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特開2023-156080リチウムイオン電池用正極及びリチウムイオン電池
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  • 特開-リチウムイオン電池用正極及びリチウムイオン電池 図1
  • 特開-リチウムイオン電池用正極及びリチウムイオン電池 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156080
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用正極及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20231017BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231017BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/36 C
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065726
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】南 和也
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017EE07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA20
5H050CA29
5H050CB09
5H050DA02
5H050HA01
(57)【要約】
【課題】 不可逆容量を踏まえて、充分な放電容量を維持できるだけのリチウムイオンを供給でき、かつ副反応がほとんどないリチウムイオン電池用正極を提供する。
【解決手段】 樹脂集電体と、正極活物質と、リチウム金属とを有することを特徴とするリチウムイオン電池用正極。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂集電体と、正極活物質と、リチウム金属とを有することを特徴とするリチウムイオン電池用正極。
【請求項2】
前記リチウム金属が、粒状又は粉末状である請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極。
【請求項3】
前記リチウム金属の含有量が、前記正極活物質の重量を基準として0.7~1.2重量%である請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用正極。
【請求項4】
前記リチウム金属が、前記正極活物質を含む正極活物質層と前記樹脂集電体との界面に配される請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用正極。
【請求項5】
前記正極活物質が、活物質粒子が有する表面の少なくとも一部を高分子化合物と導電性フィラーとを含む被覆層で被覆してなる被覆正極活物質粒子である請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用正極。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用正極を備えるリチウムイオン電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用正極及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、高出力密度が達成できる二次電池として、近年様々な用途に多用されており、安価で、より高性能のリチウムイオン電池を開発するために種々の検討がなされている。
【0003】
リチウムイオン電池において、充電時には、正極活物質からリチウムイオンが引き抜かれ、負極活物質に吸蔵される。一方、放電時には、負極活物質からリチウムイオンが放出され、正極活物質に移動する。このとき、一定の電気量(電気エネルギー)を外部に取り出すことができる。
【0004】
リチウムイオン電池の多くは、初回の充放電時の不可逆容量が大きいという問題がある。ここで、不可逆容量とは、充電容量(充電に要した電気量)と放電容量(放電に要した電気量)との差である。つまり、不可逆容量が大きいことは、充電に見合った電気量を放電することができないことを意味する。不可逆容量の原因としては、主に、初回の充電時に負極に吸蔵されるが放電時に放出されないリチウムイオンの存在、及び、初回の充電時に電解液が分解する際に費やされる電気量の2つが考えられている。
【0005】
不可逆容量の問題を解決するため、特許文献1には、負極活物質にリチウム等をプレドープすることで不可逆容量を補填する技術が開示されている。また、特許文献2には、正極に炭酸リチウム等のリチウム化合物を含有させることで、初回充電時に正極から供給されるリチウムイオン量を増やす技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】再表2015-137041号公報
【特許文献2】特開2018-056021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1又は2に記載の発明で、二次電池の不可逆容量をある程度小さくすることはできる。しかし、特許文献1に記載の発明のように負極活物質に直接リチウム等をドープすると、初回充電前に自発的にリチウムイオンの吸蔵が始まるため反応速度の制御ができず、負極活物質表面に均質な被膜(SEI:Solid Electrolyte Interface、SEI表面被膜ともいう)を形成することができない。このため、電池の寿命や内部抵抗に悪影響がでる恐れがあった。また、特許文献2に記載の発明では、充放電時に残存リチウム化合物と電解液とが反応してガスが発生することがあり、電池容量の低下が生じる恐れがあった。
【0008】
本発明は、上記状況を踏まえてなされたものであり、不可逆容量を踏まえて、充分な放電容量を維持できるだけのリチウムイオンを供給でき、かつ副反応がほとんどないリチウムイオン電池用正極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、樹脂集電体と、正極活物質と、リチウム金属とを有することを特徴とするリチウムイオン電池用正極;及び上記リチウムイオン電池用正極を備えるリチウムイオン電池である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、充分な放電容量を維持できるだけのリチウムイオンを供給でき、かつ副反応がほとんどないリチウムイオン電池用正極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明のリチウムイオン電池の一実施形態を示す模式断面図である。
図2図2は、本発明のリチウムイオン電池の別の実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、リチウムイオン電池用正極、及びリチウムイオン電池に関する。
なお、本明細書において、リチウムイオン電池と記載する場合、リチウムイオン二次電池も含む概念とする。
【0013】
本発明のリチウムイオン電池用正極は、樹脂集電体と、正極活物質と、リチウム金属とを有する。本発明のリチウムイオン電池用正極は、リチウムイオン電池の不可逆容量(充電容量と放電容量との差)を小さくするため、リチウム金属を有することを特徴とする。
【0014】
本発明のリチウムイオン電池用正極に含まれるリチウム金属は、リチウムの純度が高いほど好ましいが、不純物を含んでいてもよい。例えば、本発明で用いるリチウム金属の純度は、99重量%以上が好ましく、99.9重量%以上がより好ましい。上記不純物としては、例えば、窒化リチウム等が挙げられる。
【0015】
本発明で用いるリチウム金属の形状は特に限定されず、例えば、板状、棒状、針状、粒状、粉末状等が挙げられる。樹脂集電体やセパレータ等を傷つけにくいことから、リチウム金属は粒状又は粉末状が好ましく、丸みを帯びた粒状又は粉末状であることがより好ましい。
リチウム金属が粒状又は粉末状である場合、その粒子径は特に限定されず、例えば2mm以下である。リチウム金属を均一に分散させることが容易であることから、リチウム金属の粒子径は小さいほど好ましい。
【0016】
本発明のリチウムイオン電池用正極は、樹脂集電体の一方の主面に正極活物質を含む正極活物質層が形成されている。本発明のリチウムイオン電池は、上記正極と、負極集電体の一方の主面に負極活物質層が形成された負極とが、平板状のセパレータを介して積層された構造を有している。本発明のリチウムイオン電池用正極において、リチウム金属が担持される箇所は特に限定されないが、例えば、正極活物質層と樹脂集電体との界面、正極活物質層とセパレータとの界面等が挙げられる。リチウムイオン電池の内部抵抗がより低くなることから、リチウム金属は、正極活物質層と樹脂集電体との界面に担持されることが好ましい。なお、リチウム金属は、正極活物質層と樹脂集電体との界面、正極活物質層とセパレータとの界面を完全に覆っている必要はない。
