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特開2023-155909広い動作範囲を備えた交換可能なコリオリ流量センサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155909
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】広い動作範囲を備えた交換可能なコリオリ流量センサ
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/84 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
G01F1/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023063893
(22)【出願日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】17/718,197
(32)【優先日】2022-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510179283
【氏名又は名称】マレマ エンジニアリング コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】MALEMA ENGINEERING CORPORATION
【住所又は居所原語表記】1060 South Rogers Circle,Boca Raton,FL 33487 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディーパク バグワン マラニ
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤセカー ラジャゴパラン
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ワルダースドルフ クヌッセン
(72)【発明者】
【氏名】レナト デ カストロ
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035JA02
(57)【要約】
【課題】従来の設計は高価となることがあり、単回使用または使い捨て用途には適していない。また、金属筐体または金属部品を有する流量センサの滅菌は、典型的には化学物質を使用して実施されるが、これはそれほど効果的ではなく、流量センサの交差汚染を引き起こす可能性がある。
【解決手段】コリオリ流量センサは、金属フローチューブおよび筐体を含む。筐体は、フローチューブを入れており、少なくとも部分的にガンマ線透過性材料から構成される。金属フローチューブは、ステンレス鋼から構成されてもよい。ガンマ線透過性材料およびフローチューブは、ガンマ線透過性材料を通過するフローチューブのガンマ線照射によってフローチューブ内部の滅菌を可能にするのに十分な薄さである。筐体はまた、取り付け構造上の所定の位置でコリオリ流量センサの固定および固定解除を容易にするように形作られている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コリオリ流量センサであって、
少なくとも50GPaのヤング率を有する材料から構成されるフローチューブと、
フローチューブを入れる筐体であって、少なくとも部分的にガンマ線透過性材料から構成される筐体と、を含み、
前記ガンマ線透過性材料および前記フローチューブが、前記ガンマ線透過性材料を通過する前記フローチューブのガンマ線照射によって前記フローチューブの内側を滅菌するに十分な薄さであり、
前記筐体が、取り付け構造に配置されたコリオリ流量センサの固定または固定解除を容易にするように形作られている、コリオリ流量センサ。
【請求項2】
前記フローチューブが、金属フローチューブである、請求項1に記載のコリオリ流量センサ。
【請求項3】
前記金属フローチューブが、ステンレス鋼から構成される、請求項2に記載のコリオリ流量センサ。
【請求項4】
前記金属フローチューブが、ハステロイ、モネル、ニッケル、チタン、またはタンタルから構成される、請求項2に記載のコリオリ流量センサ。
【請求項5】
前記金属フローチューブが、非磁性金属から構成される、請求項2に記載のコリオリ流量センサ。
【請求項6】
