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特開2023-156104金属粒子凝集体、導電性フィルム、接続構造体、およびこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156104
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】金属粒子凝集体、導電性フィルム、接続構造体、およびこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/148 20220101AFI20231017BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20231017BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20231017BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20231017BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20231017BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20231017BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20231017BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20231017BHJP
   B22F 1/054 20220101ALI20231017BHJP
【FI】
B22F1/148
B22F1/102
B22F3/02 K
B22F7/08 C
H01B5/00 E
H01B5/16
H01B5/14 Z
B22F1/00 R
B22F1/054
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065768
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】渡部 一夢
(72)【発明者】
【氏名】野田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】白岩 俊紀
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
(72)【発明者】
【氏名】林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】波木 秀次
【テーマコード(参考)】
4K018
5G307
【Fターム(参考)】
4K018AA02
4K018AA03
4K018AA06
4K018AA07
4K018AA14
4K018AA19
4K018AA40
4K018AB01
4K018AB03
4K018AC01
4K018BA01
4K018BA02
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA08
4K018BA09
4K018BA10
4K018BA20
4K018BB04
4K018BB05
4K018BC29
4K018CA44
4K018DA18
4K018HA08
4K018JA36
4K018KA22
4K018KA33
5G307AA02
5G307GA06
5G307GB02
5G307GC02
5G307HA02
5G307HB03
(57)【要約】
【課題】粒度分布が整っており、良好な転写特性を有する微小な金属粒子凝集体、導電性フィルム、接続構造体、およびこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】金属粒子凝集体1は、金属粒子2の凝集体であって、表面に空隙3を有し、導電性フィルム5に転写し、導電性フィルム5の表面で観察したときに、平面視において凝集体の面積の5%以上が空隙3である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子の凝集体であって、
表面に空隙を有し、
導電性フィルムに転写し、上記導電性フィルム表面で観察したときに、平面視において上記凝集体の面積の5%以上が上記空隙である
金属粒子凝集体。
【請求項2】
上記金属粒子は、平均粒径1~1000nmのナノ粒子を含む
請求項1に記載の金属粒子凝集体。
【請求項3】
上記凝集体の面積の50%未満が上記空隙である
請求項1又は2に記載の金属粒子凝集体。
【請求項4】
上記金属粒子凝集体の径のCV値が20%以下である
請求項1又は2に記載の金属粒子凝集体。
【請求項5】
上記金属粒子は、Au,Cu,Ag,Ni,Al,Sn,Ti,Zn,Wのいずれかの金属、複数の上記金属の合金、若しくは上記金属又は上記合金の酸化物又は窒化物を含む
請求項1又は2に記載の金属粒子凝集体。
【請求項6】
上記金属粒子は、表面がフラックスで被覆されたハンダ粒子を含む
請求項1又は2に記載の金属粒子凝集体。
【請求項7】
同一寸法及び同一形状の複数の凹部が形成された基板の上記凹部に、上記凹部の開口径未満の粒径を有する金属粒子を充填する工程と、
上記凹部に充填された上記金属粒子を凝集化させて金属粒子凝集体を得る工程とを有し、
上記金属粒子凝集体は、導電性フィルムに転写し、上記導電性フィルム表面で観察したときに、平面視において上記空隙が上記凝集体の面積の5%以上存在する
金属粒子凝集体の製造方法。
【請求項8】
上記凹部に上記金属粒子が充填された上記基板を加熱することにより、上記金属粒子を凝集化する請求項7に記載の金属粒子凝集体の製造方法。
【請求項9】
表面に金属粒子凝集体が配置された接着材層を有し、
上記金属粒子凝集体は、表面に空隙を有し、上記接着材層の表面で観察したときに、平面視において上記凝集体の面積の5%以上に上記空隙を有する
