(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156016
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】積層フィルムの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
B05D 1/26 20060101AFI20231017BHJP
B05D 7/04 20060101ALI20231017BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20231017BHJP
B29C 55/14 20060101ALI20231017BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20231017BHJP
C08J 9/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B05D7/04
B05D3/12 C
B29C55/14
B32B5/18
C08J9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065591
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】足利 光洋
【テーマコード(参考)】
4D075
4F074
4F100
4F210
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC80
4D075AC88
4D075AE19
4D075BB07X
4D075BB07Z
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4F100AA08A
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4F100AK03A
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4F210AJ08
4F210QA02
4F210QA03
4F210QC06
4F210QD08
4F210QG01
4F210QG18
(57)【要約】
【課題】積層フィルムに厚みが均一な塗工層を形成できるようにする。
【解決手段】多孔性基材層101を第1の方向に延伸する第1延伸工程14と、第1延伸工程14にて得られた第1延伸層101上に、インクジェット吐出装置20を用いて塗工層102を形成する塗工工程と、塗工層102が形成された第1延伸層101を、第1の方向と直交する第2の方向に延伸する第2延伸工程16とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂およびフィラーを含有する樹脂組成物からなる多孔性基材層上に塗工層を有する積層フィルムの製造方法であって、
前記樹脂組成物を押出してなるキャストフィルム層を第1の方向に延伸する第1延伸工程と、
前記第1延伸工程にて得られた第1延伸層上に、インクジェット吐出装置を用いて前記塗工層を形成する塗工工程と、
前記塗工層が形成された前記第1延伸層を、前記第1の方向と直交する第2の方向に延伸する第2延伸工程と
を備えることを特徴とする積層フィルムの製造方法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂およびフィラーを含有する樹脂組成物からなる多孔性基材層上に塗工層を有する積層フィルムを製造する製造装置であって、
前記樹脂組成物を押出してなるキャストフィルム層を第1の方向に延伸する第1延伸装置と、
前記第1延伸工程にて得られた第1延伸層上に、前記塗工層を形成するインクジェット吐出装置と、
前記塗工層が形成された前記第1延伸層を、前記第1の方向と直交する第2の方向に延伸する第2延伸装置と
を備えることを特徴とする積層フィルムの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムの製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
延伸樹脂フィルムの基材の表面に、特定の機能を実現する塗工液を塗布することで塗工層を設け、これを乾燥させることにより、表面に様々な機能を有する積層フィルムを形成することが知られている。
【0003】
また、延伸樹脂フィルムの製法として、樹脂フィルムを、第1の方向(例えば、縦方向)と第2の方向(例えば横方向)とに延伸する二軸延伸法が知られている。
【0004】
二軸延伸法によって延伸樹脂フィルムを製造する場合に、第1の方向へ延伸する工程と第2の方向へ延伸する工程との間に、フィルム表面へ塗工液を塗布する工程(塗工プロセス)を設けることが考えられる。
