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特開2023-155867装飾品の製造方法及びそれに用いる紫外線硬化樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155867
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】装飾品の製造方法及びそれに用いる紫外線硬化樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/045 20160101AFI20231016BHJP
【FI】
C08G75/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123666
(22)【出願日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2022065366
(32)【優先日】2022-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 駿佑
(72)【発明者】
【氏名】竹内 拓
【テーマコード(参考)】
4J030
【Fターム(参考)】
4J030BA04
4J030BB07
4J030BC12
4J030BC43
4J030BE04
4J030BF10
4J030BG01
(57)【要約】
【課題】成形されたワイヤーと紫外線硬化型樹脂組成物を用い、短時間で手軽に装飾品を作る方法を提供する事にある。また更に、ワイヤーをディップした際にワイヤーへの保持力や成膜性が良好で、紫外線照射での硬化性及び硬化後の加工性に優れる紫外線硬化型樹脂を提供する。
【解決手段】25℃におけるE型粘度計での粘度が5,000~60,000mPa・sである紫外線硬化型樹脂組成物の中に、屈曲性を有するワイヤーを用いて成形された枠部材を浸漬し、枠部材を引き上げた後、紫外線照射により硬化させることを特徴とする装飾品の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃におけるE型粘度計での粘度が5,000~60,000mPa・sである紫外線硬化型樹脂組成物の中に、屈曲性を有するワイヤーを用いて成形された枠部材を浸漬し、枠部材を引き上げた後、紫外線照射により硬化させることを特徴とする装飾品の製造方法。
【請求項2】
前記紫外線硬化型樹脂組成物が、ポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と、チオール化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、を含むことを特徴とする請求項1記載の装飾品の製造方法。
【請求項3】
前記(A)がポリテトラメチレングリコールとイソホロンジイソシアネートを反応させたウレタンプレポリマーに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させた構造であることを特徴とする請求項2記載の装飾品の製造方法。
【請求項4】
前記紫外線硬化型樹脂組成物が、更に反応性希釈剤(D)を含むことを特徴とする請求項2又は3いずれか記載の装飾品の製造方法。
【請求項5】
前記(D)がペンタエリスリトールアクリレート(d1)を含むことを特徴とする請求項4記載の装飾品の製造方法。
【請求項6】
ポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と、チオール化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、を含み、組成物の25℃におけるE型粘度計での粘度が5,000~60,000mPa・sであることを特徴とする屈曲性を有するワイヤーを用いて成形された枠部材に薄膜を形成する紫外線硬化型樹脂組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型の樹脂組成物を用いた装飾品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屈曲性のあるワイヤーと合成樹脂からなるディップ液を用いて、自作で指輪やピアス、ブローチなどのアクセサリーを手軽に作成する方法として、ディップアートという手法が知られている。40年以上前にアメリカで誕生し、色鮮やかな花びらのモチーフが多いことから、日本ではアメリカンフラワーと呼ばれることも多い。
【0003】
この方法は、例えば屈曲性のあるワイヤーを用い、円筒に巻き付ける等して略円形状に加工し、これを複数組み合わせて整形した後にディップ液に浸漬し、そのまま乾燥硬化させることで、花弁や葉脈を形成する。略円形状に加工したワイヤーには、樹脂の薄膜が形成されるが、この部分に立体感を持たせ柔らかい曲面を持たせるため、エポキシ樹脂により肉盛りする方法なども提案されている(特許文献1)。
【0004】
