(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155912
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】光学多層構造体、その製造方法、およびそれを含むウィンドウカバーフィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 1/11 20150101AFI20231016BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20231016BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231016BHJP
B05D 1/38 20060101ALI20231016BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20231016BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20231016BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20231016BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20231016BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20231016BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20231016BHJP
C09D 183/00 20060101ALI20231016BHJP
B32B 27/30 20060101ALN20231016BHJP
【FI】
G02B1/11
B32B7/023
B32B27/00 101
B05D1/38
B05D7/24 302Y
B05D5/06 D
B05D5/00 Z
G02B1/14
G02B1/18
C09D201/00
C09D183/00
B32B27/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064335
(22)【出願日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】10-2022-0044415
(32)【優先日】2022-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ハン キュ ソク
(72)【発明者】
【氏名】コ コン ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】キム シン ウ
【テーマコード(参考)】
2K009
4D075
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
2K009AA15
2K009CC26
2K009CC32
2K009CC33
2K009CC42
2K009DD02
2K009DD06
2K009EE05
4D075AE03
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4J038PC08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低反射率と高い耐摩耗性および水接触角を有する光学多層構造体を提供する。
【解決手段】基材層10上にハードコーティング層20、接着強化層30、低屈折層40、および撥水層50を含む光学多層構造体100に関し、一実施形態に係る光学多層構造体100は、基材層10上にハードコーティング層20、官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含む接着強化層30、シロキサン系化合物を含む低屈折層40、およびフッ素原子を含有するアルコキシシラン系化合物を含む撥水層50が積層された構造を含むことで、高い耐摩耗性と水接触角を同時に有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層の一面に形成されるハードコーティング層と、
前記ハードコーティング層上に形成され、1種以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含む接着強化層と、
前記接着強化層上に形成され、シロキサン系化合物を含む低屈折層と、
前記低屈折層上に形成され、フッ素原子を含有するアルコキシシラン系化合物を含む撥水層と、を含み、
反射率が4%以下である、光学多層構造体。
【請求項2】
前記官能基が有機官能基である、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項3】
前記有機官能基は、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、アクリル基、エポキシ基、およびイソシアネート基からなる群から選択される1種以上である、請求項2に記載の光学多層構造体。
【請求項4】
前記フッ素原子を含有するアルコキシシラン系化合物は、ペルフルオロポリエーテル基を分子主鎖に有し、ケイ素原子に結合した加水分解可能な反応基を末端部に有する、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項5】
下記式1を満たす、請求項1に記載の光学多層構造体。
[式1]
25%≧ΔE=(E0-E1/E0)×100
(前記式1中、E0は、前記撥水層の水接触角であり、E1は、前記撥水層の表面を直径4mmのMinoan社製の消しゴムに500gの荷重をかけ、50rpmの速度で15mmの距離を2000回往復して擦った後の撥水層の水接触角である。)
【請求項6】
前記撥水層の水接触角が105゜以上である、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項7】
前記ハードコーティング層は、エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物を含む、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項8】
前記ハードコーティング層は、エポキシ基を有するシルセスキオキサン樹脂を含む、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項9】
前記ハードコーティング層は、多官能性エポキシ基を有する架橋剤をさらに含んで形成される、請求項7に記載の光学多層構造体。
【請求項10】
前記基材層は、フッ素系芳香族ジアミンから誘導された単位を含むポリイミド系フィルムを含む、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項11】
前記基材層は、フッ素系芳香族ジアミンから誘導された単位、芳香族二無水物から誘導された単位、および芳香族二酸二塩化物から誘導された単位を含むポリイミド系フィルムを含む、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項12】
前記ポリイミド系フィルムは、脂環式二無水物から誘導された単位をさらに含む、請求項11に記載の光学多層構造体。
【請求項13】
前記ハードコーティング層の屈折率が1.50~1.54である、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項14】
前記接着強化層の屈折率が1.48~1.53である、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項15】
前記低屈折層の屈折率が1.42~1.47である、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項16】
下記式2を満たす、請求項1に記載の光学多層構造体。
[式2]
-0.05≦nf-n0≦0.15
(前記式2中、nfは、基材層の屈折率であり、n0は、ハードコーティング層の屈折率である。)
【請求項17】
下記式3を満たす、請求項1に記載の光学多層構造体。
[式3]
0.001≦n0-n1≦0.008
(前記式3中、n0は、ハードコーティング層の屈折率であり、n1は、接着強化層の屈折率である。)
【請求項18】
下記式4を満たす、請求項1に記載の光学多層構造体。
[式4]
0.05≦n0-n2≦0.1
(前記式4中、n0は、ハードコーティング層の屈折率であり、n2は、低屈折層の屈折率である。)
【請求項19】
前記基材層の他面に形成されるハードコーティング層をさらに含む、請求項1に記載の光学多層構造体。
【請求項20】
基材層の一面にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化させてハードコーティング層を形成するステップと、
前記ハードコーティング層上に1種以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含む接着強化層形成用組成物を塗布および乾燥させて接着強化層を形成するステップと、
前記接着強化層上にシロキサン系化合物を含む低屈折層形成用組成物を塗布および乾燥させて低屈折層を形成するステップと、