【0005】
このような塗工プロセスを第1の方向への延伸工程と第2の方向への延伸工程との間に設けることで、第2の方向への延伸時の加熱により、フィルム表面の塗工層が乾燥するため、乾燥工程を別途設ける必要が無く、積層フィルム作製工程の短縮化を図ることができる。
【0006】
また、延伸樹脂フィルムとして、熱可塑性樹脂とフィラー(充填剤)とを含有する樹脂組成物を延伸することにより、フィルム中にボイド(空孔)形成してなる多孔質フィルムを用いてもよい。
【0007】
また、塗工液をシート材に塗布する手法としては、例えば、塗布ローラに液体を供給し、フィルムに当接させた当該塗布ローラをフィルムの搬送に合わせて回転させることで、液体をシート材に塗布する手法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】佐々忠著 「各種コータヘッドとその製品について」紙パ技協誌 第55巻 第12号 2001年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した多孔質フィルムにおいては、フィルム中に形成されるボイド(空孔)の数や形状を均一にするために、延伸工程における樹脂組成物への熱の伝わり方や延伸時の応力の伝わり方を均一にすることが重要である。
【0011】
多孔質フィルムを二軸延伸法にて製造する際に、第1の方向への延伸工程と、第2の方向への延伸工程との間に塗工プロセスを設ける場合、塗工層に厚みムラがあると、第2の方向への延伸時に多孔質フィルムに伝わる熱量が不均一になり、フィルム中のボイドの数や形状にばらつきが生じる。
【0012】
このため、多孔質フィルムを基材とする積層フィルムを製造する場合において、2方向への延伸工程の間に塗工プロセスを設ける場合に、塗工液の塗工量を精密に制御し、厚みが均一な塗工層を形成する必要がある。
【0013】
しかしながら、上述した塗布ローラをシート材の搬送に合わせて回転させることで液体をシート材に塗布する従来手法では、フィルムに薄く均一な厚みで塗工液を塗布することが難しく、厚みが均一な塗工層を形成することが困難な場合がある。
【0014】
本発明の目的の一つは、積層フィルムに厚みが均一な塗工層を形成することにより、ボイドの数や形状が均一な多孔性の層を基材層として有する積層フィルムを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このため、この積層フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂およびフィラーを含有する樹脂組成物からなる多孔性基材層上に塗工層を有する積層フィルムの製造方法であって、前記樹脂組成物を押出してなるキャストフィルム層を第1の方向に延伸する第1延伸工程と、前記第1延伸工程にて得られた第1延伸層上に、インクジェット吐出装置を用いて前記塗工層を形成する塗工工程と、前記塗工層が形成された前記第1延伸層を、前記第1の方向と直交する第2の方向に延伸する第2延伸工程とを備える。
【発明の効果】
【0016】
一実施形態によれば、積層フィルムに厚みが均一な塗工層を形成することができ、結果として、ボイドの数や形状が均一な多孔性の層を基材層として有する積層フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムの構成を例示する図である。
【
図2】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムの縦延伸装置の構成例を模式的に示す図である。
【
図3】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムのインクジェット吐出装置を説明するための図である。
【
図4】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムの横延伸装置の構成例を模式的に示す図である。
【
図5】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムにおけるインクジェット吐出装置の配置例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本積層フィルムの製造方法および製造装置にかかる実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、実施形態で明示しない種々の変形例や技術の適用を排除する意図はない。すなわち、本実施形態を、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、各図は、図中に示す構成要素のみを備えるという趣旨ではなく、他の機能等を含むことができる。