前記金属フローチューブが、以下の表に示す壁厚以下の壁厚を有する、請求項2に記載のコリオリ流量センサ。
【表1】
【請求項7】
前記フローチューブが、ジルコニウムから構成される、請求項1に記載のコリオリ流量センサ。
【請求項8】
前記ガンマ線透過性材料が、プラスチックまたはポリカーボネートである、請求項1に記載のコリオリ流量センサ。
【請求項9】
前記コリオリ流量センサのキャリブレーションデータを格納するガンマ線に安定なメモリをさらに含む、請求項1に記載のコリオリ流量センサ。
【請求項10】
少なくとも200の、最大流量の最小流量に対するターンダウン比を有する動作範囲にわたって、流量の+/-1%の精度を有する、請求項1に記載のコリオリ流量センサ。
【請求項11】
クリーンインプレースプロセス、スチームインプレースプロセス、エチレンオキシド洗浄、水酸化ナトリウム洗浄、およびX線滅菌の少なくとも1つにより滅菌可能である、請求項1に記載のコリオリ流量センサ。
【請求項12】
使い捨て可能な、単回使用の流量センサである、請求項1に記載のコリオリ流量センサ。
【請求項13】
単回使用用途、多目的使用用途、および連続使用用途における使用に適する、請求項1に記載のコリオリ流量センサ。
【請求項14】
流量プロセスシステムであって、
流体の流れを含む環境において使用される支持装置のためのスキッドと、
流体の流れの流量を測定するためのコリオリ流量センサであって、
少なくとも50GPaのヤング率を有する材料から構成されるフローチューブと、
前記フローチューブを入れる筐体であって、少なくとも部分的にガンマ線透過性材料から構成される筐体と、
を含み、前記ガンマ線透過性材料および前記フローチューブが、前記ガンマ線透過性材料を通るフローチューブのガンマ線照射によって前記フローチューブの内側を滅菌するのに十分な薄さである、コリオリ流量センサと、
前記スキッドに取り付けられたクレードルであって、前記コリオリ流量センサのための取り付け構造を有し、前記コリオリ流量センサの質量の少なくとも10倍の質量を有する、クレードルと、
前記コリオリ流量センサを所定の位置で前記取り付け構造に固定する固定機構であって、前記コリオリ流量センサおよびクレードルが、単一の本体として振動するのに十分な固定力を生み出すが、前記コリオリ流量センサを取り外すために固定解除可能である、固定機構と、
を含む、流量プロセスシステム。
【請求項15】
前記クレードルが、前記クレードルの大部分の質量を有する長方形のカラーを含み、
前記取り付け構造が、長方形の環状のへりを含み、前記コリオリ流量センサがそれに対して取り付けられ、前記固定機構が、前記コリオリ流量センサに前記へりに対する力を加える、
請求項14に記載の流量プロセスシステム。
【請求項16】
前記コリオリ流量センサが、2.5g/分以下のゼロドリフトを有する、請求項14に記載の流量プロセスシステム。
【請求項17】
前記コリオリ流量センサが、前記コリオリ流量センサによって測定される最小流量の1%以下のゼロドリフトを有する、請求項14に記載の流量プロセスシステム。
【請求項18】
流量プロセスシステムであって、
流体の流れを含む環境において使用される支持装置のためのスキッドと、
前記スキッドに取り付けられた混合マニホールドと、
前記混合マニホールドに接続された第1の流路、並びに前記第1の流路に沿って配置され前記スキッドに取り付けられた第1のポンプおよび第1のコリオリ流量センサであって、第1の流体が前記第1のポンプおよび前記第1のコリオリ流量センサを通って前記混合マニホールドに流入する、第1の流路、並びに第1のポンプおよび第1のコリオリ流量センサと、
前記混合マニホールドに接続された第2の流路、並びに前記第2の流路に沿って配置され前記スキッドに取り付けられた第2のポンプおよび第2のコリオリ流量センサであって、第2の流体が前記第2のポンプおよび前記第2のコリオリ流量センサを通って前記混合マニホールドに流入する、第2の流路、並びに第2のポンプおよび第2のコリオリ流量センサと、
前記混合マニホールドに接続された第3の流路であって、第3の流体が前記混合マニホールドから流出し、前記第3の流体が前記第1の流体および前記第2の流体の混合物を含む、第3の流路と、
を含み、
前記コリオリ流量センサのそれぞれが、
少なくとも50GPaのヤング率を有する材料から構成されるフローチューブと、
前記フローチューブを入れる筐体であって、少なくとも部分的にガンマ線透過性材料から構成された、筐体と、
