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特開2023-155875抗アレルギー性ペプチド及びその免疫調節と抗アレルギーに用いられる用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155875
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】抗アレルギー性ペプチド及びその免疫調節と抗アレルギーに用いられる用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20231016BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20231016BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A23L33/18
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022173390
(22)【出願日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】111113738
(32)【優先日】2022-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】520274714
【氏名又は名称】緑茵生技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Greenyn Biotechnology Co., Ltd
【住所又は居所原語表記】5F., No.43, Keya Rd., Daya Dist., Taichung City
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】徐榜奎
(72)【発明者】
【氏名】林育正
(72)【発明者】
【氏名】高智国
(72)【発明者】
【氏名】呉嘉峰
【テーマコード(参考)】
4B018
4H045
【Fターム(参考)】
4B018MD20
4B018ME07
4B018MF13
4H045AA10
4H045BA09
4H045BA15
4H045BA16
4H045CA11
4H045EA01
4H045EA22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗アレルギー性ペプチド及びその免疫調節と抗アレルギーに用いられる用途を提供することを課題とする。
【解決手段】抗アレルギー性ペプチドは、アレルギー反応関連のサイトカイン分泌を抑制し、アレルギー反応を調節する能力を有する。該抗アレルギー性ペプチドは特定のアミノ酸配列又は上記配列のいずれかにおいて1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失、及び付加された相同アミノ酸配列を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列は、特定の配列又は前記特定の配列において1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失、及び付加された相同アミノ酸配列を含み、前記特定の配列がSEQ ID No.:1、SEQ ID No.:2 、SEQ ID No.:3、SEQ ID No.:4及びSEQ ID No.:5から成る群から選択されるペプチド。
【請求項2】
アミノ酸配列が、SEQ ID No.:1に示される請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
アミノ酸配列が、SEQ ID No.:2に示される請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
アミノ酸配列が、SEQ ID No.:3に示される請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
アミノ酸配列が、SEQ ID No.:4に示される請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
アミノ酸配列が、SEQ ID No.:5に示される請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
抗アレルギー組成物の製造のための請求項1に記載のペプチド又はその代謝物の使用。
【請求項8】
前記抗アレルギー組成物中は、アミノ酸配列がSEQ ID No.:1~SEQ ID No.:5に示されるペプチドを含む請求項7に記載の使用。
【請求項9】