【0019】
(A)構成
図1は実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1の構成を例示する図である。
【0020】
本発明の積層フィルム製造システム1は積層フィルム100を生成する。積層フィルム100は、基層101の上に塗工層102が形成された積層構造を有する。基層101は、第1延伸工程が完了するまでは「樹脂組成物を押出してなるキャストフィルム層」(以下、単に「キャストフィルム層」と称することがある)を表し、第1延伸工程後、第2延伸工程が完了するまでは「第1延伸層」を表し、第2延伸工程完了後は「多孔性基材層」を表す。
【0021】
基層101を形成する基層形成用材料には、熱可塑性樹脂の他にフィラーを配合することが好ましい。すなわち、基層101は、基層形成用材料である熱可塑性樹脂およびフィラーを含有する樹脂組成物からなる。すなわち、基層101に相当するキャストフィルム層、第1延伸層および多孔性基材層はいずれも、熱可塑性樹脂およびフィラーを含有する樹脂組成物からなる。
【0022】
熱可塑性樹脂としては、例えばオレフィン系重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル、およびこれらの混合樹脂等が挙げられる。なかでも、耐水性および耐溶剤性の観点からは、オレフィン系重合体が好ましい。
オレフィン系重合体としては、ポリプロピレン等のプロピレン系重合体、ポリエチレン等のエチレン系重合体等を好ましく使用できる。
【0023】
フィラーは、無機フィラーであっても有機フィラーであってもよく、いずれも平均粒径が通常0.01μm~15μm、好ましくは0.01μm~8μm、更に好ましくは0.03μm~4μmのものを使用することができる。なおフィラーの平均粒径は平均一次粒径(D50)であり、レーザー回折による粒度分布計で測定した体積平均粒径である。基層101中のフィラーの含有量は、所望の空孔率を得る観点から、1質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、また45質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下である。
【0024】
無機フィラーとして、具体的には、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナなどを使用することができる。
【0025】
有機フィラーとしては、前記熱可塑性樹脂とは非相溶であり、融点又はガラス転移温度が熱可塑性樹脂よりも高く、熱可塑性樹脂の溶融混練条件下で微分散する有機粒子が好ましい。例えば熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合には、有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン-6,ナイロン-6,6、環状オレフィンの単独重合体や環状オレフィンとエチレンとの共重合体等で融点が120℃~300℃、ないしはガラス転移温度が120℃~280℃であるものを用いることが好ましい。
【0026】
前記樹脂組成物には、更に必要により、安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤、蛍光増白剤、着色剤等を配合してもよい。
【0027】
基層101は、単層構造であっても、2層以上の複層構造であってもよい。
【0028】
図1に例示する積層フィルム製造システム1は、原料サイロ10a,10b,造粒機11,ペレットサイロ12,押出機13,縦延伸装置14,横延伸装置16およびインクジェット吐出装置20を備える。
【0029】
積層フィルム製造システム1を構成する、これらの原料サイロ10a,10b,造粒機11,ペレットサイロ12,押出機13,縦延伸装置14,横延伸装置16およびインクジェット吐出装置20のそれぞれは、積層フィルム100を製造するための製造工程を実現する。
【0030】
原料サイロ10a,10bには、積層フィルム100の原料が格納される。積層フィルム100の原料は、例えば、熱可塑性樹脂、フィラーおよび任意の添加剤などである。なお
図1における原料サイロの数は2だが、必要な数を設ければよい。
【0031】
積層フィルム100の原料には、積層フィルム100の成形時の断裁工程等で発生した端材を加工して生成されるリサイクル素材を含めてもよい。
【0032】
原料サイロ10a,10b内に格納された原料は、造粒機11に投入される。
【0033】
造粒機11は、原料の熱可塑性樹脂にフィラーと、必要に応じて各種添加剤とを加えて、樹脂組成物のペレットを生成する。
【0034】
ペレットサイロ12は、造粒機11によって生成されたペレットを格納する。ペレットサイロ12は自身に格納するペレットを押出機13に供給する。
