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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156114
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/63 20180101AFI20231017BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20231017BHJP
   G01V 8/10 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
F24F11/63
F24F11/46
G01V8/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065787
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】平山 大悟
【テーマコード(参考)】
2G105
3L260
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB16
2G105CC04
2G105DD01
2G105EE01
2G105FF02
2G105FF15
2G105GG03
2G105HH01
3L260AB02
3L260BA38
3L260CA03
3L260CA15
3L260CB24
3L260EA07
3L260FA20
3L260FC40
(57)【要約】
【課題】センサを用いた人存否の判定を精度よく行う。
【解決手段】空気調和機100は、室内機1と、室外機2と、焦電センサ13と、判定部111と、閾値設定部112とを備える。室内機1は、建物の室内に設置される。室外機2は、建物の屋外に設置される。焦電センサ13は、室内機1に設けられる。判定部111は、焦電センサ13が出力した検出値を閾値と比較して人の存否を判定する。閾値設定部112は、室内機1及び室外機2の少なくとも一方の状態に基づいて、閾値を設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機と、
室外機と、
前記室内機に設けられたセンサと、
前記センサが出力した検出値を閾値と比較して人の存否を判定する判定部と、
前記室内機及び前記室外機の少なくとも一方の状態に基づいて、前記閾値を設定する閾値設定部と
を備える、空気調和機。
【請求項2】
前記室内機はさらに室内ファンと、フラップと、ルーバとを有し、
さらに前記室内ファン、前記フラップ及び前記ルーバの駆動状態を制御する室内制御部を備え、
前記室内制御部が前記室内ファン、前記フラップ及び前記ルーバの少なくとも一つの駆動状態を変更すると、前記閾値設定部は、前記閾値を変更する、請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記室内制御部が前記室内ファン、前記フラップ及び前記ルーバの少なくとも一つを駆動し、または駆動量を増加すると、前記閾値設定部は、暖房運転をせずに前記ルーバを駆動するときよりも前記判定部が人が存在すると判定しにくくなるように、前記閾値を変更する、請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
暖房運転をしている場合に、前記室内制御部が前記ルーバを駆動し、または駆動量を増加すると、前記閾値設定部は、前記暖房運転をせずに前記ルーバを駆動するときよりも前記判定部が人が存在すると判定しにくくなるように、前記閾値を変更する、請求項3に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記室内機から前記室外機へ電力を供給する構成であって、
前記室外機はさらに圧縮機と室外ファンとを有し、
さらに前記圧縮機及び前記室外ファンの駆動状態を制御する室外制御部を備え、
前記室外制御部が前記圧縮機及び前記室外ファンの少なくとも一方の駆動状態を変更すると、前記閾値設定部は、前記閾値を変更する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項6】
