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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155976
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20231017BHJP
   E06B 3/22 20060101ALI20231017BHJP
   E06B 3/54 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/22
E06B3/54 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065515
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】車谷 安奈
(72)【発明者】
【氏名】春山 幸浩
【テーマコード(参考)】
2E014
2E016
2E239
【Fターム(参考)】
2E014AA03
2E014BA08
2E014BB07
2E016AA04
2E016BA09
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC02
2E016DA01
2E016DC01
2E239CA04
2E239CA22
2E239CA30
2E239CA33
2E239CA46
2E239CA62
2E239CA67
2E239CA68
(57)【要約】
【課題】ガラスに損傷を来すことなく防火性の向上を図る。
【解決手段】複層ガラス20の下縁部に沿って配設された下枠12と、下枠12の端部に連結されて複層ガラス20の側縁部に沿って配設された縦枠13とを備える建具であって、縦枠13の下端部には、複層ガラス20との間に隙間が確保された状態で複層ガラス20の下面に対向する支持板部72を有した金属製の支持部材70が設けられている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともガラスの下縁部に沿って配設された下側形材と、前記下側形材の端部に連結されて前記ガラスの側縁部に沿って配設された縦側形材とを備える建具であって、
前記下側形材の端部もしくは前記縦側形材の下端部には、前記ガラスとの間に隙間が確保された状態で前記ガラスの下面に対向する支持板部を有した金属製の支持部材が設けられていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記支持部材は、前記縦側形材の下端部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記縦側形材は、中空部を有した樹脂製の押し出し形材であり、前記中空部に金属製の補強材が配設され、
前記支持部材は、前記補強材を介して前記縦側形材に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記支持部材は、前記支持板部の端部から前記縦側形材の長手に沿って延在した取付板部を有し、前記取付板部には前記縦側形材の長手に沿った長孔状の挿通孔が設けられ、
前記支持部材は、固定部材により前記挿通孔を介して前記補強材に連結されていることを特徴とする請求項3に記載の建具。
【請求項5】
前記下側形材の内周側見込み面には、前記ガラスを支持するセッティングブロックが設けられ、
前記支持部材には、前記下側形材の内周側見込み面に当接する当接部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスの縁部に沿って延在した下側形材及び縦側形材を備える建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラスの縁部に枠や框等の形材を設けて構成される建具では、金属製の支持部材によってガラスを保持するものが提供されている。この種の建具によれば、火災等によって高温状態に晒された場合にも支持部材によってガラスの脱落が防止され、防火性を向上させることが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-104926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の建具では、支持部材がガラスの端面に当接した状態となり得る。