(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156099
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065761
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 一也
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE11
4C601FF04
4C601FF06
4C601GA17
4C601GA21
4C601JB34
(57)【要約】
【課題】ユーザーによる被検体への穿刺を、より容易にすることを可能とする超音波診断装置を提供すること。
【解決手段】被検体HTへの穿刺針QTの穿刺を支援する超音波診断装置1であって、超音波プローブ20と、超音波プローブ20の基端側に取り付けられ、穿刺針QTが被検体HTに穿刺される状態を撮影する光学カメラ30と、光学カメラ30により取得された光学画像を画像解析することで、穿刺針QTの姿勢を検出する光学画像解析部15と、検出された穿刺針QTの姿勢と、予め記憶された穿刺針QTの目標姿勢とに基づいて、穿刺針QTの誤穿刺の発生を判定する誤穿刺判定部17と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体への穿刺を支援する超音波診断装置であって、
超音波プローブと、
前記超音波プローブの基端側に取り付けられ、前記穿刺針が前記被検体に穿刺される状態を撮影する光学カメラと、
前記光学カメラにより取得された光学画像を画像解析することで、前記穿刺針の姿勢を検出する光学画像解析部と、
検出された前記穿刺針の前記姿勢と、予め記憶された前記穿刺針の目標姿勢とに基づいて、前記穿刺針の誤穿刺の発生を判定する誤穿刺判定部と、
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記光学画像解析部にて検出対象とする前記穿刺針の前記姿勢は、前記穿刺針の刃面の向き及び前記穿刺針の穿刺角度である、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記光学画像解析部は、機械学習が施された学習済みの識別器モデルを用いて、前記穿刺針の前記姿勢を検出する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記穿刺針の前記目標姿勢は、ユーザーに指定された前記穿刺針の種類に基づいて、設定される、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記誤穿刺判定部は、前記誤穿刺が発生している場合、モニタへの表示出力又はスピーカへの音声出力により、ユーザーにその旨を報知する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記光学カメラは、ステレオカメラである、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記被検体への前記穿刺針の穿刺は、前記被検体の体表上に背景カバー用のシート材が載置された状態で行われる、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記光学画像を超音波画像と同一のモニタ画面内に表示するように表示用画像を生成する表示用画像生成部を更に有する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を送受信して被検体の解剖構造を超音波画像として撮影する超音波診断装置が知られている。超音波診断装置は、超音波プローブを、被検体の体表に当てるという操作で、被検体内の組織の形状や動きなどを超音波画像として取得することができる。
【0003】
超音波診断装置は、腹部、循環器、表在、血管、産婦人科、泌尿器科、整形外科、術中、検診など、様々な部位・診療科で用いられている。また、整形外科、麻酔科、ペインクリニック科、透析等では、医師・臨床工学士等(以下、「ユーザー」と称する)が、超音波診断装置を用いて、被検体の解剖構造と穿刺針の位置を確認しながら、穿刺する、超音波ガイド下穿刺がなされている。
【0004】
その際、穿刺を正確に行うために、患者の体表面における穿刺位置及び穿刺角度と、モニタ上に表示される超音波画像における患部(即ち、目標)との位置関係を精度良く把握する必要がある。
【0005】
