(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156054
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】スライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/08 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
B60N2/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065678
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】白木 晋
(72)【発明者】
【氏名】西尾 拓也
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB02
3B087BC05
3B087BC07
(57)【要約】
【課題】アクチュエータの出力を大きくすることなく、ロック動作の速度を高められるスライド装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、ロックユニットを備えるスライド装置である。ロックユニットは、係合部と、第1ロック位置から第1解除位置への揺動によって係合部を係合位置から解放位置に移動させる第1揺動部材と、第2ロック位置と第2解除位置との間で揺動する第2揺動部材と、第1揺動部材を第1揺動部材の揺動中心軸に向かって押圧する第3揺動部材と、第4ロック位置と第4解除位置との間で揺動する第4揺動部材とを備える。第3揺動部材は、第1揺動部材を押圧する押圧部を有する。第4揺動部材は、押圧部に接触することで押圧部による押圧を解除する複数の解除面を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に設置されたシートに取り付けられるように構成された可動レールと、
前記可動レールをスライド可能に支持する固定レールと、
前記可動レールに連結されると共に、前記可動レールの前記固定レールに対するスライドを規制するロック状態と、前記可動レールのスライドを規制しない解除状態とに変位するロックユニットと、
を備え、
前記ロックユニットは、
前記固定レールに係合する係合位置と前記固定レールとの係合が解かれた解放位置とに変位すると共に、前記係合位置に向かって付勢された係合部と、
第1ロック位置から第1解除位置への揺動によって前記係合部を前記係合位置から前記解放位置に移動させると共に、前記第1ロック位置に向かって付勢された第1揺動部材と、
第2ロック位置と第2解除位置との間で揺動すると共に、前記第2ロック位置に向かって付勢された第2揺動部材と、
前記第2揺動部材に対し揺動可能に取り付けられると共に、前記第1揺動部材を前記第1揺動部材の揺動中心軸に向かって押圧する方向に付勢された第3揺動部材と、
第4ロック位置と第4解除位置との間で揺動すると共に、前記第4ロック位置に向かって付勢された第4揺動部材と、
アクチュエータによる引張によって前記第2揺動部材を前記第2ロック位置から前記第2解除位置に向けて揺動させるワイヤと、
を有し、
前記第3揺動部材は、前記第2揺動部材の前記第2ロック位置から前記第2解除位置への揺動時に、前記第1揺動部材を前記第1揺動部材の揺動中心軸に向けて押圧すると共に、前記第4揺動部材を前記第4解除位置に向けて押圧する押圧部を有し、
前記第4揺動部材は、
前記第4揺動部材の前記第4解除位置から前記第4ロック位置への揺動時に、前記押圧部に接触することで前記押圧部による前記第1揺動部材の押圧を解除する複数の解除面と、
前記第2揺動部材が前記第2解除位置にあるときに前記押圧部に接触することで前記第4揺動部材の揺動を規制する複数のストッパ面と、
前記第4揺動部材の前記第4解除位置から前記第4ロック位置への揺動時に、前記複数の解除面のいずれかから離れた前記押圧部が摺動する保持面と、
を有し、
前記複数の解除面は、前記第4揺動部材の揺動中心軸からの距離が互いに異なり、
前記複数のストッパ面は、それぞれ、前記押圧部に接触することで前記押圧部を前記複数の解除面のいずれかの近傍に保持する、スライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスライド装置であって、
前記第3揺動部材は、前記第2揺動部材に対し揺動可能に取り付けられたリンクである本体を有する、スライド装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスライド装置であって、
前記押圧部は、前記本体から前記本体の揺動中心軸と平行な方向に突出したピンである、スライド装置。
【請求項4】
請求項3に記載のスライド装置であって、
前記押圧部の外周面において、前記第4揺動部材に接触する接触領域の曲率半径は、他の領域の曲率半径よりも小さい、スライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車等の乗物に設置される乗物用シートにおいて、シートクッションを前後方向にスライドさせるスライド装置が公知である。このようなスライド装置には、シートクッションのスライドのロック及びロックの解除を行うロックユニットが設けられる(特許文献1参照)。
【0003】
