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特開2023-155755味厚みが改善されたアルコール飲料およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155755
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】味厚みが改善されたアルコール飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20231016BHJP
【FI】
C12G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065266
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】307027577
【氏名又は名称】麒麟麦酒株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】田墨 恭子
(72)【発明者】
【氏名】小川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】有田 麻美
(72)【発明者】
【氏名】小泉 久美子
(72)【発明者】
【氏名】増田 春花
(72)【発明者】
【氏名】魏 丹丹
(72)【発明者】
【氏名】小田井 英陽
(72)【発明者】
【氏名】熊田 紀子
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115LH01
4B115LH11
(57)【要約】
【課題】味厚みが増強されたソフトフルーツ風味アルコール飲料の提供。
【解決手段】ソフトフルーツ発酵果汁を含んでなる、ソフトフルーツ風味アルコール飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソフトフルーツ発酵果汁を含んでなる、ソフトフルーツ風味アルコール飲料。
【請求項2】
非発酵ソフトフルーツ果汁を含有するものである、請求項1に記載のソフトフルーツ風味アルコール飲料。
【請求項3】
前記ソフトフルーツ発酵果汁が、乳酸菌による発酵産物である、請求項1または2に記載のソフトフルーツ風味アルコール飲料。
【請求項4】
前記ソフトフルーツ発酵果汁が、ブドウ果汁、リンゴ果汁、イチゴ果汁、モモ果汁、スモモ果汁、ウメ果汁、サクランボ果汁、カキ果汁、カシス果汁、ラズベリー果汁、ブルーベリー果汁、メロン果汁、バナナ果汁、キウイ果汁、マンゴー果汁、和梨果汁および洋梨果汁から選択される少なくとも一種の果汁の発酵産物である、請求項1または2に記載のソフトフルーツ風味アルコール飲料。
【請求項5】
前記ソフトフルーツ発酵果汁のアルコール濃度が、1v/v%未満である、請求項1または2に記載のソフトフルーツ風味アルコール飲料。
【請求項6】
前記ソフトフルーツ発酵果汁に由来するアセトインの濃度が0.495ppb以上である、請求項1または2に記載のソフトフルーツ風味アルコール飲料。
【請求項7】
クエン酸を含有するものである、請求項1または2に記載のソフトフルーツ風味アルコール飲料。
【請求項8】
ソフトフルーツ風味アルコール飲料を製造する方法であって、該ソフトフルーツ風味アルコール飲料の製造過程において、ソフトフルーツ発酵果汁を添加することを含んでなる、方法。
【請求項9】
クエン酸を添加する工程をさらに含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ソフトフルーツ風味アルコール飲料における味厚みを増強する方法であって、該ソフトフルーツ風味アルコール飲料の製造過程において、ソフトフルーツ発酵果汁を添加することを含んでなる、方法。
【請求項11】
ソフトフルーツ風味アルコール飲料における苦渋みを低減する方法であって、該ソフトフルーツ風味アルコール飲料の製造過程において、ソフトフルーツ発酵果汁を添加することを含んでなる、方法。
【請求項12】
