(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156115
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】ガラス製品の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 35/00 20060101AFI20231017BHJP
B08B 1/02 20060101ALI20231017BHJP
B08B 1/04 20060101ALI20231017BHJP
B08B 11/04 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C03B35/00
B08B1/02
B08B1/04
B08B11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065788
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】山本 好晴
(72)【発明者】
【氏名】藤田 崇
(72)【発明者】
【氏名】鑑継 薫
【テーマコード(参考)】
3B116
4G015
【Fターム(参考)】
3B116AA02
3B116AB14
3B116BA02
3B116BA08
3B116BA14
3B116BB22
3B116CC01
3B116CC03
3B116CC05
4G015GA01
(57)【要約】
【課題】ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、エアナイフ等の製造関連処理を行う製造関連処理部へのガラス製品の接触を防止する。
【解決手段】ガラス製品の製造装置1は、ガラス製品Gを所定の搬送方向Xに沿って搬送する搬送装置5bと、ガラス製品Gに気体13を吹き付けるエアナイフ14と、を備える。製造装置1は、ガラス製品Gが異常な搬送をされた場合に、ガラス製品Gがエアナイフ14に接触することを防止する接触防止部材16を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製品を所定の搬送方向に沿って搬送する搬送装置と、前記ガラス製品に気体を吹き付けるエアナイフと、を備える、ガラス製品の製造装置であって、
前記ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、前記ガラス製品が前記エアナイフに接触することを防止する接触防止部材を備え、
前記接触防止部材は、前記搬送方向において前記エアナイフの上流側及び下流側の少なくとも一方に配置されることを特徴とするガラス製品の製造装置。
【請求項2】
前記接触防止部材は、前記ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、前記ガラス製品の表面に搬送異常を意味するマークを付するマーカである請求項1に記載のガラス製品の製造装置。
【請求項3】
前記接触防止部材は、前記ガラス製品に接触可能な弾性体を含む請求項1又は2に記載のガラス製品の製造装置。
【請求項4】
前記ガラス製品が正常に搬送されている場合において、前記接触防止部材と前記ガラス製品との離間距離は、前記エアナイフと前記ガラス製品との離間距離よりも小さく設定されており、
前記ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、前記ガラス製品が前記エアナイフに接触しないように、前記接触防止部材が前記ガラス製品に接触する、請求項1又は2に記載のガラス製品の製造装置。
【請求項5】
前記マークを検出する検査装置を備える請求項2に記載のガラス製品の製造装置。
【請求項6】
前記接触防止部材は、ローラを含む請求項1又は2に記載のガラス製品の製造装置。
【請求項7】
前記接触防止部材は、前記搬送方向において、前記エアナイフの上流側及び下流側に配置される請求項1又は2に記載のガラス製品の製造装置。
【請求項8】
前記接触防止部材は、前記搬送装置によって搬送される前記ガラス製品の上方に配置される請求項1又は2に記載のガラス製品の製造装置。
【請求項9】
ガラス製品を所定の搬送方向に沿って搬送する搬送装置を備える、ガラス製品の製造装置であって、
前記搬送装置によって正常に搬送される前記ガラス製品の表面に対して離間して配置される製造関連処理部と、前記ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、前記ガラス製品が前記製造関連処理部に接触しないように、前記ガラス製品の前記表面に接触する接触防止部材と、を備え、
