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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155917
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】検査データの比較装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20231016BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023122857
(22)【出願日】2023-07-10
(62)【分割の表示】P 2021022896の分割
【原出願日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】P 2020019221
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】517030918
【氏名又は名称】株式会社AncientTree
(71)【出願人】
【識別番号】520045930
【氏名又は名称】降旗 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100088867
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 卓嗣
(72)【発明者】
【氏名】藤原 壮好
(72)【発明者】
【氏名】岡本 稔
(72)【発明者】
【氏名】降旗 謙一
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA03
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】 治療情報と各種検査データとの相関関係に基づき、以後の検査データ(病態)を予測し、その結果を疾病の治癒に役立たせんとするものである。
【解決手段】 本発明は、治療対象者の治療情報を記憶する治療記憶手段と、治療に由来する公知の情報を記憶する公知情報記憶手段と、前記治療対象者の各種検査データを記憶する検査データ記憶手段とが具備され、公知情報記憶手段に記憶されている公知情報と検査データ記憶手段に記憶されている検査データを比較して、将来の検査データを予測することを特徴とするものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療対象者の治療情報に由来する各種検査データを予測し、当該予測データと現実の検査データとを比較する装置において、
前記治療対象者の治療情報を記憶する治療記憶手段と、
治療に由来する公知の情報を記憶する公知情報記憶手段と、
治療に由来する各種検査データを前記公知情報に対応付けて予測する予測手段と、
前記治療対象者の各種検査データを記憶する検査データ記憶手段と、
前記治療対象者の治療記憶手段に記憶された治療情報に従い、前記予測手段から予測データが出力される予測データ出力手段と、
前記検査データと前記予測データとを比較し、その差異を記憶するデータ差異記憶手段と、
が具備され、
前記データ差異記憶手段に記憶された前記検査データと前記予測データとの差異を人工知能によって照合し、
前記公知の情報から人工知能を利用して初期の予測関数を生成し、その予測関数に、複数回の過去に蓄積された検査データと治療情報を加えて、人工知能予測式に追加学習させ、
その分析結果として、前記治療対象者の体質として特定することを特徴とする検査データ比較装置。
【請求項2】
同一の治療情報と検査データを、時間を隔てて複数回記憶させ、各回ごとに行った検査データと予測データとの差異を蓄積する蓄積手段を有する請求項1に記載の検査データ比較装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療対象者の治療内容と各種の検査データを関連付けて記録し、同一の治療を継続している場合に、検査データがどのように変化していくかを予測し、場合によっては、当該治療対象者に検査データを変更(良好化)すべく治療内容を変化(改善)させる動機づけを与えようとするものである。
本発明において、治療とは、医師の指示に基づき治療対象者の身体に物理的、化学的、生物学的、心理的な影響を与え、病気や怪我の改善、治癒を図る行為、即ち投薬、手術、放射線、リハビリ、保存的治療等をいうが、医師の指示に基づかない生活習慣自体は含まれない。
【0002】
例えばある治療対象者が現在の治療内容を変えることなく治療を継続した場合の、検査結果の動向を予測して、前記治療対象者に治療の必要性の理解と治療行動を促すことにより、病態の改善行動につなげようとするものである。
