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特開2023-15612水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015612
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/32 20060101AFI20230125BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20230125BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20230125BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20230125BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20230125BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
C04B24/32 A
C04B24/26 B
C04B24/26 E
C04B24/26 F
C04B24/26 H
C04B24/02
C04B24/12 A
C04B28/02
C08F290/06
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119504
(22)【出願日】2021-07-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217102
【弁理士】
【氏名又は名称】冨永 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智考
(72)【発明者】
【氏名】井出 竜司
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 勇輝
【テーマコード(参考)】
4G112
4J127
【Fターム(参考)】
4G112MD01
4G112PB15
4G112PB20
4G112PB29
4G112PB31
4G112PB32
4G112PB36
4G112PC03
4J127BA041
4J127BB021
4J127BB101
4J127BB141
4J127BB191
4J127BB211
4J127BC021
4J127BC131
4J127BD221
4J127BF181
4J127BF18X
4J127BF18Z
4J127BG141
4J127BG14X
4J127BG14Z
4J127CB121
4J127CB151
4J127CC091
4J127CC151
4J127FA48
(57)【要約】
【課題】品質が十分でなく粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、その使用量が少なくても良い水硬性組成物用添加剤を提供する。
【解決手段】一般式(1)で示されるA成分と、一般式(2)で示されるB成分と、を含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるA成分と、
下記一般式(2)で示されるB成分と、を含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【化1】
(一般式(1)において、Rは、水素原子、または炭素数1~30の1~3価アルコールから水酸基を除いた残基である。ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。Rは、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。mは、1~200の数である。aは、1~3の整数である。a×mは、ROの平均付加モル数であり、1~200を満たす。)
【化2】
(一般式(2)において、Rは、炭素数13~27のベンジルフェニル基、炭素数14~30のスチレン化フェニル基、またはp-クミルフェノールから水酸基を除いた残基である。ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。Rは、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。nは、ROの平均付加モル数であり、1~150の数である。)
【請求項2】
前記一般式(1)におけるROは、全オキシアルキレン基中の15~90モル%が炭素数2のオキシエチレン基であり、全オキシアルキレン基中の10~85モル%が炭素数3のオキシプロピレン基である、請求項1に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項3】
前記B成分は、前記一般式(2)におけるRが炭素数14のモノスチレン化フェニル基であるもの、前記一般式(2)におけるRが炭素数22のジスチレン化フェニル基であるもの、及び、前記一般式(2)におけるRが炭素数30のトリスチレン化フェニル基であるものから選択される少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項4】
前記B成分は、前記一般式(2)におけるRが炭素数30のトリスチレン化フェニル基であるものを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項5】
前記A成分及び前記B成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記A成分を15~85質量部の割合で含有し、前記B成分を15~85質量部の割合で含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項6】
更に、下記一般式(3)で示されるC成分、及び、下記一般式(4)で示されるD成分から選択される少なくとも1つを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤。
【化3】
(一般式(3)において、Rは、炭素数1~30のアルキル基または炭素数2~30のアルケニル基である。RO,ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。pは、0~100の数である。qは、0~100の数である。p+qは、RO及びROで示される炭素数2~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、p+q≦100の条件を満たす。RO及びROの合計のオキシアルキレン基中の50モル%以上が、炭素数2のオキシエチレン基である。)
【化4】
(一般式(4)において、R10は、炭素数10~20のアルキル基、または炭素数10~20のアルケニル基である。R11O,R12Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。R13は、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基である。R14は、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基である。rは、0~100の数である。sは、0~100の数である。r+sは、R11O及びR12Oで示される炭素数2~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、20≦r+s≦100の条件を満たす。R11O及びR12Oの合計のオキシアルキレン基中の65モル%以上が、炭素数3または4のオキシアルキレン基である。)
【請求項7】
前記A成分、前記B成分、及び前記C成分を含み、前記A成分、前記B成分、及び前記C成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を10~80質量部、前記B成分を10~80質量部、及び前記C成分を0.1~40質量部の割合で含有する、請求項6に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項8】