前記低屈折層上にフッ素原子を含有するアルコキシシラン系化合物を含む撥水層形成用組成物を塗布および乾燥させて撥水層を形成するステップと、
を含む、光学多層構造体の製造方法。
【請求項21】
前記基材層の他面にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化させてハードコーティング層を形成するステップをさらに含む、請求項20に記載の光学多層構造体の製造方法。
【請求項22】
請求項1~19のいずれか一項に記載の光学多層構造体を含むウィンドウカバーフィルム。
【請求項23】
請求項22に記載のウィンドウカバーフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学多層構造体、その製造方法、それを含むウィンドウカバーフィルム、およびフレキシブルディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(liquid crystal display)または有機発光表示装置(organic light emitting diode display)などの平板表示装置を用いた薄型表示装置が大きな注目を浴びている。特に、これらの薄型表示装置は、タッチスクリーンパネル(touch screen panel)の形態で実現され、スマートフォン(smart phone)、タブレット(tablet)PCだけでなく、各種ウェアラブル機器(wearable device)に至るまで、携帯性を特徴とする各種スマート機器(smart device)に広く用いられている。
【0003】
このような携帯可能なタッチスクリーンパネルベースの表示装置は、スクラッチまたは外部衝撃からディスプレイパネルを保護するためにディスプレイパネル上にディスプレイ保護用ウィンドウカバーを備えており、大半の場合、ディスプレイ用強化ガラスをウィンドウカバーとして用いている。ディスプレイ用強化ガラスは、一般的なガラスよりも薄いが、高い強度とともにスクラッチに強く作製されているという特徴がある。
【0004】
しかしながら、強化ガラスは、重量が重いため携帯機器の軽量化に適さない短所を有しているだけでなく、外部衝撃に脆弱であるため容易に割れない性質(unbreakable)を実現し難く、一定レベル以上曲がらないため曲げたり(bendable)折り畳んだりできる(foldable)機能を有するフレキシブル(flexible)ディスプレイ素材として適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第 10-2021-0036447 号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一実施形態の目的は、低反射率と高い耐摩耗性および水接触角を有する光学多層構造体を提供することにある。
他の一実施形態の目的は、低反射率と高い耐摩耗性および水接触角を有する光学多層構造体の製造方法を提供することにある。
また他の一実施形態の目的は、前記光学多層構造体を含むウィンドウカバーフィルムを提供することにある。
さらに他の一実施形態の目的は、前記ウィンドウカバーフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、
一実施形態は、基材層と、
前記基材層の一面に形成されるハードコーティング層と、
前記ハードコーティング層上に形成され、1種以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含む接着強化層と、
前記接着強化層上に形成され、シロキサン系化合物を含む低屈折層と、
前記低屈折層上に形成され、フッ素原子を含有するアルコキシシラン系化合物を含む撥水層と、を含む、光学多層構造体を提供し、
この際、前記光学多層構造体の反射率が4%以下であってもよい。
【0008】
他の一実施形態は、基材層の一面にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化させてハードコーティング層を形成するステップと、
前記ハードコーティング層上に1種以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含む接着強化層形成用組成物を塗布および乾燥させて接着強化層を形成するステップと、
前記接着強化層上にシロキサン系化合物を含む低屈折層形成用組成物を塗布および乾燥させて低屈折層を形成するステップと、
前記低屈折層上にフッ素原子を含有するアルコキシシラン系化合物を含む撥水層形成用組成物を塗布および乾燥させて撥水層を形成するステップと、を含む、光学多層構造体の製造方法を提供する。
【0009】
また他の一実施形態は、前記光学多層構造体を含むウィンドウカバーフィルムを提供する。
さらに他の一実施形態は、前記ウィンドウカバーフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネルを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、基材層上にハードコーティング層、接着強化層、低屈折層、および撥水層を含む光学多層構造体に関し、一実施形態に係る光学多層構造体は、基材層上にハードコーティング層、官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含む接着強化層、シロキサン系化合物を含む低屈折層、およびフッ素原子を含有するアルコキシシラン系化合物を含む撥水層が積層された構造を含むことで、高い耐摩耗性と水接触角を同時に有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る光学多層構造体の構造を図式化して示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態に係る光学多層構造体、その製造方法、それを含むウィンドウカバーフィルム、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネルについて詳しく説明する。
【0013】
この際、他に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本技術分野の通常の技術者により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書の説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。また、明細書および添付の請求範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図し得る。
【0014】
本発明を記述する明細書の全般にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味し得る。
【0015】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分の「上部に」または「上に」存在するとする際、これは、他の部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その間にまた他の部分が存在する場合も含んでもよい。
【0016】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「Aおよび/またはB」とは、AおよびBを同時に含む態様を意味してもよく、AおよびBの中から択一された態様を意味してもよい。
【0017】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「重合体」は、オリゴマー(oligomer)および重合体(polymer)を含んでもよく、単独重合体および共重合体を含んでもよい。前記共重合体は、交互重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体、分岐共重合体、架橋共重合体、またはこれらを全て含んでもよい。
【0018】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、用語「フレキシブル(flexible)」は、曲がったり、撓んだり、折り畳まれたりすることを意味し得る。
【0019】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「ポリイミド」は、イミド構造を含むものであり、「ポリイミド」または「ポリアミドイミド」を含む意味として用いられてもよい。
【0020】
一実施形態は、基材層と、
前記基材層の一面に形成されるハードコーティング層と、
前記ハードコーティング層上に形成され、1種以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含む接着強化層と、
前記接着強化層上に形成され、シロキサン系化合物を含む低屈折層と、
前記低屈折層上に形成され、フッ素原子を含有するアルコキシシラン系化合物を含む撥水層と、を含む、光学多層構造体を提供する。
【0021】
一実施形態において、前記基材層、ハードコーティング層、接着強化層、低屈折層、および撥水層が順に積層されてもよく、各層は、直接接して積層されるか、または各層の間に他の層が形成されてもよい。
【0022】