【0017】
本発明のリチウムイオン電池用正極の上記リチウム金属の含有量は特に限定されず、例えば上記正極活物質の重量を基準として0.1~3.0重量%が好ましく、0.3~2.1重量%がより好ましく、0.7~1.2重量%が更に好ましい。リチウム金属の含有量が上記範囲であると、リチウム金属を含まない場合と比較して、初回充電容量、初回放電容量及び初回クーロン効率が高くなる。
【0018】
本発明のリチウムイオン電池用正極は、正極活物質を有する。
正極活物質としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiAlMnO、LiMnO及びLiMn等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO、LiNi1-xCo、LiMn1-yCo、LiNi1/3Co1/3Al1/3及びLiNi0.8Co0.15Al0.05)及び金属元素が3種以上である複合酸化物[例えばLiMM’M’’(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO、LiCoPO、LiMnPO及びLiNiPO)、遷移金属酸化物(例えばMnO及びV)、遷移金属硫化物(例えばMoS及びTiS)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0019】
正極活物質の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01~100μmであることが好ましく、0.1~35μmであることがより好ましく、2~30μmであることが更に好ましい。
本明細書において体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
【0020】
正極活物質は、活物質粒子が有する表面の少なくとも一部を高分子化合物と導電性フィラーとを含む被覆層で被覆してなる被覆正極活物質粒子であることが好ましい。活物質粒子は、正極活物質として上述した物質の粒子であり、被覆層で被覆されていないものを指す。活物質粒子の周囲が高分子化合物で被覆されていると、電極の体積変化が緩和され、電極の膨張を抑制することができる。
【0021】
高分子化合物としては、例えば、アクリルモノマー(a)を必須構成単量体とする重合体を含む樹脂であることが好ましい。
具体的には、被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、アクリル酸(a0)を含む単量体組成物の重合体であることが好ましい。上記単量体組成物において、アクリル酸(a0)の含有量は、単量体全体の重量を基準として90重量%を超え、98重量%以下であることが好ましい。被覆層の柔軟性の観点から、アクリル酸(a0)の含有量は、単量体全体の重量を基準として93.0~97.5重量%であることがより好ましく、95.0~97.0重量%であることが更に好ましい。
【0022】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、アクリル酸(a0)以外のカルボキシル基又は酸無水物基を有するモノマー(a1)を含有してもよい。
【0023】
アクリル酸(a0)以外のカルボキシル基又は酸無水物基を有するモノマー(a1)としては、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸等の炭素数3~15のモノカルボン酸;(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の炭素数4~24のジカルボン酸;アコニット酸等の炭素数6~24の3価~4価又はそれ以上の価数のポリカルボン酸等が挙げられる。
【0024】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、下記一般式(1)で表されるモノマー(a2)を含有してもよい。
CH=C(R)COOR (1)
[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数4~12の直鎖又は炭素数3~36の分岐アルキル基である。]
【0025】
上記一般式(1)で表されるモノマー(a2)において、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rはメチル基であることが好ましい。
は、炭素数4~12の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は、炭素数13~36の分岐アルキル基であることが好ましい。
モノマー(a2)としては、Rが炭素数4~12の直鎖又は分岐アルキル基であるエステル化合物(a21)、及び、Rが炭素数13~36の分岐アルキル基であるエステル化合物(a22)を挙げることができる。
【0026】
が炭素数4~12の直鎖又は分岐アルキル基であるエステル化合物(a21)において、炭素数4~12の直鎖アルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が挙げられる。
炭素数4~12の分岐アルキル基としては、1-メチルプロピル基(sec-ブチル基)、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基(tert-ブチル基)、1-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基(ネオペンチル基)、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,2-ジメチルヘキシル基、1,3-ジメチルヘキシル基、1,4-ジメチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、4-メチルオクチル基、5-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、7-メチルオクチル基、1,1-ジメチルヘプチル基、1,2-ジメチルヘプチル基、1,3-ジメチルヘプチル基、1,4-ジメチルヘプチル基、1,5-ジメチルヘプチル基、1,6-ジメチルヘプチル基、1-エチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、3-メチルノニル基、4-メチルノニル基、5-メチルノニル基、6-メチルノニル基、7-メチルノニル基、8-メチルノニル基、1,1-ジメチルオクチル基、1,2-ジメチルオクチル基、1,3-ジメチルオクチル基、1,4-ジメチルオクチル基、1,5-ジメチルオクチル基、1,6-ジメチルオクチル基、1,7-ジメチルオクチル基、1-エチルオクチル基、2-エチルオクチル基、1-メチルデシル基、2-メチルデシル基、3-メチルデシル基、4-メチルデシル基、5-メチルデシル基、6-メチルデシル基、7-メチルデシル基、8-メチルデシル基、9-メチルデシル基、1,1-ジメチルノニル基、1,2-ジメチルノニル基、1,3-ジメチルノニル基、1,4-ジメチルノニル基、1,5-ジメチルノニル基、1,6-ジメチルノニル基、1,7-ジメチルノニル基、1,8-ジメチルノニル基、1-エチルノニル基、2-エチルノニル基、1-メチルウンデシル基、2-メチルウンデシル基、3-メチルウンデシル基、4-メチルウンデシル基、5-メチルウンデシル基、6-メチルウンデシル基、7-メチルウンデシル基、8-メチルウンデシル基、9-メチルウンデシル基、10-メチルウンデシル基、1,1-ジメチルデシル基、1,2-ジメチルデシル基、1,3-ジメチルデシル基、1,4-ジメチルデシル基、1,5-ジメチルデシル基、1,6-ジメチルデシル基、1,7-ジメチルデシル基、1,8-ジメチルデシル基、1,9-ジメチルデシル基、1-エチルデシル基、2-エチルデシル基等が挙げられる。これらの中では、特に、2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0027】