前記A成分、前記B成分、及び前記D成分を含み、前記A成分、前記B成分、及び前記D成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を10~80質量部、前記B成分を10~80質量部、及び前記D成分を0.1~20質量部の割合で含有する、請求項6に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項9】
前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分を含み、前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を10~80質量部、前記B成分を10~80質量部、前記C成分を0.1~40質量部、及び前記D成分を0.1~20質量部の割合で含有する、請求項6に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項10】
下記ポリカルボン酸系減水剤と併用される、請求項1~9に記載の水硬性組成物用添加剤。
ポリカルボン酸系減水剤:下記の一般式(5)で示される化合物から形成される構成単位1、及びビニル基を有するカルボン酸単量体から形成される構成単位2を含み、分子中に占める前記構成単位1及び前記構成単位2の構成割合の合計を100質量%としたとき、前記構成単位1が1~99質量%、及び前記構成単位2が99~1質量%であり、更に、質量平均分子量が1,000~1,000,000であるビニル共重合体。
【化5】
(一般式(5)において、R15,R16,R17は、水素原子、メチル基、及び-(CHCOOMで示される有機基(但し、tは0~2の整数であり、Mは水素原子、または金属原子である)である。但し、R15,R16,R17のうち少なくとも1つは、水素原子またはメチル基である。R18Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。R19は、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。xは0~5の整数である。yは0または1の整数である。zは、R18Oの平均付加モル数であり、1~300の数である。)
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤を含有することを特徴とする水硬性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物に関する。更に詳しくは、コンクリート等の水硬性組成物に添加される水硬性組成物用添加剤及びこれが添加された水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、川砂等における良質な細骨材が枯渇しつつあり、それに起因して、以前は使用されていなかった品質が十分でない細骨材が採用される傾向がある。つまり、細骨材として、粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きいものが使用される傾向がある。このような細骨材を用いると、得られる水硬性組成物は、例えば、通常の水セメント比(W/C)であってもフレッシュ状態(粘性、流動性等)がばらつき、作業性が低下する。
【0003】
このようなフレッシュ状態のばらつきは、水硬性組成物用減水剤として汎用的に使用されているポリカルボン酸系共重合体が特に顕著な影響を受けるために生じることが分かっている。そして、これが、近年の水硬性組成物の品質安定性の低下の原因の一つとなっている。
【0004】
そこで、粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きい細骨材を使用する場合にも、流動保持性やフレッシュ時の粘性やモルタルの状態を改善でき、コンクリート等の水硬性組成物に優れた性状を与えることのできる水硬性組成物用添加剤(例えば、特許文献1参照)等が報告されている。
【0005】
また、流動性が高い生コンクリートや生モルタルを製造するために、球状凝固体からなる特定の細骨材を使用することが報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-45010号公報
【特許文献2】特開2004-091305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の水硬性組成物用添加剤は、更なる改良の余地があり、また、特許文献2の記載の細骨材を採用することは、細骨材の供給面や費用面等から現実的でない。そのため、品質が十分でなく粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、粘性、流動性等の性状が維持される新たな水硬性組成物用添加剤の開発が求められていた。
【0008】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、品質が十分でなく粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、その使用量が少なくても良い水硬性組成物用添加剤の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、所定のA成分及びB成分を配合することによって上記課題を解決できることを見出した。本発明によれば、以下の水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物が提供される。
【0010】
[1] 下記一般式(1)で示されるA成分と、
下記一般式(2)で示されるB成分と、を含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【0011】
【化1】
(一般式(1)において、Rは、水素原子、または炭素数1~30の1~3価アルコールから水酸基を除いた残基である。ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。Rは、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。mは、1~200の数である。aは、1~3の整数である。a×mは、ROの平均付加モル数であり、1~200を満たす。)
【0012】
【化2】
(一般式(2)において、Rは、炭素数13~27のベンジルフェニル基、炭素数14~30のスチレン化フェニル基、またはp-クミルフェノールから水酸基を除いた残基である。ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。Rは、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。nは、ROの平均付加モル数であり、1~150の数である。)
【0013】
[2] 前記一般式(1)におけるROは、全オキシアルキレン基中の15~90モル%が炭素数2のオキシエチレン基であり、全オキシアルキレン基中の10~85モル%が炭素数3のオキシプロピレン基である、前記[1]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0014】
[3] 前記B成分は、前記一般式(2)におけるRが炭素数14のモノスチレン化フェニル基であるもの、前記一般式(2)におけるRが炭素数22のジスチレン化フェニル基であるもの、及び、前記一般式(2)におけるRが炭素数30のトリスチレン化フェニル基であるものから選択される少なくとも1つを含む、前記[1]または[2]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0015】
[4] 前記B成分は、前記一般式(2)におけるRが炭素数30のトリスチレン化フェニル基であるものを含む、前記[1]~[3]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0016】
[5] 前記A成分及び前記B成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記A成分を15~85質量部の割合で含有し、前記B成分を15~85質量部の割合で含有する、前記[1]~[4]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0017】