免疫調節組成物の製造のための請求項1に記載のペプチド又はその代謝物の使用。
【請求項10】
前記免疫調節組成物中は、アミノ酸配列がSEQ ID No.:1~SEQ ID No.:5に示されるペプチドを含む請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド及びその用途に関し、特に、抗アレルギー性ペプチド及びその免疫調節及び抗アレルギーにおける用途に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫システムは外来病原体に対する人体の防御システムであり、免疫システムが正常な場合、病原体と外来有害物質を区別し、防御機構を発動することができる。免疫系の一部が不活性化した場合、免疫力の低下又は免疫機能障害につながり、全ての病原体をブロックできないことで病気のリスクが高まるだけでなく、がんの罹患リスクも高まる。免疫システムが過剰に活性化した場合、免疫システムが乱れることで様々な疾病は生じ、すなわち、免疫システムは自己抗原と同種異系抗原を区別できなくなり、自己の細胞を攻撃してしまう。換言すれば、免疫反応が低すぎても高すぎてもヒトの健康に悪影響を与えるため、免疫力を如何に調節し、バランスの取れた状態に保つかが、現代人の重要な健康課題である。
【0003】
寝不足、過度のストレス、過度の疲労、運動不足、栄養バランスの不均衡などを含む、免疫不均衡には多くの原因があるため、免疫調節に関する現在の臨床的推奨には、規則正しい生活リズム、適度な運動及びバランスの良い栄養が含まれる。実際、現代人の大多数は生活習慣及び食生活を変えることが難しいため、プロバイオティクス、ビタミンC、ビタミンDなどのサプリメントを補い、体内環境を改善することで、免疫システムを調節するがよくあるが、市場には免疫調節をアピールする商品が多く、選ぶのが難しいだけでなく、使いすぎによる身体への負担も考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、抗アレルギー性ペプチド及びその免疫調節及び抗アレルギーにおける用途を提供することである。具体的には、該抗アレルギー性ペプチドは、細胞が免疫刺激されてサイトカインを分泌するのを抑制し、Th1/Th2比のバランスをとる能力を維持できるため、本発明で開示される抗アレルギー性ペプチドは、個体の抗アレルギー反応の向上に使用することができ、個体の免疫力を調節して、侵入してきた外来物質又は病原体から個体を守ると共に、個体の免疫反応が強すぎるのを防ぐ効果を奏することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、人工合成法又は生合成法によって得ることができ、抗アレルギー、免疫調節の能力を有する抗アレルギー性ペプチドを提供する。すなわち、有効量の本発明で開示される抗アレルギー性ペプチド又はその代謝物を個体に投与することにより、個体のアレルギー反応及び症状を改善し、呼吸器アレルギー及び免疫の調節効果を奏することができる。
【0006】
本発明の実施形態において、該抗アレルギー性ペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID No.:1、SEQ ID No.:2、SEQ ID No.:3、 SEQ ID No.:4又はSEQ ID No.:5に示される配列、或いは上記配列のいずれかにおいて1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失、及び付加された相同アミノ酸配列を含む。
【0007】
本発明の実施形態において、該抗アレルギー性ペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID No.:1、SEQ ID No.:2、SEQ ID No.:3 SEQ ID No.:4又はSEQ ID No.:5に示される。
【0008】
本発明で開示される抗アレルギー性ペプチドは、乳酸菌の発酵産物、特にラクトバチルスプランタルムの発酵産物から単離することができる。
【0009】
本発明で開示される抗アレルギー性ペプチドは、人工的に合成されることができる。
【0010】
本発明で開示される抗アレルギー性ペプチドは、細胞がIL-4、IL13などのサイトカインを分泌するのを抑制することができ、かつIgE、IgGなどの血清中のTh1又はTh2免疫経路に関連する指標を調節できるため、本発明で開示される抗アレルギー性ペプチドは、アレルギー改善及び/又は免疫調節の組成物を調製するために用いられることができる。
【0011】
本発明の別の実施形態において、抗アレルギー組成物を開示し、該抗アレルギー組成物中は、有効量の本発明で開示される抗アレルギー性ペプチドを含み、該組成物を個体に投与することにより、個体の抗アレルギー能力或いは個体のアレルギー症状緩和の効果を効果的に奏することができる。