前室外制御部が前記圧縮機及び前記室外ファンの少なくとも一方を駆動し、またはその駆動量を増加すると、前記閾値設定部は、前記判定部が人が存在すると判定しにくくなるように、前記閾値を変更する、請求項5に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人体の検知に用いられる焦電センサの出力に基づく人存否の誤判定を低減する判定システムが開示されている。焦電センサは、検知空間からの赤外線の受光強度の変化に応じたアナログ信号を出力する。検知空間の環境は、温度、照度及び風等により変化するため、アナログ信号には、検知空間の環境の変化によって生じたノイズが含まれる。判定システムは、焦電センサのアナログ信号と閾値とを比較することによって検知空間における人の存否を判定するため、アナログ信号にノイズが含まれていると誤判定が生じる可能性が高い。そこで、特許文献1に記載された判定システムは、焦電センサが出力したアナログ信号に応じて、ノイズを回避するように閾値を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-51756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された判定システムは、ある期間に焦電センサが出力したアナログ信号に応じて次の期間の閾値を変更するため、ノイズ発生から閾値変更までにタイムラグが生じる。そのため、特許文献1に記載された判定システムは、依然として、誤判定が生じる可能性があった。
【0005】
本発明は、センサを用いた人存否の判定を精度よく行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空気調和機は、室内機と、室外機と、センサと、判定部と、閾値設定部とを備える。前記センサは、前記室内機に設けられる。前記判定部は、前記センサが出力した検出値を閾値と比較して人の存否を判定する。前記閾値設定部は、前記室内機及び前記室外機の少なくとも一方の状態に基づいて、前記閾値を設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、センサを用いた人存否の判定を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る空気調和機を示すブロック図である。
図2】実施形態1に係る室内機を示す斜視図である。
図3】実施形態1の判定部による焦電センサを用いた判定方法を説明するグラフである。
図4】実施形態1における5組の閾値を説明するグラフである。
図5】実施形態1における閾値設定部の閾値選択動作を示すフローチャートである。
図6】実施形態1に係る空気調和機の動作を示すフローチャートである。
図7】実施形態1に係る空気調和機の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0010】
<実施形態1>
図1図6を参照して、実施形態1に係る空気調和機100について説明する。図1は、実施形態1に係る空気調和機100を示すブロック図である。空気調和機100は、室内機1、室外機2、及び操作端末3を含む。室内機1は、建物の室内に設置される。室外機2は、建物の屋外に設置される。操作端末3は、有線又は無線によって室内機1と通信可能であり、室内機1に動作指示信号を送信する。商用電源4は、空気調和機100を動作させる交流電源を供給する。実施形態1に係る空気調和機100は、商用電源4の電力を室内機1から室外機2へ供給する室内給電タイプである。
【0011】
室内機1は、室内制御部11、室温センサ12、焦電センサ13、閾値記憶部14、室内送風部15、風向変更部16、及び室内電源回路17を含む。室内制御部11は、判定部111及び閾値設定部112を含む。風向変更部16は、フラップ161及びルーバ162を含む。また、図示を省略するが、室内機1は、冷媒が循環する配管、及び室内送風部15の室内ファンと一体になった室内熱交換器等を備える。なお、図示例では、室内機1が室内制御部11を含む構成であるが、室内機1と室内制御部11とが別体で構成されてもよい。
【0012】
図2は、実施形態1に係る室内機1を示す斜視図である。室内機1は室内の壁面に設置される。図2において室内機1の室内を向いた側を前面側、壁面を向いた側を背面側とする。室内機1の内部には、室内熱交換器及び室内送風部15の室内ファンが配置される(不図示)。室内機1の前面下部には、室内送風部15の吹出口151が形成される。吹出口151には、風向変更部16のフラップ161及びルーバ162が配置される。室内制御部11は、室内送風部15の室内ファンとフラップ161とルーバ162の駆動状態を制御する。具体的には、室内制御部11は室内送風部15の室内ファンを回転駆動しまたは駆動を停止し、または駆動時の回転駆動量を増減し、吹出口151から空気を送り出す。室内制御部11はフラップ161を上下方向に駆動させ、吹出口151から送り出す空気の風向を上下方向に変更する。室内制御部11は、ルーバ162を左右方向に駆動させ、吹出口151から送り出す空気の風向を左右方向に変更する。