ソフトフルーツ風味アルコール飲料におけるアルコール辛さを低減する方法であって、該ソフトフルーツ風味アルコール飲料の製造過程において、ソフトフルーツ発酵果汁を添加することを含んでなる、方法。
【請求項13】
クエン酸を添加する工程をさらに含んでなる、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、味厚みが改善されたアルコール飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柑橘系チューハイの歴史は古く、長い間、嗜好品として親しまれているが、近年では、ブドウなどのソフトフルーツの風味を有するチューハイも多く市販されている。
【0003】
ソフトフルーツ風味のアルコール飲料は、その風味がソフトであるために、味厚みが弱くなる傾向があり、味厚みを増強することは、ソフトフルーツ風味アルコール飲料の香味設計上の課題の一つである。
【発明の概要】
【0004】
本発者らは、ソフトフルーツ風味チューハイにおける味厚みを増強するためにソフトフルーツ果汁の含有量を増加させると、苦渋みなど、ソフトフルーツ果汁に由来する好ましくない風味が増加するという問題を見出した。従って、本発明者らは、ソフトフルーツ風味チューハイにおける味厚みを増強するための他の手段を開発するため、鋭意検討を行った。
【0005】
今般、本発明者らは、ソフトフルーツ果汁を発酵させて得られるソフトフルーツ発酵果汁をソフトフルーツ風味アルコール飲料に添加することにより、味厚みが増強されることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0006】
従って、本発明は、味厚みが増強されたソフトフルーツ風味アルコール飲料を提供する。
【0007】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)ソフトフルーツ発酵果汁を含んでなる、ソフトフルーツ風味アルコール飲料。
(2)非発酵ソフトフルーツ果汁を含有するものである、前記(1)に記載のソフトフルーツ風味アルコール飲料。
(3)前記ソフトフルーツ発酵果汁が、乳酸菌による発酵産物である、前記(1)または(2)に記載のソフトフルーツ風味アルコール飲料。
(4)前記ソフトフルーツ発酵果汁が、ブドウ果汁、リンゴ果汁、イチゴ果汁、モモ果汁、スモモ果汁、ウメ果汁、サクランボ果汁、カキ果汁、カシス果汁、ラズベリー果汁、ブルーベリー果汁、メロン果汁、バナナ果汁、キウイ果汁、マンゴー果汁、和梨果汁および洋梨果汁から選択される少なくとも一種の果汁の発酵産物である、前記(1)~(3)のいずれかに記載のソフトフルーツ風味アルコール飲料。
(5)前記ソフトフルーツ発酵果汁のアルコール濃度が、1v/v%未満である、前記(1)~(4)のいずれかに記載のソフトフルーツ風味アルコール飲料。
(6)前記ソフトフルーツ発酵果汁に由来するアセトインの濃度が0.495ppb以上である、前記(1)~(5)のいずれかに記載のソフトフルーツ風味アルコール飲料。
(7)クエン酸を含有するものである、前記(1)~(6)のいずれかに記載のソフトフルーツ風味アルコール飲料。
(8)ソフトフルーツ風味アルコール飲料を製造する方法であって、該ソフトフルーツ風味アルコール飲料の製造過程において、ソフトフルーツ発酵果汁を添加することを含んでなる、方法。
(9)クエン酸を添加する工程をさらに含んでなる、前記(8)に記載の方法。
(10)ソフトフルーツ風味アルコール飲料における味厚みを増強する方法であって、該ソフトフルーツ風味アルコール飲料の製造過程において、ソフトフルーツ発酵果汁を添加することを含んでなる、方法。
(11)ソフトフルーツ風味アルコール飲料における苦渋みを低減する方法であって、該ソフトフルーツ風味アルコール飲料の製造過程において、ソフトフルーツ発酵果汁を添加することを含んでなる、方法。
(12)ソフトフルーツ風味アルコール飲料におけるアルコール辛さを低減する方法であって、該ソフトフルーツ風味アルコール飲料の製造過程において、ソフトフルーツ発酵果汁を添加することを含んでなる、方法。