【0012】
本発明の別の実施形態において、免疫調節組成物を開示し、該免疫調節組成物中は、有効量の本発明で開示される抗アレルギー性ペプチドを含み、該組成物を個体に投与することにより、個体の免疫能力を維持する効果を効果的に奏することができる。
【0013】
該抗アレルギー組成物又は該免疫調節組成物中は、アミノ酸配列がSEQ ID No.:1~SEQ ID No.:5として示されるペプチドのいずれかを含む。
【0014】
該抗アレルギー組成物又は該免疫調節組成物中は、アミノ酸配列がSEQ ID No.:1~SEQ ID No.:5として示されるペプチドを含む。
【0015】
該抗アレルギー組成物又は該免疫調節組成物は、乳酸菌の発酵産物である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】SEQ ID No.:1として示されるペプチド配列の質量分析スペクトルである。
図1B】SEQ ID No.:2として示されるペプチド配列の質量分析スペクトルである。
図1C】SEQ ID No.:3として示されるペプチド配列の質量分析スペクトルである。
図1D】SEQ ID No.:4として示されるペプチド配列の質量分析スペクトルである。
図1E】SEQ ID No.:5として示されるペプチド配列の質量分析スペクトルである。
図2A】乳酸菌の細細胞外発酵液中のフラグメント1のC18クロマトグラフィー分離の結果を示す図(矢印1は第1ペプチド群、矢印2は第2ペプチド群である)である。
図2B】乳酸菌の細細胞外発酵液中のフラグメント2のC18クロマトグラフィー分離の結果を示す図(矢印3~矢印5は第3ペプチド群~第5ペプチド群を順次表す)である。
図2C】乳酸菌の細細胞外発酵液中のフラグメント3のC18クロマトグラフィー分離の結果を示す図(矢印6~矢印11は第6ペプチド群~第11ペプチド群を順次表す)である。
図2D】乳酸菌の細細胞外発酵液中のフラグメント4のC18クロマトグラフィー分離の結果を示す図(矢印12~矢印14は第12ペプチド群~第14ペプチド群を順次表す)である。
図3】各ペプチド群によるIL-4及びIL-13分泌抑制パーセントを検出・分析した結果を示す図である。
図4A】濃度の異なる第3ペプチド群を添加した培地で培養したマウスリンパ腫細胞EL4及びマウスマスト細胞P815の生存率を検出した結果を示す図である。
図4B】濃度の異なる第4ペプチド群を添加した培地で培養したマウスリンパ腫細胞EL4及びマウスマスト細胞P815の生存率を検出した結果を示す図である。
図4C】濃度の異なる第6ペプチド群を添加した培地で培養したマウスリンパ腫細胞EL4及びマウスマスト細胞P815の生存率を検出した結果を示す図である。
図4D】濃度の異なる第9ペプチド群を添加した培地で培養したマウスリンパ腫細胞EL4及びマウスマスト細胞P815の生存率を検出した結果を示す図である。
図4E】濃度の異なる第14ペプチド群を添加した培地で培養したマウスリンパ腫細胞EL4及びマウスマスト細胞P815の生存率を検出した結果を示す図である。
図5A】OVA誘導群のマウスの脾臓細胞を、濃度の異なる各ペプチド群を添加した培地で培養した後、OVA誘導群のマウスの脾臓細胞が分泌するIFN-γ/IL-4の濃度比を分析した結果を示す図である。
図5B】OVA誘導群のマウスの脾臓細胞を、濃度の異なる各ペプチド群を添加した培地で培養した後、OVA誘導群のマウスの脾臓細胞が分泌するIFN-γ/IL-10の濃度比を分析した結果を示す図である。
図5C】OVA誘導群のマウスの脾臓細胞を、濃度の異なる各ペプチド群を添加した培地で培養した後、OVA誘導群のマウスの脾臓細胞が分泌するIL-12/IL-4の濃度比を分析した結果を示す図である。
図5D】OVA誘導群のマウスの脾臓細胞を、濃度の異なる各ペプチド群を添加した培地で培養した後、OVA誘導群のマウスの脾臓細胞が分泌するIL-12/IL-10の濃度比を分析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、免疫調節及び抗アレルギーの能力を有し、アレルギー症状の改善又は/及び免疫調節の組成物内の主成分として使用できる抗アレルギー性ペプチド又はその代謝物を開示する。具体的に、該抗アレルギー性ペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID No.:1として示される配列、SEQ ID No.:2として示される配列、SEQ ID No.:3として示される配列、SEQ ID No.:4として示される配列、SEQ ID No.:5として示される配列、或いは上記配列のいずれかにおいて1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失、及び付加された相同アミノ酸配列を含む。
