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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155873
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】蓋部材、パッケージ及びガラス基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20231016BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20231016BHJP
【FI】
H01L23/02 J
H01L23/02 F
H01L33/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156490
(22)【出願日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2022065109
(32)【優先日】2022-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022095572
(32)【優先日】2022-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】間嶌 亮太
(72)【発明者】
【氏名】西宮 隆史
(72)【発明者】
【氏名】寺田 景
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA02
5F142BA02
5F142BA32
5F142CB23
5F142CD01
5F142CE06
5F142CE15
5F142CE18
5F142CE32
5F142DB03
5F142EA34
5F142FA21
(57)【要約】
【課題】発光素子を含むパッケージに使用される蓋部材における光の取り出し効率を向上させる。
【解決手段】ガラス製の蓋部材4は、板状の枠部7と、枠部7から突出するドーム状の突出部8とを備える。突出部8は、内面8a及び外面8bを有する。突出部8の内面8aには、反射防止膜10aが形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を含むパッケージに用いられるガラス製の蓋部材であって、
板状の枠部と、前記枠部から突出するドーム状の突出部とを備え、
前記突出部は、内面及び外面を有し、
前記突出部の前記内面及び前記外面の少なくとも一方には、反射防止膜が形成されている、
ことを特徴とする蓋部材。
【請求項2】
前記枠部は、前記突出部の前記内面に繋がる第一主面と、前記突出部の前記外面に繋がる第二主面とを有し、
前記枠部の前記第一主面には、前記反射防止膜が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の蓋部材。
【請求項3】
前記枠部の前記第一主面に形成されている前記反射防止膜の前記第一主面側とは反対側に金属層が形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の蓋部材。
【請求項4】
前記突出部の前記内面には、前記反射防止膜が形成されており、
前記突出部は、頂部と、前記枠部と一体に構成される基部とを備え、
前記頂部に形成されている前記反射防止膜の厚さは、前記基部に形成されている前記反射防止膜の厚さよりも厚い、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の蓋部材。
【請求項5】
前記反射防止膜は、酸化ハフニウム膜を含む、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の蓋部材。
【請求項6】
前記突出部の前記頂部の厚さは、前記突出部の前記基部の厚さよりも薄い、
ことを特徴とする請求項4に記載の蓋部材。
【請求項7】
前記突出部の前記外面には、第二の反射防止膜が形成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の蓋部材。
【請求項8】
前記頂部に形成されている前記第二の反射防止膜の厚さは、前記基部に形成されている前記第二の反射防止膜の厚さよりも厚い、
ことを特徴とする請求項7に記載の蓋部材。
【請求項9】
前記突出部は、所定の突出角度で前記枠部から突出しており、
前記突出部の前記突出角度は、40°以上90°以下である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の蓋部材。
【請求項10】
前記突出部は、頂部と、前記枠部と一体に構成される基部とを備え、
前記突出部は、前記内面側に形成される開口部を有し、
前記開口部の開口長さLと、前記突出部の突出高さHとの比L/Hは、1.6以上5.0以下である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の蓋部材。
【請求項11】
前記開口部は、四角形状に構成される、
ことを特徴とする請求項10に記載の蓋部材。
【請求項12】
前記内面は、第一曲面と、第二曲面と、前記第一曲面と前記第二曲面との間に位置する変曲点と、を有する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の蓋部材。
【請求項13】
発光素子を含むパッケージに用いられるガラス製の蓋部材であって、
板状の枠部と、前記枠部から突出するドーム状の突出部とを備え、
前記突出部は、内面及び外面を有し、
前記枠部は、前記突出部の前記内面に繋がる第一主面と、前記突出部の前記外面に繋がる第二主面とを有し、
前記内面は、前記枠部の前記第一主面と繋がり前記突出部の内側に向かって凸となる第一曲面と、前記突出部の外側に向かって凸となる第二曲面と、前記第一曲面と前記第二曲面との間に位置する変曲点と、を有し、
前記突出部は、前記変曲点における接線と前記枠部の第一主面とが成す突出角度で前記枠部から突出しており、
前記突出部の前記突出角度は、40°以上90°以下である、
ことを特徴とする蓋部材。
【請求項14】
発光素子と、前記発光素子を支持する基体と、請求項1又は13に記載の蓋部材と、を備える、
ことを特徴とするパッケージ。
【請求項15】
発光素子を含むパッケージに用いられる蓋部材を製造するためのガラス基板であって、 板状の枠部と、前記枠部から突出する複数のドーム状の突出部と、を備え、
前記突出部は、内面及び外面を有し、
前記突出部の前記内面には、反射防止膜が形成されている、
ことを特徴とするガラス基板。
【請求項16】
発光素子を含むパッケージに用いられる蓋部材を製造するためのガラス基板であって、 板状の枠部と、前記枠部から突出する複数のドーム状の突出部とを備え、
前記突出部は、内面及び外面を有し、
前記枠部は、前記突出部の前記内面に繋がる第一主面と、前記突出部の前記外面に繋がる第二主面とを有し、
前記内面は、前記枠部の前記第一主面と繋がり前記突出部の内側に向かって凸となる第一曲面と、前記突出部の外側に向かって凸となる第二曲面と、前記第一曲面と前記第二曲面との間に位置する変曲点と、を有し、
前記突出部は、前記変曲点における接線と前記枠部の前記第一主面とが成す突出角度で前記枠部から突出しており、
前記突出部の前記突出角度は、40°以上90°以下である、
ことを特徴とするガラス基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージ用の蓋部材、及び蓋部材を有するパッケージ並びに蓋部材を形成するためのガラス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、発光素子(LED素子)が実装される基体(基板)と、発光素子を覆うように基体に固定されるドーム状の蓋部材(透光性カバー)と、基体と蓋部材とを接合する接着材とを備えるパッケージが開示されている。このパッケージでは、蓋部材をドーム状に構成することで、蓋部材と基体との間に発光素子を収容する空間を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-66169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなドーム状の蓋部材が使用されたパッケージについて、更なる性能向上のための研究開発が推進されている。
