(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155758
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
A61B6/03 360J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065275
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】500109320
【氏名又は名称】ザイオソフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】那須 悠
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA15
4C093FF16
4C093FF35
4C093FF46
(57)【要約】
【課題】輪郭線が通る位置の画素値を加味して、ユーザの意図が反映された輪郭線を生成できる医用画像処理装置を提供する。
【解決手段】医用画像処理装置は、処理部を備える。処理部は、被検体のボリュームデータを取得し、ボリュームデータに基づいて、被検体内の組織の一部を表現した第1の画像を生成し、第1の画像上の組織の輪郭上の第1の点と第2の点とを接続する輪郭線を、第1の画像の各画素の画素値のラプラシアン及び勾配の少なくとも一つと、第2の点の画素値と、第1の点と第2の点とを接続する経路候補上にある各画素の画素値と、に基づいて生成し、第1の画像と輪郭線とを表示部に表示させる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像処理装置であって、
処理部を備え、
前記処理部は、
被検体のボリュームデータを取得し、
前記ボリュームデータに基づいて、前記被検体内の組織の少なくとも一部を表現した第1の画像を生成し、
前記第1の画像上の組織の輪郭上の第1の点と第2の点とを接続する輪郭線を、前記第1の画像の各画素のラプラシアン及び勾配の少なくとも一つと、前記第2の点の画素値と、前記第1の点と前記第2の点とを接続する経路候補上にある各画素の画素値と、に基づいて生成し、
前記第1の画像と前記輪郭線とを表示部に表示させる、
医用画像処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、操作部を介して、前記第1の点と前記第2の点とを指定する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記ボリュームデータは、CT装置による前記被検体の撮像により得られたデータである、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記第1の画像は、前記ボリュームデータにおける前記被検体の所定の断面の断面画像である、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記輪郭線は、操作部を介して指定された、前記第1の点と前記第2の点とを含む3個以上の点を通り、前記被検体内の組織を含む閉領域を形成する、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
生成された前記輪郭線は、前記第1の点と第3の点との間にある前記第2の点を通り、
前記処理部は、
前記第2の点を前記第1の画像上で移動させ、
移動後の前記第2の点の画素値に基づいて、前記第1の点と前記第2の点とを結ぶ前記輪郭線の一部である第1の部分輪郭線と、前記第2の点と前記第3の点とを結ぶ前記輪郭線の他の一部である第2の部分輪郭線と、を生成し、
前記第1の部分輪郭線と前記第2の部分輪郭線とに基づいて、前記輪郭線を修正する、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、
生成された前記輪郭線上に第4の点を追加し、
前記第4の点の画素値に基づいて、前記第1の点と前記第4の点とを結ぶ前記輪郭線の一部である第3の部分輪郭線と、前記第4の点と前記第2の点とを結ぶ前記輪郭線の他の一部である第4の部分輪郭線と、を生成し、
前記第3の部分輪郭線と前記第4の部分輪郭線とに基づいて、前記輪郭線を修正する、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記第1の画像上での前記第2の点の位置を確定する前に、前記第2の点の候補位置に基づいて、前記輪郭線の候補を前記表示部に表示させる、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記処理部は、ウィンドウ幅及びウィンドウレベルの少なくとも一方に基づいて、前記輪郭線を生成する、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記第2の点は、前記第1の画像における画素と画素の間の点であり、
前記第2の点の画素値は、前記第1の画像上で前記第2の点の周囲の画素を補間した画素値である、
請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
被検体のボリュームデータを取得するステップと、
前記ボリュームデータに基づいて、前記被検体内の組織の一部を表現した第1の画像を生成するステップと、
前記第1の画像上の組織の輪郭上の第1の点と第2の点とを接続する輪郭線を、前記第1の画像の各画素の画素値のラプラシアン及び勾配の少なくとも一つと、前記第2の点の画素値と、前記第1の点と前記第2の点とを接続する経路候補上にある各画素の画素値と、に基づいて生成するステップと、
前記画像と前記輪郭線とを表示部に表示させるステップと、
を有する医用画像処理方法。
【請求項12】
請求項11に記載の医用画像処理方法をコンピュータに実行させるための医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Intelligent Scissors法のツールが知られている(非特許文献1,2参照)。Intelligent Scissors法は、Livewire法とも呼ばれ、2次元画像から操作部を介して手動で設置したノードから自動で輪郭を生成するアルゴリズムである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Eric N. Mortensen, William A. Barrett, Brigham Young University, 「Intelligent Scissors for Image Composition」,SIGGRAPH 1995.9 p191-198
【非特許文献2】Martin Urschler, Heinz Mayer, Regine Bolter, Franz Leberl, 「The LiveWire Approach for the Segmentation of Left Ventricle Electron-Beam CT Images」, In 26th Workshop of the Austrian Association for Pattern Recognition (AGM/AAPR): Vision with Non-Traditional Sensors, volume 160, pages 319-326, 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のIntelligent Scissors法では、例えば2次元画像上でユーザが所定の画像位置を指定した場合でも、このユーザの指定位置における画素値が考慮されずに、輪郭を生成する。そのため、ユーザの意図が反映されずに輪郭が生成され、ユーザの観察したい輪郭が得られないことがあった。また、2次元画像内にあるエッジの強い箇所に輪郭線が生成されユーザの観察したい輪郭が得られないことがあった。