【0018】
本発明の実施形態において、該ペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID No.:1、SEQ ID No.:2、SEQ ID No.:3、SEQ ID No.:4又はSEQ ID No.:5として示される配列であり、かつ各ペプチドの分子量の大きさは下表1に示され、各ペプチドの質量分析スペクトルは図1A図1Eに示されている。
【0019】
【0020】
本発明のいわゆる「相同アミノ酸配列」とは、発現されるタンパク質が、本発明で開示されるペプチドと構造及び機能の類似性を有することを意味し、すなわち、相同アミノ酸配列は本発明で開示されるペプチドのアミノ酸配列と高い類似性を有し、かつその免疫調節及び抗アレルギー機能に影響を及ぼさない。
【0021】
本発明で開示される抗アレルギー性ペプチドは、例えば人工合成法、生合成法などの本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に一般的に知られている技術によって調製することができる。具体的には、人工合成法には化学合成、液相ペプチド合成、固相ペプチド合成又はペプチド合成装置などが含まれる。生合成法には、遺伝子組換えにより標的ペプチドの核酸分子を微生物にトランスジェニックし、次いで該組換え微生物の発酵・培養により標的ペプチドの大量発現をさせ、さらに分離・精製などの工程を介して標的ペプチドを大量に得ることが含まれる。ここで、現在、食品安全に関する規制に適合できるため、使用する微生物は主に酵母菌、乳酸菌など人体に無害な菌株或いは菌種である。
【0022】
例えば本発明で開示される抗アレルギー性ペプチドは、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルスロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルスブレビス(Lactobacillus brevis)などの乳酸菌、又は上述の乳酸菌いずれかと高い相同性を有する菌種を微生物によるペプチド生産プラットフォーム(微生物をペプチド生産ツールとして用いるプラットフォーム)内の発酵スターターとして発酵生産することによって得られ、すなわち、本発明で開示されるペプチドを発現することができる乳酸菌を液体発酵培養し、培地は改変MRSで、培養温度は30~45℃であり、発酵培養後に上清液が得られ、該上清液中には本発明で開示されるペプチドが含まれ、その後ゲル浸透クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー(Reversed-phase Chromatography)、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)などの方法で本発明で開示されるペプチドを分離・精製する。生産効率を高めるため、使用される発酵条件は、例えば水酸化ナトリウムによる培地のpH値の調整など、本発明の属する技術分野における通常の知識に従って調整される。
【0023】
本発明で開示される改変MRS培地は、本発明の属する技術分野において一般的に知られているMRS培地をベースとし、培地中の炭素源、窒素源及びその他の添加物を調整するものを意味する。ここで、炭素源は、スクロース、ラクトース、グルコース、或いは当技術分野において一般的に知られている他の物質であり得、窒素源はペプトン、牛肉抽出物、酵母抽出物、又は上記の少なくとも任意の2つの組み合わせであり得る。
【0024】
本発明の一実施形態において、上記の微生物によるペプチド生産プラットフォームを用いて本発明で開示される抗アレルギー性ペプチドを得るため、微生物発酵が完了した後、発酵液から本発明で開示される抗アレルギー性ペプチドを分離する。一般的にはまずHPLCで分離を行い、具体的な方法としては発酵培養により得られた発酵液を先に遠心分離し、遠心条件が6,000g、30分、4℃であり、上清液が得られた後、次いで、10kDa及び3kDa分子篩で順次ろ過して、本発明で開示されるペプチド群を含む淡黄色のろ液が得られる。その後、本発明で開示されるペプチド群を含むろ液は、ゲル浸透クロマトグラフィーを介して、NaHPO、NaCl、NaHPO・2HOなどの塩類を含む移動相でろ液中のペプチド群を分離し、先にAprotinin 6,500Da、Vitamin B12 1,350 Da、Cytidine 243 Daなどの標準品の位置を分析でき、それをろ液の分析結果と比較した後、ろ液のゲル浸透クロマトグラフィーカラム分離スペクトルから区分された4つの主要ペプチド群のピーク時間が得られ、さらにC-18カラムで該4つのペプチド群から本発明で開示されるペプチドを分離する。