このような背景から、超音波診断装置において、被検体への穿刺を支援する種々の技術・機能が開発されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、超音波プローブに取り付けられるニードルガイドが開示されている。特許文献1には、被検体に対して穿刺針を所定の穿刺角度で穿刺し得るように、ニードルガイドを構成し、これにより、被検体への穿刺を支援することが記載されている。又、特許文献1には、モニタに穿刺針のガイドラインを表示し、ユーザーが容易に針の穿刺方向を認識できるようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に係る従来技術に記載されているようなニードルガイドは、被検体への穿刺を容易にする点で有用であるものの、かかるニードルガイドは、穿刺角度が固定されているため、却って利便性を損なわせるものとなる。
【0009】
例えば、ヒトの外頸静脈等の中心静脈への穿刺では、一般に、血管の走行を確認し(
図10の左図を参照)、交差法で血管への穿刺を行う(
図10の右図を参照)。この際には、ユーザーは、超音波画像を見て血管への穿刺位置を確認しながら、穿刺針の軌道を修正しつつ、穿刺を行うため、フリーハンドによる手技が為される。尚、
図10は、平行法(
図10の左図)及び交差法(
図10の右図)それぞれにおける超音波プローブの被検体の体表への押し当て方と、その際に取得される超音波画像を示している。
図10中では、20が超音波プローブ、HTが被検体、QTが穿刺針を表す。
【0010】
但し、フリーハンドで穿刺を行う際に留意すべき点は、穿刺角度(被検体の体表に対する穿刺針の仰角を表す。以下同じ)と、穿刺時の穿刺針の刃面の向きである。
【0011】
図11は、穿刺針QT(ここでは、採血針)の適切な穿刺方法の一例を示す図である。
【0012】
穿刺時には、一般に、
図11に示すように、穿刺角度を10°~30°にして、穿刺針QTを、被検体HTの体表上から被検体内組織の目標部位(例えば、中心静脈)に向けて穿刺して、穿刺針QTが血管に入ったことが確認できたら、血管の走行に沿うようにして水平方向に穿刺針QTを進める手技が推奨される。又、その際、穿刺針QTは、刃面が上向きを向くように穿刺される手技が推奨される。
【0013】
仮に、最初に、適正な穿刺角度(例えば、10°~30°)から外れた状態で、被検体HT内に穿刺針QTの穿刺が行われてしまった場合には、穿刺針QTが、被検体HTの内部組織の目標部位(例えば、中心静脈)以外の他の組織(例えば、動脈や神経など)を損傷させてしまうおそれがある。又、穿刺針QTの刃面が下向きを向くように穿刺されてしまった場合には、穿刺針QTを血管内で進行させる際に、穿刺針QTの先端部が、中心静脈の血管壁を損傷させてしまうおそれがある。
【0014】
しかしながら、かかる穿刺は、精緻な手技であり、熟練した検査者でなければ、誤穿刺を引き起こすおそれがある。
【0015】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたもので、ユーザーによる被検体への穿刺を、より容易にすることを可能とする超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
被検体への穿刺を支援する超音波診断装置であって、
超音波プローブと、
前記超音波プローブの基端側に取り付けられ、前記穿刺針が前記被検体に穿刺される状態を撮影する光学カメラと、
前記光学カメラにより取得された光学画像を画像解析することで、前記穿刺針の姿勢を検出する光学画像解析部と、
検出された前記穿刺針の前記姿勢と、予め記憶された前記穿刺針の目標姿勢とに基づいて、前記穿刺針の誤穿刺の発生を判定する誤穿刺判定部と、
を備える超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0017】
本開示に係る超音波診断装置によれば、ユーザーによる被検体への穿刺を、より容易にすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の全体構成を示す図
【
図2】本発明の一実施形態に係る超音波プローブの構成を示す図
【
図3】本発明の一実施形態に係る超音波診断装置において、超音波プローブへの光学カメラとレーザポインタの取り付け状態の一例を示す図
【
図4】本発明の一実施形態に係る超音波診断装置における穿刺時に起動される穿刺支援モードにおいて、超音波診断装置のモニタに表示されるモニタ画面の一例を示す図
【
図5】本発明の一実施形態に係る制御装置の有する機能ブロックを示す図
【
図6】本発明の一実施形態に係る超音波診断装置において、穿刺時に、光学画像に映る穿刺針の一例を示す図