以下、一実施形態に係る光学多層構造体に含まれる基材層、ハードコーティング層、接着強化層、低屈折層、および撥水層の各構成についてより具体的に説明する。
【0023】
<基材層>
一実施形態において、基材層は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレンアクリロニトリル-スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系またはノルボルネン構造を有するポリオレフィン系樹脂、エチレンプロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアラミド系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;スルホン系樹脂などから製造されてもよく、これらの樹脂は、単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。一実施形態において、前記基材層は、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れることができる。
【0024】
一実施形態において、前記基材層は、フッ素系芳香族ジアミンから誘導された単位を含むポリイミド系樹脂から形成されるポリイミド系基材層であってもよく、この際、前記ポリイミド系樹脂は、ポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂を全て含んでもよい。
【0025】
一実施形態において、前記ポリイミド系基材層は、フッ素原子および脂肪族環状構造を含むポリアミドイミド樹脂を含むものであり、具体的な一例としては、フッ素系芳香族ジアミン、芳香族二無水物、および芳香族二酸二塩化物から誘導された単位を含むポリイミド系基材層であってもよく、より具体的な一例としては、脂環式二無水物から誘導された単位をさらに含むポリイミド系基材層であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0026】
一実施形態において、前記基材層は、レインボー現象やムラ(mura)現象などが発生せず、光学特性に優れ、ウィンドウカバーフィルムのヘイズをさらに低くし、全光線透過率をさらに高めることができ、透明性にさらに優れるものであってもよい。
【0027】
一実施形態において、前記基材層の厚さは、特に限定されず、例えば、10μm~150μm、10μm~100μm、20μm~80μm、30μm~70μm、または40μm~60μmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0028】
一実施形態において、前記基材層の屈折率は1.4~1.8、1.5~1.8、1.5~1.7、または1.6~1.8であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0029】
<ハードコーティング層>
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、基材層の一面または両面上に形成されてもよく、これにより、基材層を外部の物理的、化学的損傷から保護することができる。
【0030】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、ハードコーティング層形成用組成物が硬化して形成されてもよく、また、前記ハードコーティング層形成用組成物を光硬化後に熱硬化した複合ハードコーティング層であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0031】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物を含んで形成されてもよく、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を含むシロキサン(Siloxane)樹脂であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物が硬化する場合、優れた硬度および曲げ特性を有することができる。
【0032】
前記エポキシ基は、環状エポキシ基、脂肪族エポキシ基、および芳香族エポキシ基から選択されるいずれか1つ以上であってもよく、前記シロキサン樹脂は、シリコン原子と酸素原子が共有結合を形成した高分子化合物を意味し得る。
【0033】
一実施形態において、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、エポキシ基を有するシルセスキオキサン(Silsesquioxane)樹脂であってもよく、具体的には、シルセスキオキサン樹脂のケイ素原子にエポキシ基が直接置換されるか、または前記ケイ素原子に置換された置換基にエポキシ基が置換されたものであってもよく、より具体的には、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基が置換されたシルセスキオキサン樹脂であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0034】
一実施形態において、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、重量平均分子量が1,000g/mol~20,000g/mol、1,000g/mol~18,000g/mol、または2,000g/mol~15,000g/molであってもよい。重量平均分子量が前述した範囲である場合、前記ハードコーティング層形成用組成物の流動性、塗布性、硬化反応性などがさらに向上することができる。
【0035】
一実施形態において、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、下記化学式1で表されるアルコキシシラン化合物由来の繰り返し単位を含んでもよい。
【0036】
[化学式1]
R1
nSi(OR2)4-n
【0037】
前記化学式1中、R1は、炭素数3~6のエポキシシクロアルキル基またはオキシラニル基で置換された直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~6のアルキル基であり、前記アルキル基は、エーテル基を含んでもよく、R2は、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~7のアルキル基であり、nは、1~3の整数であってもよい。
【0038】
前記化学式1で表されるアルコキシシラン化合物は、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上混合して用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0039】
一実施形態において、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物は、全ハードコーティング層形成用組成物100重量部に対して20重量部~70重量部、または20重量部~50重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0040】
一実施形態において、ハードコーティング層形成用組成物は、優れた流動性および塗工性を有することができ、また、ハードコーティング層形成用組成物の硬化時に均一な硬化が可能であるため、過硬化によるクラックなどの物理的欠陥を効果的に防止することができ、優れた硬度を示すことができる。
【0041】
一実施形態において、前記ハードコーティング層は、多官能性エポキシ基を有する架橋剤をさらに含んで形成されてもよい。この際、前記架橋剤は、脂環式エポキシ基を有する化合物を含んでもよく、例えば、前記架橋剤は、2個の3,4-エポキシシクロヘキシル基が連結された化合物を含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記架橋剤は、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合と構造および性質が類似してもよく、この場合、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物の架橋結合を促進させることができる。
【0042】
一実施形態において、前記ハードコーティング層の厚さは1μm~100μm、1μm~80μm、1μm~50μm、1μm~30μm、1μm~20μm、または1μm~10μmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0043】
一実施形態において、前記ハードコーティング層の屈折率は1.50~1.54、1.51~1.53、または1.52~1.53であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0044】
以下、ハードコーティング層の形成方法について説明する。
ハードコーティング層は、ハードコーティング層形成用組成物を製造し、それを基材層上に塗布して硬化することで形成される。
【0045】
一実施形態において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物を含んでもよく、この際、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物としては、前記ハードコーティング層に関する説明において上述したものと同様のものを用いてもよい。
