(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155910
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】異方性表面構造を有するチューブ状のロボット装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/90 20130101AFI20231016BHJP
A61F 2/95 20130101ALI20231016BHJP
【FI】
A61F2/90
A61F2/95
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023064043
(22)【出願日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】22167673
(32)【優先日】2022-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.SMALLTALK
(71)【出願人】
【識別番号】598165611
【氏名又は名称】マックス-プランク-ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】チャンルー ワン
(72)【発明者】
【氏名】ウェンキ フー
(72)【発明者】
【氏名】メティン シッチ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA32
4C267AA44
4C267BB06
4C267BB07
4C267BB11
4C267BB40
4C267BB44
4C267BB56
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4C267EE01
4C267GG03
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4C267GG16
4C267GG32
4C267GG33
4C267HH08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】血管システムの血管に挿入するための中空円筒状弾性基礎構造を有するチューブを提供する。
【解決手段】チューブ100は、チューブ100の円周方向とチューブの長手方向との間に幾何学的異方性を有する外部異方性表面構造104を有する。異方性表面構造104は、異方性表面構造104と血管の内側表面との間に異方性摩擦を確立するように構成されている。異方性摩擦は、チューブ100がチューブ100の中央長手方向の体軸106の周りに回転した場合に、チューブ100の表面推進力となる。チューブ100は、チューブ100の円周に配分された磁性体108であって、外部磁場内において、チューブ100の中央長手方向の体軸106の周りに、チューブ100の回転を確立するように構成された磁性体108を更に有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管システム(202)の血管(200)に挿入するための中空円筒状弾性基礎構造(102)を有するチューブ(100)であって、前記弾性基礎構造(102)は、前記チューブ(100)の外部異方性表面構造(104)と前記血管(200)の内部表面との間に接触を確立するように構成された半径方向弾性力(Fn)を提供するように構成されており、
前記外部異方性表面構造(104)は、前記チューブ(100)の円周方向と前記チューブ(100)の長手方向との間に幾何学的異方性を有しており、前記外部異方性表面構造(104)は、前記外部異方性表面構造(104)と前記血管(200)の内部表面との間に接触によって異方性摩擦を確立するように構成されており、前記異方性摩擦は、前記チューブ(100)の中央長手方向体軸(106)の周りに回転されると、前記チューブ(100)の表面推進力となり、
前記チューブ(100)は、前記チューブ(100)の円周に配分された磁性体(108)であって、外部磁場内において、前記チューブ(100)の中央長手方向の体軸(106)の周りに、前記チューブ(100)の回転を確立するように構成された磁性体を更に有するものである
チューブ。
【請求項2】
請求項1記載のチューブ(100)において、前記異方性表面構造(104)は、前記弾性基礎構造(102)に付け加えられた1つ以上の突起および/または前記弾性基礎構造(102)に挿入された1つ以上の凹部を有するものであるチューブ。
【請求項3】
請求項1または2記載のチューブ(100)において、前記異方性表面構造(104)は、前記弾性基礎構造(102)の周りに長手方向に延伸する1つ以上の螺旋構造を有するものであるチューブ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項記載のチューブ(100)において、前記磁性体(108)は、前記弾性基礎構造(102)および/または前記異方性表面構造(104)によって構成されるものであるチューブ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載のチューブ(100)において、前記基礎構造(102)は、複数のセル(122)を持つメッシュ構造(120)を有するものであるチューブ。
【請求項6】
請求項5記載のチューブ(100)において、前記チューブ(100)は、前記チューブ(100)を通して血流を導くように構成された連続内部層(112)を更に有しており、例えば、前記連続内部層(112)の多孔性は70%未満、好ましくは50%未満、更に好ましくは0%に等しく、および/または前記メッシュ構造(120)のセクション内の前記メッシュ構造(120)のセル(122)の空所の累積面積と前記メッシュ構造(120)の各セクションの全面積との比によって定義される前記メッシュ構造(120)の多孔性は、前記チューブ(100)を通して血流を導くように構成されており、例えば、前記メッシュ構造(120)の多孔性は、70%未満、好ましくは50%未満であるチューブ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項記載のチューブ(100)において、前記弾性基礎構造(102)は、前記チューブ(100)の直径(dr)を前記血管(200)の変化する直径(φl)に受動的に適応させるように構成されており、その場合、前記血管(200)の直径は所定の直径範囲内で変化するものであるチューブ。
【請求項8】
請求項7記載のチューブ(100)において、直径の所定範囲は0.002mm~25mm、好ましくは0.01mm~10mm、更に好ましくは1mm~2mmであるチューブ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項記載のチューブ(100)において、前記チューブ(100)は弾性素材製、例えばエラストマー製であるチューブ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項記載のチューブ(100)において、前記チューブ(100)は折り畳み式構造(130)を更に有しており、前記折り畳み式構造(130)は、医療用の薬品(136)を保持するように構成された閉じた保持セクション(132)を提供するものであり、前記折り畳み式構造(130)は、所定の内部エネルギーレベルに達した際に、前記閉じた保持セクション(132)を開き、前記薬品(136)を放出するように構成されており、例えば、前記折り畳み式構造(130)は、所定の形状記憶転移温度に達した際に、前記閉じた保持セクション(132)を開き、前記薬品(136)を放出するように構成された形状記憶素材製であるチューブ。
【請求項11】
前記血管システム(202)の血管(200)に挿入される請求項1~10のいずれか一項記載の前記チューブ(100)を作動および制御するように構成された作動/制御装置(150)であって、前記作動/制御装置(150)は、磁場を発生させるように構成された磁石(156)を移動させるように構成された移動装置(152)を有しており、
前記磁場は、前記チューブ(100)の中央長手方向体軸(106)の周りに前記チューブ(100)の回転を誘導するように構成されており、
前記移動装置(152)は、前記血管(200)に沿って前記磁石(156)を移動させ、前記血管(200)を通して前記チューブ(100)の移動を磁気的に加勢するように構成されているものである
作動/制御装置。
【請求項12】
請求項11記載の作動/制御装置(150)において、前記移動装置(152)は、ロボットアーム(154)を有しており、前記ロボットアーム(154)の遠位端には前記磁石(156)が搭載されており、前記磁石(156)は、例えば、磁場を発生させるために回転される永久磁石である作動/制御装置。
【請求項13】
請求項11または12記載の作動/制御装置(150)において、前記作動/制御装置(150)は、前記チューブ(100)が有する折り畳み式構造(130)の内部エネルギーレベルを、前記折り畳み式構造(130)の閉じた保持セクション(132)を開けるのに必要な所定の内部エネルギーレベルまで高める(所定のエネルギーレベルに達する)ように構成されたエネルギー源(158)、例えば、前記チューブ(100)が有する折り畳み式形状記憶構造(130)の無線周波数誘導加熱を、前記折り畳み式形状記憶構造(130)の閉じた保持セクション(132)を開けるのに必要な所定の形状記憶転移温度まで高める(それが所定の形状記憶転移温度に達するようにする)ように構成された無線周波数コイル(158)を更に有している作動/制御装置。
【請求項14】
システムであって、
請求項1~10のいずれか一項記載の前記チューブ(100)および請求項11~13のいずれか一項記載の前記作動/制御装置(150)を有するものである
システム。
【請求項15】
請求項11~13のいずれか一項記載の前記作動/制御装置を用いて、血管システム(202)の血管(200)に挿入された請求項1~10のいずれか一項記載の前記チューブ(100)を作動および制御する方法であって、
前記磁石(156)を移動させ、前記血管(200)に沿って磁場を発生させ、前記血管(200)を通して前記血管システム(202)内の所定の目的地へ前記チューブ(100)の移動を磁気的に加勢する工程を有するものである
方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法において、前記チューブ(100)が有する折り畳み式構造(130)の内部エネルギーレベルを増大させるように構成されたエネルギー源(158)を作動する工程を更に有しており、前記折り畳み式構造(130)は、医療用の薬品(136)を保持するように構成された閉じた保持セクション(132)を有しており、折り畳み式構造(130)の内部エネルギーレベルは、例えば、前記チューブ(100)が有する折り畳み式形状記憶構造(130)を無線周波数で誘導して加熱するように構成された無線周波数コイル(158)を作動することにより、所定の内部エネルギーレベルまで増大され、それにより前記閉じられた保持セクション(132)が開けられるものであり、前記折り畳み式形状記憶構造(130)は、医療用の薬品(136)を保持するように構成された閉じた保持セクション(132)を有しており、前記折り畳み式形状記憶構造(130)は、所定の形状記憶転移温度まで加熱され、それにより前記閉じられた保持セクション(132)が開けられるものである方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小規模ロボット装置の分野に関する。特に、本発明は、血管システムの血管に挿入するための中空円筒状弾性基礎構造を有するチューブ、当該チューブを作動および制御するように構成された作動/制御装置、当該チューブおよび作動/制御装置を有するシステム、並びに当該作動/制御装置を用いて当該チューブを作動および制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカテーテルによる血管システムへのアクセスは、低侵襲的な診断および標的治療手順において新たな機会を提供し、ここ数十年の間、臨床的に広範に使用されている。マイクロカテーテルは、開腹術と比べ、種々の低侵襲的血管内手術および顕著な健康上の利点を可能にしている。しかし、動脈穿刺部位から遠く離れた曲がりくねったルートを有する遠位の血管部位は、安全なカテーテルのアクセスにとって依然として困難な問題を抱えている。従って、低侵襲的治療、特に遠位動脈部位の治療に使用可能な更に効果的な医療器具に関し、未だ達成されていないニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
血管システムの血管へ挿入されるチューブ、そのチューブを作動および制御するように構成された作動/制御装置、斯かるチューブおよび作動/制御装置を有するシステム、並びに作動/制御装置を用いてチューブを作動および制御する方法を提供するのが、本発明の目的である。
【0004】
1つの態様において、本発明は、血管システムの血管へ挿入される中空円筒状の基礎構造を有するチューブに関するものである。弾性基礎構造は、チューブの外部異方性表面構造と血管の内部表面との間の接触を確立させる目的で、半径方向の弾性力を提供するように構成されている。異方性表面構造は、チューブの周囲方向とチューブの長手方向との間に幾何学的異方性を有するものである。異方性表面構造は、異方性表面構造と血管の内部表面との間に、接触によって異方性摩擦を確立するように構成されている。異方性摩擦は、チューブを中央長手方向体軸の周りに回転させると、チューブの表面推進力となる。チューブは、当該チューブの周りに分散された磁性体であって、チューブを外部磁場内でチューブの中央長手方向体軸の周りに回転させるように構成された磁性体を更に有している。
【0005】
異方性表面構造と磁性体との組み合わせにより、新しいタイプの推進システムが提供される有益効果が、諸例により示されることであろう。斯かる推進システムにより、チューブが血管システムの血管を活発に移動することが可能となる。チューブは、ロボット装置として使用可能であり、斯かるロボット装置は、血管内に挿入された後、その血管を通して移動可能である。例えば、チューブは、血管を通って、血管システム内の標的位置へ移動できる。チューブは、例えば、血管を通して、血流の下流へも上流へも移動可能である。
【0006】
異方性と言う用語は、幾何学的異方性に関連している。従って、ロボット装置の異方性表面構造は、幾何学的異方性を有する表面構造である。異方性表面構造の場合、異方性表面構造の幾何学的異方性は、ロボット装置の円周方向とロボット装置の長手方向との間の幾何学である。
【0007】
外部磁場が適用されると、当該外部磁場により誘導される磁気力およびチューブの円周部分に分散された磁性体に作用する磁気力により、チューブは中央長手方向体軸の周りに回転される。チューブの回転は、幾何学的異方性を有するチューブの異方性表面構造と血管の内部表面との間の接触により、異方性摩擦を引き起こす。異方性摩擦は、チューブの表面推進力となる。幾何学的異方性は、チューブの円周方向とチューブの長手方向との間の異方性であるので、結果的に生じる摩擦は、チューブの円周方向およびチューブの長手方向に関する異方性である。チューブの円周方向の摩擦は、チューブの長手方向の摩擦より大きい。チューブが回転された場合、二つの方向における摩擦の違いにより、チューブの長手方向に推進力が生じる。チューブは、回転方向次第で、血管を通して、例えば、前進または後退する。
【0008】
外部磁場を発生させる磁石は血管に沿って移動され、血管を通してチューブの動きを磁気的に加勢する。磁石が血管に沿ってチューブの前方に移動されると、追加の磁気牽引力がチューブに作用し、磁石の背後にあるチューブを血管に沿って牽引する。斯かる磁気牽引力は、チューブの磁気的誘導回転による表面推進力に加えて、チューブの推進力をもたらす。
【0009】
更に、チューブの半径方向弾性力による、チューブの異方性表面構造と血管の内部表面との間の接触は、回転が停止された場合に、血管内の現在位置でチューブを固定する作用をもたらす。回転は、例えば、チューブを回転させるように構成された外部磁場を適用することにより実行される。例えば、回転する外部磁場が適用される。チューブを回転させるように構成された外部磁場が適用されない場合、チューブの回転は、例えば、停止される。従って、チューブの推進システムは、チューブの推進機構を実行するのみならず、それと同時に、血管内の適切な位置でチューブを固定する固定機構も実行する。
【0010】
中央脳動脈のM4部分において配置され、積極的に誘導され、医療機能に使用され、回収されるチューブ形態のロボット装置の有益効果が、諸例により示されることであろう。形状適応的に制御されるチューブの移動が、生理学的状態を模倣する模型により図示されている。例えば、チューブは、例えば1.5mmから1mmに収縮する内腔直径、例えば3mmほどの細く曲がりくねった内腔の曲率半径、例えば120度まで増大する内腔分岐角、例えば26cm/sまで上昇する脈動流速に適応するように構成できる。当該チューブは、例えば、磁気作動が停止された場合でも、血流に抵抗できるものである。斯かる移動能力は、豚の生体外動脈で確認されている。更に、異型体のチューブは、要求次第で局所において血栓溶解用に組織プラスミノーゲン活性化因子を放出できる、および/またはフローダイバーターとして機能できる。斯かる特徴は、例えば、急性虚血性脳卒中、動脈瘤、動静脈奇形、硬膜動静脈瘻孔、および脳腫瘍の治療に使用可能である。更に、斯かる機能は、新しい遠位血管内手術においてチューブの使用を簡便化するであろう。
【0011】
血管内を移動するように構成されるチューブ形態のロボット装置は、カテーテル使用の際の欠点を回避できる。橈骨動脈または大腿骨動脈などの動脈穿刺部位から離れた部位のアクセスルート、曲がりくねった血管、薄い血管壁を有する小さい血管は、中央脳動脈のM4部分などの部位で、手動によりまたはロボット挿入によりカテーテルを安全に誘導し押圧する場合、損傷を引き起こすことなく実行するのに更に多くの問題をもたらし得る。更に、血栓症や動脈硬化症などの血管障害は、動脈における血流を減少または停止させるので、血流を利用してカテーテルを標的部位へ進行させる方法を実行不可能にする。
【0012】
例えば、遠位の皮質動脈は、種々の疾病および斯かる部位の病変、例えば、急性虚血性脳卒中(AIS)、動脈瘤、脳動静脈奇形(CAVM)、硬膜動静脈瘻孔(dAVFs)、脳腫瘍などを治療する場合、カテーテルによる安全かつ効果的なアクセスが今日でも限定されている。標的病変近くにカテーテル挿入で安全にアクセスするのが困難なので、治療要素/薬品、例えば、ステント、コイル、および医薬品などは、カテーテルを用いて正確かつ効果的に適用できない。従って、カテーテルを使用する治療効果が低下する。一方、遠位の病変は患者にとっては破滅的または致命的である。例えば、半球状遠位閉塞は、一般的に、部分失語症、部分的片側不全麻痺または片側感覚消失、並びに部分的または完全な半視野欠損などをもたらす。更に、最も悪性の原発脳腫瘍は大脳皮質で生じる。同様な限界が、他の遠位血管ルートでも生じる。従って、斯かる遠位血管部位における低侵襲治療用の更に効果的な医療器具に関し、未だ達成されていないニーズが存在する。斯かる遠位血管部位でも低侵襲的な治療を可能にする医療器具が、例えば、本明細書で開示されるようなチューブ形態のロボットアームにより提供可能である。
【0013】
テザーレスで小寸法の故に、アクセス困難な部位にでも進入可能なミリ/マイクロスケールの医療装置を開発する初期努力がなされた。曲がりくねった遠位血管部位において、斯かる装置は、変化する内腔直径用に形状適応を達成する必要があり、安全な局所的手術のため、たとえ外部作動が中断または停止された場合でも血流に抵抗しなければ(すなわち自動固定機能を持たなければ)ならず、屈曲したルートや分岐点を通過しなければならず、回収または間違った誘導の際に血流に逆らって移動可能でなければならない。しかし、これまでの努力は全て、斯かる要求内容の全部を同時に達成する点で限界を示すことであろう。これまでの設計のほとんどが、周囲の内腔に対して自動固定機能が欠如しており、脈動流によって押し流され得るものである点に注目されたい。斯かる押し流される装置の定着は予測不可能であり、標的でない血管や器官に集積し、それが長期的な健康リスクをもたらす可能性も存在する。
【0014】
本明細書記載のようなチューブ形態のロボット装置は、上記要求の全てを達成可能である。特に、MCAの遠位M4部分での操作が可能である。ロボット装置は、回復可能な適応移動が可能であり、例えば、血管の内腔直径が1mmの小ささ、内腔の曲率半径が3mmの小ささ、分岐角が120度まで、脈動流速度が80ビート/分(bpm)で26cm/sまで可能である。更に、ロボット装置は、外部磁気作動入力が停止した場合でも、血流に抵抗するように構成された安全な自動固定機能を提供できる。
【0015】
回復可能な適応移動は、例えば、血管の内腔直径が0.3mm(例えば、1.5mmから0.3mmに)に縮小しても達成可能である。更に、自動固定機能は、例えば、血管の内腔直径が0.3mm(例えば、0.7mmから0.3mm)に縮小しても維持可能である。
【0016】
