(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156107
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】揚重支援システム、揚重支援方法及び揚重支援プログラム
(51)【国際特許分類】
B66C 13/48 20060101AFI20231017BHJP
B66C 13/08 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B66C13/48 G
B66C13/08 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065775
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】下原 正弘
(72)【発明者】
【氏名】西脇 也寸男
(72)【発明者】
【氏名】沼崎 孝義
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204BA02
3F204CA01
3F204DB02
3F204DC01
3F204DD09
3F204DE08
3F204DE10
(57)【要約】
【課題】揚重作業において、効率的に荷下ろしを支援するための揚重支援システム、揚重支援方法及び揚重支援プログラムを提供する。
【解決手段】揚重支援システムCS1は、吊り荷C15を吊り下げる吊物旋回装置15に接続された制御部21を備える。そして、制御部21が、吊物旋回装置15において、異なる位置に設置された複数の測位装置16a,16bから各測位情報を取得し、各測位情報を用いて、吊物旋回装置15の現在配置を特定して、現在配置と吊り荷C15の着地方向とに応じて、吊物旋回装置15の旋回を指示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊物を吊り下げる吊物旋回装置に接続された制御部を備えた揚重支援システムであって、
前記制御部が、
前記吊物旋回装置において、異なる位置に設置された複数の測位装置から各測位情報を取得し、
前記各測位情報を用いて、前記吊物旋回装置の現在配置を特定し、前記現在配置と前記吊物の着地方向とに応じて、前記吊物旋回装置の旋回を指示することを特徴とする揚重支援システム。
【請求項2】
吊物を吊り下げる吊物旋回装置に接続された制御部を備えた揚重支援システムを用いて、揚重支援を行なう方法であって、
前記制御部が、
前記吊物旋回装置において、異なる位置に設置された複数の測位装置から各測位情報を取得し、
前記各測位情報を用いて、前記吊物旋回装置の現在配置を特定し、前記現在配置と前記吊物の着地方向とに応じて、前記吊物旋回装置の旋回を指示することを特徴とする揚重支援方法。
【請求項3】
吊物を吊り下げる吊物旋回装置に接続された制御部を備えた揚重支援システムを用いて、揚重支援を行なうためのプログラムであって、
前記制御部を、
前記吊物旋回装置において、異なる位置に設置された複数の測位装置から各測位情報を取得し、
前記各測位情報を用いて、前記吊物旋回装置の現在配置を特定し、前記現在配置と前記吊物の着地方向とに応じて、前記吊物旋回装置の旋回を指示する手段として機能させることを特徴とする揚重支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚重作業を支援する揚重支援システム、揚重支援方法及び揚重支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーで吊られた吊物の旋回方向の位置決めを行なうための吊物旋回装置を用いることがある(例えば、特許文献1参照)。この吊物旋回装置は、フライホイールを回転可能に支持するジンバル枠に、フライホイールを傾動可能に支持するためのジンバル軸が一体で設けられている。そして、中心軸周りに回転するフライホイールが傾動することにより生じるジャイロ効果を利用して吊物を旋回させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吊物を荷下ろし場所に着地させる場合には、オペレータが吊物旋回装置を操作する必要がある。更に、玉掛け作業者が、吊物に取り付けられた介添えロープを用いて、目的位置に誘導することもある。このため、荷下ろし場所では、作業に手間が掛かっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための揚重支援システムは、吊物を吊り下げる吊物旋回装置に接続された制御部を備える。そして、前記制御部が、前記吊物旋回装置において、異なる位置に設置された複数の測位装置から各測位情報を取得し、前記各測位情報を用いて、前記吊物旋回装置の現在配置を特定し、前記現在配置と前記吊物の着地方向とに応じて、前記吊物旋回装置の旋回を指示する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、揚重作業において、効率的に荷下ろしを行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態における揚重支援システムの説明図。