【
図7】本発明の一実施形態に係る超音波診断装置を用いて、穿刺針を被検体の体表に穿刺する際のユーザーの穿刺について、説明する図
【
図8】穿刺時における、本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の動作の一例を示すフローチャート
【
図9】穿刺時に誤穿刺が発生したときの、本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の報知態様の一例を示す図
【
図10】平行法(
図10の左図)及び交差法(
図10の右図)それぞれにおける超音波プローブの被検体の体表への押し当て方と、その際に取得される超音波画像を示す図
【
図11】穿刺時の穿刺針(ここでは、採血針)の適切な穿刺方法の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
[超音波診断装置の全体構成]
まず、
図1~
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る超音波診断装置(以下、「超音波診断装置1」と称する)の全体構成について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成を示す図である。
【0022】
図2は、本実施形態に係る超音波プローブ20の構成を示す図である。尚、
図2Aには、超音波プローブ20に取り付けられるアタッチメント20Tの構成を示しており、
図2Bには、超音波プローブ20へのアタッチメント20Tの取り付け方法の一例を示している。
【0023】
図3は、本実施形態に係る超音波プローブ20への光学カメラ30とレーザポインタ40の取り付け状態の一例を示す図である。
図3Aは、超音波プローブ20を側面視した図(超音波プローブ20の短軸サイドを見た図を意味する。以下同じ)であり、
図3Bは、超音波プローブ20を正面視した図(超音波プローブ20の長軸サイドを見た図を意味する。以下同じ)である。
【0024】
図4は、穿刺時に起動される穿刺支援モードにおいて、超音波診断装置1のモニタ50に表示されるモニタ画面の一例を示す図である。
図4中で、モニタ画面の左側領域R1には、超音波プローブ20により取得された超音波画像が表示され、モニタ画面の右側領域R2には、光学カメラ30により取得された光学画像が表示されている。
【0025】
超音波診断装置1は、制御装置10、超音波プローブ20、光学カメラ30、レーザポインタ40、モニタ50、スピーカ60、及び、操作入力部70を備えている。尚、超音波プローブ20、光学カメラ30、及びレーザポインタ40は、それぞれ、ケーブルを介して、制御装置10に接続されている。
【0026】
本実施形態に係る超音波診断装置1を用いた穿刺では、穿刺針QTは、例えば、ユーザーにフリーハンドで被検体HT内に穿刺されることが想定されている。ユーザーは、超音波プローブ20の超音波ビームの送受信面を被検体HTの体表に接触させて超音波診断装置1を動作させ、被検体HT内の超音波画像を得る。そして、ユーザーは、モニタ50を見て、超音波画像R1に映る被検体HT内の目標位置を確認しつつ、光学カメラ30により取得される光学画像R2から、穿刺針QTを被検体HT内に穿刺する際の穿刺針QTの目標穿刺位置を把握して、穿刺を行う。この際、光学カメラ30により取得される光学画像R2内には、レーザポインタ40から出射されるレーザ光により被検体HTの体表上に形成される投影像40Lにより、かかる穿刺針QTの目標穿刺位置が映し出され、これにより、ユーザーは、正確な穿刺の実施が可能となっている(
図4を参照)。
【0027】
超音波プローブ20は、超音波ビーム(例えば、1~30MHz程度)を被検体HT(例えば、人体)内に対して送信するとともに、送信した超音波ビームのうち被検体HT内で反射された超音波エコーを受信して電気信号に変換する音響センサとして機能する。尚、本実施形態では、超音波プローブ20の一例として、リニアプローブを示すが、超音波プローブ20には、コンベックスプローブ、セクタプローブ、又は三次元プローブ等の任意のものを適用することができる。
【0028】
超音波プローブ20は、例えば、筐体21と、筐体21のプローブ先端部20aに配設された振動子アレイ22を含んで構成される(
図2Bを参照)。
【0029】
筐体21は、例えば、長尺形状を呈し、ユーザーによって把持される把持部ともなる。筐体21には、基端側にアタッチメント20Tが取り付けられ、アタッチメント20Tを介して光学カメラ30及びレーザポインタ40が筐体21に固定された状態となっている。