現在の治療内容を継続した場合、また継続しなかった場合の検査データの将来値を予測し、前記治療対象者の治療内容の変更や続行の重要性を認識させることを目的とする。
【背景技術】
【0003】
従来より、医療費低減の観点からも適切な治療行為が声高に叫ばれており、治療内容と各種疾病との因果関係については医学論文などに多数掲載され、周知となっている。
例えば自覚症状の現れない初期糖尿病の治療の中断や、それによって生じる重症化に由来する透析患者の増加は社会問題化されている。また治療のための薬剤も多種多様なタイプのものが提供されているが、治療対象者個々に合致させることは難しく、多くの公知論文に各種の投薬の手法について掲載されている。
【0004】
しかしながら、最近は、疾病は複合的な検査値で評価すべきであることが知られているが、現実としては、例えば糖尿病の場合、血糖値とHbA1Cのみでの確認が実施されるだけで、病状の進展と共に問題となる複数の臓器、視力低下、血圧、脂質、腎機能低下などによる複合的な検査結果による総合評価はできていない。
【0005】
このため、投薬後に食後血糖値の上昇が抑制され、HbA1Cが基準値となって治療効果がありと評価された場合、治療による副作用や関連疾病が見逃されたり、重症化を招いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6473988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1には、対象者の生活習慣と各種の検査データを関連付けて記録し、同一の生活習慣を継続している場合に、検査データがどのように変化していくかを予測し、場合によっては、対象者に検査データを変更(良好化)すべく生活習慣を変化(改善)させる動機づけを与えようとする発明が記載されている。
しかしながら、この発明では治療中の治療内容と検査データを関連付けて記録するという概念は存在しない。
従って、現在の治療内容を継続した場合、また継続しなかった場合の検査データの将来値を予測し、前記治療対象者の治療内容の変更や続行の重要性を認識させることはできなかった。
【0008】
その点、本発明では、治療内容と各種検査結果を関連付け、治療対象者に、当該検査結果から今後の治療内容を見直す(場合によれば見直さない)指針を与えんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、治療対象者の治療情報と各種検査データを、当該治療に由来する公知の各種検査データと比較して、当該治療を継続した場合の将来の検査データを予測する装置において、前記治療対象者の治療情報を記憶する治療記憶手段と、各種治療に由来する治療結果に関する公知の情報を記憶する公知情報記憶手段と、前記治療対象者の各種検査データを記憶する検査データ記憶手段と、が具備され、前記治療情報と前記検査データに関する情報を定期的に前記検査データ記憶手段に入力することによって、治療対象者の検査データを蓄積し、当該データと前記公知情報記憶手段に記憶されている公知の情報とを人工知能によって照合し、前記公知の情報から人工知能を利用して初期の予測関数を生成し、その予測関数に、複数回の過去に蓄積された検査データと治療情報を加えて、人工知能予測式に追加学習させ、その分析結果として、将来の検査データを予測することを特徴とする検査データ予測装置である。
本発明によると、治療情報(例えば治療対象者への特定の薬剤の投与データ)と、公知の医学論文などに記載されているデータ(血糖値やHbA1Cと特定の薬剤との関係に関するデータ)を比較して、この状態で特定の薬剤を投与し続けるだけでは現在の症状(血糖値やHbA1Cのデータ)低下しないことが予測される可能性がある。
このような場合、治療対象者に対しては、別の薬剤や治療方法を適用することにより血糖値やHbA1Cが上昇するのを抑制できるか、もしくは降下させることができるかを選択することが可能となる。
【0010】
(2)本発明は、治療対象者の治療情報と検査データを関連付け、一定の治療を継続した場合の過去の検査データに基づき、将来の検査データを予測する装置において、前記治療対象者の治療情報を記憶する治療記憶手段と、各種治療に由来する治療結果に関する公知の情報を記憶する公知情報記憶手段と、前記治療対象者の各種検査データを記憶する検査データ記憶手段と、が具備され、時間を隔てて同一の治療下における検査データを複数回記憶させ、各回ごとに行った過去の検査データを蓄積し、当該データと前記公知情報記憶手段に記憶されている公知の情報とを人工知能によって照合し、前記公知の情報から人工知能を利用して初期の予測関数を生成し、その予測関数に、複数回の過去に蓄積された検査データと治療情報を加えて、人工知能予測式に追加学習させ、その分析結果として、将来の検査データを予測することを特徴とする検査データ予測装置である。
【0011】
