材が、前記第1表面に接していてもよい。
【0028】
この構成によれば、第1補強接合材の接合範囲のばらつきを抑制できる。
【0029】
本明細書が開示する一例の回路モジュールでは、前記第1補強接合材が、前記導電性接合材と同じ材料によって構成されていてもよい。
【0030】
この構成によれば、導電性接合材と第1補強接合材を一度に塗布できる。
【0031】
本明細書が開示する一例の回路モジュールでは、前記第1回路部品と前記第2回路部品の対向部において前記導電性接合材による接合範囲の面積の割合が15%以下であってもよい。
【0032】
また、本明細書は、回路モジュールの製造方法を提案する。この製造方法は、第1~第4工程を有する。第1工程は、第1回路部品と第2回路部品の間に導電性接合材と第1補強接合材を配置する工程である。第1工程では、第1回路部品の特定表面に設けられた複数の電極パッドが第2回路部品の特定表面に設けられた複数の電極パッドに対向し、前記導電性接合材が前記第1回路部品の前記各電極パッドと前記第2回路部品の前記各電極パッドに接触し、前記第1補強接合材が前記導電性接合材に接触しない位置で前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面に接触するように前記第1回路部品、前記第2回路部品、前記導電性接合材、及び、前記第1補強接合材を配置する。第2工程では、前記第1回路部品と前記第2回路部品の積層体を加熱することによって、前記導電性接合材を前記第1回路部品の前記各電極パッドと前記第2回路部品の前記各電極パッドに固着させ、前記第1補強接合材を前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面に固着させる。第3工程は、前記導電性接合材及び前記第1補強接合材とは異なる材料によって構成されている第2補強接合材を前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の間に塗布する工程である。第3工程では、前記第2補強接合材が前記導電性接合材の周囲を覆うとともに前記第1補強接合材に接触する範囲に分布するとともに前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面に接触するように前記第2補強接合材を塗布する。第4工程では、前記積層体を加熱することによって、前記第2補強接合材を、前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面に固着させる。
【0033】
この製造方法によれば、導電性接合材の破損を補強材によって抑制するとともに、補強材の内部でのボイドの発生を抑制することができる。
【0034】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記第1補強接合材が、前記導電性接合材と同じ材料によって構成されていてもよい。前記第1回路部品と前記第2回路部品の間に前記導電性接合材と前記第1補強接合材を配置する工程が、前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の一方に前記導電性接合材と前記第1補強接合材を一度に塗布する工程を有していてもよい。
【0035】
この構成によれば、導電性接合材と第1補強接合材を一度に塗布できる。
【0036】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記第1回路部品が前記第1回路部品の前記特定表面に開口する貫通孔を有しているか、または、前記第2回路部品が前記第2回路部品の前記特定表面に開口する貫通孔を有していてもよい。前記第2補強接合材を塗布する前記工程が、前記貫通孔を介して前記第2補強接合材を前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の間に注入してもよい。
【0037】
この構成によれば、第1回路部品の特定表面と第2回路部品の特定表面の間に好適に第2補強接合材を注入できる。
【実施例0038】
図1に示す実施例の回路モジュール10は、回路部品11と回路部品21を有している。回路部品11は、回路部品21に接合されている。回路部品21は、パワー半導体であるゲート型のスイッチング素子を内蔵している。回路部品11は、回路部品21が内蔵するスイッチング素子のゲート電圧を制御するゲート制御回路を内蔵している。
【0039】