導電性フィルム。
【請求項10】
上記金属粒子凝集体が規則的に配置されている請求項9に記載の導電性フィルム。
【請求項11】
表面に金属粒子凝集体が配置された接着材層を有する導電性フィルムの製造方法において、
同一寸法及び同一形状の複数の凹部が形成された基板の上記凹部に、上記凹部の開口径未満の粒径を有する金属粒子を充填する工程と、
上記凹部に充填された上記金属粒子を凝集化させて金属粒子凝集体を得る工程と、
上記基板の上記凹部が形成された面に接着材層を貼り付け、上記接着材層に上記金属粒子凝集体を転写させる工程と、
上記金属粒子凝集体が転写された上記接着材層を上記基板から剥離する工程とを有し、
上記金属粒子凝集体は、導電性フィルムに転写し、上記導電性フィルム表面で観察したときに、平面視において上記空隙が上記凝集体の面積の5%以上存在する
導電性フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の導電性フィルムにより第1の電子部品と第2の電子部品が異方性導電接続されている接続構造体。
【請求項13】
第1の電子部品と第2の電子部品を、異方性導電フィルムを介して熱圧着することにより第1の電子部品と第2の電子部品を異方性導電接続した接続構造体を製造する方法であって、異方性導電フィルムとして請求項9又は10に記載の導電性フィルムを使用して第1の電子部品と第2の電子部品を異方性導電接続する接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、金属粒子凝集体、導電性フィルム、接続構造体、およびこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器類の小型化、高機能化に伴い、半導体を含め回路やモジュール、その配線などあらゆるものの微細化、微小化が進んでいる。その中で微細化技術や、微細化されたモノの接合に対応するために、ナノ材料に注目が集まっている。
【0003】
金属ナノ粒子は、分散剤などの他の材料と混ぜ合わせペースト状のインクにした金属ナノインクの作製、またそれを用いた細線の電極形成の検討(プリンテッドエレクトロニクス)が行われている。またマイクロサイズの粒子やその他被着体へのナノコーティングなど、様々な検討が行われている。特に銀ナノ粒子は電子材料、配線材料としての検討が進められているが、昨今では接合材料としても銀や銀合金ナノ粒子が利用され始めてきている。また現在、ニッケルやそれに代わる銅のナノ粒子の生成法や応用の検討も進められてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-108269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
IC等の電子部品を接続するためのフィルム材料である異方性導電フィルム(ACF)においても、近年の回路接続部のファインピッチ化に対応して、粒子整列型の異方性導電フィルムが用いられている。粒子整列型の異方性導電フィルムは、微小な端子においても導電粒子を捕捉可能であり、同時に狭小な端子間で粒子同士が接触してショートに至るリスクを低減することができる。
【0006】
粒子整列型の異方性導電フィルムの製造方法としては、導電粒子を整列配置し、接着材層に転写する方法が有る。この方法においては、導電粒子の粒径が整っている必要があり、粒度分布を広く持つ導電粒子(CV値20%以上)では転写不良等により整列化の精度が極端に落ちる。特にはんだ粒子は、粒度分布が整っているようなものはなく、広い粒度分布を持つもののみが生産され、粒子整列型の異方性導電フィルムに供することは困難であった。
【0007】
また、導電粒子として、金属ナノ粒子を用いようとした場合、ナノ粒子は高充填可能で導電性を安定して発現できるメリットがある。一方で、金属ナノ粒子は、粒度分布を広く持つことと併せ、そのサイズからも、均一性や高分散性のハンドリングが難しいというデメリットも併せ持つ。したがって、金属ナノ粒子を用いた異方性導電フィルムを得るために、粒度分布が整った微小な金属粒子が求められている。
【0008】
そこで、本技術は、粒度分布が整っており、良好な転写特性を有する微小な金属粒子凝集体、導電性フィルム、接続構造体、およびこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本技術に係る金属粒子凝集体は、金属粒子の凝集体であって、表面に空隙を有し、導電性フィルムに転写し、上記導電性フィルム表面で観察したときに、平面視において上記凝集体の面積の5%以上が上記空隙である。
【0010】
また、本技術に係る金属粒子凝集体の製造方法は、同一寸法及び同一形状の複数の凹部が形成された基板の上記凹部に、上記凹部の開口径未満の粒径を有する金属粒子を充填する工程と、上記凹部に充填された上記金属粒子を凝集化させて金属粒子凝集体を得る工程とを有し、上記金属粒子凝集体は、導電性フィルムに転写し、上記導電性フィルム表面で観察したときに、平面視において上記空隙が上記凝集体の面積の5%以上存在するものである。
【0011】
また、本技術に係る導電性フィルムは、表面に金属粒子凝集体が配置された接着材層を有し、上記金属粒子凝集体は、表面に空隙を有し、上記接着材層の表面で観察したときに、平面視において上記凝集体の面積の5%以上に上記空隙を有するものである。
【0012】
また、本技術に係る導電性フィルムの製造方法は、表面に金属粒子凝集体が配置された接着材層を有する導電性フィルムの製造方法において、同一寸法及び同一形状の複数の凹部が形成された基板の上記凹部に、上記凹部の開口径未満の粒径を有する金属粒子を充填する工程と、上記凹部に充填された上記金属粒子を凝集化させて金属粒子凝集体を得る工程と、上記基板の上記凹部が形成された面に接着材層を貼り付け、上記接着材層に上記金属粒子凝集体を転写させる工程と、上記金属粒子凝集体が転写された上記接着材層を上記基板から剥離する工程とを有し、上記金属粒子凝集体は、導電性フィルムに転写し、上記導電性フィルム表面で観察したときに、平面視において上記空隙が上記凝集体の面積の5%以上存在するものである。