本発明によると、例えば、治療対象者への特定の降圧剤の投与および血圧データを、時間を隔て複数回記憶させ、各回ごとに行った過去の検査データを蓄積することによって、この状態で前記特定の降圧剤を投与し続けると血圧の上昇は抑制されることが予測されることになる。
【0012】
このような場合、治療対象者は過去の特定の降圧剤の投与および血圧データから、治療対象者は将来当該特定の降圧剤の投与をどの程度続ければ血圧の上昇を予防できるか、もしくは降下させることができるかが予測できることになる。
【0013】
(3)治療情報には投薬、手術、放射線、リハビリ、保存的治療のいずれかが含まれていることが望ましい。
また、治療情報には本人以外の親族の情報が含まれていてもよい。
【0014】
(4)治療情報には、前記治療対象者の遺伝情報および病歴のいずれか一方若しくは両方が含まれることが望ましい。
【0015】
(5)検査データには各種の検体検査、身体情報のいずれかが含まれていることが望ましい。
検体検査には、糖代謝、脂質代謝、肝機能、貧血、腎機能の検査データが含まれ、身体情報には年齢、性別、身長、体重、腹囲、血圧が含まれていてもよい。
【0016】
(6)治療内容を変更した場合の、将来の検査データを予測してもよい。
例えば、治療対象者が過去の治療内容を変更し、特定の薬剤の投与量を増やした状態の血圧データに基づき、今後前記特定の薬剤の投与量をどの程度にすれば血圧が上昇するのを予防できるか、もしくは降下させることができるかが予測できることになる。
【0017】
(7)本発明は、治療対象者の治療情報に由来する各種検査データを予測し、当該予測データと現実の検査データとを比較する装置において、前記治療対象者の治療情報を記憶する治療記憶手段と、治療に由来する公知の情報を記憶する公知情報記憶手段と、治療に由来する各種検査データを前記公知情報に対応付けて予測する予測手段と、前記治療対象者の各種検査データを記憶する検査データ記憶手段と、前記治療対象者の治療記憶手段に記憶された治療情報に従い、前記予測手段から予測データが出力される予測データ出力手段と、前記検査データと前記予測データとを比較し、その差異を記憶するデータ差異記憶手段と、が具備され、前記データ差異記憶手段に記憶された前記検査データと前記予測データとの差異を人工知能によって照合し、前記公知の情報から人工知能を利用して初期の予測関数を生成し、その予測関数に、複数回の過去に蓄積された検査データと治療情報を加えて、人工知能予測式に追加学習させ、その分析結果として、前記治療対象者の体質として特定することを特徴とする。
【0018】
本発明によると、例えば、治療対象者への特定の降圧剤の投与および血圧データを、時間を隔て複数回記憶させ、各回ごとに行った過去の検査データを治療情報に関連づけて記録することができる。
従って、治療対象者への特定の降圧剤の投与および血圧データを、時間を隔て複数回記憶させ、各回ごとに行った過去の検査データを記録しておくことができる。
【0019】
(8)同一の治療情報と検査データを、時間を隔てて複数回記憶させ、各回ごとに行った検査データと予測データとの差異を蓄積してもよい。
【0020】
(9)本発明は、治療対象者の各種検査データを、当該治療に由来する公知の各種検査データと比較し、当該治療を継続した場合の将来の発症が予測される疾病と当該疾病を未然に防止するための治療の改善内容を提示する装置において、前記治療対象者の治療情報を記憶する治療記憶手段と、治療に由来する公知の情報を記憶する公知情報記憶手段と、前記治療対象者の各種検査データを記憶する検査データ記憶手段と、が具備され、前記公知情報記憶手段に記憶されている公知情報と検査データ記憶手段に記憶されている検査データを比較して、前記治療情報と前記検査データに関する情報を定期的に前記検査データ記憶手段に入力することによって、治療対象者の検査データを蓄積し、当該データと前記公知情報記憶手段に記憶されている公知の情報とを人工知能によって照合し、前記公知の情報から人工知能を利用して初期の予測関数を生成し、その予測関数に、複数回の過去に蓄積された検査データと治療情報を加えて、人工知能予測式に追加学習させ、その結果を、前記身体の体質の選定や事後の検査データの予測、さらには推奨される治療に供給し、それぞれの体質選定、予測、推奨される治療内容の選定の精度や確率度の向上を図ることを特徴とする。
【0021】
本発明によると、例えば、治療対象者が特定の降圧剤を摂取しても血圧が低下しないという検査結果が得られた場合、その検査結果と、公知の文献に記載されている情報、即ち当該特定の降圧剤を摂取するとそれに伴い血圧が低下するという情報と、を比較することのよって、当該治療対象者は一般的ではない体質(身体のタイプ)であると判断される。
【0022】
従って、当該治療対象者がもし高血圧症であるなら、薬剤を変更するなどの治療方法を変更することを検討すべきである、ということになる。
【0023】