図2に示すように、回路部品11の表面11aには、複数の電極パッド12が設けられている。表面11aのうちの電極パッド12以外の部分は、絶縁樹脂13によって構成されている。なお、図示していないが、絶縁樹脂13の内部には、ゲート制御回路を構成する半導体チップ、配線等が設けられている。
【0040】
回路部品21の表面21aには、複数の電極パッド22が設けられている。表面21aのうちの電極パッド22以外の部分は、絶縁樹脂23によって構成されている。なお、図示していないが、絶縁樹脂23の内部には、スイッチング素子を構成する半導体チップ、配線等が設けられている。
【0041】
回路部品21の表面21aが回路部品11の表面11aと対向するように、回路部品11は回路部品21上に積層されている。回路部品11の各電極パッド12は、回路部品21の各電極パッド22と1対1の関係で対向している。すなわち、各電極パッド12は、複数の電極パッド22のうちの対応する1つと対向している。
【0042】
図3は、回路部品11、21をこれらの積層方向に沿って上から見た平面図を示している。なお、各電極パッド12は各電極パッド22と1対1の関係で対向しているので、
図3では電極パッド12、22は重なった状態で示されている。また、
図3では、回路部品11の外形を破線で示している。
図3に示すように、複数の電極パッド12は、回路部品11の表面11aにおいて、3つの列14a~14cを構成するように配置されている。列14a~14cのそれぞれでは、複数の電極パッド12が、x方向に沿って線状に等間隔で配列されている。列14cは、列14aが伸びる直線16aと同一直線上に配置されている。列14cは、列14aからx方向に間隔を開けて配置されている。列14bは、列14a、14cからy方向(すなわち、x方向に対して直交する方向)にずれた位置に配置されている。すなわち、列14bが配列されている直線16bは、列14a、14cが配列されている直線16aからy方向にずれた位置に配置されている。列14bは、x方向において、列14aと列14cの間に配置されている。上述したように、回路部品21の電極パッド22は、回路部品11の電極パッド12と重なるように配置されている。したがって、電極パッド22は、回路部品21の表面21aにおいて、列14a~14cに沿って伸びる列24a~24cを構成するように配置されている。すなわち、列24a~24cのそれぞれでは、複数の電極パッド22が、x方向に沿って線状に等間隔で配列されている。列24a、24cは、列14a、14cに対向する位置で、直線16aと同一直線上に配置されている。列24bは、列14bに対向する位置で、直線16bと同一直線上に配置されている。
【0043】
図2に示すように、回路部品11と回路部品21の間に、導電性接合材30が配置されている。導電性接合材30は、導電性材料と樹脂の混合体によって構成されている。但し、導電性接合材30は、はんだによって構成されていてもよい。導電性接合材30は、互いに対向する電極パッド12と電極パッド22の各ペアの間に配置されている。導電性接合材30は、その上部の電極パッド12とその下部の電極パッド22に固着している。導電性接合材30は、電極パッド12をその下部の電極パッド22に接合するとともに電気的に接続している。回路部品11と回路部品21とが対向する部分において導電性接合材30による接合範囲の面積の割合は15%以下である。
【0044】
図2~4に示すように、回路部品11と回路部品21の間に、補強接合材41、42が配置されている。補強接合材41、42は、絶縁性の接合材である。補強接合材42は、補強接合材41とは異なる材料により構成されている。
【0045】
図3に示すように、補強接合材41は、直線16a(すなわち、列14a、14cが伸びる直線)と直線16b(すなわち、列14bが伸びる直線)の間に配置されている。補強接合材41は、導電性接合材30、電極パッド12、及び、電極パッド22に接していない。
図4に示すように、補強接合材41は、回路部品11の表面11aと回路部品21の表面21aとを接合している。より詳細には、補強接合材41は、表面11aのうちの絶縁樹脂13の表面と表面21aのうちの絶縁樹脂23の表面を接合している。
【0046】
図3に示すように、補強接合材42は、補強接合材41の周囲に配置されている。補強接合材42は、補強接合材41の外周面全体に接している。また、補強接合材42の分布範囲には、電極パッド12、22(すなわち、列14a~14c、24a~24c)が含まれている。