【0013】
また、本技術に係る接続構造体は、上記記載の導電性フィルムにより第1の電子部品と第2の電子部品が異方性導電接続されているものである。
【0014】
また、本技術に係る接続構造体の製造方法は、第1の電子部品と第2の電子部品を、異方性導電フィルムを介して熱圧着することにより第1の電子部品と第2の電子部品を異方性導電接続した接続構造体を製造する方法であって、異方性導電フィルムとして上記記載の導電性フィルムを使用して第1の電子部品と第2の電子部品を異方性導電接続するものである。
【発明の効果】
【0015】
本技術により形成された金属粒子凝集体は、粒度分布が整い、且つ空隙率5%以上とすることで、高い転写率で、規則的に一括転写できることが分かる。したがって、粒子整列型の導電性フィルムを、安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、導電性フィルムの接着材層に金属粒子凝集体が所定のパターンで配列された状態を示す平面写真である。
図2図2(A)は、金属粒子凝集体1の断面写真であり、図2(B)は、導電性フィルムの接着材層に金属粒子凝集体が所定のパターンで配列された状態を示す平面写真であり、図2(C)は、金属粒子凝集体1を模式的に示す断面図である。
図3図3は、金属粒子凝集体の観察画像データの2値化処理を説明するための図である。
図4図4は金属粒子凝集体1の製造工程を示す図であり、(A)は基板10及び金属粒子2を用意した状態を示し、(B)は凹部11に金属粒子2を充填した状態を示し、(C)は金属粒子2が凝集化した状態を示す。
図5図5は基板10を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図6図6は導電性フィルム5の製造工程を示す図であり、(A)は導電性フィルム5を示す断面図、(B)は基板10の凹部11が形成された面に接着材層6を貼り付けた状態を示す断面図、(C)は金属粒子凝集体1が転写された導電性フィルム5を基板10から剥離した状態を示す断面図である。
図7図7(A)は金属粒子凝集体1が転写された導電性フィルム5を示す断面図であり、図7(B)はフィルム部材12を接着材層6にラミネートしてニップロール13を通して金属粒子凝集体1を接着材層6内に押し込む工程を示す断面図であり、図7(C)は金属粒子凝集体1が接着材層6内に押し込まれた状態を示す断面図である。
図8図8(A)は金属粒子凝集体1が転写された導電性フィルム5を示す断面図であり、図8(B)は絶縁性接着フィルム16を接着材層6にラミネートした状態を示す断面図であり、図8(C)は金属粒子凝集体1が接着材層6内に埋設された状態を示す断面図である。
図9図9(A)は金属粒子凝集体1が転写された導電性フィルム5を示す断面図であり、図9(B)は絶縁性接着材層17を接着材層6上に形成した状態を示す断面図であり、図9(C)は金属粒子凝集体1が接着材層6内に埋設された状態を示す断面図である。
図10図10は、導電性フィルム5を用いた接続構造体20の導電接続部位を模式的に示す断面図である。
図11図11は、ハンダ-フラックス混合体の金属ナノ粒子を示す画像である。
図12図12(A)はハンダナノ粒子をフィルム基板の凹部に充填した状態を示す平面画像であり、図12(B)はフィルム基板を加熱してハンダナノ粒子を凝集化させた状態を示す平面画像であり、図12(C)は絶縁性接着剤層へ転写されたハンダナノ粒子の凝集体を示す平面画像である。
図13図13は比較例1に係る導電性フィルムの接着材層に転写されたハンダ粒子を示す平面画像である。
図14図14(A)は、Ag粉体をフィルム基板の凹部に充填した状態を示す平面画像であり、図14(B)はフィルム基板を加熱してAg粉体を凝集化(焼結化)させた状態を示す平面画像であり、図14(C)は絶縁性接着剤層へ転写されたAg粉体の凝集体(焼結体)を示す平面画像である。
図15図15(A)は、Cu粉をフィルム基板の凹部に充填した状態を示す平面画像であり、図15(B)はフィルム基板を加熱してCu粉を凝集化(焼結化)させた状態を示す平面画像であり、図15(C)は絶縁性接着剤層へ転写されたCu粉の凝集体(焼結体)を示す平面画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本技術が適用された金属粒子凝集体、導電性フィルム、接続構造体、およびこれらの製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0018】
[金属粒子凝集体の構成]
本技術が適用された金属粒子凝集体1は、金属粒子2の凝集体であって、表面に空隙3を有し、導電性フィルム5に転写し、導電性フィルム表面で観察したときに、凝集体の面積の5%以上が空隙である。図1は、導電性フィルム5の接着材層6に金属粒子凝集体1が所定のパターンで配列された状態を示す平面写真である。図2(A)は、金属粒子凝集体1の断面写真であり、図2(B)は、導電性フィルムの接着材層に金属粒子凝集体が所定のパターンで配列された状態を示す平面写真であり、図2(C)は、金属粒子凝集体1を模式的に示す断面図である。
【0019】
金属粒子2を構成する金属としては、一例としてAu,Cu,Ag,Ni,Al,Sn,Ti,Zn,W等のいずれか一又は複数の金属、又はこれら複数の金属の合金が挙げられる。また、金属粒子2は、これら金属又は合金の酸化物又は窒化物であってもよい。
【0020】
また、金属粒子2は、ハンダ粒子であってもよい。ハンダ粒子の組成は、特に限定されるものではなく、錫又は錫合金を含む。錫合金としては、例えば、Sn-In、Sn-Bi、Sn-Ag-Cu、Sn-Cuなどが挙げられる。
【0021】
また、ハンダ粒子を用いる場合、酸化膜を溶融させる必要があるため、表面をフラックスで被覆したものであることが好ましい。もしくは微細な粉体フラックスを用いて、後述するようにハンダ粒子とともに基板10の凹部11に充填し凝集化してもよい。フラックスとしては、はんだ接合等に一般的に用いられているものを使用できる。また、フラックスは一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0022】