[6] 更に、下記一般式(3)で示されるC成分、及び、下記一般式(4)で示されるD成分から選択される少なくとも1つを含有する、前記[1]~[4]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0018】
【化3】
(一般式(3)において、Rは、炭素数1~30のアルキル基または炭素数2~30のアルケニル基である。RO,ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。pは、0~100の数である。qは、0~100の数である。p+qは、RO及びROで示される炭素数2~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、p+q≦100の条件を満たす。RO及びROの合計のオキシアルキレン基中の50モル%以上が、炭素数2のオキシエチレン基である。)
【0019】
【化4】
(一般式(4)において、R10は、炭素数10~20のアルキル基、または炭素数10~20のアルケニル基である。R11O,R12Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。R13は、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基である。R14は、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基である。rは、0~100の数である。sは、0~100の数である。r+sは、R11O及びR12Oで示される炭素数2~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、20≦r+s≦100の条件を満たす。R11O及びR12Oの合計のオキシアルキレン基中の65モル%以上が、炭素数3または4のオキシアルキレン基である。)
【0020】
[7] 前記A成分、前記B成分、及び前記C成分を含み、前記A成分、前記B成分、及び前記C成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を10~80質量部、前記B成分を10~80質量部、及び前記C成分を0.1~40質量部の割合で含有する、前記[6]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0021】
[8] 前記A成分、前記B成分、及び前記D成分を含み、前記A成分、前記B成分、及び前記D成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を10~80質量部、前記B成分を10~80質量部、及び前記D成分を0.1~20質量部の割合で含有する、前記[6]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0022】
[9] 前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分を含み、前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を10~80質量部、前記B成分を10~80質量部、前記C成分を0.1~40質量部、及び前記D成分を0.1~20質量部の割合で含有する、前記[6]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0023】
[10] 下記ポリカルボン酸系減水剤と併用される、前記[1]~[9]に記載の水硬性組成物用添加剤。
ポリカルボン酸系減水剤:下記の一般式(5)で示される化合物から形成される構成単位1、及びビニル基を有するカルボン酸単量体から形成される構成単位2を含み、分子中に占める前記構成単位1及び前記構成単位2の構成割合の合計を100質量%としたとき、前記構成単位1が1~99質量%、及び前記構成単位2が99~1質量%であり、更に、質量平均分子量が1,000~1,000,000であるビニル共重合体。
【0024】
【化5】
(一般式(5)において、R15,R16,R17は、水素原子、メチル基、及び-(CHCOOMで示される有機基(但し、tは0~2の整数であり、Mは水素原子、または金属原子である)である。但し、R15,R16,R17のうち少なくとも1つは、水素原子またはメチル基である。R18Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。R19は、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。xは0~5の整数である。yは0または1の整数である。zは、R18Oの平均付加モル数であり、1~300の数である。)
【0025】
[11] 前記[1]~[10]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤を含有することを特徴とする水硬性組成物。
【発明の効果】
【0026】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、品質が十分でなく粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、その使用量が少なくてもよいという効果を奏するものである。
【0027】
本発明の水硬性組成物は、水硬性組成物用添加剤の使用量が少なく、更に、品質が十分でなく粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0029】
(1)水硬性組成物用添加剤:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、一般式(1)で示されるA成分と、一般式(2)で示されるB成分と、を含有するものである。
【0030】
このような水硬性組成物用添加剤は、品質が十分でなく粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られる。つまり、ロバスト性の高いものである。更に、その使用量が少なくても良好な効果が発揮されるものである。
【0031】
具体的には、従来、粘土質(泥分)を含む微粒成分等を含有する骨材を水硬性組成物に使用した場合、この水硬性組成物の流動性が低下することがある。また、微粒成分等を含む水硬性組成物は、その粘性が上昇し、ポンプ圧送性等の作業性が低下するという問題がある。このような問題に対して、本発明の水硬性組成物用添加剤は、上記構成を採用することにより、水硬性組成物の流動性の低下を抑制するとともに、粘性を低減することで作業性を確保できるものである。更には、骨材の品質にばらつきがあると、それに起因して、得られる水硬性組成物の品質にも差が生じてしまうが、本発明の水硬性組成物用添加剤によれば、水硬性組成物の品質の安定化を図ることができる。
【0032】
ここで、「微粒成分等の含有量にばらつきがある」とは、コンクリート等の水硬性組成物において、その流動性等の性状に大きな差異を生じるような「含有量のばらつき」があることを意味する。つまり、微粒成分等の具体的な含有量の大小に着目するのではなく、水硬性組成物の流動性等の性状を大きく変化させる程に含有量に振れ幅がある場合、「含有量にばらつきがある」ということになる。
【0033】
(1-1)A成分:
A成分は、一般式(1)で示される化合物である。このA成分をB成分とともに配合することで、微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られる。更に、その使用量が少なくても良好な効果が発揮されるという効果が発揮される。
【0034】
【化6】
(一般式(1)において、Rは、水素原子、または炭素数1~30の1~3価アルコールから水酸基を除いた残基である。ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。Rは、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。mは、1~200の数である。aは、1~3の整数である。a×mは、ROの平均付加モル数であり、1~200を満たす。)
【0035】
は、水素原子、または炭素数1~30の1~3価アルコールから水酸基を除いた残基である。
【0036】