【0030】
振動子アレイ22は、筐体21のプローブ先端部20aに超音波送受信面を形成するように配設されている。振動子アレイ22は、筐体21のプローブ先端部20aの長軸方向(
図2B中の20LL方向)に沿って配列された複数の振動子(例えば、圧電素子)によって構成される。尚、超音波画像取得時には、振動子アレイ22の各振動子の駆動状態のオンオフが順に切り替えられることによって、プローブ先端部20aの長軸方向に沿って、被検体HT内の超音波走査が行われ、超音波の送信方向(即ち、被検体HTの深度方向)と超音波の走査方向(即ち、プローブ先端部20aの長軸方向)とを含む断面内の二次元構造を表す超音波画像が生成される。
【0031】
制御装置10は、超音波診断装置1の本体部であり、超音波プローブ20から取得した受信信号に基づいて、超音波画像を生成する。そして、制御装置10は、超音波画像に対して、光学カメラ30にて取得された光学画像を付加して、モニタ50に表示させる表示画像を生成する。
【0032】
制御装置10は、例えば、CPU、ROM、及びRAM等からなる周知のコンピュータを中心に構成され、これに加えて、超音波プローブ20から取得した受信信号を受信処理する検波回路、及び、時系列の超音波画像や時系列の光学画像を記憶するためのシネメモリ等を備えている。但し、制御装置10の一部又は全部は、CPU等を有しない専用のハードウェア回路(例えば、ASIC、又はFPGA)のみによっても実現できることは勿論である。
【0033】
光学カメラ30は、例えば、一般的な可視カメラであり、自身の有する撮像素子が生成した画像信号をAD変換して、光学画像に係る画像データ(以下、「光学画像」と略称する)を生成する。そして、光学カメラ30は、フレーム単位の光学画像を連続的に生成して、時系列に並んだ光学画像(即ち、光学画像の動画像)を制御装置10に対して出力する。尚、光学カメラ30は、ズームレンズを有し、撮影対象(ここでは、被検体HTの体表領域)を拡大して、撮像可能となっていてもよい。
【0034】
光学カメラ30は、超音波プローブ20の基端側に取り付けられ、被検体HTの体表の上方側から、穿刺針QTが被検体HTに対して穿刺される状態を撮影する。被検体HTの体表上における超音波プローブ20のプローブ先端部20aの配設位置を撮影する。尚、光学カメラ30は、超音波プローブ20のプローブ先端部20aと、レーザポインタ40からのレーザ光が被検体HTの体表上に投影されて形成された投影像40Lと、被検体HTの体表の超音波画像R1の観察対象部位と、が光学画像R2内に映るように超音波プローブ20に取り付けられている。
【0035】
これにより、ユーザーは、光学画像R2から、被検体HTの体表上における超音波プローブ20のプローブ先端部20aと超音波スキャン断面(即ち、超音波画像の断層面)との相対的位置関係、及び、穿刺時の被検体HTの体表上における穿刺針QTの目標穿刺位置を認識することが可能となっている(
図4を参照)。
【0036】
レーザポインタ40は、例えば、可視色のレーザ光(例えば、波長635nm~690nmの赤色のレーザ光)を出力する一般的な半導体レーザである。レーザポインタ40は、超音波プローブ20の基端側に取り付けられ、被検体HTの体表上にレーザ光を出射して所定の投影像40Lを形成することで、光学カメラ30に取得される光学画像R2内で、穿刺針QTを被検体HTに穿刺する際の穿刺針QTの目標穿刺位置を案内する。
【0037】
レーザポインタ40は、例えば、自身の内蔵する回折格子やスリットにて、被検体HTの体表上へのレーザ光の投影像40Lの形状(即ち、照射形状)がライン状となるように、レーザ光を出力する。
【0038】
レーザポインタ40のレーザ光により形成される投影像40Lは、光学カメラ30に取得される光学画像R2内で、超音波プローブ20のプローブ先端部20aを基準位置として、穿刺針QTの目標穿刺位置を案内する。例えば、レーザポインタ40のレーザ光により形成される投影像40Lは、被検体HTの体表上に、超音波プローブ20のプローブ先端部20aの長軸方向(
図2Bに示す20LLの方向)の中央位置20aa(以下、「音軸中心」とも称する)を始点として、当該始点から当該長軸方向に直交する方向(即ち、プローブ先端部20aから離れる方向)に向かって延出するライン形状を呈する。
【0039】
