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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155975
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂およびその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/06 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
C08G64/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065514
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】今里 健太
(72)【発明者】
【氏名】中▲崎▼ 智大
(72)【発明者】
【氏名】武田 強
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA10
4J029AB01
4J029AB07
4J029AC01
4J029AC02
4J029AD01
4J029AD07
4J029AD10
4J029AE03
4J029AE04
4J029BB13A
4J029BF30
4J029HA01
4J029HC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐熱性および低線膨張係数に優れる熱可塑性樹脂およびその成形品を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される繰り返し単位もしくはその異性体(カーボネートとフェニル基の結合がメタ位であるもの(2)あるいはオルト位であるもの(3))からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し単位を全繰り返し単位中1~100モル%含む熱可塑性樹脂。

(式中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~10の非環状炭化水素基、炭素原子数3~10の脂環式炭化水素基、メトキシ基またはエトキシ基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)、下記式(2)および下記式(3)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し単位を全繰り返し単位中1~100モル%含む熱可塑性樹脂。
【化1】
【化2】
【化3】
(式中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~10の非環状炭化水素基、炭素原子数3~10の脂環式炭化水素基、メトキシ基またはエトキシ基を表す。)
【請求項2】
ガラス転移温度が80℃~200℃である請求項1記載の熱可塑性樹脂。
【請求項3】
20℃の塩化メチレン溶液で測定された比粘度が0.15~1.5である請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項4】
線膨張係数が70×10-6・℃-1以下である請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項5】
飽和吸水率が2.5%以下である請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項6】
5%重量減少温度が340℃以上である請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項7】
フェノール含有量が500重量ppm以下である請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項8】
請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂を素材とする成形品。
【請求項9】
請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂を素材とするフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性および低線膨張係数に優れる熱可塑性樹脂およびその成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光学用部品や自動車部品をはじめとする様々な分野において、種々の性能に優れた透明性樹脂が要求されている。従来、透明樹脂としてはポリカーボネート樹脂(以下、PCと称する)、メタクリル樹脂などが知られており、成形品、フィルムなどの形態で電気電子部品、光学部品、自動車部品、機械部品などの広い分野で用いられている。一方で、これらの樹脂は線膨張係数が十分低いとは言えず、精密部品や大型の成形部品などの使用には用途が制限される場合があった。
【0003】
また、従来からPCの原料であるビスフェノールAに代わるモノマーとしてスピログリコール(3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)やその他スピロ環骨格を有するモノマーが提案されている(特許文献1~4)。しかしながら、本発明者らの検討によれば、スピログリコールなどこれまでに報告されている構造体は耐熱性や線膨張係数が既存のビスフェノールA由来ポリカーボネートに対し、十分優れているとは言えないことが見出された。更に、重合時に副生するフェノールが残存することで臭気の課題や熱加工時の不良原因となりうる。
【0004】
したがってこれまでに耐熱性に優れ、十分に低い線膨張率を示す樹脂および成形体は未だ提供されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭61-206568号公報
【特許文献2】特開2000-44570号公報