ロックユニットは、リンク機構を介して固定レールに係合する係合部(つまり爪)を移動させることで、ロック及びロックの解除を行う。リンク機構は、アクチュエータによるワイヤの引張操作によってロックを解除すると共に、アクチュエータによるワイヤの戻し操作によって、ロックが解除された状態からロック状態に復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のスライド装置において、シートのスライド停止時、リンク機構のロック状態への移行動作が遅いと、スライドがロックされる位置が目的の停止位置からずれるおそれがある。これに対し、アクチュエータの出力を大きくしてワイヤの戻り速度を高めることで、リンク機構の動作を早めることができる。しかしながら、アクチュエータの出力を大きくすると、スライド装置のレイアウトが制限されるほか、重量及びコストの上昇を招く。
【0006】
本開示の一局面は、アクチュエータの出力を大きくすることなく、ロック動作の速度を高められるスライド装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、乗物に設置されたシート(11)に取り付けられるように構成された可動レール(2A)と、可動レール(2A)をスライド可能に支持する固定レール(3A)と、可動レール(2A)に連結されると共に、可動レール(2A)の固定レール(3A)に対するスライドを規制するロック状態と、可動レール(2A)のスライドを規制しない解除状態とに変位するロックユニット(5)とを備えるスライド装置(1)である。
【0008】
ロックユニット(5)は、固定レール(3A)に係合する係合位置と固定レール(3A)との係合が解かれた解放位置とに変位すると共に、係合位置に向かって付勢された係合部(51)と、第1ロック位置から第1解除位置への揺動によって係合部(51)を係合位置から解放位置に移動させると共に、第1ロック位置に向かって付勢された第1揺動部材(52)と、第2ロック位置と第2解除位置との間で揺動すると共に、第2ロック位置に向かって付勢された第2揺動部材(53)と、第2揺動部材(53)に対し揺動可能に取り付けられると共に、第1揺動部材(52)を第1揺動部材(52)の揺動中心軸に向かって押圧する方向に付勢された第3揺動部材(54)と、第4ロック位置と第4解除位置との間で揺動すると共に、第4ロック位置に向かって付勢された第4揺動部材(55)と、アクチュエータによる引張によって第2揺動部材(53)を第2ロック位置から第2解除位置に向けて揺動させるワイヤ(56)と、を有する。
【0009】
第3揺動部材(54)は、第2揺動部材(53)の第2ロック位置から第2解除位置への揺動時に、第1揺動部材(52)を第1揺動部材(52)の揺動中心軸に向けて押圧すると共に、第4揺動部材(55)を第4解除位置に向けて押圧する押圧部(542)を有する。
【0010】
第4揺動部材(55)は、第4揺動部材(55)の第4解除位置から第4ロック位置への揺動時に、押圧部(542)に接触することで押圧部(542)による第1揺動部材(52)の押圧を解除する複数の解除面(551A,551B,551C)と、第2揺動部材(53)が第2解除位置にあるときに押圧部(542)に接触することで第4揺動部材(55)の揺動を規制する複数のストッパ面(552A,552B,552C)と、第4揺動部材(55)の第4解除位置から第4ロック位置への揺動時に、複数の解除面(551A,551B,551C)のいずれかから離れた押圧部(542)が摺動する保持面(553)と、を有する。
【0011】
複数の解除面(551A,551B,551C)は、第4揺動部材(55)の揺動中心軸からの距離が互いに異なる。複数のストッパ面(552A,552B,552C)は、それぞれ、押圧部(542)に接触することで押圧部(542)を複数の解除面(551A,551B,551C)のいずれかの近傍に保持する。
【0012】
このような構成によれば、第2揺動部材(53)が第2解除位置から第2ロック位置に揺動する際(つまりロック動作時)に、第4揺動部材(55)のいずれかの解除面(551A,551B,551C)によって押圧部(542)による第1揺動部材(52)の押圧が解除される。これにより、第1揺動部材(52)が付勢力に基づいて第1ロック位置に向けて素早く揺動する。その結果、ワイヤ(56)を操作するアクチュエータの出力を大きくすることなく、ロック動作の速度を高められる。
【0013】
さらに、第4揺動部材(55)が複数の解除面(551A,551B,551C)を有することで、ロックユニット(5)を構成する各部材の寸法及び位置のバラツキに伴うロック動作の遅れを抑制できる。すなわち、このようなバラツキに合わせてロック解除状態で押圧部(542)が近接する解除面(551A,551B,551C)が変化するため、第4揺動部材(55)による押圧部(542)の押圧解除のタイミングのバラツキが抑制される。
【0014】
本開示の一態様では、第3揺動部材(54)は、第2揺動部材(53)に対し揺動可能に取り付けられたリンクである本体(541)を有してもよい。このような構成によれば、押圧部(542)の位置精度を高めることができる。
【0015】
本開示の一態様では、押圧部(542)は、本体(541)から本体(541)の揺動中心軸と平行な方向に突出したピンであってもよい。このような構成によれば、押圧部(542)による第1揺動部材(52)及び第4揺動部材(55)への押圧力を安定させることができる。
【0016】
本開示の一態様では、押圧部(542)の外周面において、第4揺動部材(55)に接触する接触領域(542A)の曲率半径は、他の領域の曲率半径よりも小さくてもよい。このような構成によれば、解除面(551A,551B,551C)による押圧部(542)の押圧解除速度を高められる。