【0013】
室内機1の前面左側には、室温センサ12及び焦電センサ13が配置される。室温センサ12は、サーミスタ等であり、室温を検出する。焦電センサ13は、検知空間において人から発せられる赤外線を検知し、検知した赤外線強度に応じたアナログ信号(例えば、電圧値)を検出値として出力する。検知空間は、室内機1が設置された室内である。焦電センサ13は「室内機に設けられたセンサ」に相当する。
【0014】
室内機1の内部には、室内制御部11、閾値記憶部14、及び室内電源回路17等を構成する各種部品が実装された基板18が配置される。室温センサ12及び焦電センサ13は、基板18に実装されてもよい。あるいは、基板18とは別の基板に室温センサ12及び焦電センサ13が実装され、室温センサ12及び焦電センサ13が実装された基板と基板18とが電気的に接続されてもよい。なお、室温センサ12、焦電センサ13、及び基板18の配置位置は、室内機1の前面左側に限定されない。
【0015】
室内制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサと、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)のようなメモリとを有する。プロセッサは、メモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、室内制御部11、判定部111、及び閾値設定部112の機能を実現する。
【0016】
室内制御部11は、操作端末3から送信された動作指示信号を受信する。動作指示信号は、運転開始、運転停止、暖房運転、冷房運転、設定温度、風量、及び風向等のうちの少なくとも1つの指示が含まれる。また、室内制御部11は、室外機2の室外制御部21と通信線6により接続され、室外制御部21との間で双方向通信を行う。室内制御部11は、操作端末3から受信した動作指示信号、室温センサ12が検出する室温、判定部111の判定結果、及び室外制御部21から受信した室外電流検出部25の電流値等に基づいて、室内機1及び室外機2内の各部の動作を制御する。室内制御部11は、室外機2内の各部の動作を制御するために動作制御信号を生成し、生成した動作制御信号を、通信線6を介して室外制御部21に送信する。
【0017】
判定部111は、焦電センサ13が出力した検出値を閾値と比較して人の存否を判定する。より具体的には、判定部111は、焦電センサ13が出力したアナログ信号を上限閾値及び下限閾値と比較することによって、焦電センサ13の検知空間における人の存否を判定する。閾値設定部112は、室内機1及び室外機2の少なくとも一方の状態に基づいて、判定部111が判定に利用する上限閾値及び下限閾値を変更する。具体的には、室内機1及び室外機2の少なくとも一方の状態に基づいて、閾値記憶部14から上限閾値及び下限閾値を選択し、判定部111に対して設定する。
【0018】
閾値記憶部14は、例えば、ROM、RAM、又はSSD(Solid State Drive)等のメモリを有する。閾値記憶部14を構成するメモリは、室内制御部11を構成するメモリと共用であってもよい。閾値記憶部14は、室内機1及び室外機2の少なくとも一方の状態に応じた複数組の上限閾値及び下限閾値を記憶する。上限閾値及び下限閾値は、室内機1及び室外機2の少なくとも一方の状態に応じて発生するノイズを事前に収集して決定された値である。
【0019】
室内電源回路17は、外部電源である商用電源4と電源線5により接続される。室内電源回路17は、コンバータ及びインバータ等を有し(不図示)、商用電源4から供給される交流電源から、室内機1内の各部を動作させる動作電源を生成する。室内電源回路17は、生成した動作電源を、室内機1内の各部に供給する。なお、図1においては、室内電源回路17と室内機1内の各部とを接続する電源線の図示を省略している。
【0020】