【0046】
一実施形態において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、下記化学式2で表される化合物を含む熱開始剤および光開始剤をさらに含んでもよい。
【0047】
【0048】
前記化学式2中、R3は、水素、炭素数1~4のアルコキシカルボニル基、炭素数1~4のアルキルカルボニル基、または炭素数6~14のアリールカルボニル基であり、R4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、または炭素数1~4のアルキル基であり、nは、1~4であり、R5は、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数7~15のアラルキル基であり、R6は、炭素数1~4のアルキル基であり、Xは、SbF6、PF6、AsF6、BF4、CF3SO3、N(CF3SO2)2、またはN(C6F5)4である。
【0049】
前記アルコキシカルボニル基は、アルコキシ部分の炭素数が1~4であるものであって、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、およびプロポキシカルボニル基などが挙げられる。
前記アルキルカルボニル基は、アルキル部分の炭素数が1~4であるものであって、例えば、アセチル基およびプロピオニル基などが挙げられる。
【0050】
前記アリールカルボニル基は、アリール部分の炭素数が6~14であるものであって、例えば、ベンゾイル基、1-ナフチルカルボニル基、および2-ナフチルカルボニル基などが挙げられる。
前記アラルキル基は、例えば、ベンジル基、2-フェニルエチル基、1-ナフチルメチル基、および2-ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0051】
前記化学式2の化合物を熱開始剤として用いる場合、硬化半減期を短縮させることができ、低温条件においても迅速に熱硬化を行うことができるため、高温条件下で長期間熱処理をする場合に発生する損傷および変形を防止することができる。
【0052】
前記熱開始剤は、ハードコーティング層形成用組成物に熱が加えられる際に、前記エポキシシロキサン樹脂または後述する架橋剤の架橋反応を促進することができる。前記熱開始剤としては、カチオン性熱開始剤が用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0053】
また、前記熱開始剤を用いた熱硬化と前記光開始剤を用いた光硬化を併用することで、ハードコーティング層の硬化度、硬度、柔軟性などを向上させることができる。例えば、前記ハードコーティング層形成用組成物を基材などに塗布し、紫外線を照射(光硬化)して少なくとも部分的に硬化させた後、追加的に熱を加えて(熱硬化)実質的に完全に硬化させてもよい。
【0054】
前記光硬化により前記ハードコーティング層形成用組成物が半硬化または部分硬化することができ、前記半硬化または部分硬化したハードコーティング層形成用組成物は、前記熱硬化により実質的に完全に硬化することができる。
【0055】
例えば、前記ハードコーティング層形成用組成物を光硬化だけで硬化する際には、硬化時間が過度に長くなるか、または部分的に硬化が完全に行われないことがある。これに対し、前記光硬化に続き前記熱硬化を行う場合には、光硬化により硬化していない部分が熱硬化により実質的に完全に硬化することができ、硬化時間も減少することができる。
【0056】
また、一般的に、硬化時間の増加(例えば、露光時間の増加)により、既に適した程度に硬化した部分に過度なエネルギーが提供されることで過硬化が起こり得る。前記過硬化が行われる場合、ハードコーティング層が柔軟性を失うか、またはカール、クラックなどの機械的欠陥が発生し得る。これに対し、前記光硬化と前記熱硬化を併用する場合、前記ハードコーティング層形成用組成物を短時間に実質的に完全に硬化させることができ、ハードコーティング層の柔軟性を維持しながらも硬度をさらに向上させることができる。
【0057】
前記ハードコーティング層形成用組成物を先に光硬化し、追加的に熱硬化する方法について前述したが、光硬化および熱硬化の順が特にこれに制限されるものではない。すなわち、一部の実施形態では、前記熱硬化が先に行われた後に前記光硬化が行われてもよいことはいうまでもない。
【0058】
一実施形態において、前記熱開始剤は、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して0.1重量部~20重量部、または1重量部~20重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0059】
また、例えば、前記熱開始剤は、全ハードコーティング層形成用組成物100重量部に対して0.01重量部~15重量部、0.1重量部~15重量部、または0.3重量部~10重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0060】
一実施形態において、前記光開始剤は、光カチオン開始剤を含んでもよい。前記光カチオン開始剤は、前記エポキシシロキサン樹脂およびエポキシ系単量体の重合を開始することができる。
【0061】
前記光カチオン開始剤としては、オニウム塩および/または有機金属塩などを用いてもよく、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、鉄-アレーン錯体などを単独でまたは2種以上混合して用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0062】
前記光開始剤の含量は、特に限定されず、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して0.1重量部~15重量部、または1重量部~15重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0063】
また、例えば、前記光開始剤は、全ハードコーティング層形成用組成物100重量部に対して0.01重量部~10重量部、0.1重量部~10重量部、または0.3重量部~5重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0064】
一実施形態において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、架橋剤をさらに含んでもよい。前記架橋剤は、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物と架橋結合を形成してハードコーティング層形成用組成物を固体化させ、ハードコーティング層の硬度を向上させることができる。
【0065】
一実施形態において、前記架橋剤は、脂環式エポキシ基を有する化合物を含んでもよい。例えば、前記架橋剤は、2個の3,4-エポキシシクロヘキシル基が連結された化合物を含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記架橋剤は、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合と構造および性質が類似してもよく、この場合、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物の架橋結合を促進し、組成物を適した粘度に維持させることができる。
【0066】
一実施形態において、前記架橋剤は、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して5重量部~150重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。架橋剤により組成物の粘度を適した範囲に維持することができ、塗布性および硬化反応性をさらに改善させることができる。
【0067】
また、例えば、前記架橋剤は、全ハードコーティング層形成用組成物100重量部に対して1重量部~30重量部、または5重量部~20重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0068】
一実施形態において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、熱硬化剤をさらに含んでもよい。
前記熱硬化剤は、アミン系、イミダゾール系、酸無水物系、アミド系熱硬化剤などを含んでもよく、これらを単独または2種以上混合して用いてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0069】
一実施形態において、前記熱硬化剤は、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して5重量部~30重量部で含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記熱硬化剤によりハードコーティング層形成用組成物の硬化効率をさらに改善し、さらに優れた硬度を有するハードコーティング層を形成することができる。
【0070】