この方法で使用するディップ液としては、従来酢酸セルロース系やウレタン系が主に用いられているが、こうした樹脂は乾燥硬化に30分~60分程度が必要であり、硬化するまでの間は、指や衣服等への樹脂付着に注意したり、異物付着による外観不具合が発生したりするため、取扱い性に問題があった。そのため短時間で硬化可能なディップ液を用い、ワイヤーで成形された枠部材により手軽に装飾品を作る方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3253139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、成形されたワイヤーと紫外線硬化型樹脂組成物を用い、短時間で手軽に装飾品を作る方法を提供する事にある。また更に、ワイヤーをディップした際にワイヤーへの保持力や成膜性が良好で、紫外線照射での硬化性及び硬化後の加工性に優れる紫外線硬化型樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため請求項1の発明は、25℃におけるE型粘度計での粘度が5,000~60,000mPa・sである紫外線硬化型樹脂組成物の中に、屈曲性を有するワイヤーを用いて成形された枠部材を浸漬し、枠部材を引き上げた後、紫外線照射により硬化させることを特徴とする装飾品の製造方法を提供する。
【0008】
また、請求項2の発明は、前記紫外線硬化型樹脂組成物が、ポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と、チオール化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、を含むことを特徴とする請求項1記載の装飾品の製造方法を提供する。
【0009】
また、請求項3の発明は、前記(A)がポリテトラメチレングリコールとイソホロンジイソシアネートを反応させたウレタンプレポリマーに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させた構造であることを特徴とする請求項2記載の装飾品の製造方法を提供する。
【0010】
また、請求項4の発明は、前記紫外線硬化型樹脂組成物が、更に反応性希釈剤(D)を含むことを特徴とする請求項2又は3いずれか記載の装飾品の製造方法を提供する。
【0011】
また、請求項5の発明は、前記(D)がペンタエリスリトールアクリレート(d1)を含むことを特徴とする請求項4記載の装飾品の製造方法を提供する。
【0012】
また、請求項6の発明は、ポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と、チオール化合物(B)と、光重合開始剤(C)と、を含み、組成物の25℃におけるE型粘度計での粘度が5,000~60,000mPa・sであることを特徴とする屈曲性を有するワイヤーを用いて成形された枠部材に薄膜を形成する紫外線硬化型樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法を用いることで、成形されたワイヤーを使用し、短時間に装飾品を作成することができる。また本発明の樹脂組成物は、成形されたワイヤーをディップした際にワイヤーへの保持力や成膜性が良好で、また紫外線照射での硬化性及び硬化後の加工性に優れるため、ワイヤーを用いて成形された枠部材に薄膜を形成するディップ(浸漬)液として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で使用する紫外線硬化樹脂組成物の構成は、ポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と、チオール化合物(B)と、光重合開始剤(C)を含むことが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとの双方を包含する。
【0015】
本発明に使用されるポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)は、硬化皮膜を構成する主要成分で、例えばポリエーテルポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるウレタンプレポリマーの両末端に、更に水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて生成され、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基とウレタン結合を有する構造が挙げられる。ポリエーテル骨格を有することで柔軟性が高く、硬化後の曲げ加工がしやすいという特徴がある。官能基数としては反応性、硬化収縮、保存安定性のバランスから2~4官能であることが好ましく、2官能であることが更に好ましい。
【0016】
前記(A)の合成で用いられるポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール(以下PTMGという)、ポリヘキサメチレングリコール等が挙げられ、これらの中ではPTMGが好ましい。またポリイソシアネートとしては芳香族系、脂肪族系、脂環族系などが挙げられるが、これらの中では耐候性に優れる非芳香族系が好ましく、硬化物の硬度を高くできる点でイソホロンジイソシアネート(以下IPDIという)が更に好ましい。
【0017】
前記(A)の合成で用いられる水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、(A)の好ましい官能基数が2官能であることから単官能のヒドロキシ(メタ)アクリレートが好ましく、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの中では2-ヒドロキシエチルアクリレート(以下2HEAという)が好ましい。