【0025】
本発明で使用されるラクトバチルスプランタルムなどの乳酸菌は、本発明の属する技術分野における通常の知識により増幅・培養した後微生物によるペプチド生産プラットフォームの発酵工程に使用されることができる。
【0026】
本発明で開示される「組成物」とは、有効量の本発明で開示されるいずれかの抗アレルギー性ペプチド又はその代謝物を少なくとも含有すること、或いは本発明で開示される抗アレルギー性ペプチドを主な活性成分とするペプチド群を有し、細胞からのIL-13、IL-4、IL-10などのサイトカイン分泌を効果的に抑制でき、Th2比のバランスが崩れがちなアレルギー現象を効果的に低減するものをいう。本発明で開示されるアミノ酸配列番号がSEQ ID No.:1~SEQ ID No.:5のいずれかのペプチドは、いずれも免疫調節の効果を有するため、該組成物中には本発明で開示されるペプチドのいずれか2つ以上を含有する場合、これらのペプチドの比率は本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者の一般的知識に従って設定でき、例えば全てのペプチドは、同じ比率又はほぼ同じ比率で配合しても本出願の奏することができる効果に影響を及ぼさない。
【0027】
本発明で開示される「有効量」とは、本発明で開示されるペプチドが抗アレルギー組成物全部の0.01%~100%を占めること、又は摂取量が25μg以上であることを意味し、本発明で開示される抗アレルギー性ペプチド又はその代謝物が該組成物の全部を構成しない場合、該組成物中は食品上又は医薬上許容される担体を含んでもよい。さらに、該組成物は、医薬品、栄養補助食品、機能性食品、健康食品或いは人間の健康に寄与する他の食品であり得る。
【0028】
以下、本発明の技術的特徴及び効果を説明及び検証するため、いくつかの実施例を挙げて図表を参照しつつ、さらに説明する。
【0029】
以下の実施例で使用されるペプチドは、Fmoc法で合成されて得られ、本発明の属する技術分野において一般的に知られている方法で各ペプチドの正確性及び純度を検証しており、各ペプチドの純度は90%を上回る。
【0030】
以下の実施例内で使用される細胞は、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に入手できるものであるため、別途特許の寄託は必要とされない。例えばマウスマスト細胞P815は、台湾新竹食品工業発展研究所(BCRCと略称する)から購入した。
【0031】
以下の実施例で使用されるLactobacillus plantarumは、標的遺伝子であるpgm、ddl、gyrB、purK1、gdh、mutS、tktをプライマーとしてPCRを行い、アメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)の生物DNAデータベースの配列と比較し、類似性が99%~100%であることを確認したものである。この菌種は、発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に入手できる微生物であるため、別途特許の寄託は必要とされない。上記プライマーの配列は、本発明の属する技術分野において一般的に知られているものであるため、ここでは説明を省略する。
【0032】
以下の実施例に開示される化合物48/80(Compound 48/80)は、N-メチル-p-メトキシフェネチルアミンとホルムアルデヒドとの縮合により生成されるポリマーであり、ヒスタミンの放出を促進する効果を有し、マスト細胞の脱顆粒を促進することができるため、以下の実施例ではマスト細胞を刺激してアレルギー反応を引き起こすアレルゲンとして使用された。
【0033】
以下の実施例で使用されるマウスは、5週齢の雌BALB/c系統マウスであり、独立した換気環境で飼育され、試験期間に一般的な標準飼料及び滅菌蒸留水が与えられ、温度を 23±3℃に制御し、相対湿度は60±10%で、照明時間は12時間の明暗交換であった。下記の実施例は、6週齢のマウスの馴化から始めて実行されました。
【実施例0034】
(ペプチド組成物の調製)
改変MRS培地でLactobacillus plantarumを液体発酵槽で拡大培養し、培養温度を35~40℃に制御し、発酵後遠心分離及びろ過により上清液を得て、乳酸菌の細胞外発酵液を得、遠心条件は6,000g、30分、4℃で、10kDa及び3kDa分子篩でろ過した。
【0035】
改変MRS培地は、MRSをベースとし、窒素源として酵母抽出物、酵母ペプトン及び大豆ペプトンを添加し、0.1%のセリンを加えた。
【実施例0036】
(ペプチド群の分離)