これによって、ユーザーに対して、被検体HTの体表上で、超音波プローブ20のプローブ先端部20aの長軸方向の中央位置20aa、及び当該長軸方向に直交する方向を認識させることが可能となる。即ち、これにより、ユーザーに対して、被検体HTの体表上に配設された超音波プローブ20のプローブ先端部20aの位置を基準として、超音波画像R1に映る目標部位(例えば、穿刺対象の血管)の位置、更には穿刺針QTを被検体HTに穿刺する際の穿刺針QTの目標穿刺位置を案内することが可能となっている(
図4を参照)。
【0040】
尚、穿刺針QTの目標穿刺位置HTb(
図4を参照)は、例えば、穿刺針QTの向きが平面視でレーザ光の投影像40Lに沿うように調整され、且つ、穿刺針QTの被検体HTの体表に対する仰角が所定角度(例えば、30度)に調整された状態で、認識可能となっている。例えば、目標部位HTaが被検体HTの体表から2cmの位置に存在する場合には、穿刺針QTの目標穿刺位置HTbは、プローブ先端部20aの長軸方向の中央位置20aaから、レーザ光の投影像40Lに沿って3.5cm(=2cm/tan30°)程度離隔した位置となる。穿刺針QTの目標穿刺位置HTbは、例えば、超音波画像R1に映る目標部位の位置、及び、光学画像R2に映るレーザ光の投影像40L及びプローブ先端部20aを視認することで認識することは可能である。
図4では、更に、穿刺針QTの目標穿刺位置HTbの認識を容易にするため、光学画像R2に水平想像線R2b及び垂直想像線R2aを重畳表示している。
【0041】
カメラ30及びレーザポインタ40は、正面視で、超音波プローブ20の音軸中心とカメラ30の光軸とレーザポインタ40の光軸とが一致するようにセッティングされている(
図3を参照)。換言すると、光学カメラ30の光軸及び超音波プローブ20の音軸中心が、それぞれ、被検体HTの体表上に投影されたときに、レーザポインタ40の出力するレーザ光の投影像40Lの中心軸と重なるようにセッティングされている。これによって、被検体HTの体表上に投影されるレーザ光の投影像40Lは、超音波プローブ20のプローブ先端部20aの長軸方向の中央位置20aaを始点として、当該長軸方向に直交する方向を指し示すものとなる。即ち、ユーザーは、光学画像R2に映るレーザ光の投影像40Lを見ることにより、穿刺針QTの目標穿刺位置を認識することができる。
【0042】
尚、本実施形態に係る超音波診断装置1においては、カメラ30及びレーザポインタ40は、上記のように、超音波プローブ20に対して所定の位置関係となるように、着脱可能なアタッチメント20Tを介して、超音波プローブ20の筐体21に取り付けられている(
図2を参照)。そして、カメラ30及びレーザポインタ40の超音波プローブ20に対する位置関係は、アタッチメント20Tにより位置決めされる。
【0043】
モニタ50は、制御装置10に生成された表示画像を表示するディスプレイであって、例えば、液晶ディスプレイにて構成される。モニタ50は、表示画像生成部14から表示画像のデータを取得し、当該表示画像を表示する。スピーカ60は、制御装置10(誤穿刺判定部17)から指令された音声を出力する。
【0044】
操作入力部70は、例えば、診断開始等を指示するコマンド又は被検体HTに関する情報の入力を受け付ける。操作入力部70は、例えば、複数の入力スイッチを有する操作パネル、キーボード、及びマウス等を有する。尚、操作入力部70は、モニタ50と一体的に設けられるタッチパネルで構成されてもよい。
【0045】
図5は、本実施形態に係る制御装置10の有する機能ブロックを示す図である。
【0046】
制御装置10は、送受信部11、超音波画像生成部12、光学画像取得部13、表示画像生成部14、光学画像解析部15、目標姿勢データ選択部16、及び、誤穿刺判定部17を備えている。
【0047】
送受信部11は、制御部19の指示に従って、超音波プローブ20に対して駆動信号たる電圧パルスを送出すると共に、超音波プローブ20で生成された超音波エコーに係る受信信号を受信処理する。
【0048】
送受信部11は、送信部として機能する時、例えば、電圧パルスを、所定の電圧振幅、パルス幅及び送出タイミングに調整して、超音波プローブ20のチャンネルごとに送出する。そして、送受信部11は、複数のチャンネルそれぞれに対して適切な遅延時間を設定することによって目標とする深度を変更したり、異なるパルス波形を発生させる。
【0049】
送受信部11は、受信部として機能する時、例えば、チャンネルごとに微弱な超音波エコーに係る受信信号を増幅し、受信信号を、デジタル信号に変換する。そして、送受信部11は、受信ビームフォーマーにて、各チャンネルの受信信号を整相加算することで複数チャンネルの受信信号を1つにまとめて、音響線データとする。
【0050】
超音波画像生成部12は、送受信部11から受信信号(音響線データ)を取得して、被検体HTの内部の超音波画像(即ち、断層画像)を生成する。