図2に示すように、補強接合材42は、導電性接合材30(すなわち、導電性接合材30によって電極パッド12と電極パッド22が接続されている各接続部)の周囲を覆っている。補強接合材42は、導電性接合材30の各接続部の外周面全体に接している。
図2、4に示すように、補強接合材42は、回路部品11の表面11aと回路部品21の表面21aとを接合している。より詳細には、補強接合材42は、表面11aのうちの絶縁樹脂13の表面と表面21aのうちの絶縁樹脂23の表面を接合している。
【0047】
図3に示すように、回路部品21は、x方向において、端部21t-1と端部21t-2を有している。列14aは、x方向において、端部21t-1に近い端部15a-1と端部21t-2に近い端部15a-2を有している。列14bは、x方向において、端部21t-1に近い端部15b-1と端部21t-2に近い端部15b-2を有している。列14cは、x方向において、端部21t-1に近い端部15c-1と端部21t-2に近い端部15c-2を有している。補強接合材41は、x方向において、端部15a-1よりも外側の位置(すなわち、端部15a-1よりも端部21t-1に近い位置)から端部15c-2よりも外側の位置(すなわち、端部15c-2よりも端部21t-2に近い位置)まで伸びている。このため、列14aの近傍では、補強接合材41が端部15a-1よりも外側の位置から端部15a-2よりも外側の位置まで伸びている。列14bの近傍では、補強接合材41が端部15b-1よりも外側の位置から端部15b-2よりも外側の位置まで伸びている。列14cの近傍では、補強接合材41が端部15c-1よりも外側の位置から端部15c-2よりも外側の位置まで伸びている。
【0048】
導電性接合材30の線膨張率K30、補強接合材41の線膨張率K41、及び、補強接合材42の線膨張率K42は、K42/2<K41<K30<K42の関係を満たす。
【0049】
次に、回路モジュール10の製造方法について説明する。回路モジュール10は、回路部品11と回路部品21を接合することによって製造される。
【0050】
(導電性接合材30と補強接合材41の塗布工程)
まず、回路部品21の表面21aに導電性接合材30と補強接合材41を塗布する。ここでは、導電性接合材30を、各電極パッド22の表面に塗布する。なお、導電性接合材30は、導電性ペースト(すなわち、導電性材料と樹脂と溶剤が混ざったペースト(例えば、銀ペースト))であってもよいし、クリームはんだであってもよい。また、導電性接合材30がプリフォームはんだ(例えば、はんだボール等)であってもよい。導電性接合材30がプリフォームはんだである場合には、塗布に代えて、導電性接合材30(すなわち、プリフォームはんだ)を各電極パッド22上に載置する。また、補強接合材41を、各電極パッド22及び導電性接合材30に接触しないように、直線16aと直線16bの間の範囲で表面21aに塗布する。なお、導電性接合材30と補強接合材41を回路部品21の表面21aに塗布するのに代えて、導電性接合材30と補強接合材41を回路部品11の表面11aに塗布してもよい。
【0051】
(積層工程)
次に、
図2に示すように、表面11aが表面21aに対向するように(すなわち、各電極パッド12が対応する電極パッド22に対向するように)、回路部品11を回路部品21上に積層する。これによって、導電性接合材30と補強接合材41が回路部品11と回路部品21の間に配置される。導電性接合材30が電極パッド12、22の両方に接触し、補強接合材41が表面11a、21aの両方に接触する。なお、導電性接合材30と補強接合材41は回路部品11を回路部品21の間で加圧されることによって横方向に広がるが、その状態でも補強接合材41は導電性接合材30と電極パッド12、22に接触しない。
【0052】
(第1加熱工程)