また、WW(Window Width)/WL(Window Level)処理により表示が飽和している箇所(つまり表示可能な画素値よりも大きな画素値の箇所)にエッジの強い箇所があると、ユーザには認識できない箇所に輪郭線が生成されユーザの観察したい輪郭が得られないことがあった。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてされたものであって、輪郭線が通る位置の画素値を加味して、ユーザの意図が反映された輪郭線を生成できる医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、医用画像処理装置であって、処理部を備え、前記処理部は、被検体のボリュームデータを取得し、前記ボリュームデータに基づいて、前記被検体内の組織の一部を表現した第1の画像を生成し、前記第1の画像上の組織の輪郭上の第1の点と第2の点とを接続する輪郭線を、前記第1の画像の各画素の画素値のラプラシアン及び勾配の少なくとも一つと、前記第2の点の画素値と、前記第1の点と前記第2の点とを接続する経路候補上にある各画素の画素値と、に基づいて生成し、前記第1の画像と前記輪郭線とを表示部に表示させる、医用画像処理装置である。
【0007】
本開示の一態様は、被検体のボリュームデータを取得するステップと、前記ボリュームデータに基づいて、前記被検体内の組織の一部を表現した第1の画像を生成するステップと、前記第1の画像上の組織の輪郭上の第1の点と第2の点とを接続する輪郭線を、前記第1の画像の各画素の画素値のラプラシアン及び勾配の少なくとも一つと、前記第2の点の画素値と、前記第1の点と前記第2の点とを接続する経路候補上にある各画素の画素値と、に基づいて生成するステップと、前記画像と前記輪郭線とを表示部に表示させるステップと、を有する医用画像処理方法である。
【0008】
本開示の一態様は、上記の医用画像処理方法をコンピュータに実行させるための医用画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、輪郭線が通る位置の画素値を加味して、ユーザの意図が反映された輪郭線を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態における医用画像処理装置のハードウェア構成例を示すブロック図
【
図2】医用画像処理装置の機能構成例を示すブロック図
【
図3】本実施形態で生成される輪郭線の第1例と比較例で作成される輪郭線の第1例との違いを示す第1の説明図
【
図4A】本実施形態で生成される輪郭線の第2例を示す図
【
図4B】比較例で生成される輪郭線の第2例を示す図
【
図5】終点ノードの候補位置に応じて輪郭線の候補が異なることを示す第1の説明図
【
図6】終点ノードの候補位置に応じて輪郭線の候補が異なることを示す第2の説明図
【
図11】医用画像処理装置の動作例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における医用画像処理装置100の構成例を示すブロック図である。医用画像処理装置100は、ポート110、UI120、ディスプレイ130、プロセッサ140、及びメモリ150を備える。
【0013】
医用画像処理装置100には、CT装置200が接続される。医用画像処理装置100は、CT装置200からボリュームデータを取得し、取得されたボリュームデータに対して処理を行う。医用画像処理装置100は、PCとPCに搭載されたソフトウェアにより構成されてもよい。
【0014】
CT装置200は、被検体へX線を照射し、体内の組織によるX線の吸収の違いを利用して、画像(CT画像)を撮像する。被検体は、生体、人体、又は動物等を含んでよい。CT装置200は、X線検出器からシノグラムを取得し、シノグラムに基づいて、画像再構成によって被検体の断層画像(スライス画像、スライスデータともいう)を生成する。CT装置200は、スライスデータに基づいて、例えばスライスデータを積層して、ボリュームデータを生成する。スライスデータ及びボリュームデータは、被検体内部の任意の箇所の情報を含む。CT装置200は、CT画像としてのボリュームデータを医用画像処理装置100へ、有線回線又は無線回線を介して送信する。CT画像の撮像には、CT撮像に関する撮像条件や造影剤の投与に関する造影条件が考慮されてよい。なお、造影は、血管の他、消化器官、胆管等に対して行われてよい。造影は、臓器の特性に応じて異なるタイミングで複数回実施されてよい。
【0015】
医用画像処理装置100内のポート110は、通信ポート、外部装置接続ポート、又は組み込みデバイスへの接続ポート等を含み、CT画像から得られたボリュームデータを取得する。取得されたボリュームデータは、直ぐにプロセッサ140に送られて各種処理されてもよいし、メモリ150において保管された後、必要時にプロセッサ140へ送られて各種処理されてもよい。また、ボリュームデータは、記録媒体や記録メディアを介して取得されてもよい。また、ボリュームデータは中間データ、圧縮データ、シノグラム、又はスライスデータ等の形で取得されてもよい。また、ボリュームデータは医用画像処理装置100に取り付けられたセンサーデバイスからの情報から取得されてもよい。ポート110は、ボリュームデータ等の各種データを取得する取得部として機能する。
【0016】
UI120は、タッチパネル、ポインティングデバイス、キーボード、又はマイクロホンを含んでよい。UI120は、医用画像処理装置100のユーザから、任意の入力操作を受け付ける。ユーザは、医師、放射線技師、学生、又はその他医療従事者(Paramedic Staff)を含んでよい。
【0017】
UI120は、各種操作を受け付ける。例えば、ボリュームデータやボリュームデータに基づく画像(例えば後述する3次元画像、2次元画像)における、関心領域(ROI)の指定や輝度条件(例えばウィンドウ情報)の設定等の操作を受け付ける。関心領域は、各種組織(例えば、血管、気管支、臓器、器官、骨、脳)の領域を含んでよい。組織は、病変組織、正常組織、又は腫瘍組織等を含んでよい。ウィンドウ情報は、ウィンドウ幅(WW:Window Width)及びウィンドウレベル(WL:Window Level)の少なくとも一方を含み、「WW/WL」とも記載する。ウィンドウ情報は、表示される画像の輝度を調整する情報である。
【0018】
ディスプレイ130は、例えばLCDを含んでよく、各種情報を表示する。各種情報は、ボリュームデータから得られる3次元画像や2次元画像を含んでよい。3次元画像は、ボリュームレンダリング画像、サーフェスレンダリング画像、仮想内視鏡画像、仮想超音波画像、又はCPR画像等を含んでもよい。ボリュームレンダリング画像は、レイサム(RaySum)画像、MIP画像、MinIP画像、平均値画像、又はレイキャスト画像等を含んでもよい。2次元画像は、アキシャル画像、サジタル画像、コロナル画像、又はMPR画像等を含んでよい。
【0019】
メモリ150は、各種ROMやRAMの一次記憶装置を含む。メモリ150は、HDDやSSDの二次記憶装置を含んでもよい。メモリ150は、USBメモリやSDカードの三次記憶装置を含んでもよい。メモリ150は、各種情報やプログラムを記憶する。各種情報は、ポート110により取得されたボリュームデータ、プロセッサ140により生成された画像、プロセッサ140により設定された設定情報、各種プログラムを含んでもよい。メモリ150は、プログラムが記録される非一過性の記録媒体の一例である。
【0020】
プロセッサ140は、CPU、DSP、又はGPUを含んでもよい。プロセッサ140は、メモリ150に記憶された医用画像処理プログラムを実行することにより、各種処理や制御を行う処理部160として機能する。
【0021】
図2は、処理部160の機能構成例を示すブロック図である。
【0022】