(10)治療の改善勧告情報は、改善すべき検査項目と推定された将来の重症化リスクを回避するための検査値目標を含むことが望ましい。
(11)複数の治療の種類およびそれに対応する将来の改善もしくは重症化リスクを予測し、患者に対し複数の治療の種類から最適なものを選択できるように提示することが望ましい。
例えばHbA1c値を下げる治療方法が複数種あり、患者によってHbA1c値を急激に下げた方がよい場合と、緩やかに下げた方がよい場合があるが、かかる場合に治療方法とその治療を行った場合のHbA1c値の変化を予測し患者に提供できれば、より適切な治療が行い得る。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、治療内容と各種検査結果を関連付け、治療対象者に、当該検査結果から今後の治療内容を見直す(場合によれば見直さない)指針を与えることができ、疾病の悪化に対する大きな抑制策を実行し得ることになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施の形態の制御ブロック図である。
図2】本発明の一実施の形態の各種検査データと治療情報との関連を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施の形態の各種検査データと治療情報から将来の疾病の状態の予測を行うための工程を示す図である。
図4】本発明の一実施の形態の、個人属性や投薬情報等と血糖値等を入力し来検査値予測エンジンを利用し今後の投薬情報等を出力するための工程を示す図である。
図5】本発明の一実施の形態の各種検査データと治療情報との関連を示す関連図である。
図6】本発明の一実施の形態の各種の服薬情報(治療情報)の内容を表す図である。
図7】本発明の一実施の形態の検査データの予測を現す折れ線グラフである。
図8】本発明の一実施の形態の現状維持と改善目標の指針を示す図である。
図9】本発明の一実施の形態の生活習慣と検査値との関係を示した表である。
図10】本発明の一実施の形態の解説文を示す図である。
図11】本発明の一実施の形態の図9に続く図である。
図12】本発明の一実施の形態の人工知能による治療効果を示すである。
図13】本発明の一実施の形態の図12の内容をグラフ化したものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、装置全体の制御ブロック図で、中央処理装置(CPU)1には、バスライン2を介して、治療対象者の治療情報を記憶しておく治療情報メモリ3、治療対象者の各種の検査データを記憶しておく検査データメモリ4、医学論文などに掲載されている公知情報を記憶しておく公知情報メモリ5、および予測データと検査データとの差異を蓄積する差異蓄積メモリ9などの各種メモリが接続されている。
【0027】
また前記バスライン2には、治療対象者の治療情報を入力することによって予測される検査データを表示する予測データ表示部6、過去の検査データと現在の検査データを比較する検査データ比較部7、検査データと前記公知情報を比較する検査データ比較部8、および検査データに基づき治療対象者に推奨すべき治療を教示する推奨治療表示部10が接続されている。
更に、前記バスライン2には、各種検査データを入力する検査データ入力部11と、治療情報を入力する治療情報入力部12が接続されている。
【0028】
本装置を使用して検査データを予測するには、先ず図6に示すような治療対象者の治療に関する情報を入力する。
【0029】
具体的には、治療対象者に現在服薬している薬剤、即ち図6に示すような糖尿病の薬(内服薬やインスリン)、高血圧の薬、抗凝固剤、心臓病の薬、コルステロールなどを下げる薬、胃腸薬、痛風の薬、精神安定剤、副腎皮質ホルモン剤、その他抗がん剤等から自己が服薬している薬剤を選択してもらう。
そのほか、手術歴や放射線治療歴など他の治療情報を入力してもらう。
また、治療情報として治療対象者の家族歴(血圧、血糖値、脂質、肝機能、治療経験、20歳の体重)などが挙げられる。
【0030】
次いで、図5に示すような各種検査データに関する情報を入力する。
この検査項目としては、体格(腹囲、体重、BMI)、血圧(最高血圧、最低血圧)、糖代謝(空腹時血糖値、推定平均血糖値、HbA1c値)、脂質代謝(HDLコルステロール、LDLコルステロール、中性脂肪、肝機能(AST、ALT、γ―GTP)などが挙げられる。
【0031】
そして、図2図4に示すように、前述のような治療情報と検査データに関する情報を定期的に入力することによって、治療対象者のデータが蓄積され、当該データと医学論文等に紹介されている各種の公知情報を人工知能(AI)エンジンによって照合し、その分析結果として、将来検査値予測(悪化や改善化)、遺伝的検査値予測、悪化危険度判定および病態悪化要因分析および病態改善要因分析睡眠)が出力される。
【0032】