一実施形態において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、溶媒をさらに含んでもよい。前記溶媒は、特に限定されず、当該分野で公知の溶媒が用いられてもよい。
【0071】
前記溶媒の非制限的な例として、アルコール系(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、ケトン系(メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなど)、ヘキサン系(ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)、ベンゼン系(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよい。
【0072】
前記溶媒の含量は、特に限定されず、例えば、前記エポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物100重量部に対して10重量部~200重量部で含まれてもよい。前記溶媒を用いる場合、ハードコーティング層形成用組成物は、適したレベルの粘度を確保することができるため、ハードコーティング層の形成時に作業性に優れることができる。また、ハードコーティング層の厚さ調節が容易であり、溶媒の乾燥時間を減少させ、さらに迅速な工程速度を確保することができる。
【0073】
一実施形態において、前記溶媒は、予定の全組成物の総重量のうち、残りの成分が占める量を除いた残量を含んでもよい。例えば、予定の全組成物の総重量が100gであり、溶媒を除いた残りの成分の重量の和が70gであれば、溶媒は30gが含まれてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0074】
一実施形態において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、無機充填剤をさらに含んでもよい。前記無機充填剤は、ハードコーティング層の硬度をさらに向上させることができる。
【0075】
前記無機充填剤は、特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタンなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウムなどの水酸化物;金、銀、銅、ニッケル、これらの合金などの金属粒子;カーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの導電性粒子;ガラス;セラミック;などが用いられてもよく、または、ハードコーティング層形成用組成物の他の成分との相溶性の面でシリカが用いられてもよく、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0076】
一実施形態において、前記ハードコーティング層形成用組成物は、滑剤をさらに含んでもよい。前記滑剤は、巻き取り効率、耐ブロッキング性、耐摩耗性、耐スクラッチ性などをさらに改善させることができる。
【0077】
前記滑剤の種類は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、合成ワックス、またはモンタンワックスなどのワックス類;シリコン系樹脂、フッ素系樹脂などの合成樹脂類;などが用いられてもよく、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0078】
この他にも、前記ハードコーティング層形成用組成物は、例えば、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、熱的高分子化禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、潤滑剤、防汚剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0079】
<接着強化層>
一実施形態において、前記接着強化層は、前記ハードコーティング層上に形成されてもよく、例えば、前記接着強化層は、前記ハードコーティング層の上面に接して形成されてもよい。
【0080】
一実施形態において、前記接着強化層は、1種以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含んで形成されてもよい。前記1種以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物は、アルコキシシラン系化合物に1種以上の官能基が置換されたものであり、例えば、アルコキシシラン系化合物のケイ素原子に前記官能基が直接置換されるか、またはケイ素原子に置換された置換基(例えば、アルキル基)などが前記官能基で置換されたものであってもよい。換言すれば、ケイ素原子に1つまたは2つ以上の官能基が置換されたアルキル基が連結されたものであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0081】
一実施形態において、前記官能基は、有機官能基(organofunctional group)であってもよく、例えば、前記有機官能基は、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、アクリル基、エポキシ基、およびイソシアネート基などから選択されるいずれか1つまたはこれらの組み合わせであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0082】
有機官能基を有するアルコキシシラン系化合物は、分子中に無機材料と反応するアルコキシシラン基および有機材料と化学的結合を形成する有機官能基を同時に有するため、有機物と無機物を結合させる能力に優れ、有機物の表面エネルギーを減少させて無機物との接着力をさらに増大させることができる。また、有機官能基を有するアルコキシシラン系化合物は、他の樹脂との相溶性を増進させることができる。
【0083】
したがって、前記接着強化層に含まれる1種以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物が前記有機官能基とアルコキシシラン基を同時に有する場合、前記接着強化層に含まれるアルコキシシラン系化合物は、前記ハードコーティング層のエポキシ基を有するアルコキシシランの縮合物および前記撥水層のフッ素含有アルコキシシラン系化合物と同時に化学的結合を形成することができる。また、前記接着強化層が前記ハードコーティング層と低屈折層との間に形成される場合、各層間の結合力がさらに著しく向上し、各層が実質的に一体化することができる。
【0084】
一実施形態において、前記接着強化層がハードコーティング層と低屈折層との間に形成される場合、光学多層構造体の各層間の結合力が著しく向上し、高い耐摩耗性および水接触角特性が実現されることができる。
【0085】
一実施形態において、前記1種以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物の商業化された一例としてはShin-etsu社製のKBM-402、KBM-603、KBM-903、およびKBM-802などが挙げられるが、これは非限定的な一例にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0086】
一実施形態において、前記接着強化層をハードコーティング層と低屈折層との間に含むことで、撥水層の初期水接触角を著しく高めることができ、耐摩耗性を向上させることができる。
【0087】
一実施形態において、前記接着強化層の厚さは、特に限定されず、例えば、5nm~100nm、10nm~70nm、または10nm~50nmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0088】
一実施形態において、前記接着強化層の屈折率は1.48~1.53、1.49~1.53、1.50~1.53、または1.51~1.53であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0089】
以下、接着強化層の形成方法について説明する。
接着強化層は、接着強化層形成用組成物を製造し、それをハードコーティング層上に塗布して乾燥することで形成される。
【0090】
一実施形態において、前記接着強化層形成用組成物は、1種以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含んでもよく、この際、前記1種以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物としては、前記接着強化層に関する説明において上述したものと同様のものを用いてもよい。
【0091】
一実施形態において、前記接着強化層形成用組成物は、溶媒をさらに含んでもよい。前記溶媒は、特に限定されず、当該分野で公知の溶媒が用いられてもよい。
【0092】
前記溶媒の非制限的な例として、アルコール系(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、ケトン系(メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなど)などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよい。