【0005】
本発明は、発光素子を含むパッケージに使用される蓋部材における光の取り出し効率を向上させることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、発光素子を含むパッケージに用いられるガラス製の蓋部材であって、板状の枠部と、前記枠部から突出するドーム状の突出部とを備え、前記突出部は、内面及び外面を有し、前記突出部の前記内面及び前記外面の少なくとも一方には、反射防止膜が形成されている、ことを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、蓋部材における突出部の内面に反射防止膜を形成することで、発光素子から放出された光を突出部によって効率良く透過させることができる。これにより、パッケージに使用される蓋部材の光の取り出し効率を可及的に高めることが可能となる。
【0008】
本発明に係る蓋部材において、前記枠部は、前記突出部の前記内面に繋がる第一主面と、前記突出部の前記外面に繋がる第二主面とを有し、前記枠部の前記第一主面には、前記反射防止膜が形成されていてもよい。
【0009】
枠部の第一主面に形成された反射防止膜は、枠部を基体に接合する際に、接合部分に作用する応力を緩和する機能を有する。これにより、蓋部材を破損させることなく基体に接合することができる。
【0010】
本発明に係る蓋部材において、前記枠部の前記第一主面に形成されている前記反射防止膜の前記第一主面側とは反対側に金属層が形成されていてもよい。
【0011】
かかる構成によれば、蓋部材に接合材を形成する際に、この金属層を使用することで、接合材が金属層に良好になじみ、結果として、蓋部材と基体を好適に接合することができる。
【0012】
本発明に係る蓋部材において、前記突出部の前記内面には、前記反射防止膜が形成されており、前記突出部は、頂部と、前記枠部と一体に構成される基部とを備え、前記頂部に形成されている前記反射防止膜の厚さは、前記基部に形成されている前記反射防止膜の厚さよりも厚くてもよい。
【0013】
本発明に係る蓋部材において、前記反射防止膜は、酸化ハフニウム膜を含んでもよい。
【0014】
本発明に係る蓋部材において、前記突出部の前記頂部の厚さは、前記突出部の前記基部の厚さよりも薄くてもよい。
【0015】
かかる構成によれば、蓋部材の突出部における頂部の厚さを基部の厚さよりも薄くすることで、この突出部の透過率を高めることが可能となる。加えて、突出部の基部の厚さは、頂部の厚さよりも厚くなることから、この基部における強度を頂部よりも高めることができる。したがって、蓋部材の光の取り出し効率の向上と強度の確保とを両立させることが可能となる。
【0016】
本発明に係る蓋部材において、前記突出部の前記外面には、第二の反射防止膜が形成されていてもよい。これにより、蓋部材における光の取り出し効率をさらに高めることができる。
【0017】
前記頂部に形成されている前記第二の反射防止膜の厚さは、前記基部に形成されている前記第二の反射防止膜の厚さよりも厚くてもよい。
【0018】
前記突出部は、所定の突出角度で前記枠部から突出しており、前記突出部の前記突出角度は、40°以上90°以下であってもよい。これにより、突出部における光の取り出し効率を高めることができる。
【0019】
前記突出部は、頂部と、前記枠部と一体に構成される基部とを備え、前記突出部は、前記内面側に形成される開口部を有し、前記開口部の開口長さLと、前記突出部の突出高さHとの比L/Hは、1.6以上5.0以下であってもよい。これにより、突出部における光の取り出し効率を高めることができる。
【0020】
本発明に係る蓋部材において、前記開口部は、四角形状に構成されてもよい。
【0021】
本発明に係る蓋部材において、前記内面は、第一曲面と、第二曲面と、前記第一曲面と前記第二曲面との間に位置する変曲点と、を有してもよい。これにより、蓋部材の形状が滑らかになり、外的な衝撃に対する耐性を持たせることができる。なお、この変曲点を有する蓋部材の場合、突出部における光の取り出し効率が低下する虞があるため、前述の突出角度や開口部の開口長さLと突出部の突出高さHとの比L/Hを規定することで、突出部における光の取り出し効率を高めることができる。
【0022】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、発光素子を含むパッケージに用いられるガラス製の蓋部材であって、板状の枠部と、前記枠部から突出するドーム状の突出部とを備え、前記突出部は、内面及び外面を有し、前記枠部は、前記突出部の前記内面に繋がる第一主面と、前記突出部の前記外面に繋がる第二主面とを有し、前記内面は、前記枠部の前記第一主面と繋がり前記突出部の内側に向かって凸となる第一曲面と、前記突出部の外側に向かって凸となる第二曲面と、前記第一曲面と前記第二曲面との間に位置する変曲点と、を有し、前記突出部は、前記変曲点における接線と前記枠部の第一主面とが成す突出角度で前記枠部から突出しており、前記突出部の前記突出角度は、40°以上90°以下である、ことを特徴とする
【0023】
かかる構成によれば、第一曲面と第二曲面を有する蓋部材の突出部の形状の場合、突出角度が低くなる傾向にあるため、発光素子から発光する光が突出部内部で散乱して光取り出し効率が低下しがちであるところ、突出角度を高くすることで突出部内部での光の散乱を防止し、蓋部材における光の取り出し効率を高めることができる。
【0024】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、発光素子と、前記発光素子を支持する基体と、上記の蓋部材と、を備えるパッケージであることを特徴とする。
【0025】
かかる構成によれば、蓋部材における突出部の内面に反射防止膜を形成することで、発光素子から放出された光を突出部によって効率良く透過させることができる。これにより、パッケージの光の取り出し効率を可及的に高めることが可能となる。
【0026】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、発光素子を含むパッケージに用いられる蓋部材を製造するためのガラス基板であって、板状の枠部と、前記枠部から突出する複数のドーム状の突出部と、を備え、前記突出部は、内面及び外面を有し、前記突出部の前記内面には、反射防止膜が形成されている、ことを特徴とする。
【0027】
かかる構成によれば、ガラス基板における突出部の内面に反射防止膜を形成することで、発光素子から放出された光を突出部によって効率良く透過させることができる。これにより、ガラス基板から製造された蓋部材の光の取り出し効率を可及的に高めることが可能となる。
【0028】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、発光素子を含むパッケージに用いられる蓋部材を製造するためのガラス基板であって、板状の枠部と、前記枠部から突出する複数のドーム状の突出部とを備え、前記突出部は、内面及び外面を有し、前記枠部は、前記突出部の前記内面に繋がる第一主面と、前記突出部の前記外面に繋がる第二主面とを有し、前記内面は、前記枠部の前記第一主面と繋がり前記突出部の内側に向かって凸となる第一曲面と、前記突出部の外側に向かって凸となる第二曲面と、前記第一曲面と前記第二曲面との間に位置する変曲点と、を有し、前記突出部は、前記変曲点における接線と前記枠部の前記第一主面とが成す突出角度で前記枠部から突出しており、前記突出部の前記突出角度は、40°以上90°以下である、ことを特徴とする。