これらの分析結果から、治療評価(将来検査値、治療内容)、検査値予測グラフ、病態改善や治癒のための検査値目標、重症化や合併症発症リスク、快復のための行動プランや優位順位、食習慣と病気の関係を検査項目単位で評価し、結果として推奨される治療を表示し、治療目標達成可能な投薬情報が出力される。
なお、投薬情報のみならず推奨される、手術や放射線治療等の治療情報も出力される。
【0033】
治療対象者は推奨される治療を実行しつつ定期的に検査を行うと、自己の体調が好転することが理解できる。
一方、推奨される治療を実行しない場合でも定期的に検査を行うと、自己の体調が悪化することが理解できる。
従って、治療対象者はこの装置を利用することによって、良好な体調管理ができることになる。
【0034】
図7は、特定の治療対象者がこのままの治療を続けなければ将来の検査値がどのように変化するかを折れ線グラフで表しており、この中で例えば目標値が6.3%であるHbA1c値は、現在が6.5%、3年後が6.6%、6年後が6.8%、9年後が7.3%と予測されている。
また下部に治療方法、生活習慣、検査結果を基に合併症のリスク予測をレーダーチャートで表されている。
【0035】
次に、図5に従い、各種検査データと治療情報との関連について説明する。
この図において、左側の縦一列は、検査データと治療情報を入力し、最終的に検査データと治療情報の蓄積をする状態を表している。
【0036】
即ち、先ず検査データと治療情報を入力し、次いで現在の病態のタイプを選定することによって、事後の検査データを予測する。例えば治療対象者が特定の降圧剤を摂取しても血圧に影響がない体質であるとすると、それを前提に事後の検査データを予測する。また当該降圧剤を摂取すると血圧が下がるという体質なら、それに応じた検査データを予測する。
【0037】
次いで、前記検査データの予測値に基づき、検査データの改善のために推奨される治療を選定する。例えば、特定の降圧剤を摂取しても血圧が下がらないという体質の治療対象者には「他の降圧剤を処方すべし」という治療を推奨することになる。
そして、複数回の検査データと治療情報を蓄積し、治療対象者に今後の治療の指針を提供する。
【0038】
前記治療対象者の体質を選定するにあたっては、論文等の公知情報に開示されているいくつかの類型に従って体質の選定ロジックをから前記治療対象者の改質を選定する。
また論文等の公知情報からAI(人工知能)を利用して初期の予測関数を生成し、その予測関数に、複数回の過去に蓄積された検査データと治療情報を加えて、AI予測式に追加学習させる。
そして、その結果を、前記身体の体質の選定や事後の検査データの予測、さらには推奨される治療情報に供給され、それぞれの体質選定、予測、推奨治療の選定の精度や確率度の向上を図る。
【0039】
次に図3に従い、治療対象者が前記改善勧告情報になるように治療を改善すれば、現在の疾病の重症化のリスクは抑制される形態について説明する。
先ず、治療対象者の過去6年以上の検診検査を追跡し、そのままの治療を今後も継続した場合に重症化し得る疾病の将来疾患タイプを推定し、当該推定された将来の疾病の重症化を回避するための検査値目標を設定し、その検査値目標を治療対象者に告知することで発症を抑制できる可能性が向上する。
【0040】
即ち図3の下辺に記載されているように、身体状況や治療をこのまま放置すると検査値トレンドや疾患タイプから将来の悪化(重症化)リスクが予測される。そしてこのリスクを回避するには将来疾患の回避のための検査値目標を設定し、その目標を達成するための治療の改善目標を設定することによって、治療対象者が将来発生しかねない疾患や現在の疾患の重症化を予防せんとするものである。
【0041】
具体的には、図8に示す糖尿病の治療対象者に対し、「病状の維持/改善目標」として「投薬治療のみでは、摂取カロリーの抑制、基礎代謝エネルギー量をアップをないと血糖値コントロールが困難になることが予測されます。以下の行動改善を行い、追加投薬、投薬量増加をしないようにしましょう。」との提案をする。
より具体的には、投薬の減量や断薬を目指すための取り組み項目として、下記の提案を行う。上から下に効果の高い順に記載されている(図では表示が小さいので下記に列記する)。
【0042】
・「継続」というタイトルでは、「薬を正しく服用する」という提案を行う。
更に具体的に「糖尿病の治療は、食事療法と運動療法が基本ですが、食事療法と運動療法で良好な血糖コントロールが実現できないと糖尿病の治療は、食事療法と運動療法が基本ですが、食事療法と運動療法で良好な血糖コントロールが実現できないときは、合併症の発生や進行を抑えるために、薬物療法をおこないます。」との提案を行う。
・最初の「増やす」というタイトルでは、「生活の中で8000歩、そのうち20分は中程度の活動」という提案を行う。