【0017】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態における乗物用シートの模式的な側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の乗物用シートにおけるスライド装置の模式的な斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のスライド装置におけるロックユニットの一部を示す模式的な斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3のロックユニットの一部を示す模式的な斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3のロックユニットの模式的な斜視図である。
【
図6】
図6は、
図3のVI-VI線での模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、
図3のロックユニットの一部を示す模式的な斜視図である。
【
図8】
図8Aは、
図3のロックユニットにおける第1揺動部材の模式的な斜視図であり、
図8Bは、
図3のロックユニットにおける第3揺動部材の模式的な斜視図である。
【
図9】
図9Aは、ロック状態における第1揺動部材、第2揺動部材、第3揺動部材及び第4揺動部材を示す模式図であり、
図9Bは、解除状態における第1揺動部材、第2揺動部材、第3揺動部材及び第4揺動部材を示す模式図であり、
図9Cは、ハーフロック状態における第1揺動部材、第2揺動部材、第3揺動部材及び第4揺動部材を示す模式図である。
【
図10】
図10Aは、第2ストッパ面に押圧部が接触した状態を示す模式図であり、
図10Bは、第3ストッパ面に押圧部が接触した状態を示す模式図であり、
図10Cは、第1ストッパ面に押圧部が接触した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す乗物用シート10は、シート本体11と、スライド装置1とを備える。
【0020】
本実施形態のシート本体11は、乗用車の座席シートとして使用される。なお、以下の説明及び各図面における方向は、シート本体11を乗物(つまり乗用車)に組み付けた状態における方向を意味する。また、本実施形態では、シート幅方向は、乗物の左右方向に一致し、シート前方は、乗物の前方に一致する。
【0021】
スライド装置1は、シート本体11と共に乗物に設置され、シート本体11をシート前後方向にスライド可能に支持している。スライド装置1は、乗物のフロアFとシート本体11との間に配置される。
【0022】
図2に示すように、スライド装置1は、第1可動レール2Aと、第2可動レール2Bと、第1固定レール3Aと、第2固定レール3Bと、固定ブラケット4と、ロックユニット5とを備える。
【0023】
<可動レール>
第1可動レール2A及び第2可動レール2Bは、いわゆるアッパレールであり、固定ブラケット4を介してシート本体11に取り付けられている。
【0024】
第1可動レール2A及び第2可動レール2Bは、それぞれシート前後方向に延伸し、第1固定レール3A又は第2固定レール3Bに対しシート前後方向にスライド可能に構成されている。第1可動レール2Aと第2可動レール2Bとは、シート幅方向に互いに離れて配置されている。第1可動レール2Aは、第2可動レール2Bの右側に配置されている。
【0025】
第1可動レール2A及び第2可動レール2Bは、電動式の駆動装置によってスライドするように構成されてもよいし、ユーザの手動操作によってスライドするように構成されてもよい。
【0026】
<固定レール>
第1固定レール3A及び第2固定レール3Bは、いわゆるロアレールであり、乗物用シート10が配置された乗物のフロアFに直接又は間接的に固定されている。
【0027】
第1固定レール3A及び第2固定レール3Bは、それぞれシート前後方向に延伸し、第1可動レール2A又は第2可動レール2Bを上下方向と直交する方向(つまりシート前後方向)にスライド可能に支持している。第1固定レール3Aと第2固定レール3Bとは、シート幅方向に互いに離れて配置されている。第1固定レール3Aは、第2固定レール3Bの右側に配置されている。
【0028】
図3に示すように、第1固定レール3Aは、第1可動レール2Aのスライド方向に並んで配置された複数のロック用開口31を有する。複数のロック用開口31は、第1固定レール3Aのシート幅方向内側の側壁に設けられている。複数のロック用開口31のスライド方向の長さ、間隔、及び上下方向の位置は全て等しい。また、
図2に示すように、第2固定レール3Bも、第1固定レール3Aと同様の複数のロック用開口31を有する。
【0029】
<固定ブラケット>
固定ブラケット4は、第1可動レール2Aと、第2可動レール2Bと、ロックユニット5の一部とをシート本体11に固定する。固定ブラケット4は、例えば、シート本体11のクッションフレームに、締結によって固定される。
【0030】
<ロックユニット>
ロックユニット5は、直接、又は固定ブラケット4を介して、第1可動レール2A及び第2可動レール2Bに連結されている。ロックユニット5は、シート本体11と共にスライドする。
【0031】
ロックユニット5は、第1可動レール2Aの第1固定レール3Aに対するスライド、及び第2可動レール2Bの第2固定レール3Bに対するスライドを規制するロック状態と、第1可動レール2A及び第2可動レール2Bのスライドを規制しない解除状態とに変位する。
【0032】
図4に示すように、ロックユニット5は、第1係合部51と、第1揺動部材52と、第2揺動部材53と、第3揺動部材54と、第4揺動部材55と、ワイヤ56と、第1係合部保持ブラケット57と、揺動部材保持ブラケット58と、回転ロッド59とを有する。さらに、
図5に示すように、ロックユニット5は、第2係合部61と、第5揺動部材62と、第2係合部保持ブラケット63とを有する。