【0029】
かかる構成によれば、第一曲面と第二曲面を有する蓋部材の突出部の形状の場合、突出角度が低くなる傾向にあるため、発光素子から発光する光が突出部内部で散乱して光取り出し効率が低下しがちであるところ、突出角度を高くすることで突出部内部での光の散乱を防止し、ガラス基板から製造された蓋部材の光の取り出し効率を可及的に高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、発光素子を含むパッケージに使用される蓋部材における光の取り出し効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】パッケージの斜視図である。
図2】パッケージの断面図である。
図3】基体の断面図である。
図4】基体の平面図である。
図5】蓋部材の断面図である
図6】蓋部材の底面図である。
図7】パッケージの製造方法の準備工程を示す断面図である。
図8】パッケージの製造方法の準備工程を示す断面図である。
図9】パッケージの製造方法の成膜工程を示す断面図である。
図10】パッケージの製造方法の接合工程を示す断面図である。
図11】パッケージの製造方法の接合工程を示す断面図である。
図12】パッケージ用の蓋部材を製造するためのガラス基板を示す断面図である。
図13】蓋部材の他の例を示す断面図である。
図14】蓋部材の他の例を示す断面図である。
図15】蓋部材の他の例を示す平面図である。
図16】蓋部材の他の例を示す平面図である。
図17】蓋部材の他の例を示す底面図である。
図18】パッケージの製造方法の準備工程における他の例を示す断面図である。
図19】パッケージの他の例を示す断面図である。
図20】蓋部材の他の例を示す断面図である。
図21】パッケージの他の例を示す断面図である。
図22】蓋部材の断面図である。
図23】蓋部材の断面図である。
図24】パッケージの製造方法の準備工程を示す断面図である。
図25】パッケージの製造方法の準備工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。図1乃至図19は、本発明に係る蓋部材、パッケージ及びガラス基板の一実施形態を示す。
【0033】
図1及び図2に示すように、パッケージ1は、基体2と、基体2に支持される発光素子3と、基体2及び発光素子3を覆う蓋部材4と、基体2と蓋部材4とを気密に接合する封止部5と、を備える。
【0034】
図3及び図4は、蓋部材4が接合される前の基体2を示す。基体2は、発光素子3を支持する第一主面2aと、第一主面2aの反対側に位置する第二主面2bと、第一主面2aに形成される金属層6とを有する。
【0035】
基体2の材質としては、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のセラミックス、これらセラミックスとガラス粉末が混合焼結されて成るガラスセラミックス、Fe-Ni-Co合金、Cu-W合金、Kovar(登録商標)等の合金等が挙げられる。
【0036】
図4に示すように、金属層6は、発光素子3を囲む枠形状を有する。金属層6は、四角形状とされているが、この形状に限定されるものではない。金属層6は、例えば発光素子3を囲むように、円形状に構成されてもよい。
【0037】
金属層6は、第一主面2a側から順に下地層、中間層、及び表層の三層を含む。下地層に用いられる金属としては、例えば、Cr、Ta、W、Ti、Mo、Ni、Pt等が挙げられる。中間層に用いられる金属としては、例えば、Ni、Pt、Pd等が挙げられる。表層に用いられる金属としては、例えば、Au、Sn、Ag、Ni、Pt等が挙げられる。金属層6に用いられる金属は、単体であってもよいし、合金であってもよい。
【0038】
金属層6を基体2の第一主面2aに形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンアシスト又はイオンプレーティングを用いた真空蒸着法、及びCVD法等の成膜法が挙げられる。
【0039】
発光素子3は、基体2の第一主面2aに固定されている。本実施形態において、発光素子3として紫外線照射用LEDを用いたパッケージ1を例示するが、本発明に係る発光素子3は本実施形態に限定されるものではなく、赤外線LEDや可視光LEDを採用することができる。
【0040】
図5及び図6は、基体2に接合される前の蓋部材4を示す。蓋部材4は、板ガラスの一部を成形することによって製造される。蓋部材4に使用されるガラスは、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、石英ガラス、結晶化ガラスが好ましい。無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラスであれば、高い透過率と、成型時における高い加工性の両立が可能になる。また、石英ガラスであれば、成型時の加工性を維持しつつ、紫外域において、顕著に高い透過率を有することが可能になる。また、結晶化ガラスであれば、高い透過率と高い破壊強度の両立が可能になる。
【0041】
ガラスが、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、又は無アルカリガラスの場合、ガラス組成として、質量%で、SiO:50~75%、Al:1~25%、B:1~30%、LiO+NaO+KO:0~20%、MgO+CaO+SrO+BaO:0~20%を含有することが好ましい。ガラスの組成が上記の組成範囲内であれば、これらのガラス系に該当する。
【0042】
結晶化ガラスの場合、ガラス組成として、質量%で、SiO:60~80%、Al:3~30%、LiO+NaO+KO:1~20%、MgO+CaO+SrO+BaO:5~20%を含有し、β石英固溶体又はβスポジュメンがガラス内部から結晶として析出している低熱膨張結晶化ガラスであることが好ましい。ここで、低熱膨張とは、30~300℃の温度範囲において、熱膨張係数の値が、-10×10-7~20×10-7/℃であることを指す。
【0043】
図2及び図5に示すように、蓋部材4は、板状の枠部7と、枠部7から突出するドーム状の突出部8と、枠部7と突出部8とを連結する連結部9と、第一反射防止膜10a及び第二反射防止膜10bと、を備える。
【0044】
枠部7は、例えば一定の厚さを有するが、この態様に限定されない。枠部7の厚さは、例えば0.2mm以上2mm以下である。枠部7は、第一主面7aと、第一主面7aの反対側に位置する第二主面7bとを有する。第一主面7aの表面粗さ(算術平均粗さ)Raは、好ましくは1nm以下、より好ましくは0.5nm以下、更に好ましくは0.3nm以下である。第二主面7bの表面粗さRaは、好ましくは1nm以下、より好ましくは0.5nm以下、更に好ましくは0.3nm以下である。
【0045】
突出部8は、基体2の第一主面2aとともに発光素子3の収容空間を形成するためのものである。突出部8は、枠部7の中央位置に形成されているが、この態様に限定されない。突出部8は、凹状の曲面として構成される内面8aと、凸状に曲面として構成される外面8bと、内面8a側に形成される開口部8cと、を有する。また、突出部8は、基部11と、中途部12と、頂部13と、を備える。基部11は、連結部9と一体に構成されている。中途部12は、基部11と頂部13との間に位置する。
【0046】
なお、基部11とは、頂部13に対して法線(以下「第一線」という)L1を描き、この第一線L1と、枠部7の第二主面7bに沿うように描かれた直線(以下「第二線」という)L2との交点P1から、第二線L2に対して5°の角度を為す直線(以下「第三線」という)L3を描いたとき、この第三線L3が突出部8と交わる部分である。なお、第三線L3が、突出部8の内面8aと交わる部分を第一基部11aとし、突出部8の外面8b
と交わる部分を第二基部11bとする。
【0047】