(13)クエン酸を添加する工程をさらに含んでなる、前記(10)~(12)のいずれかに記載の方法。
【0008】
本発明によれば、ソフトフルーツ風味アルコール飲料における味厚みが増強される。また、本発明によれば、ソフトフルーツ風味アルコール飲料における苦渋みやアルコール辛さを低減することも可能である。
【発明の具体的説明】
【0009】
本発明によれば、ソフトフルーツ発酵果汁の添加により、ソフトフルーツ風味アルコール飲料における味厚みを増強することができる。また、本発明によれば、ソフトフルーツ発酵果汁の添加により、ソフトフルーツ風味アルコール飲料における苦渋みやアルコール辛さを低減することも可能である。例えば、本発明者らは、赤ぶどう果汁を含有するチューハイには味のとげとげしさがあるが、白ぶどう発酵果汁を添加することにより、味厚みが増強されること(味がなめらかになること)を見出した。さらに、本発明者らは、ソフトフルーツ風味アルコール飲料において、果汁感を増強するために果汁の含有量を増やすと、果汁由来の渋み・苦味等といった好ましくない風味が強調されることも見出したが、ソフトフルーツ発酵果汁の添加により、このような好ましくない風味を低減できることも見出した。さらに、本発明者らは、ソフトフルーツ発酵果汁を含有するソフトフルーツ風味アルコール飲料にクエン酸を添加することにより、味のキレを増強できることも見出した。
【0010】
本明細書において「アルコール飲料」とは、酒税法上アルコール飲料とみなされる、アルコール度数1度以上の飲料を意味する。
【0011】
本明細書において、「味厚み」の増強とは、味の濃厚さおよび酸味による果汁感が向上して口当たりが滑らかになることをいう。また、「味のキレ」とは、飲んだ後に苦渋味などの好ましくない香味が残らないことをいう。
【0012】
本明細書において、「ppm」は「mg/L」と同義であり、「ppb」は「μg/L」と同義である。
【0013】
本発明に用いられるソフトフルーツ発酵果汁は、ソフトフルーツ(かんきつ類以外の果実)の果汁を微生物による発酵に供して得られるものであればよく、特に制限されるものではない。発酵処理に用いられる微生物としては、好ましくは乳酸菌および酢酸菌からなる群から選択される少なくとも一種の微生物とされ、より好ましくは乳酸菌とされる。本発明の好ましい実施態様によれば、本発明に用いられるソフトフルーツ発酵果汁は、仁果類(Pome fruits)、核果類(Stone fruits)およびベリー類等の小粒果実類(Berries and other small fruits)から選択される少なくとも一種の果汁の発酵産物とされ、より好ましくはベリー類等の小粒果実類から選択される少なくとも一種の果汁の発酵産物とされる。本発明の特に好ましい実施態様によれば、本発明に用いられるソフトフルーツ発酵果汁は、ブドウ果汁(白ブドウ果汁および赤ブドウ果汁)、リンゴ果汁、イチゴ果汁、モモ果汁、スモモ果汁、ウメ果汁、サクランボ果汁、カキ果汁、カシス果汁、ラズベリー果汁、ブルーベリー果汁、メロン果汁、バナナ果汁、キウイ果汁、マンゴー果汁、和梨果汁および洋梨果汁から選択される少なくとも一種の果汁の発酵産物とされ、より好ましくはブドウ果汁(白ブドウ果汁および赤ブドウ果汁)から選択される少なくとも一種の果汁の発酵産物、さらに好ましくは白ブドウ果汁の発酵産物とされる。
【0014】
このようなソフトフルーツ発酵果汁は、例えば、特開平9-191861号公報、特開2006-8566号公報等の記載に従って製造することができる。
【0015】
本発明に用いるソフトフルーツ発酵果汁のアルコール濃度は、好ましくは1v/v%未満とされる。発酵度合を制御して、アルコール濃度を1v/v%未満とすることにより、本発明の効果をより発揮することができる。
【0016】