チューブ形態の種々のロボット装置は、制御下の正確な誘導に加え、重要な医療機能をいくつか提供できることが証明されている。例えば、ロボット装置は、要求次第で、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を提供し、標的部位において血栓溶解を達成できるように構成可能である。更に、ロボット装置は、血管システムの望ましくない部位、例えば分岐点や動脈瘤へ流れる血流を調整するダイバーターとして使用されるように構成可能である。斯かる機能は、遠位の血管部位および曲がりくねった血管部位におけるAIS、動脈瘤、CAVM、dAVFs、および脳腫瘍用の新しい低侵襲性標的治療を可能にするものである。
【0017】
例えば、異方性表面構造は、弾性基礎構造上に追加される1つ以上の突起を有する。突起は、チューブの半径方向弾性力の故に、血管の内側表面に接触するようになるという有益効果が、諸例により示されることであろう。従って、突起と血管の内側表面との間の摩擦は、チューブの外側面の他のセクションと血管の内部表面との間の摩擦よりも大きい。突起と血管の内側表面との間の摩擦は、特に、血管の内部表面に接触していないチューブの外側面のセクションと比較して大きい。突起が異方性的に分散されている場合、斯かる突起によって生じる摩擦は異方性的であろう。
【0018】
例えば、異方性表面構造は、弾性基礎構造に挿入された1つ以上の凹部を有する。チューブの半径方向弾性力の故に、凹部は血管の内側表面には接触しないという有益な効果が、諸例により示されることであろう。従って、凹部と血管の内側表面との間に摩擦は生じない(チューブの外側表面の他のセクションと血管の内側表面との間には摩擦が生じる)。凹部が例えば異方性的に分散されていれば、血管の内側表面に接触しているチューブの外側表面の他のセクションによる摩擦は異方性的であろう。
【0019】
例えば、異方性表面構造は、弾性基礎構造上に追加された1つ以上の突起並びに弾性基礎構造上に挿入された1つ以上の凹部を有していてもよい。例えば、1つ以上の突起並びに1つ以上の凹部は異方性的に分散されていてもよい。
【0020】
例えば、異方性表面構造は、弾性基礎構造の周りに長手方向に延伸する1つ以上の螺旋構造を有している。1つ以上の螺旋構造により、チューブの周囲方向とチューブの長手方向との間の幾何学的異方性が実装されると言う有利な効果が、諸例により示されることであろう。1つ以上の螺旋構造は、例えば、右回りの螺旋構造であってもよい。1つ以上の螺旋構造は、例えば、左回りの螺旋構造であってもよい。
【0021】
例えば、磁気素材は、弾性基礎構造が有する。磁気素材は弾性基礎構造と一体化されていてもよいという利益効果が、諸例により示されることであろう。磁気素材は、弾性基礎構造内に分散された(例えば、均一に分散された)磁性粒子形態で一体化されていてもよい。外部磁場がチューブの中央長手方向体軸の周りに磁気素材を回転させ、それにより中央長手方向体軸の周りのチューブが回転する。
【0022】
例えば、磁気素材は、弾性基礎構造の外側表面に分散される。例えば、磁気素材は、弾性基礎構造の内側表面に分散される。チューブの中空円筒状弾性基礎構造の外側表面および/または内側表面に分散される磁気素材は、チューブの中央長手方向体軸の円周に分散されてもよい。磁気素材が外部磁場によってチューブの中央長手方向体軸の周りに回転されると、チューブは、中央長手方向体軸の周りに回転される。
【0023】
磁気素材は、例えば、磁気素材を有する塗膜形態で、弾性基礎構造の外側表面および/または内側表面に分散されてもよい。磁気素材は、例えば、磁性粒子の形態で、弾性基礎構造の外側表面および/または内側表面に分散されてもよい。磁気素材は、例えば、弾性基礎構造の外側表面および/または内側表面に沈積されてもよい。
【0024】
例えば、磁気素材は、異方性表面構造が有する。磁気素材は異方性表面構造と一体化されるという利益効果が、諸例により示されることであろう。磁気素材は、弾性基礎構造内に分散された(例えば、均一に分散された)磁性粒子形態で一体化されていてもよい。外部磁場がチューブの中央長手方向体軸の周りに磁気素材を回転させ、それにより異方性表面構造が回転し、異方性表面構造により、中央長手方向体軸の周りのチューブが回転する。
【0025】
例えば、弾性基礎構造は、複数のセルを有するメッシュ構造を有する。固形の基礎構造の代わりにメッシュ構造を使用することにより、基礎構造の弾性が増大するという利益効果が、諸例により示されることであろう。特に、チューブの外側異方性表面構造と血管の内側表面との間の接触を確立するように構成される半径方向弾性力が実装されるであろう。
【0026】
例えば、メッシュ構造は、複数の同一セルにより形成される。同一セルの使用は、基礎構造の弾性特性が中央長手方向体軸の周りに均一に(例えば、回転対称に)分散されるという利益効果を有するであろう。特に、結果的に得られる半径方向弾性力は、中央長手方向体軸に対して回転対称であろう。
【0027】
例えば、セルはダイアモンド形状のセルである。ダイアモンド形状ということは菱形のことである。ダイアモンド形状のセルは、菱形、すなわち全ての辺の長さが等しい四角形によって提供できる。セルは、例えば、1つの対称方向に平らにされた、または延伸された正六角形によって提供されてもよい。対称方向は、中央長手方向体軸に平行であってもよい。対称方向に沿って延伸された斯かる正六角形は、引き伸ばされた菱形に見えるかもしれない。
【0028】
例えば、チューブは、血流を通過させるように構成された連続内部層を更に有する。チューブは、血管内の病変部位に配置された場合、血管の病変を塞ぐチューブを通って血流を流すことにより、血流方向を変換するのに使用できるという利益効果が、諸例により示されることであろう。例えば、連続内部層の多孔性は70%未満である。例えば、好ましくは、連続内部層の多孔性は50%未満である。例えば、更に好ましくは、連続内部層の多孔性は1%未満である(例えば、0%に等しい)。
【0029】
例えば、メッシュ構造のセクション内のメッシュ構造のセルの空所の累積面積とメッシュ構造の各セクションの全面積との比によって定義されるメッシュ構造の多孔性は、チューブを通して血流を導くように構成されている。メッシュ構造の多孔性自体は、チューブ内を血流が十分に通過できるように、例えば、血管の病変を塞ぐように構成されるという利益効果が、諸例により示されることであろう。メッシュ構造自体は、血管内の病変部位に配置された場合、血管内の病変部位を塞ぐチューブを通って血流を流すことにより、血流方向を変換するのに使用できるという利益効果が、諸例により示されることであろう。
【0030】
例えば、連続内部層の多孔性は70%未満である。例えば、好ましくは、連続内部層の多孔性は50%未満である。
【0031】
例えば、弾性基礎構造は、チューブの直径を血管の変化する直径に受動的に適応させるように構成されている(その場合、血管の直径は所定の直径範囲内で変化する)。チューブは、各血管を移動する際に、変化する血管の直径に適合可能であるという利益効果が、諸例により示されることであろう。斯かる適合性の故、血管の直径が変化しても、チューブの外部異方性表面構造と血管の内部表面との間の接触が維持可能である。接触を維持することにより、血管の各セクションの直径が変化する場合でも、表面推進力は保証される。従って、チューブは、血管の直径が減少するセクションへも、血管の直径が増大するセクションへも進行可能である。
【0032】
例えば、カテーテル、例えばマイクロカテーテルを使用し、チューブを血管システムに挿入し、所定の直径範囲内の直径(弾性基礎構造が適合するように構成された直径)を有する血管の標的セクションにチューブが配置される。カテーテル、例えばマイクロカテーテルが標的位置に達すると、チューブは解放され、カテーテルとは独立に自らの力で前進する。斯かる目的のため、チューブは、上述の表面推進力を使用可能である。
【0033】
例えば、弾性基礎構造は、所定の直径範囲内の血管の直径に関して、チューブの外部異方性表面構造と血管の内部表面との間の接触を確立するための半径方向弾性力を提供するように構成されている。
【0034】
例えば、所定の直径範囲は0.002~25mmである。例えば、好ましくは、所定の直径範囲は0.01mm~10mmである。例えば、更に好ましくは、所定の直径範囲は1mm~2mmである。
【0035】
例えば、チューブは、近位の血管系で操作される、すなわち表面推進力を用いて前進させられるように構成できる。例えば、チューブは、遠位の血管系で操作できるように構成できる。
【0036】
チューブは、中央脳動脈(MCA)の遠位M4部分でさえも操作可能であるという利益効果が、諸例により示されることであろう。例えば、チューブは、MCAのM3部分まで運ばれ、それからMCAのM4セクションへ運ばれるように構成できる。MCAのM4セクション、すなわちシルビウス裂溝を出て大脳半球の凸面上に広がる血管には、カテーテル挿入が可能である。しかし、M4セクションは、上述のチューブを用いて到達可能とされるのがより好ましい。
【0037】
例えば、チューブは弾性素材製である。例えば、チューブはエラストマー素材製である。例えば、チューブは、ポリジメチルシロキサン、ゴム(例えば、シリコーンゴム)、ヒドロゲル、液晶エラストマー、ポリウレタンエラストマー、蛋白質、生体材料製、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0038】
チューブは、弾性素材を用いることにより、様々な血管の直径に適合させ、異方性表面構造と血管の内部表面との間の接触を維持するように構成できるという利益効果が、諸例により示されることであろう。更に、チューブは、血管の湾曲の周りに屈曲するように、および/または血管から分かれる分岐点へ向かって屈曲するように構成できる。
【0039】
弾性特性を有するゴム様の固形物はエラストマーと呼ばれる。ポリマー鎖は比較的弱い分子間結合により斯かる素材内で保持されるので、ポリマーはマクロ的応力に応答して延伸できる。エラストマーは、粘弾性(すなわち、粘性および弾性)並びに弱い分子間力(一般的に他の素材と比べて小さいヤング率および大きい破壊ひずみ)を有するポリマーである。
【0040】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)は、ジメチルポリシロキサンまたはジメチコンとしても知られており、シリコーンとして一般的に呼ばれるポリマーオルガノシリコン群に属する。シリコーンゴムは、シリコーンポリマーからなるエラストマーである。シリコーンポリマーは、炭素、水素、および酸素とともに珪素を有する。ヒドロゲルは、水に溶解しない架橋親水性ポリマーである。
【0041】
液晶エラストマー(LCE)は、僅かな架橋を有する結晶性ポリマーである。エラストマーのエントロピー弾性と液晶相の自己組織化を組み合わせたものである。液晶エラストマーにおいて、メソゲンは、ポリマー鎖の一部で主鎖液晶エラストマーと呼ばれるか、あるいはアルキルスペーサーを通して結合し、側鎖液晶エラストマーと呼ばれる。液晶相(LC)とは、通常の液体の特性と固体結晶の特性との間の特性を有する物質の状態を意味する。例えば、液晶は、液体のように流れるが、その分子は結晶のように配向している。
【0042】
ゴムは、天然ゴムか合成ゴムのいずれかであってよい。天然ゴムは、有機化合物イソプレンのポリマーを有する。他の化合物の僅かな不純物を更に有していてもよい。合成ゴムは、任意の人工エラストマーを意味する。石油副産物から合成されるポリマーを有していてもよい。
【0043】
ポリウレタンは、カルバメートリンクによって結合された有機単位で構成されるポリマーのクラスを意味する。蛋白質は、1つ以上のアミノ酸残基の長鎖を有する大きい生体高分子およびマクロ分子である。生体材料は、体の天然組織を増大、修復、および/または置換するための生物学的システムと相互作用するように構成された物質を意味する。
【0044】
例えば、磁性体は、チューブの周りに分散された磁気分子を有する。例えば、磁性体は、チューブの周りに分散された強磁性微粒子またはナノ粒子を有する。
【0045】
チューブの周りに分散された磁性体は、磁性体と外部磁場との間の磁気相互作用により、チューブの中央長手方向体軸の周りに回転できるという利益効果が、諸例により示されるであろう。外部磁場は、磁場内の磁性体の回転を引き起こす回転磁場であってもよい。チューブの周りに分散された磁性体の回転は、チューブの中央長手方向体軸の周りにチューブを回転させる。
【0046】
例えば、磁性体は、チューブの中央長手方向体軸の周りに分散されていてもよい。チューブの周りに分散された磁性体は、チューブの中央長手方向体軸に周りに分散されてもよい。
【0047】
磁性体は、チューブの反対側に配置されてもよい。チューブを通過するチューブの中央長手方向体軸に垂直な断面に関して言えば、磁性体は、チューブの反対側に配置されてもよい。例えば、磁性体は、1つ以上の螺旋パターンに従ってチューブの周りに分散されてもよい。
【0048】
例えば、磁性体は、チューブの周りに等間隔で、例えば角距離で配置されてもよい。例えば、磁性体は、チューブの周りに連続的に分散されてもよい。
【0049】
例えば、磁性体は、チューブの周りに分散された磁性塗膜を有している。例えば、磁性体は、チューブ上の磁性塗膜の形態でチューブ上に配置されていてもよい。外部磁場との磁気相互作用が磁性塗膜の回転を引き起こすという利益効果が、諸例により示されることであろう。磁性膜の回転が、チューブの中央長手方向体軸の周りにおいて、チューブの回転を引き起こす。
【0050】
例えば、チューブは、血液適合性表面塗膜を更に有している。チューブの表面、例えばチューブの外部表面および/または内部表面に追加の血液適合性塗膜を適用することにより、血管中の血液が有する任意の血液成分とチューブとの間の好ましくない相互作用が防止されるという利益効果が、諸例により示されることであろう。好ましくない相互作用は、例えば、各血液成分の不適切な活性化または更に分解を含むものである。好ましくない相互作用は、例えば、各血液成分との生化学的相互作用を含むものである。
【0051】
例えば、チューブは折り畳み式構造を更に有している。折り畳み式構造は、医療用の薬品を保持するように構成された閉じた保持セクションを提供する。折り畳み式構造は、所定の内部エネルギーレベルに達した際に、閉じた保持セクションを開き、薬品を放出するように更に構成されている。
【0052】
例えば、折り畳み式構造は、形状記憶ポリマーなどの形状記憶素材製の折り畳み式形状記憶構造であってもよい。折り畳み式形状記憶構造は、医療用の薬品を保持するように構成された閉じた保持セクションを提供する。折り畳み式形状記憶構造は、所定の内部エネルギーレベルに達した際に、閉じた保持セクションを開き、薬品を放出するように更に構成されている。
【0053】
例えば、折り畳み式構造は、光応答性素材製であってもよい。光応答性素材は、外部の光刺激に応答して、物性(例えば、その形状)を変化させる機能を有する素材である。例えば、折り畳み式構造の内部エネルギーは、光子を用いて増大させる。
【0054】
例えば、折り畳み式構造は、電子応答性素材製であってもよい。電子応答性素材は、外部の電気的刺激に応答して、物性(例えば、その形状)を変化させる機能を有する素材である。例えば、折り畳み式構造の内部エネルギーは、電場および/または電流を用いて増大させる。
【0055】
例えば、折り畳み式構造は、磁気応答性素材製であってもよい。磁気応答性素材は、外部の磁気的刺激に応答して、物性(例えば、その形状)を変化させる機能を有する素材である。例えば、折り畳み式構造の内部エネルギーは、磁場を用いて増大させる。
【0056】
例えば、折り畳み式構造は、超音波応答性素材製であってもよい。超音波応答性素材は、外部の超音波的刺激に応答して、物性(例えば、その形状)を変化させる機能を有する素材である。例えば、折り畳み式構造の内部エネルギーは、超音波を用いて増大させる。
【0057】
折り畳み式構造、例えば折り畳み式形状記憶構造は、血管システム内の標的位置へ医薬用の薬品を送達するのに使用可能であるという利益効果が、諸例により示されることであろう。保持セクション内に医療用の薬品を保持する折り畳み式構造を有するチューブは、表面推進力を用いて、血管システムの血管内を通過して前進できる。標的位置に達すると、閉じられた保持セクションが開き、薬品を放出する。保持セクションを開くのは、外部刺激、例えば、光刺激、電気刺激、磁気刺激、および/または超音波刺激を用いて実行できる。保持セクションを開くのは、折り畳み式構造の内部エネルギーレベルを上げて所定のエネルギーレベルに到達させることにより実行できる(例えば、形状記憶素材製の折り畳み式構造の温度を所定の形状記憶転移温度にまで上げ、所定の形状記憶転移温度に到達させることにより実行できる)。内部エネルギーは、例えば、折り畳み式構造の外部無線周波数誘導加熱を用いて増大させてもよい。薬品は折り畳み式構造の保持セクション内に含まれるので、血液成分との相互作用は防止できる。例えば、保持セクションは、閉じられている間、密封されていてもよい。
【0058】
折り畳み式構造は、任意形状の容器、例えば、立方体の容器、箱形状の容器、花形状
の容器、または袋形状の容器を有していてもよい。箱形状の容器の場合、容器の例示的サイズは、例えば、450μmx300μmx120μmである。折り畳み式構造は、任意タイプの医療用の試薬、例えば、医薬品、RNA、幹細胞などを送達するように構成されていてもよい。
【0059】
例えば、折り畳み式構造は、形状記憶素材製の折り畳み式形状記憶構造である。例えば、形状記憶構造は、形状記憶ポリマー製である。形状記憶素材は、形状記憶転移温度に達した際に、保持セクションが閉じられている第一形状から保持セクションが開いている第二形状への移行が可能になるものであるという利益効果が、諸例により示されることであろう。
【0060】
形状記憶ポリマー(SMP)は、外部刺激、すなわち温度変更などの引き金によって誘導される場合に、一時的形状から最初の恒久形状へ戻る機能を有するポリマースマートマテリアルである。例えば、室温における保持セクションの恒久形状は閉じた形状であり、より高い温度における保持セクションの一時的形状は開いた形状である。SMPは、温度誘導形状間の転移において、例えば2つの形状を保持できるものである。
【0061】
例えば、折り畳み式構造は、折り畳み式構造への外部エネルギーの入力効率を高めるため、金属粒子を更に有する。外部エネルギーインプットは、例えば、折り畳み式構造の外部無線周波数誘導加熱であってもよい。金属粒子は、外部エネルギーインプット、例えば、折り畳み式構造の外部無線周波数誘導加熱の効率向上という利益効果が、諸例により示されることであろう。例えば、折り畳み式構造が有する金属粒子を加熱するのに、無線周波数コイルが使用でき、その結果、折り畳み式構造自体の加熱および保持セクションの閉じた第一形状から保持セクションの開いた第二形状への移行が生じる。
【0062】
別の態様において、本発明は、血管システムの血管に挿入される前述の例のチューブを作動および制御するように構成された作動/制御装置に関するものである。作動/制御装置は、磁場を発生させる磁石を移動させるように構成された移動装置を有する。磁場は、チューブの中央長手方向体軸の周りにチューブを回転させるように構成されている。移動装置は、血管に沿って磁石を移動させるように、すなわち血管を通してチューブを磁気的に加勢して移動させるように構成されている。
【0063】
作動/制御装置は、血管内のチューブの移動を作動および制御するように構成されているという利益効果が、諸例により示されることであろう。チューブの移動は、磁石を用いて磁場を発生させることにより行ってもよい。磁石を用いて発生させる磁場(例えば、回転磁場)は、中央長手方向体軸の周りにチューブを回転させるように構成されており、その結果としての表面推進力により、血管に沿ってチューブの移動が生じる。チューブの移動は、血管に沿って磁石を移動させることにより制御でき、その結果、磁気的に加勢されるチューブの移動が血管を通して実行される。移動装置の移動および/または磁石の操作が停止すると、チューブの移動が停止される。例えば、チューブは、チューブと血管との間の摩擦力の故に、適切な位置に固定される。
【0064】
例えば、移動装置はロボットアームを有しており、磁石がロボットアームの遠位端に搭載されている。ロボットアームは、磁石を血管に沿って正確かつ自由自在に移動可能であるという利益効果が、諸例により示されることであろう。
【0065】
例えば、磁石は、所定の距離または所定の距離範囲内で血管に沿って移動されてもよい。例えば、ロボットアームは、所定の距離または所定の距離範囲内で血管に沿って磁石を移動させるように構成されていてもよい。
【0066】
例えば、磁石は、磁場を発生させるために回転される永久磁石である。永久磁石の回転により発生する磁場は、回転磁場であってもよい。永久磁石を回転させることにより、チューブを中央長手方向体軸の周りに回転させる回転磁場が発生するという利益効果が、諸例により示されることであろう。
【0067】
例えば、磁石は電磁石であり、その場合、磁場は電流によって作られる。磁場は、電流を切り替えることにより切り替えられてもよい。例えば、電磁石は、回転磁場を発生させるために回転されてもよい。
【0068】
例えば、作動/制御装置は、所定の内部エネルギーレベルに達した際に、折り畳み式構造の閉じた保持セクションを開けるため、チューブが有する折り畳み式構造の内部エネルギーレベルを所定の内部エネルギーレベルへ上昇させるように構成されたエネルギー源を更に有するものである。例えば、作動/制御装置は、所定の形状記憶転移温度に達した際に、折り畳み式形状記憶構造の閉じた保持セクションを開けるため、チューブが有する形状記憶素材製の折り畳み式構造の無線周波数誘導加熱を形状記憶転移温度まで上昇させるように構成された、無線周波数コイルを更に有するものである。