処理部160は、領域処理部161、画像生成部162、輪郭線処理部163、及び表示制御部165を備える。処理部160は、医用画像処理装置100の各部を統括する。処理部160は、例えば輪郭線の生成及び可視化に関する処理を行う。なお、処理部160に含まれる各部は、1つのハードウェアにより異なる機能として実現されてもよいし、複数のハードウェアにより異なる機能として実現されてもよい。また、処理部160に含まれる各部は、専用のハードウェア部品により実現されてもよい。
【0023】
領域処理部161は、例えばポート110を介して、被検体のボリュームデータを取得する。領域処理部161は、ボリュームデータに含まれる任意の領域を抽出する。領域処理部161は、例えばボリュームデータのボクセル値に基づいて、自動で関心領域を指定し、関心領域を抽出してよい。領域処理部161は、例えばUI120を介して、手動で関心領域を指定し、関心領域を抽出してよい。
【0024】
画像生成部162は、各種画像を生成する。画像生成部162は、取得されたボリュームデータの少なくとも一部(例えば抽出された領域のボリュームデータ)に基づいて、3次元画像や2次元画像や断層画像を生成する。画像生成部162は、各種レンダリング(例えばボリュームレンダリング又はサーフィスレンダリング)を行って、画像を生成してよい。
【0025】
輪郭線処理部163は、画像内の各種組織(例えば腎臓)の外周を可視化する輪郭線に関する処理を行う。輪郭線に関する処理の詳細については後述する。
【0026】
表示制御部165は、各種データ、情報、又は画像をディスプレイ130に表示させる。画像は、被検体内の組織の一部を表現した画像であり、例えば、画像生成部162で生成された画像、所定の断面の断面画像(MPR画像)、所定の断層の断層画像を含んでよい。表示制御部165は、この画像とともに輪郭線を表示させる。
【0027】
次に、輪郭線に関する処理について説明する。
【0028】
輪郭線処理部163は、例えばInteligentScissors法を修正して、3次元画像、2次元画像、又は断層画像上に、任意の組織の外周を可視化する輪郭線を生成する。輪郭線が生成される対象の3次元画像、2次元画像、又は断層画像を、ここでは対象画像とも称する。対象画像の画素値は、スカラー値でも良いし、複数値(マルチモダリティデータ、デュアルエナジーCT、スペクトラルCT等)からなっていても良い。
【0029】
輪郭線処理部163は、UI120を介して、対象画像上でユーザ所望の位置に、複数のノードを設定(設置)してよい。このノードは、輪郭線の始点を示す始点ノード、輪郭線の終点を示す終点ノード、との少なくとも2つを含む。また、ノードは、始点ノードと終点ノード以外に中間ノードを含んでよい。輪郭線処理部163は、UI120を介して、対象画像上の任意の位置を順に指定し、ノードを順に設定してよい。この場合、最初に指定された位置が始点ノードとなり、最後に指定された位置が終点ノードとなる。例えば、輪郭線処理部163は、UI120を介して対象画像上の所望の位置でクリック操作を受け付けることで、ノードを設定してよい。クリック操作により指定された対象画像上の画素位置を、クリック点とも称する。輪郭線処理部が163は、設定されたノードを通る輪郭線を生成する。
【0030】
また、輪郭線処理部163は、UI120を介して対象画像上の所望の位置でドラッグ操作を受け付けることで、輪郭線の終点ノードの候補位置を順次変更してよい。つまり、クリック操作ではノードを指定し、ドラッグ操作ではノードを指定せずに輪郭線の終点となる終点ノードの候補を指定してよい。輪郭線処理部163は、例えばUI120を介して終点ノードの確定指示を受けることで、最後の終点ノードの候補位置を終点ノードの位置として設定(確定)してよい。終点ノードの候補の指定は、例えば、ドラッグ操作を終了することやダブルクリック操作を行うことであってよい。
【0031】
また、輪郭線処理部163は、例えば最短経路探索法に従って、任意の2点(始点ノード及び終点ノード)の間を結ぶ輪郭線を導出(例えば算出)する。この最短経路探索法は、例えばダイクストラ法又はA*法(A star)を含んでよい。輪郭線処理部163は、対象画像の画素毎にコストを定義し、上記の任意の始点ノード及び終点ノードの間のコストが最小となる経路を算出する。また、輪郭線処理部163は、任意の2点(始点ノード及び終点ノード)の間のコストに基づく輪郭線の導出と同様に、終点ノードと、終点ノードが確定される前の終点ノードの候補位置と、の間のコストに基づく輪郭線の候補を導出してもよい。
【0032】
輪郭線処理部163は、例えば下記のコスト関数を加味して、コストを算出する。コスト関数は、例えば、fZ関数とfG関数とfD関数との少なくとも1つと、fX関数と、を含む。このfZ関数、fG関数、及びfD関数は、非特許文献1に記載されたfZ関数、fG関数、及びfD関数と同じでよい。
【0033】
fZ関数は、Laplacian Zero-crossingであり、つまりラプラシアンフィルタで抽出されるエッジを示す二値関数である。fZ関数は、対象画像上の各画素の画素値で形成される山(画素値の極大値)ないし谷(画素値の極小値)のある箇所でコストが発生し、輪郭線がこの山ないし谷を越えないように調整する。
【0034】
fG関数は、Gradient Magnitudeであり、つまり勾配の強度を示す。fG関数で導出される値(コスト)が小さい程、対象画像において濃淡差が強い(つまり隣接画素での画素値の差が大きい)画素に向かうように、輪郭線が形成され易くなる。一方、fG関数で導出される値が大きい程、対象画像において濃淡差が強い画素に向かわないように、輪郭線が形成され易くなる。なお、勾配は、一次微分フィルタにより算出可能である。
【0035】
fD関数は、Gradient Directionであり、つまり勾配の向きを示す。fD関数で導出される値(コスト)が小さい程、対象画像において濃淡差が強い(つまり隣接画素での画素値の差が大きい)画素に向かいつつ、エッジを乗り越えないように、輪郭線が形成され易くなる。一方、fD関数で導出される値が大きい程、対象画像において濃淡差が強い画素に向かってエッジを乗り越えるように、輪郭線が形成され易くなる。
【0036】
また、fX関数は、対象画像上の各画素の画素値に関するコストを示す関数である。輪郭線上の各点とクリック点(終点ノード)との間の画素値の差が小さい程、fX関数で導出される値(コスト)が小さくなるので、クリック点(終点ノード)に近い画素値の輪郭線が形成され易くなる。つまり、輪郭線処理部163は、UI120を介して対象画像上の任意の点(例えばクリック点)を指定し、指定点の画素値(ピクセル値)をコストに用いる。
【0037】
(輪郭線導出の第1例)
まず、輪郭線導出の第1例について説明する。
【0038】
輪郭線処理部163は、例えば、対象画像上の点pから点pに隣接する点q(隣接点)へ向かうローカルコストを、各コストに重みを与えて算出する。つまり、ローカルコストは、対象画像上で1画素分移動するために要するコストである。輪郭線処理部163は、例えば(式1)に従って、ローカルコストを算出してよい。
l(p,q)=ωZ×fZ(q)+ωD×fD(p,q)+ωG×fG(q)+ωX×fX(q,d) ・・・(式1)
【0039】
l(p,q)は、点pから点qまでのコスト(ローカルコスト)を示す。fZ(q)は、点qでのラプラシアンフィルタで得られるエッジを示す。fD(p,q)は、点pと点qとの間での勾配の向きである。fG(q)は、点qでの勾配の強度を示す。fZ(q)、fD(p,q)、及びfG(q)は、非特許文献1に記載されたfZ(q)、fD(p,q)、及びfG(q)と同一でよい。また、fX(q,d)は、点qと点dとの画素値の差分である。点dは、対象画像上の終点ノードの候補位置である。つまり、X(a)を点aにおける画素値とすると、fX(q,d)は、例えば(式2)のように表される。
fX(q,d)=|X(q)-X(d)| ・・・(式2)
【0040】