【
図3】実施形態におけるハードウェア構成の説明図。
【
図4】実施形態における吊物旋回装置を説明する斜視図。
【
図5】実施形態における吊下エリアを説明する説明図。
【
図7】実施形態における揚重指示処理の処理手順の説明図。
【
図8】実施形態における揚重支援処理の処理手順の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図8に従って、揚重支援システム、揚重支援方法及び揚重支援プログラムの一実施形態を説明する。本実施形態では、建築現場において、揚重装置(タワークレーン)を利用する場合に用いる揚重支援システムとして説明する。
【0009】
図1に示すように、本実施形態の揚重支援システムCS1では、ネットワークを介して接続された制御ユニット10、吊物旋回装置15、支援サーバ20、管理端末30を用いる。制御ユニット10は、揚重装置としてのタワークレーンC1に設けられる。
【0010】
図2に示すように、タワークレーンC1のマストC10の上には、旋回フレームC11が載置されている。この旋回フレームC11には、運転席C12が設けられている。オペレータの操作によって揚重作業を行なう場合には、タワークレーンC1の運転席C12で、旋回フレームC11の旋回操作、ジブ(ブーム)C13の起伏(傾斜角)操作、フックC14の上下操作等を行なう。
【0011】
フックC14には、吊物旋回装置15を介して吊り荷C15が吊り下げられている。この吊物旋回装置15としてはスカイジャスター(登録商標)を用いることができる。この吊物旋回装置15は、フライホイールを回転可能に支持するジンバル枠に、フライホイールを傾動可能に支持する。そして、吊物旋回装置15は、回転するフライホイールを傾動させることにより生じるジャイロ効果を利用して、吊り荷C15の方向を制御する。
本実施形態の吊物は、フックC14によって吊り下げられた吊物旋回装置15及び吊り荷C15が相当する。そして、この吊物を吊った状態で移動させることにより、目標位置(例えば、搬送車両t1の荷台t2)に、吊物の吊り荷C15を吊り下ろす。
【0012】
(ハードウェア構成の説明)
図3を用いて、制御ユニット10、吊物旋回装置15、支援サーバ20、管理端末30、補正情報配信サーバ40を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶部H14、プロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
【0013】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インタフェース等である。
【0014】
入力装置H12は、各種情報の入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。
記憶部H14は、制御ユニット10、吊物旋回装置15、支援サーバ20、管理端末30の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶部H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0015】
プロセッサH15は、記憶部H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、制御ユニット10、吊物旋回装置15、支援サーバ20、管理端末30、補正情報配信サーバ40における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各処理のための各種プロセスを実行する。
【0016】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、以下で構成しうる。
【0017】