このため、輸送時等において建具に振動が加えられた場合には、支持部材によってガラスに損傷を来す懸念がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、ガラスに損傷を来すことなく防火性の向上を図ることのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、少なくともガラスの下縁部に沿って配設された下側形材と、前記下側形材の端部に連結されて前記ガラスの側縁部に沿って配設された縦側形材とを備える建具であって、前記下側形材の端部もしくは前記縦側形材の下端部には、前記ガラスとの間に隙間が確保された状態で前記ガラスの下面に対向する支持板部を有した金属製の支持部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属によって成形された支持部材の支持板部とガラスとの間に隙間を確保しているため、輸送時等において振動が加えられた場合にも支持板部とガラスとが接触することがなく、損傷を来す懸念がない。しかも、高温状態となってガラスが下降した場合には支持板部が当接することによってガラスを脱落することなく支持することができるため、防火性の点でも有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態である建具を室内側から見た姿図である。
図2図1に示した建具の縦断面図である。
図3図1に示した建具の横断面図である。
図4図1に示した建具の要部拡大横断面図である。
図5図1に示した建具の要部をガラスを省略した状態で室外側から見た斜視図である。
図6図1に示した建具において支持部材の取付状態を示す要部拡大横断面図である。
図7図1に示した建具において支持部材の取付状態を示す要部拡大縦断面図である。
図8図1に示した建具の要部を示すもので、(a)は下側形材と縦側形材との連結部を室内側から見た拡大図、(b)は下側形材と縦側形材との連結部を室内側から見た縦断面図である。
図9図1に示した建具に適用する支持部材を示すもので、(a)は室外側から見た図、(b)はその平面図、(c)はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる場合がある。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0010】
図1図4は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、枠体10に長方形状を成す複層ガラス(ガラス)20を保持させて構成したFIX窓(はめ殺し窓)と称されるものである。枠体10は、複層ガラス20の上縁部に沿って配設した上枠11、複層ガラス20の下縁部に沿って配設した下枠(下側形材)12、複層ガラス20の側縁部に沿って配設した左右の縦枠(縦側形材)13を備えて構成してある。これらの上枠11、下枠12及び左右の縦枠13は、樹脂によって成形した押し出し形材であり、長手に沿った全長にわたる部分がほぼ一様の断面形状を有するように構成してある。本実施の形態では特に、上枠11、下枠12及び左右の縦枠13が同一の断面形状を有するように構成した建具を例示している。すなわち、枠体10を構成する上枠11、下枠12及び左右の縦枠13は、それぞれ枠基部(中空部)31及び内方突出部32を有して構成してある。枠基部31は、複層ガラス20の外周側に配置される部分であり、見込み方向に沿って延在した中空状に構成してある。枠基部31には、内周側見込み面31aにおいて室外側に位置する部分に押縁33を装着するための装着溝31bが設けてある。内方突出部32は、枠基部31の室内側となる部分から内周側及び室内側に突出した中空のブロック状を成すものである。内方突出部32の室外に臨む見付け面には、内周側となる縁部にタイト材32aが装着してある。内方突出部32においてタイト材32aよりも外周側となる部分と、枠基部31の内周側見込み面31aとの間には、外周に向けて漸次室外となる斜面32bが設けてある。符号34は、枠基部31の室内側に位置する縁部から外周側に向けて見付け方向に延在した釘ヒレ部であり、符号35は、内方突出部32の内周側に位置する縁部から室内に向けて見込み方向に延在した額縁用ヒレ部である。
【0011】
上記の構成を有する上枠11、下枠12及び左右の縦枠13は、互いの端部に設けた45°の斜面を接合することにより枠体10を構成し、かつそれぞれの装着溝31bに押縁33を装着することにより内方突出部32と押縁33との間に複層ガラス20の縁部を挟持するようにしている。
【0012】