また、ωZ、ωD、ωG、及びωXは、それぞれ、fZ関数、fG関数、fD関数、及びfX関数に対する重みを示す。例えば、ωZ=0.43、ωD=0.43、ωG=0.14、ωX=0.3であるが、これに限られない。
【0041】
輪郭線処理部163は、例えばUI120を介して輪郭線の始点ノードを指定し、最初に、この始点ノードを点pに設定し、この点pに隣接する点を点qに設定して、ローカルコストl(p,q)を算出する。点qは、対象画像上の点pから各方向に隣接する点であり得る。
【0042】
次に、前回の点qを点pに設定し、この点pに隣接する点qに設定して、ローカルコストl(p,q)を再度算出する。輪郭線処理部163は、このような点p及び点qの設定とローカルコストの算出を、点qの位置が終点ノードの候補位置である点dに到達するまで繰り返す。そして、輪郭線処理部163は、始点ノードから終点ノードの候補位置に至るまでのローカルコストの合計(合計コストとも称する)を算出する。輪郭線処理部163は、合計コストが最小となる輪郭線を導出することで、輪郭線を生成する。この場合、始点ノードと終点ノードとの間にノード(中間ノード)が存在する場合には、この中間ノードを通る輪郭線のうち、合計コストが最小となる輪郭線を導出する。なお、終点ノードの候補位置のうちの1つが終点ノードとして確定されるので、終点ノードの候補位置に基づくコスト計算は、終点ノードに基づくコスト計算と同義である。
【0043】
また、終点ノードの候補位置は、例えばUI120を介して操作することで変化し得る。この場合、終点ノードの候補位置が変化する度に、点p及び点qの設定、ローカルコストの算出、及び合計コストの算出を行う。これにより、例えばUI120を介して終点ノードの候補位置が変化することで、合計コストが変化し、輪郭線の候補の形状が変化する。そして、輪郭線処理部163は、UI120を介して終点ノードの確定指示を受けると、確定された終点ノードの位置を終点ノードの候補位置としていた場合の輪郭線で確定し、輪郭線を生成する。表示制御部165は、形状が変化する輪郭線の候補の様子を表示させてもよい。
【0044】
なお、輪郭線処理部163は、合計コストが最小となる輪郭線を導出するのではなく、合計コストが所定基準(例えば合計コストが閾値未満であること)を満たす輪郭線を生成してもよい。また、輪郭線処理部163は、(式1)に含まれる各コストのコスト関数(fZ関数、fG関数、fD関数、及びfX関数)の他に、その他の点p及び点qを加味した(つまり(p,q)で示される)コスト関数も加味して、ローカルコストを算出してよい。
【0045】
また、対象画像がカラー画像である場合、輪郭線処理部163は、各色(例えばRGB)のそれぞれで合計コストを算出し、各色の合計コストを更に合計したコスト(カラー合計コストとも称する)を算出してよい。また、輪郭線処理部163は、カラー画像をHSVに変換し、HSVのそれぞれで合計コストを算出し、Hに関する合計コストをメインとし、S及びVに関する合計コストをサブとして(補助的に用いて)、カラー合計コストを算出してもよい。輪郭線処理部163は、カラー合計コストが最小である輪郭線を生成してよい。
【0046】
なお、ここでは、始点ノードと終点ノードとは、輪郭線の始点と終点となることを例示したが、輪郭線処理部163は、ノードが3つ以上の場合には、隣り合う2つのノードのうちの始点側を始点ノードとし、この2つのノードのうちの終点側を終点ノードとしてもよい。そして、輪郭線処理部163は、この隣り合う2つのノードを接続する部分輪郭線(輪郭線の一部)を導出してもよい。この場合も同様に、上記のローカルコスト及び合計コストを導出し、合計コストに基づいて部分輪郭線を決定してよい。そして、輪郭線処理部163は、それぞれの隣り合うノード間を結ぶ複数の部分輪郭線を接続して、3つ以上のノードの始点と終点とを結ぶ全体の輪郭線OLを生成してもよい。
【0047】
(輪郭線導出の第2例)
次に、輪郭線導出の第2例について説明する。なお、輪郭線導出の第1例で説明した事項と同様の事項については、その説明を省略又は簡略化する。
【0048】
輪郭線処理部163は、輪郭線導出の第1例と同様に、対象画像上の点pから点pに隣接する点qへ向かうローカルコストを、各コストに重みを与えて算出してよい。輪郭線処理部163は、例えば(式3)に従って、ローカルコストを算出してよい。つまり、(式3)は(式1)よりもが簡略化された式となっている。
l(p,q)=1+ωD×fD(p,q)+ωX×fX(q,d) ・・・(式3)
【0049】
なお、重みに関して、例えば、ωD=1.0、ωX=10.0である。また、第2例では、fX(q,d)が第1例とは異なる定義となっている。つまり、fX(q,d)は、(式2)で表されるのではなく、例えば以下の(式4)で表される。
fX(q,d)=|fs(X(q))-fs(X(d))| ・・・(式4)
【0050】
ここで、fs(i)は、与えられた画素値iに対して、WW/WLの範囲(設定されたウィンドウ情報)でクリップさせた状態で、[0,1]に正規化(Feature Scaling)する関数である。具体的には、fs(i)は、例えば以下の(式5)で表される。(式5)は、場合分けして示されている。
【0051】
fs(i)=0; if i<WL-WW/2
fs(i)=((i-WL)/WW+1/2); if WL-WW/2≦i≦WL+WW/2
fs(i)=1; if WL+WW/2<i ・・・(式5)
【0052】
なお、fD(p,q)は、非特許文献1に記載されたfD(p,q)と同一でもよいし、異なってもよい。例えば、以下の(式6)のように簡略化して示されてもよいし、(式7)のように表されてもよい。
fD(p,q)=|fs(X(p))-fs(X(q))| ・・・(式6)
fD(p,q)=exp(-20.0*(||grad(q)×uv(p,q))||^2) ・・・(式7)
【0053】
ここで、「^」はべき乗演算子を示す。「grad(q)」は、点qにおける対象画像の勾配ベクトルである。「×」は外積演算子である。「*」は乗算演算子である。「uv(p,q)」は点pから点qへの方向の単位ベクトルである。norm(v)はベクトルの大きさを示し、「||」はノルム(norm)記号を示す。
【0054】
第2例においても、輪郭線導出の第1例と同様に、輪郭線処理部163は、始点ノードから終点ノードの候補位置に至るまでのローカルコストの合計である合計コストを算出する。そして、輪郭線処理部163は、合計コストが最小となる輪郭線を導出することで、輪郭線を生成する。
【0055】
なお、輪郭線処理部163は、始点ノードと終点ノードとの間の各ノードを直列につなぎ、線状に形成された輪郭線(線状輪郭線)を生成してもよいし、各ノードを環状に接続した輪郭線(環状輪郭線)を生成してもよい。線状輪郭線でも環状輪郭線でも、上記の合計コストが最小となるように導出され、生成されてよい。輪郭線処理部163は、輪郭線を生成する動作モードとして、線状輪郭線モードと環状輪郭線モードとを有してよい。輪郭線処理部163は、動作モードが線状輪郭線モードの場合には、線状輪郭線を生成するためのコストを算出し、線状輪郭線を生成してよい。輪郭線処理部163は、動作モードが環状輪郭線モードの場合には、環状輪郭線を生成するためのコストを算出し、環状輪郭線を生成してよい。
【0056】
次に、CT装置200により得られる医療用の断層画像と、ウィンドウ情報と、について補足する。
【0057】
医療用の断層画像では、一般の写真映像と異なり、断層画像内に光源からの陰影が発生しない。これにより、観察対象の輪郭にそってグラデーションが発生せず、組織の輪郭は同一の画素値とのなることが多い。また、ユーザの指定した点の画素値にユーザの観察したい輪郭の情報が含まれていると推測できる。また、同じ画像内で同一組成の組織は、同一の画素値となることが多い。また、ユーザは、UI120を介したWW/WLの指定により、表示される画像の画素値の範囲をクリップさせて観察し得る。この場合、輪郭線処理部163は、WW/WLの指定情報を基に、輪郭線として生成を希望するWW/WLを推定し、輪郭線を生成してよい。