【0069】
エネルギー源は、折り畳み式構造への外部エネルギーインプットを可能にし、折り畳み式構造のエネルギーレベルを増大させるという利益効果が、諸例により示されることであろう。従って、折り畳み式構造の内部エネルギーレベルは制御可能である。エネルギー源は、例えば、光源、電子源、磁気源、および/または超音波源であってよい。
【0070】
エネルギー源が作動されない限り、すなわち外部エネルギーインプットがない限り、折り畳み式構造の内部エネルギーレベルは、所定のエネルギーレベル未満である。折り畳み式構造の内部エネルギーレベルは、エネルギーインプットを使用して、選択的に増大できる。エネルギーインプットによって折り畳み式構造の所定の内部エネルギーレベルに達すると、保持セクションは、閉じた第一形状から開いた第二形状へ移行できる。従って、エネルギー源を作動させることにより、医薬品の放出が行われる。
【0071】
例えば、無線周波数コイルは、折り畳み式形状記憶構造の無線周波数誘導加熱を可能にする。従って、折り畳み式形状記憶構造の温度は制御可能である。無線周波数コイルが作動していない限り、すなわち無線周波数誘導加熱がない限り、チューブが血管システムに挿入された際には、折り畳み式形状記憶構造の温度は周囲の温度(すなわち体温)に等しい。無線周波数誘導加熱を使用することにより、折り畳み式形状記憶構造は選択的に加熱できる。加熱により折り畳み式形状記憶構造の所定の形状記憶転移温度に達すると、保持セクションは、閉じた第一形状から開いた第二形状に移行する。従って、無線周波数コイルを作動させることにより、医薬品の放出が誘導できる。
【0072】
無線周波数コイルは、作動/制御装置の移動装置が有するロボットアームの遠位端に搭載されてもよい。無線周波数コイルを有するロボットアームは、磁石を搭載するロボットアームと同一であってもよい。無線周波数コイルを有するロボットアームは、磁石が搭載されるロボットアームに加えて提供される第二ロボットアームであってもよい。
【0073】
例えば、作動/制御装置は、計算装置を更に有している。計算装置は、処理装置および処理装置によって実行可能なプログラム命令を記憶するメモリを有する。処理装置によるプログラム命令の実行により、計算装置は磁石を移動させ、血管に沿って磁場が発生し、チューブが、血管を通して血管システム内の所定の目的地へ磁気的に加勢されて移動する。
【0074】
作動/制御装置の計算装置は、磁場を発生する磁石の動きおよび/または作動を制御するように構成できるという利益効果が、諸例により示されることであろう。磁石の動きを制御することにより、血管システムの血管に沿ったチューブの移動は制御可能である。従って、血管を通過する、血管システム内の所定目的地へのチューブの移動が加勢される。
【0075】
例えば、処理装置によるプログラム命令の実行により、計算装置は、更に、チューブが有する折り畳み式構造にエネルギーを入力するように構成されたエネルギー源を作動させ、折り畳み式構造の内部エネルギーレベルを所定の内部エネルギーレベルまで増大させる。所定の内部エネルギーレベルに達すると、折り畳み式構造の閉じた保持セクションが開かれ、そこに保持された医薬品が放出される。作動/制御装置の計算装置は、エネルギー源の移動および/または作動を制御するように構成できるという利益効果が、諸例により示されることであろう。作動/制御装置の計算装置は、エネルギー源の移動および/または作動、従って折り畳み式構造の内部エネルギーレベルを制御するように構成できるという利益効果が、諸例により示されることであろう。
【0076】
例えば、処理装置によるプログラム命令の実行により、計算装置は、更に、無線周波数コイルを作動し、チューブが有する折り畳み式形状記憶構造の無線周波数誘導加熱を所定の形状記憶転移温度まで高める。所定の形状記憶転移温度に達すると、折り畳み式形状記憶構造の閉じた保持セクションが開き、そこに保持されている医薬品が放出される。作動/制御装置の計算装置は、無線周波数コイルの移動および/または作動、従って、折り畳み式形状記憶構造の温度を制御するように構成できるという利益効果が、諸例により示されることであろう。
【0077】
別の態様において、本発明は、前述の例の任意のチューブおよび前述の例の任意の作動/制御装置を有するシステムに関する。
【0078】
別の態様において、本発明は、前述の例の任意の作動/制御装置を用いて、血管システムの血管に挿入される前述の例の任意のチューブを作動および制御する方法に関する。当該方法は、磁場を発生する磁石を血管に沿って移動させ、血管を通して、血管システム内の所定の目的地までチューブを磁気的に加勢して移動させる工程を有するものである。
【0079】
チューブは、磁場を発生する磁石を血管に沿って移動させることにより、磁場によって起こされるチューブの回転に起因する表面推進力により、血管を通して、血管システム内の所定の目的地まで移動するように磁気的に加勢されるという利益効果が、諸例により示されることであろう。
【0080】
例えば、当該方法は、チューブが有する折り畳み式構造の内部エネルギーレベルを増大させるように構成されたエネルギー源の作動工程を更に有するものである。折り畳み式構造は、医薬品を保持するように構成された閉じた保持セクションを有する。折り畳み式構造の内部エネルギーレベルは、所定のエネルギーレベルにまで増大され、その時点で、閉じた保持セクションが開かれる。
【0081】
折り畳み式構造へエネルギーを入力するエネルギー源を作動させることにより、折り畳み式構造の内部エネルギーレベルを選択的に増大できる。所定の内部エネルギーレベルに達すると、折り畳み式構造の閉じた保持セクションが開かれ、そこに保持されている医薬品が放出される。例えば、チューブは、医薬品放出のため、血管システム内の所定の目的地まで移動されてもよい。所定の目的地に達すると、エネルギー源が作動し、血管システム内の所定の目的地において、医薬品の放出が開始される。
【0082】
例えば、当該方法は、チューブが有する折り畳み式形状記憶構造の無線周波数誘導加熱用に構成された無線周波数コイルの作動工程を更に有するものである。折り畳み式形状記憶構造は、医薬品を保持するように構成された閉じた保持セクションを有している。折り畳み式形状記憶構造は、所定の形状記憶転移温度まで加熱され、その時点で閉じた保持セクションが開かれる。
【0083】
折り畳み式形状記憶構造の無線周波数誘導加熱用の無線周波数コイルを作動させることにより、折り畳み式形状記憶構造の温度を選択的に増大可能である。所定の形状記憶転移温度に達すると、折り畳み式形状記憶構造の閉じた保持セクションが開かれ、そこに保持されている医薬品が放出される。例えば、チューブは、医薬品放出のため、血管システム内の所定の目的地まで移動されてもよい。所定の目的地に達すると、無線周波数コイルが作動し、血管システム内の所定の目的地において、医薬品の放出が開始される。
【0084】
上述の例および実施形態は、相互に排斥し合わない限り、自由に組み合わせ可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
本発明の実施形態が以下に詳細に記載される。
【0086】
【
図3】
図3は、例示的3Dデジタルチューブモデルを示す。
【
図4】
図4は、例示的ロボット装置の断面図を示す。
【
図5】
図5は、例示的ロボット装置の断面図を示す。
【
図6】
図6は、ロボット装置の例示的実施の断面を示す。
【
図7】
図7は、ロボット装置の例示的実施の断面を示す。
【
図8】
図8は、ロボット装置の例示的実施の断面を示す。
【
図9】
図9は、ロボット装置の例示的実施の断面を示す。
【
図18】
図18は、ロボット装置の適用シナリオの例示的概念を示す。
【
図19】
図19は、ロボット装置が血流に沿って移動する場合の力関係を示す。
【
図20】
図20は、ロボット装置が血流に逆らって移動する場合の力関係を示す。
【
図21】
図21は、ロボット装置が標的位置で停止する場合の力関係を示す。
【
図22】
図22は、ロボット装置の例示的半径方向形状適応を示す。
【
図23】
図23は、ロボット装置の更なる例示的半径方向形状適応を示す。
【
図24】
図24は、異方性表面構造の完全性の例示的図を示す。
【
図25】
図25は、磁石/ロボット装置間の最大距離の例示的モデル化を示す。
【
図26】
図26は、磁石/ロボット装置間最大距離の内腔直径依存に関する例示的比較を示す。
【
図27】
図27は、異方性表面構造に関し、左回転および右回転の比較を示す。
【
図28】
図28は、ロボット装置変位における磁石移動速さの影響を示す。
【
図29】
図29は、模型におけるロボット装置の自動停止を示す。
【
図30】
図30は、屈曲内腔への生理学的要件を、流速可視化を用いて示す。
【
図31】
図31は、ロボット装置を曲げるのに最低必要なトルクにおける、内腔曲率および内腔直径の影響を示す。
【
図32】
図32は、血管の湾曲を通過する回復可能屈曲ルートの例示的スナップショットを示す。
【
図33】
図33は、座標系および屈曲ルート通過用の経由点離散化を例示的に示す。
【
図34】
図34は、流れに沿った屈曲ルート通過並びに流れに逆らった屈曲ルート通過のための例示的手順を示す。
【
図35】
図35は、異なる模型の種々の曲率半径における、ロボット装置移動の例示的実験結果を示す。
【
図36】
図36は、分岐点間の回復可能分岐通過に関する例示的スナップショットを示す。
【
図37】
図37は、例示的座標系および分岐点間の分岐通過に関する経由点離散化を示す。
【
図38】
図38は、流れに沿った分岐通過並びに流れに逆らった分岐通過のための例示的手順を示す。
【
図39】
図39は、異なる模型の種々の分岐角における、ロボット装置の移動速度の例示的結果を示す。
【
図40】
図40は、曲がりくねったルートに沿った例示的移動を示す。
【
図41】
図41は、急峻な屈曲ルートにおける、ロボット装置の例示的移動を示す。
【
図43】
図43は、頭蓋骨模型における3D分岐間の例示的移動を示す。
【
図44】
図44は、頭蓋骨模型における3D分岐間の例示的移動を示す。
【
図46】
図46は、ロボット装置検出のための、例示的X線撮像パラメータを示す。
【
図50】
図50は、折り畳み式構造を有する例示的ロボット装置を示す。
【
図51】
図51は、混合内容物に関する、例示的な無線周波数ベースの加熱および放出を示す。
【
図52】
図52は、折り畳み式構造を有する例示的ロボット装置の断面図を示す。
【
図53】
図53は、折り畳み式構造を有する別の例示的ロボット装置の断面図を示す。
【
図54】
図54は、tPAを用いた血栓溶解の例示的効果を示す。
【
図56】
図56は、マイクロカテーテル内に配置される前後の例示的ロボット装置を示す。
【
図63】
図63は、磁石を制御するための例示的方法のフローチャートを示す。
【
図64】
図64は、磁石を制御するための別の例示的方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0087】
以下において、類似の特徴は、同一の符号により示されている。
【0088】
図1は、例示的チューブ形状のロボット装置100、すなわちチューブ100の形状で提供されるロボット装置の概念図を示している。チューブ100は、中空円筒状の弾性基礎構造102を有する。チューブ100は、血管システムの血管に挿入される構成になっている。チューブ100は、外部異方性表面構造104を有する。異方性表面構造104は、チューブ100の円周方向とチューブ100の長手方向との間に幾何学的異方性を有する。弾性基礎構造102は、チューブ100の異方性表面構造104と血管の内部表面との間に接触を確立するための半径方向弾性力を提供するように構成されている。異方性表面構造104は、斯かる接触により、異方性表面構造104と血管の内部表面との間に異方性摩擦を確立するように構成されている。異方性摩擦の結果、チューブ100がチューブ100の中央長手方向体軸106の周りに回転される際に、チューブ100の表面推進力が生じる。チューブ100は、チューブ100の円周に分散された磁性体108であって、外部磁場内において、チューブ100の中央長手方向体軸106の周りにチューブ100を回転させるように構成された磁性体108を更に有している。
図1の例において、磁性体108は弾性基礎構造102によって包含されており、従って、チューブ100並びにチューブ100の中央長手方向体軸106の周囲に分散されている。磁性体108は、例えば、強磁性微粒子またはナノ粒子の形態で分散されていてもよい。あるいは、磁性体108は、例えば、弾性基礎構造102の表面に磁性塗膜の形態で分散されていてもよい。磁性粒子または磁性塗膜は、所定のパターンに従ってチューブ100の周囲に分散されていてもよい。例えば、磁性体108は、異方性表面構造104によって包含されていてもよい。磁性塗膜は、例えば、チューブ100の外側または内側表面を連続的にカバーする塗膜であってもよい。
【0089】
例えば、弾性基礎構造102は、所定の直径範囲内で変化する血管の直径に関して、チューブ100の直径を血管の変化する直径に受動的に適合するように構成されている。
【0090】
遠位血管ルートへのカテーテル挿入のアクセス可能性が制限されているので、チューブ100形態の磁気駆動無線ロボット装置には利点がある。第一に、アクセス可能性に関して言えば、制御下の回復可能な移動は、内腔に血流がある場合にもない場合にも自動固定を保証し、遠位部位への機動性を改善するものである。第二に、安全な相互作用力が可能となる(標準の神経介入性カテーテル挿入(最大約100N)と比べ、弱い力(最大約10―2N)が、介入中に血管壁に作用する)。従って、潜在的に安全な機械的力が血管壁に作用し、内皮細胞の破裂リスクが減少する。第三に、制御された局所医薬品送達機能が薬物血中濃度を改善すると同時に、組織的な副作用を最小限に抑える。最後に、血管内手術中に配置換えまたは移動が生じた場合、あるいは手術後に移動が生じた場合に、ワイドネック型動脈瘤治療用のフローダイバーターとして、位置を積極的に調整可能である。
【0091】
大きい内腔直径におけるロボット装置100の大きい磁気モーメントおよび動脈における低摩擦力があれば、ロボット装置100の設計は、例えば、近位動脈への拡張が可能である。ロボット装置100は、介入と治療を組み合わせることにより、近位部位における既存の動脈内アプローチよりも優れた性能を発揮するであろう。例えば、ロボット装置100は、血管内治療中に当該ロボット装置100に配置換えまたは移動が生じた場合、例えば、ワイドネック型動脈瘤用のフローダイバーターとして、無線で正確に調整可能である。潜在的移動のフォローアップ調整に関して言えば、ロボット装置100の位置は、外部磁気制御および、例えば、適切なX線撮像を用いて、無線で調整可能である。
【0092】
移動性ロボット装置100の全体的概念は、遠位血管システムにおいて、臨床効果の組織的改善のため、最新のマイクロカテーテル技術と組み合わせることが可能である。しかし、体の柔軟部分の適応移動に関して詳細機構を組織的に理解するため、試験の大半が実際的な模型で行われる。更に、ロボット装置の適用を最小侵襲的からほぼ非侵襲的手術へ変えるのに、アクティブプログラマブルな磁性体を利用することにより、形状適応範囲を増大することが可能である。更に、ロボット装置100は、例えば、局所オンデマンド医薬品送達、潜在的長期使用、血流の迂回用に即時回復可能装置として使用できるが、生物学的適合性および血液適合性の態様は、血液接触装置として重要なものとなるであろう。斯かる目的のため、融和的医療用コーティングが設計に組み込まれてもよい。
【0093】
例えば、生物学的適合性で細胞毒性を有しないことが知られているシリカが、NdFeB微粒子にコーティングされてもよい。次に、シリカコーティングしたNdFeBは、例えば、PDMSと混合され、ロボット装置100の鋳造に使用されてもよい。次に、ロボット装置100の表面は、例えば、シロキサン結合ポリ(エチレングリコール)(PEG)、パリレンC、ヒアルロン酸(HA)および/またはポリドーパミン(PDA)複合体(HA/PDA) などの血液適合性の素材で修飾されてもよい。斯かる表面修飾は、血液接触アプリケーションにおけるフィブリノーゲン吸着および血小板粘着を減少させることが証明されている。別の有望な方法は、例えば、強磁性FePtナノ粒子およびPDMSベースのポリウレタン尿素含有双性イオンスルホベタイン(PDMS-SB-UU)などの生物学的適合性/血液適合性の素材で装置全体を製造することである。FePtナノ粒子は、生物学的適合性および血液適合性であることが証明されている。PDMS-SB-UUは、リパーゼ阻害活性で、8週間30%H2O2である。これは、対照のPDMSと比べて、フィブリノーゲン吸着および血小板堆積に対して有意に高い抵抗を示し、細胞毒性欠如を維持しつつ血液溶解もないことが証明されている。
【0094】
NdFeB微粒子は、生物学的適合性/血液適合性を改善するため、例えば、まずシリカでコーティングして、腐食防止用の追加の保護殻を提供してもよい。次に、2つの複合素材、例えば、PDMS+NdFeB@SiO2(ロボット本体用)およびSMP+Fe3O4(折り畳み構造用)をパリレンC(例えば、SCS Labcoter(登録商標)2(PDS2010)、Specialty Coating System)でコーティングしてもよい。FDA承認の生物学的適合性/血液適合性であるパリレンCは、厳しいUSP Class VI、ISO 10993およびRoHS基準を満たしている。
【0095】
図2は、メッシュ構造120の形態で提供される中空円筒状弾性基礎構造102を有するチューブ100の例示的な実施を示している。チューブの中空円筒状弾性基礎構造102を提供するメッシュ構造120は、チューブ100の高い半径方向変形可能性を可能にするのと同時に、低い流体引張力特性も保証する。メッシュ構造120は、複数のセル122で形成される。
図2の場合、メッシュ構造120は、各々菱形を有する複数の同一セル122で形成されている。異方性表面構造104が、メッシュ構造120(セル122、従ってメッシュ構造120を形成するストランド上に追加された複数の突起を有する)上に配置されている。異方性表面構造104は、メッシュ構造120(すなわちメッシュ構造120のストランド)上にコーティングされた右回りの螺旋構造形態で実施されている。メッシュ構造120は、磁性粒子(例えば、強磁性微粒子またはナノ粒子)の形態の磁性体108を有していてもよい。磁性粒子は、例えば、NdFeB強磁性微粒子であってもよい。ロボット装置の本体内のNdFeB強磁性微粒子は、例えば、均一磁場(例えば、1.8T均一磁場)を用いて、均一に磁化されてもよい。
【0096】
ロボット装置100の陽性モデルは3D印刷され、陰性PDMSモールド(例えば、ベースとクロスリンカーの質量比10対1)を製造するのに使用されてもよい。ロボット装置100の陽性モデルを3D印刷するのに、ロボット装置100を画成する3Dデジタルモデルが、テンプレートとして使用されてもよい。テンプレートは、テンプレートの物理的コピーを3D印刷するための3D印刷装置を制御するように構成された計算装置に提供されてもよい。鋳造用の複合材は、3対1、7対1、12対1などの種々の質量比を有するPDMSおよびネオジム/鉄/ホウ素粒子(NdFeB、5μm)であってもよく、種々のヤング率Erを有するチューブが可能となる。PDMSとNdFeBとの質量比は、例えば、1対4であってもよい。十分混合されたポリマーは陰性PDMSモールドに投入され、加熱炉(例えば、摂氏85度)で7時間硬化させる。次に、サンプルは、均一磁化用に、例えば1.8Tで、振動試料磁力計(VSM、EZ7、Microsense)に配置される。最後に、チューブ100は離型される。
【0097】
図3は、例示的なCAD設計図面、すなわち
図2のチューブを画成する3Dデジタルチューブモデル101を示す。
図2のチューブ100は、例えば、3D印刷のようなCAM方法、およびテンプレートとして3Dデジタルチューブモデル101を用いて製造されてもよい。中空円筒状弾性基礎構造102を提供するメッシュ構造120は、チューブ100の高い半径方向変形可能性を可能にし、それと同時に、低い流体引張力特性を保証する。メッシュ構造120上にコーティングされる螺旋構造形態(例えば、右回り螺旋構造)で実施される異方性表面構造104は、チューブ101が本体付属のy
r軸(すなわち中央長手方向体軸106)の周りに回転されると、異方性摩擦力を用いて、チューブ100の移動を可能にする。
【0098】
図3に図示される中空円筒状弾性基礎構造102の設計は、望みの半径方向変形可能性および低い流体引張力を有する形状を提供できる。斯かる設計は、高速度の脈動流および変化する内腔直径を有する動脈内の効果的な操作を保証するものである。更に、回転および移動の磁気作動を活用するため、例えば強磁性NdFeB微粒子形態の磁性体が、基礎構造102に組み込まれてもよい。磁性体104は、例えば、1.8T均一磁場によって、振動試料磁力計(VSM)内で、チューブ付属座標システムのz
r軸に沿って、均一に磁化されてもよい。
【0099】