室外機2は、室外制御部21、圧縮機22、室外送風部23の室外ファン(不図示)、室外電源回路24、及び室外電流検出部25を含む。また、図示を省略するが、室外機2は、冷媒が循環する配管、冷媒の循環方向を切り替える四方弁、冷媒を低圧且つ低温にする膨張弁、及び室外送風部23の室外ファンと一体になった室外熱交換器等を備える。なお、図示例では、室外機2が室外制御部21を含む構成であるが、室外機2と室外制御部21とが別体で構成されてもよい。
【0021】
室外制御部21は、例えば、CPUのようなプロセッサと、ROM及びRAMのようなメモリとを有する。プロセッサは、メモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、室外制御部21の機能を実現する。
【0022】
室外制御部21は、通信線6を介して室内制御部11から受信した動作制御信号に基づいて、室外機2内の各部の駆動状態を制御する。即ち、室外機2内の各部の動作は、室外制御部21を介して室内制御部11に制御される。具体的には、室外制御部21は、圧縮機22または室外送風部23の室外ファンを駆動させまたは駆動を停止し、または駆動時の回転数を増減する。また、室外制御部21は、室外電流検出部25が検出した電流値(以下、「室外電流値」と記載する)を、通信線6を介して室内制御部11に送信する。
【0023】
圧縮機22は、配管を循環する低圧且つ低温の冷媒を圧縮し、高圧且つ高温にする。室外制御部21は、圧縮機22を駆動しまたは駆動を停止し、または駆動時の回転数を増減する。圧縮機22の回転数が変化することにより、冷媒の温度が変化し、結果として室内機1の吹出口151から送り出す空気の温度が変化する。
【0024】
商用電源4からのびる電源線5は、室内機1内を経由して、室外機2の室外電源回路24に接続される。室外電源回路24は、コンバータ及びインバータ等を有し(不図示)、商用電源4から供給される交流電源から、室外機2内の各部を動作させる動作電源を生成する。室外電源回路24は、生成した動作電源を、室外機2内の各部に供給する。なお、図1においては、室外電源回路24と室外機2内の各部とを接続する電源線の図示を省略している。
【0025】
室外電流検出部25は、電源線5を経由して室内機1から室外機2へ流れる室外電流値を検出する。
【0026】
次に、焦電センサ13について説明する。図3は、実施形態1の判定部111による焦電センサ13を用いた判定方法を説明するグラフである。グラフの縦軸は、電圧値であり、グラフの横軸は、時間である。焦電センサ13が出力する電圧値は、検知空間に人がいず、且つ、ノイズが少ない場合、0[V]よりも大きいある値で安定する。人が焦電センサ13の近くにいて、且つ、動きが大きいほど、焦電センサ13が出力する電圧値の振幅が大きくなる。人が焦電センサ13から遠くにいると電圧値の振幅が小さくなる。判定部111は、電圧値が上限閾値ThU以上になった場合、又は下限閾値ThL以下になった場合の少なくとも一方の場合に、人がいると判定する。
【0027】
ここで、図3において、第1期間P1はノイズが少ない期間、第2期間P2はノイズが多い期間とする。また、第1期間P1及び第2期間P2を通じて検知空間に人がいないものとする。焦電センサ13の電圧値は、ノイズが多いほど、振幅が大きくなる。ノイズが少ない第1期間P1においては、電圧値が下限閾値ThLから上限閾値ThUまでの範囲に収まっているため、判定部111は人がいないと判定する。一方、ノイズが多い第2期間P2においては、電圧値が上限閾値ThU以上且つ下限閾値ThL以下となるため、人がいないにもかかわらず、判定部111は人がいると判定する。このように、ノイズが多い場合、判定部111は誤判定する可能性がある。そこで、実施形態1の判定部111は、ノイズの大小に応じた閾値を用いて閾値判定を行う。
【0028】
図4は、実施形態1における5組の閾値を説明するグラフである。グラフの縦軸は、電圧値であり、グラフの横軸は、時間である。閾値記憶部14は、第1閾値である第1上限閾値ThU1及び第1下限閾値ThL1と、第2閾値である第2上限閾値ThU2及び第2下限閾値ThL2と、第3閾値である第3上限閾値ThU3及び第3下限閾値ThL3と、第4閾値である第4上限閾値ThU4及び第4下限閾値ThL4と、第5閾値である第5上限閾値ThU5及び第5下限閾値ThL5とを記憶している。
【0029】
第1閾値は、第1上限閾値ThU1と第1下限閾値ThL1との差分値が最も小さいため、ノイズの影響を最も受けやすい、つまり人が存在すると判定しやすい閾値である。これに対し、第5閾値は、第5上限閾値ThU5と第5下限閾値ThL5との差分値が最も大きいため、ノイズの影響を最も受けにくい、つまり最も人が存在すると判定しにくい閾値である。