を含み、前記ガンマ線透過性材料および前記フローチューブが、前記ガンマ線透過性材料を通過する前記フローチューブのガンマ線照射によって前記フローチューブの内側が滅菌されるのに十分な薄さである、
流量プロセスシステム。
【請求項19】
前記コリオリ流量センサのそれぞれが、使い捨て可能および/または単回使用である、請求項18に記載の流量プロセスシステム。
【請求項20】
前記コリオリ流量センサのそれぞれが、前記コリオリ流量センサを1分以内に取り外し、かつ交換することを可能にする手動操作可能な固定機構を含む、請求項18に記載の流量プロセスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年11月10日に出願された米国特許出願第17/523,185号「交換可能なコリオリ流量センサ用の重いクレードル」の一部継続であり、2021年11月2日に出願された米国仮特許出願第63/274,841号に対する米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張する。本出願はまた、2022年3月23日に出願された米国特許出願第17/702,554号「異なる共振周波数を有するコリオリ質量流量センサ」の一部継続であり、これは、2020年4月10日に出願された米国特許出願第16/846,061号「異なる共振周波数を有するコリオリ質量流量センサ」の継続出願である。前述の全ての主題は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、コリオリ流量センサに関する。
【背景技術】
【0003】
多くのアプリケーションでは、制御された流体の流れを必要とする。流量プロセスシステムは、通常、流体の流量を測定するためのいくつかの流量センサを含む。コリオリ流量センサは、センサを通って流れる流体のコリオリ効果によって引き起こされる振動に基づいて、流体の流量を測定する。しかし、クロストークまたは相殺的干渉効果を低減するために、従来の流量センサは大きな質量に取り付けられることがあり、流量センサ自体を重いまたは厚い材料から構成することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの従来の設計は高価となることがあり、単回使用または使い捨て用途には適していない。また、金属筐体または金属部品を有する流量センサの滅菌は、典型的には化学物質を使用して実施されるが、これはそれほど効果的ではなく、流量センサの交差汚染を引き起こす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
図および以下の説明は、例示のためのみの、好適な実施形態に関する。以下の説明から、本明細書に開示される構造、および方法の代替的な実施形態は、特許請求されているものの原理から逸脱することなく、採用され得る実行可能な代替として容易に認識されることに留意されたい。
【0006】
本開示の実施形態は、添付の図面の実施例と併せて、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲からより容易に明らかになる他の利点および特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】コリオリ流量センサを示す。
図2】対応するクレードルに挿入されたコリオリ流量センサを示す。
図3】ガンマ線照射によるコリオリ流量センサの滅菌を検証するための試験装置を示す。
図4A】コリオリ流量センサおよび対応するクレードルの斜視図を示す。
図4B】コリオリ流量センサの断面図を示す。
図4C】クレードルに固定されたコリオリ流量センサの斜視図を示す。
図4D】クレードルに固定されたコリオリ流量センサの上面図、正面図、および側面図を示す。
図5A】クレードルの上面斜視図を示す。
図5B】クレードルの底面斜視図を示す。
図6】スキッドに取り付けられたクレードルを示す。
図7A】コリオリ流量センサおよび対応するクレードルの別の実施形態の斜視図を示す。
図7B】コリオリ流量センサおよび対応するクレードルの別の実施形態の斜視図を示す。
図8A】コリオリ流量センサおよび対応するクレードルのさらに別の実施形態の斜視図を示す。
図8B】コリオリ流量センサおよび対応するクレードルのさらに別の実施形態の斜視図を示す。
図9A】コリオリ流量センサおよび対応するクレードルのさらに別の実施形態の斜視図を示す。