また、中途部12は、第一線L1と第二線L2との交点P1から、第二線L2に対して60°の角度を為す直線(以下「第七線」という)L7を描いたとき、この第七線L7が突出部8と交わる部分である。
【0048】
以下、第一線L1と突出部8の内面8aとの交点P2から上記の交点P1までの距離を突出部8の突出高さといい、符号Hで示す。突出部8の突出高さHは、例えば0.5mm以上80mm以下である。
【0049】
突出部8の外径Dは、第二基部11bの位置にある点の集合円の直径であり、例えば2mm以上150mm以下である。図5に示すように、突出部8の厚さは、基部11から頂部13に向かうにつれて徐々に薄くなっている。このため、頂部13の厚さTminは、基部11の厚さTmaxよりも薄い。
【0050】
基部11の厚さTmaxは、例えば0.19mm以上1.9mm以下である。頂部13の厚さTminは、例えば0.15mm以上1.0mm以下である。基部11の厚さTmaxと頂部13の厚さTminとの比Tmin/Tmaxは、好ましくは0.08以上0.9以下、より好ましくは0.1以上0.8以下、更に好ましくは0.2以上0.5以下である。
【0051】
図5に示すように、突出部8は、所定の突出角度θで枠部7から突出している。突出角度θは、以下のように定義される。
【0052】
第二線L2と突出部8の内面8aとの交点を第一基準点RP1とする。第一線L1において、突出高さHの半分(H/2)の高さ位置にある点P3から第二線L2に平行な直線(以下「第四線」という)L4を描き、この第四線L4と突出部8の内面8aとの交点を第二基準点RP2とする。第一基準点RP1と第二基準点RP2とを通る直線(以下「第五線」という)L5を描き、この第五線L5と、枠部7の第一主面7aに沿うように描かれた第六線L6とが為す角度(鋭角)を突出角度θとする。
【0053】
本実施形態において、突出角度θは、好ましくは40°以上、45°以上、50°以上、60°以上、好ましくは90°以下、85°以下、80°以下である。
【0054】
突出部8の内面8a及び外面8bは、基部11から頂部13にわたって連続的な曲面として構成される。内面8aの表面粗さRaは、1nm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5nm以下、更に好ましくは0.3nm以下である。外面8bの表面粗さRaは、1nm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5nm以下、更に好ましくは0.3nm以下である。
【0055】
突出部8の開口部8cは、蓋部材4を基体2に固定する際に、基体2上に設けられた発光素子3を突出部8の内側に入れるためのものである。図6に示すように、突出部8の開口部8cは円形状に構成されるが、この形状に限定されない。
【0056】
開口部8cの開口長さL(本実施形態では開口部8cの直径)は、例えば1.5mm以上80mm以下である。開口部8cの開口長さLと、突出部8の突出高さHとの比L/Hは、好ましくは1.6以上、2.1以上であり、好ましくは5.0以下、3.0以下である。
【0057】
図2及び図5に示すように、連結部9は、基部11と枠部7とを連結するために、湾曲形状を有する。連結部9は、枠部7の第一主面7aと突出部8の内面8aとを繋ぐ第一曲面9aと、突出部8の外面8bと枠部7の第二主面7bとを繋ぐ第二曲面9bとを有する。
【0058】
第一曲面9aの曲率半径は、第二曲面9bの曲率半径よりも大きい。第一曲面9aの曲率半径は、好ましくは0.5mm以上、1.0mm以上であり、好ましくは5.0mm以下、4.0mm以下である。第二曲面9bの曲率半径は、好ましくは0.5mm以上、1.0mm以上であり、好ましくは5.0mm以下、4.0mm以下である。第一曲面9aの表面粗さRaは、好ましくは1.0nm以下、より好ましくは0.5nm以下、更に好ましくは0.3nm以下である。第二曲面9bの表面粗さRaは、好ましくは1.0nm以下、より好ましくは0.5nm以下、更に好ましくは0.3nm以下である。
【0059】
第一反射防止膜10aは、突出部8の内面8a及び枠部7の第一主面7aに形成されている。第一反射防止膜10aは、例えば第一の膜としての酸化シリコン膜(SiO)と、第二の膜としての酸化ハフニウム膜(HfO)とを交互に含む多層膜構造を有する。
【0060】
第一反射防止膜10aにおいて、突出部8の内面8aに形成される部分(以下「反射防止部」という)10a1は、突出部8の頂部13から基部11に向かうにつれて、膜厚が徐々に薄くなるように構成される。すなわち、反射防止部10a1は、頂部13に形成されている部分の厚さが最も厚く、基部11に形成されている部分の厚さが最も薄い。
【0061】
突出部8の基部11の位置における第一反射防止膜10aの厚さは、0.12μm以上0.64μm以下であることが好ましい。突出部8の中途部12の位置における第一反射防止膜10aの厚さは、0.14μm以上0.72μm以下であることが好ましい。突出部8の頂部13の位置における第一反射防止膜10aの厚さは、0.15μm以上0.8μm以下であることが好ましい。
【0062】
第一反射防止膜10aにおいて、枠部7の第一主面7aに形成される部分(以下「緩衝部」という)10a2は、一定の膜厚を有する。緩衝部10a2は、紫外線の反射を防止する機能の他、蓋部材4を基体2に接合する際に、枠部7に作用する応力を緩和する機能を有する。
【0063】
第二反射防止膜10bは、突出部8の外面8b及び枠部7の第二主面7bに形成されている。第二反射防止膜10bは、例えば第一の膜としての酸化シリコン膜(SiO)と、第二の膜としての酸化ハフニウム膜(HfO)とを交互に含む多層膜構造を有する。
【0064】
第二反射防止膜10bにおいて、突出部8の外面8bに形成される部分(以下「反射防止部」という)10b1は、頂部13から基部11に向かうにつれて、膜厚が徐々に薄くなるように構成される。すなわち、反射防止部10b1は、頂部13に形成されている部分の厚さが最も厚く、基部11に形成されている部分の厚さが最も薄い。
【0065】
突出部8の基部11の位置における第二反射防止膜10bの厚さは、0.12μm以上0.64μm以下であることが好ましい。突出部8の中途部12の位置における第二反射防止膜10bの厚さは、0.14μm以上0.72μm以下であることが好ましい。突出部8の頂部13の位置における第二反射防止膜10bの厚さは、0.15μm以上0.8μm以下であることが好ましい。
【0066】
なお、光取り出し効率が十分である場合、第二反射防止膜10bを形成する必要はない。但し、ホウケイ酸ガラスなどの耐候性が弱いガラスを蓋部材に用いる場合、外部環境により蓋部材4が劣化し、結果として光取り出し効率が低下する虞がある。この場合、蓋部材4に第二反射防止膜10bを形成することに替え、耐候性を有する膜としてSiO膜やAl膜を形成することも可能である。また、第二反射防止膜10bに積層する形で、耐候性を有する膜であるSiO膜やAl膜を形成することも可能である。
【0067】
図2図5及び図6に示すように、第一反射防止膜10aの緩衝部10a2には、金属層14と、接合部15とが形成されている。緩衝部10a2のヤング率は、好ましくは250GPa以下、より好ましくは200GPa以下、更に好ましくは150GPa以下、特に好ましくは100GPa以下である。このように上限を規定すれば、緩衝部10a2の緩衝性を高めることができ、接合部15と蓋部材4(枠部7)の熱膨張係数の違いに起因する応力を緩和する効果を得られる。なお、枠部7の熱膨張係数は、接合部15の熱膨張係数よりも小さい。また、枠部7の熱膨張係数は、基体2の熱膨張係数よりも小さい。
【0068】
緩衝部10a2の厚さは、好ましくは0.1μm以上、0.2μm以上であり、好ましくは1.0μm以下、0.8μm以下である。このように下限を規定すれば、緩衝部10a2の緩衝性を更に高めることができ、接合部15と蓋部材4(枠部7)の熱膨張係数の違いに起因する応力を緩和する効果を得られる。また、このように上限を規定すれば、緩衝部10a2の製造コストを下げることができる。