【0030】
空気調和機100の状態が最もノイズの少ない状態である場合、閾値設定部112は、第1閾値である第1上限閾値ThU1及び第1下限閾値ThL1を選択する。一方、空気調和機100の状態が最もノイズの多い状態である場合、閾値設定部112は、第5閾値である第5上限閾値ThU5及び第5下限閾値ThL5を選択する。判定部111は、閾値設定部112が選択した閾値を用いて、判定を行う。
【0031】
ここで、ノイズが発生しやすい空気調和機100の動作例を説明する。例えば、室内給電タイプの空気調和機100においては、室外機2の状態に応じて室外機2側の電源線5を流れる電流値が高くなると、室内機1から室外機2へ流れる室外電流値が高くなる場合がある。この場合、室内機1側の電源線5を流れる電流値も高くなる。室内機1側の電源線5を流れる高電流は、焦電センサ13に悪影響を与える。即ち、焦電センサ13が出力する電圧値にノイズが生じる。例えば、室内制御部11が室温センサ12の室温を設定温度に近づけるために圧縮機22の回転数を増加した場合、又は室外送風部23の室外ファンの回転数を増加した場合、室外機2側の電源線5を流れる室外電流値が高くなり、室内機1側の電源線5を流れる電流値も高くなる。
【0032】
また、例えば、室内制御部11が室内機1の室内送風部15の室内ファンの回転数を増加したり、又は風向変更部16を駆動したりする場合、室内電源回路17から室内送風部15又は風向変更部16を駆動するモータ(不図示)に供給する電流値が高くなる。そのため、室内機1側の電源線5を流れる高電流は、焦電センサ13に影響を与え、焦電センサ13が出力する電圧値にノイズが生じる。
【0033】
なお、風向変更部16のルーバ162がスイングし、吹出口151から送り出す温風の風向を左右方向に変更する場合、温風によって温められた左右方向に移動するルーバ162を焦電センサ13が検知し、判定部111は人が存在すると誤判定する可能性がある。そこで、暖房運転中にルーバ162を駆動させる場合にも、より人が存在すると判定しにくい閾値に変更することが好ましい。
【0034】
図5は、実施形態1における閾値設定部112の閾値選択動作を示すフローチャートである。この例において、閾値記憶部14には、図4に示された第1~第5閾値が記憶されているものとする。閾値設定部112は、図5のフローチャートに示される動作を繰り返し行う。
【0035】
ステップS11において、閾値設定部112は、室内制御部11が室内機1及び室外機2の各部の動作を制御することによって空気調和機100が暖房運転しているか否かを判定する。空気調和機100が暖房運転している場合(ステップS11;Yes)、閾値設定部112の処理はステップS12へ進む。それ以外の場合(ステップS11;No)、閾値設定部112の処理はステップS13へ進む。
【0036】
ステップS12において、閾値設定部112は、室内制御部11がルーバ162をスイングさせているか否かを判定する。ルーバ162がスイングしている場合(ステップS12;Yes)、閾値設定部112の処理はステップS20へ進む。ルーバ162がスイングしていない場合(ステップS12;No)、閾値設定部112の処理はステップS13へ進む。
【0037】
ステップS13において、閾値設定部112は、室内制御部11が室外制御部21に対して指示した圧縮機22の回転数が所定値以上であるか否かを判定する。所定値は、閾値設定部112に対して予め設定された値であり、焦電センサ13が出力する電圧値にノイズが生じる値である。圧縮機22の回転数指示値が所定値以上である場合(ステップS13;Yes)、閾値設定部112の処理はステップS19へ進む。圧縮機22の回転数指示値が所定値未満である場合(ステップS13;No)、閾値設定部112の処理はステップS14へ進む。
【0038】
ステップS14において、室内制御部11は、室外電流検出部25が検出した室外電流値を、通信線6を介して室外制御部21から受信する。閾値設定部112は、室内制御部11が室外制御部21から受信した室外電流値が所定値以上であるか否かを判定する。所定値は、閾値設定部112に対して予め設定された値であり、焦電センサ13が出力する電圧値にノイズが生じる値である。室外電流値が所定値以上である場合(ステップS14;Yes)、閾値設定部112の処理はステップS18へ進む。室外電流値が所定値未満である場合(ステップS14;No)、閾値設定部112の処理はステップS15へ進む。