図9B】コリオリ流量センサおよび対応するクレードルのさらに別の実施形態の斜視図を示す。
図10】コリオリ流量センサを含む流量測定システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、コリオリ流量センサ150を示す。コリオリ流量センサ150は、センサを通って流れる流体のコリオリ効果によって引き起こされる振動に基づいて流体の流量を測定する装置である。流量センサ150は、入口(図1では隠れている)、フローチューブ154(またはいくつかの設計では2つ以上のフローチューブ)、および出口156を含む。これは、流量センサ150を通る流体のための流路を提供する。フローチューブ154は、例えば、磁石およびコイル157によって駆動されるように振動することができる。流体がフローチューブ154を通って流れるにつれて、コリオリ力はフローチューブのねじれ振動を生成し、フローチューブの振動の位相シフトをもたらす。流体の流れはまた、フローチューブの共振周波数を変化させる。流量センサ150は、位相シフトおよび/または共振周波数の変化を検知できる電気信号を生成する変換器を含む。これらの信号は、流体の質量流体流量および/または密度を決定するために処理され得る。
【0009】
コリオリ流量センサは、広い動作範囲にわたって良好な精度を有することが望ましい。その結果、フローチューブは、高いヤング率(引張係数)、例えば、少なくとも50GPaのヤング率を有する材料から構成され得る。フローチューブは、金属フローチューブであってもよい。それらは316、316L、304または304Lステンレス鋼のようなステンレス鋼から構成されてもよい。他の使用可能な金属としては、ハステロイ、モネル、ニッケル、チタン、タンタルが挙げられる。ジルコニウムなどの非金属も使用することができる。表1は、いくつかの異なる材料のヤング率を一覧にしている。
【0010】
【表1】
【0011】
コリオリ流量センサは、直径1/4インチ(0.64cm)のフローチューブの場合、低い側では25ml/分、または20ml/分、または15ml/分以下、高い側では最大4000ml/分、または5000ml/分以上の動作範囲を有し得る。動作範囲は、様々なサイズのフローチューブによって異なる。直径2インチ(5.08cm)のフローチューブは、最大350l/分以上の動作範囲を有し得る。動作範囲は、最大流量を最小流量で割った比率であるターンダウン比によって特徴付けることができる。流量センサは、動作範囲にわたって実際の流量の+/-1%の精度を有することができる。
【0012】
コリオリ流量センサは、使い捨てまたは単回使用するように設計されている。したがって、チューブ154は、筐体130内に入れられる。筐体130は、図2に示されるように、取り付け構造上の所定の位置で固定および固定解除され得る。図2は、クレードル100内の所定の位置に固定されたコリオリ流量センサ150を示す。ハンドル159は、流量センサ150をクレードル100に挿入し、かつ流量センサをクレードルから取り外すために使用され得る。図2において入口152および出口156は見ることができるが、フローチューブはクレードル100内にあるため見ることができない。この例では、固定機構は、4つのつまみねじ142である。筐体130は、クレードル100内外にスライドするように成形される。
【0013】
コリオリ流量センサ150はまた、ガンマ線照射による滅菌を可能にするように設計される。筐体130の一部は、ガンマ線透過性材料から構成され、それはガンマ線照射の減衰が低い材料である。図1において、サイドパネル135は、ポリカーボネートまたは他の種類のプラスチックである。その結果、フローチューブ154の内部は、ガンマ線照射によって滅菌され得る。十分なガンマ線照射がフローチューブの内部に到達することを可能にするために、サイドパネル135は十分に薄く、かつフローチューブ154の壁は十分に薄い。例えば、サイドパネル135は、ガンマ線照射を容易に通すポリカーボネートであってもよく、フローチューブは、0.020インチ(0.05cm)以下の壁厚を有してもよい。フローチューブのサイズによって壁厚は変わる。以下の表2は、異なるサイズのシームレスステンレスフローチューブの壁厚を示す。最大壁厚は、表2に示されるものの約2倍であってもよい。
【0014】
【表2】
【0015】
コリオリ流量センサ150はまた、キャリブレーションデータまたはコリオリ流量センサのための他の種類のデータを格納するために使用されるメモリを含む。ガンマ線滅菌を使用する場合、このメモリはガンマ線に安定なメモリであってもよい。
