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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155925
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】フィルタ回路
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/01 20060101AFI20231017BHJP
   H03H 7/52 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
H03H7/01 A
H03H7/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065445
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 昌樹
【テーマコード(参考)】
5J024
【Fターム(参考)】
5J024AA01
5J024CA11
5J024DA01
5J024EA08
5J024KA01
(57)【要約】
【課題】LCフィルタを用いずに、スイッチングレギュレータが出力するスプリアスを抑制可能とする。
【解決手段】入力ポート、第1の出力ポート、第2の出力ポート及びアイソレーションポートを有する方向性結合器11と、一端が第1の出力ポートに接続されてAC結合を行う第1のAC結合部12と、一端が第2の出力ポートに接続されてAC結合を行う第2のAC結合部13と、一端が第1のAC結合部の他端に接続された第1の終端部14と、一端が第2のAC結合部の他端に接続された第2の終端部15とを備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ポート、第1の出力ポート、第2の出力ポート及びアイソレーションポートを有する方向性結合器と、
一端が前記第1の出力ポートに接続されてAC結合を行う第1のAC結合部と、
一端が前記第2の出力ポートに接続されてAC結合を行う第2のAC結合部と、
一端が前記第1のAC結合部の他端に接続された第1の終端部と、
一端が前記第2のAC結合部の他端に接続された第2の終端部と
を備えたフィルタ回路。
【請求項2】
入力ポート、第1の出力ポート、第2の出力ポート及びアイソレーションポートを有する方向性結合器と、
一端が前記第1の出力ポートに接続された第1の終端部と、
一端が前記第2の出力ポートに接続された第2の終端部とを備え、
前記方向性結合器は、前記第1の出力ポートと前記第1の終端部との間でAC結合を行い、前記第2の出力ポートと前記第2の終端部との間でAC結合を行うことが可能に構成された
ことを特徴とするフィルタ回路。
【請求項3】
前記方向性結合器は、集中定数型ブランチラインカプラである
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のフィルタ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチングレギュレータに接続されるフィルタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチングレギュレータは、直流電圧(DC)を異なる値の直流電圧に変換して出力する装置である。このスイッチングレギュレータでは、スイッチング周波数成分のスプリアスが発生する。そのため、レーダ用送信機又はシンセサイザ等のように、高性能なスプリアス抑圧が要求されるユニットでは、スイッチングレギュレータにより発生されるスプリアスを、フィルタ回路によって抑圧する必要がある。
【0003】
すなわち、電源の負荷となるRF(高周波)デバイスに、スイッチングレギュレータにより発生されたスプリアス又はフィルタリップルにより増幅されたノイズが入力されると、当該ノイズがRFデバイスの出力信号に重畳し、高周波信号のスプリアス及び位相雑音(ノイズ)に悪影響を及ぼす。したがって、スイッチングレギュレータにより発生されるスプリアスを抑圧し、ノイズを劣化させないフィルタ回路が要求される。
【0004】
一般的に、上記のようなフィルタ回路としては、インダクタ及びキャパシタを有する2次のLCフィルタが用いられる(例えば特許文献1参照)。このフィルタ回路の構成例を図12に示す。図12に示すフィルタ回路5は、インダクタ51(L)及びキャパシタ52(C)を備えている。なお、インダクタ51は、一端(図12では左端)にスイッチングレギュレータ2が接続され、他端(図12では右端)にRFデバイス3が接続される。また、キャパシタ52は、一端(図12では上端)がインダクタ51の他端(図12では右端)に接続され、他端(図12では下端)が接地されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-351256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、スイッチングレギュレータにより発生されるスプリアスを抑圧するためのフィルタ回路としては、一般的に、LCフィルタが用いられる。