の炭素数1~30の1~3価アルコールから水酸基を除いた残基としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2-エチル-ヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、2-プロピル-ヘプチルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、2-ブチル-オクチルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、イソオクタデシルアルコール、オクタデセニルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール、テトラコシルアルコール、ヘキサコシルアルコール、オクタコシルアルコール、トリアコンチルアルコール、メチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、デシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-ペンタトリオールから水酸基を除いた残基等を挙げることができる。
【0037】
Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)であり、炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられる。
【0038】
Oが、2種以上の場合は、ランダム付加体、ブロック付加体、交互付加体のいずれの形態であっても良い。
【0039】
このROは、全オキシアルキレン基中の15~90モル%が炭素数2のオキシエチレン基であることが好ましく、全オキシアルキレン基中の10~85モル%が炭素数3のオキシプロピレン基であることが好ましい。更に、ROは、全オキシアルキレン基中の15~80モル%が炭素数2のオキシエチレン基であることが更に好ましく、全オキシアルキレン基中の20~85モル%が炭素数3のオキシプロピレン基であることが更に好ましい。このような割合であると、水硬性組成物において更に一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、添加剤の使用量がより少なくても良好な効果が得られる。
【0040】
は、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基であり、水素原子であることが好ましい。
【0041】
の炭素数1~20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、エチニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等を挙げることができる。
【0042】
mは、1~200の数であり、10~200の数であることが好ましい。なお、mは、ROの数を示し、式:m=平均付加モル数/aで算出される値である。
【0043】
aは、1~3の整数である。
【0044】
a×mは、ROの平均付加モル数であり、1~200を満たし、30~200を満たすことが好ましく、60~200を満たすことがより好ましい。このような範囲を満たすことにより、水硬性組成物において更に一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、添加剤の使用量がより少なくても良好な効果が得られる。一方、a×m(即ち、ROの平均付加モル数)が200超であると、得られる水硬性組成物の粘性が上昇してしまい、作業性が低下する。
【0045】
本明細書において「平均付加モル数」は、製造時の各原料の仕込み比から計算される、ヒドロキシ基や、アミノ基等を有する出発物質(アルコール類、アミン類)1モル当たりに対する、アルキレンオキシドのモル数を意味するものとする。
【0046】
平均付加モル数は、H-NMRを用いて求めることもできる。
【0047】
A成分は、公知の方法を採用して適宜作製することができる。
【0048】
(1-2)B成分:
B成分は、一般式(2)で示される化合物である。このB成分をA成分とともに配合することで、微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られる。更に、その使用量が少なくても良好な効果が発揮されるという効果が発揮される。
【0049】
【化7】
(一般式(2)において、Rは、炭素数13~27のベンジルフェニル基、炭素数14~30のスチレン化フェニル基、またはp-クミルフェノールから水酸基を除いた残基である。ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。Rは、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。nは、ROの平均付加モル数であり、1~150の数である。)
【0050】
は、炭素数13~27のベンジルフェニル基、炭素数14~30のスチレン化フェニル基、またはp-クミルフェノールから水酸基を除いた残基である。このような残基であると、得られる水硬性組成物は一定の性状(粘性、流動性等)が得られる。
【0051】
このB成分は、一般式(2)におけるRが炭素数14のモノスチレン化フェニル基であるもの、一般式(2)におけるRが炭素数22のジスチレン化フェニル基であるもの、及び、一般式(2)におけるRが炭素数30のトリスチレン化フェニル基であるものから選択される少なくとも1つを含むものであることが好ましい。このようにRが所定のスチレン化フェニル基を含むものであると、得られる水硬性組成物はより一定の性状(粘性、流動性等)が得られる。
【0052】
また、B成分は、一般式(2)におけるRが炭素数30のトリスチレン化フェニル基であるものを含んでいることが好ましい。つまり、スチレン化フェニル基は、モノ体、ジ体、トリ体が有るが、これらのうちでも、上記トリ体を含んでいることがよい。
【0053】
更には、B成分は、一般式(2)におけるRが炭素数14のモノスチレン化フェニル基であるもの(b1成分)、及び、一般式(2)におけるRが炭素数22のジスチレン化フェニル基であるもの(b2成分)から選択される少なくとも1つと、一般式(2)におけるRが炭素数30のトリスチレン化フェニル基であるもの(b3成分)と、を含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析において、b1成分、b2成分、及び、b3成分のピーク面積の総和に占めるb3成分のピーク面積の割合が30%以上であることが好ましく、50%以上であることが更に好ましい。このような条件を満たすことにより、水硬性組成物用添加剤の使用量がより少なくても良好な効果が発揮される。
【0054】
スチレン化フェニル基において、モノ体であるもの(b1成分)、ジ体であるもの(b2成分)、トリ体であるもの(b3成分)の構成比の測定は、上記のようにゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって行うことができる。
【0055】
Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)であり、炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられる。
【0056】
Oが、2種以上の場合は、ランダム付加体、ブロック付加体、交互付加体のいずれの形態であっても良い。
【0057】
このようなROは、全オキシアルキレン基中の15~99モル%が炭素数2のオキシエチレン基であることが好ましく、全オキシアルキレン基中の1~85モル%が炭素数3のオキシプロピレン基であることが好ましい。このような割合であると、水硬性組成物において更に一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、添加剤の使用量がより少なくても良好な効果が得られる。
【0058】
は、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基であり、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0059】