図からも明らかなように、枠体10の上枠11及び左右の縦枠13には、枠基部31の中空内部に補強材40が設けてあるとともに、枠基部31の内周側となる部分に挟持部材41が設けてある。枠体10の下枠12には、補強材40及び挟持部材41のいずれも設けていない。補強材40は、アルミニウム合金やスチール等の金属によって成形した構造材であり、上枠11及び縦枠13のほぼ全長にわたる部分に配設してある。図には明示していないが、補強材40の端部は、互いに連結してある。さらに、上枠11に設けた補強材40は、釘ヒレ部34に設けた連結金具42との間が連結してあり、釘ヒレ部34及び連結金具42を介して躯体Bにネジ部材43を螺合した場合に連結金具42を介して躯体Bに支持された状態となる。挟持部材41は、スチール等の金属製薄板部材によって成形したもので、基板部41aの両側縁部にそれぞれ互いに対向する挟持板部41bを有している。この挟持部材41は、基板部41aを介して補強材40との間が連結してあり、挟持板部41bの相互間に複層ガラス20の縁部が挟持された状態となる。図中の符号50は、補強材40及び挟持部材41に設けた熱膨張性部材である。熱膨張性部材50は、熱により膨張する不燃性または難燃性の耐火材である。この種の熱膨張性部材50としては黒鉛含有の発泡材を適用することができる。図には明示していないが、これらの熱膨張性部材50は、それぞれ長手のほぼ全長にわたって配設してある。
【0013】
また、枠体10の下枠12には、複数箇所にセッティングブロック60が設けてあり、左右の縦枠13には、支持部材70が設けてある。セッティングブロック60は、PVC(ポリ塩化ビニル)等の硬質樹脂によって成形したブロック状に構成したもので、上面に複層ガラス20の下面20aを当接することにより複層ガラス20を支持している。支持部材70は、スチール等の金属によって成形したもので、図5図9に示すように、取付板部71、支持板部72及び当接部73を有している。取付板部71は、縦長のほぼ長方形状を成すもので、ネジ挿通孔(挿通孔)71aを有している。ネジ挿通孔71aは、取付板部71の長手に沿った長孔状の貫通孔であり、取付板部71の上下に2つ並設してある。支持板部72は、中央部分が取付板部71よりも幅広の平板状を成すもので、取付板部71からほぼ直角となる方向に延在している。支持板部72の幅は、下枠12の内方突出部32と押縁33との間の隙間より小さく、複層ガラス20の板厚とほぼ等しく設定してある。当接部73は、支持板部72の先端部から取付板部71とは反対の方向に屈曲するように設けたものである。当接部73の寸法は、先端部を下枠12の内周側見込み面31aに当接させるとともに、支持板部72を見込み面31aにほぼ平行となるように配置した場合に、支持板部72の上面がセッティングブロック60の上面よりも下方となるように設定してある。この支持部材70は、取付板部71が縦枠13の長手に沿って延在し、かつ当接部73が下枠12の内周側見込み面31aに当接した状態で、取付板部71のネジ挿通孔71a及び縦枠13を介して補強材40に取付ネジ(固定部材)74を螺合することにより縦枠13の下端部に取り付けてある。枠体10に対する支持部材70の見込み方向の位置は、下枠12の内方突出部32と押縁33との間に位置する部分であり、これら内方突出部32と押縁33との間に挟持した複層ガラス20の下面20aに対して支持板部72が対向するように設定してある。
【0014】
上記のように構成した建具によれば、枠体10を構成する上枠11、下枠12及び縦枠13がいずれも樹脂によって成形したものであるため、さらには下枠12については補強材40を設けていないため、断熱性の点で有利となる。従って、例えば室内の温度に比べて外気温度が低い場合にも、枠体10において室内に露出する部分に結露が生じる等の問題を招来するおそれがない。
【0015】
しかも、上述の建具では、上枠11及び縦枠13に金属製の補強材40が配設してあるとともに、補強材40を介して縦枠13に支持部材70が取り付けてある。従って、火災発生時等のように建具が高温状態に晒され、枠体10やセッティングブロック60が溶融したり焼失したりすることによって複層ガラス20が下降した場合にも、支持部材70及び補強材40によって保持されるため脱落するおそれがなく、防火性の点でも有利となる。すなわち、枠体10には、複層ガラス20の下面20aに対向するように支持部材70が配設してあるため、複層ガラス20が下降した場合、支持部材70の支持板部72が複層ガラス20の下面20aに当接した状態となり、以降の複層ガラス20の移動が阻止されることになる。特に、実施の形態の建具では、釘ヒレ部34が枠基部31の室内側に位置する縁部に設けてあるため、躯体Bに取り付けられた状態において複層ガラス20が躯体Bよりも室外側に配置されることになるが、上述の構成により、複層ガラス20の脱落を防止することが可能である。加えて、通常の使用時においては、セッティングブロック60が複層ガラス20の下面20aに当接し、支持部材70の支持板部72と複層ガラス20の下面20aとの間には隙間が確保されることになる。支持部材70の取付板部71と複層ガラス20の側面20bとの間にも隙間が確保されている。従って、輸送時等において振動が加えられた場合にも支持部材70と複層ガラス20とが接触することがなく、複層ガラス20に損傷を来す懸念がない。また、支持部材70に設けた長孔状のネジ挿通孔71aを介して取付ネジ74を螺合することにより支持部材70を縦枠13に取り付けている。従って、支持部材70の高さ方向の位置を調整することができ、支持部材70と複層ガラス20の下面20aとの間に確実に隙間を確保することが可能である。