しかしながら、例えば図13Aにおいて符号1301で示すように、LCフィルタは、共振周波数でリップルを有する。そのため、スイッチングレギュレータに接続されるフィルタ回路としてLCフィルタを用いた場合、ノイズ成分が劣化する。
また、例えば図13Bに示すように、LCフィルタは、抑圧する周波数成分を反射する。図13では、スイッチング周波数が1MHzである場合を示しており、LCフィルタはスイッチング周波数の成分を全反射していることがわかる。そのため、スイッチングレギュレータに接続されるフィルタ回路としてLCフィルタを用いた場合、スイッチングレギュレータの出力側とLCフィルタとの間で多重反射が生じ、スプリアスを劣化させる。
【0007】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、LCフィルタを用いずに、スイッチングレギュレータが出力するスプリアスを抑制可能なフィルタ回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るフィルタ回路は、入力ポート、第1の出力ポート、第2の出力ポート及びアイソレーションポートを有する方向性結合器と、一端が第1の出力ポートに接続されてAC結合を行う第1のAC結合部と、一端が第2の出力ポートに接続されてAC結合を行う第2のAC結合部と、一端が第1のAC結合部の他端に接続された第1の終端部と、一端が第2のAC結合部の他端に接続された第2の終端部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、上記のように構成したので、LCフィルタを用いずに、スイッチングレギュレータが出力するスプリアスを抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るフィルタ回路の構成例を示す図である。
図2図2A、実施の形態1における方向性結合器の概念を説明するための図であり、図2Bは、方向性結合器における方向性の具体例を示す図である。
図3】実施の形態1に係るフィルタ回路の具体的な回路構成例を示す図である。
図4】実施の形態1に係るフィルタ回路の具体的な回路構成例を示す図である。
図5】実施の形態1に係るフィルタ回路の具体的な回路構成例を示す図である。
図6】実施の形態1に係るフィルタ回路の具体的な回路構成例を示す図である。
図7図7Aは、図3,5に示すフィルタ回路による通過特性の一例を示す図であり、図7Bは、図3,5に示すフィルタ回路による反射特性の一例を示す図である。
図8図8Aは、図4に示すフィルタ回路による通過特性の一例を示す図であり、図8Bは、図4に示すフィルタ回路による反射特性の一例を示す図である。
図9図9Aは、図6に示すフィルタ回路による通過特性の一例を示す図であり、図9Bは、図6に示すフィルタ回路による反射特性の一例を示す図である。
図10図10Aは、図3,5に示すフィルタ回路による通過特性と図4に示すフィルタ回路による通過特性との比較結果の一例を示す図であり、図10Bは、図3,5に示すフィルタ回路による反射特性と図4に示すフィルタ回路による反射特性との比較結果の一例を示す図である。
図11図11Aは、図3,5に示すフィルタ回路による通過特性と図6に示すフィルタ回路による通過特性との比較結果の一例を示す図であり、図11Bは、図3,5に示すフィルタ回路による反射特性と図6に示すフィルタ回路による反射特性との比較結果の一例を示す図である。
図12】従来のフィルタ回路の構成例を示す図である。
図13図13Aは、従来のフィルタ回路による通過特性の一例を示す図であり、図13Bは、従来のフィルタ回路による反射特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係るフィルタ回路1の構成例を示す図である。図1では、フィルタ回路1に接続されるスイッチングレギュレータ2及びRFデバイス(DC負荷デバイス)3についても図示されている。
フィルタ回路1は、スイッチングレギュレータ2により発生されるスプリアスを抑圧するための回路である。このフィルタ回路1は、図1に示すように、方向性結合器11、第1のAC結合部12、第2のAC結合部13、第1の終端部14、及び、第2の終端部15を備えている。
【0012】
方向性結合器11は、4つの端子を有する方向性結合器である。