前記接触防止部材は、前記搬送方向において前記製造関連処理部の上流側及び下流側の少なくとも一方に配置されることを特徴とするガラス製品の製造装置。
【請求項10】
ガラス製品を所定の搬送方向に沿って搬送しつつ、前記ガラス製品を洗浄装置によって洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程後に、前記ガラス製品を前記搬送方向に沿って搬送しつつ、エアナイフによって前記ガラス製品に気体を吹き付ける乾燥工程と、を備える、ガラス製品の製造方法であって、
前記ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、前記搬送方向において前記エアナイフの上流側及び下流側の少なくとも一方に配置される接触防止部材を前記ガラス製品に接触させることにより、前記ガラス製品の前記エアナイフへの接触を防止することを特徴とするガラス製品の製造方法。
【請求項11】
ガラス製品を所定の搬送方向に沿って搬送しつつ、製造関連処理部によって、前記ガラス製品に対して製造関連処理を施す製造関連処理工程を備える、ガラス製品の製造方法であって、
前記ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、前記搬送方向において前記製造関連処理部の上流側及び下流側の少なくとも一方に配置される接触防止部材を前記ガラス製品に接触させることにより、前記ガラス製品の前記製造関連処理部への接触を防止することを特徴とするガラス製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製品を製造する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばディスプレイ用のガラス基板をはじめとするガラス板を製造する方法では、ガラス原板から切り出されたガラス板に端面加工を施す加工工程、加工後にガラス板を洗浄する洗浄工程、洗浄時にガラス板の表面に付着した洗浄液をエアナイフからの気体の吹き付けにより除去する乾燥工程等が行われる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この製造方法において、洗浄工程及び乾燥工程は、ガラス板を所定の搬送経路に沿って搬送しながら行われる。ガラス板の搬送に使用される搬送装置は、例えばローラコンベアにより構成される(同文献の段落0019参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来のガラス板の製造方法では、洗浄工程においてガラス板に付着した洗浄液を確実に除去するために、乾燥工程において、搬送装置によって搬送されているガラス板に、エアナイフを可能な限り近づけて配置することが望ましい。
【0006】
しかしながら、搬送装置の状態によっては、搬送中のガラス板に振動が生じ、ガラス板がエアナイフに接触するおそれがあった。ガラス板がエアナイフに接触してしまうと、エアナイフを構成する金属がガラス板に付着することでガラス板が汚染され、或いはガラス板が損傷するおそれがあった。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、ガラス板等のガラス製品が異常な搬送をされた場合に、エアナイフ等の製造関連処理を行う製造関連処理部へのガラス製品の接触を防止することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、ガラス製品を所定の搬送方向に沿って搬送する搬送装置と、前記ガラス製品に気体を吹き付けるエアナイフと、を備える、ガラス製品の製造装置であって、前記ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、前記ガラス製品が前記エアナイフに接触することを防止する接触防止部材を備え、前記接触防止部材は、前記搬送方向において前記エアナイフの上流側及び下流側の少なくとも一方に配置されることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、接触防止部材によって、ガラス製品がエアナイフに接触することを防止できる。
【0010】
前記接触防止部材は、前記ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、前記ガラス製品の表面に搬送異常を意味するマークを付するマーカとしても機能し得る。