【0069】
図5及び図6に示すように、金属層14は、緩衝部10a2に重なるように形成されている。金属層14は、枠部7の第一主面7aに接触する緩衝部10a2の面とは反対側の緩衝部10a2の面に形成されている。図6に示すように、金属層14は、基体2の金属層6の形状に対応するように、四角形の枠形状を有する。金属層14の形状は本実施形態に限定されない。金属層14は、円形状その他の各種枠形状を有してもよい。金属層14は、緩衝部10a2側から順に、下地層、中間層、及び表層の三層を含む。
【0070】
下地層に用いられる金属としては、例えば、Cr、Ta、W、Ti、Mo、Ni、Pt等が挙げられる。下地層にCrが用いられる場合、下地層のヤング率は、279GPa以下が好ましい。中間層に用いられる金属としては、例えば、Ni、Pt、Pd等が挙げられる。表層に用いられる金属としては、例えば、Au、Sn、Ag、Ni、Pt等が挙げられる。金属層14に用いられる金属は、単体であってもよいし、合金であってもよい。
【0071】
図5及び図6に示すように、接合部15は、金属層14に重なるように層状に構成される。図5に示すように、接合部15は、金属層14において緩衝部10a2と接触している部位とは反対側の部位に接触している。図6に示すように、接合部15は、緩衝部10a2及び金属層14の形状に対応するように、四角形の枠形状を有する。接合部15の形状は本実施形態に限定されず、円形その他の各種枠形状であってもよい。
【0072】
接合部15は、金属系接合材により構成される。金属系接合材としては、半田材やろう材として市販されるものを用いることができる。金属系接合材としては、例えば、Au-Sn合金、Pb-Sn合金、Au-Ge合金、Sn-Ni合金等が挙げられる。なお、接合部15の幅を緩衝部10a2の幅より狭くすることで、接合部15と蓋部材4の熱膨張係数の差による応力の影響を低減できる。本実施形態では、金属系接合材としてAu-Sn合金が使用される場合について説明する。
【0073】
封止部5は、基体2の金属層6と蓋部材4の金属層14とを接合部15で一体に接合することにより形成される。
【0074】
次に、パッケージ1の製造方法について説明する。本方法は、基体2及び蓋部材4を用意する準備工程と、基体2と蓋部材4とを接合する接合工程と、を備える。
【0075】
準備工程では、基体2の第一主面2aに金属層6を形成した後に、この第一主面2aに発光素子3を搭載する。
【0076】
また、準備工程では、板ガラスに突出部8を成形することによって蓋部材4を形成した後に、蓋部材4に第一反射防止膜10aを形成する。その後、第一反射防止膜10aの緩衝部10a2に金属層14及び接合部15を形成する。なお、蓋部材4に第二反射防止膜10bを形成することで、さらに光の取り出し効率を高めることも可能である。
【0077】
以下、蓋部材4を製造する工程について、図7乃至図9を参照しながら説明する。この工程は、成形工程と、成膜工程とを備える。
【0078】
図7は、成形工程に使用される成形装置を示す。成形装置16は、板ガラスGSを支持する支持台17と、支持台17によって支持された板ガラスGSに重ねて配置されるマスク部材18と、蓋部材4の突出部8を成形するために板ガラスGSの一部を熱変形させる加熱源19と、を備える。さらに、成形装置16は、支持台17とマスク部材18とを互いに接近させる方向に押圧する押圧部材20と、板ガラスGSの一部に外力を加えるための外力発生装置21と、を備える。
【0079】
支持台17は、板ガラスGSを支持する支持部17aと、支持部17aに囲まれる開口部を有するとともに板ガラスGSの一部の熱変形を許容する空間部17bと、を有する。支持台17の支持部17aは、板ガラスGSの主面を支持する支持面を有する。本実施形態において、支持台17の開口部は、円形状の開口縁E1を有するが、例えば、三角形状、四角形状等の多角形状、楕円形状等の形状の開口縁を有していてもよい。
【0080】
なお、支持台17の空間部17bは、貫通孔により形成されてもよいし、内底部を有する凹部により形成されてもよい。支持台17の空間部17bは、蓋部材4の突出部8の全体を非接触の状態で成形するように構成されている。支持台17を構成する材料としては、例えば、金属、セラミックス等が挙げられる。
【0081】
上記の構成に限らず、蓋部材4の形状を精度良く成形するために、空間部17bに、板ガラスGSを受ける下受け治具を設けてもよい。下受け治具は、金属やセラミックスから構成される。前述のように、蓋部材4の突出部8の全体を非接触の状態で成形することが好ましいが、板ガラスGSと接触する下受け治具の面の品位を高める(表面粗さ、面うねりを小さくする)ことで、下受け治具を使用した場合であっても、蓋部材4を精度良く成形することができる。
【0082】
図7に示すように、マスク部材18は、貫通孔18aを有する。本実施形態のマスク部材18の貫通孔18aは、円形状の内周縁E2を有しているが、例えば、三角形状、四角形状等の多角形状、楕円形状等の形状の内周縁を有していてもよい。
【0083】
支持台17及びマスク部材18は、支持台17の開口縁E1よりも内側に、マスク部材18における貫通孔18aの内周縁E2の少なくとも一部が配置されるように構成されている。具体的には、支持台17及びマスク部材18は、支持台17の開口縁E1よりも内側に、マスク部材18の貫通孔18aにおける内周縁E2の全体が配置されるように構成されている。
【0084】
支持台17の開口部の開口面積を100%とした場合、マスク部材18の貫通孔18aの断面積は、95%以下であることが好ましく、より好ましくは80%以下である。マスク部材18における貫通孔18aの内周縁E2の少なくとも一部は、支持台17の開口縁E1よりも1mm以上内側となるように配置されることが好ましく、3mm以上内側となるように配置されることがより好ましい。
【0085】
マスク部材18は、600℃において1[W/(m・K)]以下の熱伝導率を有する材料から構成されることが好ましい。マスク部材18を構成する材料としては、例えば、セラミックスが好適である。マスク部材18の厚さは、1mm以上であることが好ましい。本実施形態のマスク部材18は、板ガラスGSの外周縁の全体を覆う外形を有している。
【0086】
加熱源19は、マスク部材18側から板ガラスGSを加熱するように配置されている。本実施形態の加熱源19は、板ガラスGSに向けて火炎FLを噴射するバーナーである。バーナーを用いることで、板ガラスGSを比較的速やかに軟化させることができる。なお、加熱源19の加熱方式は、例えば、抵抗加熱であってもよいし、レーザー加熱であってもよい。また、加熱源19は、異なる加熱方式の加熱源を組み合わせて構成してもよい。
【0087】
押圧部材20は、例えば、マスク部材18を支持台17に向けて押圧する。押圧部材20を押圧する押圧機構としては、例えば、流体シリンダ、直動アクチュエータ等が挙げられる。なお、押圧部材20は、固定されたマスク部材18に対して支持台17を押圧するように構成することもできる。
【0088】
外力発生装置21としては、例えば、排気装置を用いることができる。排気装置は、支持台17の空間部17b内に存在する気体を排出することで、支持台17の空間部17b内を負圧にする。これにより、板ガラスGSの一部が支持台17の空間部17b内に吸引されることで、板ガラスGSの一部の熱変形を促進することができる。排気装置としては、例えば、ベンチュリー機構を用いたポンプが好適である。
【0089】
なお、外力発生装置21は、排気装置に限らず、マスク部材18側から板ガラスGSの一部に向けて高圧ガスを噴射する高圧ガス発生装置であってもよい。これにより、板ガラスGSの一部が支持台17の空間部17bに向けて加圧されることで、板ガラスGSの一部の熱変形を促進することができる。また、ポンプと高圧ガス発生装置とを併用して、板ガラスGSの一部の熱変形を促進してもよい。