の炭素数1~20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、エチニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等を挙げることができる。
【0060】
nは、ROの平均付加モル数であり、1~150の数であり、1~100の数であることが好ましく、1~50の数であることがより好ましい。このような範囲を満たすことにより、水硬性組成物において更に一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、添加剤の使用量がより少なくても良好な効果が得られる。一方、nが150超であると、得られる水硬性組成物の粘性が上昇してしまい、作業性が低下する。
【0061】
B成分は、公知の方法を採用して適宜作製することができる。
【0062】
(1-3)C成分及びD成分:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、更に、下記一般式(3)で示されるC成分、及び、下記一般式(4)で示されるD成分から選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。このようなC成分またはD成分、或いは、C成分とD成分の両方を含有することで、微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が更に抑制され、より安定した性状(粘性、流動性等)の水硬性組成物が得られる。更に、添加剤の使用量がより少なくても良好な効果が得られる。
【0063】
(1-3a)C成分:
C成分は、一般式(3)で示される化合物である。このC成分を含有することにより、更に高いロバスト性を付与することができる。更に、減水剤に対する水硬性組成物用添加剤の溶解性(相溶性)を改善することができる。
【0064】
【化8】
(一般式(3)において、Rは、炭素数1~30のアルキル基または炭素数2~30のアルケニル基である。RO,ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。pは、0~100の数である。qは、0~100の数である。p+qは、RO及びROで示される炭素数2~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、p+q≦100の条件を満たす。RO及びROの合計のオキシアルキレン基中の50モル%以上が、炭素数2のオキシエチレン基である。)
【0065】
は、炭素数1~30のアルキル基または炭素数2~30のアルケニル基であり、炭素数6~22のアルキル基または炭素数6~22のアルケニル基であることが好ましい。
【0066】
の炭素数1~30のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、テトラコシル基、ヘキサコシル基、オクタコシル基、トリアコンチル基等を挙げることができる。Rの炭素数2~30のアルケニル基としては、例えば、エチニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等を挙げることができる。
【0067】
O,ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)であり、炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられる。
【0068】
O及びROが、2種以上の場合は、ランダム付加体、ブロック付加体、交互付加体のいずれの形態であっても良い。
【0069】
O及びROは、これらの合計のオキシアルキレン基中の50モル%以上が、炭素数2のオキシエチレン基であり、70モル%以上が炭素数2のオキシエチレン基であることが好ましく、90モル%以上が炭素数2のオキシエチレン基であることが更に好ましい。
【0070】
pは、0~100の数であり、1~50の数であることが好ましい。
【0071】
qは、0~100の数であり、1~50の数であることが好ましい。
【0072】
p+qは、RO及びROで示される炭素数2~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数である。そして、p+q≦100の条件を満たし、2≦p+q≦70の条件を満たすことが好ましく、3≦p+q≦50の条件を満たすことがより好ましい。このような条件を満たすことにより、更に高いロバスト性を付与することができる。
【0073】
(1-3b)D成分:
D成分は、一般式(4)で示される化合物である。このD成分を含有することにより、消泡剤としても作用し、空気量のばらつきを小さくすることができ、更に、流動性を改善することが想定される。
【0074】
【化9】
(一般式(4)において、R10は、炭素数10~20のアルキル基、または炭素数10~20のアルケニル基である。R11O,R12Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。R13は、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基である。R14は、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基である。rは、0~100の数である。sは、0~100の数である。r+sは、R11O及びR12Oで示される炭素数2~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、20≦r+s≦100の条件を満たす。R11O及びR12Oの合計のオキシアルキレン基中の65モル%以上が、炭素数3または4のオキシアルキレン基である。)
【0075】
10は、炭素数10~20のアルキル基、または炭素数10~20のアルケニル基であり、14~18のアルキル基、または炭素数14~18のアルケニル基であることが好ましい。
【0076】
10の炭素数10~20のアルキル基としては、例えば、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等を挙げることができる。R10の炭素数10~20のアルケニル基としては、例えば、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等を挙げることができる。
【0077】
11O,R12Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)であり、炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられる。
【0078】
11O及びR12Oが2種以上の場合は、ランダム付加体、ブロック付加体、交互付加体のいずれの形態であっても良い。
【0079】
11O及びR12Oは、これらの合計のオキシアルキレン基中の65モル%以上が、炭素数3または4のオキシアルキレン基であり、70モル%以上が炭素数3のオキシアルキレン基であることが好ましく、75モル%以上が炭素数3のオキシアルキレン基であることが更に好ましい。
【0080】
13は、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基であり、水素原子であることが好ましい。
【0081】
14は、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基であり、水素原子であることが好ましい。
【0082】
13、R14における炭素数1~10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、エチニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等を挙げることができる。
【0083】
rは、0~100の数であり、1~70の数であることが好ましい。
【0084】
sは、0~100の数であり、1~70の数であることが好ましい。
【0085】
r+sは、R11O及びR12Oで示される炭素数2~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数である。そして、20≦r+s≦100の条件を満たし、25≦r+s≦80の条件を満たすことが好ましく、30≦r+s≦70の条件を満たすことがより好ましい。このような条件を満たすことにより、より空気量のばらつきを小さくすることができ、更に流動性を改善することができる。