金属粒子2の大きさは、用途に応じて選択できるが、回路やモジュール、その配線などのファインピッチ化に対応して金属ナノ粒子を用いることが好ましい。ここで金属ナノ粒子とは、平均粒径が1000nm以下の金属粒子をいう。本技術にかかる金属粒子は、1μm以上の粒子でも良いが、凝集体のサイズや形状の均一化を図るために平均粒径が1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。
【0023】
金属粒子2の形状としては、例えば球状が挙げられるが、金属粒子の形状は特に限定されず、任意の形状ものを用いることができ、例えばナノワイヤー、ナノチューブ、フレーク状、デンドライト状であってもよい。
【0024】
[凝集体]
金属粒子凝集体1は、上述した金属粒子2、好ましくは金属ナノ粒子が、後述する凝集化工程を経て凝集されたものである。金属粒子凝集体1としては、例えば金属粒子2としてハンダ粒子を用いた場合、加熱によって溶融したハンダ粒子の融合体をいう。また、金属粒子2としてAuやCu等の金属を用いた場合、これらの金属を加熱によって焼結させた焼結体をいう。
【0025】
この金属粒子凝集体1は、少なくとも表面に空隙3を有し、導電性フィルム5に転写し、導電性フィルム表面で観察したときの平面視において、1つの凝集体の面積の5%以上を占める。この空隙率が5%以上であることにより、金属粒子凝集体1は、導電性フィルム5の接着材層6への転写率が良好となる。一方、この空隙率が5%未満の場合、導電性フィルム5の接着材層6への転写率が低下し、粒子整列型の異方性導電フィルムの製造においては、転写不良により整列化の精度が悪化する等、歩留まりが低下する。
【0026】
金属粒子凝集体1の空隙率を求める方法としては、例えば、金属粒子凝集体1を導電性フィルム5の接着材層6に転写し、この接着剤層6を金属顕微鏡やSEM(Scanning Electron Microscope)等の電子顕微鏡などを用いた観察画像において確認することにより行うことができる。すなわち、図3に示すように、1つの金属粒子凝集体1を金属顕微鏡やSEMで観察し、画像データの2値化処理を行う。2値化データにおいて、1つの金属粒子凝集体1の全体の面積を分母とし、凝集体外枠よりも内側で黒くなった部分、すなわち空隙3の面積を分子として、空隙率を算出することができる。
【0027】
金属粒子凝集体1の粒子径は、実装される電子部品のバンプや配線基板の電極の面積により適宜設定できるが、平面視で0.5~10μmであることが好ましく、1.0~5.0μmであることがより好ましい。金属粒子凝集体の粒子径は、顕微鏡観察(光学顕微鏡、金属顕微鏡、電子顕微鏡など)を用い、例えば100個以上を計測し、その平均から求めることができる。なお、後述するように、本技術が適用された金属粒子凝集体1は、粒度分布が整っており、CV値が20%以下、好ましくは10%以下とされている。
【0028】
[金属粒子凝集体の製造方法]
次いで、金属粒子凝集体1の製造方法について説明する。金属粒子凝集体1の製造方法は、図4に示すように、複数の凹部11が形成された基板10を用意し、凹部11に、凹部11の開口径未満の粒径を有する金属粒子2を充填する工程Aと、凹部11に充填された金属粒子2を凝集化させて金属粒子凝集体1を得る工程Bとを有する。図5は基板10を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。図4は金属粒子凝集体1の製造工程を示す図であり、(A)は基板10及び金属粒子2を用意した状態を示し、(B)は凹部11に金属粒子2を充填した状態を示し、(C)は金属粒子2が凝集化した状態を示す。
【0029】
[基板]
基板10は、複数の凹部11が形成され、該凹部11に上述した金属粒子2が充填され、加熱等の凝集化工程を経て金属粒子凝集体1を形成するものである。
【0030】
基板10の材料は、凹部11の加工が可能であり、かつ加熱等の金属粒子2の凝集化工程に耐えうる材料であれば特に制限はなく、例えばプラスチックフィルム、ガラス、金属、金属酸化物、セラミック等を用いることができる。また、基板10の材料は、ガラスエポキシのようなコンポジット基板でも構わない。基板10は、金属粒子2の融着を防ぐために、表面に離型処理が施されていてもよい。
【0031】
プラスチックフィルムの材料としては、PES、PS、PP、PC等が挙げられる。なかでも、金属粒子2の凝集化の温度に耐える必要があるため、耐熱性の高いポリイミドやポリアミドが特に好ましく、また、高耐熱シリコン樹脂を用いることもできる。
【0032】
[凹部]
基板10には、金属粒子凝集体1が形成される複数の凹部11が設けれられている。各凹部11は、同一形状、同一寸法を有し、金属粒子凝集体1の配列パターンに応じたパターンで形成されている。凹部11の配列パターンとしては、特に限定はないが、例えば六方格子状配列が挙げられる。
【0033】
凹部11の体積は、一又は複数の金属粒子2が充填可能な大きさを有する。また、凹部11の開口径D1及び深さD2は金属粒子2の粒径よりも大きいサイズを有する。凹部11の形状は、金属粒子凝集体1の成形形状に応じた形状を有し、球状、立柱状、針状等、特に制限はない。本技術は、凹部11の形状に応じて任意の形状の金属粒子凝集体1を形成することができ、例えば凹部11の開口形状を六角形状とし、底面を平坦面とすることにより、上下面が平坦な六角柱状の金属粒子凝集体1を成形することができる。
【0034】
また、凹部11は、凹部11の底部側から基板10の表面側に向けて開口面積が拡大する断面テーパ状に形成されていることが好ましい。これにより、凹部11内に形成された金属粒子凝集体1が導電性フィルム5の接着材層6に転写しやくすることができる。
【0035】