この方向性結合器11は、主に高周波信号の電力分配に用いられる回路であり、高周波信号の伝送に方向性を有する回路である。この方向性結合器11は、4つの端子として、入力ポート、第1の出力ポート、第2の出力ポート、及び、アイソレーションポートを有している。
【0013】
なお、図1の例では、方向性結合器11が有する4つの端子のうち、第1の端子(Port1)が入力ポートであり、第2の端子(Port2)が第1の出力ポートであり、第3の端子(Port3)が第2の出力ポートであり、第4の端子(Port4)がアイソレーションポートである場合を示している。
【0014】
第1のAC結合部12は、一端が、方向性結合器11が有する第1の出力ポートに接続されてAC結合を行う。この第1のAC結合部12は、キャパシタ121から構成されている。
キャパシタ121は、一端(図1では左端)が、方向性結合器11が有する第1の出力ポートに接続されている。
【0015】
第2のAC結合部13は、一端が、方向性結合器11が有する第2の出力ポートに接続されてAC結合を行う。この第2のAC結合部13は、キャパシタ131から構成されている。
キャパシタ131は、一端(図1では左端)が、方向性結合器11が有する第2の出力ポートに接続されている。
【0016】
第1の終端部14は、方向性結合器11が有する第1の出力ポートを終端する。図1では、第1の終端部14は、一端が、第1のAC結合部12の他端に接続されている。この第1の終端部14は、抵抗141から構成されている。
抵抗141は、一端(図1では上端)が、キャパシタ121の他端(図1では右端)に接続され、他端(図1では下端)が接地されている。
【0017】
第2の終端部15は、方向性結合器11が有する第2の出力ポートを終端する。図1では、第2の終端部15は、一端が、第2のAC結合部13の他端に接続されている。この第2の終端部15は、抵抗151から構成されている。
抵抗151は、一端(図1では上端)が、キャパシタ131の他端(図1では右端)に接続され、他端(図1では下端)が接地されている。
【0018】
ここで、図2に示すように、この方向性結合器11単体では、通常、高周波信号は、入力ポートから入力され、第1の出力ポート及び第2の出力ポートから出力される。
【0019】
なお、図2の例では、方向性結合器11が有する4つの端子のうち、第1の端子(Port1)が入力ポートであり、第2の端子(Port2)が第1の出力ポートであり、第3の端子(Port3)が第2の出力ポートであり、第4の端子(Port4)がアイソレーションポートである場合を示している。
【0020】
これに対し、実施の形態1における方向性結合器11では、図1に示すように、第1の出力ポートに第1のAC結合部12及び第1の終端部14が接続され、第2の出力ポートに第2のAC結合部13及び第2の終端部15が接続されている。これにより、実施の形態1に係るフィルタ回路1では、方向性結合器11において通常では高周波信号が出力される第1の出力ポート及び第2の出力ポートをAC結合して終端し、アイソレーションポートからDC成分を得ることが可能に構成される。
【0021】
すなわち、この実施の形態1に係るフィルタ回路1では、抑圧したい周波数成分(スプリアス)は高周波信号として第1の出力ポート及び第2の出力ポートに流れて終端されるが、アイソレーションポートには出力されない。一方、この実施の形態1に係るフィルタ回路1では、直流電圧(DC)についてはAC結合された第1の出力ポート及び第2の出力ポートには出力されず、DC結合しているアイソレーションポートに出力される。
この結果、この実施の形態1に係るフィルタ回路1では、スイッチングレギュレータ2に接続されるフィルタ回路1として従来のLCフィルタを用いた場合に発生していたスプリアスの反射は起きず、フィルタ回路1としてスプリアス抑圧性能の劣化が生じない。また、この実施の形態1に係るフィルタ回路1では、RF(AC)的に終端していることで、スイッチングレギュレータ2に接続されるフィルタ回路1として従来のLCフィルタを用いた場合に発生していたリップルも抑制することが可能となる。
【0022】
なお、図1では、方向性結合器11が有する4つの端子のうちの第1の端子(Port1)を入力ポートとした場合を示している。しかしながら、これに限らず、方向性結合器11における入出力の組み合わせについては、方向性結合器11の定義に従い任意に設定可能である。
【0023】
また、図1では、フィルタ回路1に、第1のAC結合部12及び第2のAC結合部13が設けられた場合を示した。しかしながら、この第1のAC結合部12及び第2のAC結合部13はフィルタ回路1に必須の構成ではなく、方向性結合器11が有するキャパシタが第1のAC結合部12及び第2のAC結合部13の機能も果たすことが可能な構成である場合には、フィルタ回路1に第1のAC結合部12及び第2のAC結合部13が設けられていなくてもよい。すなわち、方向性結合器11が、第1の出力ポートと第1の終端部14との間でAC結合を行い、第2の出力ポートと第2の終端部15との間でAC結合を行うことが可能に構成されていれば、フィルタ回路1に第1のAC結合部12及び第2のAC結合部13が設けられていなくてもよい。なお、この場合には、第1の終端部14は、一端が第1の出力ポートに接続され、第2の終端部15は、一端が第2の出力ポートに接続される。