〔1〕コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ
〔2〕各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは
〔3〕それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)
プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0018】
(システム構成)
次に、
図1を用いて、揚重支援システムCS1の各機能を説明する。
タワークレーンC1に設けられる制御ユニット10は、駆動制御部12を備える。
駆動制御部12は、旋回フレームC11の旋回操作、ジブC13の起伏操作、フックC14の上下操作に応じた駆動制御を行なう。これにより、駆動制御部12は、吊物の水平方向や上下方向の移動、旋回を制御する。
【0019】
次に、駆動制御部12によって移動や旋回が制御される吊物の吊物旋回装置15について説明する。
図4に示すように、吊物旋回装置15は、二つの測位装置16a,16bを備える。測位装置16a,16bは、GNSSセンサである。測位装置16a,16bは、吊物旋回装置15の上面で異なる位置に設置される。本実施形態では、吊物旋回装置15の上面において、長軸(着地方向)の両端部に設置される。測位装置16a,16bは、可能な範囲で離した位置に固定することが望ましい。そして、高精度GNSS位置情報サービスを利用する。この高精度GNSS位置情報サービスでは、測位衛星システムGNSSからの測位情報を、国土地理院が提供する電子基準点に加えて、通信キャリアの固定局(独自基準点)を活用して、リアルタイムに2点間で補正するRTK(Real Time Kinematic)測位を用いる。このため、高精度GNSS位置情報サービスを提供する通信キャリアの補正情報配信サーバ40から数cmの誤差で位置を補正するための補正情報を利用する。この補正情報は、測位を行なう地域毎に提供される。
【0020】
各測位装置16a,16bは、例えば円板形状を有しており、その外径は155mm程度である。
各測位装置16a,16bは、台座161に、ポール162を介して支持される。
台座161は、測位装置16a,16bを吊物旋回装置15に脱着可能に固定する固定部材である。例えば、台座161は磁石を有し、この磁石による磁力で鋼製の筐体からなる吊物旋回装置15に固定される。
【0021】
ポール162は、伸縮可能であり、台座161に固定される。このポール162により、測位装置16a,16bは、吊物旋回装置15の上方に突出して配置される。本実施形態では、測位装置16a,16bを設置したときのポール162の高さを300mmに設定する。この場合、台座161、ポール162、測位装置16a,16bを合わせた高さは445mmである。
【0022】
図1に示す支援サーバ20は、制御ユニット10から取得した情報を用いて、揚重作業を支援するコンピュータシステムである。この支援サーバ20は、制御部21、設計情報記憶部22、旋回装置情報記憶部23、揚重情報記憶部24を備える。
【0023】
制御部21は、後述する処理(情報取得段階、経路作成段階、搬送管理段階等を含む処理)を行なう。このための各処理のためのプログラムを実行することにより、制御部21は、情報取得部211、経路作成部212、搬送管理部213等として機能する。
【0024】
情報取得部211は、測位装置16a,16bから各種情報を取得する。本実施形態では、測位装置16a,16bから、GNSS信号を取得する。また、情報取得部211は、補正情報配信サーバ40から補正情報を取得する。更に、情報取得部211は、制御ユニット10から、ジブC13の起伏操作情報、旋回フレームC11の旋回操作情報等の稼働情報を取得する。
【0025】
経路作成部212は、設計情報記憶部22に記録された建築現場の3次元モデルを用いて、搬送経路を作成する。この経路作成部212は、荷幅に応じてオフセットが設定されたオフセットテーブルを備える。オフセットは、障害物に対して、接触しないように余裕を持たせる距離である。そして、経路作成部212は、障害物からオフセットだけ離れた領域に、搬送経路を設定可能な搬送領域マップを設ける。この搬送領域マップにおいては、マップを構成する分割領域(ポリゴン)毎に評価値がマッピングされる。この評価値は、障害物から分割領域までの距離に応じて、接触時のリスクを評価した個別値を合計した値である。このため、経路作成部212は、距離に応じて個別値を算出するための個別値算出情報を保持している。そして、経路作成部212は、搬送領域マップ内において、評価値が低く、効率的な搬送経路を作成する。