が炭素数13~36の分岐アルキル基であるエステル化合物(a22)において、炭素数13~36の分岐アルキル基としては、1-アルキルアルキル基[1-メチルドデシル基、1-ブチルエイコシル基、1-ヘキシルオクタデシル基、1-オクチルヘキサデシル基、1-デシルテトラデシル基、1-ウンデシルトリデシル基等]、2-アルキルアルキル基[2-メチルドデシル基、2-ヘキシルオクタデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、2-デシルテトラデシル基、2-ウンデシルトリデシル基、2-ドデシルヘキサデシル基、2-トリデシルペンタデシル基、2-デシルオクタデシル基、2-テトラデシルオクタデシル基、2-ヘキサデシルオクタデシル基、2-テトラデシルエイコシル基、2-ヘキサデシルエイコシル基等]、3~34-アルキルアルキル基(3-アルキルアルキル基、4-アルキルアルキル基、5-アルキルアルキル基、32-アルキルアルキル基、33-アルキルアルキル基及び34-アルキルアルキル基等)、並びに、プロピレンオリゴマー(7~11量体)、エチレン/プロピレン(モル比16/1~1/11)オリゴマー、イソブチレンオリゴマー(7~8量体)及びα-オレフィン(炭素数5~10)オリゴマー(4~8量体)等から得られるオキソアルコールから水酸基を除いた残基のような1又はそれ以上の分岐アルキル基を含有する混合アルキル基等が挙げられる。
【0028】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物(a3)を含有してもよい。
エステル化合物(a3)を構成する炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール及び2-プロパノール等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0029】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)のうちの少なくとも1つとを含む単量体組成物の重合体であることが好ましく、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、エステル化合物(a21)及びエステル化合物(a3)のうちの少なくとも1つとを含む単量体組成物の重合体であることがより好ましく、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)のうちのいずれか1つとを含む単量体組成物の重合体であることが更に好ましく、アクリル酸(a0)と、モノマー(a1)、エステル化合物(a21)及びエステル化合物(a3)のうちのいずれか1つとを含む単量体組成物の重合体であることが最も好ましい。
被覆層を構成する高分子化合物としては、例えば、モノマー(a1)としてマレイン酸を用いた、アクリル酸及びマレイン酸の共重合体、モノマー(a2)としてメタクリル酸2-エチルヘキシルを用いた、アクリル酸及びメタクリル酸2-エチルヘキシルの共重合体、エステル化合物(a3)としてメタクリル酸メチルを用いた、アクリル酸及びメタクリル酸メチルの共重合体等が挙げられる。
【0030】
モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)の合計含有量は、活物質粒子の体積変化抑制等の観点から、単量体全体の重量を基準として2.0~9.9重量%であることが好ましく、2.5~7.0重量%であることがより好ましい。
【0031】
被覆層を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)として、重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体の塩(a4)を含有しないことが好ましい。
【0032】
重合性不飽和二重結合を有する構造としてはビニル基、アリル基、スチレニル基及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
アニオン性基としては、スルホン酸基及びカルボキシル基等が挙げられる。
重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体はこれらの組み合わせにより得られる化合物であり、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸及び(メタ)アクリル酸が挙げられる。
なお、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
アニオン性単量体の塩(a4)を構成するカチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0033】
また、被覆層を構成する高分子化合物は、物性を損なわない範囲で、アクリルモノマー(a)として、アクリル酸(a0)、モノマー(a1)、モノマー(a2)及びエステル化合物(a3)と共重合可能であるラジカル重合性モノマー(a5)を含有してもよい。
ラジカル重合性モノマー(a5)としては、活性水素を含有しないモノマーが好ましく、下記(a51)~(a58)のモノマーを用いることができる。
【0034】
(a51)炭素数13~20の直鎖脂肪族モノオール、炭素数5~20の脂環式モノオール及び炭素数7~20の芳香脂肪族モノオールのうち少なくとも1つのモノオールと(メタ)アクリル酸から形成されるハイドロカルビル(メタ)アクリレート
上記モノオールとしては、(i)直鎖脂肪族モノオール(トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール等)、(ii)脂環式モノオール(シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘプチルアルコール、シクロオクチルアルコール等)、(iii)芳香脂肪族モノオール(ベンジルアルコール等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0035】
(a52)ポリ(n=2~30)オキシアルキレン(炭素数2~4)アルキル(炭素数1~18)エーテル(メタ)アクリレート[メタノールのエチレンオキサイド(以下EOと略記)10モル付加物(メタ)アクリレート、メタノールのプロピレンオキサイド(以下POと略記)10モル付加物(メタ)アクリレート等]
【0036】
(a53)窒素含有ビニル化合物
(a53-1)アミド基含有ビニル化合物
(i)炭素数3~30の(メタ)アクリルアミド化合物、例えばN,N-ジアルキル(炭素数1~6)又はジアラルキル(炭素数7~15)(メタ)アクリルアミド(N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジベンジルアクリルアミド等)、ジアセトンアクリルアミド
(ii)上記(メタ)アクリルアミド化合物を除く、炭素数4~20のアミド基含有ビニル化合物、例えばN-メチル-N-ビニルアセトアミド、環状アミド[ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えば、N-ビニルピロリドン等)]
【0037】
(a53-2)(メタ)アクリレート化合物
(i)ジアルキル(炭素数1~4)アミノアルキル(炭素数1~4)(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]
(ii)4級アンモニウム基含有(メタ)アクリレート{3級アミノ基含有(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]の4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等}
【0038】
(a53-3)複素環含有ビニル化合物
ピリジン化合物(炭素数7~14、例えば2-又は4-ビニルピリジン)、イミダゾール化合物(炭素数5~12、例えばN-ビニルイミダゾール)、ピロール化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニルピロール)、ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニル-2-ピロリドン)
【0039】
(a53-4)ニトリル基含有ビニル化合物
炭素数3~15のニトリル基含有ビニル化合物、例えば(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアルキル(炭素数1~4)アクリレート
【0040】
(a53-5)その他の窒素含有ビニル化合物
ニトロ基含有ビニル化合物(炭素数8~16、例えばニトロスチレン)等
【0041】
(a54)ビニル炭化水素
(a54-1)脂肪族ビニル炭化水素
炭素数2~18又はそれ以上のオレフィン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン等)、炭素数4~10又はそれ以上のジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等)等
【0042】
(a54-2)脂環式ビニル炭化水素
炭素数4~18又はそれ以上の環状不飽和化合物、例えばシクロアルケン(例えばシクロヘキセン)、(ジ)シクロアルカジエン[例えば(ジ)シクロペンタジエン]、テルペン(例えばピネン及びリモネン)、インデン
【0043】
(a54-3)芳香族ビニル炭化水素