【0035】
押出機13は、図示しない押出機ダイから、溶融された樹脂組成物をシートの形状で押し出し、キャストフィルム層である基層101を形成する。
【0036】
押出機13はキャストフィルム層である基層101を形成するものであり、図示しない押出機ダイから、溶融された樹脂組成物をシートの形状で押し出す。押出機13から押し出された基層101、すなわちキャストフィルム層は、図示しない搬送ローラ等により搬送され、後述する縦延伸装置14に供給される。
【0037】
縦延伸装置14は、押出機13から押し出された基層101、すなわちキャストフィルム層の流れ方向(搬送方向)における下流位置に配置されている。
【0038】
縦延伸装置14は、押出機13から押し出された基層101、すなわちキャストフィルム層を、当該基層101の流れ方向に延伸させる。以下、基層101の流れ方向(搬送方向)を縦方向といってよい。縦方向は第1の方向に相当する。
【0039】
縦延伸装置14は、基層101(キャストフィルム層)を縦方向(第1の方向)に延伸する第1延伸装置に相当する。また、縦延伸装置14は、基層101(キャストフィルム層)を縦方向(第1の方向)に延伸する第1延伸工程を実現する。
【0040】
縦延伸装置14においては、例えば、縦延伸方向と直交する方向に複数(
図1に示す例では3つ)の搬送ローラが互いに平行に配設されている。そして、これらの搬送ローラ間において、例えば、搬送ローラの周速に差をつけることでキャストフィルム層に縦方向の張力をかけ、該層を縦方向に延伸させる。すなわち、縦延伸装置14は、ロール群の周速差を利用したロール間延伸を行なってもよい。
【0041】
延伸を実施するときの延伸温度は、使用する熱可塑性樹脂が非晶性樹脂の場合、当該熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該熱可塑性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、熱可塑性樹脂の融点よりも2℃~60℃低い温度が好ましい。具体的には、プロピレン単独重合体(融点155℃~167℃)の場合は100℃~164℃の延伸温度が好ましく、高密度ポリエチレン樹脂(融点121~134℃)の場合は70℃~133℃の延伸温度が好ましい。
【0042】
延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20m/分~350m/分の範囲内であることが好ましい。
【0043】
また、延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができ、例えばプロピレン系樹脂を使用して2軸延伸する場合、延伸倍率は、面積延伸倍率で、下限が通常1.5倍以上、好ましくは4倍以上であり、上限が通常60倍以下、好ましくは50倍以下である。
【0044】
図2は実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1の縦延伸装置14の構成例を模式的に示す図である。
【0045】
この
図2に示す例においては、4つの搬送ローラ141a,141b,141c,141dが、互いの回転軸が平行になるように、各回転軸を縦方向と直交させた状態で配設されている。4つの搬送ローラ141a,141b,141c,141dは、基層101の流れ方向に沿って、搬送ローラ141a,搬送ローラ141b,搬送ローラ141c,搬送ローラ141dの順で配置されている。以下、搬送ローラ141a,141b,141c,141dを特に区別しない場合には、搬送ローラ141と表記する。
【0046】
これらの各搬送ローラ141は、図示しない駆動モータにより回転軸を中心に回転可能に構成されており、それぞれ基層101に当接した状態で、基層101の流れに沿う方向に回転する。
【0047】
また、各搬送ローラ141においては、基層101の流れ方向における下流に配置された搬送ローラ141ほど周速が速くなるよう駆動モータの回転速度の制御が行なわれる。これにより、隣り合う搬送ローラ141間において基層101の流れ方向に沿って基層101に張力が発生し、基層101が縦方向に延伸される。
【0048】
縦延伸装置14の下流であって、横延伸装置16の上流位置には、インクジェット吐出装置20が備えられている。
【0049】
インクジェット吐出装置20は、縦延伸装置14が延伸させた基層101の表面に塗工液を吐出することで、基層101の表面に均一な塗工層102を形成する。縦延伸装置14が延伸させた基層101は第1延伸層に相当する。
【0050】
インクジェット吐出装置20は、基層101の第1の面(表面)に塗工液の粒子を吐出する。なお、インクジェット吐出装置20は、基層101の第2の面(裏面)に塗工液の粒子を吐出してもよい。