【0086】
C成分及びD成分は、それぞれ公知の方法を採用して適宜作製することができる。
【0087】
(1-4)各成分の配合割合:
A成分及びB成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、A成分を15~85質量部の割合で含有し、B成分を15~85質量部の割合で含有することが好ましく、A成分を25~75質量部、B成分を25~75質量部の割合で含有することが更に好ましい。このような範囲とすると、微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が更に抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、その使用量が更に少なくても十分に効果が得られる。
【0088】
A成分、B成分、及びC成分を含み(但し、D成分は含まない場合)、A成分、B成分、及びC成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、A成分を10~80質量部、B成分を10~80質量部、及びC成分を0.1~40質量部の割合で含有することが好ましく、A成分を20~70質量部、B成分を20~70質量部、C成分を0.1~20質量部の割合で含有することが更に好ましい。このような範囲とすると、微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が更に抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、その使用量が更に少なくても十分に効果が得られる。
【0089】
A成分、B成分、及びD成分を含み(但し、C成分は含まない場合)、A成分、B成分、及びD成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、A成分を10~80質量部、B成分を10~80質量部、及びD成分を0.1~20質量部の割合で含有することが好ましく、A成分を20~70質量部、B成分を20~70質量部、D成分を0.1~15質量部の割合で含有することが更に好ましい。このような範囲とすると、微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が更に抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、その使用量が更に少なくても十分に効果が得られる。
【0090】
A成分、B成分、C成分、及びD成分を含み、A成分、B成分、C成分、及びD成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、A成分を10~80質量部、B成分を10~80質量部、C成分を0.1~40質量部、及びD成分を0.1~20質量部の割合で含有することが好ましく、A成分を20~70質量部、B成分を20~70質量部、C成分を0.1~20質量部、D成分を0.1~15質量部の割合で含有することが更に好ましい。このような範囲とすると、微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が更に抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、その使用量が更に少なくても十分に効果が得られる。
【0091】
(1-5)その他の成分:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、上述したA成分~D成分以外に、効果が損なわれない範囲内で、その他の成分を更に含有していてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、糖類や、オキシカルボン酸塩等からなる凝結遅延成分、リグニンスルホン酸ナトリウム等からなる分散作用を有する成分、陰イオン界面活性剤等からなるAE剤、オキシアルキレン系化合物等からなる消泡剤、アルカノールアミン等からなる硬化促進剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等からなる収縮低減剤、セルロースエーテル系化合物等からなる増粘剤、イソチアゾリン系化合物等からなる防腐剤、亜硝酸塩等からなる防錆剤等を挙げることができる。
【0092】
その他の成分の含有割合としては、例えば、本発明の水硬性組成物用添加剤全体の0~20質量%とすることができる。
【0093】
更に、本発明の水硬性組成物用添加剤は、水や溶剤で希釈された形態で使用してもよい。
【0094】
(1-6)水硬性組成物用添加剤の使用:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、下記ポリカルボン酸系減水剤と併用されることが好ましい。本発明の水硬性組成物用添加剤は、このポリカルボン酸系減水剤と併用することにより、微粒成分等との材料相性を有するポリカルボン酸系減水剤の材料相性を低減させることができ、減水剤の使用量を少なくすることができるとともに、良好な性状(粘性、流動性等)の水硬性組成物が得られる。
【0095】
ポリカルボン酸系減水剤は、下記の一般式(5)で示される化合物から形成される構成単位1、及びビニル基を有するカルボン酸単量体から形成される構成単位2を含み、分子中に占める構成単位1及び構成単位2の構成割合の合計を100質量%としたとき、構成単位1が1~99質量%、及び構成単位2が99~1質量%である。そして、上記ポリカルボン酸系減水剤は、更に、質量平均分子量が1,000~1,000,000のビニル共重合体である。
【0096】
【化10】
(一般式(5)において、R15,R16,R17は、水素原子、メチル基、及び-(CHCOOMで示される有機基(但し、tは0~2の整数であり、Mは水素原子、または金属原子である)である。但し、R15,R16,R17のうち少なくとも1つは、水素原子またはメチル基である。R18Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。R19は、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。xは0~5の整数である。yは0または1の整数である。zは、R18Oの平均付加モル数であり、1~300の数である。)
【0097】
(1-6a)構成単位1:
構成単位1は、上記一般式(5)で示される化合物から形成されるものである。具体的には、構成単位1は、一般式(5)で示される化合物であるモノマーを材料の1つとして得られるポリマーを構成する1つの構成単位(一般式(5)で示される化合物に由来する構成単位)である。
【0098】
15,R16,R17は、水素原子、メチル基、及び-(CHCOOMで示される有機基(但し、tは0~2の整数であり、Mは水素原子、または金属原子である)である。但し、R15,R16,R17のうち少なくとも1つは、水素原子またはメチル基である。
【0099】
18Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)であり、炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられる。
【0100】
18Oが2種以上の場合は、ランダム付加体、ブロック付加体、交互付加体のいずれの形態であっても良い。
【0101】
19は、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基であり、水素原子、または炭素数1~5の炭化水素基であることが好ましい。
【0102】
19の炭素数1~20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、エチニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等を挙げることができる。
【0103】
xは0~5の整数であり、0~2の整数であることが好ましい。
【0104】
yは0または1の整数である。
【0105】
zは、R18Oの平均付加モル数であり、1~300の数であり、1~200の数であることが好ましく、1~150の数であることがより好ましい。