【0090】
図7及び図8に示すように、成形工程では、まず支持台17に支持した板ガラスGSにマスク部材18を重ねて配置する。この場合において、支持台17の開口縁E1よりも内側に、マスク部材18の貫通孔18aにおける内周縁E2の少なくとも一部が配置される。その後、押圧部材20は、支持台17とマスク部材18とを互いに接近させる方向に押圧する。これにより、支持台17とマスク部材18との間で挟まれた板ガラスGSの位置ずれを抑えることができる。
【0091】
次に、成形工程では、加熱源19によりマスク部材18側から板ガラスGSを加熱する。これにより、板ガラスGSの一部が熱変形することで、突出部8が成形される。
【0092】
上記の成形工程では、支持台17の開口縁E1を、マスク部材18で覆うことができる。これにより、蓋部材4における連結部9を、マスク部材18の貫通孔18aの内周縁E2に沿った板ガラスGSの熱変形により形成することができる。すなわち、蓋部材4の連結部9は、支持台17に接触することなく成形される。この成形工程により、枠部7、突出部8及び連結部9を有する蓋部材4が形成される。
【0093】
なお、蓋部材4に突出部8を形成する方法(蓋部材4の製造方法)は、上記以外にも、凹部を有する金属製やセラミックス製の型の上に板ガラスGSを載せ、前記凹部と嵌合する凸部を有する金属製やセラミックス製の型を用いて、板ガラスGSを加熱プレスする方法を採用することができる。この加熱プレスにおける加熱温度は、好ましくは板ガラスGSの屈伏点以上であり、より好ましくは板ガラスGSの軟化点以上である。
【0094】
成形工程が終了すると、成膜工程が実行される。図9は、成膜工程に使用される成膜装置を示す。本実施形態では、成膜装置として、例えばマグネトロンスパッタ装置等のスパッタ装置を例示するが、本発明はこの構成に限定されず、真空蒸着法等の他の物理蒸着法を行う成膜装置を使用してもよい。
【0095】
成膜装置22は、真空チャンバ23と、反射防止膜10a,10bの成膜材料となる粒子を飛散させるターゲット24a,24bと、を備える。
【0096】
真空チャンバ23は、ターゲット24a,24bをその内部に収容する。真空チャンバ23の内部空間は、真空ポンプにより所定の真空度に設定される。真空チャンバ23内には、アルゴンガス等の不活性ガスが供給され得る。
【0097】
ターゲット24a,24bは、蓋部材4に第一反射防止膜10aを形成するための第一ターゲット24aと、蓋部材4に第二反射防止膜10bを形成するための第二ターゲット24bと、を含む。これらのターゲット24a,24bの他、真空チャンバ23には、金属層14を形成するためのターゲット(図示省略)が配置される。
【0098】
第一ターゲット24a及び第二ターゲット24bは、第一反射防止膜10a及び第二反射防止膜10bにおける第一の膜(SiO)及び第二膜(HfO)を形成するために、複数のターゲットを含む。
【0099】
図9に示すように、成膜工程では、蓋部材4を真空チャンバ23に収容する。その後、第一ターゲット24aから飛散した粒子を、蓋部材4の突出部8の内面8a及び枠部7の第一主面7aに付着させることで、第一反射防止膜10aを形成する。同様に、第二ターゲット24bから飛散した粒子を、蓋部材4の突出部8の外面8b及び枠部7の第二主面7bに付着させることで、第二反射防止膜10bを形成する。
【0100】
蓋部材4の突出部8に付着する粒子の量は、頂部13の位置で最も多くなり、基部11の位置で最も少なくなる。このように、突出部8に付着する粒子の量が異なるのは、突出部8の突出角度θの影響によるものである。
【0101】
蓋部材4に反射防止膜10a,10bを形成した後に、第一反射防止膜10aの緩衝部10a2に重なるように、金属層14を形成する。金属層14は、上記の成膜装置22によって、金属層14を形成するためのターゲット(図示省略)から飛散した粒子を緩衝部10a2に付着させることによって形成する。金属層14は、マスク部材を通じて粒子を緩衝部10a2に付着させることで、枠形状に形成される。
【0102】
その後、金属層14に重なるように、接合部15を形成する。接合部15は、例えばペースト状の金属系接合材を金属層14に重ねるように塗布する工程(塗布工程)によって形成される。塗布工程の具体例としては、マスクを用いた印刷法(スクリーン印刷法)、ディスペンサを用いた塗布法等が挙げられる。
【0103】
接合部15は、上記の方法に限らず、例えば、予め所定の枠形状に形成した金属系接合材の成形体を、枠部7の第一主面7aの金属層14に重なるように配置することによって形成してもよい。
【0104】
接合部15に係る金属系接合材が枠部7の第一主面7aに塗布されると、この金属系接合材を第一主面7aの金属層14に固定するための熱処理工程が実行される。熱処理工程は、加熱工程と、冷却工程とを備える。
【0105】
加熱工程では、蓋部材4をリフロー炉等の加熱装置を用いて加熱することで、金属系接合材を溶融させることができる。加熱工程は、例えば、炉内に窒素を充填した状態で実施してもよい。加熱工程において、蓋部材4は、300℃以上の温度に加熱される。
【0106】
冷却工程において、枠部7の第一主面7a上で溶融した金属系接合材は、冷却されることで固化する。冷却工程は、冷却速度50℃/分で徐冷することが好ましい。冷却工程において、枠部7と接合部15との熱膨張係数の差により、蓋部材4に応力が発生するが、第一反射防止膜10aの緩衝部10a2は、この応力を緩和することができる。
【0107】
図10に示すように、接合工程では、準備工程を経て製造された蓋部材4が基体2に重ねられる。具体的には、蓋部材4の枠部7の第一主面7aを基体2に対向させ、接合部15を基体2の第一主面2aに形成されている金属層6に接触させる。
【0108】
次に、図11に示すように、蓋部材4の枠部7に押圧部材25を載置する。押圧部材25は、錘25aと、錘25aを支持する支持部材25bとを有する。錘25a及び支持部材25bとしては、例えば金属製又はセラミック製のものが使用される。
【0109】
支持部材25bは、錘25aを支持する第一支持部25b1と、第一支持部25b1を支持する第二支持部25b2とを有する。
【0110】
第一支持部25b1は、錘25aが載置される支持面(上面)を有する。第二支持部25b2は、複数の棒状部材を含む。第二支持部25b2は、第一支持部25b1の下面から下方に突出している。
【0111】
第二支持部25b2は、蓋部材4の枠部7に接触する接触部25b3を有する。接触部25b3は、尖端状に構成される。接触部25b3は、第二反射防止膜10bを介して枠部7の第二主面7bに接触する。
【0112】
押圧部材25は、複数の第二支持部25b2の各接触部25b3が枠部7に接触することで、蓋部材4上で自立した状態でこの蓋部材4を押圧する。押圧部材25によって蓋部材4を押圧することで、蓋部材4の枠部7に形成されている接合部15と、基体2の第一主面2aに形成されている金属層6とを密着させることができる。
【0113】
その後、金属層6と接合部15とを圧接させた状態で加熱する(加熱工程)。これにより、接合部15の金属系接合材が溶融した状態となる。なお、この加熱工程において、第二支持部25b2の尖端状の接触部25b3が蓋部材4の枠部7に接触することから、接触部25b3と枠部7との接触面積を可及的に小さくすることができる。これにより、枠部7から押圧部材25の第二支持部25b2への熱伝達を最小限に抑えることができる。
【0114】
その後、溶融した金属系接合材を冷却することにより固化させる(冷却工程)。冷却工程において、基体2と蓋部材4の枠部7との熱膨張係数の差に起因して、枠部7に応力が発生することとなる。この場合において、第一反射防止膜10aの緩衝部10a2は、この応力を緩和するように変形する。これにより、枠部7の破損を低減することができる。
【0115】