炭素数8~20又はそれ以上の芳香族不飽和化合物、例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン
【0044】
(a55)ビニルエステル
脂肪族ビニルエステル[炭素数4~15、例えば脂肪族カルボン酸(モノ-又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメトキシアセテート)]
芳香族ビニルエステル[炭素数9~20、例えば芳香族カルボン酸(モノ-又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えばビニルベンゾエート、ジアリルフタレート、メチル-4-ビニルベンゾエート)、脂肪族カルボン酸の芳香環含有エステル(例えばアセトキシスチレン)]
【0045】
(a56)ビニルエーテル
脂肪族ビニルエーテル[炭素数3~15、例えばビニルアルキル(炭素数1~10)エーテル(ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル2-エチルヘキシルエーテル等)、ビニルアルコキシ(炭素数1~6)アルキル(炭素数1~4)エーテル(ビニル-2-メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、3,4-ジヒドロ-1,2-ピラン、2-ブトキシ-2’-ビニロキシジエチルエーテル、ビニル-2-エチルメルカプトエチルエーテル等)、ポリ(2~4)(メタ)アリロキシアルカン(炭素数2~6)(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等)]、芳香族ビニルエーテル(炭素数8~20、例えばビニルフェニルエーテル、フェノキシスチレン)
【0046】
(a57)ビニルケトン
脂肪族ビニルケトン(炭素数4~25、例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン)、芳香族ビニルケトン(炭素数9~21、例えばビニルフェニルケトン)
【0047】
(a58)不飽和ジカルボン酸ジエステル
炭素数4~34の不飽和ジカルボン酸ジエステル、例えばジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分岐鎖又は脂環式の基)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分岐鎖又は脂環式の基)
【0048】
ラジカル重合性モノマー(a5)を含有する場合、その含有量は、単量体全体の重量を基準として0.1~3.0重量%であることが好ましい。
【0049】
被覆層を構成する高分子化合物の重量平均分子量の好ましい下限は3,000、より好ましい下限は5,000、更に好ましい下限は7,000である。一方、上記高分子化合物の重量平均分子量の好ましい上限は100,000、より好ましい上限は70,000である。
【0050】
被覆層を構成する高分子化合物の重量平均分子量は、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記)測定により求めることができる。
装置:Alliance GPC V2000(Waters社製)
溶媒:オルトジクロロベンゼン、DMF、THF
標準物質:ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED-B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
カラム温度:135℃
【0051】
被覆層を構成する高分子化合物は、公知の重合開始剤{アゾ系開始剤[2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等]、パーオキサイド系開始剤(ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等)等}を使用して公知の重合方法(塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等)により製造することができる。
重合開始剤の使用量は、重量平均分子量を好ましい範囲に調整する等の観点から、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%、更に好ましくは0.1~1.5重量%であり、重合温度及び重合時間は重合開始剤の種類等に応じて調整されるが、重合温度は好ましくは-5~150℃、(より好ましくは30~120℃)、反応時間は好ましくは0.1~50時間(より好ましくは2~24時間)で行われる。
【0052】
溶液重合の場合に使用される溶媒としては、例えばエステル(炭素数2~8、例えば酢酸エチル及び酢酸ブチル)、アルコール(炭素数1~8、例えばメタノール、エタノール及びオクタノール)、炭化水素(炭素数4~8、例えばn-ブタン、シクロヘキサン及びトルエン)、アミド(例えばN,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する))及びケトン(炭素数3~9、例えばメチルエチルケトン)が挙げられ、重量平均分子量を好ましい範囲に調整する等の観点から、その使用量はモノマーの合計重量に基づいて好ましくは5~900重量%、より好ましくは10~400重量%、更に好ましくは30~300重量%であり、モノマー濃度としては、好ましくは10~95重量%、より好ましくは20~90重量%、更に好ましくは30~80重量%である。
【0053】
乳化重合及び懸濁重合における分散媒としては、水、アルコール(例えばエタノール)、エステル(例えばプロピオン酸エチル)、軽ナフサ等が挙げられ、乳化剤としては、高級脂肪酸(炭素数10~24)金属塩(例えばオレイン酸ナトリウム及びステアリン酸ナトリウム)、高級アルコール(炭素数10~24)硫酸エステル金属塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、エトキシ化テトラメチルデシンジオール、メタクリル酸スルホエチルナトリウム、メタクリル酸ジメチルアミノメチル等が挙げられる。更に安定剤としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を加えてもよい。
溶液又は分散液のモノマー濃度は好ましくは5~95重量%、より好ましくは10~90重量%、更に好ましくは15~85重量%であり、重合開始剤の使用量は、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%である。
重合に際しては、公知の連鎖移動剤、例えばメルカプト化合物(ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン等)及び/又はハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル等)を使用することができる。
【0054】
被覆層を構成する高分子化合物は、該高分子化合物をカルボキシル基と反応する反応性官能基を有する架橋剤(A’){好ましくはポリエポキシ化合物(a’1)[ポリグリシジルエーテル(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル及びグリセリントリグリシジルエーテル等)及びポリグリシジルアミン(N,N-ジグリシジルアニリン及び1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル))等]及び/又はポリオール化合物(a’2)(エチレングリコール等)}で架橋してなる架橋重合体であってもよい。
【0055】
架橋剤(A’)を用いて被覆層を構成する高分子化合物を架橋する方法としては、正極活物質を、被覆層を構成する高分子化合物で被覆した後に架橋する方法が挙げられる。具体的には、活物質粒子と被覆層を構成する高分子化合物を含む樹脂溶液を混合し脱溶剤することにより、被覆正極活物質粒子を製造した後に、架橋剤(A’)を含む溶液を該被覆活物質粒子に混合して加熱することにより、脱溶剤と架橋反応を生じさせて、被覆層を構成する高分子化合物が架橋剤(A’)によって架橋される反応を活物質粒子の表面で起こす方法が挙げられる。
加熱温度は、架橋剤の種類に応じて調整されるが、架橋剤としてポリエポキシ化合物(a’1)を用いる場合は好ましくは70℃以上であり、ポリオール化合物(a’2)を用いる場合は好ましくは120℃以上である。
【0056】
(導電性フィラー)
導電性フィラーとしては、導電性を有する材料から選択されることが好ましい。
導電性フィラーとして好ましくは、金属[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びサーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられる。
これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物として用いられてもよい。