【0051】
超音波画像生成部12は、例えば、超音波プローブ20が深度方向に向けてパルス状の超音波ビームを送信した際に、その後に検出される超音波エコーの信号強度(Intensity)を時間的に連続してラインメモリに蓄積する。そして、超音波画像生成部12は、超音波プローブ20からの超音波ビームが被検体HT内を走査するに応じて、各走査位置での超音波エコーの信号強度をラインメモリに順次蓄積し、フレーム単位となる二次元データを生成する。そして、超音波画像生成部12は、当該二次元データの信号強度を輝度値に変換することによって、超音波の送信方向と超音波の走査方向とを含む断面内の二次元構造を表す超音波画像を生成する。
【0052】
光学画像取得部13は、光学カメラ30から、時間的に連続して生成される光学画像を順次取得する。光学画像取得部13は、例えば、光学カメラ30にて光学画像が生成されるフレームレートの間隔で、光学画像を順次取得する。
【0053】
表示画像生成部14は、例えば、
図4に示すように、超音波プローブ20により取得された超音波画像R1と、光学カメラ30により取得された光学画像R2とを左右に並べた表示画像を生成する。そして、表示画像生成部14は、生成した表示画像のデータをモニタ50に送出し、モニタ50に当該表示画像を表示させる。そして、表示画像生成部14は、表示画像を順次更新し、動画形式の表示画像をモニタ50に表示させる(
図4を参照)。
【0054】
尚、表示画像生成部14は、例えば、超音波画像に付与されたタイムスタンプの時刻と光学画像に付与されたタイムスタンプの時刻とに基づいて、超音波画像が生成されたタイミングと光学画像が生成されたタイミングとの時間的な対応関係を特定し、同一又は近接するタイミングに生成された超音波画像と光学画像とを含む表示画像を生成する。そして、表示画像生成部14は、超音波画像生成部12から新たな超音波画像のデータを取得する毎に、及び/又は、光学画像取得部13から新たな光学画像のデータを取得する毎に、表示画像をリアルタイムで更新し、動画形式で、表示画像をモニタ50に表示させる。
【0055】
光学画像解析部15は、光学カメラ30により取得された光学画像R2を公知のパターン認識処理によって画像解析することで、穿刺針QTの姿勢を検出する。ここで、光学画像解析部15にて検出対象とする穿刺針QTの姿勢は、穿刺針QTの刃面の向き及び穿刺針QTの穿刺角度である。
【0056】
光学画像解析部15は、例えば、機械学習が施された学習済みの識別器モデルを用いて、穿刺針QTの姿勢を検出する。この種の識別器は、学習処理が施されることによって、識別対象のパターンの特徴を抽出し、ノイズ等が重畳するデータからも識別対象のパターンを正確に識別し得るように自律的に最適化される。つまり、この種の識別器モデルは、姿勢(ここでは、刃面の向き及び穿刺角度)をラベルとして穿刺針QTの画像特徴を教師データとして学習処理が施されることで、ある未知の光学画像が入力された際にも、当該光学画像に映る穿刺針QTの姿勢を識別し得るようになる。
【0057】
本実施形態に係る識別器モデルは、例えば、穿刺針QTの様々な姿勢の情報(例えば、穿刺角度及び刃面の向き)と、当該姿勢にあるときに撮影された穿刺針QTの光学画像とのデータセットを教師データとして、機械学習が施されている。これによって、識別器モデルは、任意の光学画像から、穿刺針QTの姿勢を特定し得るように構成される。かかる識別器モデルとしては、例えば、SVM(Support Vector Machine)、ランダムフォレスト、又は、畳み込みニューラルネットワーク等が挙げられる。
【0058】
図6は、穿刺時に、光学画像R2に映る穿刺針QTの画像特徴の一例を示す図である。
【0059】
図6Aは、穿刺角度が目標角度(例えば、30度)となっており、且つ、刃面の向きが適正向き(即ち、上向き)を向いている状態で、光学カメラ30により撮影された穿刺針QTの外観を示し、
図6Bは、
図6Aの状態から穿刺角度が目標角度(例えば、30度)よりも大きくなったときに、光学カメラ30により撮影された穿刺針QTの外観を示し、
図6Cは、
図6Aの状態から刃面の向きが不適正向き(即ち、下向き)に変わったときに、光学カメラ30により撮影された穿刺針QTの外観を示している。尚、QTaは、穿刺針QTの先端部QTaを表している。
【0060】
本実施形態に係る光学カメラ30は、穿刺針QTが被検体HTに穿刺される様子を、被検体HTの体表の上方側から撮影するように、超音波プローブ20の所定位置に取り付けられる。そのため、光学画像R2中には、平面視で、穿刺針QTの基端部側から先端部QTa側までの外観が映ることになる。