【0024】
次に、図1に示すフィルタ回路1の具体的な回路構成例について、図3~6を参照しながら説明する。
ここで、4つの端子を有する方向性結合器11のうち、アイソレーションポートがDC結合している方向性結合器11の代表的なものとして、集中定数型ブランチラインカプラが挙げられる。そこで、図3~6では、方向性結合器11として、集中定数型ブランチラインカプラを用いた場合での回路構成例を示す。
なお、図3~6において、キャパシタ121及びキャパシタ131は、同一の定数であり、Coで表す。また、図3~6において、抵抗141及び抵抗151は、同一の定数であり、Zoで表す。
【0025】
また、図3~6の例では、方向性結合器11が有する4つの端子のうち、第1の端子(Port1)が入力ポートであり、第2の端子(Port2)が第1の出力ポートであり、第3の端子(Port3)が第2の出力ポートであり、第4の端子(Port4)がアイソレーションポートである場合を示している。
【0026】
図3では、集中定数型ブランチラインカプラが標準型(LPF型)である場合でのフィルタ回路1の回路構成例を示している。
図3に示す方向性結合器11は、第1のインダクタ1101a、第2のインダクタ1102a、第3のインダクタ1103a、第4のインダクタ1104a、第1のキャパシタ1105a、第2のキャパシタ1106a、第3のキャパシタ1107a、第4のキャパシタ1108a、第5のキャパシタ1109a、第6のキャパシタ1110a、第7のキャパシタ1111a、及び、第8のキャパシタ1112aから構成されている。
【0027】
なお、第1のインダクタ1101a及び第2のインダクタ1102aは、同一の定数であり、L1で表す。また、第3のインダクタ1103a及び第4のインダクタ1104aは、同一の定数であり、L2で表す。
また、第1のキャパシタ1105a、第2のキャパシタ1106a、第3のキャパシタ1107a及び第4のキャパシタ1108aは、同一の定数であり、C1で表す。また、第5のキャパシタ1109a、第6のキャパシタ1110a、第7のキャパシタ1111a及び第8のキャパシタ1112aは、同一の定数であり、C2で表す。
【0028】
なお、L1は下式(1)より得られる。また、L2は下式(2)より得られる。また、C1は下式(3)より得られる。また、C2は下式(4)より得られる。なお、Zo[Ω]は、RFデバイス3のインピーダンスである。このインピーダンスは、RFデバイス3における消費電流(Is)及び印加電圧(Vc)により定まる(Zo=Vc/Is)。また、fs[MHz]は、スイッチングレギュレータ2におけるスイッチング周波数であり、集中定数型ブランチラインカプラにおける通過周波数である。
L1={(159.1549431×Zo)/fs}[nH] (1)
L2={(112.53954×Zo)/fs}[nH] (2)
C1={159154.9431/(fs×Zo)}[pF] (3)
C2={225079.079/(fs×Zo)}[pF](4)
【0029】
第1のインダクタ1101a(L1)は、一端(図3では上端)が第1の端子(Port1)に接続され、他端(図3では下端)が第4の端子(Port4)に接続されている。
第2のインダクタ1102a(L1)は、一端(図3では上端)が第2の端子(Port2)に接続され、他端(図3では下端)が第3の端子(Port3)に接続されている。
【0030】
第3のインダクタ1103a(L2)は、一端(図3では左端)が第1の端子(Port1)に接続され、他端(図3では右端)が第2の端子(Port2)に接続されている。
第4のインダクタ1104a(L2)は、一端(図3では右端)が第3の端子(Port3)に接続され、他端(図3では左端)が第4の端子(Port4)に接続されている。
【0031】
第1のキャパシタ1105a(C1)は、一端(図3では右端)が第1の端子(Port1)及び第1のインダクタ1101a(L1)の一端(図3では上端)に接続され、他端(図3では左端)が接地されている。
第2のキャパシタ1106a(C1)は、一端(図3では左端)が第2の端子(Port2)及び第2のインダクタ1102a(L1)の一端(図3では上端)に接続され、他端(図3では右端)が接地されている。
第3のキャパシタ1107a(C1)は、一端(図3では左端)が第3の端子(Port3)及び第2のインダクタ1102a(L1)の他端(図3では下端)に接続され、他端(図3では右端)が接地されている。