次に、回路部品11、21の積層体を加熱する。これによって、導電性接合材30を電極パッド12、22に固着させ、補強接合材41を表面11aと表面21aに固着させる。補強接合材41は、加熱によって硬化して表面11aと表面21aに固着する。導電性接合材30が導電性ペーストである場合には、加熱によって導電性接合材30が硬化して電極パッド12、22に固着する。導電性接合材30がはんだである場合には、加熱によって導電性接合材30が溶融する。その後、積層体の温度が低下するときに、導電性接合材30が凝固して電極パッド12、22に固着する。なお、導電性接合材30を加熱するときに、導電性接合材30からアウトガスが発生する。すなわち、導電性接合材30が導電性ペーストである場合には、導電性ペーストに含まれる溶剤が加熱によって揮発してアウトガスが発生する。また、導電性接合材30がはんだである場合には、はんだに含まれるフラックスが加熱によって揮発してアウトガスが発生する。各接続部において導電性接合材30の外周面は露出しているので、導電性接合材30で発生したアウトガスは積層体の外部へ排出される。導電性接合材30が補強接合材41に接していないので、導電性接合材30で発生したアウトガスによって補強接合材41の内部にボイドが形成されることが防止される。
【0053】
(温度低下工程)
導電性接合材30と補強接合材41がそれぞれの対象物に固着したら、積層体を常温まで温度低下させる。積層体を温度低下させる過程で、回路部品11、21のそれぞれが収縮する。回路部品11と回路部品21の間で線膨張率に差があるので、回路部品11と回路部品21の間で収縮量が異なる。このため、各接続部において導電性接合材30にせん断応力が加わる。また、回路部品11と回路部品21の間で収縮量が異なるので、回路部品11、21で反りが発生する。このため、各接続部において導電性接合材30に引張応力が加わる。本実施例では、温度低下工程の段階で、回路部品11と回路部品21の間が導電性接合材30だけでなく補強接合材41によっても接合されている。補強接合材41によって回路部品11と回路部品21の変形が抑制されるので、温度低下工程において導電性接合材30に加わる熱応力が低減される。これにより、温度低下工程における導電性接合材30の破損が抑制される。
【0054】
(補強接合材42の充填工程)
次に、回路部品11の表面11aと回路部品21の表面21aの間の隙間(すなわち、補強接合材41の周囲の空間)に補強接合材42を充填する。補強接合材42は、各接続部において導電性接合材30の外周面を覆い、補強接合材41の外周面を覆い、表面11aと表面21aに接触するように充填される。
【0055】
(第2加熱工程)
次に、回路部品11、21の積層体を加熱する。これによって、補強接合材42を硬化させて表面11aと表面21aに固着させる。また、補強接合材42は、各接続部において導電性接合材30の外周面に密着して導電性接合材30を保護する。
【0056】
以上の工程を実施することで、
図1~4に示す回路モジュール10が完成する。上述したように、第1加熱工程では、導電性接合材30の外周面が露出しているので、導電性接合材30から生じるアウトガスによって補強接合材41内にボイドが形成されることを防止できる。また、補強接合材42は、第1加熱工程の実施後に形成されるので、導電性接合材30から生じるアウトガスの影響を受けない。したがって、補強接合材42内にボイドが形成されることを抑制できる。このように、この製造方法によれば、補強接合材41、42内のボイドが形成されることを抑制できる。また、第1加熱工程では、補強接合材41によって導電性接合材30に加わる熱応力が低減されるので、導電性接合材30の破損を抑制できる。
【0057】
また、本実施例では、電極パッド12、22の列が伸びる2つの直線16a、16bの間に補強接合材41が配置される。この構成によれば、直線16a上の各接続部と直線16b上の各接続部の両方において導電性接合材30に加わる熱応力を低減することができる。
【0058】
また、回路モジュール10の完成後に、回路モジュール10の内部には製造工程において発生した熱応力が残留する。実験により、補強接合材42の線膨張率K42が導電性接合材30の線膨張率K30よりも小さいと、導電性接合材30の残留応力が高くなることが判明した。これは、補強接合材42の硬化後に回路モジュール10の温度が低下する過程において補強接合材42の収縮量が導電性接合材30の収縮量よりも小さいと、導電性接合材30で高い引張応力(すなわち、導電性接合材30を電極パッド12、22から剥離させる方向に作用する応力)が発生するためであると考えられる。本実施例では、補強接合材42の線膨張率K42が導電性接合材30の線膨張率K30よりも大きいので、導電性接合材30で生じる残留応力を低減できる。
【0059】