凹部11は、フォトリソグラフ法等の公知の微細加工技術を用いて形成することができる。また、基板10の材料としてプラスチックフィルムを用いる場合は、凹部11の形状に応じた凸部が配列されたマスタ原版に液状のプラスチック材料を塗布、硬化させた後、プラスチックフィルムをマスタ原版から剥離することにより凹部11が形成されたプラスチックフィルム製の基板10を得ることができる。
【0036】
金属粒子2の充填方法は、特に限定されず、公知の乾式又は湿式の方法のいずれであってもよい。例えば、基板10に金属粒子2が散布された後、スキージを摺動させることにより余分な金属粒子2を除去しつつ、凹部11に金属粒子2を充填させることができる。余分な金属粒子2はエアブロアにより除去してもよい。
【0037】
次いで、凹部11に充填された金属粒子2を凝集化させて金属粒子凝集体1を得る。凝集化の方法は、例えば基板10を加熱することにより、凹部11に充填された金属粒子2を焼結させる方法が挙げられる。金属粒子2としてハンダ粒子を用いた場合には、ハンダ粒子の融点以上に加熱し、粒子同士を融合させることにより金属粒子凝集体1を得る。
【0038】
基板10の加熱方法は、凹部11に充填された金属粒子2を所定の温度に加熱することができれば特に限定はなく、例えばホットプレートやオーブンによって加熱することができる。なお、金属の種類によっては酸化による影響があるため、低酸素雰囲気下で加熱することが好ましい。このため、不活性ガス(窒素やアルゴン等)による低酸素雰囲気下で加熱できるオーブンによって加熱することがより好ましい。また生成物の酸化を防ぐために水素還元炉を用いることもできる。これにより、金属粒子表面の酸化被膜が還元され、焼結や融合を効率よく行うことができる。
【0039】
これにより、基板10の凹部11内に金属粒子凝集体1が形成される。金属粒子凝集体1は、凹部11の形成パターンに応じて規則的に配列されている。また、これら金属粒子凝集体1は、粒度が整っており(CV値20%以下、好ましくは10%以下)、また表面に空隙3が形成されている。これにより、金属粒子凝集体1は、導電性フィルム5の接着材層6に一括して転写される際に良好な転写率を奏する。したがって、導電性フィルム5の接着材層6には、所定の配列パターンで高精度に金属粒子凝集体1が転写される。
【0040】
[導電フィルム]
導電性フィルム5は、表面に金属粒子凝集体1が配置された接着材層6を有する。上述したように、金属粒子凝集体1は、空隙3が形成され、接着材層6の表面で観察したときに、面積の5%以上にこの空隙3が現れる。また、金属粒子凝集体1は、規則的に配列されていることが好ましく、例えば特許第6119718号公報に記載されているように、六方格子状に配列されることが好ましい。
【0041】
接着材層6を構成するバインダーとしては、例えば、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤が挙げられる。また、エポキシ系接着剤に含有されるエポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、芳香族スルホニウム塩系などのカチオン重合開始剤やアニオン重合開始剤を好ましく用いることができる。また、アクリル系接着剤は、ラジカル重合反応を利用した接着剤であり、例えば、(メタ)アクリレート化合物などのラジカル重合性物質と、過酸化物などのラジカル重合開始剤とを含有する。電子機器の使用時に耐熱性が求められる場合や高い接着性の観点からは、エポキシ系接着剤であることが好ましい。なお、ここでは熱硬化系の接着材層を説明したが、後の工程で熱を避けたい場合などには光硬化系の接着材層を用いてもよい。その場合、前述した熱重合開始剤にかえて光重合開始剤を使用すればよい。
【0042】
[他の添加剤]
接着材層6には、上述したバインダーに加えて、本技術の効果を損なわない範囲で、従来、接着剤に使われている種々の添加剤を配合することができる。添加剤の粒子径は、金属粒子凝集体1の平均粒子径よりも小さいことが望ましいが、電極間接合を阻害しない大きさであれば特に限定はない。
【0043】
接着材層6は、例えば、バインダー及び添加剤を溶剤中で混合し、この混合物を、バーコーターにより、剥離処理された基材フィルム7上に所定厚みとなるように塗布した後、乾燥させて溶媒を揮発させることにより得ることができる。
【0044】
[導電性フィルムの製造工程]
導電性フィルム5の製造工程は、上述した金属粒子凝集体1の製造工程に続いて、基板10の凹部11が形成された面に接着材層6を貼り付け、接着材層6に金属粒子凝集体1を転写させる工程と、金属粒子凝集体1が転写された接着材層6を基板10から剥離する工程とを有する。図6は、導電性フィルム5の製造工程を示す図であり、(A)は導電性フィルム5を示す断面図、(B)は基板10の凹部11が形成された面に接着材層6を貼り付けた状態を示す断面図、(C)は金属粒子凝集体1が転写された導電性フィルム5を基板10から剥離した状態を示す断面図である。
【0045】
導電性フィルム5は、接着材層6の表面に複数の金属粒子凝集体1が所定の配列パターンで一括して転写される。この転写工程では、金属粒子凝集体1が凹部11に形成された状態の基板10に、凹部11の開口側から、基材フィルム7に支持された接着材層6を貼り付けることにより、金属粒子凝集体1を転写させる。このとき、加熱機構を備えたステージ及びローラ等を用いて、基板10と接着材層6の貼合体を加熱押圧してもよい。
【0046】
その後、金属粒子凝集体1が転写された接着材層6を基板10から剥離する。接着材層6の表面には、転写された金属粒子凝集体1が露出している。具体的には、金属粒子凝集体1の、基板10の凹部11の底面に面していた面が接着材層6の表面に現れる。
【0047】
上述したように、金属粒子凝集体1は粒度がそろっており、良好な粒度分布を有し、また金属粒子凝集体1の表面には所定の割合以上の空隙3が形成されているため、良好な転写率を有する。これにより、接着材層6の表面に金属粒子凝集体1を所定のパターンで高精度に配列することができる。
【0048】