【0011】
かかる構成によれば、接触防止部材によってガラス製品にマークを付し、このマークを検出することで、搬送装置によるガラス製品の搬送に異常が発生したことを検出することが可能となる。この検出に基づいて搬送装置を保守すれば、早期に搬送異常を解決することができる。
【0012】
前記接触防止部材は、前記ガラス製品に接触可能な弾性体を含んでもよい。かかる構成によれば、搬送異常によりガラス製品が弾性体に接触すると、弾性体はガラス製品に押圧されて弾性変形する。これにより、接触防止部材がガラス製品に接触したときにガラス製品に生じる衝撃を緩和することができる。また、この弾性変形により、ガラス製品に対する弾性体の接触面積を大きく確保することができる。これにより、接触防止部材をマーカとして使用する場合に、弾性体によってガラス製品に付されるマークを可及的に大きくすることが可能となる。
【0013】
本発明に係るガラス製品の製造装置では、前記ガラス製品が正常に搬送されている場合において、前記接触防止部材と前記ガラス製品との離間距離は、前記エアナイフと前記ガラス製品との離間距離よりも小さく設定されており、前記ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、前記ガラス製品が前記エアナイフに接触しないように、前記接触防止部材が前記ガラス製品に接触することが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、搬送装置によるガラス製品の搬送に異常が発生した場合に、ガラス製品がエアナイフに接触することを防止できる。
【0015】
本発明に係るガラス製品の製造装置は、前記マークを検出する検査装置を備えてもよい。かかる構成によれば、搬送装置によるガラス製品の搬送異常を効率良く確実に検出することができる。
【0016】
本発明に係るガラス製品の製造装置において、前記接触防止部材は、ローラを含んでもよい。かかる構成によれば、搬送装置による搬送異常が発生し、ガラス製品が接触防止部材に接触した場合に、ガラス製品に過大な摩擦力が作用することを防止できる。
【0017】
前記接触防止部材は、前記搬送方向において、前記エアナイフの上流側及び下流側に配置されてもよい。かかる構成によれば、エアナイフの上流側及び下流側に設けられた接触防止部材によって、ガラス製品の搬送異常が発生したときに、ガラス製品のエアナイフへの接触を確実に防止できる。
【0018】
前記接触防止部材は、前記搬送装置によって搬送される前記ガラス製品の上方に配置されてもよい。
【0019】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、ガラス製品を所定の搬送方向に沿って搬送する搬送装置を備える、ガラス製品の製造装置であって、前記搬送装置によって正常に搬送される前記ガラス製品の表面に対して離間して配置される製造関連処理部と、前記ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、前記ガラス製品が前記製造関連処理部に接触しないように、前記ガラス製品の前記表面に接触する接触防止部材と、を備え、前記接触防止部材は、前記搬送方向において前記製造関連処理部の上流側及び下流側の少なくとも一方に配置されることを特徴とする。
【0020】
かかる構成によれば、ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、接触防止部材によって、ガラス製品が製造関連処理部に接触することを防止できる。
【0021】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、ガラス製品を所定の搬送方向に沿って搬送しつつ、前記ガラス製品を洗浄装置によって洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程後に、前記ガラス製品を前記搬送方向に沿って搬送しつつ、エアナイフによって前記ガラス製品に気体を吹き付ける乾燥工程と、を備える、ガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、前記搬送方向において前記エアナイフの上流側及び下流側の少なくとも一方に配置される接触防止部材を前記ガラス製品に接触させることにより、前記ガラス製品の前記エアナイフへの接触を防止することを特徴とする。
【0022】