【0058】
また、CT画像であってはCT値(CT装置200の撮像により得られる画素値)によって、対応する組織の組成が概ね判別可能である。例えば、臓器の輪郭では、概ねCT値が50~100の範囲に集中すれば良い。また、骨、金属、及び空気等は、他の物質と比較するとCT値の絶対値が大きい。例えば、金属はCT値が1000以上であり、骨はCT値が100~1000であり、空気はCT値が-1000である。そのため、骨、金属、及び空気等の境界では、極端なグラディエント(勾配)が生じ得る。従来のIntelligent Scissors法では、これらの大きなグラディエントに影響を受け易いが、本実施形態の医用画像処理装置100は、この大きなグラディエントの影響を低減して、臓器の輪郭線を生成できる。
【0059】
また、輪郭線処理部163は、WW/WLに基づいて、輪郭線を生成できる。WW/WLは、ユーザにより指定されることが多く、ユーザが観察したい画素値の範囲が反映されている。そのため、医用画像処理装置100は、その画素値の範囲にある組織等を重視して、例えばこの画素値の範囲にある画素値を有する画素を通るように輪郭線を生成できる。これにより、医用画像処理装置100は、例えば、CT値の絶対値が極端に大きい骨、金属、又は空気等の画素値に影響を受けて、骨、金属、又は空気の境界に輪郭線を生成することを抑制できる。
【0060】
図3は、本実施形態で生成される輪郭線の第1例と比較例で作成される輪郭線の第1例との違いを示す第1の説明図である。
図3では、心臓から出たところの造影された大動脈の内壁輪郭を作成したいところ、大動脈内壁輪郭の周囲には大動脈上の石灰化、脂肪組織、造影された心房がうつっている。
【0061】
領域R1は、血管壁における石灰化領域であり、血管の外側における輝度の落ち込みが見られる。領域R1に示すように、比較例の輪郭線OLXは、対象画像G1における勾配の大きい血管の外側に寄る(吸い込まれる)傾向がある。これに対し、本実施形態の輪郭線OLは、勾配に左右されることが抑制可能である。これは、(式1)及び(式3)のfX関数(fX(g,d))の作用によるものである。つまり、輪郭線処理部163は、終点ノードENである点dの画素値を加味して、輪郭線OL上の各点と終点ノードEN(点d)との画素値との差分の累積値がなるべく小さくなるように、輪郭線OLを生成する。そのため、比較例の輪郭線OLXのような画素値が大きく異なるエッジ側に吸い込まれるような挙動が、抑制されることになる。
【0062】
また、領域R1は、血管壁の外に脂肪とみられる輝度の大きな落ち込みが観察される。領域R2に示すように、比較例の輪郭線OLXは、輪郭線OLXが通る各点で画素値(CT値)を維持しない傾向にある。つまり、エッジ近辺を通るが、画素値が低い画素(黒)を通ったり画素値が高い画素(白)を通ったりする。これに対し、本実施形態の輪郭線OLは、終点ノードENの画素値に応じて、輪郭線OLが通る各点の画素値があまり変動せず、輪郭線OLが通る各点で画素値が維持される傾向にある。これは、(式1)及び(式3)のfX関数(fX(g,d))の作用によるものである。つまり、輪郭線処理部163は、終点ノードENの画素値を加味して、輪郭線OL上の各点と終点ノードENとの画素値との差分の累積値がなるべく小さくなるように、輪郭線OLを生成する。そのため、比較例の輪郭線OLXのように画素値が変動することをなるべく回避するようになる。
【0063】
比較例に示されるように、従来の最短経路探索法では、輪郭線OLXを生成するためのコスト関数が輪郭線の始点及び終点に影響されない。これは、例えば特許文献1のコスト関数において、(式1)等に示したfX関数が不在であることに起因する。これに対し、本実施形態の医用画像処理装置100は、fX(q,d)の作用により、輪郭線OL(又は輪郭線の候補)に隣接する各点(点q)の画素値や、終点ノードEN(又はその候補位置)(点d)の画素値に影響されることで、ユーザが意図を反映した所望の輪郭線OL(又は輪郭線OLの候補)を容易に生成できる。また、医用画像では、所定の閾値と同一又は同等の画素値を有する画素を結ぶ輪郭線OLを生成することに意義があり、本実施形態ではこのような輪郭線OLが得られる。
【0064】
図4Aは、本実施形態で生成される輪郭線の第2例を示す図である。
図4Bは、比較例で生成される輪郭線の第2例を示す図である。
【0065】
本実施形態では、終点ノードEN(点d)の画素値に基づいて輪郭線OL1が生成される。よって、ユーザが組織に対して大きめに(組織のやや外側に)輪郭線OL1を設置したい場合に、医用画像処理装置100は、ユーザの意図通りに輪郭線OL1を生成できる。一方、比較例では、終点ノードENの画素値に依存せずに、最も勾配が大きな箇所に沿って輪郭線OLX1が生成される。そのため、比較例では、画素値の低い部分(黒)から画素値の高い部分(白)に入り込んでいるが、本実施形態では、画素値の低い部分(黒)から画素値の高い部分(白)に入り込まないように、輪郭線OL1が生成可能である。
【0066】
図5は、終点ノードの候補位置ENCに応じて輪郭線の候補OLCが異なることを示す第1の説明図である。
【0067】
図5では、対象画像G11において終点ノードの候補位置ENC1をクリックした場合の輪郭線の候補OLC1を示している。また、対象画像G12において終点ノードの候補位置ENC2をクリックした場合の輪郭線の候補OLC2を示している。また、対象画像G13において終点ノードの候補位置ENC3をクリックした場合の輪郭線の候補OLC3を示している。つまり、対象画像G11~G13における終点ノードの候補位置ENC(ENC1,ENC2,ENC3)を順次変更することで、輪郭線の候補OLC(OLC1,OLC2,OLC3)が順次変化して表示されることを示している。なお、対象画像G11~G13は同じ画像を示している。
【0068】
図5Aの対象画像G11,G12,G13のそれぞれでは、例えばUI120を介したドラッグ操作によって、終点ノードの候補位置EDCが微調整されることで、輪郭線の候補OLCの形状が少しずつ変化していることを示している。このような微調整は、例えば、輪郭線処理部163により、対象画像G11,G12,G13を拡大して小さな組織の輪郭を調整する際に有用である。
【0069】
図6は、終点ノードの候補位置ENCに応じて輪郭線の候補OLCが異なることを示す第2の説明図である。
【0070】
対象画像G22では、対象画像G21と比較すると、対象画像G22に付される輪郭線の候補OLCが0.5ピクセル(画素)程、上方向に移動している。つまり、対象画像G21における輪郭線の候補OLC21の位置が、UI120を介したドラッグ操作等により、終点ノードの候補位置ENCの画像中で上方に移動することで、対象画像G22における輪郭線の候補OLC22の位置へ移動している。つまり、対象画像におけるクリック点の位置が少し異なることで画素値が少し異なり、そのために輪郭線の候補OLCの位置が少し上方向に移動している。これは、本実施形態では対象画像内の画素値をコスト関数に用いているためである。一方、従来のIntelligent Scissors法では終点ノードの候補位置ENCを動かしても輪郭線の大部分は同一箇所に留まっていたので輪郭線の微調整ができなかった。さらに、終点ノードを動かしたときにユーザの意図に反して輪郭線が大きく動いてしまうこともあった。コスト関数が局所最小点に陥りやすいからである。なお、対象画像G21,G22は同じ画像を示している。本実施形態の医用画像処理装置100は、ユーザのクリック位置を微調整することで、容易に輪郭線の候補OLCの位置を微調整でき、つまり輪郭線OLの位置を微調整できる。
【0071】
次に、新規ノードの追加について説明する。
【0072】