また、導電性フィルム5は、金属顕微鏡やSEMなどにより、接着材層6の表面が観察され、平面視において、1つの金属粒子凝集体1の面積に占める空隙3の割合が求められる。空隙3が1つの金属粒子凝集体1の面積の5%以上を占めることにより、金属粒子凝集体1は、導電性フィルム5の接着材層6への転写率が良好となる。
【0049】
なお、導電性フィルム5は、接着材層6に転写した金属粒子凝集体1を接着材層6に埋設してもよい。金属粒子凝集体1を接着材層6に埋設する方法としては、例えば、図7に示すように、導電性フィルム5は、金属粒子凝集体1を接着材層6に転写した後、PETフィルム等のフィルム部材12をラミネートし、ニップロール13を通すことにより金属粒子凝集体1を接着材層6内に押し込む方法が挙げれられる。
【0050】
図7(A)は金属粒子凝集体1が転写された導電性フィルム5を示す断面図であり、図7(B)はフィルム部材12を接着材層6にラミネートしてニップロール13を通して金属粒子凝集体1を接着材層6内に押し込む工程を示す断面図であり、図7(C)は金属粒子凝集体1が接着材層6内に押し込まれた状態を示す断面図である。
【0051】
他の方法としては、図8に示すように、PETフィルム等のベースフィルム14に絶縁性接着剤層15が塗布形成された絶縁性接着フィルム16を用意し、金属粒子凝集体1が転写された接着材層6にラミネートする方法が挙げられる。絶縁性接着剤層15は、接着材層6と材料が異なっていても構わないが、接着剤層6の硬化温度・溶融粘度の観点から同材料であることが好ましい。また、絶縁性接着剤層15は、接着材層6にラミネートされることにより、接着材層6と一体となって導電性フィルム5の接着材層6を構成する。これにより、金属粒子凝集体1は、接着材層6内に埋設される。ラミネート後、ベースフィルム14は接着材層6より剥離される。
【0052】
図8(A)は金属粒子凝集体1が転写された導電性フィルム5を示す断面図であり、図8(B)は絶縁性接着フィルム16を接着材層6にラミネートした状態を示す断面図であり、図8(C)は金属粒子凝集体1が接着材層6内に埋設された状態を示す断面図である。
【0053】
また、他の方法としては、図9に示すように、金属粒子凝集体1が転写された接着材層6に絶縁性接着剤層17を形成する方法が挙げられる。絶縁性接着剤層17は、溶剤で溶解した絶縁性接着剤組成物を接着材層6に塗布して乾燥することにより形成することができる。あるいは、絶縁性接着剤層17は、無溶剤の絶縁性接着剤組成物を接着材層6に塗布し、加熱などによりBステージ化することにより形成することができる。絶縁性接着剤層17は、接着材層6と材料が異なっていても構わないが、接着剤層6の硬化温度・溶融粘度の観点から同材料であることが好ましい。また、絶縁性接着剤層17は、接着材層6上に形成されることにより、接着材層6と一体となって導電性フィルム5の接着材層6を構成する。これにより、金属粒子凝集体1は、接着材層6内に埋設される。
【0054】
図9(A)は金属粒子凝集体1が転写された導電性フィルム5を示す断面図であり、図9(B)は絶縁性接着材層17を接着材層6上に形成した状態を示す断面図であり、図9(C)は金属粒子凝集体1が接着材層6内に埋設された状態を示す断面図である。
【0055】
なお、導電性フィルム5は、金属粒子凝集体1が転写あるいは埋設された接着材層6にさらに絶縁性接着材層を積層してもよい。絶縁性接着材層は、接着材層6の金属粒子凝集体1が転写あるいは埋設された面に積層されてもよく、接着材層6の金属粒子凝集体1が転写あるいは埋設された面と反対側の面に積層されてもよい。また、絶縁性接着材層は、絶縁性樹脂組成物からなる絶縁性接着フィルムを接着材層6にラミネートすることによって形成してもよく、絶縁性樹脂組成物を接着材層6に塗布した後、乾燥等させることによって形成してもよい。
【0056】
[接続構造体]
図10は、導電性フィルム5を用いた接続構造体20の導電接続部位を模式的に示す断面図である。接続構造体20は、導電性フィルム5を介して接続対象物である第1の電子部品と第2の電子部品とが異方性導電接続されたものであり、例えば、ICチップ等の電子部品21をフレキシブル基板や液晶パネル等の回路基板22上に電気的及び機械的に接続固定したものである。以下の説明では、第1の電子部品として電子部品21を、第2の電子部品として回路基板22を例に説明する。電子部品21には、接続端子としてバンプ23が形成されている。一方、回路基板22の上面には接続端子として電極24が形成され、バンプ23と対向されている。
【0057】
そして、電子部品21と回路基板22の間には、接着剤となる本技術が適用された導電性フィルム5が介在している。バンプ23と電極24が対向する部分では、導電性フィルム5に配列されている金属粒子凝集体1が挟持されて、電気的な導通が図られている。また、それと同時に、接着材層6を構成するバインダー成分によって、電子部品21と回路基板22との機械的な接合も図られている。
【0058】
隣接するバンプ23間の領域においては、金属粒子凝集体1がバンプ23や電極24と接することなく保持されている。上述したように、導電性フィルム5は、金属粒子凝集体1が、所定のパターンで精度よく配列されている。したがって、バンプ23や電極24がファインピッチで形成されていても、隣接するバンプ23間でショートを起こすリスクが低減され、高い導通信頼性を有する。
【0059】
なお、本実施形態に係る接続構造体50の具体例としては、半導体装置、液晶表示装置、LED照明装置等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
[接続構造体の製造工程]
このような接続構造体20は、電子部品21と回路基板22を、異方性導電フィルムを介して熱圧着することにより形成することができる。異方性導電フィルムは、本技術が適用された導電性フィルム5を用いる。
【0061】