【特許文献3】特開2005-29563号公報
【特許文献4】国際公開第2018/074305号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐熱性および低線膨張係数に優れる熱可塑性樹脂およびその成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、繰り返し単位(1)~(3)のいずれかを含むことで、耐熱性および低線膨張係数に優れる熱可塑性樹脂およびその成形品が得られることを究明し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0008】
1.下記式(1)、下記式(2)および下記式(3)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し単位を全繰り返し単位中1~100モル%含む熱可塑性樹脂。
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~10の非環状炭化水素基、炭素原子数3~10の脂環式炭化水素基、メトキシ基またはエトキシ基を表す。)
【0013】
2.ガラス転移温度が80℃~200℃である前項1記載の熱可塑性樹脂。
3.20℃の塩化メチレン溶液で測定された比粘度が0.15~1.5である前項1または2に記載の熱可塑性樹脂。
4.線膨張係数が70×10-6・℃-1以下である前項1~3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
5.飽和吸水率が2.5%以下である前項1~4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
6.5%重量減少温度が340℃以上である前項1~5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
7.フェノール含有量が500重量ppm以下である前項1~6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
8.前項1~7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂を素材とする成形品。
9.前項1~7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂を素材とするフィルム。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱可塑性樹脂は、特定の構造を有する前駆物質を基本単位として用いることで、耐熱性および線膨張係数に優れるなどの特性を有することが可能となった。そのため、その奏する工業的効果は格別である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
<熱可塑性樹脂>
本発明の熱可塑性樹脂は、下記式(1)、下記式(2)および下記式(3)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し単位を全繰り返し単位中1~100モル%含む熱可塑性樹脂である。下記式(1)、下記式(2)および下記式(3)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し単位を全繰り返し単位中好ましくは5~100モル%含み、より好ましくは10~100モル%含み、さらに好ましくは15~100モル%含み、特に好ましくは20~100モル%含み、もっとも好ましくは25~100モル%含む。
【0017】
【化4】
【0018】
【化5】
【0019】
【化6】
【0020】
(式中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~10の非環状炭化水素基、炭素原子数3~10の脂環式炭化水素基、メトキシ基またはエトキシ基を表す。)
【0021】
(他の繰り返し単位)
本発明において、上記式(1)~(3)で表される繰り返し単位以外の共重合構成単位を構成する繰り返し単位として、各種ジオール化合物から誘導される繰り返し単位が挙げられる。
【0022】
かかるジオール化合物としては、脂肪族ジオール化合物、脂環式ジオール化合物、芳香族ジヒドロキシ化合物のいずれでも良く、国際公開第2004/111106号パンフレット、国際公開第2011/021720号パンフレットに記載のジオール化合物やジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類が挙げられる。
【0023】
前記脂肪族ジオール化合物としては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1.9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサングリコール、1,2-オクチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,3-ジイソブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジイソアミル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。
【0024】
前記脂環式ジオール化合物としては、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、イソソルビドなどが挙げられる。
【0025】
前記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン(ビスフェノールM)、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド、ビスフェノールA、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(ビスフェノールAF)、および1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカンなどが挙げられる。