なかでも、電気的安定性の観点から、より好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、金、銅、チタン及びこれらの混合物であり、更に好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、特に好ましくはカーボンである。
またこれらの導電性フィラーとしては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料[好ましくは、上記した導電性フィラーのうち金属のもの]をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0057】
導電性フィラーの形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電性フィラーとして実用化されている形態であってもよい。
【0058】
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01~10μm程度であることが好ましい。
本明細書中において、「導電性フィラーの粒子径」とは、導電性フィラーの輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0059】
被覆層を構成する高分子化合物と導電性フィラーの比率は特に限定されるものではないが、電池の内部抵抗値等の観点から、重量比率で被覆層を構成する高分子化合物(樹脂固形分重量):導電性フィラーが1:0.01~1:50であることが好ましく、1:0.2~1:3.0であることがより好ましい。
【0060】
本発明で用いる被覆正極活物質粒子は、被覆層が更にセラミック粒子を含んでいてもよい。
【0061】
セラミック粒子としては、金属炭化物粒子、金属酸化物粒子、ガラスセラミック粒子等が挙げられる。
【0062】
金属炭化物粒子としては、例えば、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC)、炭化モリブデン(MoC)、炭化チタン(TiC)、炭化タンタル(TaC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化バナジウム(VC)、炭化ジルコニウム(ZrC)等が挙げられる。
【0063】
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化スズ(SnO)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、酸化インジウム(In)、Li、LiTi12、LiTi、LiTaO、LiNbO、LiAlO、LiZrO、LiWO、LiTiO、LiPO、LiMoO、LiBO、LiBO、LiCO、LiSiOや、ABO(但し、Aは、Ca、Sr、Ba、La、Pr及びYからなる群より選択される少なくとも1種であり、Bは、Ni、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Mo、Ru、Rh、Pd及びReからなる群より選択される少なくとも1種)で表されるペロブスカイト型酸化物粒子等が挙げられる。
金属酸化物粒子としては、電解液と被覆正極活物質粒子との間で起こる副反応を好適に抑制する観点から、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)、二酸化ケイ素(SiO)、及び、四ほう酸リチウム(Li)が好ましい。
【0064】
セラミック粒子としては、電解液と被覆正極活物質粒子との間で起こる副反応を好適に抑制する観点から、ガラスセラミック粒子であることが好ましい。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
ガラスセラミック粒子としては、菱面体晶系を有するリチウム含有リン酸化合物であることが好ましく、その化学式は、LiM”12(X=1~1.7)で表される。
ここでM”はZr、Ti、Fe、Mn、Co、Cr、Ca、Mg、Sr、Y、Sc、Sn、La、Ge、Nb、Alからなる群より選ばれた1種以上の元素である。また、Pの一部をSi又はBに、Oの一部をF、Cl等で置換してもよい。例えば、Li1.15Ti1.85Al0.15Si0.052.9512、Li1.2Ti1.8Al0.1Ge0.1Si0.052.9512等を用いることができる。
また、異なる組成の材料を混合又は複合してもよく、ガラス電解質等で表面をコートしてもよい。又は、熱処理によりNASICON型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の結晶相を析出するガラスセラミック粒子を用いることが好ましい。
ガラス電解質としては、特開2019-96478号公報に記載のガラス電解質が挙げられる。
【0066】
ここで、ガラスセラミック粒子におけるLiOの配合割合は酸化物換算で8質量%以下であることが好ましい。
NASICON型構造でなくとも、Li、La、Mg、Ca、Fe、Co、Cr、Mn、Ti、Zr、Sn、Y、Sc、P、Si、O、In、Nb、Fからなり、LISICON型、ぺロブスカイト型、β-Fe(SO型、LiIn(PO型の結晶構造を、持ち、Liイオンを室温で1×10-5S/cm以上伝導する固体電解質を用いても良い。
【0067】
上述したセラミック粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
セラミック粒子の重量割合は、被覆正極活物質粒子の重量を基準として0.5~5.0重量%であることが好ましい。
セラミック粒子を上記範囲で含有することにより、電解液と被覆正極活物質粒子との間で起こる副反応を好適に抑制することができる。
【0069】
被覆正極活物質粒子の製造方法は、活物質粒子、高分子化合物、導電性フィラー、任意で使用するセラミック粒子及び有機溶剤を混合して被覆正極活物質粒子用組成物を作製する混合工程と、上記被覆正極活物質粒子用組成物を脱溶剤する脱溶剤工程を有する。
【0070】
(混合工程)
本工程では、活物質粒子、高分子化合物、導電性フィラー及び任意で使用するセラミック粒子を混合する順番は特に限定されず、例えば、事前に混合した高分子化合物と導電性フィラーと任意で使用するセラミック粒子とからなる樹脂組成物を活物質粒子と更に混合してもよいし、活物質粒子、高分子化合物、導電性フィラー及び任意で使用するセラミック粒子を同時に混合してもよいし、活物質粒子に高分子化合物を混合し、更に導電性フィラー及び任意で使用するセラミック粒子を混合してもよい。
【0071】
有機溶剤としては高分子化合物を溶解可能な有機溶剤であれば特に限定されず、公知の有機溶剤を適宜選択して用いることができる。
【0072】
混合工程では、活物質粒子を万能混合機に入れて30~500rpmで撹拌した状態で、高分子化合物を含む樹脂組成物の溶液を1~90分かけて滴下混合し、導電性フィラー及び任意で使用するセラミック粒子を混合することが好ましい。
【0073】
混合工程における活物質粒子と、高分子化合物、導電性フィラー及び任意で使用するセラミック粒子とを含む樹脂組成物との配合比率は特に限定されるものではないが、重量比率で活物質粒子:樹脂組成物=1:0.001~0.1であることが好ましい。
【0074】
(脱溶剤工程)
本工程では、混合工程後の混合物から有機溶剤を脱溶剤する。
脱溶剤工程では、混合物を撹拌しながら50~200℃に昇温し、0.007~0.04MPaまで減圧した後に10~150分保持して脱溶剤することが好ましい。
【0075】
以上の工程を経て、被覆正極活物質粒子を製造することができる。
【0076】
本発明のリチウムイオン電池用正極は、樹脂集電体を有する。
従来、リチウムイオン電池の正極集電体としては、コスト、導電性及び電気化学安定性の観点からアルミニウム箔が使用されることが多かった。しかし、リチウム金属が正極に存在する状況下では、充電前に自発的にアルミニウム箔とリチウムの反応が起こってしまいアルミニウム箔が腐食するため、これを避けるために本発明では樹脂集電体を使用する。
【0077】
樹脂集電体は、導電性高分子材料で形成されている。樹脂集電体を構成する導電性高分子材料としては例えば、樹脂に導電剤を添加したものを用いることができる。
導電性高分子材料を構成する導電剤としては、被覆層の任意成分である導電性フィラーと同様のものを好適に用いることができる。
導電性高分子材料を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、更に好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
樹脂集電体は、特開2012-150905号公報及び国際公開第2015/005116号等に記載された公知の方法で得ることができる。
【0078】