【0018】
前記(A)の合成方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。反応は無溶媒下でも良いが、(A)の分子量が大きくなるにつれて高粘度となり攪拌が困難となる場合があるため、ブタノン等のケトン類、キシレン等の芳香族不活性溶媒などを用いても良い。また(メタ)アクリレートの水酸基とイソシアネート基との反応には、触媒を用いることが好ましい。その場合の例としては、ジブチルスズジラウレート等の錫系、ナフテン酸コバルト等の金属アルコキシド系が挙げられる。反応温度は適宜設定可能であるが40~120℃が好ましく、60~100℃が更に好ましい。
【0019】
前記(A)の重量平均分子量(以下Mwという)は、1,000~8,000であることが好ましく、2,000~6,000であることが更に好ましく、3,000~5,000であることが特に好ましい。1,000以上とすることで硬化後の柔軟性が適度な硬化物とすることができ、8,000以下とすることで作業性に適した粘度に調整しやすくなる。なおMwは、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、スチレンジビニルベンゼン基材の充填材を用いたカラムでテトラハイドロフラン溶離液を用いて、標準ポリスチレン換算の分子量を測定、算出した。
【0020】
前記(A)の配合量は、固形分全量に対し60~90重量%が好ましく、65~85重量%が更に好ましく、70~80重量%が特に好ましい。60重量%以上とすることで充分な硬化性を確保することが可能となり、90重量%以下とすることで作業性に適した粘度に調整しやすくなる。
【0021】
本発明に使用されるチオール化合物(B)は、酸素による硬化阻害を抑制できるエンチオール反応が可能で、紫外線硬化反応を促進させる目的で配合する。反応性が高く硬化後のべとつきを少なくできる点で3官能以上が好ましく、4官能以上が更に好ましい。また立体障害が低く反応性が高い点で一級チオールであることが好ましい。例えば3官能ではトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)が、4官能ではペンタエリスリトールテトラキス(3‐メルカプトプロピオネート)が、6官能ではジペンタエリスリトールヘキサ-3-メルカプトプロピオネート等があり、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
前記(B)の配合量は、光重合性成分100重量部に対し3.0~18重量部が好ましく、5.0~15重量部が更に好ましく、8.0~12重量部が特に好ましい。3.0重量部以上とすることで硬化性を十分に向上させ硬化後の皮膜表面にべとつきを無くすことができ、18重量以下とすることで高温環境下でも十分な保存安定性を確保できる。市販品ではPEMP(商品名:SC有機化学社製、4官能)及びDPMP(商品名:同社製、6官能)などがある。
【0023】
本発明で使用される光重合開始剤(C)は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、ベンジルケタール系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系等汎用の光重合開始剤が使用できる。重合開始剤の光吸収波長を任2意に選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。具体的にはベンジルケタール系として2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オンが、α-ヒドロキシアセトフェノン系として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが、α-アミノアセトフェノン系として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、アシルフォスフィンオキサイド系として2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0024】
前記(C)の中では、内部硬化性に優れるアシルフォスフィンオキサイド系を含むことが好ましい。特に注形成型のように硬化皮膜が100μm以上と厚膜化する場合は、アシルフォスフィンオキサイド系の配合が効果的である。市販品としてはOmniradTPO H(商品名:iGM Resins社製)などがある。
【0025】
前記(C)の配合量は、光重合性成分100重量部に対して、0.3~10重量部配合することが好ましく、0.5~5重量部が更に好ましく、1~3重量部が特に好ましい。この範囲で配合する事により、組成物を効率的に硬化させる事ができる。
【0026】
本発明の組成物には更に反応性希釈剤(D)を配合することが好ましい。(D)を配合することで、作業性に適した粘度への調整がしやすくなり、また硬化性の向上も期待できる。硬化収縮が大きくならない点で2官能以下(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましく、単官能(メタ)アクリレートモノマーであることが更に好ましい。