【0026】
搬送管理部213は、作成した搬送経路により、タワークレーンC1を動作させる。この搬送管理部213は、吊り荷のサイズ(寸法や重量)に応じて、搬送速度(通常速度)を決定するための速度決定テーブルを備える。この速度決定テーブルにおいては、サイズが大きい程、遅い搬送速度が設定されている。
【0027】
設計情報記憶部22には、BIM(Building Information Modeling)等を用いて作成した3次元設計データが記録される。この3次元設計データは、3次元CADを用いて、建築現場の設計を行なった場合に記録される。3次元モデル情報としての3次元設計データは、プロジェクト情報、要素モデル、属性情報、配置情報を含んで構成される。
【0028】
プロジェクト情報は、建築現場の名称、経度・緯度、建築現場の方位等に関する情報を含む。
要素モデルは、建築現場に用いる各建築要素(構成部材)の3次元モデル(BIMオブジェクト)に関する情報である。
【0029】
属性情報は、この要素モデルの属性情報である。この属性情報には、仕様(要素ID、要素種別、規格、寸法、面積、体積、素材等)に関する情報が含まれる。
配置情報は、各要素モデルを配置する座標に関する情報を含む。更に、配置情報においては、この座標に対して、各要素モデルが配置される配置予定年月日が関連付けられている。
【0030】
旋回装置情報記憶部23には、吊物旋回装置15に関する旋回装置管理データが記録される。この旋回装置管理データは、吊物旋回装置15に測位装置16a,16bが設置された場合に記録される。旋回装置管理データは、旋回装置ID、測位装置ID、配置に関する情報を含んで構成される。
【0031】
旋回装置IDは、各吊物旋回装置15を特定するための識別子に関する情報である。
測位装置IDは、この吊物旋回装置15に設置された測位装置16a,16bを特定するための識別子に関する情報である。
【0032】
配置は、吊物旋回装置15の形状を表すローカル座標に対して、測位装置16a,16bのローカル座標に関する情報である。このローカル座標を用いることにより、測位装置16a,16bの絶対座標(経度・緯度)を取得した場合に、吊物旋回装置15の配置(絶対座標)を特定することができる。これにより、現在配置として、例えば、吊物旋回装置15の水平面の長軸を特定できる。また、吊物旋回装置15と吊り荷C15との位置関係に応じて、現在配置として、吊り荷C15の配置(絶対座標)を特定することができる。
【0033】
揚重情報記憶部24には、制御ユニット10の吊り荷に関する揚重管理データが記録される。この揚重管理データは、管理端末30から、各種情報を取得した場合に記録される。揚重管理データは、作業ID、地域ID、クレーンID、旋回装置ID、吊上げ位置、吊下し位置、旋回モード、予定経路に関する情報を含んで構成される。
【0034】
作業IDは、各揚重作業を特定するための識別子に関する情報である。
地域IDは、この揚重作業が行なわれる工事現場が所在する地域を特定するための情報である。
【0035】
クレーンIDは、この各揚重作業において用いるタワークレーンC1を特定するための識別子に関する情報である。
旋回装置IDは、このタワークレーンC1に用いられる吊物旋回装置15を特定するための識別子に関する情報である。
【0036】
吊上げ位置情報、吊下し位置情報は、管理者によって指定された吊上げ位置(搬送開始位置)、吊下し位置(搬送目標位置)に関する情報である。
図5に示すように、現場500において、吊下エリア510が、絶対座標により指定される。この吊下エリア510は、旋回時に周囲に障害物がなく、旋回可能な領域である。本実施形態では、この吊下エリア510は、座標A1,A2,A3,A4によって囲まれた長方形状の領域である。この吊下エリア510内に目標領域512を指定する。目標領域512には、例えば、
図2に示す搬送車両t1の荷台t2が配置される。
【0037】
また、
図6に示すように、吊下エリア510を、それぞれ吊下候補IDが割り振られた複数の吊下候補位置511に分割してもよい。例えば、吊下候補位置511は、構造部材を配置する位置である。そして、吊下候補位置511の中で所望の吊下候補IDを目標領域512として指定する。
【0038】