【0016】
なお、上述した実施の形態では、複層ガラス20の縁部に枠体10を設けたFIX窓を例示しているが、ガラスの縁部に框を設けることによって障子を構成した引き違い窓やすべり出し窓等の建具にも適用することが可能である。また、形材としては必ずしも樹脂によって成形されたものである必要はなく、アルミニウム合金等の金属によって成形されているものであっても構わない。さらに、形材の中空部に補強材40を設けるようにしているが、必ずしも補強材40を設ける必要はない。なお、補強材40を設ける場合に上述した実施の形態では上枠11及び縦枠13にのみ設けるようにしているが、下枠12にも補強材40を設けても良い。またさらに、縦側形材である縦枠13の下端部に支持部材70を取り付けるようにしているが、下枠12等のガラスの下縁部に沿って設けられた下側形材の端部に支持部材70を取り付けることも可能である。この場合、支持部材70の形状としては、取付板部71と支持板部72とが互いに平行となるように構成してあれば良く、取付板部71に設けるネジ挿通孔71aは必ずしも長孔状である必要はない。
【0017】
以上のように、本発明に係る建具は、少なくともガラスの下縁部に沿って配設された下側形材と、前記下側形材の端部に連結されて前記ガラスの側縁部に沿って配設された縦側形材とを備える建具であって、前記下側形材の端部もしくは前記縦側形材の下端部には、前記ガラスとの間に隙間が確保された状態で前記ガラスの下面に対向する支持板部を有した金属製の支持部材が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、金属によって成形された支持部材の支持板部とガラスとの間に隙間を確保しているため、輸送時等において振動が加えられた場合にも支持板部とガラスとが接触することがなく、損傷を来す懸念がない。しかも、高温状態となってガラスが下降した場合には支持板部が当接することによってガラスを脱落することなく支持することができるため、防火性の点でも有利となる。
【0018】
また本発明は、上述した建具において、前記支持部材は、前記縦側形材の下端部に取り付けられていることを特徴としている。
この発明によれば、下側形材に支持部材を取り付けるためのスペースを確保する必要がない。
【0019】
また本発明は、上述した建具において、前記縦側形材は、中空部を有した樹脂製の押し出し形材であり、前記中空部に金属製の補強材が配設され、前記支持部材は、前記補強材を介して前記縦側形材に取り付けられていることを特徴としている。
この発明によれば、支持部材を介して縦側形材の補強材によりガラスを支持することができるため、下側形材に補強材を設ける必要がなくなり、部品点数を削減することが可能となる。
【0020】
また本発明は、上述した建具において、前記支持部材は、前記支持板部の端部から前記縦側形材の長手に沿って延在した取付板部を有し、前記取付板部には前記縦側形材の長手に沿った長孔状の挿通孔が設けられ、前記支持部材は、固定部材により前記挿通孔を介して前記補強材に連結されていることを特徴としている。
この発明によれば、長孔状の挿通孔において固定部材の位置を変更することでガラスに対する支持部材の高さを調整することが可能となる。
【0021】
また本発明は、上述した建具において、前記下側形材の内周側見込み面には、前記ガラスを支持するセッティングブロックが設けられ、前記支持部材には、前記下側形材の内周側見込み面に当接する当接部が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、下側形材の内周側見込み面を基準としてセッティングブロックの高さと支持部材の高さとが規定されるため、ガラスの下面と支持部材との間の隙間を正確に設定することが可能となる。
【符号の説明】
【0022】
10 枠体、11 上枠、12 下枠、13 縦枠、20 複層ガラス、20a 下面、31 枠基部、31a 内周側見込み面、40 補強材、60 セッティングブロック、70 支持部材、71 取付板部、71a ネジ挿通孔、72 支持板部、73 当接部、74 取付ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9