また、実験により、補強接合材41の線膨張率K41が導電性接合材30の線膨張率K30よりも大きいと、補強接合材42の最外周部で生じる残留応力が高くなることが判明した。これは、補強接合材42の硬化後に回路モジュール10の温度が低下する過程において補強接合材41の収縮量が大きいと、補強接合材41によって補強接合材42が引き寄せられて補強接合材42の最外周部で高いせん断応力が生じるためであると考えられる。本実施例では、補強接合材41の線膨張率K41が導電性接合材30の線膨張率K30よりも小さいので、補強接合材42の最外周部で生じる残留応力を低減できる。
【0060】
また、実験により、補強接合材41の線膨張率K41と補強接合材42の線膨張率K42の差が大きいと、補強接合材41と補強接合材42の界面で高い残留応力が生じることが判明した。本実施例では、補強接合材41の線膨張率K41が補強接合材42の線膨張率K42の半分よりも大きい(すなわち、線膨張率K41と線膨張率K42の差が小さい)ので、補強接合材41と補強接合材42の界面で生じる残留応力を低減できる。
【0061】
また、
図5は、
図6、7のように列14aの端部15a-1の近傍において補強接合材41の分布範囲を変更しながら、温度低下工程において端部15a-1を含む接続部で導電性接合材30に加わるせん断応力Sを測定した実験結果を示している。
図5の横軸に示す距離L1は、
図6に示すようにx方向において端部15a-1から補強接合材41が突出する距離である。なお、
図7に示すようにX方向において端部15a-1まで補強接合材41が達していない場合には、距離L1をマイナスの値として表している。また、
図5に示す距離L2は、
図6、7に示すように補強接合材41と列14aの間の間隔である。補強接合材41が設けられていない場合には、せん断応力Sは19.3MPaであった。
図5に示すように、距離L1、L2がいずれの値であっても、補強接合材41を設けることで、せん断応力Sを19.3MPaよりも低い値に低減できる。また、
図5に示すように、距離L2がいずれの場合であっても、距離L1がマイナスの値である場合には、距離L1が0に近づくに従ってせん断応力Sが低下する。また、距離L2がいずれの場合であっても、距離L1が0より大きいと、せん断応力Sは距離L1が0の場合と略同じ値となる。この結果から、距離L1を0より大きくすることで、端部15a-1におけるせん断応力Sを効果的に低減できることが分かる。本実施例では、補強接合材41が、各列14a~14cの一方の端部の外側から他方の端部の外側まで連続して伸びている。すなわち、各列の各端部において、補強接合材41の距離L1が0より大きい。したがって、各列の各端部において、温度低下工程で導電性接合材30に生じる熱応力を効率的に低減することができる。
【0062】
また、
図8は、補強接合材を用いない場合の温度低下工程において導電性接合材で生じるせん断応力を測定した実験結果を示している。
図8の横軸は、2つの回路部品の対向部に占める導電性接合材の接合範囲の面積比率Mである。
図8に示すように、面積比率Mが小さいほど、導電性接合材で生じるせん断応力が高くなる。一般的な銀ペーストが破断するせん断応力は、15MPaである。
図8に示すように、面積比率Mが15%以下の場合に、導電性接合材で生じるせん断応力が15MPaを超える。補強接合材41を使用することで、
図8よりも温度低下工程において導電性接合材で生じるせん断応力を低くすることができ、面積比率Mが15%以下の場合でも導電性接合材の破損を抑制できる。すなわち、面積比率Mが15%以下の場合に本明細書に開示の技術を適用することで、導電性接合材の破損防止効果としてより高い効果を得ることができる。
【0063】
なお、
図9~14に示すように、補強接合材41が互いに分離された複数の島を構成するように形成されてもよい。この構成によれば、第1加熱工程において補強接合材41自身から発生するアウトガスを積層体の外部に排出し易くなる。これによって、補強接合材41内でのボイドの発生をさらに抑制できる。なお、この場合、
図12~14に示すように、各列14a~14cの隣の位置において、補強接合材41の各島が、各列の一方の端部の外側から他方の端部の外側まで連続して伸びていることが好ましい。これらの構成によれば、
図5を用いて上述したように、各端部で導電性接合材30に生じるせん断応力Sを低減することができる。
【0064】
また、
図15に示すように、表面21aの直線16aと直線16bの間の範囲に凹部50が設けられており、塗布工程では凹部50内に補強接合材41を塗布してもよい。なお、電極パッド22は、凹部50の外側に配置されている。この構成では、その後の積層工程で