旋回モードは、吊物旋回装置15を用いた吊り荷を旋回させる方法を特定するモードである。旋回モードには、向き指定モードと任意指定モードとがある。例えば、目標領域512の長軸の向きをベクトルv1、吊物旋回装置15の測位装置16aから測位装置16bの向きをベクトルv2とする。この場合、向き指定モードにおいては、吊物旋回装置15の長軸と目標領域512の長軸とを一致させるとともに、ベクトルv1とベクトルv2との向きを一致させる最小角度で旋回させる方法である。このため、向き指定モードにおいては、ベクトルv1(測位装置16a、測位装置16b)の配置を指定する。一方、任意旋回モードにおいては、吊り荷の長軸と目標領域512の長軸とが一致すれば、ベクトルv1とベクトルv2との向きは一致・不一致は任意であり、最小角度で旋回させる方法である。
予定経路情報は、経路生成を行なった場合に記録される。予定経路情報は、搬送領域マップを用いて作成した搬送経路に関する情報である。
【0039】
図1の管理端末30は、建築現場の管理者が用いるコンピュータ端末である。管理者は、運転席C12のオペレータによる操作の代わりに、管理端末30を用いて、建築現場におけるタワークレーンC1を遠隔操作して揚重作業を指示する。
補正情報配信サーバ40は、高精度GNSS位置情報サービスを提供する通信キャリアのコンピュータシステムである。この補正情報配信サーバ40は、地域毎に測位情報の補正情報を提供する。
【0040】
(揚重支援処理)
次に、
図7、
図8を用いて、上記のように構成された支援サーバ20において、揚重支援方法の処理手順を説明する。
【0041】
(揚重指示処理)
まず、
図7を用いて、揚重指示処理を説明する。
ここでは、支援サーバ20の制御部21は、設計情報取得処理を実行する(ステップS11)。具体的には、制御部21の情報取得部211は、現在年月日をシステムタイマから取得し、設計情報記憶部22を用いて、配置予定年月日が現在年月日以前の要素モデルを特定する。そして、情報取得部211は、仮想空間内に、特定した要素モデルを配置する。更に、情報取得部211は、周囲に配置された他のタワークレーンC1の制御ユニット10から稼働情報を取得する。次に、稼働情報に応じて、他のタワークレーンC1のマストC10やジブC13等の移動構造物の要素モデルを仮想空間に配置する。そして、搬送管理部213は、仮想空間を表示した管理画面を、管理端末30の表示装置H13に出力する。
【0042】
次に、支援サーバ20の制御部21は、マッピング処理を実行する(ステップS12)。具体的には、制御部21の経路作成部212は、3次元測位装置(図示せず)により、タワークレーンC1周囲の3次元点群情報を取得する。そして、経路作成部212は、管理画面に表示された仮想空間に配置された要素モデルに加えて、点群データを配置して表示する。これにより、設計情報と3次元点群情報とにより、搬送領域の状況を確認する。
【0043】
次に、支援サーバ20の制御部21は、高さ設定処理を実行する(ステップS13)。具体的には、制御部21の経路作成部212は、3次元点群情報を用いて、仮想空間に配置された構造物(固定構造物)の要素モデルの存在を確認する。次に、経路作成部212は、存在が確認された固定構造物において、最高位置を特定する。そして、経路作成部212は、固定構造物の最高位置に、余裕高さ(例えば5m)を加算した揚重高さを算出する。この場合、経路作成部212は、ジブC13によりフックC14を巻き上げられる高さ以下で、搬送を行なう揚重高さを決定する。
【0044】
次に、支援サーバ20の制御部21は、搬送情報の設定処理を実行する(ステップS14)。具体的には、制御部21の経路作成部212は、管理端末30に搬送入力画面を出力する。この場合、管理者は、管理端末30を用いて、搬送物に関する情報を入力する。例えば、搬送物について、設計情報記憶部22に記録された要素IDを入力する。また、搬送物が設計情報記憶部22に記録されていない場合には、荷幅を含むサイズを入力する。更に、管理画面を用いて、搬送開始位置及び搬送目標位置を入力する。ここでは、表示装置H13に表示された管理画面の仮想空間において、搬送開始位置及び搬送目標位置を指定する。この場合、経路作成部212は、指定された搬送開始位置の座標及び搬送目標位置(座標や吊下候補ID)を特定する。更に、管理画面を用いて、旋回モードを入力する。そして、経路作成部212は、作業IDを付与し、管理画面から取得した搬送物情報を含めた揚重管理データを揚重情報記憶部24に記録する。
【0045】
次に、支援サーバ20の制御部21は、荷幅に応じたオフセットの設定処理を実行する(ステップS15)。具体的には、制御部21の経路作成部212は、オフセットテーブルを用いて、搬送物のサイズに基づいてオフセットを算出する。この場合、搬送物が何れの方向を向いても、収まる範囲でオフセットを設定する。