【0026】
上記式(1)~(3)で表される繰り返し単位以外の共重合単位を構成する繰り返し単位は、0~99モル%含み、好ましくは0~95モル%含み、より好ましくは0~90モル%含み、さらに好ましくは0~85モル%含み、特に好ましくは0~80モル%含み、もっとも好ましくは0~75モル%含む。
【0027】
(原料)
上記式(1)~(3)で表される繰り返し単位を誘導する原料となるジオール成分は、主として下記式(1-1)、(2-1)、(3-1)で表されるジオール成分である。
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】
【化9】
【0031】
(式中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~10の非環状炭化水素基、炭素原子数3~10の脂環式炭化水素基、メトキシ基またはエトキシ基を表す。)
前記式(1-1)、(2-1)、(3-1)で表されるジオールは、下記式(1-1―1)、(2-1-1)、(3-1-1)で表される構造物と、下記式(4)で表されるペンタエリスリトールを脱水環化反応させることによって得られる。
【0032】
【化10】
【0033】
【化11】
【0034】
【化12】
【0035】
(式中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~10の非環状炭化水素基、炭素原子数3~10の脂環式炭化水素基、メトキシ基またはエトキシ基を表す。)
【0036】
【化13】
【0037】
前記式(1-1―1)、(2-1-1)、(3-1-1)で表される構造物のうち、具体例としては下記式(1-1―a)、(1-1―b)、(2-1-a)、(3-1-a)が挙げられる。特に入手性の観点から(1-1―a)または(2-1-a)を用いることが好ましい。
【0038】
【化14】
【0039】
【化15】
【0040】
【化16】
【0041】
【化17】
【0042】
本発明の前記式(1-1)、(2-1)、(3-1)で表されるジオール化合物の純度は95%以上であると好ましく、97%以上であるとより好ましく、98%以上であるとさらに好ましい。純度はガスクロマトグラフで測定される。
【0043】
(ジオール化合物の製造方法)
本発明の前記式(1-1)、(2-1)、(3-1)で表されるジオール化合物は、前記式(1-1―1)、(2-1-1)、(3-1-1)で表される構造物と上記式(4)で表されるペンタエリスリトールとを酸触媒および溶媒の存在下、脱水環化反応させることで得られる。
【0044】
前記式(1-1)、(2-1)、(3-1)で表されるジオール化合物の製造方法において、前記式(1-1―1)、(2-1-1)、(3-1-1)で表される構造物の使用比率は、上記式(4)で表されるペンタエリスリトール1モルに対して1.8~2.4モルが好ましく、1.9~2.1モルがより好ましい。
【0045】
酸触媒として、シュウ酸、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ヘテロポリ酸が挙げられ、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸が好ましく、p-トルエンスルホン酸がより好ましい。
【0046】
本発明で使用する酸触媒の使用量は、ペンタエリスリトール1モルに対して、0.001~1モルが好ましく、0.005~0.1モルがより好ましく、0.01~0.05モルがさらに好ましい。
【0047】
溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシドが挙げられ、トルエン、ジメチルホルムアミドが好ましい。これら溶媒は単独で使用しても良く、2種類以上を併用しても良い。
【0048】
溶媒の量は、ペンタエリスリトールに対して、1~100重量倍であると好ましく、3~50重量倍であるとより好ましく、5~20重量倍であるとさらに好ましい。
【0049】
ジオール化合物の製造方法において、反応器の上にディーンスターク装置を付け、副生する水を系外に除去することが好ましい。
【0050】
ジオール化合物の製造方法において、脱水縮合反応の反応温度は60~150℃が好ましく、80~130℃がより好ましく、100~120℃がさらに好ましい。
【0051】
反応は大気下でも実施することができるが、安全性や色相の観点から、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。反応はガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーなどの分析手段で追跡することができる。
【0052】
(共重合組成)
本発明の熱可塑性樹脂は、前記式(1)~(3)で表される繰り返し単位のいずれかを含み、熱可塑性樹脂全体の繰り返し単位に占めるモル比は1~100モル%であり、5~100モル%がより好ましく、15~100モル%がさらに好ましく、20~100モル%が特に好ましく、25~100モル%がもっとも好ましい。上記範囲内では、耐熱性、および低線膨張係数に優れ好ましい。
なお、熱可塑性樹脂全体の繰り返し単位に占める前記式(1)~(3)で表される繰り返し単位のモル%は、日本電子社製JNM-AL400のプロトンNMRにて測定し算出する。
【0053】
(ガラス転移温度:Tg)
本発明の熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは80℃以上200℃以下であり、より好ましくは100℃以上195℃以下であり、さらに好ましくは120℃以上190℃以下であり、特に好ましくは130℃以上190℃以下であり、もっとも好ましくは140℃以上190℃以下である。Tgが下限以上であると、成形品として使用した際に、耐熱性(耐熱安定性)が良好とであり好ましい。またTgが上限以下では、成形性が良好であり好ましい。ガラス転移温度(Tg)はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定する。