樹脂集電体の形状は特に限定されず、上記の材料からなるシート状の樹脂集電体、及び、上記の材料で構成された微粒子からなる堆積層であってもよい。
樹脂集電体の厚さは、特に限定されないが、50~500μmであることが好ましい。
【0079】
本発明のリチウムイオン電池用正極は、正極活物質と、電解質及び溶媒を含有する電解液とを含む正極活物質層を備えることが好ましい。
【0080】
本発明のリチウムイオン電池用正極に係る電解液に含まれる電解質としては、公知の電解液に用いられている電解質が使用でき、例えば、LiFSI、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO及びLiN(FSO等の無機アニオンのリチウム塩、LiN(CFSO、LiN(CSO及びLiC(CFSO等の有機アニオンのリチウム塩が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiFSI、LiN(FSOである。
【0081】
本発明のリチウムイオン電池用正極に係る電解液に含まれる溶媒としては、公知の電解液に用いられている非水溶媒が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン及びこれらの混合物を用いることができる。
【0082】
ラクトン化合物としては、5員環(γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトン等)及び6員環(δ-バレロラクトン等)のラクトン化合物等が挙げられる。
【0083】
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート(EC)及びブチレンカーボネート(BC)等が挙げられる。
鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート及びジ-n-プロピルカーボネート等が挙げられる。
【0084】
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。
【0085】
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン及び1,4-ジオキサン等が挙げられる。鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2-ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0086】
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリクロロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、リン酸トリ(トリパーフルオロエチル)、2-エトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン、2-トリフルオロエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン及び2-メトキシエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン等が挙げられる。
【0087】
ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。アミド化合物としては、DMF等が挙げられる。スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等が挙げられる。
【0088】
これらの溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
電解液中の電解質の濃度は、1.2~5.0mol/Lであることが好ましく、1.5~4.5mol/Lであることがより好ましく、1.8~4.0mol/Lであることが更に好ましく、2.0~3.5mol/Lであることが特に好ましい。
【0090】
正極活物質層の厚みは、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0091】
本発明のリチウムイオン電池用正極の製造方法は特に限定されず、例えば、樹脂集電体と正極活物質との界面にリチウム金属を担持させる場合、リチウム金属を樹脂集電体上に担持させてから正極活物質層を作製する方法、正極活物質層上にリチウム金属を担持させてから樹脂集電体を重ねる方法等が挙げられる。
【0092】
本発明のリチウムイオン電池は、上記のリチウムイオン電池用正極を備える。
図1は、本発明のリチウムイオン電池の一実施形態を示す模式断面図である。リチウムイオン電池100は、平板状の正極集電体10の表面に正極活物質層11が形成されたリチウムイオン電池用正極1と、平板状の負極集電体20の表面に負極活物質層21が形成されたリチウムイオン電池用負極2とが、平板状のセパレータ30を介して積層されており、正極集電体10と正極活物質層11との間にリチウム金属12が担持されている。
図1は、単電池としてのリチウムイオン電池100を模式的に示しているが、本発明のリチウムイオン電池は単電池に限定されず、組電池も含む。
【0093】
図2は、本発明のリチウムイオン電池の別の実施形態を示す模式断面図である。リチウムイオン電池200は、正極活物質層11とセパレータ30との間にリチウム金属12が担持されている以外は、図1のリチウムイオン電池100と同様の構成である。
【0094】
本明細書の各図面においては、リチウム金属は層状に描かれているが、上述のようにリチウム金属は針状や粒状等であってもよいので、リチウム金属が正極活物質層に接していない箇所があってもよい。
【0095】
本発明のリチウムイオン電池は、対極となる電極を組み合わせて、セパレータと共にセル容器に収納し、電解液を注入し、セル容器を密封することで得られる。
また、集電体の一方の面に正極を形成し、もう一方の面に負極を形成してバイポーラ(双極)型電極を作製し、バイポーラ(双極)型電極をセパレータと積層してセル容器に収納し、電解液を注入し、セル容器を密封することでも得られる。
本発明のリチウムイオン電池用正極を用いることにより、本発明のリチウムイオン電池が得られる。
【0096】
セパレータとしては、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム、多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンとの積層フィルム、合成繊維(ポリエステル繊維及びアラミド繊維等)又はガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン電池用のセパレータが挙げられる。
【0097】
なお、本明細書には以下の発明が開示されている。
〔1〕樹脂集電体と、正極活物質と、リチウム金属とを有することを特徴とするリチウムイオン電池用正極。
〔2〕上記リチウム金属が、粒状又は粉末状である上記〔1〕に記載のリチウムイオン電池用正極。
〔3〕上記リチウム金属の含有量が、上記正極活物質の重量を基準として0.7~1.2重量%である上記〔1〕又は〔2〕に記載のリチウムイオン電池用正極。
〔4〕上記リチウム金属が、上記正極活物質を含む正極活物質層と上記樹脂集電体との界面に配される上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極。
〔5〕上記正極活物質が、活物質粒子が有する表面の少なくとも一部を高分子化合物と導電性フィラーとを含む被覆層で被覆してなる被覆正極活物質粒子である上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極。
〔6〕上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のリチウムイオン電池用正極を備えるリチウムイオン電池。
【実施例0098】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り「部」は重量部を意味する。
【0099】
[電解液の作製]
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)にLiFSI(LiN(FSO)を2.0mol/Lの割合で溶解させて電解液を作製した。
【0100】