【0039】
ステップS15において、閾値設定部112は、室外電流値が0[A]であるか否かを判定する。室外電流値が0[A]である場合(ステップS15;Yes)、閾値設定部112の処理はステップS16へ進む。室外電流値が0[A]以外である場合(ステップS15;No)、閾値設定部112の処理はステップS17へ進む。なお、ステップS15において室外電流値が厳密に0[A]である必要はなく、0[A]を含む所定の範囲であってもよい。
【0040】
室外電流値が0[A]である場合(ステップS15;Yes)、ステップS16において、閾値設定部112は、閾値記憶部14から第1閾値である第1上限閾値ThU1及び第1下限閾値ThL1を選択する。閾値設定部112は、選択した第1上限閾値ThU1及び第1下限閾値ThL1を、判定部111に対して設定する。
【0041】
室外電流値が0[A]より大きい場合(ステップS15;No)、ステップS17において、閾値設定部112は、閾値記憶部14から第2閾値である第2上限閾値ThU2及び第2下限閾値ThL2を選択する。閾値設定部112は、選択した第2上限閾値ThU2及び第2下限閾値ThL2を、判定部111に対して設定する。
【0042】
室外電流値が所定値以上である場合(ステップS14;Yes)、ステップS18において、閾値設定部112は、閾値記憶部14から第3閾値である第3上限閾値ThU3及び第3下限閾値ThL3を選択する。閾値設定部112は、選択した第3上限閾値ThU3及び第3下限閾値ThL3を、判定部111に対して設定する。
【0043】
圧縮機22の回転数指示値が所定値以上である場合(ステップS13;Yes)、ステップS19において、閾値設定部112は、閾値記憶部14から第4閾値である第4上限閾値ThU4及び第4下限閾値ThL4を選択する。閾値設定部112は、選択した第4上限閾値ThU4及び第4下限閾値ThL4を、判定部111に対して設定する。
【0044】
暖房運転中、且つルーバ162がスイングしている場合(ステップS12;Yes)、ステップS20において、閾値設定部112は、閾値記憶部14から第5閾値である第5上限閾値ThU5及び第5下限閾値ThL5を選択する。閾値設定部112は、選択した第5上限閾値ThU5及び第5下限閾値ThL5を、判定部111に対して設定する。
【0045】
図6は、実施形態1に係る空気調和機100の動作を示すフローチャートである。空気調和機100は、図5のフローチャートに示される動作と図6のフローチャートに示される動作とを並列に行う。
【0046】
ステップS21において、室内制御部11は、操作端末3から運転開始の指示を含む動作指示信号を受信すると、通常運転を開始する。例えば、動作指示信号に設定温度22度の暖房運転の指示が含まれている場合、室内制御部11は、室内機1及び室外機2の各部の動作を制御して、空気調和機100の暖房運転を行う。その際、室内制御部11は、室温センサ12により検出される室温が設定温度22度になるように、室内機1及び室外機2の各部の動作負荷を制御する。例えば、室内制御部11は、室温と設定温度との差が大きい場合には、圧縮機22の回転数を上げる制御を行う。
【0047】
ステップS22において、判定部111は、焦電センサ13が出力する電圧値と、閾値設定部112により設定された上限閾値及び下限閾値とを比較して、焦電センサ13の検知範囲に人がいるか否かを判定する。
【0048】
人がいると判定された場合(ステップS23;Yes)、室内制御部11の処理はステップS21へ戻る。人がいないと判定された場合(ステップS23;No)、室内制御部11の処理はステップS24へ進む。
【0049】
ステップS24において、室内制御部11は、人がいると判定されている状態が所定時間継続したか否かを判定する。所定時間は、室内制御部11に対して予め設定された時間である。人がいると判定されている状態が所定時間継続した場合(ステップS24;Yes)、室内制御部11の処理はステップS25へ進む。人がいると判定されている状態が所定時間経過していない場合(ステップS24;No)、室内制御部11の処理はステップS22へ戻る。
【0050】
ステップS25において、室内制御部11は、人が在室していないため、室内機1及び室外機2の各部の動作を制御して、空気調和機100の省エネ運転を行う。例えば、室内制御部11は、設定温度を操作端末3から受信した22度よりも低い値に変更する。
【0051】