【0054】
(5%重量減少温度)
本発明の熱可塑性樹脂の5%重量減少温度は、窒素雰囲気下で昇温速度20℃/分での5%重量減少温度であり、340℃以上であることが好ましく、345℃以上であるとより好ましく、350℃以上であるとさらに好ましく、370℃以上であると特に好ましく、380℃以上であるともっとも好ましい。5%重量減少温度が上記下限以上であると耐熱性(耐熱安定性)が高くなる。
【0055】
(飽和吸水率)
本発明の熱可塑性樹脂の飽和吸水率は、好ましくは2.5%以下であり、より好ましくは2.0%以下である。吸水率が上記上限以下であると成形品において吸水による寸法変化や反りが低減でき好ましい。
【0056】
(比粘度:ηSP
本発明の熱可塑性樹脂の比粘度(ηSP)としては、0.15以上1.50以下であることが好ましい。より好ましくは0.2以上1.0以下であり、さらに好ましくは0.25以上0.8以下であり、特に好ましくは0.3以上0.7以下である。比粘度が下限以上では強度等が向上し、上限以下では成形加工特性が優れる。
【0057】
本発明でいう比粘度は、20℃で塩化メチレン100mlに熱可塑性樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
なお、本発明の熱可塑性樹脂の比粘度を測定する場合は、次の要領で行うことができる。すなわち、熱可塑性樹脂をその20~30倍重量の塩化メチレンに溶解し、可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から20℃における比粘度をオストワルド粘度計を用いて求める。
【0058】
(線膨張係数)
本発明で使用される熱可塑性樹脂は、30℃~70℃における線膨張係数の平均値が好ましくは70×10-6・℃-1以下であり、より好ましくは65×10-6・℃-1以下、さらに好ましくは60×10-6・℃-1以下である。上記上限を超えるものはビスフェノールAから誘導される通常のポリカーボネート樹脂の線膨張係数に対する優位性を有さなくなる場合がある。
線膨張係数を低下させるメカニズムは詳細には解明されていないが、本発明の熱可塑性樹脂を構成する前記式(1)~(3)で表される繰り返し単位の特異な構造に起因するものと考えられ、その比率が多くなるほど線膨張係数は低くなる。
【0059】
(フェノール含有量)
本発明の熱可塑性樹脂中のフェノールの含有量は、500重量ppm以下であることが好ましく、400重量ppm以下であることがより好ましく、300重量ppm以下であることがさらに好ましい。フェノールの含有量を低減することにより、後の工程において臭気を抑制でき、また成形時の不良発生率を抑制できる。
【0060】
(熱可塑性樹脂の製造方法)
本発明における熱可塑性樹脂は、前記ジオール化合物とカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。
【0061】
本発明における熱可塑性樹脂はカーボネート構造を有する。カーボネート構造を有するポリカーボネート樹脂は、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネートを含む。脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω-ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、およびイコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸が好ましく挙げられる。これらのカルボン酸は、目的を阻害しない範囲で共重合してもよい。また、ポリカーボネート樹脂は、必要に応じてポリオルガノシロキサン単位を含有する構成単位を共重合することもできる。
【0062】
ポリカーボネート樹脂は、必要に応じて三官能以上の多官能性芳香族化合物を含有する構成単位を、共重合し、分岐ポリカーボネート樹脂とすることもできる。
【0063】
分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、および4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが好適に例示される。中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。かかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、他の二価フェノール成分からの構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.03~1.5モル%、より好ましくは0.1~1.2モル%、特に好ましくは0.2~1.0モル%である。
【0064】
また分岐構造単位は、多官能性芳香族化合物から誘導されるだけでなく、溶融エステル交換法による重合反応時に生じる副反応の如き、多官能性芳香族化合物を用いることなく誘導されるものであってもよい。尚、かかる分岐構造の割合については1H-NMR測定により算出することが可能である。
【0065】
カーボネート前駆物質として例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0~40℃であり、反応時間は数分~5時間である。
【0066】
カーボネート前駆物質として例えば炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120~300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0067】