[正極活物質を被覆する高分子化合物の作製]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF150部を仕込み、75℃に昇温した。次いで、アクリル酸91部、メタクリル酸メチル9部及びDMF50部を配合した単量体組成物と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.3部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.8部をDMF30部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。次いで、80℃に昇温して反応を3時間継続し、樹脂濃度30%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して150℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行い、DMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の被覆用高分子化合物を得た。
【0101】
[被覆正極活物質粒子の作製]
被覆用高分子化合物1部をDMF3部に溶解し、被覆用高分子化合物溶液を得た。
活物質粒子(LiNi0.8Co0.15Al0.05粉末、BASF戸田バッテリーマテリアルズ製、商品名「NAT-7050」、体積平均粒子径6μm)90部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、高分子化合物溶液16部(固形分4部)を2分かけて滴下し、更に5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電性フィラーであるアセチレンブラック[デンカ(株)製デンカブラック(登録商標)]4部、及び、セラミック粒子としてシリカ(日本アエロジル(株)製、「Aerosil 200」、平均粒径12nm)2部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。
その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。
得られた粉体を目開き200μmの篩いで分級し、被覆正極活物質粒子を得た。
【0102】
[正極活物質層用組成物の作製]
上記の被覆正極活物質粒子99部と炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製ドナカーボ・ミルドS-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]1部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで5分間混合し、正極活物質層用組成物を作製した。
【0103】
[正極活物質層用スラリーの作製]
上記で作製した電解液30部と、活物質粒子(LiNi0.8Co0.15Al0.05粉末、BASF戸田バッテリーマテリアルズ製、NAT-7050、体積平均粒子径6μm)64.4部と、炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製ドナカーボ・ミルドS-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]0.7部と、アセチレンブラック[デンカ(株)製デンカブラック(登録商標)]3.5部と、シリカ(日本アエロジル(株)製、「Aerosil 200」、平均粒径12nm)1.4部とを、遊星撹拌型混合混練装置(あわとり練太郎、ARE-310、(株)シンキー製)を用いて2000rpmで5分間混合し、正極活物質層用スラリーを作製した。
【0104】
[被覆負極活物質粒子の作製]
被覆用高分子化合物1部をDMF3部に溶解し、被覆用高分子化合物溶液を得た。
負極活物質粒子(ハードカーボン粉末、体積平均粒子径25μm)88部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、高分子化合物溶液24部(固形分6部)を2分かけて滴下し、更に5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電性フィラーであるアセチレンブラック[デンカ(株)製デンカブラック(登録商標)]6部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。
その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。
得られた粉体を目開き200μmの篩いで分級し、被覆負極活物質粒子を得た。
【0105】
[負極活物質層用組成物の作製]
上記の被覆負極活物質粒子99部と炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製ドナカーボ・ミルドS-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]1部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで5分間混合し、負極活物質層用組成物を作製した。
【0106】
[正極用樹脂集電体の作製]
2軸押出機にて、ポリプロピレン[商品名「サンアロマーPL500A」、サンアロマー(株)製]70部、カーボンナノチューブ[商品名:「FloTube9000」、CNano社製]25部及び分散剤[商品名「ユーメックス1001」、三洋化成工業(株)製]5部を200℃、200rpmの条件で溶融混練して樹脂混合物を得た。
得られた樹脂混合物を、Tダイ押出しフィルム成形機に通して、それを延伸圧延することで、膜厚50μmの正極用樹脂集電体を得た。
【0107】
[負極用樹脂集電体の作製]
上記で得られた正極用樹脂集電体を17.0cm×17.0cmとなるように切断し、片面にニッケル蒸着を施し、負極用樹脂集電体を得た。
【0108】
[正極活物質層Aの作製]
上記で得られた正極活物質層用組成物を、プレス機(HANDTAB-100、市橋精機社製)及び直径15mm用の打錠治具を用いて、打錠圧約10kNで打錠し、厚さ470μm、直径15mm、1個あたり210.8mgの正極活物質層Aを得た。
【0109】
[正極活物質層Bの作製]
直径15mmの孔が開いたPETフィルムを正極用樹脂集電体上にかぶせた。上記で得られた正極活物質層用スラリー2000mgをPETフィルム上に乗せ、塗工機(テスター産業(株)製自動塗工装置、型番:PI-1210、オールグッド(株)製の膜厚調整機能付きフィルムアプリケーターを備える)を用いて、正極用樹脂集電体の片面に正極活物質層用スラリーを塗布した。PETフィルムを正極樹脂集電体から剥がし、正極活物質層用スラリーが塗布された正極樹脂集電体を、プレス機(アズワン株式会社製、型番:AH-2003C)を用いて49MPa(0.5kg/cm)の圧力で10秒プレスすることにより、正極用樹脂集電体上に作製された厚さ470μmの正極活物質層Bを得た。プレス時に生じる余剰の電解液を吸い取るために、正極用樹脂集電体上に吸液紙を載せてプレスし、プレス後に吸液紙を剥がした。正極活物質層Bは、直径15mm、1個あたり204.0mgであった。
【0110】
[負極活物質層の作製]
上記で得られた負極活物質層用組成物を、プレス機(HANDTAB-100、市橋精機社製)及び直径16mm用の打錠治具を用いて、打錠圧約10kNで打錠し、厚さ620μm、直径16mm、1個あたり133.9mgの負極活物質層を得た。
【0111】
[枠部材の作製]
ポリオレフィン樹脂を成形した枠部材(穴の内寸φ18mm、外寸35mm×50mm、厚み0.35mm)を作製した。
【0112】
実施例1
枠部材と30mm×40mmの負極用樹脂集電体を準備し、負極用樹脂集電体のニッケル蒸着面側を枠部材に重ねた。枠部材の穴部分に、負極用樹脂集電体のニッケル蒸着面が露出していた。枠材の穴部分から負極用樹脂集電体のニッケル蒸着面に電解液0.02mLを注液し、上記で作製した負極活物質層を負極用樹脂集電体のニッケル蒸着面に重ねた。負極活物質層の上から電解液0.03mLを注液した。負極活物質層の上に、23mm×23mmのセパレータ(セルガード社製#3501)を重ねた。セパレータの上から電解液0.03mLを注液した。
リチウムフォイル(本城金属社製、厚さ500μm)をセラミック製のハサミを用いて粒状(粒子サイズ:1mm×1.5mm×500μm)に切断し、リチウムフォイル1.8mgをセパレータ上に置いた。セパレータ及びリチウムフォイル上に正極活物質層Aを重ね、正極活物質層Aの上から電解液0.02mLを注液した。負極用樹脂集電体と重なるように30mm×40mmの正極用樹脂集電体を重ね、樹脂集電体の3辺をヒートシールし、残りの一辺を真空シールした。得られた構造物を銅箔タブが付いたアルミラミネートフィルムで両面を覆い、再度、外周部をヒートシールと真空シールでシールすることで、リチウムイオン電池を作製した。図2は、実施例1のリチウムイオン電池の模式断面図を表す。
【0113】
実施例2
リチウムフォイルを置く位置を正極樹脂集電体と正極活物質層の間に変更する以外は、実施例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。図1は、実施例2のリチウムイオン電池の模式断面図を表す。
【0114】
実施例3