【0093】
<低屈折層>
一実施形態において、前記低屈折層は、前記接着強化層上に形成されてもよく、例えば、前記低屈折層は、前記接着強化層の上面に接して形成されてもよい。
【0094】
一実施形態において、前記低屈折層は、シロキサン系化合物を含んでもよく、シロキサン系化合物は、例えば、下記化学式3で表される化合物またはこれらの重合体であってもよい。
【0095】
[化学式3]
Si(OR7)a(R8)4-a
【0096】
前記化学式3中、R7およびR8は、それぞれ独立して、水素、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~20のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~20のアルケニル基、または直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1~20のアルキニル基であってもよく、前記炭素数は、例えば、1~15、1~10、1~5、1~3であってもよい。前記aは、1~4の整数である。
【0097】
一実施形態において、前記シロキサン系化合物は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、テトラプロピルオルトシリケート(TPOS)、テトラブチルオルトシリケート(TBOS)、またはこれらの共重合体であってもよい。
【0098】
一実施形態において、前記低屈折層を接着強化層と撥水層との間に含むことで、フィルムの低い反射率および高い透過率を実現することができる。
一実施形態において、前記低屈折層の厚さは、特に限定されず、例えば、50nm~150nm、60nm~120nm、または80nm~100nmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0099】
一実施形態において、前記低屈折層の屈折率は1.42~1.47、1.43~1.47、1.44~1.46、1.43~1.46、または1.44~1.45であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0100】
以下、低屈折層の形成方法について説明する。
低屈折層は、低屈折層形成用組成物を製造し、それを接着強化層上に塗布して乾燥することで形成されてもよい。
【0101】
一実施形態において、前記低屈折層形成用組成物は、シロキサン系化合物を含んでもよく、この際、前記シロキサン系化合物としては、前記低屈折層に関する説明において上述したものと同様のものを用いてもよい。
【0102】
<撥水層>
一実施形態において、前記撥水層は、前記低屈折層上に形成されてもよく、例えば、前記撥水層は、前記低屈折層の上面に接して形成されてもよい。
【0103】
一実施形態において、前記撥水層は、フッ素原子を含有するアルコキシシラン系化合物を含んで形成されてもよい。前記フッ素原子を含有するアルコキシシラン系化合物は、例えば、アルコキシシラン系化合物のケイ素原子にフッ素が直接置換されるか、またはケイ素原子に置換された置換基(例えば、アルキル基)などがフッ素で置換されたものであってもよい。換言すれば、ケイ素原子にフッ素が置換されたアルキル基が連結されたものであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0104】
より具体的に、一実施形態において、前記フッ素原子を含有するアルコキシシラン系化合物は、ペルフルオロポリエーテル基(Perfluoropolyether)を分子主鎖に有し、ケイ素原子に結合した加水分解可能な反応基を末端部に有してもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。この場合、前記加水分解可能な反応基は、低屈折層の反応基と加水分解反応または縮合反応などにより化学的結合を形成することで層間結合力をさらに向上させることができ、撥水層の表面上部層にフッ素官能基が配向することで防汚性、撥水性、および撥油性などがさらに向上することができる。
【0105】
一実施形態において、前記ペルフルオロポリエーテル基は、-(CpF2p)-、-(CpF2pO)-、-(CF(Z))-、-(CF(Z)O)-、-(CF(Z)CpF2pO)-、-(CpF2pCF(Z)O)-、-(CF2CF(Z)O)-、またはその組み合わせなどから選択されたペルフルオロ化された繰り返し単位を含んでもよく、直鎖状、分岐状、環状、またはその組み合わせなどであってもよく、飽和もしくは不飽和のものであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0106】
前記繰り返し単位において、前記pは1~10の整数であってもよく、具体的には1~4、より具体的には1~2の整数であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0107】
また、前記Z基は、フッ素基、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロエーテル基、窒素含有ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロポリエーテル基、およびペルフルオロアルコキシ基などから選択されるいずれか1つであってもよく、これらは、いずれも直鎖状、分岐状、または環状であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0108】
また、前記ペルフルオロポリエーテル基中で、前記繰り返し単位は、それぞれ独立して0~200、具体的には1~200個存在してもよく、前記繰り返し単位数の総和は、少なくとも1以上、20~100、または30~50であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、前記ペルフルオロポリエーテル基中で、前記繰り返し単位の順は、任意に存在してもよく、これは特に限定されない。
【0109】
前記フッ素原子を含有するアルコキシシラン系化合物の商業化された一例としてはShin-etsu社製のKY-1901、KY-1905、KY-19012、Daikin社製のOptool DSX、UD120などが挙げられるが、これは非限定的な一例にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0110】
前記フッ素原子を含有するアルコキシシラン系化合物を含んで形成される撥水層がシロキサン系化合物を含む低屈折層上に形成される場合、前記撥水層および低屈折層に含まれる化合物間の類似した化学構造により、撥水層と低屈折層との間の化学的結合による層間結合力がさらに向上することができる。
【0111】
また、前記フッ素原子を含有するアルコキシシラン系化合物は、撥水層に優れた撥水、防水、および撥油機能を与えることができる。したがって、前記フッ素原子を含有するアルコキシシラン系化合物を含んで形成される撥水層は、非常に優れた撥水特性を示すことができる。
【0112】
一実施形態において、撥水層は、水接触角が105°以上、109°以上、110°以上、112°以上、105°~120°、110°~120°、または110°~115°であってもよく、優れた硬度、向上した耐摩耗性、耐スクラッチ性、および指紋拭き取り性などの特性を有することができる。
【0113】
一実施形態において、前記撥水層の厚さは、特に限定されず、例えば、5nm~100nm、10nm~70nm、または10nm~50nmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0114】
以下、撥水層の形成方法について説明する。
撥水層は、撥水層形成用組成物を製造し、それを低屈折層上に塗布して乾燥することで形成されてもよい。
【0115】
一実施形態において、前記撥水層形成用組成物は、フッ素含有アルコキシシラン系化合物を含んでもよく、この際、前記フッ素含有アルコキシシラン系化合物としては、前記撥水層に関する説明において上述したものと同様のものを用いてもよい。
【0116】
一実施形態において、前記撥水層形成用組成物は、溶媒を含んでもよく、前記溶媒は、例えば、ヘキサフルオロキシレン、ヒドロフルオロカーボン、およびヒドロフルオロエーテルなどから選択されるいずれか1つまたはこれらの2つ以上の組み合わせを含んでもよい。前記溶媒の商業化された一例としては3M社製のHFE-7500、7200、7100、Novec 7500、デュポン社製のバートレルXF、および日本ゼオン社製のゼオローラHなどが挙げられるが、これは非限定的な一例にすぎず、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0117】
一実施形態において、前記撥水層は、塗布された撥水層形成用組成物を熱硬化することで形成されてもよい。前記撥水層の硬化を光硬化ではなく熱硬化により行う場合、撥水層の底面のハードコーティング層および接着強化層が活性エネルギー線(例えば、紫外線)に再びさらされるのを防止することができ、特に硬化が完了したハードコーティング層が再び光にされて過硬化または黄変が発生するのを防止することができる。
【0118】