【0046】
次に、支援サーバ20の制御部21は、揚重経路の作成処理を実行する(ステップS16)。具体的には、制御部21の経路作成部212は、揚重高さで搬送可能領域において、搬送領域マップを作成する。この搬送領域マップは、複数の分割領域により構成される。経路作成部212は、各分割領域の代表位置(例えば重心)毎に、各障害物からの距離に基づいて、個別値算出情報を用いて個別値を算出する。そして、経路作成部212は、算出した個別値を合計して、各分割領域における評価値を算出する。この場合、障害物からの距離が近い場合や、スコアが高い場合、高い評価値が設定される。
【0047】
次に、経路作成部212は、搬送領域マップを用いて、経路上の各分割領域の評価値の合計が低く、最短距離のパスにより、フック位置(移動開始位置)→吊り荷移動元位置(搬送開始位置)→吊り荷移動先位置(搬送目標位置)の3次元の搬送経路を生成する。この場合、水平移動平面では、ノード(例えば、分割領域P1の重心)とリンクからなるグラフに対して、経路探索アルゴリズムを適用する。経路探索アルゴリズムとしては、例えば、「A*(A-star)探索アルゴリズム」を用いることができる。このA*探索アルゴリズムは、移動開始位置→搬送開始位置→搬送目標位置までのパスを見つけるグラフ探索問題において、探索の道標となるコスト関数を用いる。コスト関数では、スタートからn地点までのコストと、n地点からゴールまでの予想されるコスト(評価値)の合計が低い搬送経路を特定する。そして、経路作成部212は、生成した搬送経路を、予定経路情報として、揚重管理データに関連付けて揚重情報記憶部24に記録する。
【0048】
次に、支援サーバ20の制御部21は、搬送開始処理を実行する(ステップS17)。具体的には、制御部21の搬送管理部213は、管理端末30の表示装置H13に、開始確認画面を出力する。開始確認画面には、開始要否(「はい」又は「いいえ」)の選択ボタンが含まれる。そして、搬送管理部213は、開始確認画面において「はい」ボタンの押下を検知した場合、タワークレーンC1の制御ユニット10の駆動制御部12に対して、搬送開始を指示する。
【0049】
(揚重支援処理)
次に、
図8を用いて、揚重支援処理を説明する。この処理は、揚重情報記憶部24に記録された作業IDが指定された場合に実行される。この場合、作業IDに関連付けられたタワークレーンC1が特定される。
ここでは、支援サーバ20の制御部21は、作業地域の特定処理を実行する(ステップS21)。具体的には、制御部21の搬送管理部213は、揚重情報記憶部24から、タワークレーンC1が配置された工事現場が所在する地域を特定する情報を取得する。
【0050】
次に、支援サーバ20の制御部21は、旋回モードの特定処理を実行する(ステップS22)。具体的には、制御部21の搬送管理部213は、揚重情報記憶部24から、旋回モードを取得する。
【0051】
次に、支援サーバ20の制御部21は、揚重経路に沿って揚重処理を実行する(ステップS23)。具体的には、制御部21の搬送管理部213は、駆動制御部12に対して、揚重情報記憶部24に記録された予定経路に従って、タワークレーンC1の旋回フレームC11の旋回操作やジブC13の起伏操作を指示する。
【0052】
次に、支援サーバ20の制御部21は、位置情報の取得処理を実行する(ステップS24)。具体的には、制御部21の搬送管理部213は、測位装置16a,16bから、測位情報を取得する。更に、搬送管理部213は、揚重情報記憶部24に記録された地域IDに応じた地域を用いて、補正情報配信サーバ40から補正情報を取得する。そして、搬送管理部213は、測位情報、補正情報を用いて、測位装置16a,16bの位置を特定する。次に、搬送管理部213は、特定した測位装置16a,16bの位置に応じて、吊物旋回装置15の配置を含めた位置情報を取得する。
【0053】
次に、支援サーバ20の制御部21は、旋回可能かどうかについての判定処理を実行する(ステップS25)。具体的には、制御部21の搬送管理部213は、吊物旋回装置15の中心位置が、吊下エリア(旋回可能エリア)内の場合には、旋回可能と判定する。
【0054】
吊物旋回装置15の中心位置が吊下エリア外にあり、旋回不可と判定した場合(ステップS25において「NO」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、揚重経路に沿って揚重処理(ステップS23)以降の処理を繰り返す。