チューブ100の移動中に血管の内腔に作用する半径方向の力を最小にするには、3Dデジタルチューブモデル101によって画成される全体的ロボット装置100の半径方向剛性k
rは、可能な限り小さく構成されてよい。一方、基礎構造102は、内部磁化誘導磁気力によって崩壊するのを防止するように構成されていてもよい。斯かる目的のため、k
rは、斯かる望ましくない自己変形を防止するのに十分な大きさとなるように選択されてもよい。構造面から考えて、k
rは、
図3に図示されるように、3つの重要な設計パラメータ、すなわち支柱間隔h、クラウンジャンクションにおける曲率半径ρ、および各セグメントの軸方向振幅fによって決定されてよい。大きいh、ρ、およびfは、小さいk
rを可能にする。基礎構造102は、同一の菱形セル122からなるメッシュ構造120によって提供されてもよい。斯かる配列は、基礎構造102が変形した場合に、圧縮応力および摩擦力の均一な分配を可能にし、3Dデジタルチューブモデル101によって画成されるロボット装置が、例えば分岐点において、不均一な接触力分配によって生じるねじれの可能性を最小限に抑えるものである。
【0100】
異方性表面構造104は、血管内腔の移動のため、例えば、螺旋構造形態で実施されてもよい。螺旋軸(すなわち中央長手方向体軸106)の周りの回転運動を磁気トルクによって中央長手方向体軸106に沿った直線運動に変換すると、異方性表面構造104は軸方向推進力を実現する。これは、螺旋形状および異方性摩擦の両方によって誘導されるものであり、その場合、垂直方向の摩擦係数は螺旋に平行の摩擦力よりも大きい。斯かる移動特性を利用するため、螺旋角Φ8度の右回り螺旋構造が、機械的推進力として、基礎構造102の外側に設計されてもよい。菱形のセル122が同一に配列されているので、3Dデジタルチューブモデル101によって画成されるロボット装置に沿った螺旋コーティング領域104は、均一に分配されている。
【0101】
図4は、例示的ロボット装置100の断面図を示している。ロボット装置100は、中空円筒状弾性基礎構造102を有している。中空円筒状弾性基礎構造102は、ロボット装置100の直径d
rを血管の変化する直径に受動的に適合させるように構成されてもよい。例えば、中空円筒状弾性基礎構造102は、ロボット装置の直径d
rを所定の直径範囲内で変化する血管の直径に受動的に適合させるように構成されてもよい。ロボット装置100は、弾性基礎構造102上に追加(例えば、コーティング)された1つ以上の突起形状で実行される外部異方性表面構造104を有している。更に、ロボット装置100は、磁性体108を有している。磁性体108は、例えば、弾性基礎構造102が有していてもよい。あるいは、磁性体108は、ロボット装置100の表面に配置されていてもよいし、異方性表面構造104が有していてもよい。
【0102】
図5は、例示的ロボット装置100の断面図を示している。ロボット装置100は、中空円筒状弾性基礎構造102を有している。中空円筒状弾性基礎構造102は、ロボット装置の直径d
rを血管の変化する直径に受動的に適合させるように構成されてもよい。例えば、中空円筒状弾性基礎構造102は、ロボット装置の直径d
rを所定の直径範囲内で変化する血管の直径に受動的に適合させるように構成されてもよい。ロボット装置100は、弾性基礎構造102に挿入された1つ以上の凹部で実行される外部異方性表面構造104を有している。磁性体108は、例えば、弾性基礎構造102が有していてもよい。あるいは、磁性体108は、ロボット装置100の表面に配置されていてもよいし、異方性表面構造104が有していてもよい。
【0103】
図6~
図13は、チューブの様々な実施の断面図を示している。
図6~
図9は、図示セクションを通って延伸する異方性表面構造を有しない、チューブの例示的セクションを示している。
図6は、弾性基礎構造102(その上に磁性塗膜108が配置される)を有するロボット装置の例示的実施形態を示している。磁性塗膜108の上面によって提供されるロボット装置の外部表面には、血液適合性の表面塗膜110が配置されている。更に、血液適合性の表面塗膜110が、弾性基礎構造102の底面によって提供されるロボット装置の内部表面に配置されている。
図7は、弾性基礎構造102(その下に、磁性塗膜108が配置されている)を有するロボット装置の別の例示的実施形態のセクションを示している。弾性基礎構造102の上面によって提供されるロボット装置の外部表面には、血液適合性の表面塗膜110が配置されている。更に、血液適合性の表面塗膜110が、磁性塗膜108の底面によって提供されるロボット装置の内部表面に配置されている。
図8は、弾性基礎構造102(その内部に磁性粒子108が分散されている)を有するロボット装置の別の例示的実施形態のセクションを示している。弾性基礎構造102の上面によって提供されるロボット装置の外部表面には、血液適合性の表面塗膜110が配置されている。更に、血液適合性の表面塗膜110が、弾性基礎構造102の底面によって提供されるロボット装置の内部表面に配置されている。
図9は、弾性基礎構造102(その内部に磁性粒子108が分散されている)を有するロボット装置の別の例示的実施形態のセクションを示している。例えば、磁性粒子は血液適合性素材でコーティングされていてもよいし、それと同時に、弾性基礎構造102は血液適合性素材製であってもよい。従って、
図9に図示されたロボット装置の例示的実施形態においては、血液適合性の表面塗膜はそれ以上必要ではない。
【0104】
図10~
図13は、図示セクションを通って延伸する異方性表面構造104を有する、チューブの例示的セクションを示している。
図10は、弾性基礎構造102(その上に、異方性表面構造104が配置されている)を有するロボット装置の例示的実施形態を示している。磁性粒子108は、異方性表面構造104が有している。異方性表面構造104の上面によって提供されるロボット装置の外部表面には、血液適合性の表面塗膜110が配置されている。更に、血液適合性の表面塗膜110が、弾性基礎構造102の底面によって提供されるロボット装置の内部表面に配置されている。
図11は、弾性基礎構造102(その上に、異方性表面構造104が配置されている)を有するロボット装置の例示的実施形態を示している。磁性粒子108は、弾性基礎構造102が有している。異方性表面構造104の上面によって提供されるロボット装置の外部表面には、血液適合性の表面塗膜110が配置されている。更に、血液適合性の表面塗膜110が、弾性基礎構造102の底面によって提供されるロボット装置の内部表面に配置されている。
図12は、弾性基礎構造102(その上に、異方性表面構造104が配置されている)を有するロボット装置の別の例示的実施形態を示している。磁性粒子108は、異方性表面構造104が有している。例えば、磁性粒子は血液適合性素材でコーティングされていてもよいし、それと同時に、弾性基礎構造102は血液適合性素材製であってもよい。従って、
図12に図示されたロボット装置の例示的実施形態においては、血液適合性の表面塗膜はそれ以上必要ではない。
図13は、弾性基礎構造102(その内部に磁性粒子108が分散されている)を有するロボット装置の別の例示的実施形態を示している。弾性基礎構造102上に、異方性表面構造104が配置されている。例えば、磁性粒子は血液適合性素材でコーティングされていてもよいし、それと同時に、弾性基礎構造102および異方性表面構造104は、血液適合性素材製であってもよい。従って、
図13に図示されたロボット装置の例示的実施形態においては、血液適合性の表面塗膜はそれ以上必要ではない。
【0105】
図14は、例示的ロボット装置100を示している。
図14のロボット装置100は、
図2のロボット装置100に対応する。唯一の違いは、
図14のロボット装置100は、メッシュ構造120の内部表面に配置された内部膜(すなわち、連続内部層112)を追加的に有していることである。連続内部層112は、ロボット装置100を通して血流を運ぶように構成されてもよい。従って、ロボット装置100は、例えば、動脈瘤および/または動静脈奇形(AVM)治療用に、積極的に制御された柔軟なフローコンバーターとして使用されてもよい。追加の連続内部層112は、例えば、血液がメッシュ構造120を通過するのを停止してもよい。例えば、連続内部層112の多孔性は70%未満、好ましくは50%未満、更に好ましくは1%未満(例えば、0%)である。
【0106】
図15は、本明細書記載のロボット装置を作動および制御するように構成された例示的作動/制御装置150を示している。作動/制御装置は、磁石156を移動させるように構成された移動装置152を有する。磁石156は、磁場を発生させるように構成されている。磁場は、ロボット装置の中央長手方向体軸の周りにロボット装置を回転させるように構成されている。移動装置152は、ロボット装置が挿入されている血管システムの血管に沿って磁石156を移動させ、それにより、血管内のロボット装置の表面推進力を用いて、血液を通過するロボット装置の動きを磁気的に加勢するように構成されている。
【0107】
移動装置152はロボットアーム154を有しており、ロボットアーム154の遠位端には、磁石156が搭載されている。ロボットアーム154は、例えば、7-DoFロボットアームである。磁石156を有するロボットアーム154は、磁石156を用いて、ロボット装置の空間三次元(3D)磁気的作動を実現するように構成されている。ロボットオペレーティングシステム(ROS)により、通信フレームワークが実現できる。磁石156は、永久磁石(例えば、磁場を発生させるために回転される50mm立方体NdFeB永久磁石)であってもよい。磁石156は、例えば、ステップモーターを用いて回転させてもよい。
【0108】
図16は、ロボット装置100の例示的作動を示している。
図16は、ローカル座標において、ロボット装置100と磁石156の回転を図示したものである。ロボット装置100は、血管200に挿入される。ロボット装置100を作動するのに、磁気トルクおよび磁気力の両方が使用される。モーメントm
aを有する磁石156は、周波数f
magで、磁石付きローカル座標x
a-y
a-z
aのy
a軸の周りに回転され、その結果、モーメントm
rを有するロボット装置100が、磁気トルクにより、ロボット付きローカル座標x
r-y
r-z
rのy
r軸の周りに回転される。磁石156の方向は、血管200、従ってロボット装置100の延長方向に整列されてよい。2つのローカル座標フレーム、すなわち磁石付きローカル座標x
a-y
a-z
aおよびロボット付きローカル座標x
r-y
r-z
rは、並進ベクトルp
r
a、すなわち作動磁石156からロボット装置100の方向を示すベクトルによって規定される移動によって分離されている。ロボット装置100の回転方向は、例えば、永久磁石156によって発生する特定磁場により、磁石156の逆であってもよい。y
r軸は、ロボット装置100の中央長手方向体軸である。磁石156は、グローバル座標x-y-zにおいて、更に移動および再配向されてもよい。皮質から頭皮までの距離I
sが15mmの場合、磁石156は、z軸に沿って、ロボット装置から少なくとも50mm離れた位置に置かれてよい(すなわち、I
mag ≧50mm>I
s)。
【0109】
図17は、磁石156を用いて実行される、血管200に沿ったロボット装置100の移動の例示的制御を示している。
図17は、血管を通してロボット装置100を移動させるのに実行される、血管200に沿った磁石156の移動および再配向を、グローバル座標において図示したものである。磁石156は、
図16に示されるように、周波数f
magで、y
a軸の周りに回転される。それは血管200に沿ってv
magの速さでロボット装置100の前方へ移され、y
a-z
a面を血管200に沿った現在のルートに一致させるため、α
magの角度で再配向される。誘導磁場は血管に沿ってロボット装置100を牽引し、その結果、ロボット装置100は、ロボット装置100の回転に起因する表面推進力によって前進する。
【0110】
図18は、遠位血管系における、ロボット装置100の適用シナリオの例示的概念を示すものである。ここでは、中央脳動脈(MCA)のM4部分が示されており、カテーテル挿入が困難な部分である。M4部分はシルビウス裂溝の血管で、大脳半球の凸面上に広がる部分を意味する。ロボット装置100は、マイクロカテーテル160を用いて、M4部分へ送達されてもよい。ロボット装置100は、磁石156を用いて、M4部分へ移動してもよい。例えば、血管200の分岐204は、血管200の直径Φ
l1よりも小さい直径Φ
l2を有しているものとする。ロボット装置100は、分岐200の方へ前進する際に、血管200の異なる直径Φ
lに適合するように構成されていてもよい。例えば、ロボット装置100は、次のような移動機能、すなわち種々の直径を有する内腔において前進方向および後退方向の形状適合機能、磁場が適用されない場合の血流抵抗機能、血管200の屈曲したルートおよび分岐の通過機能を有していてもよい。ロボット装置100は、他の機能ツール用、例えば、急性虚血性脳卒中、動脈瘤、および脳動静脈奇形の治療用の移動キャリアとして機能してもよい。
【0111】
図19は、磁気作動がオンになっている間に、ロボット装置100が血流に沿って移動する際の力関係を図示したものである。
図20は、磁気作動がオンになっている間に、ロボット装置100が血流に逆らって移動する際の力関係を図示したものである。
図21は、ロボット装置が標的位置で停止する際の力関係を図示したものであり、磁気作動がオフになっていても、自動固定が保証されることを示している。ロボット装置の移動に寄与する主要な力が3つ存在し、それは、(1)y
r軸に沿ってロボット装置100に作用する磁気力(F
mag,yr)およびy
r軸の周りにロボット装置に作用する磁気トルク(T
mag,yr)、(2)流体引張力(F
drag)、および(3)異方性表面構造(例えば、螺旋構造)に平行および垂直な摩擦力(それぞれ、F
fric,|| およびF
fric,⊥)である。
【0112】
Fmag,yrおよびTmag,yrは、双極子近似を用いて、以下のようにモデル化されてもよい。
【0113】
【数1】
(ここで、m
rは、ロボット装置100の磁気モーメントであり、B(P
r
a)は、磁気モーメントm
aを有する作動磁石156によって生成される磁束密度であり、P
r
aは、作動磁石156からロボット装置100への方向を示すベクトルである。F
dragは、例えば、COMSOL Multiphysics 5.4における流体構造相互作用によってモデル化されてもよい。F
fric,|| およびF
fric,⊥は、摩擦のクーロンモデルによって記述されるものであり、変形に沿った半径方向の力F
nは、例えば、Abaqus 2019を用い、ロボット装置の測定ヤング率E
rを用いて、モデル化され、摩擦係数(CoF)は摩擦試験によって定量化される。NdFeB粒子とPDMSの複合体としてのロボット装置100は、線形弾性材料としてモデル化されてもよく、その結果、F
nと半径方向の変形との間の直線関係が可能となる。)
【0114】
図19に示されるように、ロボット装置100が血管200内を血流に沿って移動するには、式(3)および(4)に示されるような力関係が満たされる必要がある。y
r軸に沿ってロボット装置100に作用する磁気力(F
mag,yr)、流体引張力(F
drag)、および異方性表面構造へ垂直な摩擦力(F
fric,⊥cos(φ))の寄与の合計は、異方性表面構造に平行な摩擦力(F
fric,||sin(φ))の寄与に等しいか、それよりも大きい必要がある。更に、y
r軸の周りにロボット装置に作用する磁気トルク(T
mag,yr)は、異方性表面構造に平行および垂直な摩擦力(F
fric,|| およびF
fric,⊥)のトルクへの寄与に等しいか、それよりも大きい必要がある。同様に、
図20に示されるように、血管200内でロボット装置100が血流に逆らって移動するには、式(4)および(5)に示される力関係が満たされる必要がある。y
r軸の周りにロボット装置に作用する磁気トルク(T
mag,yr)は、異方性表面構造に平行および垂直な摩擦力(F
fric,|| およびF
fric,⊥)のトルクへの寄与に等しいか、それよりも大きい必要がある。更に、y
r軸に沿ってロボット装置100に作用する磁気力(F
mag,yr)および異方性表面構造へ垂直な摩擦力(F
fric,⊥cos(φ))の寄与の合計は、流体引張力(F
drag)および異方性表面構造に平行な摩擦力(F
fric,||sin(φ))の寄与の合計に等しいか、それよりも大きい必要がある。
図21に示されるような血管200内の標的位置におけるロボット装置100の自動固定に関しては、式(6)に示される力関係が満たされる必要がある。異方性表面構造に平行な摩擦力(F
fric,||sin(φ))の寄与および異方性表面構造へ垂直な摩擦力(F
fric,⊥cos(φ))の寄与は、血液の流体引張力(F
drag)に等しいか、それよりも大きい必要がある。
【0115】
【数2】
(ここで、F
fric,⊥=μ
⊥F
n、F
fric,||=μ
||F
n、F
nは半径方向力、φは螺旋角(8度)、R
dは半径方向変形後のロボット装置の半径、μ
⊥およびμ
||は、それぞれ螺旋に垂直および平行な摩擦係数(CoF)である。F
mag,yrは、ここでは、達成可能な最大値を意味し、T
mag,yrは、F
mag,yrが得られる場合のトルク値である。)
【0116】
移動中のロボット装置100の動力学に関して言えば、それは以下のようにモデル化されてもよい。
【0117】
【数3】
(ここで、aは、ロボット装置100が血流に沿って、または血流に逆らって移動する場合に、それぞれ1または-1に等しいパラメータである。w
yrは、y
r軸に沿ったロボット装置100の変位であり、m
rは、ロボット装置100の質量であり、θ
yrは、y
r軸の周りのロボット装置100の回転角であり、J
yrは、y
r軸の周りの慣性モーメントである。動的方程式は、例えば、MATLAB(登録商標) R2018aにおけるODE23ソルバーによって解かれてもよい。)
【0118】
図22は、ロボット装置100の例示的半径方向形状適合を示している。模型Aにおいて、1mmから1.5mmに変化する直径Φ
lを有する内腔内のロボット装置100の回復可能半径方向形状適合に関するスナップショットが示されている。形状適合は、移動を可能にする、z
r軸に沿ったロボット装置100からの、磁石の最大許容距離(I
mag_max)によって定量されてもよい。I
mag_maxは、投影面積S
p、螺旋の完全性λ
h、内腔の直径Φ
l、およびヤング率E
rによって決定される。
【0119】
機能要件としてのロボット装置の半径方向形状適合には、血管の直径Φlを有する内腔において、前進/後退回復可能な表面移動機能が要求されるかもしれない。M4部位において、内腔の直径は、例えば、1.5mmから1mmに変化するかもしれない。このΦl範囲は、分岐のない単一ルートにおいて、例えば11.3cm/s~25.5cm/sと推定される平均血流速度vfに対応していてもよい。この要件は、例えば、2つの動的条件、すなわち 磁石は、小さいΦlに入り、大きいΦlに戻るため、流れに沿って並びに流れに逆らって、ロボット装置100を移動させるように作動されるという動的条件で、達成される必要がある。
【0120】
如何なる設計が斯かる要件を達成できるかを実験的に探究するため、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)エラストマー製の模型Aにおいて、種々のヤング率(6.4MPa~13.6MPaの範囲)を有するロボット装置の試作品が試験された。磁石はfmag=0.5Hzの周波数で回転され、磁石の半分のサイズでロボット装置100が誘導された。狭いΦlに半径方向形状を適合させるには、zr軸に沿った磁石とロボット装置との間の距離(Imag)を減少させることにより、磁気力およびトルクを増大させる必要があるかもしれない。一方、Isを満足させるには、Imag ≧50mmの保証が必要であるかもしれない。従って、種々のΦlに適合させるための最大許容Imag(Imag_max)が、半径方向形状適合の機能を決定するかもしれない。大きいImag_maxの設計は、形状適合移動を容易に達成できるかも知れない。特に、Er=6.4MPaを有する設計は、全て50mmを越えるImag_maxで、斯かる要件を達成するかもしれない。
【0121】
図23は、ロボット装置100の更なる例示的な半径方向形状適合を示している。E
r=6.44MPaにおけるS
pの例示的効果が図示されているが、S
pはx
r-z
r平面へのロボット装置100の投影面積として定義される。内腔の小さい直径Φ
lにおける大きいS
pは、ロボット装置100上で、はるかに増大した流体引張力F
dragを引き起こす傾向にある。ロボット装置100の半径方向変形可能性は、S
pを小さいΦ
l、すなわち小さい流体引張力に縮小できる。
【0122】
4つの重要な変数、すなわち投影面積Sp、螺旋の完全性λh、Φl、およびヤング率Erが、磁気力およびトルク、流体引張力、および摩擦力の間の相対関係に影響を及ぼし、それが更にImag_maxを決定する。
【0123】