第4のキャパシタ1108a(C1)は、一端(図3では右端)が第4の端子(Port4)及び第1のインダクタ1101a(L1)の他端(図3では下端)に接続され、他端(図3では左端)が接地されている。
【0032】
第5のキャパシタ1109a(C2)は、一端(図3では上端)が第1の端子(Port1)及び第3のインダクタ1103a(L2)の一端(図3では左端)に接続され、他端(図3では下端)が接地されている。
第6のキャパシタ1110a(C2)は、一端(図3では上端)が第2の端子(Port2)及び第3のインダクタ1103a(L2)の他端(図3では右端)に接続され、他端(図3では下端)が接地されている。
第7のキャパシタ1111a(C2)は、一端(図3では上端)が第3の端子(Port3)及び第4のインダクタ1104a(L2)の一端(図3では右端)に接続され、他端(図3では下端)が接地されている。
第8のキャパシタ1112a(C2)は、一端(図3では上端)が第4の端子(Port4)及び第4のインダクタ1104a(L2)の他端(図3では左端)に接続され、他端(図3では下端)が接地されている。
【0033】
図4では、集中定数型ブランチラインカプラがHPF+LPF型である場合でのフィルタ回路1の回路構成例を示している。なお、図4に示すフィルタ回路1では、第1のAC結合部12及び第2のAC結合部13が設けられていない。すなわち、図4に示すフィルタ回路1では、方向性結合器11が有するキャパシタが第1のAC結合部12及び第2のAC結合部13の機能も果たすことで、第1のAC結合部12及び第2のAC結合部13を不要としている。これにより、図4に示すフィルタ回路1では、部品点数を削減可能となる。
図4に示す方向性結合器11は、第1のインダクタ1101b、第2のインダクタ1102b、第3のインダクタ1103b、第4のインダクタ1104b、第5のインダクタ1105b、第6のインダクタ1106b、第1のキャパシタ1107b、第2のキャパシタ1108b、第3のキャパシタ1109b、第4のキャパシタ1110b、第5のキャパシタ1111b、及び、第6のキャパシタ1112bから構成されている。
【0034】
なお、第1のインダクタ1101b、第2のインダクタ1102b、第3のインダクタ1103b及び第4のインダクタ1104bは、同一の定数であり、L1で表す。また、第5のインダクタ1105b及び第6のインダクタ1106bは、同一の定数であり、L2で表す。
また、第1のキャパシタ1107b及び第2のキャパシタ1108bは、同一の定数であり、C1で表す。また、第3のキャパシタ1109b、第4のキャパシタ1110b、第5のキャパシタ1111b及び第6のキャパシタ1112bは、同一の定数であり、C2で表す。
【0035】
なお、L1は式(1)より得られる。また、L2は式(2)より得られる。また、C1は式(3)より得られる。また、C2は式(4)より得られる。
【0036】
第1のインダクタ1101b(L1)は、一端(図4では上端)が第1の端子(Port1)に接続されている。
第2のインダクタ1102b(L1)は、一端(図4では上端)が第2の端子(Port2)に接続されている。
第3のインダクタ1103b(L1)は、一端(図4では下端)が第3の端子(Port3)に接続され、他端(図4では上端)が第2のインダクタ1102b(L1)の他端(図4では下端)に接続されている。
第4のインダクタ1104b(L1)は、一端(図4では下端)が第4の端子(Port4)に接続され、他端(図4では上端)が第1のインダクタ1101b(L1)の他端(図4では下端)に接続されている。
【0037】
第5のインダクタ1105b(L2)は、一端(図4では上端)が第3のキャパシタ1109b(C2)の他端(図4では右端)及び第4のキャパシタ1110b(C2)の他端(図4では左端)に接続され、他端(図4では下端)が接地されている。
第6のインダクタ1106b(L2)は、一端(図4では上端)が第5のキャパシタ1111b(C2)の他端(図4では左端)及び第6のキャパシタ1112b(C2)の他端(図4では右端)に接続され、他端(図4では下端)が接地されている。
【0038】
第1のキャパシタ1107b(C1)は、一端(図4では右端)が第1のインダクタ1101b(L1)の他端(図4では下端)及び第4のインダクタ1104b(L1)の他端(図4では上端)に接続され、他端(図4では左端)が接地されている。
第2のキャパシタ1108b(C1)は、一端(図4では左端)が第2のインダクタ1102b(L1)の他端(図4では下端)及び第3のインダクタ1103b(L1)の他端(図4では上端)に接続され、他端(図4では右端)が接地されている。
【0039】
第3のキャパシタ1109b(C2)は、一端(図4では左端)が第1の端子(Port1)に接続されている。