【0061】
穿刺針QTの刃面の向き及び穿刺針QTの穿刺角度は、一般に、光学画像R2中に映る穿刺針QTの輪郭形状から捉えることが可能である。穿刺針QTの穿刺角度は、例えば、光学画像R2中に映る穿刺針QTの先端部QTaの径に対する基端部の径の比率として捉えられる。これは、穿刺針QTの穿刺角度が目標角度よりも大きいときには、光学画像R2中に映る穿刺針QTの先端部QTaの径に対する基端部の径の比率が、穿刺針QTの穿刺角度が目標角度のときの当該比率よりも大きくなるためである(
図6Bを参照)。又、穿刺針QTの刃面の向きは、例えば、光学画像R2中に映る穿刺針QTの先端部QTaの針穴の向きにより捉えられる。
【0062】
目標姿勢データ選択部16は、ユーザーに指定された穿刺針QTの種類等に基づいて、データベースD1上に格納された目標姿勢データ群のうちから、誤穿刺判定部17の判定処理に適用する目標姿勢データを選択する。かかる目標姿勢データは、穿刺針QTの刃面の向き及び穿刺針QTの穿刺角度等に係る穿刺針QTの目標姿勢を示す。
【0063】
尚、データベースD1上に格納された目標姿勢データ群は、穿刺針QTの種類(例えば、採血針又は留置針)、及び穿刺針QTの太さ等と関連付けて記憶されている。
【0064】
誤穿刺判定部17は、光学画像解析部15に検出された穿刺針QTの姿勢と、目標姿勢データ選択部16に選択された穿刺針QTの目標姿勢に係る目標姿勢データとに基づいて、穿刺時における誤穿刺の発生の有無を判定する。そして、誤穿刺判定部17は、誤穿刺が発生している場合、モニタ50への表示出力又はスピーカ60への音声出力により、ユーザーにその旨を報知する。
【0065】
尚、誤穿刺判定部17による判定処理は、例えば、光学画像解析部15に検出された現在の穿刺針QTの刃面の向き及び穿刺角度と、目標姿勢データに設定された目標姿勢に係る穿刺針QTの刃面の向き及び穿刺角度とを比較することによって実施される。
【0066】
[超音波診断装置1の動作フロー]
まず、
図7を参照して、超音波診断装置1を用いて、穿刺針QTを被検体HTの体表に穿刺する際のユーザーの穿刺について、説明する。
【0067】
まず、ユーザーは、超音波診断装置1において穿刺支援モードを起動した後、モニタ50に表示される超音波画像R1を見ながら、被検体HT内の穿刺対象の目標部位HTaが超音波画像R1の走査方向中央位置(即ち、プローブ先端部20aの長軸方向中央位置20aa)に来るように、超音波プローブ20を移動させる(ステップS1)。
【0068】
次に、ユーザーは、モニタ50に表示される光学画像R2を見て、被検体HTの体表上に形成されるレーザポインタ40のライン状のレーザ光の投影像40Lに沿って、被検体HTの体表から穿刺針QTを穿刺する(ステップS2)。尚、このとき、ユーザーは、モニタ50に表示される超音波画像R1と光学画像R2を見て、穿刺針QTを被検体HTの体表に穿刺する際の目標穿刺位置を確認する。穿刺針QTの目標穿刺位置は、例えば、ライン状のレーザ光の投影像40L上の位置で、且つ、超音波プローブ20のプローブ先端部20aの長軸方向中央位置20aaから、被検体HTの体表上のプローブ先端部20aから所定距離離れた位置となる。目標部位HTaの被検体HTの体表からの深さ方向の距離が2cmである場合、仰角を30°と想定すると、穿刺針QTの目標穿刺位置は、超音波プローブ20のプローブ先端部20aの長軸方向中央位置20aaから、被検体HTの体表上のプローブ先端部20aから略3.5cm離れた位置となる。
【0069】
次に、ユーザーは、モニタ50に表示される光学画像R2を見て、平面視における穿刺針QTの姿勢(即ち、角度)がレーザ光の投影像40Lからずれないように(又は、垂直想像線R2aからずれないように)、穿刺針QTを被検体HTの内部に進めていく(ステップS3)。
【0070】
上記操作及び手技によって、穿刺針QTは、穿刺中の調整を要することなく、被検体HT内の目標部位HTaの位置に到達する。そして、ユーザーは、超音波画像R1内で、穿刺針QTの先端が、目標部位HTaの位置(ここでは、被検体HTの体表から深さ2cmの位置)に現れることを確認し、穿刺を終了する(ステップS4)。尚、穿刺針QTの先端は、超音波画像R1内では、通常、白い輝点として現れることになる。
【0071】
次に、穿刺時における本実施形態に係る超音波診断装置1の動作フローについて説明する。
【0072】
図8は、穿刺時における超音波診断装置1の動作の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、例えば、穿刺支援モードが開始された際に、制御装置10がコンピュータプログラムに従って、実行する処理である。