室内制御部11は、操作端末3から運転停止の指示を含む動作指示信号を受信すると(ステップS26;Yes)、空気調和機100の運転を停止する。それ以外の場合(ステップS26;No)、室内制御部11の処理はステップS22へ戻る。
【0052】
以上、図1図6を参照して説明したように、空気調和機100は、室内機1と、室外機2と、焦電センサ13と、判定部111と、閾値設定部112とを備える。焦電センサ13は、室内機1に設けられる。判定部111は、焦電センサ13が出力した検出値を閾値と比較して人の存否を判定する。閾値設定部112は、室内機1及び室外機2の少なくとも一方の状態に基づいて、閾値を設定する。そのため、空気調和機100は、ノイズ発生から閾値変更までのタイムラグを短縮でき、焦電センサ13を用いた人存否の判定を精度よく行うことができる。
【0053】
室内機1は、さらに、室内ファン(不図示)と、フラップ161と、ルーバ162とを有する。空気調和機100は、さらに、室内ファン、フラップ161及びルーバ162の駆動状態を制御する室内制御部11を備える。室内制御部11が室内ファン、フラップ161及びルーバ162の少なくとも一つの駆動状態を変更すると、閾値設定部112は、閾値を変更する。室内ファン、フラップ161及びルーバ162を駆動するモータ(不図示)及び検知空間の温風は、焦電センサ13のノイズ源になる。空気調和機100は、このノイズ源に応じた閾値に変更するため、人存否の判定を精度よく行うことができる。
【0054】
室内制御部11が室内ファン、フラップ161及びルーバ162の少なくとも一つを駆動し、または駆動量を増加すると、閾値設定部112は、暖房運転をせずにルーバ162を駆動するときよりも判定部111が人が存在すると判定しにくくなるように、閾値を変更する。焦電センサ13のノイズ源となる室内ファン、フラップ161及びルーバ162の少なくとも一つを駆動し、または駆動量を増加すると、ノイズが大きくなる。空気調和機100は、ノイズが大きい駆動状態において、より人が存在すると判定しにくい閾値に変更することで、人存否の判定を精度よく行うことができる。
【0055】
暖房運転をしている場合に、室内制御部11がルーバ162を駆動し、または駆動量を増加すると、閾値設定部112は、暖房運転をせずにルーバ162を駆動するときよりも判定部111が人が存在すると判定しにくくなるように、閾値を変更する。温風によって暖められた移動するルーバ162を焦電センサ13が検知した場合でも、より人が存在すると判定しにくい閾値に変更することで、人存否の判定を精度よく行うことができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について、図面(図1図6)を参照しながら説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。下記に変形例1、2を説明する。
【0057】
<変形例1>
上記の実施形態では、室内機1から室外機2へ商用電源4の交流電源を供給する室内給電タイプの空気調和機100について説明したが、これに限定されない。空気調和機100は、室外機2から室内機1へ商用電源4の交流電源を供給する室外給電タイプであってもよい。
【0058】
図7は、実施形態1に係る空気調和機100の変形例を示すブロック図である。図7に示されるように、室外電源回路24は、商用電源4と電源線5により接続される。商用電源4からのびる電源線5は、室外機2内を経由して室内電源回路17に接続される。なお、図7においては、室外電源回路24と室外機2内の各部とを接続する電源線、及び室内電源回路17と室内機1内の各部とを接続する電源線の図示を省略している。
【0059】
室内電流検出部26は、電源線5を経由して室外機2から室内機1へ流れる電流値(以下、「室内電流値」と記載する)を検出する。室内電流検出部26が検出した室内電流値は、通信線6を介して室外制御部21から室内制御部11へ送信される。
【0060】
室外給電タイプの空気調和機100においては、室外機2の状態に応じて室外機2側の電源線5を流れる電流が高くなると、室外機2から室内機1へ流れる室内電流値が高くなる場合がある。例えば、室外送風部23の室外ファン及び圧縮機22の少なくとも一方の駆動状態が変更されると、室内電流値が変化する。また、例えば、室外ファン及び圧縮機22の少なくとも一方が駆動され、またはその駆動量が増加すると、室内電流値が高くなる。室内電流値が高くなると、室内機1側の電源線5を流れる電流値も高くなる。室内機1側の電源線5を流れる高電流は、焦電センサ13に悪影響を与え、焦電センサ13が出力する電圧値にノイズが生じる。