【0033】
<第1係合部>
図6に示す第1係合部51は、第1固定レール3Aに係合する係合位置と、第1固定レール3Aとの係合が解かれた解放位置とに変位する。第1係合部51は、爪部511と、受圧部512とを有する。
【0034】
第1係合部51は、上下方向に揺動するように第1係合部保持ブラケット57によって保持されている。第1係合部51の揺動中心軸は、スライド方向と平行である。なお、第1係合部保持ブラケット57は、第1可動レール2Aに固定されている。
【0035】
また、第1係合部51は、第1弾性体51Aによって係合位置に向かって(つまり
図6における反時計回りに)付勢されている。第1弾性体51Aは、第1係合部51と第1係合部保持ブラケット57とに連結されたトーションバネである。
【0036】
爪部511は、
図6に示す係合位置において、第1固定レール3Aの複数のロック用開口31のいずれかに嵌まり込む。具体的には、爪部511は、第1固定レール3Aの内側から外側に向かって、第1固定レール3Aをレール幅方向に貫通するようにロック用開口31に挿通される。これにより、第1可動レール2Aのスライドが規制される。
【0037】
受圧部512は、第1揺動部材52によって下方に押し下げられることで、第1係合部51を係合位置から解放位置へ変位させる部位である。受圧部512の押し下げによって、爪部511は右上方に変位してロック用開口31から抜け出る。第1係合部51が解放位置にあるとき、爪部511は、
図6に示される位置よりも右上方に位置する。これにより、第1可動レール2Aのスライドが許容される。
【0038】
受圧部512への押し下げ力が解除されると、第1係合部51は、第1弾性体51Aの付勢によって係合位置まで揺動する。つまり、爪部511がロック用開口31に嵌め込まれる。
【0039】
<第1揺動部材>
第1揺動部材52は、第1ロック位置から第1解除位置への揺動により、第1係合部51を係合位置から解放位置に移動させるリンク(つまり剛性部材)である。第1揺動部材52は、第1可動レール2Aよりもシート幅方向内側(つまり左側)に配置されている。第1揺動部材52は、第1本体521と、接触部522とを有する。
【0040】
図7に示すように、第1揺動部材52は、上下方向に揺動するように揺動部材保持ブラケット58によって保持されている。具体的には、第1揺動部材52は、回転ロッド59に固定されている。
【0041】
回転ロッド59は、シート幅方向と平行な中心軸を有する軸部材である。回転ロッド59は、揺動部材保持ブラケット58に軸回転可能に連結されている。第1揺動部材52は、回転ロッド59の中心軸周りに揺動する。なお、揺動部材保持ブラケット58は、固定ブラケット4に固定されている。
【0042】
また、第1揺動部材52は、
図5に示す第2弾性体52Aによって第1ロック位置に向かって付勢されている。第2弾性体52Aは、固定ブラケット4と第5揺動部材62とに連結されたテンションバネである。第5揺動部材62は、回転ロッド59に固定されている。そのため、第2弾性体52Aは、第5揺動部材62及び回転ロッド59を介して、第1揺動部材52を接触部522が上方に移動する向きに付勢している。
【0043】
図7に示すように、第1本体521は、一方の端部が回転ロッド59に連結されている。第1本体521の他方の端部には、接触部522が設けられている。接触部522は、第1本体521からシート幅方向外側に(つまり、第1可動レール2Aに向かって)突出した部位である。接触部522は、第1係合部51の受圧部512の上方に配置されている。
【0044】
接触部522は、第1揺動部材52が第1解除位置へ向けて下方に揺動する際に、第1係合部51の受圧部512に上方から接触し、受圧部512を押し下げる。
図6に示すように、第1揺動部材52が第1ロック位置にあるとき、接触部522は、受圧部512と離れた位置に保持される。
【0045】
図8Aに示すように、第1揺動部材52の第1本体521は、第3揺動部材54の押圧部542が上方から接触する切り欠き521Aを有する。切り欠き521Aは、第1揺動部材52の揺動中心軸L1と直交する仮想直線(つまり回転ロッド59の径方向)と略直交する第1面と、この仮想直線と略平行な第2面とを有する。
【0046】
<第2揺動部材>
図7に示す第2揺動部材53は、第2ロック位置と第2解除位置との間で揺動するリンクである。第2揺動部材53は、第1可動レール2Aよりもシート幅方向内側(つまり左側)に配置されている。第2揺動部材53は、第2本体531と、ワイヤ連結部532とを有する。
【0047】
第2揺動部材53は、上下方向に揺動するように揺動部材保持ブラケット58によって保持されている。具体的には、第2揺動部材53は、回転ロッド59を介して揺動部材保持ブラケット58に連結されている。
【0048】
第2揺動部材53は、回転ロッド59に対して回転可能に連結されている。そのため、第2揺動部材53は、第1揺動部材52とは独立して、回転ロッド59の中心軸周りに揺動する。
【0049】
また、第2揺動部材53は、第3弾性体53Aによって第2ロック位置に向かって付勢されている。第3弾性体53Aは、第2本体531と揺動部材保持ブラケット58とに連結されたコイルバネである。
【0050】
第2本体531は、一方の端部が回転ロッド59に対して回転可能に連結されている。第2本体531の他方の端部には、第3揺動部材54が連結されている。第3弾性体53Aは、第3揺動部材54の連結部分(つまり第1ピン54B)が上方に移動する向きに第2本体531を付勢している。
【0051】