輪郭線処理部163は、少なくとも2つのノードに基づいて、輪郭線OLを生成する。ノードが2つ指定された場合、時系列で先に指定されたノードが輪郭線OLの始点である最初の始点ノードSNとなり、時系列で後に指定されたノードが輪郭線OLの終点である終点ノードENとなる。始点ノードSNと終点ノードENとの間の各隣接画素位置が(式1)又は(式3)等に登場する点p及び点qとなる。この輪郭線OLを伸張したい場合は、輪郭線処理部163は、それまでの終点ノードを新たな始点ノードSNとして、新たに指定されたノードを新たな終点ノードENとして、新たな輪郭線を生成し、それまでの輪郭線OLに新たな輪郭線を接続して伸張する。また、新たに指定されたノードがそれまでの輪郭線OLの最初の始点ノードSNである場合には、輪郭線処理部163は、輪郭線OLの終点を始点に接続して閉曲線を生成し、その内側を領域(閉領域)にできる。
【0073】
輪郭線処理部163は、少なくとも2つのノードである始点ノードSNと終点ノードENとに基づく輪郭線OLが生成された後に、1つ以上の中間ノードINを追加し、輪郭線OL(例えばOL2,OL3,…)を修正してよい。中間ノードINが追加されると、中間ノードINと中間ノードINの両側にある2つのノードのそれぞれ(例えば始点ノードSN、終点ノードEN、又は他の中間ノードIN)との間で部分輪郭線OLP(例えばOLP1,OLP2,…)を生成し、コスト関数を用いて合計コストを算出する。
【0074】
図7は、ノードの追加の第1例を示す図である。
図7では、始点ノードSNと終点ノードENとの間に1つの中間ノードINを追加することを想定している。この場合、始点ノードSNを始点ノードとし中間ノードINを終点ノードとする合計コストに基づいて、この合計コストが最小になるように、部分輪郭線OLP1を決定する。また、終点ノードENを始点ノードとし中間ノードINを終点ノードとする合計コストに基づいて、この合計コストが最小になるように、部分輪郭線OLP2を決定する。輪郭線処理部163は、部分輪郭線OLP1と部分輪郭線OLP2とに基づいて、生成済みであった輪郭線OL2を、部分輪郭線OLP1と部分輪郭線OLP2とを接続した輪郭線OL3に修正する。この場合、輪郭線OL2の始点ノードSNと終点ノードENとの間の全体が修正されることになる。このようにすることによって、医用画像処理装置100は、最後に指定した中間ノードINの画素値を優先できる。
【0075】
図8は、ノードの追加の第2例を示す図である。
図8では、部分輪郭線OLP3が3つのノードを通っており、始点ノードSNと第1中間ノードIN1との間に第2中間ノードIN2を追加することを想定している。この場合、始点ノードSNを始点ノードとし第2中間ノードIN2を終点ノードとする合計コストに基づいて、この合計コストが最小になるように、部分輪郭線OLP4を決定する。また、第1中間ノードIN1を始点ノードとし第2中間ノードIN2を終点ノードとする合計コストに基づいて、この合計コストが最小になるように、部分輪郭線OLP5を決定する。輪郭線処理部163は、部分輪郭線OLP4と部分輪郭線OLP5とに基づいて、生成済みであった部分輪郭線OLP3を、部分輪郭線OLP4と部分輪郭線OLP5とを接続した輪郭線OLP6に修正する。この場合、輪郭線OLの始点ノードSNと終点ノードENとの間の一部(始点ノードSNと第1中間ノードIN1との間の部分)が修正されることになる。このようにすることによって、医用画像処理装置100は、最後に指定した中間ノードIN1の画素値を優先できる。
【0076】
次に、既存ノードの移動について説明する。
【0077】
輪郭線処理部163は、UI120を介してユーザによる操作を受け付け、この操作に基づいて、生成済みの輪郭線OLが通るノード(既存ノード)を移動させてよい。この場合、輪郭線処理部163は、移動されたノード(移動ノード)と、輪郭線OL上で移動ノードが移動する前の位置において両側で隣接していた2つのノードと、に基づいて、部分輪郭線OLP(例えばOLP11,OLP12,…)を決定し、生成済みの輪郭線OL(OL4,OL5,…)を修正する。
【0078】
図9は、既存ノードの移動の第1例を示す図である。
図9では、ノードが3つ配置されて輪郭線OL4が生成済みであり、輪郭線OL4上で始点ノードSNと終点ノードENとの間にある中間ノードIN11が移動することを想定する。3つのノードは、例えば、始点ノードSN、中間ノードIN11、終点ノードENの順に指定されて配置されている。この場合、移動ノードとしての中間ノードIN11と、中間ノードIN11が移動する前の位置の両側に隣り合う始点ノードSN及び終点ノードENとに基づいて、輪郭線OL4を修正してよい。具体的には、始点ノードSNを始点ノードとし移動後の中間ノードIN11を終点ノードとする合計コストに基づいて、この合計コストが最小になるように、始点ノードSNと移動後の中間ノードIN11とを結ぶ部分輪郭線OLP11を決定する。また、終点ノードENを始点ノードとし中間ノードIN11を終点ノードとする合計コストに基づいて、この合計コストが最小になるように、終点ノードENと中間ノードIN11とを結ぶ部分輪郭線OLP12を決定する。輪郭線処理部163は、部分輪郭線OLP11と部分輪郭線OLP12とに基づいて、生成済みであった輪郭線OL4を、部分輪郭線OLP11と部分輪郭線OLP12とを接続した輪郭線OL5に修正する。この場合、輪郭線OL4の始点ノードSNと終点ノードENとの間の全体が修正されることになる。このようにすることによって、医用画像処理装置100は、最後に指定した中間ノードIN11の画素値を優先できる。
【0079】
図10は、既存ノードの移動の第2例を示す図である。
図10では、ノードが4つ以上配置されて部分輪郭線OLP13が生成済みであり、部分輪郭線13上で始点ノードSNと第1中間ノードIN21との間にある第2中間ノードIN22が移動することを想定する。4つのノードは、例えば、始点ノードSN、中間ノードIN21、中間ノードIN22、終点ノードENの順に指定されて配置されている。この場合、移動ノードとしての第2中間ノードIN22と、第2中間ノードIN22が移動する前の位置の両側に隣り合う始点ノードSN及び第1中間ノードIN21とに基づいて、部分輪郭線OLP13を修正してよい。具体的には、始点ノードSNを始点ノードとし移動後の第2中間ノードIN22を終点ノードとする合計コストに基づいて、この合計コストが最小になるように、始点ノードSNと移動後の第2中間ノードIN22とを結ぶ部分輪郭線OLP14を決定する。また、第1中間ノードIN21を始点ノードとし第2中間ノードIN22を終点ノードとする合計コストに基づいて、この合計コストが最小になるように、第1中間ノードIN21と第2中間ノードIN22とを結ぶ部分輪郭線OLP15を決定する。輪郭線処理部163は、部分輪郭線OLP14と部分輪郭線OLP15とに基づいて、生成済みであった部分輪郭線OLP13を、部分輪郭線OLP14と部分輪郭線OLP15とを接続した部分輪郭線OLP16に修正する。この場合、輪郭線OLの始点ノードSNと終点ノードENとの間の一部(始点ノードSNと第1中間ノードIN21との間の部分)が修正されることになる。このようにすることによって、医用画像処理装置100は、最後に指定した中間ノードIN22の画素値を優先できる。
【0080】
次に、医用画像処理装置100の動作例について説明する。
図11は、医用画像処理装置100の動作例を示すフローチャートである。なお、
図11では、輪郭線として環状輪郭線を生成することを例示する。
【0081】
まず、ポート110は、被検体(例えば患者)のボリュームデータを取得する(S11)。領域処理部161は、例えばUI120を介して指定された関心領域(例えば腎臓)を抽出し、画像生成部162は、関心領域を含む所定の断面のMPR画像を生成する(S12)。表示制御部165は、生成されたMPR画像を表示させる(S12)。これにより、ユーザは、関心領域を確認可能となる。関心領域は、ユーザによる観察対象の領域である。
【0082】