一実施形態において、前記熱硬化は、50℃~200℃の温度で3分~30分間、または50℃~100℃の温度で3分~10分間乾燥した後、50℃~200℃の温度で3分~30分間、または80℃~150℃の温度で3分~20分間熱処理して行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。上記温度範囲にて、撥水層形成用組成物がさらに有効な速度で硬化することができ、前記組成物中の各成分間に副反応が発生するのを効果的に防止することができる。
【0119】
一実施形態において、前記光学多層構造体の反射率は4%以下、3.5%以下、3%以下、2.8%以下、0.5%~4%、1%~4%、2%~3.5%、2.5%~4%、2%~4%であってもよい。この際、前記反射率は、ASTM E1164規格に準じて、分光光度計(Hunterlab社製、ColorQuest XE)を用いて測定された反射率であってもよい。
【0120】
一実施形態において、前記光学多層構造体は、下記式1を満たしてもよい。
【0121】
[式1]
25%≧ΔE=(E0-E1/E0)×100
【0122】
前記式1中、E0は、前記撥水層の水接触角であり、E1は、前記撥水層の表面を直径3mm~5mm、または4mmのMinoan社製の消しゴムに約500gの荷重をかけ、約50rpmの速度で約15mmの距離を約2000回往復して擦った後の撥水層の水接触角である。
【0123】
一実施形態では、各層間の屈折率差を調節することで、光学多層構造体の反射率を調節することができる。例えば、前記光学多層構造体は、下記式2、式3、式4、および/または式5を満たしてもよい。
【0124】
[式2]
-0.05≦nf-n0≦0.15
【0125】
[式3]
0.001≦n0-n1≦0.008
【0126】
[式4]
0.05≦n0-n2≦0.1
【0127】
[式5]
0.05≦n1-n2≦0.1
【0128】
この際、nfは、基材層の屈折率であり、n0は、ハードコーティング層の屈折率であり、n1は、接着強化層の屈折率であり、n2は、低屈折層の屈折率である。
【0129】
ただし、必ずしも前記式2~式5による範囲に限定されるものではなく、例えば、式2は、0≦nf-n0≦0.15、0.05≦nf-n0≦0.15、0.07≦nf-n0≦0.13、0.08≦nf-n0≦0.12、または0.09≦nf-n0≦0.11であってもよく;式3は、0.001≦n0-n1≦0.008、0.002≦n0-n1≦0.006、0.003≦n0-n1≦0.006、または0.003≦n0-n1≦0.005であってもよく;式4は、0.06≦n0-n2≦0.09、0.065≦n0-n2≦0.085、または0.07≦n0-n2≦0.08であってもよく;式5は、0.05≦n1-n2≦0.09、0.05≦n1-n2≦0.08、または0.05≦n1-n2≦0.075であってもよい。
【0130】
一実施形態において、前記光学多層構造体は、基板の他面に前記ハードコーティング層がさらに形成されてもよい。
一実施形態において、前記接着強化層と低屈折層の厚さ比は1:2~1:7、1:2~1:6、1:2~1:5、1:2~1:4、1:2.5~1:1.35、または1:3であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0131】
<光学多層構造体の製造方法>
一実施形態は、上述した光学多層構造体の製造方法を提供する。
【0132】
一実施形態において、前記光学多層構造体の製造方法は、基材層の一面にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化させてハードコーティング層を形成するステップと、
前記ハードコーティング層上に1種以上の官能基を有するアルコキシシラン系化合物を含む接着強化層形成用組成物を塗布および乾燥させて接着強化層を形成するステップと、
前記接着強化層上にシロキサン系化合物を含む低屈折層形成用組成物を塗布および乾燥させて低屈折層を形成するステップと、
前記低屈折層上にフッ素原子を含有するアルコキシシラン系化合物を含む撥水層形成用組成物を塗布および乾燥させて撥水層を形成するステップと、を含んでもよい。
【0133】
一実施形態において、上述した光学多層構造体の製造方法は、前記基材層の他面にハードコーティング層形成用組成物を塗布および硬化させてハードコーティング層を形成するステップをさらに含んでもよい。
一実施形態において、前記光学多層構造体の製造方法は、上述した光学多層構造体に関するものを適用することができる。
【0134】
一実施形態において、前記塗布は、ダイコータ、エアナイフ、リバースロール、スプレー、ブレード、キャスティング、グラビア、およびスピンコーティングなどにより行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0135】
一実施形態において、前記ハードコーティング層を形成するステップは、前記ハードコーティング層形成用組成物を光硬化した後に熱硬化してもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。この際、前記熱硬化は、100~200℃の温度で5~20分間行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。一実施形態において、前記光硬化前に前記ハードコーティング層形成用組成物を加熱して前処理するステップをさらに含んでもよく、前記前処理は、前記熱硬化よりも低い温度で行われてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0136】
一実施形態において、前記接着強化層形成用組成物を乾燥させるステップは、前記接着強化層形成用組成物を0℃~50℃、10℃~50℃、20℃~50℃、または30℃~50℃で、1分~30分、1分~20分、または1分~10分間乾燥させてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0137】
一実施形態において、前記撥水層形成用組成物を硬化させるステップは、前記撥水層形成用組成物を50℃~200℃の温度で3分~30分間、または50℃~100℃の温度で3分~10分間乾燥した後、50℃~200℃の温度で3分~30分間、または80℃~150℃の温度で3分~20分間熱処理するステップを含んでもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0138】
<ウィンドウカバーフィルムおよびフレキシブルディスプレイパネル>
他の一実施形態は、前記光学多層構造体を含むウィンドウカバーフィルムを提供することができる。
【0139】
また他の一実施形態は、前記ウィンドウカバーフィルムを含むフレキシブルディスプレイパネルまたはフレキシブルディスプレイ装置を提供することができる。
【0140】
一実施形態に係る光学多層構造体は、反射率が低く、水接触角および耐摩耗性に優れるため、ウィンドウカバーフィルムおよび/またはフレキシブルディスプレイパネルに効果的に適用することができる。
【0141】
前記ウィンドウカバーフィルムは、フレキシブルディスプレイ装置の最外面ウィンドウ基板として用いることができる。フレキシブルディスプレイ装置は、通常の液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などの各種画像表示装置であってもよい。
【0142】
以下、本発明の実施例および実験例を以下に具体的に例示して説明する。ただし、後述する実施例および実験例は、本発明の一部を例示するものにすぎず、本発明がこれに限定されるものではない。
【0143】
<試験方法>
1.屈折率
光学多層構造体を長さ方向(MD)と幅方向(TD)に3cm×4cmサイズに裁断した。それをプリズムカプラ(Meticon社製、2010/M)を用いて、TEモードで、543nmの波長において長さ方向に対する屈折率(Rx)と幅方向に対する屈折率(Ry)を測定した。試験片の屈折率(R)は、長さおよび幅方向の屈折率を平均して算出した。
【0144】
2.水接触角
光学多層構造体を、ASTM D5946規格に準じて、水接触角測定器(Kruss社製、DSA)を用いて接触角を測定した。
【0145】
3.○の水接触角
光学多層構造体を7cm×12cmに裁断し、耐摩耗測定器(Kipae E&T社製、scratch tester)ジグに固定し、TIPに直径4mmの消しゴム(Rubber stick、Minoan社製)を取り付けおよび固定した。移動距離15mm、移動速度50rpm、および荷重500gに設定し、消しゴムを撥水層の表面に往復2000回摩擦させた後、摩耗した面の水接触角を前記2.水接触角の測定方法により測定した。
【0146】
4.透過率
光学多層構造体をNippon Denshoku社製の装置を用いて透過率を測定した。
【0147】
5.反射率
光学多層構造体を長さ方向(MD)と幅方向(TD)に5cm×7cmに裁断した後、背面に後面反射光を吸収するためのTomoegawa社製のBlack PETを貼り合わせして作製した。作製された試験片は、ASTM E1164規格に準じて、分光光度計(Hunterlab社製、ColorQuest XE)を用いて反射率を測定した。
【0148】
<実施例1>
1-1.基材層形成用組成物の製造