末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、m-メチルフェノール、p-メチルフェノール、m-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、1-フェニルフェノール、2-フェニルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、イソオクチルフェノール、p-長鎖アルキルフェノール等が挙げられる。
【0068】
(添加剤、他の樹脂)
本発明の熱可塑性樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で通常使用される添加剤を配合することができる。また、他の樹脂と併用して使用することもできる。
【0069】
<成形品>
本発明の熱可塑性樹脂を用いてなる成形品は、例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法など任意の方法により成形される。本発明のポリカーボネート樹脂は、成形性および耐熱性に優れているので種々の成形品として利用することができる。殊に光学レンズ、光学ディスク、液晶パネル、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、コネクター、蒸着プラスチック反射鏡、ディスプレイなどの光学部品の構造材料、パソコンや携帯電話の外装や前面板などの電気電子部品、自動車のヘッドランプや窓などの自動車用途、または機能材料用途に適した成形品として有利に使用することができる。
【0070】
<フィルム>
本発明の熱可塑性樹脂を用いてなるフィルムは、具体的には、表面保護フィルム、加飾用フィルム、前面板、位相差フィルム、プラセル基板フィルム、偏光板保護フィルム、反射防止フィルム、輝度上昇フィルム、光ディスクの保護フィルム、拡散フィルム等の用途が挙げられる。
【0071】
フィルムの製造方法としては、例えば、溶液キャスト法、溶融押出法、熱プレス法、カレンダー法等公知の方法を挙げることが出来る。なかでも、溶液キャスト法、溶融押出法が好ましく、特に生産性の点から溶融押出法が好ましい。
【0072】
溶融押出法においては、Tダイを用いて樹脂を押出し、冷却ロールに送る方法が好ましく用いられる。このときの温度は熱可塑性樹脂の分子量、Tg、溶融流動特性等から決められるが、180~350℃の範囲であり、200℃~320℃の範囲がより好ましい。180℃より低いと粘度が高くなりポリマーの配向、応力歪みが残りやすく好ましくない。また、350℃より高いと熱劣化、着色、Tダイからのダイライン(筋)等の問題が起きやすい。
【0073】
また、本発明の熱可塑性樹脂は、有機溶媒に対する溶解性が良好なので、溶液キャスト法も適用することが出来る。溶液キャスト法の場合は、溶媒としては塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、ジオキソラン、ジオキサン等が好適に用いられる。溶液キャスト法で獲られるフィルム中の残留溶媒量は2重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下である。残留溶媒量が2重量%を超えるとフィルムのガラス転移温度の低下が著しくなり耐熱性の点で好ましくない。
本発明の熱可塑性樹脂を用いてなる未延伸フィルムの厚みとしては、30~400μmの範囲が好ましく、より好ましくは40~300μmの範囲である。
【実施例0074】
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中「部」とは「重量部」を意味する。実施例において使用した樹脂および評価方法は以下のとおりである。
【0075】
1.ポリマー組成比(NMR)
日本電子社製JNM-AL400のプロトンNMRにて測定し、ポリマー組成比(モル比)を算出した。
【0076】
2.比粘度測定
20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
【0077】
3.ガラス転移温度測定
ポリカーボネート樹脂8mgを用いてティー・エイ・インスツルメント(株)製の熱分析システム DSC-2910を使用して、JIS K7121に準拠して窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
【0078】
4.5%重量減少温度
得られたポリカーボネート樹脂をTAインスツルメント製の示差熱・熱重量同時測定装置Discovery SDT650により、窒素雰囲気下で、昇温速度20℃/minで測定し、5%重量減少温度を測定した。試料は5mg程度で測定した。
【0079】
5.飽和吸水率
吸水率は、ポリカーボネート樹脂パウダーまたはペレットを塩化メチレンに溶解後、塩化メチレンを蒸発させて得られた厚み200μmのキャストフィルムを用い、23℃水中に浸漬させ重量変化が飽和した後の重量増加分を測定し、次式によって吸水率を求めた。
飽和吸水率(%)={(吸水後の樹脂重量-吸水前の樹脂重量)/吸水後の樹脂重量}×100
【0080】
6.線膨張係数
ポリカーボネート樹脂パウダーまたはペレットを塩化メチレンに溶解後、塩化メチレンを蒸発させて得られた厚み200μmのキャストフィルムを用い、TAインスツルメント社製 TMA Q400にて、30から70℃の線膨張係数を測定し、その平均値を算出した。
【0081】
7.フェノール含有量
ポリカーボネート樹脂パウダーまたはペレット1.5gを塩化メチレン15mlに溶解させた後、アセトニトリル135mlを加え攪拌し、エバポレーターで濃縮した後、0.2μmフィルターでろ過し、この測定溶液10μlを野村化学製Develosil ODS-7のカラムにて溶離液アセトニトリル/0.2%酢酸水とアセトニトリルとの混合液を用いて、カラム温度30℃、検出器277nmでグラジエントプログラムにてHPLC分析した。
【0082】
[合成例1]
<3,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2,4,8,10,-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンの合成>