本発明のソフトフルーツ風味アルコール飲料は、上述のソフトフルーツ発酵果汁を含むものである。このような飲料は、ソフトフルーツ風味アルコール飲料の原料に上述のソフトフルーツ発酵果汁を添加することにより製造することができる。本発明のさらに別の態様によれば、ソフトフルーツ風味アルコール飲料における味厚みを増強する方法が提供され、該方法は、該ソフトフルーツ風味アルコール飲料の製造過程において、ソフトフルーツ発酵果汁を添加することを含む。本発明のさらに別の態様によれば、ソフトフルーツ風味アルコール飲料における苦渋みを低減する方法が提供され、該方法は、該ソフトフルーツ風味アルコール飲料の製造過程において、ソフトフルーツ発酵果汁を添加することを含む。本発明のさらに別の態様によれば、ソフトフルーツ風味アルコール飲料におけるアルコール辛さを低減する方法が提供され、該方法は、該ソフトフルーツ風味アルコール飲料の製造過程において、ソフトフルーツ発酵果汁を添加することを含む。
【0017】
ソフトフルーツ風味アルコール飲料におけるソフトフルーツ発酵果汁の含有量(つまり添加量)は、特に制限されるものではなく、その飲料の種類や、所望の効果の程度に応じて、当業者により適宜決定される。例えば、当業者であれば、様々な濃度でソフトフルーツ発酵果汁を含有する飲料のサンプルを実際に調製し、各サンプルについて所望の効果を確認することにより、その飲料に最適な発酵果汁の量を見出すことができる。
【0018】
本発明の好ましい実施態様によれば、ソフトフルーツ風味アルコール飲料におけるソフトフルーツ発酵果汁の含有量・添加量は、該ソフトフルーツ発酵果汁に含まれるアセトイン濃度に換算した場合に、アセトイン濃度として0.495ppb以上とされる。ここで、ソフトフルーツ発酵果汁の含有量・添加量をアセトインの量に換算する理由は、ソフトフルーツ発酵果汁の原料となる発酵原料と溶媒との量の比率によって有効成分の濃度が異なり、このような濃度の違いにかかわらず有効成分の量を反映した指標を定義するためである。つまり、発酵原料の量と発酵度合いに比例すると考えられるアセトインの濃度は、有効成分の量に比例するものと考えられる。従って、本発明においては、ソフトフルーツ発酵果汁の含有量・添加量を、該発酵果汁に含まれるアセトインの量に換算して示す。本発明のさらに好ましい実施態様によれば、ソフトフルーツ風味アルコール飲料におけるソフトフルーツ発酵果汁の含有量・添加量は、該ソフトフルーツ発酵果汁に含まれるアセトインの量に換算して、0.80ppb以上、さらに好ましくは0.990ppb以上とされる。本発明のソフトフルーツ風味アルコール飲料におけるソフトフルーツ発酵果汁の含有量・添加量の上限は特に制限されるものではなく、添加量が多ければそれだけ強い効果が得られる。しかし、あえて上限を設けるとすれば、ソフトフルーツ風味アルコール飲料の香味のバランスに鑑み、ソフトフルーツ発酵果汁に含まれるアセトインの量に換算して10ppmとしてもよく、好ましくは6ppm、より好ましくは4ppmとされる。
【0019】
液体中のアセトインの濃度は、GC/MS分析により測定することができる。その際に、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましく、さらに、内部標準物質を用いる標準添加法を用いてもよい。GC/MS分析用サンプルとしては、分析対象の液体をクロロホルム抽出して得られる抽出液を用いることができ、必要に応じてクロロホルム抽出の前に液体を希釈または濃縮してもよい。例えば、ソフトフルーツ発酵果汁に含まれるアセトインの濃度の測定においては、ソフトフルーツ発酵果汁を10%v/vになるように希釈してクロロホルム抽出を行うことができる。また、ソフトフルーツ風味アルコール飲料に含まれるアセトインの濃度の測定においては、ソフトフルーツ風味アルコール飲料をそのまま(希釈も濃縮もせずに)クロロホルム抽出に供することができる。GC/MSの条件の例を下記表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