図16に示すように凹部50内で補強接合材41が横方向に広がる。この構成では、回路部品11の表面11aと回路部品21の表面21aの間の間隔C1よりも補強接合材41の厚みT1を厚くすることができる。このため、間隔C1にばらつきが生じても厚みT1に対するばらつきの割合が小さくなり、積層工程において補強接合材41が広がる範囲のばらつきを抑制できる。これにより、補強接合材41が導電性接合材30に接触することをより確実に防止できる。また、電極パッド12、22は凹部50の外側に配置されているので、導電性接合材30の厚みを薄くすることができ、導電性接合材30の電気抵抗を低減することができる。その後、
図17に示すように、補強接合材41の周囲に補強接合材42を形成することができる。なお、凹部50は、回路部品11の表面11aに設けられていてもよく、回路部品11の表面11aと回路部品21の表面21aの両方に設けられていてもよい。これらの構成でも、
図15~17の構成と同様の効果が得られる。
【0065】
また、
図18に示すように、表面21aの直線16aと直線16bの間の範囲に環状に伸びる溝52が設けられており、塗布工程では溝52に囲まれた範囲53内に補強接合材41を塗布してもよい。なお、電極パッド22は、溝52に囲まれた範囲よりも外側に配置されている。この構成では、その後の積層工程で補強接合材41が横方向に広がるときに、
図19に示すように余剰の補強接合材41が溝52内に流入する。これによって、補強接合材41が溝52よりも外側の範囲まで広がることを防止できる。このため、積層工程において補強接合材41が広がる範囲のばらつきを抑制できる。したがって、補強接合材41が導電性接合材30に接触することをより確実に防止できる。その後、
図20に示すように、補強接合材41の周囲に補強接合材42を形成することができる。なお、溝52は、回路部品11の表面11aに設けられていてもよく、回路部品11の表面11aと回路部品21の表面21aの両方に設けられていてもよい。これらの構成でも、
図18~20の構成と同様の効果が得られる。
【0066】
また、
図21に示すように、表面21aの直線16aと直線16bの間の範囲に表面粗さが小さい第1表面61が設けられており、第1表面61の周囲に第1表面61よりも表面粗さが大きい第2表面62が設けられていてもよい。なお、電極パッド22は、第2表面62に設けられている。この場合、塗布工程では第1表面61に補強接合材41を塗布してもよい。この構成では、その後の積層工程で補強接合材41が横方向に広がるときに、表面が滑らかな第1表面61では補強接合材41の流動し易いが、表面が粗い第2表面62では補強接合材41が流動し難い。このため、
図22に示すように、補強接合材41が第1表面61から第2表面62へ広がることが抑制される。すなわち、補強接合材41が広がる範囲を第1表面61に制限し易い。このため、積層工程において補強接合材41が広がる範囲のばらつきを抑制できる。したがって、補強接合材41が導電性接合材30に接触することをより確実に防止できる。その後、
図23に示すように、補強接合材41の周囲に補強接合材42を形成することができる。なお、第1表面61と第2表面62は、回路部品11の表面11aに設けられていてもよく、回路部品11の表面11aと回路部品21の表面21aの両方に設けられていてもよい。これらの構成でも、
図21~23の構成と同様の効果が得られる。
【0067】
また、補強接合材41が、絶縁材料ではなく、導電性接合材30と同じ材料によって構成されていてもよい。この構成によれば、塗布工程において、表面21a(または表面11a)に導電性接合材30と補強接合材41を一度に塗布することができる。例えば、スクリーン印刷法によって導電性接合材30と補強接合材41を同時に塗布することができる。この構成によれば、回路モジュール10をより効率的に製造することができる。また、補強接合材41は導電性接合材30に接していないので、補強接合材41が導電性を有していても回路のショートは生じない。
【0068】
また、電極パッド12、22の分布(すなわち、導電性接合材30の接続部の分布)は、自由に変更することができる。例えば、
図24~26のような分布を採用することができる。この場合でも、導電性接合材30から間隔を開けて補強接合材41を配置し、導電性接合材30を覆うように補強接合材42を設けることができる。この場合も、各電極パッド12、22の各列が伸びる方向において、各列の一方の端部の位置から他方の端部の位置まで補強接合材41が連続して伸びていると、各列の端部で導電性接合材30に加わる熱応力を効果的に抑制できる。