【0016】
図3は、ガンマ線照射を使用したコリオリ流量センサの滅菌を検証するための試験装置を示す。明確にするために、図3は、フローチューブ154のみを示し、筐体130は示していない。ガンマ線量計は、フローチューブ154の内側に示された位置で配置される。プラスチック筐体130を含むコリオリ流量センサは、ガンマ線照射によって照射される。線量計は、十分な放射線がフローチューブ154の内部に到達して流量センサを滅菌することを示す。筐体130のプラスチックの壁およびフローチューブ154の壁は、十分なガンマ線照射を通すのに十分な薄さである。
【0017】
いくつかの設計において、コリオリ流量センサは、例えば、エチレンオキシド洗浄、水酸化ナトリウム洗浄、またはX線滅菌などの他の方法によって滅菌することもできる。コリオリ流量センサが複数回使用される場合(例えば、多目的使用(multi-use)用途または連続使用用途)、使用の間に滅菌されてもよい。コリオリ流量センサを取り外す必要を回避するために、クリーンインプレース(clean-in-place)プロセスまたはスチームインプレース(steam-in-place)プロセス用に設計されていてもよい。したがって、同じ流量センサは、単回使用用途、多目的使用用途、および連続使用用途での使用に適し得る。
【0018】
図は、コリオリ流量センサの例を示すが、他のタイプのコリオリ流量センサもまた使用され得ることを理解されたい。チューブの数および形状、チューブおよび流量センサの材料および構造、並びに入口および出口の配置はすべて、コリオリ流量センサの特定の設計に応じて変更されてもよい。コリオリ流量センサは、1つのフローチューブ、または2つ以上のフローチューブを含んでもよい。フローチューブは、例えば、Uチューブ、Vチューブ、オメガチューブ、または直線チューブなど、異なる流量センサにおいて異なる形状を有してもよい。通常、コリオリ流量センサは、1/16インチ(0.16cm)から2インチ(5.08cm)までのホースバブまたはトライクランプ継手との接続でサイズが決まる。他のタイプの継手もまた、コリオリ流量センサに使用され得る。これらの流量センサの典型的な流量範囲は、最小(1/16インチ(0.16cm)ホースバルブ接続)サイズで0.05gm/分~0.5gm/分から、最大(2インチ(5.08cm))サイズで10kg/分~350kg/分の範囲である。典型的な精度は、実際の測定値の0.1%~1.0%の範囲である。
【0019】
図4~5は、コリオリ流量センサ150および対応するクレードル100の例示的な実施形態の異なる図を示す。図4は、コリオリ流量センサ150およびクレードル100の両方を示す。図4Aは分解図であり、図4Bは流量センサのみを示し、図4Cは組み立てられたシステムを示し、図4Dは組み立てられたシステムの上面図、正面図、および側面図を示す。図5Aおよび図5Bは、クレードル100および固定機構140のみを示す斜視図である。
【0020】
流量センサ150は、図4Bの断面に見ることができる。流量センサ150は、入口152、フローチューブ154(またはいくつかの設計では2つのフローチューブ)、および出口156を含む。コリオリ流量センサは、フローチューブの振動の変化に基づいて動作するため、流体の流れ以外の発生源によって引き起こされる振動効果は、不正確さをもたらす可能性がある。例えば、流量センサおよび他のデバイスが共通の支持構造に取り付けられている場合、ポンプおよび他のデバイスからの振動は、支持構造を介して流量センサに機械的に結びつく可能性がある。フローチューブの振動はまた、周囲の支持構造への共振結合を介してゆがめられてもよく、そうでなければ変化させられてもよい。
【0021】
ゼロドリフトはそのような効果の1つである。コリオリ流量センサは、流量を測定していないときでも、電気的に電源が入っている。したがって、コリオリフローチューブに流れがポンプで送られたり流れたりしていない場合、チューブは振動を続ける。時にはこれらのチューブは空であり、時にはこれらのチューブ内には液体がある。ゼロドリフトは、実際の流れがない場合に発生する最小限の流量を示す現象である。ゼロドリフトの1つの例は、コリオリフローチューブに休眠(dormant)液が残っていて、一定量のスロッシングが発生する場合である。この極小の流量は非常に小さく、通常は各コリオリフローセンサの最小流量の非常に小さな割合である。さらに、ポンプおよびバルブなどの外部機械装置からの振動もまた、コリオリ流量センサからのアナログまたはデジタル出力信号に干渉し、それに寄与することにより、ゼロドリフトを引き起こす。