【0051】
インクジェット吐出装置20は、縦延伸装置14(第1延伸工程)にて得られた基層(第1延伸層)101上に塗工層102を形成する塗工工程を実現する。
【0052】
図3は実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1のインクジェット吐出装置20を説明するための図である。
【0053】
インクジェット吐出装置20は、基層101の表面に対向する位置において、幅方向に沿って配置される。インクジェット吐出装置20における基層101と対向する位置には、図示しない複数のインク吐出口(ノズル)が配置されている。これらのインク吐出口は基層101の幅方向の全体に亘って形成されており、各インク吐出口から塗工液が粒子状に吐出され、基層101の表面に塗工液がムラなく塗布される。
【0054】
これにより、インクジェット吐出装置20は、基層101の表面に均一な塗工層102を形成する。
【0055】
塗工液は、積層フィルムに何らかの機能を持たせるための機能性材料であってもよい。
【0056】
横延伸装置16は、インクジェット吐出装置20の下流に配置されている。
【0057】
横延伸装置16は、インクジェット吐出装置20によってその表面に塗工層102が形成された基層101(第1延伸層)を、縦方向と直交する方向(横方向,幅方向)に延伸させ、多孔性基材層を生成する。横方向は第2の方向に相当する。
【0058】
横延伸装置16は、塗工層102が形成された基層101(第1延伸層)を、縦方向(第1の方向)と直交する横方向(幅方向,第2の方向)に延伸する第2延伸装置に相当する。また、横延伸装置16は、塗工層102が形成された基層101(第1延伸層)を、縦方向(第1の方向)と直交する横方向(幅方向,第2の方向)に延伸する第2延伸工程を実現する。
【0059】
なお、第2延伸工程でも、第1延伸工程と同様に、使用する熱可塑性樹脂の種類に応じた延伸温度に基層101を加熱し、延伸を行なう。この時の加熱により、インクジェット吐出装置20にて形成された塗工層102が乾燥され、塗工層102が完成する。インクジェット装置20により塗工・形成された塗工層102は、厚みが均一であるため、塗工層102を有する第1延伸層を横延伸する際に、第1延伸層に加わる熱量にムラが生じず均一に加熱され、該層に伝わる応力も均一になる。結果、第1延伸層中に形成されるボイド、すなわち積層フィルムの多孔性基材層中に形成されるボイドの数や形状が均一になる。
【0060】
図4は実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1の横延伸装置16の構成例を模式的に示す図である。
【0061】
横延伸装置16は、第1延伸層である基層101の縁辺を把持する複数(
図4に示す例では6つ)のクリップ161を備える。これらのクリップ161は、基層101の二つの縁辺のそれぞれにおける基層101を介して対向する位置において、対をなすように配置されている。
図4に示す例においては、基層101の流れ方向に沿って3対のクリップ161が備えられている。
【0062】
これらの複数のクリップ161において、基層101を挟んで対向する位置に備えられたクリップ161の対は、それぞれ基層101の縁辺部を把持した状態で、互いに遠ざかる方向に移動することで、基層101、すなわち第1延伸層を横方向(幅方向)に引っ張り延伸させる。
【0063】
基層101を把持するクリップ161は、基層101の搬送に追従して流れ方向に移動しながら基層101を幅方向に延伸させ、所定の位置において基層101を解放する。その後、各クリップ161は、基層101の搬送方向における上流位置に戻り、再度基層101を把持する。このように、横延伸装置16においては、複数のクリップ161を用いて、基層101の把持、延伸、解放を繰り返し行なうことで、基層101を横方向に延伸させる。すなわち、横延伸装置16は、テンターオーブンを利用したクリップ延伸を行なう。この横延伸工程、すなわち第2延伸工程を経ることにより、本発明の積層フィルム100が形成される。
【0064】
その後、積層フィルム100に対して両縁辺の裁断等の加工や厚みの計測等の処理が行なわれる。その後、積層フィルム100は、ワインダー(図示せず)により巻き取られ、後続する仕上げ工程に送られる。
【0065】
(B)動作
上述の如く構成された積層フィルム製造システム1において、原料サイロ10a,10bに格納された原料は、造粒機11に投入される。
【0066】
造粒機11は、原料の熱可塑性樹脂にフィラーと任意の添加剤とを加えて樹脂組成物のペレットを生成する。生成されたペレットはペレットサイロ12に格納される。
【0067】
ペレットサイロ12は自身に格納するペレットを押出機13に供給する。
【0068】