更に具体的に「8000歩20分に満たない方は、まずは4000歩5分を2か月かけて、次に6000歩10分を2カ月かけて・・と無理なく習慣化しましょう。」という提案を行う。
・最初の「習慣化する」というタイトルでは、「野菜やきのこ→肉や魚→ご飯やパンの順に食べる」という提案を行う。
・2番目の「習慣化する」というタイトルでは、「寝る3時間前には食事を済ませる」という提案を行う。
・3番目の「習慣化する」というタイトルでは、「一口20-30回ゆっくりよく噛んで食べる」という提案を行う。
更に具体的に「野菜を増やす、流し込み食べをしない、食べ物を口に入れたら決めた回数を噛み終わるまで橋を置くなどして工夫しましょう。」という提案を行う。
・最初の「減らす」というタイトルでは、「めん類、炒飯、どんぶり物、菓子パン、おにぎりなどを穀類の単品料理を控える。」という提案を行う。
・2番目の「減らす」というタイトルでは、「揚げ物や中華料理、洋風料理など、油を多く使った料理を食べるのを控える。」という提案を行う。
・3番目の「減らす」というタイトルでは、「塩分以外の調味料で工夫して薄い味付けに慣れる。」という提案を行う。
更に具体的には「酢や、柑橘類のしぼり汁、生姜、ニンニク等の香味、わさびや山椒等の香辛料、ハーブを利用することで味にアクセントを。」という提案を行う。
・3番目の「増やす」というタイトルで「良質な脂質とタンパク質を含む青魚の料理を食べる」という提案を行う。
更に具体的には「切り身を購入する、店で下処理をお願いする、フライパンや電子レンジを活用する、缶詰など手軽な調理の工夫をしましょう。」という提案を行う。
【0043】
そして図9に示すように、「関連疾病へ影響する検査値含めた食事改善は」ということで、縦軸に血圧、血糖、中性脂肪などの検査値(検査内容)を列記し、横軸に前記提案内容を列記して、人工知能分析で優先順位が高いとされた事項として、例えば縦軸の「血圧」と横軸の「アルコールを飲み過ぎない」を関連させ、「△」内に「!」を入れたマークで表されている。
【0044】
更に図10では、「解説」として「あなたの身体の中ではどんなことが起こっている…!?危険な病態悪化や合併症の発症はこのように発症する可能性があります。」というタイトルで、「高血糖を(糖尿病)を放っておくと!?」との状態を説明文と血管内の断面図で表している。
【0045】
そして、図11に示すように「食事スピードを抑えて血糖値の急上昇を抑制」というサブタイトルで各種対応策が表示される。
【0046】
図12は、人工知能を利用して、現在のHbA1c値が8.4、空腹時血糖が180、食後2時間血糖値が220である患者が、治療をしない場合と、3種類の治療をした場合の3か月後の予測値を表に表したものである。
ここで薬剤A(ビグアナイド薬)は、主に肝臓に作用し、肝臓からのブドウ糖の放出が過剰になることを抑えることで血糖値を下げる効果が得られ、インスリン抵抗性を改善し血糖値を下げるものである。
【0047】
また薬剤B(スルホニル尿素(SU)薬)は、膵臓に働きかけて、インスリン分泌を促進させ、日本人に多いインスリンの分泌する働きが弱まったタイプの糖尿病に効果があるものである。
図12において、前記患者が今後治療をしなかった場合、3か月後にはHbA1c値が9.1に、空腹時血糖が200に、食後2時間値血糖が240になることを人工知能が予測している。
前記患者が運動と食事療法のみを行った場合は、3か月後にはHbA1c値が7.8に、空腹時血糖が160に、食後2時間値血糖が190になることを人工知能が予測している。
【0048】
また、前記患者がビグアナイド薬(A)を服用しかつ運動と食事療法を併用した場合は、3か月後にはHbA1c値が6.8に、空腹時血糖が120に、食後2時間値血糖が160になることを人工知能が予測している。
更に、前記患者がスルホニル尿素薬(B)を服用しかつ運動と食事療法を併用した場合は、3か月後にはHbA1c値が6.1に、空腹時血糖が90に、食後2時間値血糖が110になることを人工知能が予測している。
【0049】
図13は前記患者のHbA1c値の3か月後の予測値をグラフ化したものである。
患者によっては必ずしもHbA1c値を急激に下げたらよい、ということではなく緩やかに下げることが推奨される場合がある。
図13の患者の場合、医師によってHbA1c値をある程度緩やかに下げることが適切であると考えられ、ビグアナイド薬(A)を服用しかつ運動と食事療法を併用することが推奨されている。図では□で囲まれている。
【符号の説明】
【0050】
1 中央処理装置(CPU)
2 バスライン
3 治療情報メモリ
4 検査データメモリ
5 公知情報メモリ
6 予測データ表示部
7 検査データ比較部
8 検査データ比較部
9 差異蓄積メモリ
10 推奨治療表示部
11 検査データ入力部
12 治療情報入力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13