冷却工程が終了すると、接合部15が基体2の金属層6と蓋部材4の金属層14とを一体に接合してなる封止部5が形成される。以上により、気密性が保たれたパッケージ1が完成する。
【0116】
図12は、蓋部材4を製造するためのガラス基板の例を示す。ガラス基板Gは、枠部7と、枠部7から突出する複数の突出部8と、反射防止膜10a,10bと、を備える。各突出部8は、上記の蓋部材4の突出部8と同じ構成を有する。各突出部8は、上記の成形装置16によって大型の板ガラスGSの複数箇所を熱変形させることによって形成される。このガラス基板Gを切断線CLに沿って切断すれば、突出部8及び枠部7、反射防止膜10a,10bを有する複数の蓋部材を効率よく製造できる。なお、第一反射防止膜10aには、金属層14及び接合部15が形成されていてもよい。
【0117】
図13は、蓋部材の他の例を示す。この例において、蓋部材4は、枠部7と、枠部7から突出する複数の突出部8と、反射防止膜10a,10bと、金属層14及び接合部15と、を備える。この蓋部材4の各構成要素は、上記(図5)の蓋部材4と同じ構成を有する。この蓋部材4は、基体2に複数の発光素子3が搭載される場合に、各発光素子3を複数の突出部8によって個別に封止することができる。
【0118】
図14は、蓋部材の他の例を示す。この例において、蓋部材4の内面8aは、曲率半径の異なる第一曲面8a1及び第二曲面8a2と、第一曲面8a1と第二曲面8a2との間に位置する境界部8a3とを、有する。突出部8の基部11側に形成される第一曲面8a1の曲率半径は、突出部8の頂部13側に形成される第二曲面8a2の曲率半径よりも小さい。
【0119】
蓋部材4の外面8bは、曲率半径の異なる第一曲面8b1及び第二曲面8b2と、第一曲面8b1と第二曲面8b2との間に位置する境界部8b3とを、有する。突出部8の基部11側に形成される第一曲面8b1の曲率半径は、突出部8の頂部13側に形成される第二曲面8b2の曲率半径よりも小さい。
【0120】
図15及び図16は、蓋部材の他の例を示す平面図である。この例において、蓋部材4は、複行複列に配された複数の突出部8と、反射防止膜10a,10b(第一反射防止膜10aについては図示を省略)と、金属層14(図示省略)及び接合部15(図示省略)と、を有する。図15に示す蓋部材4は、平面視円形状に構成される複数の突出部8を有する。一方、図16に示す蓋部材4は、平面視四角形状に構成される複数の突出部8を有する。なお、複行複列に配された複数の突出部8を有する蓋部材4については、隣り合う突出部8同士の間の平滑面に、スクライブ線を入れ、このスクライブ線に沿って蓋部材4を割断し、或いは、ブレードダイシング方式やレーザアブレーション方式でダイシングすることで、複数の蓋部材を得ることができ、また、任意の形状の蓋部材を得ることができる。
【0121】
図17は、蓋部材の他の例を示す底面図である。この例において、蓋部材4は、図16に示す例と同様に、平面視四角形状に構成される突出部8を有する。この構成により、突出部8の開口部8cは、四角形状(例えば正方形状)に構成されている。開口部8cが正方形状に構成されている場合には、その開口長さLは、正方形の一辺の長さに相当する。開口部8cが長方形状に構成されている場合には、その開口長さLは、長方形の長辺の長さに相当する。
【0122】
図18は、蓋部材の製造方法(パッケージの製造方法における準備工程)における他の例を示す。この例では、反射防止膜10a,10b及び金属層14が形成されたガラス基板Gに接合部15を形成する工程を示す。具体的には、スクリーン印刷法により接合部15を形成する際に、ガラス基板Gを支持装置26に固定する場合について説明する。
【0123】
支持装置26は、ガラス基板Gを支持する支持板27と、支持板27を支持する吸引台29とを備える。
【0124】
支持板27は、吸引台29に対して着脱自在に構成される。支持板27は、ガラス基板Gの突出部8及び連結部9を挿入することが可能な開口部28を有する。支持板27は、ガラス基板Gの突出部8を下方に向けた状態で、突出部8及び連結部9を開口部28に挿入することで、突出部8及び連結部9に接触することなく、ガラス基板Gの枠部7のみを支持することができる。
【0125】
吸引台29は、支持板27を支持する支持部30と、ガラス基板Gを支持板27に固定するための吸引口31とを備える。支持部30は、支持板27の周縁部を支持する支持面30aを有する。
【0126】
吸引台29は、支持部30に支持された支持板27と吸引口31との間に、空間部29aを有する。吸引口31は、図示しないポンプ等の吸引装置(排気装置)に接続されている。
【0127】
吸引台29は、ガラス基板Gが載置された支持板27を支持部30によって支持した状態で、空間部29a内に存在する気体を吸引口31から排出することで、空間部29a内を負圧にする。これにより、ガラス基板Gは、支持板27の開口部28を介して空間部29a側に吸引されることで、支持板27に固定される。その後、スクリーン印刷法により、ガラス基板Gの金属層14に重なるように、接合部15に係るペースト状の金属系接合材が塗布される。
【0128】
上記のように支持装置26によってガラス基板Gを支持することで、接合部15を精度良く形成することが可能となる。
【0129】
図19は、パッケージの他の例を示す。この例におけるパッケージ1は、複数の発光素子3が搭載された基体2と、図13に例示した蓋部材4とを備える。この蓋部材4は、基体2に搭載された各発光素子3を、複数の突出部8及び封止部5によって個別に封止している。
【0130】
以上説明した本実施形態に係るパッケージ1(蓋部材4)及びガラス基板Gによれば、蓋部材4における突出部8の内面8a及び外面8bに反射防止膜10a,10bを形成で、発光素子3から放出された光を突出部8によって効率良く透過させることができる。これにより、蓋部材4が使用されたパッケージ1における光の取り出し効率を可及的に高めることが可能となる。
【0131】
上記の実施形態において、蓋部材4の突出部8は、頂部13の厚さが基部11の厚さよりも薄くなっているのに対して、反射防止膜10a,10bの厚さは、頂部13の位置で厚く、基部11の位置で薄くなっている。突出部8の上記構成から、発光素子3から放出された光は、突出部8の頂部13において相対的に透過し易く、基部11において相対的に透過し難くなっている。すなわち、本実施形態では、光が相対的に透過し易い部位において反射防止膜10a,10bの厚さを厚くし、光が相対的に透過し難い部位において反射防止膜10a,10bの厚さを薄くしている。
【0132】
反射防止膜10a,10bは、透過する光を若干ながら吸収する。反射防止膜10a,10bは、厚くなるほどこの光の吸収量が増加するため、上記のように、光が透過し難い突出部8の基部11の位置における反射防止膜10a,10bの厚さを薄くすることで、基部11と頂部13とで光を比較的均等に透過させることが可能となる。
【0133】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0134】
上記の実施形態では、第一反射防止膜10a及び第二反射防止膜10bが形成された蓋部材4及びガラス基板Gを示したが、本発明はこの構成に限定されない。本発明に係る蓋部材4及びガラス基板Gは、第一反射防止膜10aのみ又は第二反射防止膜10bのみを有するものであってもよい。
【0135】
上記の実施形態では、頂部13の厚さが基部11の厚さよりも薄く構成された突出部8を有する蓋部材4を例示したが、本発明はこの構成に限定されない。本発明は、基部11から頂部13まで厚さが一定である突出部8を備える蓋部材4にも適用可能である。
【0136】