【0061】
そこで、変形例1の閾値設定部112は、室内電流検出部26が検出した室内電流値に基づいて、閾値記憶部14から上限閾値及び下限閾値を選択し、判定部111に対して設定する。閾値記憶部14には、室内機1及び室外機2の少なくとも一方の状態に応じて発生するノイズを事前に収集して決定された、複数組の上限閾値及び下限閾値が記憶されている。複数組の上限閾値及び下限閾値のうちの少なくとも1組の上限閾値及び下限閾値は、室内電流値に応じて発生するノイズを事前に収集して決定された値である。
【0062】
以上のように、室外給電タイプの空気調和機100において、室外制御部21が圧縮機22及び室外ファンの少なくとも一方の駆動状態を変更すると、閾値設定部112は、閾値を変更する。圧縮機22及び室外ファンは焦電センサ13のノイズ源になる。空気調和機100は、このノイズ源に応じた閾値に変更するため、人存否の判定を精度よく行うことができる。
【0063】
室外制御部21が圧縮機22及び室外ファンの少なくとも一方を駆動し、またはその駆動量を増加すると、閾値設定部112は、判定部111が人が存在すると判定しにくくなるように、閾値を変更する。焦電センサ13のノイズ源となる圧縮機22及び室外ファンの少なくとも一方を駆動し、または駆動量を増加すると、ノイズが大きくなる。空気調和機100は、ノイズが大きい駆動状態において、より人が存在すると判定しにくい閾値に変更することで、人存否の判定を精度よく行うことができる。
【0064】
なお、上記の実施形態と同様に、変形例1においても、閾値記憶部14は、圧縮機22及び室外ファン等の駆動状態に応じて発生するノイズを事前に収集して決定された、複数組の上限閾値及び下限閾値を記憶していてもよい。閾値設定部112は、圧縮機22及び室外ファン等の駆動状態に応じた上限閾値及び下限閾値を、閾値記憶部14から選択する。
【0065】
<変形例2>
上記の実施形態では、空気調和機100は、人の不在を検知した場合に通常運転から省エネ運転に切り替え、人の在室を検知した場合に通常運転を再開する構成であったが、判定結果に応じた空気調和機100の動作はこれに限定されない。
【0066】
例えば、室内制御部11は、人がいないはずの時間帯に判定部111が人を検知した場合、予め連絡先が登録されたスマートフォン等に対して判定信号を送信する。
【0067】
また、例えば、判定部111が人の活動量を判定し、室内制御部11が活動量に応じて空気調和機100の各部の動作を制御する。活動量の判定方法の一例として、判定部111は、単位時間あたりの、焦電センサ13の電圧値が上限閾値以上又は下限閾値以下になった回数が、所定回数を超えた場合に、人の活動量が多いと判定する。
【0068】
例えば、人の活動量が多い場合、人は暑く感じる。そこで、室内制御部11は、冷房運転の設定温度を下げる、又は室内送風部15の送風量を増やす。あるいは、室内制御部11は、暖房運転の設定温度を下げる、又は室内送風部15の送風量を減らす。反対に、人の活動量が少ない場合、室内制御部11は、冷房運転の設定温度を上げる若しくは室内送風部15の送風量を減らす、又は、暖房運転の設定温度を上げる若しくは室内送風部15の送風量を増やす。
【0069】
<変形例3>
上記説明では、人の存否判定に上限閾値と下限閾値の2つの閾値を用いる構成であったが、1つの閾値を用いる構成であってもよい。また、上記説明では、閾値記憶部14が複数組の上限閾値及び下限閾値を記憶している構成であったが、関数などを用いて複数の上限閾値及び下限閾値を算出する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、人存否の判定結果を用いた運転制御等を行う空気調和機に用いるのに好適である。
【符号の説明】
【0071】
1 室内機
2 室外機
3 操作端末
4 商用電源
5 電源線
6 通信線
11 室内制御部
12 室温センサ
13 焦電センサ(センサ)
14 閾値記憶部
15 室内送風部
16 風向変更部
17 室内電源回路
18 基板
21 室外制御部
22 圧縮機
23 室外送風部
24 室外電源回路
25 室外電流検出部
26 室内電流検出部
100 空気調和機
111 判定部
112 閾値設定部
151 吹出口
161 フラップ
162 ルーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7