ロボット装置100の投影面積Spは、脈動流に効果的に耐えるため、ロボット装置100が小さいΦlに進入する際には増大しないように構成される方がよい(増大するSpは、ロボット装置100上で、流体引張力Fdragを顕著に増大させるからである)。ロボット装置100の中空円筒状弾性基礎構造の流体引張力はその性質上小さいので、斯かる要求は、更なる努力を行うことなしに満たされるかもしれない。実際、Spは、例えば、Φl=1.5mmにおける0.44mm2からΦl=1における0.28mm2に減少する。小さいΦlにおける血流速度が増大するので、Fdragは、0.1mNから0.3mNに増大するかもしれない。しかし、斯かる増大は重要ではないと考え得る。
【0124】
図24は、ロボット装置100の弾性基礎構造102に形成された異方性表面構造104の完全性λ
hの例示的図を示している。
図24の例において、異方性表面構造104は、複数のセルを有する弾性基礎構造102のメッシュ構造120上に延伸する螺旋構造形態で提供される。螺旋構造は、メッシュ構造のセルの空所によって中断されている。内腔の直径Φ
lの減少に伴って、ロボット装置100の直径が減少すると、ロボット装置100の半径方向変形に沿って、不連続螺旋の完全性λ
hが増大する。1つのピッチに関して言えば、完全性は、コーティングされた螺旋長(すなわち一定および不連続)と完全螺旋長(すなわち種々および連続)との間の比率として定義されてもよい。完全螺旋長は、内腔直径Φ
lに比例している。小さいΦ
lでは完全性λ
hは増大し、軸方向移動のための異方性摩擦力は増大する。より正確に述べると、螺旋形状からの対称の破れ効果および軸方向移動のための異方性摩擦力が増大する。左回り回転も右回り回転も、本明細書記載の作動方法を用いて軸方向の移動を可能にし、磁気的引張力により表面推進力が生じるが、右回りの方が、ロボット装置の速度を改善するものであり、これは、ロボット装置が大きいλ
hを有する小さいΦ
lから、小さいλ
hを有する大きいΦ
lへ移動する場合に特に重要である。
【0125】
図25は、磁石とロボット装置との間の最大距離(I
mag_max)の例示的モデル化を示している。小さい流体引張力および異方性摩擦力の設計なので、ヤング率E
rと内腔直径Φ
lがI
mag_maxを決定する。E
r=6.44MPaの設計を選択すると、I
mag_maxは、内腔直径Φ
lが1.5mmから1.0mmまで全て50mmを越える。Φ
lを減少させるかE
rを増大させると、磁気力およびトルクを増大させる必要性、すなわち半径方向形状適合移動のため、I
mag_maxを減少させる必要性が増大する。
【0126】
特に、Er=6.4MPaのロボット装置は、50mmを越えるImag_maxの要件を達成するものであり、皮質から頭皮までの距離Isについての距離要件が満たされ、実験結果によく一致した。更に、豚の動脈の摩擦係数(CoF)の生体外測定に基づくモデル化は、Er=6.4MPaのロボット装置において、Imag_maxが10cmにも及ぶことを示しており、これは現在のシステム設計の実現可能性を明示している。
【0127】
動脈のモデル化に基づくと、ロボット装置がΦl=1mmの内腔に進入した場合、Er=6.4MPaにおける最大半径方向の力Fnおよび摩擦力Ffricは、豚の動脈において、それぞれ約0.05Nおよび0.004Nであると推定される。この場合、Fnは約6.1kPaの圧縮応力を生じるが、これは内皮細胞を破裂させる定量的閾値約12.4kPaよりも小さい。現在の設計は、内腔との相互作用をより安全なものにする可能性を有している。
【0128】
図26は、ヤング率E
r=6.44MPaに関して、内腔直径Φ
l上の磁石とロボット装置との間の最大距離(I
mag_max)の依存性に関する例示的比較を示すものである。
図26は、モデルに関して計算された依存性並びに実験的に測定された依存性を示している。特に、E
r=6.4MPaのロボット装置100は、50mmを越える全てのI
mag_maxで要件を達成するものであり、実験結果とよく一致している。
【0129】
図27は、メッシュ構造形態の弾性基礎構造上にコーティングされた右回り螺旋形態の異方性表面構造に関して、右回りと左回りとを比較したものである。右回り螺旋は、y
r軸すなわちロボット装置の中央長手方向体軸の周りの回転から、ロボット装置の軸方向移動を助けるものである。実験的に、左回りも右回りも、本明細書記載の作動方法を用いて軸方向の推進力を可能にする。しかし、右回りの方が、左回りと比べて、ロボット装置の速度を有意に増大させるものであり、ロボット装置が、大きい完全性λ
hの内腔直径Φ
lから小さいλ
hの大きいΦ
lに移動する場合は、特にそうである。
【0130】
図28は、f
mag=0.5HzおよびI
mag=55mmにおける、模型Aのロボット装置変位への磁石移動速度v
magの影響を示すものである。模型Aに沿って移動するロボット装置の遅延距離(I
lag)は、ロボット装置がどのようにうまく磁石の後についていくかを示すものである。約0.5mm/sのv
magが、遅延のない作動に適している。ロボット装置が半径方向形状適合を達成するか否かを調べるため、磁石は、例えば、ジョイスティックによる手動操作コマンドによって制御された。どの位迅速に適合が達成できるかの追加試験において、I
mag=55mmが固定された(この値は、全てのΦ
lにおいて半径方向形状適合を可能にするからである)。次に、磁石の種々の移動速度(v
mag)および周波数(f
mag)が調べられた。模型Bおよび対応するモデリングにおける調査は、f
magがv
magほどv
rには寄与しないことを示していた。従って、f
magは0.5Hzに固定された。ロボット装置は、脈動流速を12ml/分に設定した自動モードにおいて、0.25mm/sから4mm/sの異なるv
magを有する模型Aによって、追加試験が行われた。実験結果は
図28に要約されている。v
magを0.5~1mm/sに設定すると、ロボット装置は、遅延することなく、血流に沿った場合も血流に逆らった場合も、約0.18mm/sの平均移動速度で磁石の移動に従った。磁気力およびトルクが様々なので、v
rは一定でないことに注目されたい。
【0131】
図29は、模型Aのロボット装置の自動固定の場合、すなわち外部磁場が存在しない場合を示している。種々のE
rにおけるロボットの摩擦力はF
dragよりも大きいので、外部磁気作動がオフになった場合でも、確実に血流に抵抗できる。ロボット装置は、半径方向適合の他に、磁場がオフになった場合でも脈動流に抵抗するように、自動固定が更に要求されるかもしれない(これは、安全な操作にとって重要である)。斯かる特性を可能にするため、摩擦力F
fricは流体引張力F
dragよりも大きくなければならないであろう。実験及びモデル化の結果が、斯かる要件は、
図29に示される全ての設計で満たされることを示している。斯かる関係は、定量的CoFに基づいて、動脈でも支持されるかもしれない。
【0132】
図30は、血流速度視覚化を有する湾曲した内腔(湾曲したルートおよび分岐点を含む)における生理学的要件を示している。曲率半径の例示的値Rc>2mmおよび分岐点角θ
b∈(30度、120度)が図に示されている。
【0133】
図31は、例えば、E
r=6.44MPaに関して、ロボット装置を湾曲した内腔内に曲げるにあたり、内腔の曲率k
cおよび内腔の直径Φ
lが最小必要トルクT
minに及ぼす影響を示している。極めて屈曲した内腔、すなわち
図30に示されるような湾曲したルートおよび分岐点を移動するにあたり、ロボット装置をz
r軸の周りに曲げる必要がある。斯かる屈曲のための最小必要トルクT
minは、内腔の曲率k
cおよびΦ
lに相関している、すなわちT
min=E
r・I
r(Φ
l)・k
c(ここで、I
rはx
r-z
r平面に沿った断面の二次モーメント)である。k
cの増大(すなわち、小さい曲率半径R
cまたは大きいθ
bを有する屈曲した内腔)およびΦ
lの増大は、湾曲した内腔のT
minを増大させる。曲率半径R
cの減少または分岐点角θ
bの増大によるk
cの増大、あるいはΦ
lの増大は、T
minを増大させる傾向にある。以下においては、生理学的に関連性のあるR
c(>2mm)およびθ
b(30度、120度)の値範囲において効果的な湾曲ルート移動方法を実験的に見出すため、例示目的で、大きいΦ
l=1.45mmに焦点を合わせている。
【0134】
図32は、曲率半径R
c=5mmの血管100の湾曲部を移動する回復可能湾曲ルートの例示的スナップショットを示している。磁石の主導的位置による磁気力F
magからの曲げトルク、磁石の再配向による磁気トルクT
mag,z、および磁石の回転による内腔壁からの反力F
reactはT
minを凌駕し、湾曲ルート移動を実現させる。
図32において、移動を可能にする力およびトルクのみが表示されている。
【0135】
血管200によって画成される湾曲ルート内にロボット装置100を曲げ込むには、ロボット装置100に作用する全トルクはTminを越えている必要がある。斯かる寄与トルクは、(1)磁石の主導的位置による磁気引張力Fmagからのトルク、(2)磁石の再配向によるzr軸の周りの磁気トルク(Tmag,zr)、および(3)ロボット装置100の回転による血管200の内腔壁からの反力(Freact)を含んでもよい。
【0136】
移動経路は、作動方法を図示するため、
図32および33に示されるように、経由点(a)~(d)に離散化される。ロボット装置が湾曲ルートに入り、血管200によって画成される経路に沿って(c)~(d)へ移動すると、磁石は、磁石のy
a軸が(c)~(d)に平行になるように配向され、ロボット装置100を誘導し、同時にロボット装置100のy
r正軸の周りにロボット装置100を回転させる。従って、磁気引張力F
magからのトルクは、ロボット装置を(c)~(d)の方向へ曲げる。一方、T
mag,zrはx
rをx
aに整列させ、ロボット装置を同方向へ曲げる傾向にある。最後に、回転は、x
r軸の正側にロボット装置を転がす傾向にある。ロボット装置が血管200の内腔壁に接触すると、反力F
reactがロボット装置を(c)~(d)の方向へ曲げる。その結果の曲げトルクの合計がT
minを凌駕し、ロボット装置は(c)~(d)に進入する。上述の斯かる手順が、
図32の工程2に示されている。
【0137】
ロボット装置が(c)~(d)から(a)~(b)へ戻ると、磁石は、y
a軸が(a)~(b)に平行になるように配向され、ロボット装置100を誘導し、y
r正軸の周りにロボット装置100を回転させる。従って、磁気引張力F
magからのトルクは、ロボット装置を(a)~(b)の方向へ曲げる。一方、T
mag,zrはx
rをx
aに整列させ、ロボット装置100を(a)~(b)の方向へ曲げる傾向にある。最後に、回転は、x
r軸の正側にロボット装置を転がす傾向にある。ロボット装置が血管200の内腔壁に接触すると、反力F
reactがロボット装置を(a)~(b)の方向へ向け、そして曲げる。上述の斯かる手順が、
図32の工程4に示されている。経路全体の完全な方法が、以下の
図34に要約される。
【0138】
図33は、屈曲ルート移動用の座標システムおよび経由点離散化を例示的に示している。
【0139】
図34は、
図33に示された経由点離散化に関する、血流に沿った屈曲ルート移動並びに血流に逆らった屈曲ルート移動の方法を例示的に示している。磁石の周波数F
magの+およびーの符号は、
図33に示されるy
a軸の周りの磁石の回転方向を表す。
【0140】
図35は、f
mag=0.5HzおよびI
mag=55mmにおける、模型C、D、およびEの種々の曲率半径R
cでのロボット装置移動速度v
rの実験結果を、例示的に示したものである。ロボット装置の平均速度v
rは0.2~0.25mm/sであり、種々の屈曲ルートにおける当該方法の有効性が示されている。従って、結果は、首尾一貫して約v
r=0.18mm/sである(すなわち模型C~Eの結果は、模型Aによって得られたロボット装置の移動速度v
rの結果に一致している)。従って、屈曲ルートの移動が移動速度を犠牲にすることはない。
【0141】
図36は、例示的分岐角(θ
b)60度を有する分岐点での、回復可能分岐移動の例示的スナップショットを示している。
図36では、各時間ステップにおいて移動を可能にする主要な力およびトルクのみが示されている。F
magからの磁気力誘導トルク、磁気トルクT
mag,zr、およびF
reactからの反力誘導トルクの合成がロボット装置を屈曲させ、望みの分岐へ誘導する。
【0142】
分岐点の移動方法は、
図32~34に示される屈曲ルートの方法に類似するものである。30度~120度の分岐角では、ロボット装置100に作用する寄与トルクはT
minよりも大きい。当該方法を示すため、
図36および37に示されるように、経路は、経由点(a)~(f)に離散化されてもよい。
【0143】
ロボット装置100が分岐(c)~(d)に入る手順が、
図36のステップ2および3に示されている。磁石は、y
a軸がルート(c)~(d)に平行になるように配向され、同時にロボット装置100を誘導し、y
r正軸の周りにロボット装置100を回転させる。従って、磁気引張力F
magからのトルクは、ロボット装置を(c)~(d)の方向へ曲げる。一方、T
mag,zrはx
rをx
aに整列させ、ロボット装置100を同じ分岐の方向へ曲げる。最後に、回転は、x
r軸の正側にロボット装置を転がす傾向にある。ロボット装置が内腔ジャンクションに接触すると、反力F
reactが負のx
r軸を示し、ロボット装置100を(c)~(d)の方向へ曲げる。その結果の曲げトルクの合計がT
minを凌駕し、ロボット装置100は(c)~(d)に進入可能となる。
【0144】
ロボット装置100が(c)~(d)から(a)~(b)へ戻る手順が、
図36のステップ5および6に示されている。磁石は、y
a軸が(a)~(b)に平行になるように配向され、ロボット装置100を誘導し、同時にy
r正軸の周りにロボット装置を回転させる。従って、磁気引張力F
magからのトルクは、ロボット装置を(a)~(b)の方向へ曲げる。一方、T
mag,zrはx
rをx
aに整列させ、ロボット装置100を(a)~(b)の方向へ曲げる。最後に、ロボット装置100の回転は、x
r軸の正側にロボット装置100を転がす傾向にある。ロボット装置が血管200の内腔壁に接触すると、反力F
reactが負のx
r軸を示し、ロボット装置を(a)~(b)の方向へ曲げる。ロボット装置100が分岐(e)~(f)に入り、それから戻る場合、類似の方法が外挿されてよい。経路全体の完全な方法が、以下の
図38に要約されている。
【0145】
図37は、
図36に示されるような例示的分岐角(θ
b)60度を有する分岐点での分岐移動における、例示的座標システムおよび経由点離散化を示している。
【0146】
図38は、
図37に示された経由点離散化に関する、血流に沿った分岐移動並びに血流に逆らった分岐移動の方法を例示的に示している。磁石の周波数F
magの+およびーの符号は、
図37に示されるy
a軸の周りの磁石の回転方向を表す。
【0147】
図39は、f
mag=0.5HzおよびI
mag=55mmによる手動制御並びに自動軌道に関して、模型F、G、H、およびIの種々の分岐点角での、ロボット装置の移動速度v
rの例示的結果を示している。提案されている方法の首尾一貫性を調べるため、当該方法は、手動軌道(すなわちジョイスティックによる操作)および自動軌道(すなわち所定の軌道からの経由点による操作)により、模型F~Iにおいて評価されている。自動軌道は、手動制御の無作為性を排除するのに使用される。平均速度v
rは0.15~0.35mm/sであり、種々のθ
bおよび異なるモード(すなわち、手動または自動)において、種々の模型で比較的一定である。従って、結果は約v
r=0.18mm/sである(すなわち模型F~Iの結果は、模型Aによって得られたロボット装置の移動速度v
rの結果に一致している)。従って、分岐点の移動が移動速度を犠牲にすることはない。しかし、v
rの値は、種々のロボット装置100および模型の製造の違い故に、正確には同じではない。上述したように、屈曲内腔の移動は、磁力、磁気トルク、および血管の内腔壁との相互作用によって可能となる。当該方法は、同じ磁気作動構成および模型および動脈に関する類似の弾性特性が与えられるならば、実際の動脈へ移されるべく期待されるものである。
【0148】
図40は、血管200の模型Jによって提供される、曲がりくねったルートに沿った例示的移動を示している。ロボットの移動機能は、組み合わされた生理学的特徴を有する模型で証明されている。模型Jの曲率半径R
cは2.5mm~5mmである。内腔直径Φ
lは、例えば、1.45mmに設定される。模型Jの入口への脈動流量は12ml/分である。ロボットアームの構成は、グローバルx軸の周りに+/-90度まで磁石の配向が可能になる点に注目されたい。かなり曲がりくねったルートの場合、ロボットアーム操作が特異姿勢になる場合には、ロボット装置の移動を助けるため、模型の再配向が実行されてもよい。
【0149】
図41は、血管200の模型Kによって提供される急峻なルートでの、ロボット装置100の例示的移動を示している。曲がり角の角度は0度であり、曲率半径R
cは1mmである。模型Kの入口への脈動流量は12ml/分である。ロボット装置100の中央長手方向体軸に沿って2つのセルを有するメッシュ構造のロボット装置100は、斯かる特定の条件において、柔軟性のある移動を示している。
【0150】
図42は、2Dの模型Lの分岐204における例示的移動を示している。模型Kの入口への脈動流量は12ml/分である。模型Lは6つの例示的分岐204を有しており、Φ
lは、例えば、1mm~1.5mmに設計される。斯かる模型におけるロボット装置100の移動の成功は、力学の適切な理解および脈動流を有する種々のΦ
lの複雑な内腔における形状適合移動に向けての効果的なシステム開発に確約を与えるものである。
【0151】
図43は、模型Mによって提供される頭蓋骨模型210の3D分岐における例示的移動を示すものである。模型Mは、模型Lの3Dバージョンであり、大脳半球および脳模型に固定されている。斯かる模型におけるロボット装置100の移動の成功は、力学の適切な理解および脈動流を有する種々のΦ
lの複雑な内腔における形状適合移動に向けての効果的なシステム開発に確約を与えるものである。
【0152】
図44は、模型Mによって提供される頭蓋骨模型210の3D分岐における例示的移動を示すものである。ロボット装置100を医学的に更に関連ある設定で評価し、カテーテルに対する有利性のシナリオを証明するため、ロボット装置100は、医療用チューブ214を通して送達され、その移動は例えば1mm~1.5mmのΦ
lを有する豚の動脈で試験される。脈動流がポンプで内部に送られる。使用される血管200は、豚の心臓から切断されたばかりの冠状動脈である。実験中、12ml/分の血液アナログが、ポンプで動脈へ送られる。ロボット装置100は、内部直径d
c=0.072インチ(すなわちd
c=1.8288mm)のカテーテル(Nordoson Medical製のポリウレタン医療用チューブ)によって、まず標的部位の近くへ送られる。次に、ロボット装置は、カテーテルがアクセスできない部位へ移動される。例えば、動脈内のロボット装置の移動を、B-mode、Vevo3100(FUJIFILM Visualsonics, Inc.)を用いて視覚化するのに、超音波撮像が利用されてもよい。脈動流は、血液アナログに追加される造影剤(例えば、Vevo MicroMarker Non-Targeted Contrast Agent(FUJIFILM Visualsonics, Inc.))によって視覚化されてもよい。概念実証の実演が、ロボット装置は既存の血管内ツールと適合するものであり、しかもアクセス容易性を改善するものであることを示している。例えば、先端直径d
c=0.027インチ(すなわち、d
c=0.6858mm)を有する薄いマイクロカテーテルが、遠位部分の実際的使用において選択されてもよい。種々の初期直径を有するロボット装置100が、アプリケーションニーズに基づいて、斯かるマイクロカテーテルを用いて製造および送達されてもよい。例えば、ロボット装置100は、血流迂回として使用される場合、他の医薬品を運ぶ必要がないので、以下に示されるように、マイクロカテーテルによって運ばれ送達されるのに十分な大きさまで折り畳まれてもよい。他方、ロボット装置100は、医薬品を送達する際に、他の機能ツールを運ぶ必要があるかもしれない。従って、ロボット装置100は折り畳まれ過ぎてはいけないし、最初の直径はマイクロカテーテルの直径d
cに適合する必要があるであろう。上述のマイクロカテーテルのサイズに基づき、同じ製造技術を用いて、外部直径が例えばd
r=0.68mmで内部直径が例えばd
i=0.58mmの適合ロボット装置100が製造されてもよい。
【0153】
図45は、医療用カテーテルを用いて血管システムの部位(a)へロボット装置100を送達する例を示している。部位(a)で開始される、血管200(すなわち豚の動脈)内のロボット装置100の移動は、超音波撮像で視覚化される。ロボット装置100は、部位(b)へ移行する。t=1分10秒において磁石が取り除かれたが、ロボット装置100は、無事、血流に抵抗できた。その後、ロボット装置100は部位(a)へ送り戻された。
【0154】