【0022】
ゼロドリフトを減らす1つの方法は、流量センサの質量を増加させることである。より多くの質量は、外部の機械的振動の干渉を抑制し、また、より重い質量のために休眠液のスロッシングが抑制される。
【0023】
しかし、いくつかの用途において、コリオリ流量センサは恒久的ではない。それらは、かなり定期的に入れ替えることが想定されている。単回使用、または使い捨て可能であると見なされることもある。単回使用または使い捨てのコリオリ流量センサは、バイオ医薬品および製薬業界で使用され、Covid-19のワクチンを含むワクチン、細胞および遺伝子治療用の有効医薬成分、および核医薬(nuclear medicine)を製造する。
【0024】
このようなケースでは、コリオリ流量センサをできるだけ軽量かつ安価にすることが望ましいため、大型で大規模なコリオリ流量センサを作ることは望ましくない。さらに、いくつかの用途では、流量センサの滅菌を必要とする場合もある。ガンマ線照射は、流量センサを滅菌するために使用されてもよく、この場合、流量センサは、例えば、特定のバイオ医薬品用途における滅菌に使用される照射レベルであり得る、最小の25kGyまたは50kGyまたは65kGyのガンマ線照射が可能な材料から構成される。
【0025】
本明細書に示される例において、コリオリ流量センサ150の有効質量は、使用中に重いクレードル100に固定することによって増加する。クレードル100は、好ましくはコリオリ流量センサの少なくとも10~30倍の質量を有する。例えば、典型的なコリオリ流量センサは、0.2kg~3kgの範囲の質量を有してもよく、次いで、重いクレードルの典型的な質量は、5kg~80kgでもよい。
【0026】
クレードル100は、コリオリ流量センサ100のため取り付け構造114(図5Aを参照)を有し、固定機構140は、取り付け構造上の所定の位置でコリオリ流量センサを固定および固定解除するために使用される。固定機構は、固定されたときに、(図4Aに示すように)コリオリ流量センサ150およびクレードル100が単一の本体として一緒に振動するのに十分な固定力を生成する。
【0027】
図4~5の例において、クレードル100は、クレードルの大部分の質量を有する長方形の金属カラー110を含む。カラー110は、図5で最も目に見える、内側のへり(lip)114を有する長方形の開口部を有する。へりは長方形かつ環状でもある。流量センサ150は、リッジ158を有するプラスチックハウジングを含む。リッジ158は、金属カラー110の開口部に適合し、図5Aに示されるへり114に押し付ける。固定機構140は、リッジ158に力を加えて、へり114に対してリッジを剛性的に保持する。フローチューブ154は、へり114の環状開口部を通って突出する。
【0028】
この例において、固定機構140は、つまみねじ142を使用して力を生む。締め付けると、つまみねじ142はピン144に圧力を加え、次に、金属カラー110の内側のへり114にリッジ158を押し付ける。つまみネジは、特定の量の力を加えるように設計されている。示される例において、力は長方形の形状に配置された4つの固定ポイントに加えられるが、他の配置も可能である。加えられる力は、カラー110に対する流量センサ150の振動を適切に低減するのに十分な大きさでなければならない。その結果、流量センサ150およびクレードル100は、単一の本体として振動し、クレードル100は、その2つが互いに振動するのではなく、流量センサ150の質量を効果的に増加させる。例えば、つまみねじ142のそれぞれは、3ニュートンメートル(Nm)以上の力を加えて、流量センサ150およびクレードル100を互いに剛性的に保持してもよい。これは、すべてのつまみネジで12Nm以上の総合力である。他の設計において、より低い固定力、例えば10Nm以上、または5Nm以上が許容されてもよい。
【0029】
均一な力を適用することも重要である。4つの固定ポイントに同じ力を加えることで、加えられる圧力のバランスをとることができる。異なる固定ポイントの力が同じでない場合、センサは不均衡になり、ゼロドリフトおよび結果として生じる不正確さが高くなる。図4~5において、同じ量の力が各固定ポイントに加えられるべきである。例えば、各固定ポイントに加えられる力は、互いの15%以内、またはより好ましくは互いの10%以内、5%以内、または1%以内とすることができる。