第4のキャパシタ1110b(C2)は、一端(図4では右端)が第2の端子(Port2)に接続され、他端(図4では左端)が第3のキャパシタ1109b(C2)の他端(図4では右端)に接続されている。
第5のキャパシタ1111b(C2)は、一端(図4では右端)が第3の端子(Port3)に接続されている。
第6のキャパシタ1112b(C2)は、一端(図4では左端)が第4の端子(Port4)に接続され、他端(図4では右端)が第5のキャパシタ1111b(C2)の他端(図4では左端)に接続されている。
【0040】
図5では、集中定数型ブランチラインカプラが標準C省略型である場合でのフィルタ回路1の回路構成例を示している。
図5に示す方向性結合器11は、第1のインダクタ1101c、第2のインダクタ1102c、第3のインダクタ1103c、第4のインダクタ1104c、第1のキャパシタ1105c、第2のキャパシタ1106c、第3のキャパシタ1107c、及び、第4のキャパシタ1108cから構成されている。
【0041】
なお、第1のインダクタ1101c及び第2のインダクタ1102cは、同一の定数であり、L1で表す。また、第3のインダクタ1103c及び第4のインダクタ1104cは、同一の定数であり、L2で表す。
また、第1のキャパシタ1105c、第2のキャパシタ1106c、第3のキャパシタ1107c及び第4のキャパシタ1108cは、同一の定数であり、C12で表す。
【0042】
なお、L1は式(1)より得られる。また、L2は式(2)より得られる。また、C1は式(3)より得られる。また、C2は式(4)より得られる。また、C12は下式(5)より得られる。
C12=C1+C2[pF] (5)
【0043】
第1のインダクタ1101c(L1)は、一端(図5では上端)が第1の端子(Port1)に接続され、他端(図5では下端)が第4の端子(Port4)に接続されている。
第2のインダクタ1102c(L1)は、一端(図5では上端)が第2の端子(Port2)に接続され、他端(図5では下端)が第3の端子(Port3)に接続されている。
【0044】
第3のインダクタ1103c(L2)は、一端(図5では左端)が第1の端子(Port1)に接続され、他端(図5では右端)が第2の端子(Port2)に接続されている。
第4のインダクタ1104c(L2)は、一端(図5では右端)が第3の端子(Port3)に接続され、他端(図5では左端)が第4の端子(Port4)に接続されている。
【0045】
第1のキャパシタ1105c(C12)は、一端(図5では上端)が第1の端子(Port1)及び第3のインダクタ1103c(L2)の一端(図5では左端)に接続され、他端(図5では下端)が接地されている。
第2のキャパシタ1106c(C12)は、一端(図5では上端)が第2の端子(Port2)及び第3のインダクタ1103c(L2)の他端(図5では右端)に接続され、他端(図5では下端)が接地されている。
第3のキャパシタ1107c(C12)は、一端(図5では上端)が第3の端子(Port3)及び第4のインダクタ1104c(L2)の一端(図5では右端)に接続され、他端(図5では下端)が接地されている。
第4のキャパシタ1108c(C12)は、一端(図5では上端)が第4の端子(Port4)及び第4のインダクタ1104c(L2)の他端(図5では左端)に接続され、他端(図5では下端)が接地されている。
【0046】
この図5に示す構成は、図3に示す構成に対し、第1のキャパシタ1105a、第2のキャパシタ1106a、第3のキャパシタ1107a、及び、第4のキャパシタ1108aが省略された構成となっている。
【0047】
図6では、集中定数型ブランチラインカプラがブランチ(C省略)型である場合でのフィルタ回路1の回路構成例を示している。
図6に示す方向性結合器11は、第1のインダクタ1101d、第2のインダクタ1102d、第3のインダクタ1103d、第4のインダクタ1104d、第5のインダクタ1105d、第6のインダクタ1106d、第7のインダクタ1107d、第1のキャパシタ1108d、第2のキャパシタ1109d、第3のキャパシタ1110d、第4のキャパシタ1111d、第5のキャパシタ1112d、及び、第6のキャパシタ1113dから構成されている。
【0048】
なお、第1のインダクタ1101d及び第2のインダクタ1102dは、同一の定数であり、L1で表す。また、第3のインダクタ1103d、第4のインダクタ1104d、第5のインダクタ1105d及び第6のインダクタ1106dは、同一の定数であり、L2で表す。また、第7のインダクタ1107dの定数はL3で表す。
また、第1のキャパシタ1108d、第2のキャパシタ1109d、第3のキャパシタ1110d及び第4のキャパシタ1111dは、同一の定数であり、C1+C2で表す。また、第5のキャパシタ1112d及び第6のキャパシタ1113dは、同一の定数であり、2×C2+C3で表す。