実施例1で得られた乳酸菌の細胞外発酵液をゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography,GPC)カラムでタンパク質分子の大きさによって分離し、溶離相はNa2HPO4、NaCl、NaH2PO4・2H2Oなどの塩類の移動相を含み、標準品Aprotinin (6,500 Da)、Vitamin B12(1,350 Da)、Cytidine(243 Da)で分子量を定性的に測定し、図2A図2Dに示すように乳酸菌の細胞外発酵液を4つの異なるフラグメントに分割し、さらに無極性固定相カラム(C18カラム)を併用した逆相クロマトグラフィー(Reversed-phase Chromatography)で個々のペプチドの極性の違い及び有機溶媒に対する親和性の大きさによって、14個のペプチド群を得た。
【実施例0037】
(調控アレルギー能力分析)
マウスマスト細胞P815をペプチド無添加条件で取り、10μg/mLの化合物48/80を添加した環境で6時間培養し、試験の0、0.5、2、4、56時間に細胞のIL-4、IL-13の濃度をテストし、IL-13の濃度は4~6時間の間に有意に上昇し、0.5時間~6時間のIL-13の濃度が74.1%上昇することが分かった。この結果は、化合物48/80を添加することによってアレルギー細胞モデルを実際に構築できることを示している。したがって、マウスマスト細胞P815が化合物48/80によって誘導されるモデルで該14個のペプチド群によるアレルギー反応の抑制及び免疫調節の潜在能力を検出し、すなわち、該14個のペプチド群をマウスマスト細胞P815と一緒に培養環境に置いた後、各組細胞の培養環境に化合物48/80(10μg/mL)を別途添加し、マウスマスト細胞P815からのIL-4及びIL-13分泌に対する各ペプチド群の抑制能力を検出、分析し、結果を図3に示す。
【0038】
図3に示す検出・分析結果からそれぞれIL-4及びIL-13などのサイトカイン分泌抑制の能力を有する第3ペプチド群、第4ペプチド群、第6ペプチド群、第9ペプチド群及び第14ペプチド群をスクリーニングした。
【実施例0039】
(安全性試験)
実施例3でスクリーニングされた5組のペプチド群をそれぞれ0、25、50、100、200、400ppmの濃度で培地中に添加し、マウスリンパ腫細胞EL4及びマウスマスト細胞P815の培養を行い、その後異なる培養環境におけるマウスリンパ腫細胞EL4及びマウスマスト細胞P815の生存率をそれぞれ検出し、結果を図4A図4Eに示す。
【0040】
図4A図4Eの結果から各組のペプチド群の添加濃度は400ppmの場合、マウスリンパ腫細胞EL4及び/又はマウスマスト細胞P815の生存率を低下させ、各組のペプチド群の添加濃度が200ppmの場合、マウスリンパ腫細胞EL4及び/又はマウスマスト細胞P815の生存率に影響を与えないことが分かる。これは、各組のペプチド群の最大安全用量が200ppmであることを示している。
【実施例0041】
(動物試験(一))
6週齢BALC/cマウス10匹を無作為に2群、正常群及びOVA(オボアルブミン)誘発群に分け、OVA(オボアルブミン)誘発アレルギー群のマウス調製方法は、次の通りである。20μl(20μg)のオボアルブミン(OVA1mg/mL 0.9% saline)溶液及び25μl(1mg)水酸化アルミニウムアジュバント水性溶媒(Alum,40mg/mL)を均一に混合した後、0.9%生理食塩水で体積を用量0.1mL/10gまでに補充した後、 腹腔内注射方法で誘発し、各マウスに特異的な抗体を産生させ、次に5%オボアルブミンをエアロゾル方式で投与してマウス呼吸器収縮などのアレルギー反応を引き起こした。
【0042】
感作誘導7日後に各群のマウスを犠牲にし、犠牲後の正常マウス(正常群)とOVA誘発アレルギーマウス(OVA誘発群)の血清中のIgE及びIgG1(Th2関連指標)を測定し、OVA誘発群におけるマウスの血清中IgE及びIgG1の濃度は正常マウスよりも高く、かつOVA誘発群のマウスには明らかな喘息症候が見られ、OVA誘発群におけるマウスの血清中IgEの濃度が正常マウスより10倍以上高く、OVA誘発群におけるマウスの血清中IgG1が正常マウスより2倍以上高いことが分かった。これから分かるように、OVA誘発は、感作アレルギー動物モデルを確実に確立できる。
【0043】
実施例3によってスクリーニングされた各組のペプチド群を、それぞれ0、25、50、100、200、400ppmの濃度で培地に添加し、OVA誘発群のマウスの脾臓細胞を各培地に入れて共培養を行う。培養終了後、各組の培地中の細胞が分泌するIFN-γとIL-12の2つのTh1サイトカイン、及びIL-4とIL-10の2つのTh2サイトカインの濃度をそれぞれ検出して、Th1/Th2の濃度比を計算し、すなわち、IFN-γ/IL-4、IFN-γ/IL-10、IL-12/IL-4及びIL-12/IL-10であり、結果を図5A図5Dに示す。