【0027】
前記(D)で用いる(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば直鎖(分岐)アルキル骨格、脂肪族環式骨格、エーテル骨格、芳香環含有、水酸基含有、アミノ基含有、ヘテロ環含有などの(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では耐水性や保存性の点で、水酸基含有の(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましく、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中では、2‐ヒドロキシプロピルメタクリレートを含むことが好ましい。
【0028】
前記(D)の配合量としては、固形分全量に対し25重量%以下が好ましく、3~20重量%が更に好ましい。25重量%以下とすることで作業性に適した粘度とすることができると同時に、十分な硬化性と硬化後の加工性を確保できる。
【0029】
更に前記(D)として、ペンタエリスリトールアクリレート(d1)を配合することで、保存性を格段に向上させることができる。特に高温での保存性を向上させるためには高水酸基価であることが好ましく、水酸基価は200~300mgKOH/gが好ましく、230~300mgKOH/gが更に好ましく、250~300mgKOH/gが特に好ましい。
【0030】
前記(d1)の配合量としては、(D)全量に対し3~30重量%が好ましく、5~25重量%が更に好ましく、8~20重量%が特に好ましい。この範囲とすることで、一般的な家庭での保管温度上限である40℃であれば、ゲル化するまでの時間を大幅に伸ばすことが可能となる。
【0031】
本発明の組成物には更にリン酸エステル(E)を配合することが好ましい。(E)を配合することで、高温たとえば60℃での保存時における粘度増加を抑え、保存性を向上させることができる。硬化皮膜からのブリードが発生しにくくなるよう、(メタ)アクリロイル基等の光反応官能基を有することが好ましい。市販品としてはPM-2(商品名:日本化薬社製)及びPM-21(商品名:同社製)などがある。
【0032】
前記(E)の配合量は、光重合性成分100重量部に対し0.1~5重量部であることが好ましく、0.3~3重量部であることが更に好ましく、0.5~2重量部であることが特に好ましい。この範囲内とすることで、60℃での保存でも粘度増加を抑えることが可能となり、十分な保存安定性を確保できる。
【0033】
本発明の組成物には性能を損なわない範囲で、必要により消泡剤、安定剤、着色剤、重合禁止剤、レベリング剤、可塑剤、粘着付与剤、増粘剤、濡れ性調整剤等の各種添加剤や、有機微粒子、無機微粒子等のフィラー等が含まれていても良い。
【0034】
上記消泡剤は、成形されたワイヤーをディップした際に巻き込まれたエアーや、着色剤を入れて混合した時に巻き込まれたエアーを脱泡しやすくする目的で配合する。例えばシリコーン系や、フッ素変性シリコーン系、アクリルポリマー系、ビニルポリマー系等が挙げられる。配合量としては、組成物の固形分全量に対し0.005~1.0重量%が好ましく、0.01~0.1重量%が更に好ましい。市販品ではポリフローKL-700(商品名:共栄社化学社製、シリコーン含有ポリマー)などがある。
【0035】
上記安定剤は、前記(E)同様、高温保存時における粘度増加を抑える目的で配合する。安定剤の種類としては光安定剤及び酸化防止剤などが挙げられ、具体的にはベンゾトリアゾール系やトリアジン系に代表される紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系の酸化防止剤が挙げられ、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
本組成物の25℃におけるE型粘度計での粘度は5,000~60,000mPa・sであり、8,000~40,000mPa・sであることが好ましく、10,000~20,000mPa・sであることが更に好ましい。5,000mPa・s未満では、ワイヤーへの保持力が低下して成膜性が低下する傾向があり、60,000mPa・s超では、成膜した際の膜厚が厚くなりすぎ硬化後の加工性が低下したり、気泡の抜け性が低下したりする傾向がある。
【0037】
本発明で用いるワイヤーは、屈曲性を有するものであれば特に限定されず、公知の材料を使用できる。屈曲加工性が良好な材料としては銅やアルミなどがあり、その他ではステンレスなどを例示できる。太さとしては特に限定されず0.1~1.0mm程度が例示できる。
【0038】
本発明で用いるワイヤーを成形する際には、直径数mm~数十mm程度の円筒形状体に巻き付けて輪を作り、輪郭を形成しても良い。ワイヤーで形成された枠部材を、紫外線硬化樹脂組成物に浸漬することで、枠内に樹脂を成膜することができる。この成膜した枠部材を複数組み合わせ、花弁や葉脈に見立てることで例えば花形状とし、ブローチや指輪、ピアスなどの装飾品を作成することができる。
【0039】