【0069】
また、
図27~29に示すように、補強接合材41によって挟まれた、または、囲まれた範囲に電極パッド12、22を設けてもよい。この場合、補強接合材42を塗布する工程では、硬化した補強接合材41が存在するため、電極パッド12、22(すなわち、導電性接合材30)の周囲に補強接合材42を塗布することが困難である。したがって、この場合には、
図30に示すように、回路部品11に表面11aに開口する貫通孔70を設け、貫通孔70を介して電極パッド12、22の周囲に補強接合材42を充填してもよい。なお、貫通孔70は、回路部品21に設けられていてもよい。
【0070】
以下に、本願明細書に記載の回路モジュールとその製造方法の特徴を列記する。
(項目1)
回路モジュールであって、
特定表面(11a)に複数の電極パッド(12)を有する第1回路部品(11)と、
特定表面(21a)に複数の電極パッド(22)を有する第2回路部品(21)と、
導電性接合材(30)と、
第1補強接合材(41)と、
前記導電性接合材及び前記第1補強接合材とは異なる材料によって構成されている第2補強接合材(42)、
を有し、
前記第1回路部品の前記複数の電極パッドが前記第2回路部品の前記複数の電極パッドに対向するように、前記第1回路部品と前記第2回路部品が配置されており、
前記導電性接合材が、前記第1回路部品の前記各電極パッドを、前記第2回路部品の対応する前記電極パッドに接合しており、
前記第1補強接合材が、前記導電性接合材に接触しておらず、前記第1回路部品の前記特定表面を前記第2回路部品の前記特定表面に接合しており、
前記第2補強接合材が、前記導電性接合材の周囲を覆うとともに前記第1補強接合材に接触する範囲に分布するとともに前記第1回路部品の前記特定表面を前記第2回路部品の前記特定表面に接合している、
回路モジュール。
(項目2)
前記導電性接合材が、導電性材料と樹脂の混合体である、項目1に記載の回路モジュール。
(項目3)
前記第1回路部品の前記複数の電極パッドが、前記第1回路部品の前記特定表面において第1方向に沿って線状に配列された列(14a)を構成するように配置されており、
前記第2回路部品の前記複数の電極パッドが、前記列に対向する位置で前記第1方向に沿って線状に配列されており、
前記第1補強接合材が、前記列から前記第1方向に対して交差する第2方向にずれた位置に配置されており、
前記第1補強接合材が、前記第1方向において、前記列の一方の端部(15a-1)の位置から前記列の他方の端部(15a-2)の位置まで連続して分布している、
項目1または2に記載の回路モジュール。
(項目4)
前記第1回路部品の前記複数の電極パッドが、前記第1回路部品の前記特定表面において第1方向に沿って線状に配列された第1列(14a、14c)と、前記第1列から前記第1方向に対して交差する第2方向にずれた位置で前記第1方向に沿って線状に配列された第2列(14b)を構成するように配置されており、
前記第2回路部品の前記複数の電極パッドが、前記第1列に対向する位置で前記第1方向に沿って線状に配列された列(24a、24c)と、前記第2列に対向する位置で前記第1方向に沿って線状に配列された列(24b)とを構成するように配置されており、
前記第1補強接合材が、前記第2方向において、前記第1列と前記第2列の間に配置されている、
項目1または2に記載の回路モジュール。
(項目5)
前記第1回路部品と前記第2回路部品の一方が、ゲート型のスイッチング素子を有しており、
前記第1回路部品と前記第2回路部品の他方が、前記スイッチング素子のゲート電圧を制御するゲート制御回路を有している、
項目1~4のいずれか一項に記載の回路モジュール。
(項目6)
前記第2補強接合材の線膨張率が、前記導電性接合材の線膨張率よりも高い、項目1~5のいずれか一項に記載の回路モジュール。
(項目7)
前記第1補強接合材の線膨張率が、前記導電性接合材の線膨張率よりも低い、項目1~6のいずれか一項に記載の回路モジュール。
(項目8)
前記第1補強接合材の線膨張率が、前記第2補強接合材の線膨張率の半分よりも高い、項目1~7のいずれか一項に記載の回路モジュール。
(項目9)
前記第1補強接合材が、互いから分離された複数の島を構成するように配置されており、
前記第2補強接合材が、前記各島の周囲を覆っている、
項目1~8のいずれか一項に記載の回路モジュール。
(項目10)