電子部品21と回路基板22は、バンプ23及び電極24が導電性フィルム5を介して対向するように配置される。電子部品21と回路基板22の接続においては、導電性フィルム5は、予め接着材層6が回路基板22に仮貼りされ、その上から電子部品21が搭載される。このとき、導電性フィルム5は、金属粒子凝集体1が転写された接着材層6の表面側を回路基板22に貼付されることが好ましい。
【0062】
次いで、電子部品21と回路基板22の積層体を、厚さ方向に熱加圧する。バインダーとして光硬化性樹脂を用いた場合には、熱加圧と同時に光照射を行う。これにより、バインダーが溶融して電子部品21と回路基板22の間に充填されるとともに、金属粒子凝集体1がバンプ23及び電極24の間に挟持される。バンプ23及び電極24の間にない金属粒子凝集体1は、隣接するバンプ23間のスペースに保持され、この状態でバインダーが硬化される。以上により、電子部品21と回路基板22が電気的、機械的に接続された接続構造体を得る。
【実施例0063】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本技術は、以下の実施例に限定されるものではない。第1の実施例では、ナノサイズに粉体加工したハンダナノ粒子を用いて金属粒子凝集体を形成し、接着材層に転写した導電性フィルムと、広い粒度分布を持つハンダ粒子及び当該ハンダ粒子を用いて形成した金属粒子凝集体を接着材層に転写した導電性フィルムを作製し、各導電性フィルムにおける金属粒子凝集体及びハンダ粒子の転写率を測定、評価した。
【0064】
[フィルム基板]
凹部を形成する基板材料として、耐熱性を考慮しポリイミドを使用した。ポリイミドワニス(ユピア:宇部興産株式会社製)を凸部(平面視六角形、開口径4.2um、高さ2um)が六方格子状に形成されたマスタ原版上に塗布し、加熱処理させることで、凸部に応じた形状の凹部を持つポリイミドフィルム基板を得た。このフィルム基板の各凹部は、マスタ原版の凸部の形状が転写されており、平面視六角形、開口径4.2um、深さ2umであり、また、フィルム基板の表面に六方格子状に配列されている。
[実施例1]
【0065】
[金属粒子凝集体材料]
実施例1に係る金属粒子凝集体の材料として、Sn42Bi58組成のハンダ粒子(三井金属鉱業者製ST-3、D10:1.7、D50:3.1、D90:5.0)を高周波熱プラズマ法でナノサイズに粉体加工し、ハンダナノ粒子を得た。また同時にフラックス成分としてグルタル酸も併せてナノ加工し、ハンダナノ粒子と混合させてハンダ-フラックス混合体の金属ナノ粒子を準備した(図11参照)。
【0066】
[金属粒子凝集体の作製]
フィルム基板の凹部に、作製したハンダ-フラックス混合体の金属ナノ粒子を充填した。このフィルム基板を、140℃に熱したオーブンに投入し、1分間加熱することにより溶融したハンダ粒子の融合体からなる金属粒子凝集体を作製した。
【0067】
[導電性フィルム]
金属粒子凝集体が転写される接着材層として、基材フィルム(PET)に支持された厚さ4μmの絶縁性接着剤層を形成した。この絶縁性接着剤層にフィルム基板を貼り付け、金属粒子凝集体を転写させることにより導電性フィルムを得た。
【0068】
[実施例2]
実施例2は、フィルム基板の加熱条件を160℃、1分間とした他は実施例1と同じ条件で導電性フィルムを得た。
【0069】
[実施例3]
実施例3は、フィルム基板の加熱条件を180℃、1分間とした他は実施例1と同じ条件で導電性フィルムを得た。
【0070】
[実施例4]
実施例4は、フィルム基板の加熱条件を200℃、1分間とした他は実施例1と同じ条件で導電性フィルムを得た。
【0071】
[実施例5]
実施例5は、フィルム基板の加熱条件を100℃、1分間とした他は実施例1と同じ条件で導電性フィルムを得た。
【0072】
[実施例6]
実施例6は、フィルム基板の加熱条件を120℃、1分間とした他は実施例1と同じ条件で導電性フィルムを得た。
【0073】
[比較例1]
比較例1に係る導電性フィルムは、金属粒子凝集体材料として、ハンダ粒子を使用した。比較例1に係るハンダ粒子は、ナノサイズへの粉体加工は行っていない。また、フィルム基板は加熱せず、ハンダ粒子を凹部に充填した後、絶縁性接着剤層にフィルム基板を貼り付け、金属粒子凝集体を転写させることにより導電性フィルムを得た。
【0074】
[比較例2]
比較例2に係る導電性フィルムは、金属粒子凝集体材料として、ハンダ粒子を使用した。比較例2に係るハンダ粒子は、ナノサイズへの粉体加工は行っていない。また、フィルム基板の加熱条件を200℃、1分間として金属粒子凝集体を作製した。次いで、絶縁性接着剤層にフィルム基板を貼り付け、金属粒子凝集体を転写させることにより導電性フィルムを得た。
【0075】
[転写率の評価]
導電フィルムの接着材層に転写された金属粒子凝集体の転写率を測定した。転写率は、200×200μmの範囲において、凹部内に作成された金属粒子凝集体のうち、接着材層に転写されたものの割合を求めることにより測定した。
【0076】
転写率の評価基準は以下の通りとした。
A(優):90%以上
B(良):70%以上、90%未満
C(可):50%以上、70%未満
D(不良):50%未満
【0077】
また、凹フィルム基板に充填した金属粒子凝集体材料の充填後及び加熱処理後の外観を確認した。また、金属粒子凝集体は、接着材層へ転写した後はで接着材層内に凝集体を押し込まずに、外観の確認を行った。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示すように、実施例1~6に係る、ナノサイズに粉体加工したハンダナノ粒子を用いて作製した金属粒子凝集体は、絶縁性接着剤層へ90%以上の転写率を有することが分かる。一方、比較例1に係るナノサイズに粉体加工していないハンダ粒子からなる金属粒子凝集体、及び比較例2に係るこのハンダ粒子を加熱して作製した金属粒子凝集体は、絶縁性接着剤層への転写率が50%未満となった。
【0080】