【0073】
図9は、穿刺時に誤穿刺が発生したときの超音波診断装置1の報知態様の一例を示す図である。
【0074】
まず、制御装置10は、光学カメラ30を用いて、穿刺針QTが被検体HT内に穿刺される状態を撮影した光学画像R2を取得する(ステップS11)。
【0075】
次に、制御装置10は、例えば、公知の背景差分法等によって、光学画像R2中から穿刺針QTを検出する(ステップS12)。
【0076】
次に、制御装置10は、例えば、学習済みの識別器モデルを用いた画像解析によって、光学画像R2中に映る穿刺針QTの姿勢を検出する(ステップS13)。尚、ステップS13において、制御装置10は、例えば、穿刺針QTの穿刺角度、及び穿刺針QTの刃面の向き等を検出する。
【0077】
次に、制御装置10は、ステップS13で検出された穿刺針QTの姿勢と、予め記憶された穿刺針QTの目標姿勢とに基づいて、誤穿刺が発生しているか否かを判定する(ステップS14)。ここで、誤穿刺が発生している場合(S14:YES)、制御装置10は、ステップS15に処理を進め、一方、誤穿刺が発生していない場合(S14:NO)、ステップS15の処理を実行することなく、
図8のフローチャートの処理を終了する。
【0078】
次に、制御装置10は、表示画像中に報知画像(例えば、誤穿刺の修正を促す画像)を埋設し、当該表示画像をモニタ50に表示させる(ステップS15)。又、このとき、制御装置10は、スピーカ60から報知音を出力させる。
【0079】
制御装置10は、ステップS11~ステップS15の処理を所定間隔で繰り返して実行し、誤穿刺の発生を監視し、ユーザーに対して、穿刺針QTが、目標姿勢で被検体HT内に穿刺されるように案内する。
【0080】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る超音波診断装置1は、
超音波プローブ20と、
超音波プローブ20の基端側に取り付けられ、穿刺針QTが被検体HTに穿刺される状態を撮影する光学カメラ30と、光学カメラ30により取得された光学画像を画像解析することで、穿刺針QTの姿勢を検出する光学画像解析部15と、
検出された穿刺針QTの姿勢と、予め記憶された穿刺針QTの目標姿勢とに基づいて、穿刺針QTの誤穿刺の発生を判定する誤穿刺判定部17と、を備える。
【0081】
従って、本実施形態に係る超音波診断装置1によれば、不適切な穿刺角度や刃面の向きで、穿刺針QTが被検体HTに穿刺されることに起因して、穿刺針QTが、目標部位以外の他の組織(例えば、動脈や神経など)を損傷させてしまう事態を抑制することができる。
【0082】
[変形例1]
被検体HTへの穿刺針QTの穿刺は、被検体HTの体表上に背景カバー用のシート材(図示せず)が載置された状態で行われるのがより好適である。
【0083】
これによって、光学画像中で、穿刺針QTの背景と穿刺針QTの存在領域との境界位置を鮮明にし、光学画像解析部15が、穿刺針QTの姿勢(穿刺角度等)を検出する処理をより正確に実施することができるようになる。
【0084】
尚、かかるシート材としては、例えば、平坦面を有する白色なシート材を用いることができる。かかる平坦面を有する白色なシート材を、被検体HTの体表上に載置した状態で、穿刺針QTの穿刺が行われることによって、被検体HTの肌の色等に依拠した個体差に起因して、光学画像解析部15の検出精度が悪化することを抑制することができる。
【0085】
[変形例2]
光学カメラ30としては、ステレオカメラを用いられるのがより好適である。
【0086】
これによって、穿刺針QTの奥行方向の位置を正確に捉えることが可能となり、光学画像解析部15が、穿刺針QTの姿勢(穿刺角度等)を検出する処理をより正確に実施することができるようになる。
【0087】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本開示に係る超音波診断装置によれば、ユーザーによる被検体への穿刺を、より容易にすることが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 超音波診断装置
10 制御装置
11 送受信部
12 超音波画像生成部
13 光学画像取得部
14 表示画像生成部
15 光学画像解析部
16 目標姿勢データ選択部
17 誤穿刺判定部
20 超音波プローブ
30 光学カメラ
40 レーザポインタ
50 モニタ
60 スピーカ
70 操作入力部
HT 被検体
QT 穿刺針