ロボット装置は、例えば、低侵襲性血管内手術で使用されるX線撮像下で試験されてもよい。X線撮像(例えば、XPERT(登録商標)80,Cabinet X-ray System,KUBTEC(登録商標)Scientific)は、種々の条件下、例えば、(1)PDMS模型内のロボット装置100、(2)頭蓋骨模型でカバーされたPDMS内のロボット装置100、(3)豚の血管内のロボット装置100、(4)頭蓋骨模型でカバーされた血管内のロボット装置100などで実施される。PBS内の造影剤(例えば、イオメロン400、注射用溶液(Bracco UK Limited))が、質量比1対1で、内腔内に注入されてもよい。2つの重要な撮像パラメータである電圧および電流が、最高の撮像結果を見つけるのに掃引されてもよい。背景素材に対するロボット装置の明瞭な特定が、人間の検査ベースの介入またはロボット手術用の将来的臨床使用可能性の面で、その効果を支持するであろう。
【0155】
図46は、ロボット装置100を検出するための例示的X線撮像パラメータを示している。
図46Aは、造影剤を有するが、カバーとしての頭蓋骨模型を有しないPDMS模型201において、ロボット装置100を検出するための例示的X線撮像パラメータを示している。
図46Bは、造影剤を有し、更にカバーとしての頭蓋骨模型を有するPDMS模型201において、ロボット装置100を検出するための例示的X線撮像パラメータを示している。
図46Cは、造影剤を有するが、カバーとしての頭蓋骨模型を有しない血管200において、ロボット装置100を検出するための例示的X線撮像パラメータを示している。
図46Dは、造影剤を有し、更にカバーとしての頭蓋骨模型を有する血管200において、ロボット装置100を検出するための例示的X線撮像パラメータを示している。
【0156】
図47は、超音波検査画像収集の例示的特性を示している。
図47Aは、PDMS模型201内のロボット装置100の例示的超音波検査画像収集を示している。使用された超音波検査画像収集パラメータは、MX201、送信周波数15MHz、120~199fpsの獲得、および26~57dBの増加である。
【0157】
図47Bは、PDMS模型201内のロボット装置100の例示的超音波検査画像収集を示している。使用された超音波検査画像収集パラメータは、MX550D、送信周波数40MHz、70~247fpsの獲得、および33~70dBの増加である。
【0158】
図47Cは、血管200内のロボット装置100の例示的超音波検査画像収集を示している。使用された超音波検査画像収集パラメータは、MX201、送信周波数15MHz、120~199fpsの獲得、および26~57dBの増加である。
【0159】
図47Dは、血管200内のロボット装置100の例示的超音波検査画像収集を示している。使用された超音波検査画像収集パラメータは、MX550D、送信周波数40MHz、70~247fpsの獲得、および33~70dBの増加である。
【0160】
図48は、例示的X線撮像試験を示している。X線撮像(例えば、XPERT(登録商標)80,Cabinet X-ray System,KUBTEC(登録商標)Scientific)下のロボット装置検出は、種々の条件下で行われる。画像の第一欄は、PDMS模型内のロボット装置のX線画像を示している。画像の第二欄は、造影剤を有するPDMS内のロボット装置のX線画像を示している。画像の第三欄は、頭蓋骨模型によってカバーされた造影剤を有するPDMS内のロボット装置のX線画像を示している。
【0161】
図49は、種々の条件下のロボット装置検出における、更なるX線撮像試験(例えば、XPERT(登録商標)80,Cabinet X-ray System,KUBTEC(登録商標)Scientific)を示している。画像の第一欄は、冠状動脈内のロボット装置のX線画像を示している。画像の第二欄は、造影剤を有する冠状動脈内のロボット装置のX線画像を示している。画像の第三欄は、頭蓋骨模型によってカバーされた造影剤を有する冠状動脈内のロボット装置のX線画像を示している。
【0162】
図50は、医療用の試薬140の局所オンデマンド送達用に構成された折り畳み式構造130(例えば、SMPベースの折り畳み式構造)を有する例示的ロボット装置100を示している。試薬は、例えば、標的位置で血栓溶解を達成するための血管内組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)であってもよい。斯かるtPAの局所オンデマンド送達は、例えば、急性虚血性脳卒中の治療に使用されてもよい。
図50Aは、メッシュ構造120の形態で提供される中空円筒状弾性基礎構造102を有するロボット装置100を示している。メッシュ構造内に、SMPベースの折り畳み式構造130が組み込まれている。
図50Aの例において、2つのSMPベースの折り畳み式構造130が組み込まれている。
図50Bは、時間t
1から時間t
2およびt
3を通って時間t
4に至るタイムラインに沿って詳細に、
図50AのSMPベースの折り畳み式構造130を示している。
図50Bに示される例示的SMPベースの折り畳み式構造130は、試薬136を受け取るように構成された立方体の容器を提供する長方形の保持セクション132を有している。保持セクション132を閉じ、試薬136が放出するのを防止するため、保持セクション132は、褶曲軸135の周りに折り畳まれ、SMPベースの折り畳み式構造130によって提供される立方体の受納器134の形態にされる。保持セクション132が折り畳まれ、立方体受納器134によって受納されている限り、保持セクション132は受納器134によってカバーされ、保持セクション132内に置かれた試薬136は放出されることはない。保持セクション132が褶曲軸135の周りに開かれることにより拡張され、SMPベースの折り畳み式構造130によって提供される立方体受納器132から出されると、保持セクション132はもはや受納器134によってはカバーされず、試薬136が保持セクション132から放出されることになる。
【0163】
タイムラインは、時間t1における閉じた状態(すなわち折り畳まれた状態)から時間t4の開かれた状態(すなわち折り畳まれていない状態)に至る、SMPベースの折り畳み式構造130の異なる状態を示している。所定の形状記憶転移温度未満の温度において、SMPベースの折り畳み式構造130は、折り畳まれた状態(すなわち閉じた状態)にある。折り畳まれた状態において、保持セクション132は褶曲軸135の周りに折り畳まれ、受納器134によって受納されている。加熱(すなわち無線周波数誘導加熱)により、SMPベースの折り畳み式構造130の温度Tを上げてもよい。所定の形状記憶転移温度に達すると、SMPベースの折り畳み式構造130は閉じた保持セクション132を開き、試薬136を放出する。この開いた状態は、時間t2~t4に図示されている。保持セクション132は、褶曲軸135の周りに開かれる。例えば、保持セクション132は、褶曲軸135の周りに180度回転されることにより開かれる。時間t2およびt3では、保持セクション132は部分的に開かれている。時間t4において、保持セクション132は、最終的な開かれた状態に達する。SMPベースの折り畳み式構造130は、例えば、外部無線周波数コイルを用いてSMPベースの折り畳み式構造の無線周波数誘導加熱の効率を高めるため、金属粒子を有していてもよい。
【0164】
局所オンデマンド医薬品送達の優越性を有する、以下に証明される医療機能の他に、ロボット装置100は、tPAへの第二全身曝露のリスクおよび合併症を更に回避するものである。臨床的に、最初の静脈内血栓溶解の試みが望みの再疎通を達成しなければ、その後、全血管システムを再び直ちにtPAに曝露するのは危険である。医薬品の反復全身曝露による内部出血のリスクがあるからである。従って、本明細書記載の現在提案されているロボット装置100は、斯かるシナリオの解決策として機能するかもしれない。更に、カスタマイズされた濃縮医薬品が開発され、ロボット装置100にロードされ、治療効果を改善するかもしれない。例えば、0.02mgtPAの局所適用が3.5mm3の体積を有する血栓を溶解できることが証明されている。しかし、活性成分であるアルテプラーゼの濃度は、商業用のActilyse(登録商標)では僅か2.1%である。467mgのtPAは10mgのアルテプラーゼを含んでいる。従って、更に濃縮されたアルテプラーゼでは、更に僅かな量の医薬品が必要とされるようになるであろう。加えて、他の機能性ツール、例えば繊毛様の構造によって実現されるミニチュアフローポンプが、医薬品送達効果を更に向上させるため、ロボット装置100内に適切に組み込まれてもよい。
【0165】
構造130は、例えば、鋳造技術を用いてSMP素材で製造されてもよい。時間ステップt4に示される構造130は、例えば、まず3D印刷され、次に陰性PDMSモールド(例えば、ベースとクロスリンカーの質量比10対1)を製造するのに使用されてもよい。構造130の陽性モデルを3D印刷するには、構造130を画成する3Dデジタルモデルがテンプレートとして使用されてもよい。テンプレートは、テンプレートの物理コピーを3D印刷するための3D印刷装置を制御するように構成された計算装置へ提供されてもよい。SMPの合成に使用される素材は、例えば、ボリ(ビスフェノールA-co-エピクロロヒドリン)グリシジル・エンドキャップ(PBGD)、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)(Jeffamine D230)、およびネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(NGDE)である。例えば、1gのPBGDを摂氏70度で20分、炉で加熱することにより溶解する。次に、溶解したPBGDに360μLのJeffamine D230と300μLのNGDEを添加し、5分間攪拌する。その結果得られる溶液は、例えば、1対4の質量比で、酸化鉄粒子(Sigma-Aldrich)と混合する。合成物は調整されたPDMSモールドへ入れられる。摂氏100度で1.5時間、炉で硬化させ、摂氏130度で1時間、後硬化させた後、そのSMPベースの構造は、PDMSモールドから離型される。
【0166】
図51は、例示的無線周波数ベースの加熱および混合内容物の放出を示している。
図51で放出される例示的混合内容物は、絹フィブロインおよび蛍光色素から成る。時間t=0分において、ロボット装置100の無線周波数ベースの加熱が開始される。図示されているのは、加熱開始後の時間における、内容物の放出および血管200内の内容物の拡散である。
【0167】
脈動流条件下の遠位動脈内腔環境下において、ロボット装置100は、約束されている移動機能を有するので、無線医療装置として機能させてもよい。特に、2つの概念実証が、ロボット装置は、例えば、局所オンデマンド医薬品送達および/または血流迂回を実現するのに使用されてもよいこと、従って、遠位動脈におけるAIS、動脈瘤、およびAVMにおいて、現在最新のカテーテルベースの治療を向上させる可能性のあることを証明している。
【0168】
中央脳動脈のAISにおいて、近位M1およびM2の大きな血管閉塞は、例えば、動脈内の機械的血栓回収術で成功裏に治療されている。しかし、遠位M3およびM4部位における屈曲、小さい内腔直径、および深い部位の故に、機械的血栓回収術による閉塞の治療(その部位において静脈内/動脈内血栓回収術が適用される)はまだ標準化されていない。静脈内血栓回収術は、斯かる遠位閉塞の半分乃至3分の2の再疎通に失敗する。一方、カテーテルベースの動脈内血栓回収術は、アクセス容易性の面で依然として限定されている。斯かる遠位血管部位における血栓回収術を向上させるため、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を局所的に送達するのに、無線のロボット装置100が使用できる。斯かる方法は、放出部位および量が積極的に制御できるので、斯かる医薬品の効果を改善するのに有望であろう。更に、医薬品の標的適用は、局所濃度を改善するものであり、従って、全身曝露を最小限に抑え、望ましくない合併症を減少させるであろう。
【0169】
斯かる目標を達成するのに、一例として、形状記憶ポリマー(SMP)ベースの折り畳み式構造130(内部にtPAを保持しており、遠隔無線周波数(RF)加熱によりそれを放出する)が提案されている。作動原理の実証が、蛍光色素を用いて
図51に示してある。RFコイルは、例えば、ロボット装置100(やはりI
sを満たしている)から20mm離れた位置に置かれる。ロボット装置100は、RF加熱の効率を高めるため、磁性材(例えば、酸化鉄(Fe
3O
4)ナノ粒子)を有している。PDMS対NdFeB対Fe
3O
4の比は、例えば、1対3対1であってもよい。RF加熱に使用される最大電力は、例えば、EASYHEAT(Ambrell Corporation)を用いて、337kHzで752Aであってもよい。
【0170】
約5分間加熱した後、SMPは所定の形状記憶転移温度(摂氏30度+/-摂氏5度)に達し、構造が開く。転移温度は、現在の作業で採用される方法を用いて、摂氏90度まで正確に調整されてよい(人間の平均体温が摂氏37度なので、これは実際の臨床使用において有望である)。SMP構造が開いた後、絹フィブロインおよび蛍光色素からなるカプセルに入った固形丸薬が脱イオン水に溶け出すが、これは黄色の拡散により明確に視覚化できる。
【0171】
内容物放出の視覚化実証のため、蛍光色素溶液(50重量%)を混ぜた絹フィブロイン水溶液(15重量%)製の丸薬(例えば、体積比1対3)が使用される。混合溶液は、望みの丸薬形状を有するPDMSモールドに入れられてもよい。固形丸薬は水が蒸発した後に取得されるが、それは、接続エージェントとして例えばEcoflex 00-10(Smooth-On, Inc.)を用いて、SMPベースの構造のスロット132に組み立てられてもよい。全体構造は摂氏50度に加熱され、
図50Bのステップt
1に示されるように、手動で閉じられてもよい。SMPの形状は、それを固定するため、温度が室温(すなわち摂氏23度)に下がるまで保持されてもよい。最終ステップにおいて、組み込まれた丸薬を有する構造は、Ecoflex 00-10を用いて、ロボット装置100の内側ビームに組み立てられてもよい。例えば、
図51および
図54による血栓溶解試験において、tPA粉末(Actilyse(登録商標),Boehringer Ingelheim International GmbH)は、SMPベースの折り畳み式構造130のスロット132に直接ロードされてもよい。
【0172】
図52は、折り畳み式構造130(例えば、折り畳み式形状記憶構造)を有する例示的ロボット装置100の断面図を示す。ロボット装置100は、中空円筒状弾性基礎構造102を有する。ロボット装置100は、弾性基礎構造102に追加された(例えばコーティングされた)1つ以上の突起形状で実施される外部異方性表面構造104を有している。折り畳み式形状記憶構造130は、基礎構造102の内部表面に配置されており、半径方向であって、ロボット装置100の中央長手方向体軸の方向に、閉じた保持セクションを開くように構成されている。折り畳み式構造130は、例えば、形状記憶ポリマーのような形状記憶素材を有していてもよい。折り畳み式構造130は、例えば、感光材料、電子材料、磁性材、および超音波応答性の素材を有していてもよい。
【0173】
図53は、折り畳み式構造130(例えば、折り畳み式形状記憶構造)を有する別の例示的ロボット装置100の断面図を示す。ロボット装置100は、中空円筒状弾性基礎構造102を有する。ロボット装置100は、弾性基礎構造102に追加された(例えばコーティングされた)1つ以上の突起形状で実施される外部異方性表面構造104を有している。折り畳み式形状記憶構造130は、基礎構造102の内部表面に組み込まれており、半径方向であって、ロボット装置100の中央長手方向体軸の方向に、閉じた保持セクションを開くように構成されている。折り畳み式構造130は、例えば、形状記憶ポリマーのような形状記憶素材を有していてもよい。折り畳み式構造130は、例えば、感光材料、電子材料、磁性材、および超音波応答性の素材を有していてもよい。
【0174】
図54は、例えば、
図50Aのロボット装置100を用いた、tPAによる血栓溶解の例示的効果を示している。血栓には、黒い破線が付されている。局所オンデマンド医薬品送達の効果を確認するため、血管200内の人工血液血栓の近くにおける、0.02mgのtPA(Actilyse(登録商標),Boehringer Ingelheim International GmbH)の例示的放出が示されている。この血液血栓は、約3.5mm
3の体積を有している。サンプルは、摂氏37度の一定温度に保たれた。tPAの局所適用の有効性を示すため、tPAの送達がない対照群との血栓溶解結果の比較が図示されている。臨床的に、ロボット装置100は、医薬品が血栓に放出された後、直ちに回収されてもよい。結果の比較は、tPA放出の0時間、放出後の1時間、2時間、そして3時間に示されている。
【0175】
図55は、
図54設定の血栓溶解効果に関する例示的定量結果の比較を示している。図示されているように、血栓体積のサイズは、対照群と比較して、tPAの局所放出により有意に減少している。
【0176】
図56は、マイクロカテーテル160に配置された例示的ロボット装置100を示している。マイクロカテーテル160は、例示的直径d
c=0.03インチ(すなわち、d
c=0.762mm)を有する。ロボット装置100は、マイクロカテーテル160を用いて、血管システムに挿入されてもよい。ロボット装置100とマイクロカテーテル160との組み合わせは、例えば、動脈瘤および/または動静脈奇形の治療の一環として、血管内血流迂回用に使用されてもよい。ロボット装置はマイクロカテーテル160に適合させるために圧縮され、その結果、ロボット装置100の直径が減少する。加えて、比較のため、直径が減少していないロボット装置100も示してある。
【0177】
遠位神経血管ルートの動脈瘤およびAVMにおいて、カテーテルに依存する現在の低侵襲性治療は、病巣部位の近辺へのアクセス容易性および送達される治療薬の適応性の面で、制限されている。ロボット装置100は、斯かる遠位部分へのフローダイバーター(積極的に制御され、柔軟なステント様のフローダイバーター)として機能することが証明されている。これを達成するため、ロボット装置は、遠位M3部分に適合するマイクロカテーテル160に十分適合するように押しつぶされる。直径dcは0.03インチである(dc=0.03インチ、すなわち、dc=0.762mm)。
【0178】
図57は、袋状動脈瘤208および血管200と袋状動脈瘤208とを接続する頸部206を有する例示的血管200を示している。
図58は、頸部206をブロックして、血液が袋状動脈瘤208に流れ込むのを防止する目的で袋状動脈瘤208に配置されたロボット装置100を示している。
図58に示される例におけるロボット装置100のメッシュ構造の多孔性は、頸部サイズ0.44mm
2に対して46%である。空所と全面積との間の比率として頸部206をカバーするパッチで測定される多孔性は、血流迂回の効果を示している。多孔性が70%未満であれば、血流条件は、血栓形成の開始および動脈瘤塞栓の促進にとって更に好ましい。
【0179】
ヤング率Erが例えば6.44MPaの場合、押しつぶされたロボット装置100は、28~83GPaを有する通常のNitinolフローコンバーターと比べて、M3部分の末端にまで送達されるのに十分な柔軟性を有している。次に、ロボット装置100は解放され、血流を迂回させるため、曲がりくねった遠位部位にまで磁気的に制御されて送られる。特に、例えば頸部206のサイズ0.44mm2を有する袋状動脈瘤208において、ロボット装置は46%の多孔性を達成するであろうが、これは効果的な塞栓を起こすのに有望である。空所と全面積との間の比率として頸部206をカバーするパッチで測定される多孔性は、血流迂回の効果を示すであろう。多孔性が70%未満であれば、血流条件は、血栓形成の開始および動脈瘤塞栓の促進にとって更に好ましいことを、定量調査が示している。
【0180】
図59は、マイクロカテーテル160によって送達され、模型の動脈瘤208を有する望みの病変部位へ表面推進力を用いて磁気的に移動される、ロボット装置100を用いた例示的血流迂回を示している。動脈瘤は、血管200の分岐204に位置している。マイクロカテーテル160は、例示的直径d
c=0.03インチ(すなわち、d
c=0.762mm)を有する。t=0秒において、ロボット装置100は、マイクロカテーテル160を用いて送られる。血管200を通過する血液の流量は、例えば12ml/分である。マイクロカテーテル160からのロボット装置100の解放が、t=3秒で示される。動脈瘤208を有する望みの病変部位へ向かう分岐204への、血管100を通過する解放されたロボット装置100の動きが、t=50秒で示されている。t=120秒において、ロボット装置100は、動脈瘤208を有する望みの病変部位に到達する。
【0181】
図60は、血管システムに挿入されるロボット装置を作動および制御するため、磁石156を作動および制御するように構成された例示的作動/制御装置150を示している。作動/制御装置150は、例えば、計算装置10を有する。計算装置10は、1つ以上の処理装置を有するハードウェア構成要素54並びに機械実行可能プログラム命令を記憶するメモリを有していてもよい。1つ以上の処理装置によるプログラム命令の実行により、当該1つ以上の処理装置は、計算装置10を制御し、それにより移動装置152の動きを制御する。移動装置152は、磁石156を有するロボットアーム154を有している。磁石156は、ロボットアーム154の遠位端に搭載されている。計算装置10は、ユーザーが計算装置10と相互作用できるように、キーボード58やマウス56などの1つ以上の入力装置を更に有していてもよい。更に、計算装置10は、ユーザーが磁石156の動きを制御できるように、1つ以上の出力装置、例えば、制御要素52を有するグラフィカルユーザ―インターフェース50(例えば、GUI要素)を提供するディスプレイ24などを有していてもよい。