かかる構成によれば、ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、接触防止部材をガラス製品に接触させることによって、ガラス製品がエアナイフに接触することを防止できる。
【0023】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、ガラス製品を所定の搬送方向に沿って搬送しつつ、製造関連処理部によって、前記ガラス製品に対して製造関連処理を施す製造関連処理工程を備える、ガラス製品の製造方法であって、前記ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、搬送方向において前記製造関連処理部の上流側及び下流側の少なくとも一方に配置される接触防止部材を前記ガラス製品に接触させることにより、前記ガラス製品の前記製造関連処理部への接触を防止することを特徴とする。
【0024】
かかる構成によれば、ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、接触防止部材をガラス製品に接触させることによって、ガラス製品が製造関連処理部に接触することを防止できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ガラス製品が異常な搬送をされた場合に、エアナイフ等の製造関連処理を行う製造関連処理部へのガラス製品の接触を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】ガラス製品の製造装置における乾燥部を示す側面図である。
【
図3】
図1のIII-III矢視線に係る図である。
【
図4】ガラス製品の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図7は、本発明に係るガラス製品の製造装置及び製造方法の一実施形態を示す。以下では、ガラス製品として矩形状のガラス板を例示するが、ガラス製品の形状は本実施形態に限定されない。
【0028】
図1に示すように、ガラス製品の製造装置1は、洗浄部2と、乾燥部3と、検査部4と、ガラス板Gを所定の搬送方向Xに沿って搬送する搬送装置5a~5cと、を備える。以下、製造装置1におけるこれらの構成要素の位置関係を説明する場合に、ガラス板Gの搬送方向Xに基づいて、「上流側」、「下流側」の用語を用いる場合がある。
【0029】
洗浄部2は、第一洗浄装置6と、この第一洗浄装置6の下流側に設けられる第二洗浄装置7とを備える。
【0030】
第一洗浄装置6は、洗浄液をガラス板Gに供給する装置(以下「第一供給装置」という)8と、第一供給装置8の下流側に配置される洗浄具9とを備える。
【0031】
第一供給装置8は、ガラス板Gの表面(上面Ga及び下面Gb)の全域に洗浄液10を供給するように、上下一対の供給装置を含む。第一供給装置8によって供給される洗浄液10には、例えば純水を使用することができ、必要に応じて洗剤(酸性洗剤、アルカリ性洗剤)や界面活性剤、アルカリイオン水等を添加してもよい。
【0032】
洗浄具9は、ガラス板Gの表面Ga,Gbを擦って表面Ga,Gbに付着した異物等の汚れを除去する上下一対の洗浄ローラにより構成される。洗浄ローラは、ガラス板Gとの接触部をスポンジ等の弾性材料で形成したものであってもよく、ブラシで形成したものであってもよい。前者の場合、洗浄ローラはスポンジローラとなり、後者の場合、洗浄ローラはブラシローラとなる。洗浄ローラに代えて洗浄ディスクを用いてもよく、洗浄ローラと洗浄ディスクを組み合わせてもよい。
【0033】
第二洗浄装置7は、第一洗浄装置6を通過したガラス板Gにリンス液(すすぎ液)11を供給する上下一対の供給装置(以下「第二供給装置」という)12を備える。第二供給装置12によってガラス板Gに供給されるリンス液11としては、純水など公知の種類のリンス用液体を使用することが可能である。
【0034】
図1乃至
図3に示すように、乾燥部3は、ガラス板Gに気体13を吹き付ける上下一対の第一エアナイフ14と、第一エアナイフ14の下流側に設けられる上下一対の第二エアナイフ15と、ガラス板Gがエアナイフ14,15に接触することを防止する第一接触防止部材16及び第二接触防止部材17と、を備える。
【0035】
第一エアナイフ14は、金属製であり、例えばステンレス鋼により構成される。第一エアナイフ14は、ガラス板Gに所定の製造関連処理を行う製造関連処理部である。具体的には、第一エアナイフ14は、第二洗浄装置7を通過したガラス板Gの表面Ga,Gbにクリーンドライエア等の気体13を吹き付けるための気体吹付装置である。第一エアナイフ14は、気体13を噴出する噴出口14aを備える。