【0030】
つまみねじ142を使用することの1つの利点は、固定機構が手動で操作され得ることである。つまみねじ142は緩められてもよく、ピン144は回転または旋回して流量センサ150を解放し、流量センサは取り外され、別の流量センサと交換されてもよい。これにより、使い捨ておよび単回使用の流量センサを含む、流量センサの交換が容易になる。一部の単回使用または使い捨て用途において、流量センサを1分以内に取り外して交換することができる。
【0031】
クレードル100はまた、コリオリ流量センサの残りの部分を入れる筐体120を含む。筐体も質量を追加する。図4~5に示す筐体はケーブル穴122(図5Bを参照)を含み、後部接続ケーブルを有するセンサに関して、流量センサに電源およびデータの接続を可能にする。図1は、上部取り付けケーブルの接続を示す。
【0032】
図6は、スキッド670に取り付けられたクレードル100を示す。スキッドは、機器を取り付けることができる機械的骨組みである。この例において、クレードル100は、金属板またはパネル675に取り付けられており、それはスキッド670に取り付けられている。振動減衰ガスケット680は、クレードル100とプレート675との間に配置される。垂直方向では、クレードル100は、クロス部材677A(Lブラケット)および677B(スキッドのクロスビーム)によって支持される。振動減衰ガスケット687Aおよび687Bは、クレードル100と、クロス部材677Aおよび677Bとの間に配置される。
【0033】
重いクレードル100は、スキッド670のいかなる部分にも直接接触しないことに留意されたい。それは振動ガスケット680、687によって常に隔てられている。ガスケット680、687は、クレードル100とスキッド670(およびスキッドに取り付けられた他の構成要素)との間に振動絶縁を提供する。例えば、振動ガスケットは、低周波振動を著しく減衰させることができる。
【0034】
重いクレードル100は、コリオリ流量センサ150に質量を追加し、振動ガスケット680、687は、クレードルおよび流量センサを流量プロセスシステムの残りの部分から隔離する。その結果、ゼロドリフトが減少する。例えば、より小さいサイズのセンサ(例えば、1/2インチ(1.27cm)以下のチューブ)の場合、ゼロドリフトは100g/分から2.5g/分に減少した。これらのセンサの典型的な最小流量は500g/分であるため、ゼロドリフトは最小流量の1%未満に低減される。より大きなセンサ(例えば、3/4インチ(1.91cm)および1インチ(2.54cm)のチューブ)の場合、ゼロドリフトは、200g/分から25g/分に減少した。これらのセンサの典型的な最小流量は6kg/分であるため、ゼロドリフトは最小流量の1%未満に低減される。
【0035】
図7~9は、コリオリ流量センサ750、850、950および対応するクレードル700、800、900のさらなる実施形態の斜視図を示す。図7において、流量センサ750は垂直構成であり、前の図の流量センサはインライン構成である。インライン構成において、入口152および出口156は互いに一直線に並んでいるが、流れは、通常、フローチューブを通って流れるために迂回させられる。図7の垂直構成において、入口752および出口756は互いに一直線になっていないが、流れはフローチューブにより沿っている。クレードルおよび取り付け構造は、インラインコリオリ流量センサおよび垂直コリオリ流量センサの両方を含む複数の異なる流量センサに対応するように設計されてもよい。さらに、図7において、固定ポイント740は、側面に沿ってではなく、角にある。
【0036】
図8において、クレードル800は、カラー810を含むが、筐体を有しない。流量センサ850は、図8Bに示されるように、カラー810を通って突き出ており、カラーの下方に見える。
【0037】