窒素雰囲気下、撹拌機、冷却器、ディーンスターク管、温度計を備え付けたフラスコにペンタエリスリトール、12.50g、バニリン27.94g、p-トルエンスルホン酸1水和物0.70g、トルエン146g、ジメチルホルムアミド14.6gを仕込み、110℃で6時間反応した。反応終了後、反応液に酢酸エチル500mlを加え希釈した後、分液ロートへ移し、蒸留水で5回分液水洗した。分液水洗後の有機層を濃縮した後、トルエン400mlを加え95℃で加熱溶解後、冷却すると結晶が析出し始めた。そのまま室温まで冷却後、析出した結晶を回収し、90℃で2時間真空乾燥し、3,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2,4,8,10,-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(以下、SSP1と略す)の結晶を29g得た(収率:79%)。この結晶の純度は99.52%であった。
【0083】
[合成例2]
<3,9-ビス(3-ヒドロキシフェニル)-2,4,8,10,-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンの合成>
窒素雰囲気下、撹拌機、冷却器、ディーンスターク管、温度計を備え付けたフラスコにペンタエリスリトール、12.50g、3-ヒドロキシベンズアルデヒド23.52g、p-トルエンスルホン酸1水和物0.70g、トルエン146g、ジメチルホルムアミド14.6gを仕込み、110℃で6時間反応した。反応終了後、反応液に酢酸エチル500mlを加え希釈した後、分液ロートへ移し、蒸留水で5回分液水洗した。分液水洗後の有機層を濃縮した後、トルエン400mlを加え95℃で加熱溶解後、冷却すると結晶が析出し始めた。そのまま室温まで冷却後、析出した結晶を回収し、90℃で2時間真空乾燥し、3,9-ビス(3-ヒドロキシフェニル)-2,4,8,10,-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(以下、SSP2と略す)の結晶を30g得た(収率:75%)。この結晶の純度は99.11%であった。
【0084】
[純度測定:ガスクロマトグラフ測定(GC/MS)]
アジレント・テクノロジー製シングル四重極GC/MS 5977Bを用い、下記測定条件で測定した。実施例中、特に断らない限り純度(%)はGC/MSにおける溶媒を除いて補正した面積百分率値である。
(GC)
カラム:DB-1(内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm)
注入量:1μl
注入法:スプリット比40:1
注入口温度:280℃
オーブン:60℃-10℃/分-280℃(28分)
キャリアガス:He、線速度 36.6cm/s
(MS)
イオン源温度:230℃
イオン化モード:EI 70eV
測定範囲:m/z 33-700
【0085】
[実施例1]
<熱可塑性樹脂の製造>
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水152部、25%水酸化ナトリウム水溶液47部を入れ、二価フェノールとして合成例1で合成したSSP1 34部、およびハイドロサルファイト0.07部を溶解した後、塩化メチレン86部を加え、撹拌下16~24℃でホスゲン11部を70分要して吹き込んだ。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液7部を加え、さらにp-tert-ブチルフェノール0.4部を塩化メチレンに溶解した溶液を加え、攪拌させて乳化状態とした。かかる攪拌下、反応液が28℃の状態でトリエチルアミン0.02部を加えた後、温度26~31℃において1時間撹拌を続けたところで反応を終了した。反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈してイオン交換水で水洗を繰り返し、洗浄液が中性になったところで塩酸酸性水にて水洗した。その後、イオン交換水で繰り返し洗浄し水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら溶媒を蒸発させ、ポリカーボネート樹脂のパウダーを得た。脱水後、熱風循環式乾燥機により100℃で12時間乾燥した。得られたパウダーを用いて、前記の方法で各種評価を実施しその結果を表1に示した。
【0086】
[実施例2]
<熱可塑性樹脂の製造>
SSP1 17部、ビスフェノールA(以下、BPAと略す)10部を原料として用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行いポリカーボネート樹脂のパウダーを得、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。
【0087】
[実施例3]
<熱可塑性樹脂の製造>
SSP1 10部、BPA13部を原料として用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行いポリカーボネート樹脂のパウダーを得、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。
【0088】
[実施例4]
<熱可塑性樹脂の製造>