【0036】
上下一対の第一エアナイフ14のうち、上側の第一エアナイフ14の噴出口14aは、この第一エアナイフ14において最も下方に位置する部位(下端部)である。すなわち、上側の第一エアナイフ14の噴出口14aは、ガラス板Gの上面Gaに最も近い位置にある部位である。ガラス板Gが正常に搬送されている場合において、上側の第一エアナイフ14の噴出口14aと、ガラス板Gの上面Gaとの離間距離DA1は、2.0~3.0mmであることが好ましい。
【0037】
下側の第一エアナイフ14の噴出口14aは、この第一エアナイフ14において最も上方に位置する部位(上端部)である。すなわち、下側の第一エアナイフ14の噴出口14aは、ガラス板Gの下面Gbに最も近い位置にある部位である。ガラス板Gが正常に搬送されている場合において、下側の第一エアナイフ14の噴出口14aと、ガラス板Gの下面Gbとの離間距離DA2は、2.0~3.0mmであることが好ましい。
【0038】
第二エアナイフ15は、金属製であり、例えばステンレス鋼により構成される。第二エアナイフ15は、第一エアナイフ14と同じ形状を有していてもよい。第二エアナイフ15は、ガラス板Gに所定の製造関連処理を行う製造関連処理部である。具体的には、第二エアナイフ15は、第一エアナイフ14を通過したガラス板Gの表面Ga,Gbにクリーンドライエア等の気体13を吹き付けるための気体吹付装置である。第二エアナイフ15は、気体13を噴出する噴出口15aを備える。
【0039】
上下一対の第二エアナイフ15のうち、上側の第二エアナイフ15の噴出口15aは、この第二エアナイフ15において最も下方に位置する部位(下端部)である。すなわち、上側の第二エアナイフ15の噴出口15aは、ガラス板Gの上面Gaに最も近い位置にある部位である。ガラス板Gが正常に搬送されている場合において、上側の第二エアナイフ15の噴出口15aと、ガラス板Gの上面Gaとの離間距離DA3は、2.0~3.0mmであることが好ましい。
【0040】
下側の第二エアナイフ15の噴出口15aは、この第二エアナイフ15において最も上方に位置する部位(上端部)である。すなわち、下側の第二エアナイフ15の噴出口15aは、ガラス板Gの下面Gbに最も近い位置にある部位である。ガラス板Gが正常に搬送されている場合において、下側の第二エアナイフ15の噴出口15aと、ガラス板Gの下面Gbとの離間距離DA4は、2.0~3.0mmであることが好ましい。
【0041】
各接触防止部材16,17は、ガラス板Gが異常な搬送をされた場合に、ガラス板Gに接触することによって、ガラス板Gがエアナイフ14,15に接触することを防止する。各接触防止部材16,17は、異常な搬送をされたガラス板Gの表面Ga,Gbに接触して搬送異常を意味するマークを付するマーカとしても機能する。ガラス板Gが正常に搬送されている場合には、各接触防止部材16,17はガラス板Gから離れており、各接触防止部材16,17がガラス板Gに接触することはない。
【0042】
第一接触防止部材16は、第一エアナイフ14の上流側に位置する上下一対の上流側接触防止部材16a1,16a2と、第一エアナイフ14の下流側に位置する上下一対の下流側接触防止部材16b1,16b2と、を含む。第二接触防止部材17は、第二エアナイフ15の上流側に位置する上下一対の上流側接触防止部材17a1,17a2と、第二エアナイフ15の下流側に位置する上下一対の下流側接触防止部材17b1,17b2と、を含む。
【0043】
第一接触防止部材16及び第二接触防止部材17における上流側接触防止部材16a1,16a2,17a1,17a2は、搬送されるガラス板Gの上方に位置する上接触防止部材16a1,17a1と、ガラス板Gの下方に位置する下接触防止部材16a2,17a2とを含む。
【0044】
図2に示すように、ガラス板Gが正常に搬送されている場合において、上接触防止部材16a1,17a1とガラス板Gの上面Gaとの離間距離DB1は、ガラス板Gの上方に位置するエアナイフ14,15とガラス板Gとの離間距離DA1,DA3よりも小さく設定されている。同様に、ガラス板Gが正常に搬送されている場合において、下接触防止部材16a2,17a2とガラス板Gの下面Gbとの離間距離DB2は、ガラス板Gの下方に位置するエアナイフ14,15とガラス板Gの下面Gbの離間距離DA2,DA4よりも小さく設定されている。
【0045】