リチウムフォイルの量を0.6mgに変更する以外は、実施例2と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0115】
実施例4
リチウムフォイルの量を1.6mgに変更する以外は、実施例2と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0116】
実施例5
リチウムフォイルの量を2.2mgに変更する以外は、実施例2と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0117】
実施例6
リチウムフォイルの量を3.1mgに変更する以外は、実施例2と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0118】
実施例7
リチウムフォイルの量を3.8mgに変更する以外は、実施例2と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0119】
実施例8
正極活物質層Aの代わりに、正極用樹脂集電体の片面に正極活物質層用スラリーを塗布して作製した正極活物質層Bを用いた以外は、実施例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。正極活物質層Bは正極用樹脂集電体上に作製されているため、更に正極用樹脂集電体を重ねる必要はない。
【0120】
実施例9
リチウムフォイルの形状を板状(サイズ:5mm×2mm×500μm)に変更する以外は実施例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0121】
実施例10
リチウムフォイルの粒子サイズを1mm×0.8mm×500μmに変更する以外は実施例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0122】
実施例11
リチウムフォイルの形状を粉末状(粉末サイズ:500μm×200μm×200μm)に変更する以外は実施例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0123】
比較例1
正極用樹脂集電体の代わりに、アルミニウム箔(商品名「マイホイル」、UACJ社製、厚さ20μm)で作製した集電体を用いた以外は、実施例2と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0124】
比較例2
リチウムフォイルを担持させなかった以外は、比較例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0125】
比較例3
リチウムフォイルを置く位置を負極活物質層とセパレータの間に変更する以外は、実施例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0126】
比較例4
リチウムフォイルを担持させなかった以外は、実施例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0127】
比較例5
正極用樹脂集電体の代わりに、カーボンコートアルミニウム箔(導電性カーボン塗工済アルミニウム箔、MTI社製、厚さ18μm)で作製した集電体を用いた以外は、実施例2と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0128】
比較例6
リチウムフォイルを担持させなかった以外は、実施例8と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0129】
実施例1~11及び比較例1~6で作製したリチウムイオン電池における、正極活物質の種類、正極集電体の種類、リチウム金属担持量、リチウム形状、正極活物質に対するリチウム金属含有量(wt%)、Li金属の位置を表1に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
実施例1~11及び比較例1~6で得られたリチウムイオン電池について、下記の評価を行った。
【0132】
<初回充電容量、初回放電容量及び初回クーロン効率>
25℃下、充放電測定装置「HJ-SD8」[北斗電工(株)製]を用いて、定電流定電圧充電方式(CCCVモードともいう)で0.05Cの電流で4.2Vまで充電した後4.2Vを維持した状態で電流値が0.01Cになるまで充電した。10分間の休止後、0.05Cの電流で2.5Vまで放電した。
このとき充電した容量を[初回充電容量(mAh)]、放電した容量を[初回放電容量(mAh)]とした。
上記の測定で得られた初回充電容量と初回放電容量を用い、以下の式で初回クーロン効率を算出した。結果を表2に示す。
[初回クーロン効率(%)]=[初回放電容量]÷[初回充電容量]×100
【0133】
[10サイクル目の内部抵抗]
25℃下、充放電測定装置「HJ-SD8」[北斗電工(株)製]を用いて以下の方法によりリチウムイオン電池の内部抵抗の評価を行った。
定電流定電圧方式(0.05C)で4.2Vまで充電した後、4.2Vを維持した状態で電流値が0.01Cになるまで充電した。10分間の休止後、定電流方式(0.1C)で2.5Vまで放電した。定電流定電圧方式(CCCVモードともいう)で0.1Cにおける放電0秒後の電圧及び電流並びに0.1Cにおける放電10秒後の電圧及び電流を測定し、以下の式で内部抵抗を算出した。
なお、放電0秒後の電圧とは、放電したと同時に計測される電圧(放電時電圧ともいう)である。
[内部抵抗(Ω・cm)]=[(0.1Cにおける放電0秒後の電圧)-(0.1Cにおける放電10秒後の電圧)]÷[(0.1Cにおける放電0秒後の電流)-(0.1Cにおける放電10秒後の電流)]×[電極の対向面積(cm)]
内部抵抗の測定につき、10サイクルの繰り返し試験を行い、10サイクル目の内部抵抗を評価した。内部抵抗が小さいほど優れた電池特性を有することを意味する。結果を表2に示す。
【0134】
【表2】
【0135】
実施例1~11のリチウムイオン電池は、比較例1~6のリチウムイオン電池と比較して、初回充電容量及び初回放電容量が高かった。
実施例2は、リチウム金属の位置を集電体側にしたことにより、実施例1と比較して10サイクル目の内部抵抗が更に低くなった。
実施例3及び4は、リチウム金属の担持量を少なくしたことにより、実施例2と比較して初回充電容量及び初回放電容量が低くなった。
実施例5は、リチウム金属の担持量を多くしたことにより、実施例2と比較して初回充電容量及び初回放電容量が高くなった。
実施例6及び7は、リチウム金属の担持量を実施例5より更に多くしたことにより、初回充電容量が実施例5より高くなったが、初回放電容量はほとんど変わらなかったため、初回クーロン効率が低くなった。
実施例8は、被覆正極活物質粒子の代わりに未被覆の正極活物質を用い、初回充電容量、初回放電容量及び初回クーロン効率は実施例1と同程度であったが、10サイクル目の内部抵抗が少し高くなった。
実施例9は、リチウム金属の形状を粒状から板状に変更しサイズが大きくなったことにより、実施例1と比較して初回放電容量及び初回クーロン効率が少し低くなり、10サイクル目の内部抵抗が少し高くなった。
実施例10は、リチウム金属の粒子サイズを実施例1より小さくしたことにより、実施例1と比較して初回放電容量及び初回クーロン効率が少し高くなった。
実施例11は、リチウム金属を粒状から粉末状に変更しサイズが小さくなったことにより、実施例10と比較して10サイクル目の内部抵抗が更に低くなった。
【0136】
比較例1は、リチウム金属と正極集電体であるアルミニウム箔との反応で正極集電体が溶解し、充放電できなかった。
比較例2、4及び6は、リチウム金属を用いなかったため、初回充電容量及び初回放電容量が低かった。
比較例3は、リチウム金属を負極活物質層とセパレータの間に担持したため、負極とリチウム金属が速やかに反応し、負極の内部抵抗が高くなった。
比較例5は、リチウム金属と正極集電体であるカーボンコートアルミニウム箔との反応で正極集電体が溶解し、充放電できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明のリチウムイオン電池用正極は、特に、定置用電源、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車用等に用いられるリチウムイオン電池を作製するために有用である。本発明のリチウムイオン電池は、特に、定置用電源、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車用のリチウムイオン電池として有用である。
【符号の説明】
【0138】
1 リチウムイオン電池用正極
2 リチウムイオン電池用負極
10 正極集電体
11 正極活物質層
12 リチウム金属
20 負極集電体
21 負極活物質層
30 セパレータ
100、200 リチウムイオン電池
図1
図2