これは、実施例では、ハンダナノ粒子を用いて金属粒子凝集体を作製したため、表面に空隙が形成され、これにより良好な転写率を奏したものと考えられる。図12(A)はハンダナノ粒子をフィルム基板の凹部に充填した状態を示す平面画像であり、図12(B)はフィルム基板を加熱してハンダナノ粒子を凝集化させた状態を示す平面画像であり、図12(C)は絶縁性接着剤層へ転写されたハンダナノ粒子の凝集体を示す平面画像である。粒度分布が整い、所定の配列パターンで規則的に転写されていることが分かる。
【0081】
一方、図13は比較例1に係る導電性フィルムの接着材層に転写されたハンダ粒子を示す平面画像である。比較例1で使用したハンダ粒子は粒径分布が広く、また表面に空隙は形成されていないため、フィルム基板の凹部に充填したハンダ粒子のうち、粒径の比較的小さい粒子のみが転写され、転写率は50%未満となった。
【0082】
比較例2では、フィルム基板の加熱により金属粒子凝集体が作製されたが、表面に現れる空隙率が低く、多くの金属粒子凝集体がフィルム基板の凹部に嵌まって残留した状態が確認された。
【0083】
なお、実施例5、実施例6と実施例1~4とを比較すると、加熱温度の上昇に伴って転写性が改善されることが分かる。これは、ハンダナノ粒子が十分に溶融することで空隙率の良好な金属粒子凝集体が形成されるためと考えられる。この点、実施例5及び実施例6は、加熱温度がハンダの融点に達していないことからハンダナノ粒子が溶融せず凝集体が作製されなかった、若しくはハンダナノ粒子の溶融が不十分であり良好な空隙率が得られなかったことが、実施例1~4に比して低い転写率となった原因と考えられる。したがって、フィルム基板の加熱温度は、金属粒子凝集体材料の融点等に応じて適切な温度に設定されることが求められる。
【0084】
[第2の実施例]
第2の実施例では、金属粒子凝集体の材料として、実施例1~6に係る金属材料に加え、Ag粉及びCu粉を用いた実施例及び比較例を追加した。また、各実施例及び比較例について、転写性の評価に加え空隙率の測定を行った。
【0085】
第2の実施例で追加した金属粒子凝集体材料の材料としては、銀プレート状粉体(トクセン工業株式会社製LM1、粒子径0.1~3μm)及び湿式銅粉(三井金属鉱業株式会社製1030Y、球形、D50:500nm)を使用した。
【0086】
フィルム基板は、上述した第1の実施例と同じものを使用した。また、転写性の評価指標も上述した第1の実施例と同じである。
【0087】
金属粒子凝集体の空隙率は、以下のように求めた。先ず、金属粒子凝集体を導電性フィルムの接着材層に転写し、この接着剤層の表面をSEM(Scanning Electron Microscope)で観察し、観察画像データの2値化処理を行った。2値化データにおいて、1つの金属粒子凝集体の全体の面積を分母とし、凝集体外枠よりも内側で黒くなった部分、すなわち空隙の面積を分子として、空隙率を算出した。
【0088】
[金属粒子凝集体の作製]
実施例1~4に係る金属粒子凝集体の作製方法は第1の実施例において上述した。Cu粉とAg粉については、それぞれフィルム基板の凹部に充填した後、N2雰囲気下で200℃以上の温度で30分間加熱処理を行い、焼結体からなる金属粒子凝集体を作製した。
【0089】
[実施例7]
実施例7に係る導電性フィルムは、金属粒子凝集体材料としてAg粉体を使用した。また、フィルム基板の加熱条件は、200℃、30分間とした。その他は実施例1と同じ条件で導電性フィルムを得た。
【0090】
[実施例8]
実施例8に係る導電性フィルムは、金属粒子凝集体材料としてAg粉体を使用した。また、フィルム基板の加熱条件は、260℃、30分間とした。その他は実施例1と同じ条件で導電性フィルムを得た。
【0091】
[比較例3]
比較例3に係る導電性フィルムは、金属粒子凝集体材料としてCu粉を使用した。また、フィルム基板の加熱条件は、200℃、30分間とした。その他は実施例1と同じ条件で導電性フィルムを得た。
【0092】
[比較例4]
比較例2に係る導電性フィルムは、金属粒子凝集体材料としてCu粉を使用した。また、フィルム基板の加熱条件は、260℃、30分間とした。その他は実施例1と同じ条件で導電性フィルムを得た。
【0093】
【表2】
【0094】
表2に示すように、実施例1~4に係る、ナノサイズに粉体加工したハンダナノ粒子を用いて作製した金属粒子凝集体は、空隙率が5%以上であり、良好な転写性を有するものであることが分かる。また、実施例7,8に係るAg粉体の焼結体からなる金属粒子凝集体も、空隙率が10~50%であり、良好な転写性を有するものであった。図14(A)は、Ag粉体をフィルム基板の凹部に充填した状態を示す平面画像であり、図14(B)はフィルム基板を加熱してAg粉体を凝集化(焼結化)させた状態を示す平面画像であり、図14(C)は絶縁性接着剤層へ転写されたAg粉体の凝集体(焼結体)を示す平面画像である。Ag粉体の凝集体は、高い空隙率を有することが分かる。
【0095】
一方、比較例3,4に係るCu粉の焼結体からなる金属粒子凝集体は、空隙率が5%未満であり、絶縁性接着剤層への転写率が50%未満となった。図15(A)は、Cu粉をフィルム基板の凹部に充填した状態を示す平面画像であり、図15(B)はフィルム基板を加熱してCu粉を凝集化(焼結化)させた状態を示す平面画像であり、図15(C)は絶縁性接着剤層へ転写されたCu粉の凝集体(焼結体)を示す平面画像である。Cu粉の凝集体は、空隙がほぼ見られないことが分かる。
【0096】
以上のように、本技術により形成された金属粒子凝集体は、粒度分布が整い、且つ空隙率5%以上とすることで、高い転写率で、規則的に一括転写できることが分かる。したがって、粒子整列型の導電性フィルムを、安定して製造することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 金属粒子凝集体、2 金属粒子、3 空隙、5 導電性フィルム、6 接着材層、7 基材フィルム、10 基板、11 凹部、20 接続構造体、21 電子部品、22 回路基板、23 バンプ、24 電極
図1
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