ワイヤ連結部532は、ワイヤ56が連結される部位である。ワイヤ連結部532は、第2本体531の回転ロッド59との連結部分から上方に突出している。ワイヤ56の引張によって、ワイヤ連結部532はシート後方に移動する。ワイヤ56の引張が解除される(つまり送り戻される)と、第3弾性体53Aの付勢によって、ワイヤ連結部532はシート前方に移動する。
【0052】
<第3揺動部材>
第3揺動部材54は、第2揺動部材53に対し揺動可能に取り付けられている。第3揺動部材54は、第1可動レール2Aよりもシート幅方向内側(つまり左側)に配置されている。第3揺動部材54は、第3本体541と、押圧部542とを有する。
【0053】
第3揺動部材54は、第1ピン54Bによって、上下方向に揺動するように第2揺動部材53に連結されている。第1ピン54Bは、中心軸がシート幅方向と平行となるように第2揺動部材53に固定されている。第3揺動部材54は、第2揺動部材53と共に揺動部材保持ブラケット58に対して揺動すると共に、第2揺動部材53に対しても第1ピン54Bの中心軸周りに揺動する。
【0054】
また、第3揺動部材54は、第4弾性体54Aによって第1揺動部材52を第1揺動部材52の揺動中心軸に向かって押圧する方向に付勢されている。第4弾性体54Aは、第3本体541と第2揺動部材53とに連結されたトーションバネである。
【0055】
第3本体541は、第2揺動部材53に対し揺動可能に取り付けられたリンクである。具体的には、第3本体541は、一方の端部が第1ピン54Bに連結されている。第3本体541の他方の端部には、押圧部542が固定されている。第4弾性体54Aは、押圧部542が下方に移動する向きに第3本体541を付勢している。
【0056】
押圧部542は、第3本体541から第3本体541の揺動中心軸と平行な方向(つまりシート幅方向)に突出したピンである。押圧部542の中心軸は、第3本体541の揺動中心軸と平行である。
【0057】
押圧部542は、第2揺動部材53の第2ロック位置から第2解除位置への揺動時に、第1揺動部材52を第1揺動部材52の揺動中心軸に向けて押圧すると共に、第4揺動部材55を第4解除位置に向けて押圧する。具体的には、押圧部542は、第1揺動部材52の切り欠き521Aに引っ掛かりながら、第2揺動部材53と共に、第4揺動部材55を押圧する。
【0058】
第2揺動部材53が
図7に示す第2ロック位置にあるとき、押圧部542は、第4揺動部材55の保持面553と、第1揺動部材52の切り欠き521Aの第1面とに接触し、切り欠き521Aを押圧する。一方、第2揺動部材53が第2解除位置にあるとき、押圧部542は、第4揺動部材55の第1ストッパ面552A、第2ストッパ面552B、及び第3ストッパ面552Cのいずれかと、第1揺動部材52の切り欠き521Aとに接触する。
【0059】
図8Bに示すように、押圧部542の外周面において、接触領域542Aの曲率半径は、非接触領域542Bの曲率半径よりも小さい。接触領域542Aは、押圧部542の外周面のうち、第4揺動部材55の解除面551A,551B,551C及び保持面553に接触する領域である。
【0060】
接触領域542Aは、第4揺動部材55に加えて、第1解除位置にある第1揺動部材52の切り欠き521Aにも接触する。非接触領域542Bは、押圧部542の外周面のうち、第4揺動部材55と接触しない領域である。
【0061】
<第4揺動部材>
図7に示す第4揺動部材55は、第4ロック位置と第4解除位置との間で揺動するリンクである。第4揺動部材55は、第1可動レール2Aよりもシート幅方向内側(つまり左側)に配置されている。第4揺動部材55は、第1解除面551Aと、第2解除面551Bと、第3解除面551Cと、第1ストッパ面552Aと、第2ストッパ面552Bと、第3ストッパ面552Cと、保持面553とを有する。
【0062】
第4揺動部材55は、第2ピン55Bによって、上下方向に揺動するように揺動部材保持ブラケット58に連結されている。第2ピン55Bは、中心軸がシート幅方向と平行となるように揺動部材保持ブラケット58に固定されている。第4揺動部材55は、第2ピン55Bの中心軸周りに揺動する。
【0063】
また、第4揺動部材55は、第5弾性体55Aによって第4ロック位置に向かって付勢されている。第5弾性体55Aは、第4揺動部材55と揺動部材保持ブラケット58とに連結されたトーションバネである。
【0064】
第4揺動部材55は、一方の端部が第2ピン55Bに連結されている。第4揺動部材55の他方の端部には、解除面551A,551B,551C及びストッパ面552A,552B,552Cが階段状に設けられている。第5弾性体55Aは、解除面551A,551B,551C及びストッパ面552A,552B,552Cが上方に移動する向きに第4揺動部材55を付勢している。
【0065】
第1解除面551A、第2解除面551B、及び第3解除面551Cは、それぞれ、第4揺動部材55の第4解除位置から第4ロック位置への揺動時に、押圧部542に接触することで押圧部542による第1揺動部材52の押圧を解除する面である。
【0066】
第1解除面551A、第2解除面551B、及び第3解除面551Cは、それぞれ、第4揺動部材55の揺動中心軸と平行であり、かつ、第2ピン55Bの径方向と直交する。第1解除面551A、第2解除面551B、及び第3解除面551Cは、第4揺動部材55の揺動中心軸からの距離が互いに異なる。
【0067】
具体的には、第2解除面551Bは、第1解除面551Aよりも第4揺動部材55の揺動中心軸から離れると共に、第1解除面551Aよりも下方かつシート後方に位置する。第3解除面551Cは、第2解除面551Bよりも第4揺動部材55の揺動中心軸から離れると共に、第2解除面551Bよりも下方かつシート後方に位置する。
【0068】