第一接触防止部材16及び第二接触防止部材17における下流側接触防止部材16b1,16b2,17b1,17b2は、搬送されるガラス板Gの上方に位置する上接触防止部材16b1,17b1と、ガラス板Gの下方に位置する下接触防止部材16b2,17b2とを含む。正常に搬送されているガラス板Gの表面Ga,Gbと、下流側接触防止部材16b1,16b2,17b1,17b2との各離間距離DB3,DB4は、正常に搬送されているガラス板Gの表面Ga,Gbと各エアナイフ14,15との各離間距離DA1~DA4よりも小さく設定されている。
【0046】
正常に搬送されているガラス板Gの表面Ga,Gbと各接触防止部材16,17との離間距離DB1~DB4は、0~3.0mmであることが好ましい。また、搬送方向Xにおける第一接触防止部材16と第一エアナイフ14の噴出口14aとの離間距離は、0.1~20mmであることが好ましい。また、搬送方向Xにおける第二接触防止部材17と第二エアナイフ15の噴出口15aとの離間距離は、0.1~20mmであることが好ましい。
【0047】
図3に示すように、第一接触防止部材16の上流側接触防止部材16a1,16a2は、ガラス板Gの幅方向GXに沿って所定の間隔で配置される複数の接触防止部材を含む。第一接触防止部材16の下流側接触防止部材16b1,16b2及び第二接触防止部材17(上流側接触防止部材17a1,17a2及び下流側接触防止部材17b1,17b2)についても、ガラス板Gの幅方向GXに沿って複数の接触防止部材を含むように構成してもよい。
【0048】
各接触防止部材16,17は、例えばローラにより構成される。具体的には、各接触防止部材16,17は、ローラ本体18と、ローラ本体18を回転可能に支持する軸部19と、を備える。ローラ本体18は、例えば樹脂により円筒状に構成される。軸部19は、ガラス板Gの搬送方向Xに対して直交する水平方向に沿って延びる。
【0049】
ローラ本体18は、その外周面に、ガラス板Gに接触可能な接触部20を備える。接触部20は、ローラ本体18の外周面の全周にわたって設けられている。接触部20は、弾性体により構成されることが好ましい。弾性体に使用される材料としては、例えばゴム等が挙げられる。本実施形態では、弾性体は、環状に構成されており、ローラ本体18の外周面に着脱自在に取り付けられている。なお、弾性体は、濃色に着色されていることが好ましい。これにより、後述するようにガラス板Gに対して搬送異常を検出しやすいマークを付けることができる。
【0050】
検査部4は、ガラス板Gの検査を行う検査装置21を備える。検査装置21は、ガラス板Gの表面Ga,Gbを撮像する撮像装置22と、画像処理装置23と、を含む。
【0051】
撮像装置22は、所定の姿勢で搬送されるガラス板Gの表面Ga,Gbを撮像し、その画像データを取得する。撮像装置22は、取得した画像データを画像処理装置23に送信することができる。画像処理装置23は、コンピュータにより構成され、撮像装置22から送信された画像データに基づいて、ガラス板Gにおける欠陥の有無、接触防止部材(マーカ)16,17によるマークの有無等を検査することができる。
【0052】
図1及び
図2に示すように、搬送装置5a~5cは、洗浄部2においてガラス板Gを搬送する第一搬送装置5aと、乾燥部3においてガラス板Gを搬送する第二搬送装置5bと、検査部4においてガラス板Gを搬送する第三搬送装置5cと、を含む。各搬送装置5a~5cは、例えばローラコンベアにより構成される。各搬送装置5a~5cは、ガラス板Gの搬送方向Xに沿って間隔をおいて配置される複数の搬送ローラ24を有する。
【0053】
搬送装置5a~5cは、ガラス板Gを所定の高さ、所定の姿勢で搬送するように、複数の搬送ローラ24の上下方向及び水平方向の位置を調整することができる。
【0054】
図3に示すように、搬送ローラ24は、ガラス板Gの搬送方向Xに直交する水平方向に対して所定の角度θで傾斜している。搬送ローラ24の傾斜角度θは、1~10°とされることが好ましい。この構成により、搬送ローラ24によって正常に搬送されるガラス板Gは、傾斜姿勢で搬送されることになる。
【0055】
この場合において、ガラス板Gの幅方向GXにおける一方の端部(以下「第一端部」という)Gcは、ガラス板Gの幅方向GXにおける他方の端部(以下「第二端部」という)Gdよりも下方に位置する。ガラス板Gは、第一端部Gcが図示しないローラによって支持された状態で搬送されてもよい。
【0056】
上記のように、搬送ローラ24によってガラス板Gが傾斜姿勢で搬送されることにより、ガラス板Gに供給された洗浄液10又はリンス液11は、第二端部Gd側から第一端部Gc側に向かって流れ、第一端部Gcから流れ落ちることになる。
【0057】