図9において、コリオリ流量センサは、入口952および出口956を備えたインライン構成を有する。また、それは一体型(integrated)ダンプナ962および一体型圧力センサ964を含む。ダンプナ962は、流量センサの入口側に位置する。一体型ダンプナは、例えば、脈動ポンプによって引き起こされ得るような、流体の流れ自体の振動を低減する。例示的なダンプナは、米国特許出願第16/994,611号に記載されている「流量計測システムにおける流量ダンプナ」であり、その全体が参照により組み込まれる。ダンプナおよび圧力センサを一体化すると、入口または出口のチューブに接続されている独立したダンプナおよび圧力センサと比較して、全体的なサイズおよびスペースの要件が低減される。また、必要なチューブの量を減らし、それによってデッドボリュームの量を減らす。デッドボリュームとは、チューブ、センサ、およびその他の構成要素に含まれる液体の体積である。システムがバッチ間でフラッシュされると、この体積は失われ、使用可能な製品に変換されない。デッドボリュームは廃棄される製品であるが、高価であることがあるため、デッドボリュームを減らすことは、医薬品製造において重要である。一体化された圧力センサは、実際のフローチューブに近い圧力を測定するため、コリオリ流量センサをキャリブレーションするためのより正確な圧力読み取り値を生成することもできる。
【0038】
図10は、上述したように、単回使用または使い捨ての流量センサ1010、1020、1030を使用する流量測定システム1000を示す図である。流量測定システム1000はまた、2つのポンプ1013および1023、3つのコントローラ1015、1025、および1035、3つのダンプナ1017、1027、および1037、並びに混合マニホールド1040を含む。流量測定システム1000は、プロセススキッド、例えば、バイオ医薬品スキッドまたは医薬品スキッドの一部であることができる。ポンプ1013、1023は、好ましくは、流量センサ1010、1020の近くに配置され、流量センサとインラインである。ダンプナ1017、1027は、ポンプ1013、1023から流量センサ1010、1020へのクロストークを軽減するために使用されるが、用途によっては必要とされない場合がある。
【0039】
2つの流体1050および1060は、流量測定システム1000に入る。一方の流体1050は、ポンプ1013に入り、そのポンプは、流体をダンプナ1017および流量センサ1010を通して混合マニホールド1040に送る。他方の流体1060は、ポンプ1023に入り、そのポンプは、流体1060をダンプナ1027および流量センサ1020を通して混合マニホールド1040に送る。流量センサ1010、1020は、それぞれ、流体1050および1060の流量特性(例えば、質量流量、体積流量、流量密度など)を測定する。
【0040】
2つの流体1050、1060は、混合マニホールド1040で組み合わされ、2つの流体の混合物1070は、マニホールドから流出する。いくつかの実施形態において、混合マニホールド1040はまた、流体1050および1060と混合または反応して流体1070を生成することができる他の流体または物質を受け取る。混合マニホールド1040は、流体1070をダンプナ1037および流量センサ1030を通してポンプで送るポンプを含んでもよい。流量センサ1030は、流体1070の流量特性を測定する。
【0041】
流量センサ1010、1020、1030は、同時に動作することができる。いくつかの実施形態において、流量センサ1010、1020、および1030のうちの少なくとも2つは、同様の動作範囲を有する。コントローラ1015、1025、1035は、流量センサ1010、1020、1030から信号を受信し、信号に基づいて流量解析を行う。流量解析は、例えば、フローチューブの位相シフトを表す信号に基づいて流量を決定すること、フローチューブの共振周波数の変化を表す信号に基づいて流量密度を決定すること、流量密度の変化に基づいて流体中の気泡を検出すること、および流体の他の流量特性を決定することを含む。
【0042】
詳細な説明は多くの詳細を含んでいるが、これらは本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、単に異なる例を説明するものとして解釈されるべきである。本開示の範囲は、上で詳細に論じられていない他の実施形態を含むことを理解されたい。当業者にとって明らかであろうさまざまな他の修正、変更および変形は、添付の特許請求の範囲において定義される趣旨および範囲から逸脱せずに、本明細書で開示される方法および装置の配置、動作および詳細においてなされ得る。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの法的同等物によって決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
【外国語明細書】