輪郭線処理部163は、例えばUI120を介してユーザの操作を受け付けて、関心領域(例えば腎臓)の輪郭上にノードを順次設置(配置)する(S13)。例えば、UI120を介してMPR画像上の任意の位置を順次クリックすることで、ノードを順次設置してよい。
【0083】
輪郭線処理部163は、指定された隣り合うノード間のそれぞれにおいて、ローカルコスト及び合計コストを算出し、合計コストに基づいて、部分輪郭線を生成する。輪郭線処理部163は、各隣接ノード間を補完する部分輪郭線のそれぞれを接続して、始点ノードSNから終点ノードENに至る輪郭線を生成する(S14)。
【0084】
輪郭線処理部163は、ノードが3点以上指定された状態で、終点ノードとして最初に指定されたノードである始点ノードが再度指定された場合、各ノードを通る閉じた輪郭線(つまり環状の輪郭)を生成する(S15)。表示制御部165は、環状の輪郭線をMPR画像上に表示させる(S15)。
【0085】
輪郭線処理部163は、閉じた環状の輪郭線に基づいて、閉領域をMPR画像上で表示する(S16)。例えば、閉領域が、この閉領域の外側と内側とで区別可能に、表示態様が異なるように表示される。また、この閉領域の面積、径、画素値の最大値、最小値、平均値などの統計値を表示させてもよい。
【0086】
輪郭線処理部163は、UI120を介して、ステップS15で生成済みの輪郭線上にある任意のノードをMPR画像上で移動させる(S17)。輪郭線処理部163は、輪郭線上において、移動ノードが移動される前にこの移動ノードに隣り合っていた2つのノード間の輪郭線(又は部分輪郭線)を修正する(S18)。表示制御部165は、修正が反映された、閉じた環状の輪郭線をMPR画像上に表示させる(S19)。
【0087】
次に、本実施形態のバリエーションについて説明する。
【0088】
輪郭線処理部163は、最新のクリック点(つまりそのクリック時点での終点ノードの候補位置又は確定された終点ノードの位置)の画素値に基づいて、ローカルコスト関数に含まれるfX(q,d)の値を算出することを例示した。なお、輪郭線処理部163は、終点ノードの候補位置の画素値のみでなく、輪郭線の候補上で終点ノードの候補位置の直前に配置されたノード(前ノードとも称する)の画素値にも基づいて、ローカルコスト関数を算出するようにしてもよい。つまり、終点ノードの候補位置の前ノードが始点ノードである場合、始点ノードの画素値と終点ノードの候補位置の画素値とに基づいて、ローカルコスト関数の値が決定される。終点ノードの候補位置の前ノードが中間ノードである場合、この中間ノードの画素値と終点ノードの候補位置の画素値とに基づいて、ローカルコスト関数の値が決定される。
【0089】
また、隣接する画素間で補間処理を行うことで、隣接画素間において画素値が滑らかに変化するように調整されることがある。例えば、処理部160が1画素に満たない範囲で画素値を異なるよう補間値を設定することで、画素単位で隣り合う画素において急激に変化する(例えばギザギザ形状となる)のではなく、隣接画素間で画素値が滑らかに変化する(例えば曲線的にな)ようにできる。これにより、例えば対象画像が拡大された場合でも、表示される画像の画素値の変化が滑らかになる。輪郭線処理部163は、このような拡大画像において、例えばUI120を介して任意の点をクリック操作やドラッグ操作を行って終点ノード又は終点ノードの候補位置を指定し、この終点ノード又は終点ノードの候補位置の補間値を用いてfX(q,d)の値を算出してよい。これにより、医用画像処理装置100は、拡大画像においても、組織の輪郭に好適に沿った輪郭線を導出可能である。
【0090】
また、本実施形態では、主に2次元画像上での組織等の平面形状を加味した輪郭線を生成することを例示したが、これに限らない。輪郭線処理部163は、3次元空間上での組織等の立体形状を加味して、輪郭線を生成してもよい。この場合、輪郭線処理部163は、下記の参考非特許文献1の技術に、上述した本実施形態の対象画像中の画素値を加味したコスト関数の導出手法を適用することで、3次元空間上での組織等の立体形状を加味した立体的な輪郭線を生成してもよい。
【0091】
(参考非特許文献1:Miranda Poon, Ghassan Hamarneh, Rafeef Abugharbieh, “Efficient interactive 3D Livewire segmentation of complex objects with arbitrary topology”, ScienceDirect, Computerized Medical Imaging and Graphics, 32 (2008) 639-650)
【0092】
また、対象断面画像がMPR画像であることを主に例示したが、これに限られない。例えば、対象断面画像は、アキシアル画像、コロナル画像、サジタル画像、CPR画像やその他の画像であってもよい。また、対象断面画像は厚み付きの断面の画像であってもよい。
【0093】
また、輪郭線処理部163は、各ノード間を接続する輪郭線又は部分輪郭線として、例えば折れ線形状の輪郭線を導出することを例示したが、これに限らない。
図12は、輪郭線の形状の一例を示す図である。輪郭線は、前述の矩形折れ線形状の輪郭線OLaであってよい。また、輪郭線は、ピクセルの中心を接続するポリライン形状の輪郭線OLbであってもよい。また、ポリライン形状の輪郭線は、ポリライン上の点を、隣接する画素の間で補間(例えば線形補間)された補間値がクリック位置の画素値となる位置に寄せた輪郭線OLcであってもよい。また、輪郭線は、スプライン曲線形状の輪郭線OLdであってもよい。
【0094】
このように、本実施形態の医用画像処理装置100は、輪郭線の形状を左右するノードの位置の画素値を基にコスト関数の値が導出されるので、ノードの位置を指定するユーザの意図が反映された輪郭線を生成できる。よって、例えばユーザが指示した画素値に近い画素値を有する画素を通る輪郭線が導出可能である。また、医用画像処理装置100は、ラプラシアンや勾配の値だけでなく、探索された経路上の画素値の近さも加味するので、輪郭線が通る位置の画素値の変動を低減できる。
【0095】
また、処理部160は、終点ノードの候補位置を終点ノードと仮定して、終点ノードと同様に合計コストを算出してよい。この場合、合計コストは、始点ノードと終点候補ノードとの間の合計コストとなる。表示制御部165は、この合計コストに基づく輪郭線の候補をプレビューとしてディスプレイ130に表示させてよい。処理部160は、UI120を介してドラッグ操作等により終点ノードの候補位置を動かすことで、終点ノードの確定まで、順に候補経路(輪郭線の候補)を表示させてよい。これにより、医用画像処理装置100は、ノードの指定毎に輪郭線の形状が離散的に大きく変化するのではなく、終点ノードの候補位置が順次変化しながら、輪郭線の候補の状態を視認できる。よって、ユーザは、この表示を確認しながら輪郭線の微調整をし易くなる。
【0096】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0097】
また、医用画像処理装置100は、少なくともプロセッサ140及びメモリ150を備えてよい。ポート110、UI120、及びディスプレイ130は、医用画像処理装置100に対して外付けであってもよい。
【0098】
また、撮像されたCT画像としてのボリュームデータは、CT装置200から医用画像処理装置100へ送信されることを例示した。この代わりに、ボリュームデータが一旦蓄積されるように、ネットワーク上のサーバ(例えば画像データサーバ(PACS)(不図示))等へ送信され、保管されてもよい。この場合、必要時に医用画像処理装置100のポート110が、ボリュームデータを、有線回線又は無線回線を介してサーバ等から取得してもよいし、任意の記憶媒体(不図示)を介して取得してもよい。
【0099】