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水152部、25%水酸化ナトリウム水溶液47部を入れ、二価フェノールとして合成例1で合成したSSP2 13部、BPA9部およびハイドロサルファイト0.04部を溶解した後、塩化メチレン79部を加え、撹拌下16~24℃でホスゲン10部を70分要して吹き込んだ。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液6部を加え、さらにp-tert-ブチルフェノール0.4部を塩化メチレンに溶解した溶液を加え、攪拌させて乳化状態とした。かかる攪拌下、反応液が28℃の状態でトリエチルアミン0.02部を加えた後、温度26~31℃において1時間撹拌を続けたところで反応を終了した。反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈してイオン交換水で水洗を繰り返し、洗浄液が中性になったところで塩酸酸性水にて水洗した。その後、イオン交換水で繰り返し洗浄し水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら溶媒を蒸発させ、樹脂のパウダーを得た。脱水後、熱風循環式乾燥機により100℃で12時間乾燥した。得られたパウダーを用いて、前記の方法で各種評価を実施しその結果を表1に示した。
【0089】
[実施例5]
<熱可塑性樹脂の製造>
SSP2 8部、BPA12部を原料として用いた他は、実施例4と全く同様の操作を行いポリカーボネート樹脂のパウダーを得、実施例4と同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。
【0090】
[比較例1]
ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製 パンライトL1225)を使用して、実施例1と同様の評価を行った。その評価結果を表1に記載した。
【0091】
[比較例2]
<熱可塑性樹脂の製造>
3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(以下SPGと略す)316部、BPA553部ジフェニルカーボネート750部、および触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.8×10-2部と水酸化ナトリウム0.6×10-4部を窒素雰囲気下200℃に加熱し溶融させた。その後、30分かけて減圧度を13.4kPaに調整した。その後、60℃/hrの速度で260℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、1時間かけて減圧度を133Pa以下とした。合計6時間撹拌下で反応を行い、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてポリカーボネート樹脂ペレットを得た。実施例1と同様の評価を行い、その評価結果を表1に記載した。
【0092】
[比較例3]
<熱可塑性樹脂の製造>
SPG354部、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(以下BCFと略す)152部、ジフェニルカーボネート750部、および触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.8×10-2部と水酸化ナトリウム0.6×10-4部を窒素雰囲気下200℃に加熱し溶融させた。その後、30分かけて減圧度を13.4kPaに調整した。その後、60℃/hrの速度で280℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、1時間かけて減圧度を133Pa以下とした。合計6時間撹拌下で反応を行い、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてポリカーボネート樹脂ペレットを得た。実施例1と同様の評価を行い、その評価結果を表1に記載した。
【0093】
[比較例4]
<熱可塑性樹脂の製造>
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水251部、25%水酸化ナトリウム水溶液131部を入れ、二価フェノールとしてBCF35部、BPA32部およびハイドロサルファイト0.13部を溶解した後、塩化メチレン198部を加え、撹拌下16~24℃でホスゲン30部を70分要して吹き込んだ。その後、25%水酸化ナトリウム水溶液22部を加え、さらにp-tert-ブチルフェノール1.5部を塩化メチレンに溶解した溶液を加え、攪拌させて乳化状態とした。かかる攪拌下、反応液が28℃の状態でトリエチルアミン0.06部を加えた後、温度26~31℃において1時間撹拌を続けたところで反応を終了した。反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈してイオン交換水で水洗を繰り返し、洗浄液が中性になったところで塩酸酸性水にて水洗した。その後、イオン交換水で繰り返し洗浄し水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら溶媒を蒸発させ、ポリカーボネート樹脂のパウダーを得た。脱水後、熱風循環式乾燥機により100℃で12時間乾燥した。得られたパウダーを用いて、前記の方法で各種評価を実施しその結果を表1に示した。
【0094】
[比較例5]
<熱可塑性樹脂の製造>
イソソルビド(以下ISSと略す)501部、ジフェニルカーボネート750部、および触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.8×10-2部と水酸化ナトリウム0.6×10-4部を窒素雰囲気下180℃に加熱し溶融させた。その後、30分かけて減圧度を13.4kPaに調整した。その後、60℃/hrの速度で260℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、1時間かけて減圧度を133Pa以下とした。合計6時間撹拌下で反応を行い、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてポリカーボネート樹脂ペレットを得、実施例1と同様の評価を行った。その評価結果を表1に記載した。
【0095】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の熱可塑性樹脂は、光学部品の構造材料、パソコンや携帯電話の外装や前面板などの電気電子部品、自動車内外装部品、位相差フィルム等のフィルム用途として有用である。