押出機13は、基層101(キャストフィルム層)を生成する。押出機13によって生成された基層101は、縦延伸装置14に投入される。
【0069】
縦延伸装置14は、押出機13から押し出された基層101を縦方向に延伸させる。縦延伸装置14により縦方向に延伸された基層101(第1延伸層)の第1の面(表面)にインクジェット吐出装置20が塗工液の粒子を吐出し、この表面に均一な塗工層102を形成する。
【0070】
その後、横延伸装置16が、縦延伸装置14によって縦方向に延伸され、インクジェット吐出装置20によって塗工層102が形成された基層101(第1延伸層)を、横方向(幅方向)に延伸させ、多孔性基材層を生成する。これにより、積層フィルム100が形成される。
【0071】
その後、積層フィルム100に対して両縁辺の裁断等の加工や厚みの計測等の処理が行なわれる。その後、積層フィルム100は、ワインダー(図示せず)により巻き取られ、後続する仕上げ工程に送られる。
【0072】
(C)効果
このように、実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1によれば、縦延伸装置14によって縦方向に延伸された基層101に対して、インクジェット吐出装置20が塗工液を吐出することで、基層101の表面に均一な厚さの塗工層102を形成することができる。これにより、基層101において、塗工層102の厚みムラを無くし、基層101の延伸ムラと厚みムラの少ない積層フィルム100を製造することができる。
【0073】
本積層フィルム製造システム1においては、基層101に対して縦延伸装置14が縦方向への延伸を行なった後に、インクジェット吐出装置20が基層101に均一な厚みの塗工層102を形成する。これにより、横延伸装置16による基層101の横方向への延伸時に、基層101に伝わる熱量や延伸時の応力の伝わり方が均一となり、基層101中に生じるボイドの数や形状を均等にすることができる。従って、積層フィルム100の品質を向上させることができる。
【0074】
(D)その他
開示の技術は上述した実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0075】
例えば、上述した実施形態においては、積層フィルム100が基層101の上に塗工層102が形成された構造を有する例を示しているが、これに限定されるものではない。例えば基層101は多層であってもよく、また基層101の裏面にも塗工層102を形成してもよい。
図5は積層フィルム製造システム1の変形例におけるインクジェット吐出装置20a,20bの配置例を模式的に示す図である。
【0076】
基層101の両面に塗工層102を形成する場合には、この
図5に例示するように、基層101の表面に塗工層102を形成するインクジェット吐出装置20aと、基層101の裏面に塗工層102を形成するインクジェット吐出装置20bとを備える。
【0077】
図5に示す例においては、インクジェット吐出装置20bとインクジェット吐出装置20aとを縦方向に並べて配置している。そして、縦延伸装置14によって延伸された基層101の搬送経路を、複数の搬送ローラ201を用いて屈曲させて折り返すことで、インクジェット吐出装置20bによって裏面(第2の面)に塗工層102が形成された基層101の表面(第1の面)に、インクジェット吐出装置20aより塗工層102を形成している。
【0078】
このようにインクジェット吐出装置20bとインクジェット吐出装置20aとを縦方向に並べて配置することで、本積層フィルム製造システム1の省スペース化を実現することができる。
塗工層102を形成した基層101に対して、さらに、表面層や裏面層を形成してもよい。
【0079】
上述した実施形態においては、縦延伸装置14と横延伸装置16との間にインクジェット吐出装置20が備えられ、基層101に対して縦延伸装置14が縦方向への延伸を行なった後に、この基層101にインクジェット吐出装置20が塗工層102を形成しているが、これに限定されるものではない。縦延伸装置14の上流側にインクジェット吐出装置20を備え、基層101に対してインクジェット吐出装置20が塗工層102を形成した後に、この基層101に対して縦延伸装置14が縦方向への延伸を行なってもよい。
【0080】
また、上述した開示により本実施形態を当業者によって実施・製造することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 積層フィルム製造システム
10a,10b 原料サイロ
11 造粒機11
12 ペレットサイロ
13 押出機
14 縦延伸装置
141a,141b,141c,141d,141 搬送ローラ
16 横延伸装置
161 クリップ
20a,20b,20 インクジェット吐出装置
100 積層フィルム
101 基層
102 塗工層