【0106】
一般式(5)で示される化合物としては、具体的には、α-アリル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アリル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタリル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタリル-ω-アセチル-(ポリ)オキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ブトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-アセチル-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-ブトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-ブトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-ビニル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシブチレン(ポリ)オキシエチレン等を挙げることができる。
【0107】
(1-6b)構成単位2:
構成単位2は、ビニル基を有するカルボン酸単量体から形成されるものである。つまり、構成単位2は、ビニル基を有するカルボン酸単量体を材料の1つとして得られるポリマーを構成する1つの構成単位(ビニル基を有するカルボン酸単量体に由来する構成単位)である。
【0108】
ビニル基を有するカルボン酸単量体としては、具体的には、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸、それらの塩から選ばれるもの等を挙げることができる。
【0109】
(1-6c)構成単位3:
上記ビニル共重合体は、更に、分子中に任意の構成単位として、構成単位1及び構成単位2と共重合可能な構成単位3を含んでいてもよい。構成単位3を形成する単量体としては、例えば、(メタ)アリルスルホン酸およびその塩、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を用いることができる。構成単位3は、1種または2種以上から形成されていてもよい。
【0110】
(1-6d)構成割合:
上記ポリカルボン酸系減水剤は、分子中に占める構成単位1及び構成単位2の構成割合の合計を100質量%としたとき、構成単位1が1~99質量%、及び構成単位2が99~1質量%であり、更に、構成単位1が70~99質量%、構成単位2が1~30質量%とすることができる。また、任意の構成単位である構成単位3の構成割合は、分子中に占める構成単位1、構成単位2及び構成単位3の構成割合の合計を100質量%としたとき、0~20質量%であり、0~10質量%とすることができる。
【0111】
(1-6e)質量平均分子量:
上記ポリカルボン酸系減水剤は、その質量平均分子量が1,000~1,000,000であり、5,000~200,000とすることが好ましく、5,000~100,000とすることがより好ましい。なお、ポリカルボン酸系減水剤の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0112】
(1-6f)製造方法:
上記ポリカルボン酸系減水剤は、従来公知の方法を採用して適宜製造することができる。
【0113】
(2)水硬性組成物:
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤を含有するものである。このような水硬性組成物は、水硬性組成物用添加剤の使用量が少なく、更に、品質が十分でなく粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材が使用されていても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られるものである。
【0114】
本発明の水硬性組成物は、従来公知の水硬性組成物と同様に、結合材、水、細骨材、及び粗骨材を含むものとすることができる。
【0115】
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤の含有割合について特に制限はなく適宜設定することができるが、本発明の水硬性組成物用添加剤の含有割合は、例えば、結合材100質量%に対して、固形分換算で、0.001~3.0質量%の割合とすることができる。
【0116】
結合材としては、例えば、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種のセメントを挙げることができる。
【0117】
更に、結合材は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末、石粉、シリカフューム、膨張材等の各種混和材を上述した各種セメントと併用してもよい。
【0118】
細骨材としては、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、珪砂、砕砂、各種スラグ細骨材等が挙げられるが、粘土質等の微粒成分等を含むものであってもよい。本発明においては、粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きいものであっても良好に使用することができる。
【0119】
ここで、細骨材中における「微粒成分等の含有量にばらつきがある」とは、コンクリート等の水硬性組成物において、その流動性等の性状に大きな差異を生じさせるような「含有量のばらつき」を意味する。つまり、例えば、微粒成分等の含有量が1割程度減少するだけであっても、流動性等の性状が、大きく変化することがある。微粒成分等の許容量の範囲(十分な性状の水硬性組成物が得られる範囲)は、比較的狭く、僅かな含有量の違いであっても、「含有量にばらつきがある」と言えることがある。
【0120】
粗骨材としては、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石、各種スラグ粗骨材、軽量骨材等が挙げられる。
【0121】
本発明の水硬性組成物は、効果が損なわれない範囲内で、適宜その他の成分を更に含有していてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、糖類や、オキシカルボン酸塩等からなる凝結遅延成分、リグニンスルホン酸ナトリウム等からなる分散作用を有する成分、陰イオン界面活性剤等からなるAE剤、オキシアルキレン系化合物等からなる消泡剤、アルカノールアミン等からなる硬化促進剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等からなる収縮低減剤、セルロースエーテル系化合物等からなる増粘剤、イソチアゾリン系化合物等からなる防腐剤、亜硝酸塩等からなる防錆剤等を挙げることができる。
【0122】
その他の成分の含有割合としては、例えば、結合材100質量%に対して、固形分換算で0~5質量%とすることができる。
【0123】
本発明の水硬性組成物は、その水と結合材の比率(水/結合材比)としては従来公知の割合を適宜採用することができるが、例えば、25~70質量%とすることができる。
【実施例0124】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0125】
まず、使用したA成分~D成分について、以下の表1~表4に示す。
【0126】
(A成分)
下記表1には、使用したA成分(A-1~A-6、RA-1)を示す。
【0127】
【表1】
【0128】
(B成分)
下記表2には、使用したB成分(B-1)~(B-6)を示す。
【0129】
【表2】
【0130】
(スチレン化フェノール中のモノ、ジ、トリ体の構成比の測定)
スチレン化フェノール中のモノ、ジ、トリ体の構成比の測定条件について、下記に示す測定条件に従ってゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した。
<測定条件>
装置:HLC-8320GPC(東ソー社製)
検出器:示差屈折計(RI)