本発明の好ましい別の実施態様によれば、ソフトフルーツ風味アルコール飲料におけるソフトフルーツ発酵果汁の含有量・添加量は、該ソフトフルーツ発酵果汁に含まれるダイアセチル濃度に換算した場合に、ダイアセチル濃度として0.0985ppb以上となる量とされる。ここで、ソフトフルーツ発酵果汁の含有量・添加量をダイアセチルの量に換算する理由は上述のアセトインと同様である。つまり、発酵原料の量と発酵度合いに比例すると考えられるダイアセチルの濃度は、有効成分の量に比例するものと考えられる。従って、本発明においては、ソフトフルーツ発酵果汁の含有量・添加量を、該ソフトフルーツ発酵果汁に含まれるダイアセチルの量に換算して示すことができる。本発明のさらに好ましい別の実施態様によれば、ソフトフルーツ風味アルコール飲料におけるソフトフルーツ発酵果汁の含有量・添加量は、該ソフトフルーツ発酵果汁に含まれるダイアセチルの量に換算して、0.15ppb以上、さらに好ましくは0.197ppb以上とされる。本発明のソフトフルーツ風味アルコール飲料におけるソフトフルーツ発酵果汁の含有量・添加量の上限は特に制限されるものではなく、添加量が多ければそれだけ強い効果が得られる。しかし、あえて上限を設けるとすれば、ソフトフルーツ風味アルコール飲料の香味のバランスに鑑み、ソフトフルーツ発酵果汁に含まれるダイアセチルの量に換算して10ppmとしてもよく、好ましくは6ppm、より好ましくは4ppmとされる。
【0022】
液体中のダイアセチルの濃度は、内部標準物質を用いるヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより測定することができる。例えば、サンプルと一定量の内部標準物質(2,3-ヘキサンジオン)をバイアルに入れて加温し、ヘッドスペースをECD(電子捕獲型検出器)付ガスクロマトグラフへ導入する。次いで、検出されたダイアセチルのピーク面積と、内部標準物質(2,3-ヘキサンジオン)のピーク面積の比を算出し、標準物質を用いて作成した検量線から濃度を算出することができる。ヘッドスペースガスクロマトグラフィーの条件の例を下記表2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
本発明の飲料はソフトフルーツ風味アルコール飲料である。ここで「ソフトフルーツ風味アルコール飲料」とは、飲用したときにソフトフルーツの風味を感じるアルコール飲料を意味する。ソフトフルーツ風味アルコール飲料は、ソフトフルーツ系フレーバーやソフトフルーツ果汁などのソフトフルーツ系香味成分を添加することによって得ることができる。ここでいうソフトフルーツ果汁は、上述のソフトフルーツ発酵果汁とは異なり、発酵処理されていない通常の果汁である。よって、このような通常の果汁を、以下「非発酵」果汁という。好ましいソフトフルーツの例としては、仁果類(Pome fruits)、核果類(Stone fruits)およびベリー類等の小粒果実類(Berries and other small fruits)から選択される少なくとも一種のフルーツが挙げられ、より好ましくはベリー類等の小粒果実類から選択される少なくとも一種のフルーツとされる。本発明のさらに好ましい実施態様によれば、ソフトフルーツの例としては、例えば、ブドウ(白ブドウおよび赤ブドウ)、リンゴ、イチゴ、モモ、スモモ、ウメ、サクランボ、カキ、カシス、ラズベリー、ブルーベリー、メロン、バナナ、キウイ、マンゴー、和梨、洋梨等が挙げられ、好ましくはブドウ(白ブドウまたは赤ブドウ)、さらに好ましくは赤ブドウとされる。本発明の特に好ましい実施態様によれば、本発明のソフトフルーツ風味アルコール飲料は赤ブドウ風味アルコール飲料とされ、より好ましくは非発酵赤ブドウ果汁を含有する飲料とされる。
【0025】
本発明のソフトフルーツ風味アルコール飲料の酸度は、0.01%以上とすることができ、好ましくは0.01~2.0%、より好ましくは0.05~1.0%である。本発明のソフトフルーツ風味アルコール飲料の酸度は、飲料100mL中に含まれる酸の量をクエン酸に換算した場合のグラム数(g/100mLクエン酸換算、w/v%)で表すことができる。かかる酸度は、炭酸ガスを常法によって脱気した上、果実飲料の日本農林規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
【0026】