ロックユニット5が解除状態にあるとき、第1解除面551A、第2解除面551B、及び第3解除面551Cのいずれか1つが、押圧部542と対向又は接触する。押圧部542と対向又は接触する解除面は、ロックユニット5を構成する各部材の寸法精度、取付精度等によって決まる。
【0069】
第1ストッパ面552A、第2ストッパ面552B、及び第3ストッパ面552Cは、第2揺動部材53が第2解除位置にあるとき(つまりロックユニット5が解除状態にあるとき)に押圧部542に接触することで第4揺動部材55の揺動を規制する面である。
【0070】
第1ストッパ面552A、第2ストッパ面552B、及び第3ストッパ面552Cは、それぞれ、第4揺動部材55の揺動中心軸と平行であり、かつ、第2ピン55Bの径方向とも平行である。
【0071】
第1ストッパ面552A、第2ストッパ面552B、及び第3ストッパ面552Cは、それぞれ、押圧部542に接触することで押圧部542を第1解除面551A、第2解除面551B、及び第3解除面551Cのいずれかの近傍に保持する。
【0072】
具体的には、第1ストッパ面552Aは、第4揺動部材55の端面において第1解除面551Aと第2解除面551Bとの間に配置され、押圧部542を第1解除面551Aの近傍に保持する。第1解除面551A及び第1ストッパ面552Aは、L字型の切り欠き面を構成する対の面である。
【0073】
第2ストッパ面552Bは、第4揺動部材55の端面において第2解除面551Bと第3解除面551Cとの間に配置され、押圧部542を第2解除面551Bの近傍に保持する。第2解除面551B及び第2ストッパ面552Bは、L字型の切り欠き面を構成する対の面である。
【0074】
第3ストッパ面552Cは、第4揺動部材55の端面において第3解除面551Cを挟んで第2解除面551Bとは反対側に配置され、押圧部542を第3解除面551Cの近傍に保持する。第3解除面551C及び第3ストッパ面552Cは、L字型の切り欠き面を構成する対の面である。
【0075】
保持面553は、第4揺動部材55の第4解除位置から第4ロック位置への揺動時に、第1解除面551A、第2解除面551B又は第3解除面551Cから離れた押圧部542が摺動する面である。
【0076】
保持面553は、第4揺動部材55の上面で構成されている。第2揺動部材53の第2解除位置から第2ロック位置への揺動時に、第1解除面551A、第2解除面551B、又は第3解除面551Cから離れた押圧部542は、保持面553上を第4揺動部材55の揺動中心軸に近づく方向(つまりシート前方)に移動する。
【0077】
第2揺動部材53の第2ロック位置から第2解除位置への揺動時、押圧部542は、保持面553を下方に押しながら、保持面553上を第4揺動部材55の揺動中心軸から離れる方向(つまりシート後方)に移動する。
【0078】
<ワイヤ>
ワイヤ56は、スライド装置1が備えるアクチュエータ(図示省略)による引張によって第2揺動部材53を第2ロック位置から第2解除位置に向けて揺動させる。
【0079】
ワイヤ56の一端は、第2揺動部材53のワイヤ連結部532に連結されている。ワイヤ56の他端(図示省略)は、アクチュエータに連結されている。ワイヤ56は、第3弾性体53Aによる付勢力よりも大きい引張力を第2揺動部材53に伝達することで、第2揺動部材53を第2解除位置に向けて揺動させる。
【0080】
アクチュエータによるワイヤ56の引張力が解除されると、付勢力によって第2揺動部材53は第2ロック位置に復帰する。第2揺動部材53の復帰速度は、アクチュエータによるワイヤ56の送り戻し速度に追従する。
【0081】
<係合保持ブラケット>
図4に示す第1係合部保持ブラケット57は、第1可動レール2Aに取り付けられると共に、第1係合部51及び第1弾性体51Aを保持している。
【0082】
<揺動部材保持ブラケット>
揺動部材保持ブラケット58は、第1揺動部材52、第2揺動部材53及び第4揺動部材55をそれぞれ揺動可能に保持している。
【0083】
図3に示すように、揺動部材保持ブラケット58は、第1ストッパ581と、第2ストッパ582とを有する。
【0084】
第1ストッパ581は、第2揺動部材53に接触することで、第2揺動部材53が第2解除位置を越えて揺動することを規制すると共に、第4揺動部材55に接触することで、第4揺動部材55が第4ロック位置を越えて揺動することを規制する。第2ストッパ582は、第1揺動部材52の接触部522に接触することで、第1揺動部材52が第1ロック位置を越えて揺動することを規制する。
【0085】
<第2係合部>
図5に示す第2係合部61は、第2固定レール3Bに係合する係合位置と、第2固定レール3Bとの係合が解かれた解放位置とに変位する。第2係合部61は、係合位置において、第2固定レール3Bの複数のロック用開口31のいずれかに嵌まり込む。
【0086】
第2係合部61は、上下方向に揺動するように第2係合部保持ブラケット63によって保持されている。第2係合部61の揺動中心軸は、スライド方向と平行である。なお、第2係合部保持ブラケット63は、第2可動レール2Bに固定されている。
【0087】
また、第2係合部61は、第6弾性体61Aによって係合位置に向かって付勢されている。第6弾性体61Aは、第2係合部61と第2係合部保持ブラケット63とに連結されたトーションバネである。
【0088】
<第5揺動部材>
第5揺動部材62は、自身の揺動により、第2係合部61を係合位置から解放位置に移動させる。
【0089】
第5揺動部材62は、回転ロッド59に固定されている。そのため、第5揺動部材62は、第1揺動部材52と同期して揺動する。第5揺動部材62は、第1揺動部材52が第1ロック位置から第1解除位置へ揺動する際に、第1揺動部材52と同じ方向に揺動することで、第2係合部61への接触により第2係合部61を解放位置に移動させる。