図20は、蓋部材の他の例を示す。この例において、蓋部材4の内面8aは、突出部8の内側に向かって凸となる第一曲面8a1と、突出部8の外側に向かって凸となる第二曲面8a2と、第一曲面8a1と第二曲面8a2との間に位置する変曲点8a3と、を有する。第一曲面8a1は、第二曲面8a2よりも突出部8の基部11寄りの位置に形成されている。第一曲面8a1の曲率中心は、突出部8の外側に位置する。第二曲面8a2は、第一曲面8a1よりも頂部13寄りの位置に形成されている。第二曲面8a2の曲率中心は、突出部8の内側に位置する。
【0137】
蓋部材4の外面8bは、突出部8の内側に向かって凸となる第一曲面8b1と、突出部8の外側に向かって凸となる第二曲面8b2と、第一曲面8b1と第二曲面8b2との間に位置する変曲点8b3と、を有する。第一曲面8b1は、第二曲面8b2よりも突出部8の基部11寄りの位置に形成されている。第一曲面8b1の曲率中心は、突出部8の外側に位置する。第二曲面8b2は、第一曲面8b1よりも突出部8の頂部13寄りの位置に形成されている。第二曲面8b2の曲率中心は、突出部8の内側に位置する。変曲点8a3と変曲点8b3は、枠部7の第二主面7bよりも上方(頂部13側)に設けられている。
【0138】
内面8a及び外面8bの各変曲点8a3,8b3は、図7乃至図9に示す成形装置及び成形方法によって蓋部材4に形成され得る。突出部8に変曲点8a3,8b3が形成される場合には、成形工程において、突出部8の突出角度θが小さくなり、光の取り出し効率が低下するおそれがある。本発明では、突出部8の突出角度θを大きく確保できるように、成形装置16(図7参照)の加熱源19によって、板ガラスGSを十分に加熱することが望ましい。本例に係る蓋部材4のように、変曲点8a3,8b3が形成された突出部8を有する場合には、突出角度θを40°以上90°以下とすることで、蓋部材4における光の取り出し効率を高めることが可能となる。突出角度θは、45°以上、50°以上、55°以上、60°以上、65°以上、70°以上がこの順で好ましい。一方、突出角度θは、90°未満であることが好ましく、85°以下であることがより好ましい。この例においては、突出角度θの規定が、図5の実施形態とは異なる。この例において、突出角度θは、変曲点8a3における接線L8と枠部7の第一主面7aとの成す角(鋭角)である。具体的には、変曲点8a3における接線L8と枠部7の第一主面7aに沿うように描かれた第六線L6とが為す角度(鋭角)を突出角度θとする。この例において、開口部8cの開口長さLと突出高さHについては、図5に示す実施形態と同様である。この例において、反射防止膜(10a,10b)については必ずしも必須の構成ではないが、反射防止膜(10a,10b)を設けることが好ましく、反射防止膜(10a,10b)の材質、厚さについての好ましい形態は、図5に示す実施形態と同様である。この例において、突出部8の厚さ(基部11の厚さ、頂部13の厚さ)、外径についての好ましい形態は、図5に示す実施形態と同様である。
【0139】
図21乃至図25は、パッケージ及び蓋部材の他の例を示す。この例では、蓋部材の形状が上記の実施形態と異なる。図21乃至図23に示すように、この例における蓋部材4の頂部13は、平板状に構成されている。このように蓋部材4に平板状の頂部13を形成することにより、頂部13に係る蓋部材4のその内面8a及び外面8bに均一な厚さの反射防止膜10a,10bを形成することができる。また、蓋部材4に平板状の頂部13を形成することにより、頂部13と、発光素子3との距離D1を可及的に小さくすることが可能となる。加えて、発光素子3から放出された光が平板状の頂部13に対して垂直に入射し易くなる。したがって、蓋部材4における光の取り出し効率を大幅に向上させることができる。
【0140】
次に、この例におけるパッケージ1の製造方法(蓋部材4の製造方法)について説明する。この方法では、パッケージ1の製造方法における準備工程が図7及び図8で示した例と異なる。図24に示すように、成形装置16は、支持台17と、マスク部材18と、加熱源19と、押圧部材20と、外力発生装置21と、成形型(下受け治具)32と、を備える。支持台17、マスク部材18、加熱源19、押圧部材20及び外力発生装置21の構成は、図7に例示したものと同じである。
【0141】
成形型32は、支持台17の空間部17b内に配置されている。成形型32は、加熱によって軟化する板ガラスGSの一部を成形する成形面32aを有する。成形面32aは、平坦面状に構成される。成形面32の表面粗さ(算術平均粗さ)Raは、例えば0.1nm以上10nm以下である。
【0142】
図25に示すように、成形工程では、支持台17に支持した板ガラスGSにマスク部材18を重ねて配置する。この場合において、支持台17の開口縁E1よりも内側に、マスク部材18の貫通孔18aにおける内周縁E2の少なくとも一部が配置される。その後、押圧部材20は、支持台17とマスク部材18とを互いに接近させる方向に押圧する。
【0143】
次に、加熱源19によりマスク部材18側から板ガラスGSを加熱する。これにより、板ガラスGSの一部が熱変形する。このとき、変形した板ガラスGの一部は、成形型32の成形面32aに接触する。これにより、板ガラスGの一部は、平板状に成形される。この成形工程により、枠部7と、平板状の頂部13を含む突出部8と、連結部9とを有する蓋部材4が形成される。
【0144】
この蓋部材4に対して図9乃至図11で例示した成膜工程及び接合工程を実施することにより、パッケージ1を製造することができる。
【実施例0145】
以下、本発明に係る実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0146】
本発明者は、本発明の効果を確認するために、蓋部材による光の取り出し効率を測定する試験を行った。この試験では、反射防止膜を備える蓋部材(サンプル1、3、5、7、9)と、反射防止膜を備えていない蓋部材(サンプル2、4、6、8、10)を用意し、各例について光の取り出し効率を測定した。各サンプルについては、図20に示す形状を呈する蓋部材とした。
【0147】
光の取り出し効率は、蓋部材を介さずに発光素子から放出された光(波長265nm、280nm)のエネルギEN1を測定し、発光素子から放出された光(波長265nm、280nm)を蓋部材に透過させた場合のエネルギEN2を測定し、これらのエネルギの比(EN2/EN1)により算出した。
【0148】
試験結果を表1に示す。表1において、サンプル1とサンプル2とは、蓋部材における突出角度θ、突出部の突出高さH、突出部における開口部の開口長さLとを同一条件とした。同様に、サンプル3とサンプル4、サンプル5とサンプル6、サンプル7とサンプル8、サンプル9とサンプル10についても、それぞれ突出部と開口部の条件を同一とした。
【表1】
【0149】
表1に示すように、突出角度θ、突出部の突出高さH、及び突出部における開口部の開口長さLの各条件が同一である場合において、反射防止膜が形成される蓋部材は、反射防止膜が形成されない蓋部材と比較して、光の取り出し効率が高くなることが明らかとなった。また、反射防止膜が形成の有無の条件が同一である場合、突出角度θが大きくなるに従い、光の取り出し効率が高くなり、また、開口長さLと突出高さHとの比L/Hが小さくなるに従い、光の取り出し効率が高くなった。つまり、反射防止膜が形成されていない場合であったとしても、突出角度θを大きくすることによって、光の取り出し効率を高くすることができた。
【符号の説明】
【0150】
1 パッケージ
2 基体
3 発光素子
4 蓋部材
7 枠部
7a 枠部の第一主面
7b 枠部の第二主面
8 突出部
8a 突出部の内面
8a1 突出部における内面の第一曲面
8a2 突出部における内面の第二曲面
8a3 突出部における内面の変曲点
8b 突出部の外面
8c 突出部の開口部
10a 第一反射防止膜
10b 第二反射防止膜
11 基部
13 頂部
14 金属層
G ガラス基板
L8 変曲点における接線
Tmin 突出部の頂部の厚さ
Tmax 突出部の基部の厚さ
θ 突出角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25