【0049】
なお、L1は下式(6)より得られる。また、L2は下式(7)より得られる。また、L3は下式(8)より得られる。また、C1は下式(9)より得られる。また、C2は下式(10)より得られる。また、C3は下式(11)より得られる。なお、Z2[Ω]は、構成が実現しやすい任意の値である。また、Z3は下式(12)より得られる。
L1={(384.23402×Zo)/fs}[nH] (6)
L2={(159.154931×Zo×Z2)/fs}[nH] (7)
L3={(159.154931×Zo×Z3)/fs}[nH] (8)
C1={65924.1360/(fs×Zo)}[pF](9)
C2={159154.9431/(fs×Zo×Z2)}[pF] (10)
C3={159154.9431/(fs×Zo×Z3)}[pF] (11)
Z3=Z2+√2[Ω] (12)
【0050】
第1のインダクタ1101d(L1)は、一端(図6では上端)が第1の端子(Port1)に接続され、他端(図6では下端)が第4の端子(Port4)に接続されている。
第2のインダクタ1102d(L1)は、一端(図6では上端)が第2の端子(Port2)に接続され、他端(図6では下端)が第3の端子(Port3)に接続されている。
【0051】
第3のインダクタ1103d(L2)は、一端(図6では左端)が第1の端子(Port1)に接続されている。
第4のインダクタ1104d(L2)は、一端(図6では右端)が第2の端子(Port2)に接続され、他端(図6では左端)が第3のインダクタ1103d(L2)の他端(図6では右端)に接続されている。
第5のインダクタ1105d(L2)は、一端(図6では右端)が第3の端子(Port3)に接続されている。
第6のインダクタ1106d(L2)は、一端(図6では左端)が第4の端子(Port4)に接続され、他端(図6では右端)が第5のインダクタ1105d(L1)の他端(図6では左端)に接続されている。
【0052】
第7のインダクタ1107d(L3)は、一端(図6では上端)が第3のインダクタ1103d(L2)の他端(図6では右端)及び第4のインダクタ1104d(L2)の他端(図6では左端)に接続され、他端(図6では下端)が第5のインダクタ1105d(L2)の他端(図6では左端)及び第6のインダクタ1106d(L2)の他端(図6では右端)に接続されている。
【0053】
第1のキャパシタ1108d(C1+C2)は、一端(図6では上端)が第1の端子(Port1)及び第3のインダクタ1103d(L2)の一端(図6では左端)に接続され、他端(図6では下端)が接地されている。
第2のキャパシタ1109d(C1+C2)は、一端(図6では上端)が第2の端子(Port2)及び第4のインダクタ1104d(L2)の一端(図6では右端)に接続され、他端(図6では下端)が接地されている。
第3のキャパシタ1110d(C1+C2)は、一端(図6では上端)が第3の端子(Port3)及び第5のインダクタ1105d(L2)の一端(図6では右端)に接続され、他端(図6では下端)が接地されている。
第4のキャパシタ1111d(C1+C2)は、一端(図6では上端)が第4の端子(Port4)及び第6のインダクタ1106d(L2)の一端(図6では左端)に接続され、他端(図6では下端)が接地されている。
【0054】
第5のキャパシタ1112d(2×C2+C3)は、一端(図6では下端)が第3のインダクタ1103d(L2)の他端(図6では右端)及び第4のインダクタ1104d(L2)の他端(図6では左端)に接続され、他端(図6では上端)が接地されている。
第6のキャパシタ1113d(2×C2+C3)は、一端(図6では上端)が第5のインダクタ1105d(L2)の他端(図6では左端)及び第6のインダクタ1106d(L2)の他端(図6では右端)に接続され、他端(図6では下端)が接地されている。
【0055】
次に、実施の形態1に係るフィルタ回路1による効果の一例について、図7~9を参照しながら説明する。
図7では、図3,5に示すフィルタ回路1の場合での通過特性及び反射特性の一例を示している。図7に示すように、図3に示すフィルタ回路1の場合と図5に示すフィルタ回路1の場合とでは、同一の特性となる。また、図8では、図4に示すフィルタ回路1の場合での通過特性及び反射特性の一例を示している。また、図9では、図6に示すフィルタ回路1の場合での通過特性及び反射特性の一例を示している。なお、図7図9では、スイッチング周波数が1MHzである場合を示している。
ここで、図7A図8A及び図9Aに示すように、実施の形態1に係るフィルタ回路1では、同じ抑圧量を得ることが可能なLCフィルタを用いた場合(図13の場合)と比較し、リップルの発生が抑制されていることがわかる。