【0090】
したがって、ワイヤ56の引張によって第2揺動部材53が第2解除位置へ揺動する場合、第1係合部51と第2係合部61とが同時に解放位置に移動する。また、第2揺動部材53が第2ロック位置に復帰する場合、第1係合部51と第2係合部61とが同時に係合位置に移動する。
【0091】
<ロックユニットの動作>
図9Aに示すロックユニット5のロック状態では、第1揺動部材52が第1ロック位置にあることで、第1係合部51が第1固定レール3Aに係合している。ロック状態では、ワイヤ56には、第2揺動部材53の付勢力以上の引張力は加えられておらず、第2揺動部材53は第2ロック位置に存在する。
【0092】
また、ロック状態では、第4揺動部材55は、第4ロック位置に存在し、第3揺動部材54は、押圧部542が第4揺動部材55の保持面553に接触した状態で保持されている。
【0093】
ロック状態においてアクチュエータによってワイヤ56に引張力が付されると、第2揺動部材53が第2解除位置に向けて
図9Aにおける時計回りに(つまり第2揺動部材53の後端部が下方に移動する向きに)揺動する。
【0094】
第2揺動部材53の揺動に伴って、
図9Bに示すように、第3揺動部材54は、押圧部542が第4揺動部材55の保持面553から離れて、第1ストッパ面552A、第2ストッパ面552B、及び第3ストッパ面552Cのいずれか(
図9Bでは第2ストッパ面552B)に接触するように変位する。このとき、押圧部542が第1揺動部材52の切り欠き521Aに引っ掛かり、第2揺動部材53と共に、第1揺動部材52を下方に押圧する。
【0095】
第1揺動部材52は、押圧部542に押圧されることで第1解除位置に移動し、接触部522によって第1係合部51の受圧部512を押し下げる。
図9Bのロックユニット5の解除状態では、第1係合部51は解放位置に保持される。
【0096】
解除状態においてアクチュエータによってワイヤ56が送り戻されると、付勢力によって第2揺動部材53が第2ロック位置に向けて
図9Bにおける反時計回りに(つまり第2揺動部材53の後端部が上方に移動する向きに)揺動する。第2揺動部材53の揺動に伴って、第3揺動部材54の押圧部542が第1解除面551A、第2解除面551B、及び第3解除面551Cのいずれか(
図9Bでは第2解除面551B)に接触する。
【0097】
押圧部542が第1解除面551A、第2解除面551B、及び第3解除面551Cのいずれかに接触した状態で、第4揺動部材55は付勢力によって第4ロック位置に向かって(つまり
図9Bにおける反時計回りに)揺動する。
【0098】
第2揺動部材53と第4揺動部材55との揺動軌跡の差によって、第1揺動部材52の切り欠き521Aに引っ掛かっていた押圧部542は、第1解除面551A、第2解除面551B、又は第3解除面551Cに押されて、第2揺動部材53に対し
図9Bにおける時計回りに(つまり押圧部542がシート後方に移動する向きに)揺動する。その結果、押圧部542が第1揺動部材52の切り欠き521Aから隔離される。
【0099】
押圧部542による押圧が解除された第1揺動部材52は、付勢力によって、第2揺動部材53とは独立して、
図9Cに破線で示した位置を通過して、実線で示した中間位置まで
図9Cにおける反時計回りに(つまり接触部522が上方に移動する向きに)揺動する。中間位置は、第1解除位置と第1ロック位置との間に存在する。また、中間位置において、第1揺動部材52の接触部522が第2揺動部材53に下方から接触する。
【0100】
第1揺動部材52が中間位置にあるとき、第1係合部51は、複数のロック用開口31のいずれかに部分的に進入した状態(つまりハーフロック状態)となる。ハーフロック状態は、爪部511の先端部が複数のロック用開口31のいずれかに進入した状態である。
【0101】
第3揺動部材54は、押圧部542が第1解除面551A、第2解除面551B、又は第3解除面551Cに押されることで、第4揺動部材55によって第2揺動部材53に対し
図9Cにおける時計回りに揺動する。第4揺動部材55は、付勢力と押圧部542とによって、第1ストッパ581に接触する位置まで
図9Cにおける反時計回りに(つまり解除面551A,551B,551Cが上方に移動する向きに)揺動する。押圧部542は、第1揺動部材52の切り欠き521Aから外れたのち、第4揺動部材55の保持面553に接触する。
【0102】
中間位置から第1ロック位置へ揺動する間、第1揺動部材52は、第2揺動部材53に下方から接触した状態で第2揺動部材53と共に揺動する。この間の第1揺動部材52の揺動速度は、第2揺動部材53の揺動速度と同じであり、ワイヤ56の送り戻し速度に依存する。第1揺動部材52は、付勢力によって、揺動部材保持ブラケット58の第2ストッパ582に接触する位置まで揺動する。
【0103】
このように、第1揺動部材52は、第2揺動部材53の第2解除位置から第2ロック位置への揺動時に、押圧部542による押圧の解除に伴って
図9Bの第1解除位置から
図9Cの中間位置に揺動した後、第2揺動部材53の揺動に合わせて中間位置から
図9Aの第1ロック位置まで揺動する。第1揺動部材52が中間位置から第1ロック位置へ揺動することで、爪部511が完全にロック用開口31に嵌まり込む。
【0104】
中間位置から第1ロック位置までの第1揺動部材52の揺動速度は、第1解除位置から中間位置までの第1揺動部材52の揺動速度よりも小さい。つまり、ハーフロック状態からロック状態までの爪部511の移動速度は、ロック解除状態からハーフロック解除状態までの爪部511の移動速度よりも小さい。そのため、この間の爪部511と第1固定レール3Aとの干渉による衝撃が緩和され、ロック時に発生する音が低減される。