【0055】
一方、旋回可能と判定した場合(ステップS25において「YES」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、方向制御処理を実行する(ステップS26)。具体的には、制御部21の搬送管理部213は、目標領域512の長軸と、吊り荷の長軸との角度(ずれ角度)が「0」になる方向に、吊物旋回装置15の旋回を指示する。
【0056】
この場合、旋回装置情報記憶部23に記録された旋回モードに応じて旋回させる。向き指定モードにおいては、ベクトルv1とベクトルv2とが一致する方向に測位装置16a,16bが配置されるように、最小回転角で旋回させる。一方、任意旋回モードにおいては、吊物旋回装置15のベクトルv2と目標領域512の長軸とが一致する方向に、向きは任意で最小回転角で旋回させる。
【0057】
次に、支援サーバ20の制御部21は、方向は一致かどうかについての判定処理を実行する(ステップS27)。具体的には、制御部21の搬送管理部213は、ずれ角度が、所定の誤差範囲内になった場合に方向は一致と判定する。
【0058】
方向は一致していないと判定した場合(ステップS27において「NO」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、旋回可能かどうかについての判定処理(ステップS25)以降の処理を繰り返す。
【0059】
一方、方向は一致と判定した場合(ステップS27において「YES」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、着地制御処理を実行する(ステップS28)。具体的には、制御部21の搬送管理部213は、吊物旋回装置15に対して、現在の姿勢の維持を指示する。そして、搬送管理部213は、目標領域512まで水平方向に移動を行なう。そして、搬送管理部213は、吊り荷C15が目標領域512の上方に到達した場合、駆動制御部12に対して、搬送目標位置に達するまでフックC14の降下を指示する。
【0060】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、吊物旋回装置15は測位装置16a,16bを備える。そして、支援サーバ20の制御部21は、測位装置16a,16bから、測位情報を取得する。これにより、吊物旋回装置15の向きを特定することができる。
【0061】
(2)本実施形態では、測位装置16a,16bは、吊物旋回装置15の上方に突出して配置される。これにより、吊物旋回装置15が障害にならない高い位置で測位衛星システムGNSSからの測位情報を取得することができる。また、伸縮可能なポール162を用いることにより、利用環境に応じて、測位装置16a,16bの高さを調節することができる。また、台座161は、測位装置16a,16bを吊物旋回装置15に脱着可能に固定する。これにより、測位の必要性に応じて測位装置16a,16bを脱着することができる。
【0062】
(3)本実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、位置情報の取得処理を実行する(ステップS24)。具体的には、制御部21の搬送管理部213は、測位装置16a,16bから、測位情報を取得する。更に、搬送管理部213は、揚重情報記憶部24に記録された地域IDに応じた地域を用いて、補正情報配信サーバ40から補正情報を取得する。これにより、地域に応じた補正情報を用いて、測位情報を補正することにより、位置の誤差を小さくすることができる。
【0063】
(4)本実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、旋回モードの特定処理を実行する(ステップS22)。旋回モードには、向き指定モードと任意指定モードとがある。向き指定モードを用いることにより、吊り荷C15が特定の向きになるように旋回させることができる。一方、任意指定モードを用いることにより、効率的に吊物旋回装置15の長軸と目標領域512の長軸とを一致させることができる。
【0064】
(5)本実施形態では、吊物旋回装置15の中心位置が吊下エリア内にあることにより旋回可能と判定した場合(ステップS25において「YES」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、方向制御処理を実行する(ステップS26)。これにより、旋回しても安全な領域で向きを調整することができる。