本発明のソフトフルーツ風味アルコール飲料は、クエン酸を含有するものとすることができ、このクエン酸の濃度調整により、味のキレを増強することができる。クエン酸の添加量(濃度)は、添加前(濃度調整前)のソフトフルーツ風味アルコール飲料の香味に応じて、所望の味のキレが達成されるように適宜決定することができ、特に限定されるものではないが、例えば、上述の酸度の範囲内となるように決定するとよい。クエン酸の添加量(濃度)は、例えば、ソフトフルーツ風味アルコール飲料の容量に対して、0.10w/v%以上とすることができ、好ましくは0.20w/v%以上とすることができる。クエン酸の添加量(濃度)の上限は特に制限されるものではなく、添加量が多ければそれだけ味のキレを増強することができる。しかし、あえて上限を設けるとすれば、ソフトフルーツ風味アルコール飲料の香味のバランスに鑑み、該飲料の容量に対して0.60w/v%とすることができる。
【0027】
本発明のソフトフルーツ風味アルコール飲料のアルコール濃度は、特に制限されるものではないが、好ましくは1.0~20.0v/v%、より好ましくは1.0~10.0v/v%、さらに好ましくは3.0~9.0v/v%とすることができる。一つの実施態様によれば、飲料のアルコール濃度は5.0v/v%以上とされ、好ましくは5.0~20.0v/v%、より好ましくは5.0~10.0v/v%、さらに好ましくは5.0~9.0v/v%とされる。
【0028】
本発明のソフトフルーツ風味アルコール飲料は、飲料の製造に用いられる他の成分を含んでもよい。このような他の成分としては、例えば、甘味料(例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、オリゴ糖、異性化液糖、糖アルコール、高甘味度甘味料等)、酸味料(例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、リン酸、フィチン酸、イタコン酸、フマル酸、グルコン酸、アスコルビン酸、アジピン酸、酢酸、コハク酸またはそれらの塩類等)、食塩、色素、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤など)、穀物発酵エキス等を適宜添加することができる。
【0029】
本発明のソフトフルーツ風味アルコール飲料は、二酸化炭素を圧入したもの、すなわち、炭酸飲料とすることができる。炭酸ガス圧は、好みに応じて適宜調整することができ、例えば、0.05~0.4MPa(20℃におけるガス圧)、好ましくは0.08~0.2MPa(20℃におけるガス圧)の範囲で調整することができる。
【0030】
本発明のソフトフルーツ風味アルコール飲料は、pHを、例えば、2.0~5.0、好ましくは2.5~4.5に調整することができる。飲料のpHは市販のpHメーターを使用して容易に測定することができる。
【0031】
本発明のソフトフルーツ風味アルコール飲料は、好ましくは容器詰飲料として提供される。本発明のソフトフルーツ風味アルコール飲料に使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは金属缶・樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、または瓶とされる。
【0032】
本発明の一つの実施態様によれば、本発明のソフトフルーツ風味アルコール飲料は、ソフトフルーツ発酵果汁の添加以外は、通常のソフトフルーツ風味アルコール飲料の製造方法に従って製造することができる。例えば、まず、タンク中において、アルコールを含有した水溶液に、糖または甘味料、およびソフトフルーツ系果汁もしくはソフトフルーツ系香料と共に酸味料を加えて香味を調整する。次いで、香味を整えた水溶液に炭酸ガスを加えて、炭酸ガス含有飲料を製造することができる。本発明のソフトフルーツ風味アルコール飲料は、このような製造過程のいずれかの段階で、ソフトフルーツ発酵果汁を適宜加えることによって製造することができる。
【実施例0033】
以下の実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
ソフトフルーツ発酵果汁