紫外線樹脂組成物に浸漬し、枠内に樹脂を成膜させたワイヤー成形物は、紫外線を照射させることで硬化させることができる。紫外線を照射する場合の光源としては公知のものを使用することができ、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、無電極紫外線ランプ、LEDランプなどがあげられる。硬化条件としては出力6~48W、照度6mW/cm2(365nm)(13W/cm2(405nm))で1~2分間が例示されるが、硬化させる面積や樹脂の厚み等により随時設定して良く、また少ない積算光量で複数回照射しても良い。
【0040】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温は25℃相対湿度65%の条件下で測定を行った。また配合量は重量部を示す。
【実施例0041】
実施例1~8
遮光ビンに、前記(A)としてウレアク1(PTMGとIPDIを反応させたウレタンプレポリマーに2HEAを反応させた2官能ウレタンアクリレート、Mw.4000)を、(B)としてPEMP(商品名:SC有機化学社製、ペンタエリスリトールテトラキス(3‐メルカプトプロピオネート)、4官能1級チオール)を、(C)としてOmnirad TPO H(G)(iGM社製、アシルフォスフィンオキサイド系)を、(D)としてライトエステルHOP(N)(商品名:共栄社化学社製、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート)及びIB-X(商品名:共栄社化学社製、イソボルニルメタクリレート)及びNOAA(商品名:大阪有機化学工業社製、n-オクチルアクリレート)を、(d1)としてM-933(商品名:東亜合成社製、ペンタエリスリトールアクリレート、水酸基価250~300mgKOH/g)を、(E)としてKAYMERPM-2(商品名:日本化薬社製、リン酸ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル])を、添加剤としてKL-700(商品名:共栄社化学社製、シリコーン含有ポリマー、消泡剤)を表1に示す量入れ、撹拌脱泡機を用いて均一になるまで15分以上撹拌し実施例1~8の樹脂組成物を調整した。
【0042】
比較例1~3
実施例で用いた材料の他、バインダーとしてウレアク2(非ポリエーテル骨格、4官能ウレタンアクリレート)を用い、表2記載の配合にて撹拌脱泡機を用いて均一になるまで15分以上撹拌し比較例1~3の樹脂組成物を調製した。
【0043】
硬化物の作製
室温の樹脂組成物3gを、シリコーン型(エルベール社製、シリコーンモチーフRSSD-2、20mm×32mm×t5mm)に投入し、樹脂面より4cmの高さから、LED照射機SUN mini(パーツクラブ製)を用い、出力6W、照度6mW/cm2(365nm)(13W/cm2(405nm))で1分間、更に裏面から1分間照射して硬化させた。その後シリコーン型から硬化物を取り出し、23±2℃にて30分放置して作製した。
【0044】
表1

【0045】
表2
【0046】
評価方法は以下の通りとした。
【0047】
粘度:東機産業製のE型粘度計RE-215Rを用い、コーン角3°R17.65で25±1℃、で回転数は下記条件とし、120秒後の測定値が5,000~60,000mPa・sである場合を〇、そこから外れた場合を×とした。
粘度が2,000~5,000mPa・s :10rpm
5,000~10,000mPa・s:5rpm
10,000~20,000mPa・s:3rpm
20,000mPa・s以上 :1rpm
【0048】
保持力:JDワイヤー28番(商品名:エルベール社製、線径0.3mm)を用いて、直径30mmφの円形状に成形し、紫外線硬化樹脂組成物に約5秒浸漬した後にゆっくりと引き上げ、円形形状が接地面と平行になるように保持し、樹脂皮膜が破れるまでの時間を測定し、10S以上の場合を〇、10S未満を×とした。
【0049】
硬化性:前記硬化物のLEDライト照射面のべたつき度合いを指触により確認し、べたつきが無い場合は○、ある場合は×とした。
【0050】
硬度:前記硬化物の照射面をD型硬度計(5Kg加重)で測定し、D45~75の場合を○、ここから外れる場合を×とした。。
【0051】
透明性:JIS K 7361-1に準拠し、東洋精機製作所製のヘイズガードを用いて、前記硬化物の全光線透過率を測定した。評価は全光線透過率が85%以上を〇、85%未満を×とした。
【0052】
加工性:紫外線硬化樹脂組成物を200μm厚となるように硬化させた硬化物を180°に折り曲げ、割れや外観上の変化がない場合を〇、ある場合を×とした。
【0053】
保存安定性:樹脂組成物200gを密閉容器に入れ、60℃の恒温乾燥機内に14日間保存した後、室温に戻し粘度を測定した。粘度の増加率が初期測定値に対し15%以下である場合を〇、ゲル化しない場合を△、ゲル化した場合を×とした。
【0054】
実施例の評価結果を表3に示す。
表3
【0055】
比較例の評価結果を表4に示す。
表4
【0056】
実施例の紫外線樹脂組成物は、粘度、保持力、硬化性、硬度、透明性、加工性、保存安定性のいずれの評価も良好な結果であった。特に(d1)を配合することで、高温下での保存安定性が大幅に向上させることができた。
【0057】
一方、(B)が未配合の比較例1は硬化性、貯蔵弾性率、加工性が劣り、粘度が低い比較例2は保持力と硬化性が劣り、ポリエーテル骨格を有さないウレアクを用いた比較例3は硬度、透明性、加工性が劣り、いずれも本願発明に適さないものであった。