【0044】
図5A図5Dの結果をまとめると、第3ペプチド群の調整されたTh1/Th2比は、対照群の5~18倍、第4ペプチド群の調整されたTh1/Th2比は対照群の8~20倍、第6ペプチド群の調整されたTh1/Th2比は対照群の2.5~17倍、第14ペプチド群の調整されたTh1/Th2比は対照群の7倍であることが分かる。この結果は、明らかな減感作効果を持たない第9ペプチド群を除き、残りの4個のペプチド群が明らかな減感作効果を持ち、その中で第3ペプチド群が最良の減感作効果を持っていることを示している。
【実施例0045】
(配列同定)
実施例5でスクリーニングした抗アレルギー及び免疫調節能力を有するペプチド群(第3、4、6、14ペプチド群)を液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(LC/MS/MS)でアミノ酸配列組成を同定し、次に各フラグメントの質量差によって分離し、生成した質量スペクトルシグナルをデータベース(Database ref. Matrix science)で比較し、下表2に示すペプチドを得た。
【0046】
【実施例0047】
(配列合成及び免疫に関連するサイトカイン抑制能力の検出)
表2に列挙されたペプチドを、Fmoc法で対応する配列の高純度(>90%)サンプルに合成した。
【0048】
実施例3に開示された方法を参照して、上述の各合成配列のIL-4及びIL-13などのサイトカイン分泌抑制の能力を検出し、結果を表3に示し、ここで、Nは得られた結果が減少しないことを表す。
【0049】
表3の結果から分かるように、本発明で開示されるアミノ酸配列番号がSEQ ID No.:1、SEQ ID No.:2、SEQ ID No.:3、SEQ ID No.:4、SEQ ID No.:5のペプチドは、アレルギー反応を抑制する能力を有し、その中で、アミノ酸配列番号SEQ ID No.:2、SEQ ID No.:3及びSEQ ID No.:5のペプチドが細胞からIL-4及びIL-13分泌を抑制する効果はより優れている。
【0050】
【実施例0051】
(動物試験(二))
6週齢BALC/cマウスを無作為に5群に分け、第1群のマウスは正常マウスで、第2~5群がそれぞれOVA誘発性気道過剰反応のマウス(喘息モデル)であった。第1群のマウスを除いて、残りの各群のマウスは試験前2週間、毎日下記の条件で処理し、その後2回の免疫誘導を行い、2回の免疫誘導の間に1週間の間隔を空け、試験終了の7日後、各群のマウスを犠牲にし、OVA誘発方法は実施例5に記載の通りであり、ここでの説明を省略する。
【0052】
第2群に用量200μl/匹/日のリン酸緩衝生理食塩水を与え、
第3群に用量0.017g/匹/日の15.198ppmのペプチドを含有するペプチド粉末を与え、
第4群に用量0.034g/匹/日の30.396pmのペプチドを含有するペプチド粉末を与え、
第5群に用量0.068g/匹/日の60.792ppmのペプチドを含有するペプチド粉末を与え、
ここで、ペプチド群は、本発明で開示されるアミノ酸配列番号がSEQ ID No.:1、SEQ ID No.:2、SEQ ID No.:3、SEQ ID No.:4、SEQ ID No.:5のペプチドを含有する組成物を指す。
【0053】
試験終了後、各群のマウスの血清中IgE、IgG1、IgG2a及びIgG2bの含有量を検出し、結果を表4に示す。表4の結果から分かるように、第1群のマウスと比較して、第2群のマウスのTh2関連抗体IgE、IgG1の含有量が有意に増加し、喘息動物モデルの確立に成功したことを示す。第2群のマウスと比較して、第3群~第5群のマウスの血清中IgE、IgG1の含有量は有意に減少し、IgG2a及びIgG2bの含有量が投与したペプチド群の用量ともに増加した。
【0054】
【実施例0055】
(肺呼吸抵抗試験)
実施例8において、各群のマウスは、最後の免疫増強後肺呼吸抵抗試験を実施し、すなわち、エアロゾル方式で各組のマウスに異なる用量のメタコリン(methacholine): 0、6.25、12.5、25、50mg/mLを吸入させ、吸入時間が3分間とし、その後各群のマウスの意識が明確になった場合にいて、非侵襲的な方法で特定の空間内外の気体変化を検出して、マウスの吸い込み及び吐き出しの気体量を推定することで、さらに最大吸気量、最大呼量、呼気時間などの各呼吸パラメータの値を知って肺機能指標Penhを計算し、結果を下表5に示す。
【0056】