【0182】
磁石156は、例えば、回転して磁場を発生する永久磁石であってもよい。磁石156は、例えば、ステップモーターを用いて回転されてもよい。磁場は、ロボット装置の中央長手方向体軸の周りにロボット装置の回転を誘導するように構成されている。移動装置152は、コンピュータ装置によって制御され、所定の軌道が所定の距離で血管に平行に延伸している限り、血管システムの血管に沿って磁石156を移動させるように構成されている。それにより、ロボット装置の動きは、血管内のロボット装置の表面推進力を用いて、血管を通して磁気的に加勢される。
【0183】
更に、計算装置10は、血管システム内のロボット装置の位置および/またはロボット装置が移動する血管の形状を決定するため、スキャナ59(例えば、X線スキャナ)を有していてもよい。血管の形状は、磁石の軌道を決定するのに使用されてもよい。
【0184】
ハードウェア構成要素は、例えば、50mm立方体の永久磁石156(N45,IMPLOTEX GmbH)、磁石156を回転させるためのステップモーター(NEMA17)、リンクされた7-DoFロボットアーム(Panda、Franka Emika GmbH)を有していてもよい。通信ソフトウェアは、Robot Operating System(ROS Melodic)のフレームワーク上に構築されてもよい。通信フレームワークに使用されるノードには3つの主要グループ、すなわちモーションコマンドジェネレータノード、ステップモーターコントローラーノード、およびアームコントローラーノードが存在する。特に、モーションコマンドは、手動入力でもよいし、あるいは所定軌道の自動生成経由点からもたらされてもよい。手動操作中、ジョイによってパブリッシュされるコマンドは、アームコントローラーノード(アームジョイレシーバー)およびステップモーターコントローラーモード(ステップモータージョイレシーバー)によってサブスクライブされる。自動操作モード中、所定の経由点はモーションコマンドジェネレータ―ノードによってパブリッシュされ、2つのコントローラー(アームコマンドレシーバーおよびステップモーターコマンドレシーバー)によってサブスクライブされる。全体システムが、エンドエフェクタ(すなわち立方体磁石)の回りに6-DoF空間操作を可能にする。ロボット装置の回転方向は、例えば、永久磁石156によって発生する特定磁場により、磁石156の逆であってもよい。
【0185】
図61は、別の例示的作動/制御装置150を示す。
図61の作動/制御装置150は、
図60の作動/制御装置150に対応する。加えて、
図61の作動/制御装置150は、ロボット装置の折り畳み式構造の内部エネルギーレベルを増大させるためのエネルギー源158、例えば、ロボット装置の折り畳み式形状記憶構造を無線周波数的に加熱するように構成された無線周波数コイルを有していてもよい。折り畳み式構造は、医薬品を保持するように構成された閉じた保持セクションを提供し、当該保持セクションは、所定の内部エネルギー、例えば、無線周波数加熱によって誘導される形状記憶転移温度に達した際に開かれ、医薬品を放出する。計算装置10は、例えば、エネルギー源158を制御し、それにより、例えば無線周波数加熱により内部エネルギーレベルを増大させるように構成されてもよい。例えば、エネルギー源158は、ロボットアーム154の遠位端に搭載される。
【0186】
図62は、血管を通してロボット装置を動かすように構成された磁石を作動および制御するための例示的計算装置10の概略図を示している。計算装置10は、数多くの他の汎用または専用コンピュータシステム環境または構成で操作されてよい。計算装置10は、コンピュータ装置実行可能命令、例えば、計算装置10によって実行可能なプログラム命令を有するプログラムモジュールの一般状況下で記述されてもよい。一般的に、プログラムモジュールとは、特定のタスクを実行する、あるいは特定の抽象的なデータタイプを実施するルーティン、プログラム、オブジェクト、構成要素、論理、データ構造などである。計算装置10は、タスクが通信ネットワークで接続される遠隔処理装置によって実行される、分散コンピューティング環境下で実施されてもよい。分散コンピューティング環境において、プログラムモジュールは、ローカルおよび遠隔コンピュータ装置記憶媒体(メモリ記憶装置を含む)に配置されてもよい。
【0187】
図62において、計算装置10は、汎用コンピュータ装置の形態で示されている。計算装置10の構成要素には、限定されないが、1つ以上の処理装置または処理ユニット16、システムメモリ28、およびシステムメモリ28を含む種々のシステムを処理装置16に連結するバス18が含まれる。バス18は、数タイプのバス構造のうちの1つ以上(例えば、メモリバスまたはメモリコントローラ、周辺バス、アクセラレイティッドグラフィックスポート、種々のバスアーキテクチャのうちの任意のアーキテクチャを用いる処理装置またはローカルバスを含む)を表す。斯かるアーキテクチャには、例えば、限定されないが、業界標準アーキテクチャ(ISA)バス、マイクロチャネルアーキテクチャ(MCA)バス、強化ISA(EISA)バス、ビデオエレクトロニクススタンダーズアソシエーション(VESA)ローカルバス、および周辺構成要素相互接続(PCI)バスなどが含まれる。
【0188】
計算装置10は、種々のコンピュータ装置読み取り可能記憶媒体を有していてもよい。斯かる媒体は、計算装置10によってアクセス可能な任意の記憶媒体であってよく、揮発性および不揮発性記憶媒体並びに取り外し可能および取り外し不能記憶媒体がそれに含まれる。
【0189】
システムメモリ28には、揮発性メモリ形態のコンピュータ装置読み取り可能記憶媒体、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)30および/またはキャッシュメモリ32
などが含まれてもよい。計算装置10は、他の取り外し可能/取り外し不能、揮発性/不揮発性コンピュータ装置記憶媒体を更に有してもよい。例えば、記憶システム34は、ハードドライブとも呼ばれる取り外し不能不揮発性磁気媒体との間で読み取ったり書き込んだりするのに提供されてもよい。例えば、取り外し可能不揮発性磁気ディスク(例えば、フロッピー(登録商標)ディスク)との間で読み取ったり書き込んだりする磁気ディスクドライブ、および取り外し可能不揮発性磁気ディスク(例えば、CD-ROM、DVD-ROM,または他の光学記憶媒体)との間で読み取ったり書き込んだりする光学ディスクドライブが提供されてもよい。斯かる例において、各記憶媒体は、1つ以上のデータ媒体インターフェースによってバス18に接続されていてもよい。メモリ28は、例えば、磁石の動きを制御するための制御コマンドを含んでもよい。メモリ28は、例えば、無線周波数コイルを制御するための制御コマンドを更に含んでもよい。
【0190】
プログラム40は、1つ以上のプログラムモジュール42のセットを有してもよく、例えば、メモリ28に記憶されてもよい。プログラムモジュール42は、オペレーティングシステム、1つ以上のアプリケーションプログラム、他のプログラムモジュール、および/またはプログラムデータを有してもよい。オペレーティングシステム、1つ以上のアプリケーションプログラム、他のプログラムモジュール、およびプログラムデータまたはそれらのいくつかの組み合わせは、ネットワーキング環境の実施を含んでもよい。1つ以上のプログラムモジュール42は、磁石の動きを制御するように構成されてもよい。1つ以上のプログラムモジュール42は、無線周波数コイルを制御するように更に構成されてもよい。
【0191】
計算装置10は、ユーザーが計算装置10との間で相互作用できるようにする1つ以上の外部装置、例えば、キーボード、マウスのような位置決め装置、およびディスプレイ24と更に通信してもよい。かかる通信は、入力/出力(I/O)インターフェース22を通して実施できる。計算装置10は、ネットワークアダプタ20を通して、1つ以上のネットワーク、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、一般の広域ネットワーク(WAN)、および/またはインターネットなどの公共のネットワークと更に通信してもよい。ネットワークアダプタ20は、バス18を通して、計算装置10の他の構成要素と通信してもよい。図示されてはいないが、計算装置10と一緒に、他のハードウェアおよび/またはソフトウェア構成要素が使用できることは理解されたい。
【0192】
図63は、
図60または61に示される作動/制御装置のような制御装置を制御および作動する例示的方法を示している。作動/制御装置は、血管システムの血管に挿入されるロボット装置の動きを制御するように構成された磁石を有している。ブロック300において、磁石の動きが開始点において開始される。磁石は磁場を発生し、それが中央長手方向体軸の周りにロボット装置の回転を誘導し、その結果、ロボット装置の表面推進力が生じる。例えば、発生した磁場は回転磁場である。例えば、回転させて回転磁場を発生させるのに、永久磁石が使用されてもよい。例えば、磁場(例えば、回転磁場)を発生させるのに、電磁石が使用されてもよい。ブロック302において、磁石は、所定の軌道に沿って移動される。軌道は血管の後について行き、磁石は血管に沿って移動し、血管を通って血管システム内の所定の目的地へ至るロボット装置の動きは磁気的に加勢される。例えば、磁石はロボット装置を引っ張り、軌道に沿ってロボット装置の前を移動してもよい。血管に沿った磁石の開始点は、ロボット装置が、血管内のカテーテル(例えば、マイクロカテーテル)から解放される位置に対応してもよい。ブロック304において、磁石の動きは、所定の軌道の端の標的位置に達した際に停止してもよい。所定の軌道の端の磁石の標的位置は、血管内のロボット装置の標的位置に対応する、血管沿いの位置に対応してもよい。加えて、回転磁場はスイッチをオフにされてもよい。永久磁石の場合、例えば、磁石の回転は停止されてもよい。電磁石の場合、例えば、電磁石の回転は停止されてもよい、および/または電磁石はスイッチをオフにされてもよい。
【0193】
図64は、作動/制御装置を制御する別の例示的方法を示している。
図64のブロック300~304、すなわち血管システムの血管内の標的位置へのロボット装置の移動は、
図63のブロック300~304に対応する。ブロック306において、折り畳み構造へのエネルギーインプットが実行される(例えば、無線周波数加熱が実行される)。斯かる目的のため、エネルギー源(例えば、無線周波数コイル)が作動される。無線周波数コイルは、ロボット装置が有する折り畳み式構造(例えば、折り畳み式形状記憶構造)の加熱を誘導してもよい。折り畳み式形状記憶構造は所定の形状記憶転移温度まで加熱され、その時点で、折り畳み式形状記憶構造の閉じた保持セクションが開かれ、ロボット装置が運んだ医薬品を放出する。エネルギーインプット(例えば、無線周波数加熱)の後、磁石は後退させてもよい。ブロック308において、磁石の逆移動が開始されてもよい。磁石は磁場を発生させ、それがロボット装置を中央長手方向体軸の周りに逆回転させ、ロボット装置の逆表面推進力が生じる。例えば、発生した磁場は、逆方向に回転する回転磁場である。例えば、逆の回転方向に回転させて回転磁場を発生させるのに、永久磁石が使用されてもよい。例えば、磁場、例えば逆回転磁場を発生させるのに、電磁石が使用されてもよい。ブロック310において、磁石は、所定の軌道に沿って後退される。軌道は血管の後について行き、磁石は血管に沿って後退し、血管を通って血管システム内の開始点へ戻るロボット装置の動きは磁気的に加勢される。例えば、磁石はロボット装置を引っ張り、軌道に沿ってロボット装置の前を後退してもよい。ブロック312において、磁石の動きは、所定の軌道の開始点で停止される。加えて、回転磁場がオフにされてもよい。永久磁石の場合、例えば、磁石の回転は停止されてもよい。電磁石の場合、例えば、電磁石の回転は停止されてもよい、および/または電磁石はスイッチをオフにされてもよい。
【0194】
中央脳動脈(MCA)は、内頚動脈(ICA)分岐点で開始される。約1~1.5mmの内腔直径Φlを有するM4部分は、中型血管範疇およびMCAの遠位部分と見なされる。血管がシルビウス裂溝を出て大脳半球の凸面上に広がるとき、それは始まる。この部分の分岐角θbは様々であり、文献に報告されているデータをカバーするのに、例えば、30度~120度の代表角が選択される。血管の曲率半径Rcは、2mmよりも大きいことが報告されている。一般性を失うことなく、M4部分と頭皮の外側との間の距離Isを記述するのに、頭皮-皮質間平均距離に関する報告データが使用され、平均約15mmである。
【0195】
上述の幾何学的特徴に基づいて、2種類の模型、すなわちロボット装置の性能を評価するための定量的模型および実証用の模型が準備されている。定量的模型には、1.5mm~0.75mmのΦlを有する先細り内腔模型(模型A)、1.45mmのΦlを有する一様内腔模型(模型B)、3~7mmのRcを有する湾曲ルート模型(ステップとして2mmを有する模型C、D、E、Φl=1.45mm)。および30度~120度の範囲のθbを有する分岐点模型(ステップとして30度を有するF、G、H、I、Φl=1.45mm)が含まれる。実証用には2Dおよび3D模型が含まれる。2D模型には、単一の曲がりくねったルート(模型J)、極端に屈曲したルート模型、すなわち曲がり角が0度の模型(Rc=1mm、模型K)、6つの分岐を有する模型(模型L)、および動脈瘤様の構造を有する模型(模型N)を含む。3D模型(模型M)は、模型Lの空間バージョンであり、脳半球モデル、すなわち脳を有する人間の頭蓋骨モデルの表面に一致するように曲げられ、固定されている模型である。
【0196】
模型は全てPDMSエラストマー(Sylgard(商標)184、DOW Inc.)である。PDMSは、機械的安定性および生物医学的応用面で広く受け入れられているので選択されたものである。望みの内腔幾何学形状を製作するのに、射出成型技法が使用された。内腔の望みの形状用に、陰性モデル(2部分)がまず3D印刷された(クリアV4レジン、FormLab、フォーム3)。次に、商業用のキャスティングワックス(Salmue)が摂氏120度で溶解され、シリンジでモールドに注入された。望みの内腔形状を有する固形化したワックスが取り出された。次に、質量比10:1のPDMSが注入され、室温(すなわち摂氏23度)で48時間硬化された。模型は、次に、摂氏120度の加熱炉に置かれ、モールディングワックスが溶解された。最後に、中空の内腔構造を有する硬化したPDMS模型が超音波クリーナーに置かれ、エタノールを用いて5時間洗浄され、ワックス残渣が除去された。PDMS模型のヤング率は2.6MPaであり、約1~3MPaの動脈と類似の値が達成された。しかし、一般的に、摩擦特性、例えば摩擦係数(CoF)は一致しない場合もある。従って、ロボット装置が動脈の各関連セクションにおいて望みの移動機能を実現するであろうことを示すため、カスタマイズされたモデルが開発された。
図44に示されるように、豚の動脈における移動実証の成功も、ロボット装置の設計の実用的使用を正当化するものである。
【0197】
PDMS模型における全定量分析用の血液アナログは、グリセロール/脱イオン水混合物であり、体積比は44~65である。当該混合物は、摂氏23度の室温で4.4cPの動的粘度を有しており、正常な対照被験者の血液および摂氏37度における中程度の正常な動脈剪断速度(すなわち4.4+/―0.5cP)に一致するものである。器官での全生体外実証において、まずルートを洗浄するため、PBS(Gibco(商標)、Thermo Fisher Scientific)が豚の冠状動脈へ注入され、次に、血液アナログが試験用に使用された。
【0198】
脳動脈の流量に関して、MCAの片側に分配される全脳血流(717+/―123ml/分)は21%であり、6%は遠位MCAに供給される。これは、約4.5~7ml/分の流量がM4セクションの各部分に流れる計算となる。我々は現在、定量分析およびモデリング用に、M4セクションの流量を約10~12ml/分に設定している。成人の安静時における平均心拍率は60~100bpmであり、ストローク率は80bpmに統一された。血流の全実験条件において、80bpmで10~12ml/分の血液アナログを注入するのに、商業用の脈動血液ポンプが使用された。
【0199】
ロボット装置と豚の動脈との間の摩擦率(CoF)は、新鮮な豚の大動脈および機械試験機(Instron 5942)による摩擦試験を用いて確立された。大動脈サンプルは切断され、カスタマイズされたホルダーのPBSに浸漬された。測定用の引張方向は、ロボット装置の外部螺旋構造に対して、それぞれ平行および垂直である。試験結果は、螺旋に沿った平均最大静止CoF(μsa,||)=0.12、螺旋に垂直の平均最大静止CoF(μsa, ⊥)=0.18、螺旋に沿った平均動摩擦CoF(μka,||)=0.07、螺旋に垂直な平均動摩擦CoF(μka, ⊥)=0.08であった。
【0200】
同じ試験が、螺旋構造と模型素材PDMSとの間でも行われた。PDMSはその疎水性によって知られており、ロボット装置と血管の模型内腔壁との間の摩擦を増大させ、移動を妨げる。従って、実験前に、PDMS表面を親水性にするため、プラズマ処理が使用された。PDMS模型はプラズマクリーナーに置かれ、空気による75Wの力で3分間処理された(Tergeo、PIE Scientific LLC)。サンプルは、次に、実験および試験のため、直ちに血液アナログに浸漬された。PDMSのスティックスリップ摩擦現象の故に、サンプルの最大静止CoFが定量され、モデリングおよび分析用に使用された(螺旋に沿った平均最大静止CoF(μsp,||)=0.38、螺旋に垂直な平均最大静止CoF(μsp, ⊥)=0.47)。
【0201】
移動実験用の冠動脈および摩擦試験用の大動脈が、屠殺された新鮮な豚の心臓から48時間以内に切断され、摂氏4度で貯蔵された。切断された組織は、まずPBSで洗浄され、試験用に調整された。
【0202】
血栓の供給源は2つ存在した。第一供給源は、新鮮な豚の大動脈から直接取得され、試験用に望みのサイズに切断された。第二の供給源は、屠殺された新鮮な豚から48時間以内に得られた血液から手動で作製され、摂氏4度で貯蔵された。血液と塩化カルシウム水溶液(0.5mol/L)の体積比50対1の液体が調整された。室温(すなわち摂氏23度)で15分放置した後、血栓が形成された。両方の方法において、約3.5mm3の体積を有する血栓が調整され、血栓溶解試験用にPBSに浸漬された。
【0203】
本明細書記載の実験の定量値は全て、平均値+/―標準偏差で示されている。個々の試験は、各々、3つ以上のロボット装置サンプルで行われた。統計分析には、標本t検定が使用された。統計有意性は、95%信頼水準で設定された(p<0.05)。
【0204】
本発明が図面および前述の説明において詳細に図示および記載されているが、斯かる図示および記載は例示的または例証的であり、非制限的なものであると考えられるべきである。本発明は、開示されている実施形態に限定されるものではない。
【0205】
開示されている実施形態以外の変異体は、図面、本開示、および添付請求の範囲の研究に基づいて、請求項に係る発明を実践する当業者には理解および実行可能なものである。請求の範囲において、「有する」という用語は他の要素または工程を除外するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外するものでもない。特定の手段が相互に異なる従属項で述べられていたとしても、斯かる手段の組み合わせを有利に使用することは、本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【0206】
単一の処理装置または他の装置は、請求の範囲記載のいくつかの項目の機能を達成できるものである。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒にまたはその一部として提供される適切な媒体、例えば、光学記憶媒体または固体媒体に記憶/分散されてもよいが、他の形態、例えば、インターネットまたは他の有線または無線遠隔通信システムに分散されてもよい。
【0207】
当業者には理解されているように、本発明の態様は、機器、方法、コンピュータプログラム、またはコンピュータプログラム製品として具現化できるものである。従って、本発明の態様は完全なハードウェア実施形態、完全なソフトウェア実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなど)、またはソフトウェアとハードウェアを組み合わせた実施形態を採用し得るものであり、それらは全て一般的に「回路」、「モジュール」、または「システム」として、本明細書では言及されている。更に、本発明の態様は、コンピュータ実行可能コードを有する1つ以上のコンピュータ読み取り可能媒体に具現化されたコンピュータプログラム製品の形体を採用し得るものである。コンピュータプログラムは、コンピュータ実行可能コードまたは「プログラム命令」を有する。
【0208】