【0065】
(6)本実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、方向制御処理を実行する(ステップS26)。これにより、吊り荷に向きがある場合にも、吊下し場所の向きを合わせて、吊り荷を的確な位置に着地させることができる。
【0066】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、揚重装置としてタワークレーンを想定したが、揚重により搬送する装置であれば、タワークレーンに限定されるものではない。
【0067】
・上記実施形態では、吊物旋回装置15の上面に測位装置16a,16bを設置する。測位装置の数は複数(2以上)であれば、2つに限定されるものではない。
・上記実施形態では、測位装置16a,16bは、吊物旋回装置15の上面において、長軸の両端部に設置される。異なる位置に設置できれば、設置場所は限定されない。例えば、吊物旋回装置15の上面の対角線上に設置してもよい。この場合にも、設置位置に応じて、旋回装置情報記憶部23に配置情報を記録する。
【0068】
・上記実施形態では、測位装置16a,16bは、台座161、ポール162に支持される。測位装置16a,16bの高さは、測位衛星システムGNSSからの測位情報を取得できれば、設置方法は限定されない。
【0069】
・上記実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、位置情報の取得処理を実行する(ステップS24)。この場合、搬送管理部213は、揚重情報記憶部24に記録された地域IDに応じた地域を用いて、補正情報配信サーバ40から補正情報を取得する。これに代えて、測位装置16a,16bが、補正情報配信サーバ40から補正情報を取得してもよい。そして、測位装置16a,16bは、補正された測位情報を、支援サーバ20に提供する。
【0070】
・上記実施形態では、測位装置16a,16bを用いて、吊物旋回装置15の位置や向きを特定する。ここで、撮影画像を併用してもよい。この場合には、タワークレーンC1のジブC13の先端に、直下を撮影する撮影装置を設ける。そして、目標領域512に配置された搬送車両t1の荷台t2を、画像認識により特定する。これにより、撮影画像で、着地位置を確認しながら、荷下ろしを行なうことができる。
【0071】
また、ジブC13の先端に、周囲の3次元画像を取得する3次元測位装置を設けてもよい。3次元測位装置は、例えば、レーザ光を用いて、周囲に存在する物体(障害物)を検知する。この3次元測位装置には、例えば、3次元検知情報としての3次元点群情報を取得するLiDAR(Light Detection and Ranging)技術を用いることができる。このLiDARでは、例えば、レーザ光を1次元で振って形成されたスキャン面を、法線方向に360度で旋回させることにより、周囲の障害物について3次元点群情報を取得することができる。
【0072】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(a)前記各測位装置を前記吊物旋回装置の上方に設置することを特徴とする請求項1に記載の揚重支援システム。
【0073】
(b)前記制御部は、前記各測位装置から取得した測位情報に基づいて特定した前記吊物旋回装置の位置が旋回可能エリア内の場合に、旋回を指示することを特徴とする請求項1又は(a)に記載の揚重支援システム。
【0074】
(c)前記制御部は、
前記各測位装置の配置位置を取得し、
前記配置位置に応じて特定した前記吊物旋回装置に吊下げた前記吊物の水平軸と、吊下す目標領域配置位置の水平軸とが一致するように最小角度で旋回させることを特徴とする請求項1、(a)、(b)の何れかに記載の揚重支援システム。
【0075】
(d)前記制御部は、
前記各測位装置の配置位置を取得し、
前記配置位置が所望の向きになるように最小角度で旋回させることを特徴とする請求項1、(a)、(b)の何れかに記載の揚重支援システム。
【符号の説明】
【0076】
CS1…揚重支援システム、C1…タワークレーン、C10…マスト、C11…旋回フレーム、C12…運転席、C13…ジブ、C14…フック、C15…吊り荷、10…制御ユニット、12…駆動制御部、15…吊物旋回装置、16a,16b…測位装置、20…支援サーバ、21…制御部、211…情報取得部、212…経路作成部、213…搬送管理部、22…設計情報記憶部、23…旋回装置情報記憶部、25…揚重情報記憶部、30…管理端末、40…補正情報配信サーバ。