また、実施の形態1に係るフィルタ回路1では、スプリアス周波数成分を出力ポートで終端する。そのため、この実施の形態1に係るフィルタ回路1では、図7B図8B及び図9Bに示すように、上記LCフィルタを用いた場合と比較し、スイッチングレギュレータ2の出力側とフィルタ回路1との間での反射が抑制されていることがわかる。
【0056】
また、図10では、図3,5に示すフィルタ回路1による通過特性及び反射特性と図4に示すフィルタ回路1による通過特性及び反射特性との比較結果の一例を示している。なお、図10において、破線のグラフが図3,5に示すフィルタ回路1による特性を示し、実線のグラフが図4に示すフィルタ回路1による特性を示している。また、図11では、図3,5に示すフィルタ回路1による通過特性及び反射特性と図6に示すフィルタ回路1による通過特性及び反射特性との比較結果の一例を示している。なお、図11において、破線のグラフが図3,5に示すフィルタ回路1による特性を示し、実線のグラフが図6に示すフィルタ回路1による特性を示している。
ここで、図10に示すように、図3,5に示すフィルタ回路1と図4に示すフィルタ回路1とでは、目的とする性能(1MHzの場合での通過特性及び反射特性)はほぼ同一の性能である。一方、図11に示すように、図6に示すフィルタ回路1では、図3,5に示すフィルタ回路1に対し、目的とする性能が優れており、抑圧できる周波数が広く且つ抑圧量が多くなっている。
【0057】
また、昨今、スイッチングレギュレータ2のスイッチング周波数は、高周波化の傾向がある。これに対し、実施の形態1に係るフィルタ回路1では、スイッチング周波数が高くなる程、各構成部品の定数が小さくなる。その結果、実施の形態1に係るフィルタ回路1では、フィルタ回路1の小型化も可能である。
【0058】
以上のように、この実施の形態1によれば、フィルタ回路1は、入力ポート、第1の出力ポート、第2の出力ポート及びアイソレーションポートを有する方向性結合器11と、一端が第1の出力ポートに接続されてAC結合を行う第1のAC結合部12と、一端が第2の出力ポートに接続されてAC結合を行う第2のAC結合部13と、一端が第1のAC結合部12の他端に接続された第1の終端部14と、一端が第2のAC結合部13の他端に接続された第2の終端部15とを備えた。これにより、実施の形態1に係るフィルタ回路1は、LCフィルタを用いずに、スイッチングレギュレータ2が出力するスプリアスを抑制可能となる。また、実施の形態1に係るフィルタ回路1では、従来のLCフィルタに代えて方向性結合器11を用いることで、従来のLCフィルタを用いた場合に生じていたリップル及びスイッチングレギュレータ2の出力側との間での反射を抑制可能となる。
【0059】
なお、各実施の形態の自由な組合わせ、或いは各実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 フィルタ回路、2 スイッチングレギュレータ、3 RFデバイス、11 方向性結合器、12 第1のAC結合部、13 第2のAC結合部、14 第1の終端部、15 第2の終端部、121 キャパシタ、131 キャパシタ、141 抵抗、151 抵抗、1101a 第1のインダクタ、1102a 第2のインダクタ、1103a 第3のインダクタ、1104a 第4のインダクタ、1105a 第1のキャパシタ、1106a 第2のキャパシタ、1107a 第3のキャパシタ、1108a 第4のキャパシタ、1109a 第5のキャパシタ、1110a 第6のキャパシタ、1111a 第7のキャパシタ、1112a 第8のキャパシタ、1101b 第1のインダクタ、1102b 第2のインダクタ、1103b 第3のインダクタ、1104b 第4のインダクタ、1105b 第5のインダクタ、1106b 第6のインダクタ、1107b 第1のキャパシタ、1108b 第2のキャパシタ、1109b 第3のキャパシタ、1110b 第4のキャパシタ、1111b 第5のキャパシタ、1112b 第6のキャパシタ、1101c 第1のインダクタ、1102c 第2のインダクタ、1103c 第3のインダクタ、1104c 第4のインダクタ、1105c 第1のキャパシタ、1106c 第2のキャパシタ、1107c 第3のキャパシタ、1108c 第4のキャパシタ、1101d 第1のインダクタ、1102d 第2のインダクタ、1103d 第3のインダクタ、1104d 第4のインダクタ、1105d 第5のインダクタ、1106d 第6のインダクタ、1107d 第7のインダクタ、1108d 第1のキャパシタ、1109d 第2のキャパシタ、1110d 第3のキャパシタ、1111d 第4のキャパシタ、1112d 第5のキャパシタ、1113d 第6のキャパシタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13