1つ以上のコンピュータ読み取り可能媒体の任意の組み合わせが利用可能である。コンピュータ読み取り可能媒体は、コンピュータ読み取り可能信号媒体であってもよいし、コンピュータ読み取り可能記憶媒体であってもよい。本明細書記載の「コンピュータ読み取り可能媒体」には、コンピュータ装置の処理装置によって実行可能な命令を記憶できる任意の有形記憶媒体が含まれる。コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能非一時的記憶媒体と呼ばれてもよい。コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、有形コンピュータ読み取り可能媒体とも呼ばれる。いくつかの実施形態において、コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、コンピュータ装置の処理装置によってアクセス可能なデータを記憶できてもよい。コンピュータ読み取り可能記憶媒体の例には、限定されないが。フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ハードディスクドライブ、固体ハードディスク、フラッシュメモリ、USBサムドライブ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、光学ディスク、磁気光学ディスク、および処理装置のレジスタファイルが含まれる。光学ディスクの例には、コンパクトディスク(CD)およびデジタル汎用ディスク(DVD)、例えば、CD-ROM、CD-RW、CD-R、DVD-ROM、DVD-RW、またはDVD-Rディスクが含まれる。光学ディスクの更なる例はブルーレイディスクである。コンピュータ読み取り可能記憶媒体という用語は、ネットワークまたは通信リンクを通してコンピュータ装置によってアクセス可能な種々のタイプの記録媒体も意味している。例えば、データは、モデム、インターネット、またはローカルエリアネットワークを通して検索可能である。コンピュータ読み取り可能媒体に組み込まれるコンピュータ実行可能コードは、任意の適切な媒体(例えば、限定されないが、ワイヤレス、ワイヤライン、光ファイバーケーブル、RF、その他、またはそれらの任意の適切な組み合わせが含まれる)を用いて伝送されてもよい。
【0209】
コンピュータ読み取り可能信号媒体には、例えば、ベースバンドに組み込まれるまたは搬送波の一部として組み込まれるコンピュータ実行可能コードを有する伝搬データ信号が含まれる。斯かる伝搬信号は、任意の種々の形態(例えば、限定されないが、電磁気、光学、またはそれらの任意の適切な組み合わせが含まれる)を有していてもよい。コンピュータ読み取り可能信号媒体は、コンピュータ読み取り可能記憶媒体ではないが、命令実行システム、機器、または装置によって、またはそれらとの関連で使用されるプログラムを通信、伝搬、または伝達可能な任意のコンピュータ読み取り可能媒体であってよい。
【0210】
「コンピュータメモリ」または「メモリ」は、コンピュータ読み取り可能記憶媒体の一例である。コンピュータメモリは、処理装置に直接アクセス可能な任意のメモリである。「コンピュータ記憶装置」または「記憶装置」は、コンピュータ読み取り可能記憶媒体の他の例である。コンピュータ記憶装置は、任意の不揮発性コンピュータ読み取り可能記憶媒体である。1つの実施形態において、コンピュータ記憶装置はコンピュータメモリであってもよいし、コンピュータメモリはコンピュータ記憶装置であってもよい。
【0211】
本明細書で使用される「処理装置」は、プログラム、機械実行可能命令、またはコンピュータ実行可能コードを実行可能な電子部品を包含している。「処理装置」を有するコンピュータ装置への言及は、2つ以上の処理装置または処理コアを有する可能性があるものとして解釈されるべきである。処理装置は、例えば、マルチコア処理装置であってもよい。処理装置は、単一のコンピュータ装置内の複数の処理装置または複数のコンピュータ装置に分散された複数の処理装置を意味するものであってもよい。コンピュータ装置という用語も、処理装置(複数も可)を有するコンピュータ装置の集積またはネットワークを意味する可能性を有するものと解釈されるべきである。コンピュータ実行可能コードは、同一のコンピュータ装置内にある、または複数のコンピュータ装置に分散された複数の処理装置によって実行されてもよい。
【0212】
コンピュータ実行可能コードは、本発明の態様を処理装置が実行できるようにする機械実行可能命令またはプログラムを有していてもよい。本発明の態様用の操作を実行するためのコンピュータ実行可能コードは、オブジェクト指向プログラミング言語、例えば、Java,Smalltalk、C++を含む1つ以上のプログラミング言語、および通常の手続き型言語、例えば、「C」プログラミング言語または類似のプログラミング言語の任意の組み合わせで記載され、機械実行可能命令にコンパイルされていてもよい。いくつかの例において、コンピュータ実行可能コードは、高級言語の形態またはプリコンパイルされた形態で、機械実行可能命令を急遽生成するインタープリタと共に使用されるものであってもよい。
【0213】
コンピュータ実行可能コードは、スタンドアロンソフトウェアパッケージとして、完全にユーザーのコンピュータで実行されてもよいし、部分的にユーザーのコンピュータで実行されてもよいし、部分的にユーザーのコンピュータおよび部分的に遠隔コンピュータまたは完全に遠隔コンピュータまたはサーバーで実行されてもよい。後者のシナリオの場合、遠隔コンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)または広域ネットワークを含む任意タイプのネットワークを通してユーザーのコンピュータに接続されてもよいし、あるいは(例えば、インターネットサービスプロバイダを用いて、インターネットにより)外部コンピュータへの接続が行われてもよい。
【0214】
一般的に、プログラム命令は1つの処理装置上またはいくつかの処理装置上で実行可能である。複数の処理装置の場合、それは、クライアント、サーバーなどいくつかの異なる実体上に分散可能である。処理装置は、各々、全体のための命令の一部を実行できる。従って、複数の実体を含むシステムまたはプロセスに言及する場合、コンピュータプログラムまたはプログラム命令は、各実体に関連付けられたまたは関係する処理装置によって実行されるように適合されているものと理解されたい。
【0215】
本明細書で使用される場合、「ユーザーインターフェース」は、ユーザーまたはオペレータがコンピュータまたはコンピュータ装置と相互作用できるようにするインターフェースのことである。「ユーザーインターフェース」は、「人間インターフェース装置」と呼ばれてもよい。ユーザーインターフェースは、オペレータへ情報またはデータを提供できる、および/またはオペレータから情報またはデータを受信できる。ユーザーインターフェースは、オペレータからの入力をコンピュータへ送信してもよいし、コンピュータからユーザーへ出力を提供してもよい。言い換えると、ユーザーインターフェースにより、オペレータはコンピュータを制御または操作できるし、コンピュータはオペレータの制御または操作の効果を示すことができる。ディスプレイまたはグラフィカルユーザーインターフェース上のデータまたは情報の表示は、情報をオペレータへ提供する場合の一例である。キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、ポインティングスティック、グラフィックタブレット、ジョイスティック、ゲームパッド、ウェブカム、ヘッドセット、ギアスティック、ステアリングホイール、ワイヤードグラブ、ダンスパッド、遠隔制御、1つ以上のスイッチ、1つ以上のボタン、および加速度計は全て、オペレータからの情報またはデータを受信可能にするユーザーインターフェースコンポーネントの例である。
【0216】
GUI要素はデータオブジェクトであり、その属性のいくつかは、グラフィカルユーザーインターフェースに表示される領域(例えば、画面)の形状、レイアウト、および/または行動を特定する。GUI要素は標準のGUI要素、例えば、ボタン、テキストボックス、タブ、アイコン、テキストフィールド、ペイン、チェックボックス品目または品目グループなどであってもよい。同様に、GUI要素は、画像、英数字、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。表示されるGUI要素の特性の少なくともいくつかは、GUI要素が示すデータオブジェクトグループに集積したデータ値に依存する。
【0217】
本発明の態様は、本発明の実施形態に基づく方法、機器(システム)、およびコンピュータプログラム製品のフローチャート、図面、および/またはブロック図を参照して記載されている。フローチャート、図面、および/またはブロック図の各ブロックまたはブロックの一部は、適用可能な場合、コンピュータ実施可能コード形態のコンピュータプログラム命令によって実行可能であることは理解されるであろう。異なるフローチャート、図面、および/またはブロック図におけるブロックは、相互に排除し合わない限り、組み合わせ可能であることも更に理解されたい。斯かるコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータの処理装置、または他のプログラム可能データ処理装置に提供され、コンピュータの処理装置または他のプログラム可能データ処理装置を通して実行される命令が、フローチャートおよび/またはブロック図のブロック(複数も可)に特定された機能/行動を実行するための手段を作製するための機械を製造する。
【0218】
コンピュータプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、または他の装置を特定の方法で機能するように誘導するコンピュータ読み取り可能媒体に記憶させてもよく、その結果、斯かるコンピュータ読み取り可能媒体に記憶された命令が、フローチャートおよび/またはブロック図のブロック(複数も可)に特定された機能/行動を実行するための製品(命令を含む)を製造できるようになる。
【0219】
コンピュータプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、または他の装置にロードされ、当該コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、または他の装置上において一連の操作工程が実行されてもよく、その結果、当該コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置において実行される命令が、フローチャートおよび/またはブロック図のブロック(複数も可)に特定された機能/行動を実行するためのプロセスを提供できるようになる。
【0220】
有利と考えられる実施形態は、以下の特徴組合せを有している。
【0221】
1.血管システムの血管に挿入するための中空円筒状弾性基礎構造を有するチューブであって、弾性基礎構造は、チューブの外部異方性表面構造と血管の内部表面との間に接触を確立するように構成された半径方向弾性力を提供するように構成されており、外部異方性表面構造は、チューブの円周方向とチューブの長手方向との間に幾何学的異方性を有しており、外部異方性表面構造は、外部異方性表面構造と血管の内部表面との間に接触によって異方性摩擦を確立するように構成されており、異方性摩擦は、チューブの中央長手方向体軸の周りに回転されると、チューブの表面推進力となるものであり、チューブは、チューブの円周に配分された磁性体であって、外部磁場内において、チューブの中央長手方向の体軸の周りに、チューブの回転を確立するように構成された磁性体を更に有するものである。
【0222】
2.特徴組合せ1のチューブであり、その異方性表面構造は、弾性基礎構造に付け加えられた1つ以上の突起を有するものである。
【0223】
3.特徴組合せ1または2のチューブであり、その異方性表面構造は、弾性基礎構造に挿入された1つ以上の凹部を有する。
【0224】
4.以上の特徴組合せのいずれか記載のチューブであり、その異方性表面構造は、弾性基礎構造の周りに長手方向に延伸する1つ以上の螺旋構造を有する。
【0225】
5.以上の特徴組合せのいずれか記載のチューブであり、その磁性体は、弾性基礎構造によって構成される。
【0226】
6.特徴組合せ5のチューブであり、その磁性体は、弾性基礎構造の外部表面に分散されている。
【0227】
7.特徴組合せ5または6のチューブであり、その磁性体は、弾性基礎構造の内部表面に分散されている。
【0228】
8.以上の特徴組合せのいずれか記載のチューブであり、その磁性体は、異方性表面構造によって構成されている。
【0229】
9.以上の特徴組合せのいずれか記載のチューブであり、その弾性基礎構造は、複数のセルを持つメッシュ構造を有する。
【0230】
10.特長組み合わせ9のチューブであり、そのメッシュ構造は、複数の同一セルにより形成される。
【0231】
11.特長組み合わせ10のチューブであり、セルは菱形のセルである。
【0232】
12.特徴組合せ9~11のいずれか記載のチューブであり、当該チューブは、チューブを通して血流を導くように構成された連続内部層を更に有しており、例えば、連続内部層の多孔性は70%未満、好ましくは50%未満、更に好ましくは0%に等しい。
【0233】
13.特徴組合せ9~12のいずれか記載のチューブであり、メッシュ構造のセクション内のメッシュ構造のセルの空所の累積面積とメッシュ構造の各セクションの全面積との比によって定義されるメッシュ構造の多孔性は、チューブを通して血流を導くように構成されている。
【0234】
14.特徴組合せ13記載のチューブであり、メッシュ構造の多孔性は、70%未満、好ましくは50%未満である。
【0235】
15.上記特徴組合せのいずれか記載のチューブであり、その弾性基礎構造は、チューブの直径を血管の変化する直径に受動的に適応させるように構成されている(その場合、血管の直径は所定の直径範囲内で変化する)。
【0236】
16.特徴組合せ15記載のチューブであり、その直径の所定範囲は0.002mm~25mm、好ましくは0.01mm~10mm、更に好ましくは1mm~2mmである。
【0237】
17.上記特徴組合せのいずれか記載のチューブであり、当該チューブは、弾性素材製、例えばエラストマー製である。
【0238】
18.上記特徴組合せのいずれか記載のチューブであり、その磁性体は、チューブの周りに分散された磁性粒子、例えば強磁性微粒子またはナノ粒子を有する。
【0239】
19.特徴組合せ1~17のいずれか記載のチューブであり、その磁性体は、チューブの周りに分散された磁性塗膜を有する。
【0240】
20.上記特徴組合せのいずれか記載のチューブであり、当該チューブは、血液適合性表面塗膜を更に有する。
【0241】
21.上記特徴組合せのいずれか記載のチューブであり、当該チューブは折り畳み式構造を更に有しており、当該折り畳み式構造は、医療用の薬品を保持するように構成された閉じた保持セクションを提供するものであり、折り畳み式構造は、所定の内部エネルギーレベルに達した際に、閉じた保持セクションを開き、薬品を放出するように構成されており、例えば、折り畳み式構造は、所定の形状記憶転移温度に達した際に、閉じた保持セクションを開き、薬品を放出するように構成された形状記憶素材製である。
【0242】
22.特徴組合せ21記載のチューブであり、折り畳み式構造は形状記憶素材、例えば、形状記憶ポリマー製である。
【0243】
23.特徴組合せ21または22記載のチューブであり、その折り畳み式構造は、折り畳み式構造に外部エネルギー、例えば、折り畳み式構造の外部無線周波数誘導加熱の入力効率を向上させるため、金属粒子を更に有する。
【0244】
24.血管システムの血管に挿入される上記特徴組合せのいずれか記載のチューブを作動および制御するように構成された作動/制御装置であって、当該作動/制御装置は、磁場を発生させるように構成された磁石を移動させるように構成された移動装置を有しており、上記磁場は、チューブの中央長手方向体軸の周りにチューブの回転を誘導するように構成されており、上記移動装置は、血管に沿って磁石を移動させ、血管を通してチューブの移動を磁気的に加勢するように構成されているものである。
【0245】
25.特徴組合せ24記載の作動/制御装置であり、その移動装置は、ロボットアームを有しており、ロボットアームの遠位端には磁石が搭載されている。
【0246】
26.特徴組合せ24または25記載の作動/制御装置であり、その磁石は、例えば、磁場を発生させるために回転される永久磁石である。
【0247】
27.特徴組合せ24~26のいずれか記載の作動/制御装置であり、当該作動/制御装置は、チューブが有する折り畳み式構造の内部エネルギーレベルを、折り畳み式構造の閉じた保持セクションを開けるのに必要な所定の内部エネルギーレベルまで高める(所定のエネルギーレベルに達する)ように構成されたエネルギー源、例えば、チューブが有する折り畳み式形状記憶構造の無線周波数誘導加熱を、折り畳み式形状記憶構造の閉じた保持セクションを開けるのに必要な所定の形状記憶転移温度まで高める(それが所定の形状記憶転移温度に達するようにする)ように構成された無線周波数コイルを更に有している。
【0248】
28.特徴組合せ24~27のいずれか記載の作動/制御装置であり、当該作動/制御装置は計算装置を更に有しており、当該計算装置は、処理装置および当該処理装置によって実行可能なプログラム命令を記憶するメモリを有しており、処理装置によるプログラム命令の実行により磁石を移動させ、血管に沿って磁場を発生させ、チューブが血管を通って血管システム内の所定の目的地まで移動するのを磁気的に加勢する。
【0249】
29.特徴組合せ1~23のいずれか記載のチューブおよび特徴組合せ24~28のいずれか記載の作動/制御装置を有するシステム。
【0250】
30.特徴組合せ24~28のいずれか記載の作動/制御装置を用いて、血管システムの血管に挿入された特徴組合せ1~23のいずれか記載のチューブを作動および制御する方法であって、当該方法は、磁石を移動させ、血管に沿って磁場を発生させ、血管を通して血管システム内の所定の目的地へチューブの移動を磁気的に加勢する工程を有するものである。
【0251】
31.特徴組合せ30の方法は、チューブが有する折り畳み式構造の内部エネルギーレベルを増大させるように構成されたエネルギー源を作動する工程を更に有しており、折り畳み式構造は、医療用の薬品を保持するように構成された閉じた保持セクションを有しており、折り畳み式構造の内部エネルギーレベルは、例えば、チューブが有する折り畳み式形状記憶構造を無線周波数で誘導して加熱するように構成された無線周波数コイルを作動することにより、所定の内部エネルギーレベルまで増大され、それにより閉じられた保持セクションが開けられるものであり、折り畳み式形状記憶構造は、医療用の薬品を保持するように構成された閉じた保持セクションを有しており、折り畳み式形状記憶構造は、所定の形状記憶転移温度まで加熱され、それにより閉じられた保持セクションが開けられるものである。
【符号の説明】
【0252】
10:計算装置
14:外部装置
16:処理装置
18:バス
20:ネットワークアダプタ
22:I/Oインターフェース
24:ディスプレイ
28:メモリ
30:RAM
32:キャッシュ
34:記憶システム
40:プログラム
42:プログラムモジュール
50:ユーザーインターフェース
52:制御要素
54:ハードウェア装置
56:キーボード
58:マウス
59:スキャナ
100:チューブ
101:3Dデジタルチューブモデル
102:中空円筒状弾性基礎構造
104:異方性表面構造
106:中央長手方向体軸
108:磁性体
110:血液適合性表面コーティング
112:連続内部層
120:メッシュ構造
122:セル
130:折り畳み式構造
132:保持セクション
134:受納
135:褶曲軸
136:薬品
150:作動/制御装置
152:移動装置
154:ロボットアーム
156:磁石
158:エネルギー源
160:マイクロカテーテル
200:血管
202:血管システム
204:分岐
206:頸部
208:袋状動脈瘤
210:頭蓋骨模型
212:M4セクション
214:入口/出口
220:模型
t:時間
dr:チューブの直径
Ir:チューブの長さ
xr:チューブ座標系のx座標
yr:チューブ座標系のy座標
zr:チューブ座標系のz座標
mr:チューブのモーメント
f:セグメントの軸方向振幅
h:支柱間隔
ρ:クラウンジャンクションにおける曲率半径
φ:螺旋角
xa:磁石座標系のx座標
ya:磁石座標系のy座標
za:磁石座標系のz座標
pr
a:磁石からチューブへのベクトル
fmag:周波数
αmag:角度
Imag:磁石とチューブの距離
vmag:磁石の速度
Fdrag:引張力
Fmag:磁気力
Fmag,yr:yr方向の磁気力
Fmag,zr:zr方向の磁気力
Fn:半径方向力
G:重力
ωr:チューブの角周波数
vf: 血流速度
vr:チューブの速度
ωmag:磁石の角周波数
Ffric,||:螺旋に平行な摩擦力
Ffric,⊥:螺旋に垂直な摩擦力
Tmag,yr:yr方向の磁石トルク
Rc:曲率半径
θb:分岐角
Freact:反力
Sp:投影面積
Er:ヤング率
Φl:血管の内径
λh:螺旋の完全性
Ilag:チューブの遅れ
kc:内腔の曲率
Tmin:チューブを曲げるのに最低必要なトルク
T:温度
dc:カテーテルの直径
【外国語明細書】