以下、上記の構成を有する製造装置1を使用してガラス板Gを製造する方法について説明する。
図4に示すように、本方法は、加工工程S1と、洗浄工程S2と、乾燥工程S3と、検査工程S4と、を含む。
【0058】
加工工程S1は、製造関連処理工程であり、例えば砥石によってガラス板Gの端面を加工する工程や、ガラス板Gの表面を研磨する工程、ガラス板Gの表面を粗化する工程が該当する。本方法では、加工工程S1の前工程として、ガラス原板から所望のサイズのガラス板Gを切り出す切断工程(製造関連処理工程)を設けてもよい。なお、ガラス原板には、例えばオーバーフロー法やフロート法で成形されたガラスリボンから切り出されたガラス板を用いることができる。
【0059】
加工工程S1を経たガラス板Gとしては、例えば長さ、幅がそれぞれ100~5000mm、厚みが50~1500μmのディスプレイ用ガラス板が挙げられる。このようなガラス板Gは、成形条件等により厚み方向に反っている場合がある。
【0060】
洗浄工程S2は、加工工程S1後のガラス板Gを洗浄する製造関連処理工程である。洗浄工程S2では、第一搬送装置5aによってガラス板Gを搬送方向Xに沿って搬送しつつ、第一洗浄装置6の第一供給装置8によって、ガラス板Gの表面Ga,Gbに洗浄液10を供給する。その後、第一洗浄装置6の洗浄具9によって、ガラス板Gの表面Ga,Gbに対して擦り洗浄を行う。
【0061】
その後、第一搬送装置5aによって搬送されるガラス板Gは、第二洗浄装置7に到達する。第二洗浄装置7では、搬送されてきたガラス板Gの表面Ga,Gbに第二供給装置12によってリンス液11を供給することで、ガラス板Gに対するリンス洗浄を行う。その後、第一搬送装置5aは、ガラス板Gを乾燥部3へと搬送する。
【0062】
乾燥工程S3は、洗浄工程S2後のガラス板Gを乾燥させる製造関連処理工程である。乾燥工程S3では、ガラス板Gを第二搬送装置5bによって搬送しつつ、このガラス板Gに対して、第一エアナイフ14から気体13を吹き付ける(第一乾燥工程)。これにより、ガラス板Gの表面Ga,Gbに残存していたリンス液11が除去される。
【0063】
その後、第一エアナイフ14を通過し、第二エアナイフ15に到達したガラス板Gに対して、第二エアナイフ15から気体13を吹き付ける(第二乾燥工程)。これにより、ガラス板Gの表面Ga,Gbを乾燥させることができる。
【0064】
上記の各工程の他、本方法は、ガラス板Gが異常な搬送をされた場合に、ガラス板Gにマークを付するマーキング工程を備えてもよい。以下、このマーキング工程について、第一接触防止部材16の上流側接触防止部材である上接触防止部材16a1によってガラス板Gにマークを付する場合を例として説明する。
【0065】
例えば、第二搬送装置5bに対するメンテナンス作業の際に、搬送ローラ24が所定の位置からずれた不適切な位置に配置される場合がある。
図5及び
図6では、適切な位置にある搬送ローラ24を実線で示し、不適切な位置にある搬送ローラ24を二点鎖線で示す。
【0066】
図5及び
図6に示すように、不適切な位置にある搬送ローラ24(二点鎖線)は、適切な位置にある搬送ローラ24(実線)よりも、第一接触防止部材16の上接触防止部材16a1に近い位置にある。この場合、不適切な位置になる搬送ローラ24をガラス板Gが通過する際に、この搬送ローラ24によってガラス板Gが持ち上げられることで、ガラス板Gに振動が発生する。
【0067】
マーキング工程では、上記のように第二搬送装置5bにおいてガラス板Gの搬送異常が発生した場合に、ガラス板Gの上面Gaが、
図5及び
図6において二点鎖線で示すように、上接触防止部材16a1の接触部20に接触する。この際、上接触防止部材16a1のローラ本体18が回転するとともに、接触部20としての弾性体がこの接触によって弾性変形する。さらに、弾性変形した接触部20がガラス板Gの上面Gaと擦れ合うことで、弾性体を構成するゴムの一部がガラス板Gの上面Gaに転写される。これにより、ガラス板Gの上面Gaに、マーク(接触跡)が付される。
【0068】
上記のように、マーキング工程において、第一接触防止部材16における上接触防止部材16a1がガラス板Gの上面Gaに接触することで、ガラス板Gが上側の第一エアナイフ14に接触することが防止される。
【0069】
乾燥部3において乾燥工程S3(マーキング工程)が施されたガラス板Gは、第二搬送装置5bによって検査部4へと搬送される。
【0070】
検査工程S4では、乾燥工程S3が終了したガラス板Gに対して、欠陥の有無、搬送異常の有無についての検査を行う。検査工程S4において、検査装置21は、検査結果に基づいて、ガラス板Gの製品としての良否を判定する。