また、撮像されたCT画像としてのボリュームデータは、CT装置200から医用画像処理装置100へポート110を経由して送信されることを例示した。これは、実質的にCT装置200と医用画像処理装置100とを併せて一製品として成立している場合も含まれるものとする。また、医用画像処理装置100がCT装置200のコンソールとして扱われている場合も含む。
【0100】
また、CT装置200により画像を撮像し、被検体内部の情報を含むボリュームデータを生成することを例示したが、他の装置により画像を撮像し、ボリュームデータを生成してもよい。他の装置は、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、血管造影装置(Angiography装置)、又はその他のモダリティ装置を含む。また、PET装置は、他のモダリティ装置と組み合わせて用いられてもよい。
【0101】
また、医用画像処理装置100における動作が規定された医用画像処理方法として表現可能である。また、コンピュータに医用画像処理方法の各ステップを実行させるためのプログラムとして表現可能である。
【0102】
(上記実施形態の概要)
以上のように、上記実施形態の医用画像処理装置100は、処理部160と、ディスプレイ130と、を備える。処理部160は、被検体のボリュームデータを取得し、ボリュームデータに基づいて、被検体内の組織の少なくとも一部を表現した対象画像(第1の画像の一例)を生成してよい。処理部160は、対象画像上の組織の輪郭上の第1の点(例えば始点ノードSN)と第2の点(例えば終点ノードEN又は中間ノードIN)とを接続する輪郭線OLを、対象画像の各画素のラプラシアン及び勾配の少なくとも一つと、第2の点の画素値と、第1の点と第2の点とを接続する経路候補上にある各画素の画素値と、に基づいて生成する。処理部160は、UI120(操作部の一例)を介して、第1の点と第2の点とを指定してよい。処理部160は、対象画像と輪郭線OLとをディスプレイ130(表示部の一例)に表示させる。この勾配は、例えば、勾配の大きさ、勾配の向き、勾配ベクトル、又は単に位置関係が既知である2つの画素の画素値の差分を利用することを含んでよい。第1の点及び第2の点並びに後述の第3の点及び第4の点は、制御点(ノード)の一例である。
【0103】
これにより、医用画像処理装置100は、経路候補上の画素の画素値やユーザが指定した終点ノードや中間ノードの画素値に基づいて輪郭線を導出するので、ノードの位置を指定するユーザの意図が反映された輪郭線OLを生成できる。よって、例えばユーザが指示した画素値に近い画素値を有する画素を通る輪郭線が導出可能である。また、医用画像処理装置100は、ラプラシアンや勾配の値だけでなく、経路候補上の各画素の画素値も加味して輪郭線OLを生成できる。
【0104】
また、ボリュームデータは、CT装置200による被検体の撮像により得られたデータでよい。また、対象画像はMPR画像であってよい。これにより、医用画像処理装置100は、CT装置200で得られたボリュームデータの所定の断面において、輪郭線を好適に描画できる。
【0105】
また、輪郭線OLは、UI120を介して指定された、第1の点と第2の点を含む3個以上のノードを通り、被検体内の組織を含む閉領域を形成してよい。これにより、医用画像処理装置100は、組織の外周を包囲した閉領域を、組織の近傍の高輝度点や低輝度点からの影響を抑制しながら生成できる。
【0106】
また、生成された輪郭線OLは、第1の点と第3の点(例えば終点ノードEN)との間にある第2の点(例えば中間ノードIN11)を通ってよい。処理部160は、第2の点を対象画像上で移動させてよい。処理部160は、移動後の第2の点の画素値に基づいて、第1の点と第2の点とを結ぶ輪郭線OLの一部である部分輪郭線OLP11(第1の部分輪郭線の一例)と、第2の点と第3の点とを結ぶ輪郭線OLの他の一部である部分輪郭線OLP12(第2の部分輪郭線の一例)と、を生成してよい。処理部160は、部分輪郭線OLP11と部分輪郭線OLP12とに基づいて、輪郭線OLを修正してよい。
【0107】
これにより、医用画像処理装置100は、生成済みの輪郭線OLが通るノードの位置を変更した場合、この変更に追従して、各ノードを通る輪郭線OLを再生成できる。よって、医用画像処理装置100は、生成済みの輪郭線OLの形状を、例えばユーザの意図を反映して柔軟に変更できる。
【0108】
また、処理部160は、生成された輪郭線OL上に第4の点(例えば中間ノードIN)を追加してよい。処理部160は、第4の点の画素値に基づいて、第1の点と第4の点とを結ぶ輪郭線OLの一部である部分輪郭線OLP1(第3の部分輪郭線の一例)と、第4の点と第2の点(例えば終点ノードEN)とを結ぶ輪郭線OLの他の一部である部分輪郭線OLP2(第4の部分輪郭線の一例)と、を生成してよい。処理部160は、部分輪郭線OLP1と部分輪郭線OLP2とに基づいて、輪郭線OLを修正してよい。
【0109】
これにより、医用画像処理装置100は、生成済みの輪郭線OLが通るノードを輪郭線OLの生成後に追加でき、この追加に伴って、各ノードを通る輪郭線OLを再生成できる。よって、医用画像処理装置100は、生成済みの輪郭線OLの形状を、例えばユーザの意図を反映して柔軟に変更できる。
【0110】
また、処理部160は、対象画像上での第2の点(例えば終点ノードEN、中間ノードIN)の位置を確定する前に、第2の点の候補位置(例えば候補位置ENC)に基づいて、輪郭線の候補OLCをディスプレイ130に表示させてよい。この場合、処理部160は、例えば、UI120を介したドラッグ操作により終点ノードENを設置する際に、ドラッグ操作により通過中の位置を終点ノードの候補位置ENCとし、終点ノードの候補位置ENCを終点ノードENと仮定してコスト関数を計算することで、終点ノードの候補位置ENCに基づく輪郭線の候補OLCを生成してよい。したがって、終点ノードの候補位置ENCが確定されるまで、終点ノードの候補位置ENCが移動して、この移動に伴ってコスト関数の計算結果が変化し、輪郭線の候補がOLC変形していく。そして、処理部160は、終点ノードの候補位置ENCの移動に追従して変化する輪郭線の候補OLCを順次表示させる。したがって、医用画像処理装置100は、変化する輪郭線の候補OLCを確認することで、終点ノードENの好適な位置を探りながら、終点ノードENの位置を微調整して確定できる。
【0111】
また、処理部160は、ウィンドウ幅及びウィンドウレベルの少なくとも一方に基づいて、輪郭線OLを生成してよい。これにより、医用画像処理装置100は、ユーザの観察を希望するウィンドウ情報を加味して、輪郭線OLを生成できる。
【0112】
また、第2の点(例えば終点ノードEN、中間ノードIN)は、対象画像における画素と画素の間の点でよい。第2の点の画素値は、対象画像上で第2の点の周囲の画素を補間した画素値でよい。これにより、医用画像処理装置100は、単に画素値ではなく補間値を用いることで、例えば対象画像を拡大表示した場合でも、2画素間で急激に画素値が変化することなく、補間値を用いて滑らかに変化させることができる。このような補間値を終点ノードや中間ノードの画素値として用いることで、医用画像処理装置100は、終点ノードや中間ノードを挟む隣接する2つの画素の画素値のいずれか基づく輪郭線OLとは異なる経路の輪郭線OLを生成できる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本開示は、輪郭線が通る位置の画素値の変動を低減でき、ユーザの意図が反映された輪郭線を生成できる医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラム等に有用である。
【符号の説明】
【0114】
100 医用画像処理装置
110 ポート
120 ユーザインタフェース(UI)
130 ディスプレイ
140 プロセッサ
150 メモリ
160 処理部
161 領域処理部
162 画像生成部
163 輪郭線処理部
165 表示制御部
200 CT装置