【0105】
図10Aは、
図9Bの解除状態における押圧部542周辺の拡大図である。
図10Aでは、押圧部542は、第2ストッパ面552Bに接触すると共に、第2解除面551Bに近接している。解除状態からロック状態への移行時に、押圧部542は、第2解除面551Bに接触する。
【0106】
ロックユニット5を構成する部材の位置のバラツキによって、押圧部542が第4揺動部材55に対し、
図10Aの位置(つまり設計位置)よりも相対的にシート後方にずれて配置されることがある。
【0107】
この場合、
図10Bに示すように、解除状態において、押圧部542は、第3ストッパ面552Cに接触すると共に、第3解除面551Cに近接している。解除状態からロック状態への移行時に、押圧部542は、第3解除面551Cに接触する。
【0108】
また、ロックユニット5を構成する部材の位置のバラツキによって、押圧部542が第4揺動部材55に対し、
図10Aの位置よりも相対的にシート前方にずれて配置されることもある。
【0109】
この場合、
図10Cに示すように、解除状態において、押圧部542は、第1ストッパ面552Aに接触すると共に、第1解除面551Aに近接している。解除状態からロック状態への移行時に、押圧部542は、第1解除面551Aに接触する。
【0110】
図10Bにおける押圧部542と第3解除面551Cとの距離、及び、
図10Cにおける押圧部542と第1解除面551Aとの距離は、
図10Aにおける押圧部542と第2解除面551Bとの距離と略等しい。
【0111】
このように、第4揺動部材55が複数の解除面551A,551B,551Cを有することで、押圧部542と最近接する解除面551A,551B,551Cまでの距離(つまり押圧部542の押圧が解除されるまでの時間)のバラツキが低減される。
【0112】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)第2揺動部材53が第2解除位置から第2ロック位置に揺動する際(つまりロック動作時)に、第4揺動部材55のいずれかの解除面551A,551B,551Cによって押圧部542による第1揺動部材52の押圧が解除される。これにより、第1揺動部材52が付勢力に基づいて第1ロック位置に向けて素早く揺動する。その結果、ワイヤ56を操作するアクチュエータの出力を大きくすることなく、ロック動作の速度を高められる。
【0113】
(1b)第4揺動部材55が複数の解除面551A,551B,551Cを有することで、ロックユニット5を構成する各部材の寸法及び位置のバラツキに伴うロック動作の遅れを抑制できる。すなわち、このようなバラツキに合わせてロック解除状態で押圧部542が近接する解除面551A,551B,551Cが変化するため、第4揺動部材55による押圧部542の押圧解除のタイミングのバラツキが抑制される。
【0114】
(1c)第3揺動部材54がリンクである第3本体541を有することで、押圧部542の位置精度を高めることができる。
【0115】
(1d)押圧部542が第3本体541の揺動中心軸と平行な方向に突出したピンであることで、押圧部542による第1揺動部材52及び第4揺動部材55への押圧力を安定させることができる。
【0116】
(1e)押圧部542の接触領域542Aの曲率半径が他の領域の曲率半径よりも小さいことで、解除面551A,551B,551Cによる押圧部542の押圧解除速度を高められる。
【0117】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0118】
(2a)上記実施形態のスライド装置において、解除面及びストッパ面の数は3に限定されない。第4揺動部材は、2又は4以上の解除面及びストッパ面(つまり、2又は4以上の段差)を有してもよい。
【0119】
(2b)上記実施形態のスライド装置において、押圧部は必ずしもピンでなくてもよい。例えば、押圧部は、板状の部材で構成されていてもよい。また、第3揺動部材は必ずしもリンクでなくてもよい。例えば、第3揺動部材は、板バネ等の弾性体で構成されてもよい。第3揺動部材が弾性体で構成される場合、第3揺動部材は自身の弾性力によって付勢される。
【0120】
(2c)上記実施形態のスライド装置において、ロックユニットの係合部と固定レールとの係合手段は、上述のものに限定されない。つまり、係合部が固定レールに係合できれば、係合部は必ずしも爪部を有しなくてもよく、固定レールは必ずしも複数のロック用開口を有しなくてもよい。
【0121】
(2d)上記実施形態の乗物用シートは、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用することができる。
【0122】
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0123】
1…スライド装置、2A,2B…可動レール、3A,3B…固定レール、
4…固定ブラケット、5…ロックユニット、10…乗物用シート、11…シート本体、
31…ロック用開口、51…第1係合部、52…第1揺動部材、53…第2揺動部材、
54…第3揺動部材、55…第4揺動部材、56…ワイヤ、
57…第1係合部保持ブラケット、58…揺動部材保持ブラケット、
59…回転ロッド、61…第2係合部、62…第5揺動部材、
521…第1本体、521A…切り欠き、522…接触部、531…第2本体、
532…ワイヤ連結部、541…第3本体、542…押圧部、542A…接触領域、
542B…非接触領域、551A,551B,551C…解除面、
552A,552B,552C…ストッパ面、553…保持面。