表5の結果から分かるように、メタコリンを投与した時、第2群のマウスのPenh値は、第1群のマウスのPenh値より高く、メタコリンが確実にマウスの肺機能を悪く可能性があることを示している。第3群~第5群のマウスのPenh値から本発明で開示されるペプチド群を投与した場合、メタコリンによる肺機能低下を効果的に改善できることが分かる。換言すれば、本発明で開示される各ペプチド又は組み合わせは、アレルギー或いは喘息により引き起こされる肺機能障害を効果的に改善することができる。
【0057】
【実施例0058】
(脾臓細胞増殖反応)
実施例8における各群のマウス犠牲後、その脾臓細胞を取る。各群のマウスの脾臓細胞を2×10cells/wellで96ウェル細胞培養皿に入れ、それぞれConcanavalin A (Con A)、Lipopolysaccharide(LPS)及びOVAでT、B及び特異的な抗原活性化細胞の増殖を刺激し、37℃、5%COで48時間培養した後、Alamar blueを使用して分析し、570nm及び600nmの下でその吸光度を測定し、増殖指数(Stimulation Index)を計算し、ここで、増殖指数は細胞増殖値と無添加時の値の比であり、各群のマウスの脾臓細胞の増殖指数を下表6に示す。
【0059】
表6の結果から分かるように、Concanavalin A、Lipopolysaccharide及びOVAをアレルゲンとして使用しても、第3群~第5群のマウスの免疫細胞増殖能力は、第2群のマウスよりも有意に高く、ConAでT細胞の増殖を刺激した場合、第4群のマウスの上昇率が最も高く、OVAで特異的な抗原の増殖を刺激した場合、第4群及び第5群のマウスの上昇率がより高かった。
【0060】
【0061】
さらに、各群のマウスの脾臓細胞(エフェクター細胞)をYAC-1細胞(標的細胞、2×10cells/ウェル)と異なる比率で共培養し、ここで、脾臓細胞と標的細胞の比率は5:1、25:1、50:1で、培養条件が37℃、5%CO2で、4時間培養した後、250gで3分間遠心分離し、上清液50μlを取り、LDHで分析し、490nm及び680nmの下でその吸光度を測定した。各群のマウスの脾臓細胞におけるナチュラルキラー細胞の活性を表7に示す。
【0062】
表7の結果から分かるように、標的細胞に対する脾臓細胞の比率が25と50の場合、第5群のマウスの脾臟におけるナチュラルキラー細胞の活性は、第2群のマウスよりも有意に高かった。
【0063】
【実施例0064】
(呼吸器の肺洗浄液の分析)
実施例8の各群のマウスの肺洗浄液を取り、その中のIL4、IL5、INFγ及びIL12などのサイトカインの含有量を検出し、結果を表8に示す。
【0065】
表8の結果は、第1群のマウスと比較すると、第2群のマウスの肺洗浄液中のTh2細胞関連サイトカイン:IL4、IL5が有意に増加し、Th1細胞関連サイトカイン:IFN-γ、IL-12が有意に減少し、第2群のマウスと比較すると、第3群~第5群のマウスの肺洗浄液中のTh2細胞関連サイトカイン:IL4、IL5がそれぞれ有意に減少し、かつ第4群及び第5群のマウスの肺洗浄液中のTh1細胞関連サイトカイン:IFN-γ、IL-12がそれぞれ有意に増加したことを示している。
【0066】
【実施例0067】
(サイトカイン分泌機能の分析)
実施例8の各群のマウスの脾臓の単一浮遊細胞を1×10cells/ウェルで培養し、培養条件は37℃、5%CO2で、培養時間が72時間で、培養後1200rpm、15℃のディスク式遠心機で10分間遠心分離し、上清液を取り、行ELISA分析を行って体外培養後の各群のマウスの脾臓細胞内のIL4、IL5、INFγ及びIL12などのサイトカインの含有量を計算し、結果を表9に示す。
【0068】
表9の結果から分かるように、第1群のマウスと比較して、OVA誘発を経た第2群のマウスの脾臓細胞中のTh2細胞関連サイトカインIL4、IL5が有意に増加し、Th1関連サイトカインIFN-γとIL-12が有意に減少し、ペプチド群を投与した第3群及び第4群のマウスの脾臓細胞中のTh2細胞関連サイトカインIL4、IL5がそれぞれ第2群のマウスよりも減少し、第2群のマウスと比較すると、第4群及び第5群のマウスの脾臓細胞中のTh1関連サイトカインIFN-γとIL-12の含有量はペプチド群を投与する用量の増加に伴って増加した。さらに、第3群~第5群のマウスの脾臓細胞中のIFN-γ/IL4の比は、ペプチド群投予用量の増加に伴って上昇した。
【0069】
上述の結果から、本発明で開示される各ペプチド又はこれらから成るペプチド群は、免疫調節の効果を有し、かつ極めて優れた減感作効果を有する。
【0070】
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
【配列表】
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【外国語明細書】