前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の少なくとも一方が、凹部(50)を有しており、
前記第1補強接合材が、前記凹部内に配置されている、
項目1~9のいずれか一項に記載の回路モジュール。
(項目11)
前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の少なくとも一方が、環状に伸びる溝(52)を有しており、
前記第1補強接合材が、前記溝に囲まれた範囲(53)内に配置されており、
前記第1補強接合材の外周縁が、前記溝内に配置されている、
項目1~9のいずれか一項に記載の回路モジュール。
(項目12)
前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の少なくとも一方が、第1表面(61)と前記第1表面よりも表面粗さが粗い第2表面(62)を有しており、
前記第1補強接合材が、前記第1表面に接している、
項目1~9のいずれか一項に記載の回路モジュール。
(項目13)
前記第1補強接合材が、前記導電性接合材と同じ材料によって構成されている、項目1~12のいずれか一項に記載の回路モジュール。
(項目14)
前記第1回路部品と前記第2回路部品の対向部において前記導電性接合材による接合範囲の面積の割合が15%以下である、項目1~13のいずれか一項に記載の回路モジュール。
(項目15)
回路モジュールの製造方法であって、
第1回路部品と第2回路部品の間に導電性接合材と第1補強接合材を配置する工程であって、第1回路部品の特定表面に設けられた複数の電極パッドが第2回路部品の特定表面に設けられた複数の電極パッドに対向し、前記導電性接合材が前記第1回路部品の前記各電極パッドと前記第2回路部品の前記各電極パッドに接触し、前記第1補強接合材が前記導電性接合材に接触しない位置で前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面に接触するように前記第1回路部品、前記第2回路部品、前記導電性接合材、及び、前記第1補強接合材を配置する工程と、
前記第1回路部品と前記第2回路部品の積層体を加熱することによって、前記導電性接合材を前記第1回路部品の前記各電極パッドと前記第2回路部品の前記各電極パッドに固着させ、前記第1補強接合材を前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面に固着させる工程と、
前記導電性接合材及び前記第1補強接合材とは異なる材料によって構成されている第2補強接合材を前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の間に塗布する工程であって、前記第2補強接合材が前記導電性接合材の周囲を覆うとともに前記第1補強接合材に接触する範囲に分布するとともに前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面に接触するように前記第2補強接合材を塗布する工程と、
前記積層体を加熱することによって、前記第2補強接合材を、前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面に固着させる工程、
を有する製造方法。
(項目16)
前記第1補強接合材が、前記導電性接合材と同じ材料によって構成されており、
前記第1回路部品と前記第2回路部品の間に前記導電性接合材と前記第1補強接合材を配置する工程が、前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の一方に前記導電性接合材と前記第1補強接合材を一度に塗布する工程を有する、
項目15に記載の製造方法。
(項目17)
前記第1回路部品が前記第1回路部品の前記特定表面に開口する貫通孔(70)を有している、または、前記第2回路部品が前記第2回路部品の前記特定表面に開口する貫通孔(70)を有しており、
前記第2補強接合材を塗布する前記工程が、前記貫通孔を介して前記第2補強接合材を前記第1回路部品の前記特定表面と前記第2回路部品の前記特定表面の間に注入する工程を有する、項目15または16に記載の製造方法。
【0071】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
10:回路モジュール、11:回路部品、11a:表面、12:電極パッド、21:回路部品、21a:表面、22:電極パッド、30:導電性接合材、41:補強接合材、42:補強接合材