窒素雰囲気下で、反応器にて、ジクロロメタンおよびピリジンの混合溶液にテレフタロイルジクロライド(TPC)および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)を入れ、窒素雰囲気下で25℃で2時間撹拌した。この際、前記TPC:TFMBを3:4のモル比で投入し、固形分含量が10重量%となるように調節して重合した。その後、前記生成物を過量のメタノールに沈殿させた後、濾過して得られた固形分を50℃で6時間以上真空乾燥してオリゴマーを得、製造されたオリゴマーのFW(Formula Weight)は1670g/molであった。
【0149】
反応器に、溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、前記オリゴマー100mol、および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)28.6molを投入し、十分に撹拌した。その後、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)64.3molと4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物(6FDA)64.3molを前記反応器に投入して十分に撹拌し、40℃で10時間重合した。この際、反応溶液の固形分含量は20重量%であった。次いで、前記反応溶液にピリジンと酢酸無水物をそれぞれ二無水物の総含量に対して2.5倍モルで順次投入し、60℃で12時間撹拌した。
【0150】
重合の終了後、重合溶液を過量のメタノールに沈殿させた後、濾過して得られた固形分を50℃で6時間以上真空乾燥し、ポリアミドイミドパウダーを得た。前記パウダーをDMAcに20重量%に希釈溶解し、基材層形成用組成物を製造した。
【0151】
1-2.ハードコーティング層形成用組成物の製造
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECTMS、TCI社製)と水を24.64g:2.70g(0.1mol:0.15mol)の割合で混合して反応溶液を製造し、250mLの2-neckフラスコに入れた。前記混合物に0.1mLのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Aldrich社製)触媒とテトラヒドロフラン(Aldrich社製)100mLを添加し、25℃で36時間撹拌した。
【0152】
その後、層分離を行い、生成物層を塩化メチレン(Aldrich社製)で抽出し、抽出物を硫酸マグネシウム(Aldrich社製)で水分を除去し、溶媒を真空乾燥させてエポキシシロキサン系樹脂を得た。エポキシシロキサン系樹脂は、GPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて測定した結果、重量平均分子量が2500g/molであった。
【0153】
上記のように製造されたエポキシシロキサン系樹脂30g、架橋剤として(3’,4’-エポキシシクロヘキシル)メチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート10gとビス[(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル]アジペート5g、光開始剤として(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート0.5g、メチルエチルケトン54.5gを混合し、ハードコーティング層形成用組成物を製造した。
【0154】
1-3.接着強化層形成用組成物の製造
アミノ基とアルコキシシラン基を含有したアルコキシシラン系化合物(Shin-estu社製、KBM-603)をイソプロピルアルコール(IPA)溶液に固形分含量0.15重量%となるように希釈し、接着強化層形成用組成物を製造した。
【0155】
1-4.低屈折層形成用組成物の製造
20mLのバイアルにテトラエチルオルトシリケート(tetraethyl orthosilicate、TEOS)4.0g(19mmol)、2-プロパノール4.0g(67mmol)、蒸留水1.98g(110mmol)、95%硫酸0.016g(0.16mmol)を順次投入し、40℃に昇温して1時間撹拌した。その後、常温に冷却し、アニオン交換樹脂を用いて硫酸を除去した後、250mLの丸底フラスコに投入した。その次に、フラスコに2-プロパノール110g(1.83mol)と亜硝酸ナトリウム1.2mg(0.017mmol)を投入し、60℃に昇温して2時間撹拌した後に常温に冷却し、低屈折層形成用組成物を製造した。
【0156】
1-5.撥水層形成用組成物の製造
過フッ素化基とアルコキシシラン基を含有したアルコキシシラン系化合物(Daikin社製、Optool)をフッ素系溶媒(3M社製、Novec 7500)に固形分0.1重量%の濃度に希釈し、撥水層形成用組成物を製造した。
【0157】
1-6.基材層の製造
前記基材層形成用組成物をアプリケータを用いて支持体(ガラス基板)上に塗布した後、80℃で30分、100℃で1時間乾燥し、常温で冷却してフィルムを製造した。その後、180℃で120分、275℃で48分間(総熱処理時間の40%)昇温速度20℃/minで段階的な熱処理を行い、厚さ50μmの基材層を製造した。
【0158】
1-7.ハードコーティング層の製造
メイヤーバー#10を用いて前記製造された基材層の一面に前記ハードコーティング層形成用組成物をコーティングした後、60℃で4分間乾燥し、高圧メタルランプを用いて1000mJ/cm2でUVを照射し、厚さ5μmのハードコーティング層を製造した。
【0159】
1-8.接着強化層の製造
前記製造されたハードコーティング層の表面をコロナ処理した後、メイヤーバー#10を用いてハードコーティング層上に前記接着強化層形成用組成物をコーティングした後、常温で5分間乾燥し、厚さ30nmの接着強化層を製造した。
【0160】
1-9.低屈折層の製造
メイヤーバー#10を用いて前記製造された接着強化層上に前記低屈折層形成用組成物をコーティングした後、40℃で1分間乾燥し、厚さ90nmの低屈折層を製造した。
【0161】
1-10.撥水層の製造
メイヤーバー#14を用いて前記製造された低屈折層上に前記撥水層形成用組成物をコーティングした後、80℃で2分間乾燥した後、120℃で5分間熱処理し、厚さ30nmの撥水層を製造した。
【0162】
<実施例2>
前記実施例1と同様の方法で光学多層構造体を製造するが、各層の屈折率を下記表1に示したように適用して光学多層構造体を製造した。
【0163】
<実施例3>
前記実施例1において、メイヤーバー#10を用いて前記製造された基材層の他面に前記ハードコーティング層形成用組成物をコーティングした後、60℃で4分間乾燥し、高圧メタルランプを用いて1000mJ/cm2でUVを照射して厚さ5μmのハードコーティング層を製造するステップをさらに行い、実施例1の光学多層構造体の基材層の他面にハードコーティング層がさらに形成された光学多層構造体を製造した。
【0164】
<比較例1>
前記実施例1において、接着強化層を製造するステップを省略し、ハードコーティング層の製造後に直ちに低屈折層を製造して光学多層構造体を製造した。
【0165】
<比較例2>
前記実施例1において、低屈折層の製造後、撥水層の製造ステップを省略して光学多層構造体を製造した。
【0166】
<比較例3>
前記実施例1において、低屈折層を製造するステップを省略し、接着強化層の製造後に直ちに撥水層を製造して光学多層構造体を製造した。
【0167】
<実験例>物性の測定
前記実施例1~実施例3および比較例1~比較例3で製造された光学多層構造体を用いて前記<試験方法>1~5により物性を測定し、下記表1および表2に示した。
【0168】
【0169】
【0170】
前記表2中、ΔEは、(E0-E1/E0)×100の値であり、この際、E0は、撥水層の初期水接触角であり、E1は、撥水層の表面を前記<試験方法>3により消しゴムで摩耗後の水接触角である。
【0171】
前記表1から確認できるように、基材層上にハードコーティング層、接着強化層、低屈折層、撥水層が積層された構造の実施例1および実施例2の光学多層構造体と、基材層上にハードコーティング層、接着強化層、低屈折層、撥水層が積層され、基材層の他面にもハードコーティング層が積層された構造の実施例3の光学多層構造体は、いずれも反射率が4%以下と光学特性に優れるものであったが、低屈折層を含まない比較例3の光学多層構造体は、実施例に比べて高い反射率を示した。
【0172】
また、前記表2から確認できるように、実施例1~実施例3の光学多層構造体は、撥水層の初期水接触角が105゜以上と高く、耐摩耗性に優れるのに対し、実施例の積層構造を有しない比較例1および比較例2の光学多層構造体の場合、撥水層の初期水接触角が実施例に比べて低く、耐摩耗性にも劣るものであった。
【0173】
以上、好ましい実施形態および実験例により本発明を詳しく説明したが、本発明の範囲は、特性の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲により解釈されなければならない。また、本技術分野で通常の知識を習得した者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく多くの修正および変形が可能であることを理解しなければならない。
【符号の説明】
【0174】
100:光学多層構造体
10:基材層
20:ハードコーティング層
30:接着強化層
40:低屈折層
50:撥水層