【0071】
図7に示すように、検査工程S4において、ガラス板GにマークMが付されていると、検査装置21は、このマークMを検出し、ガラス板Gの搬送に異常が発生していることを検出する。
【0072】
検査工程S4において、各接触防止部材16,17によって付されたマークMが検出されると、第二搬送装置5bの検査が行われる。この検査では、第二搬送装置5bを構成する搬送ローラ24の位置等が検査される、搬送ローラ24に不備がある場合には、その不備を解消するための整備や位置調整が実施される。なお、検査工程S4においてマークMが検出されたガラス板Gには、洗浄工程S2及び乾燥工程S3を再度行ってもよい。これにより、ガラス板GからマークMを除去することができる。
【0073】
以上説明した本実施形態に係るガラス製品(ガラス板G)の製造装置1及び製造方法によれば、第二搬送装置5bにおいてガラス板Gの搬送に異常が発生した場合に、マーキング工程(接触防止部材16,17)によって、ガラス板GにマークMを付することができる。検査工程S4(検査装置21)によってこのマークMを検出することで、第二搬送装置5bに異常が発生していることを迅速に検出することが可能となる。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0075】
上記の実施形態では、接触防止部材16,17を回転可能なローラによって構成した例を示したが、本発明はこの構成に限定されない。接触防止部材16,17は回転することなくガラス板Gに接触するように構成されてもよい。
【0076】
上記の実施形態では、接触防止部材16,17の接触部20に弾性体を用いた例を示したが、本発明はこの構成に限定されない。接触防止部材16,17の接触部20は、弾性体に限定されず、ガラス板Gよりも低硬度の材料、例えばポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂によって構成してもよい。すなわち、例えば、接触防止部材16,17のローラ本体18を合成樹脂により構成し、ローラ本体18の外周面をガラス板Gへの接触部20として用いてもよい。
【0077】
上記の実施形態では、搬送装置5a~5cによって搬送されるガラス板Gの上方及び下方に位置する接触防止部材16,17を例示したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、接触防止部材は、搬送されるガラス板Gの上方のみに配置されてもよい。
【0078】
上記の実施形態では、第二搬送装置5bによるガラス板Gの搬送経路上に接触防止部材16,17を配置した製造装置1の例を示したが、本発明はこの構成に限定されない。接触防止部材は、第一搬送装置5a又は第三搬送装置5cによるガラス板Gの搬送経路上に配置されてもよい。この他、加工工程S1後に第一洗浄装置6までガラス板Gを搬送する際に、その搬送経路上に接触防止部材を配置してもよい。
【0079】
上記の実施形態では、エアナイフ14,15の上流側及び下流側の両方に接触防止部材16,17を配置した製造装置1の例を示したが、本発明のこの構成に限定されない。製造装置1は、エアナイフ14,15の上流側のみ、又は下流側のみに接触防止部材16,17を配置したものであってもよい。エアナイフ14,15へのガラス製品の接触を確実に防止する観点では、エアナイフ14,15の上流側のみに接触防止部材16,17を配置することが好ましく、上流側及び下流側の両方に接触防止部材16,17を配置することがより好ましい。
【符号の説明】
【0080】
1 ガラス製品の製造装置
5a 第一搬送装置
5b 第二搬送装置
5c 第三搬送装置
13 気体
14 第一エアナイフ
15 第二エアナイフ
16 第一接触防止部材
17 第二接触防止部材
18 接触防止部材のローラ本体
20 接触部(弾性体)
21 検査装置
DA1 エアナイフとガラス板との離間距離
DA2 エアナイフとガラス板との離間距離
DA3 エアナイフとガラス板との離間距離
DA4 エアナイフとガラス板との離間距離
DB1 接触防止部材とガラス板との離間距離
DB2 接触防止部材とガラス板との離間距離
DB3 接触防止部材とガラス板との離間距離
DB4 接触防止部材とガラス板との離間距離
G ガラス板(ガラス製品)
Ga ガラス板の上面(ガラス製品の表面)
Gb ガラス板の下面(ガラス製品の表面)
M マーク
S2 洗浄工程(製造関連処理工程)
S3 乾燥工程(製造関連処理工程)
X 搬送方向