ソフトフルーツ発酵果汁としては、白ブドウ果汁を乳酸菌によりマロラクティック発酵させ、その後に遠心処理、殺菌および濾過の各処理を経て得られた発酵ブドウ果汁を用意した。この発酵ブドウ果汁のアルコール濃度は1v/v%未満であった。
【0035】
試飲サンプル
以下の実施例において、いずれの試飲サンプルも次の条件を満たすものとした:
・アルコール濃度:6v/v%;
・pH:2.9~4.4;
・炭酸ガス圧:0.12~0.16MPa;
・酸度:0.06%~0.36%;
・ソフトフルーツ果汁:未発酵の赤ぶどう果汁を、ストレート果汁換算で3w/v%の濃度となるように添加。
【0036】
官能評価
官能評価は、十分に訓練された6名のパネラーによって行った。評価項目は、味厚み、苦渋み、味のキレ、およびアルコールの辛さの4項目とした。試飲サンプルの特徴として酸味が口内に蓄積しやすいため、試飲の際には、1つのサンプルを試飲した後、水で口直ししてから次のサンプルの試飲を行った。官能評価は、以下に示す1~5の0.5刻みのスコアで行い、評価結果は、6名のスコアの平均値±標準偏差として示した。
【0037】
(1)味厚み、苦渋み、およびアルコールの辛さの評価基準:
1:陰性対照と同等;
2:陰性対照と連続比較することで、わずかに改善されていることがわかる;
3:陰性対照と連続比較することで改善されていることがわかるが、比較しないとわからない;
4:陰性対照と比較しなくてもわかる;
5:陰性対照と比較しなくても明確にわかる。
ここで、「味厚み」の改善は味厚みが増強されることを意味し、「苦渋み」および「アルコールの辛さ」の改善はそれぞれ苦渋みおよびアルコールの辛さが低減されることを意味する。各項目の評価において、発酵果汁0w/v%、かつ、クエン酸0w/v%の試飲サンプルをスコア1(陰性対照)に固定し、発酵果汁1.0w/v%、かつ、クエン酸0.30w/v%の試飲サンプルをスコア5に固定した。
【0038】
(2)味のキレの評価基準:
1:陰性対照と同等で、味のキレが悪い;
2:陰性対照と連続比較することで、わずかに改善されていることがわかる;
3:陰性対照と連続比較することで改善されていることがわかるが、比較しないとわからない;
4:陰性対照と比較しなくてもわかる;
5:陰性対照と比較しなくても明確にわかる。
ここで、「味のキレ」の改善は味のキレが増強されることを意味する。この項目の評価において、発酵果汁1.0w/v%、かつ、クエン酸0w/v%の試飲サンプルをスコア1(陰性対照)に固定し、発酵果汁0.1w/v%、かつ、クエン酸0.20w/v%の試飲サンプルをスコア3に固定した。
【0039】
実施例1:赤ブドウ果汁含有アルコール飲料における発酵ブドウ果汁の効果の確認
発酵ブドウ果汁を添加した、赤ブドウ果汁を含有する試飲サンプルを用意し、官能評価を行った。対照サンプルとして、発酵ブドウ果汁を添加していない試飲サンプルも用意した。発酵ブドウ果汁中のアセトインの濃度を上記のGC/MS分析により測定したところ、990.1ppbであった。また、発酵ブドウ果汁中のダイアセチルの濃度を上記の内部標準物質を用いるヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより測定したところ、197ppbであった。
【0040】
まず、予備的な試飲により、発酵ブドウ果汁の添加量に応じて、味厚み、苦渋みおよびアルコール辛さの改善がみられた。ただし、発酵ブドウ果汁の添加量が多いサンプルでは味のキレが不足しているように感じられたため、クエン酸をさらに添加したところ、味のキレの改善がみられた。従って、発酵ブドウ果汁を添加した試飲サンプルについては、クエン酸の添加による味のキレの改善も評価した。
【0041】
結果を表3に示す。
【表3】
【0042】
表3から、赤ブドウ果汁を含有するアルコール飲料サンプルにおいて、発酵ブドウ果汁は、用量依存的に味厚みを増強する効果を示すことが分かった。また、苦渋みの低減およびアルコール辛さの低減についても、同様に、発酵ブドウ果汁は、用量依存的に効果を示すことが分かった。さらに、発酵ブドウ果汁を含有する試飲サンプルにおいて、クエン酸は、用量依存的に味のキレを増強する効果を示すことが分かった。