カラム:TSK gel SuperH4000+H3000+H2000(東ソー社製)
溶離液:THF
流速:0.5mL/分
カラム温度:40℃
標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
【0131】
(C成分)
下記表3には、使用したC成分(C-1)~(C-5)を示す。
【0132】
【表3】
【0133】
(D成分)
下記表4には、使用したD成分(D-1)~(D-5)を示す。
【0134】
【表4】
【0135】
(作製例1~45)
次に、表5に示すように、各成分を混合して水硬性組成物用添加剤(X-1~X-40、RX-1~RX-5)を作製した。
【0136】
【表5】
【0137】
次に、表6には、ポリカルボン酸系減水剤(P-1)~(P-3)の構成単位について示す。
【0138】
【表6】
【0139】
表6中、L-1~L-4、M-1、及び、M-2は、以下の化合物を示し、各構成単位は当該化合物に由来するものである。
L-1:α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(平均45モル)オキシエチレン
L-2:α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(平均53モル)オキシエチレン
L-3:α-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリ(平均53モル)オキシエチレン
L-4:2-ヒドロキシエチルアクリレート
M-1:メタクリル酸
M-2:アクリル酸
【0140】
以下に、各ポリカルボン酸系減水剤(P-1)~(P-3)の合成方法を説明する。
【0141】
(合成例1)ポリカルボン酸系減水剤(P-1)の合成:
上水道水415.8g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(平均45モル)オキシエチレン346.3g、メタクリル酸44.7g、3-メルカプトプロピオン酸3.9gを、温度計、攪拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込んだ。そして、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃に保持した。
【0142】
次に、上記反応系に1%過酸化水素水溶液54.8gを投入し、2時間かけてラジカル共重合反応を行った。2時間経過後、1%過酸化水素水溶液13.7gを投入し、更に2時間反応を行った後、重合反応を終了した。その後、反応系に30%水酸化ナトリウム水溶液を投入してpHを5に調整し、その後、上水道水にて濃度を40%に調整して反応混合物を得た。
【0143】
この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量が25,000であった。この反応物をポリカルボン酸系減水剤(P-1)とした。
【0144】
(合成例2)ポリカルボン酸系減水剤(P-2)の合成:
上水道水207.4g、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(平均53モル)オキシエチレン456.8gを、温度計、攪拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込んだ。そして、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃に保持した。
【0145】
次に、上記反応系に3.5%過酸化水素水溶液24.8gを3時間かけて滴下し、それと同時に、「上水道水198.6gにアクリル酸39.7gを均一に溶解させた水溶液」を3時間かけて滴下し、更にそれと同時に、「上水道水21.8gにL-アスコルビン酸2.0gと3-メルカプトプロピオン酸3.5gを溶解させた水溶液」を4時間かけて滴下した。その後、反応系の温度を70℃に2時間維持し、重合反応を終了した。その後、反応系に30%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHが5になるように調整し、その後、上水道水を加えて濃度を40%に調整して反応混合物を得た。
【0146】
この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量が35,000であった。この反応物をポリカルボン酸系減水剤(P-2)とした。
【0147】
(合成例3)ポリカルボン酸系減水剤(P-3)の合成:
上水道水231.1g、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリ(平均53モル)オキシエチレン429.2gを、温度計、攪拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込んだ。そして、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃に保持した。
【0148】
次に、上記反応系に3.5%過酸化水素水溶液29.2gを3時間かけて滴下し、それと同時に、「上水道水42.0gにアクリル酸48.8g、2-ヒドロキシエチルアクリレート9.8gを均一に溶解させた水溶液」を3時間かけて滴下し、更にそれと同時に、「上水道水27.3gにL-アスコルビン酸2.0gと3-メルカプトプロピオン酸4.9gを溶解させた水溶液」を4時間かけて滴下した。その後、反応系の温度を70℃に2時間維持し、重合反応を終了した。その後、反応系に30%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHが5になるように調整し、その後、上水道水にて濃度を40%に調整して反応混合物を得た。
【0149】
この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量が30,000であった。この反応物をポリカルボン酸系減水剤(P-3)とした。
【0150】
(質量平均分子量)
合成したポリカルボン酸系減水剤(P-1)~(P-3)の質量平均分子量の測定におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の条件を以下に示す。
<測定条件>
装置:Shodex GPC-101(昭和電工社製)
カラム:OHpak SB-G+SB-806M HQ+SB-806M HQ(昭和電工社製)
検出器:示差屈折計(RI)
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:0.7mL/分
カラム温度:40℃
試料濃度:試料濃度0.5質量%の溶離液溶液
標準物質:PEG/PEO(アジレント・テクノロジー社製)
【0151】
(実施例1~56、比較例1~7)
次に、作製した水硬性組成物用添加剤(表5参照)を用い、表7に示す配合No.1~3(配合No.1-1、2-1、3-1(多量配合パターン)、及び、配合No.1-2、2-2、3-2(少量配合パターン))を採用して各コンクリート(水硬性組成物)を作製した。なお、表8、表9には、ポリカルボン酸系減水剤の使用量と水硬性組成物用添加剤の使用量を示す。
【0152】
その後、表8、表9に示すように、コンクリートの基本評価を行った。基本評価は、具体的には、多量配合パターンのコンクリートについては、スランプ、スランプフロー、及び、空気量の測定を行った。また、少量配合パターンのコンクリートについては、スランプフロー、及び、空気量の測定を行った。更に、表10、表11には、添加剤の使用量の評価、コンクリートの粘性、及びスランプフロー変化量の各評価結果について示す。
【0153】
各実施例及び比較例では、多量配合パターンと少量配合パターンの両方のパターンで水硬性組成物の調製を行い、スランプフロー変化量の評価を行った。この評価によってコンクリートの流動性が維持されるか否かが分かる。
【0154】
なお、ベントナイト、カオリナイト、細骨材微粒分の微粒成分等の含有量は、多量配合パターンと少量配合パターンで比較すると、1割程度の差異となるが、スランプフロー等の変化には大きな違いを生じさせる。例えば、比較例1では、ベントナイトの配合量が2kg/m(多量配合パターン)と1.8kg/m(少量配合パターン)である。その含有量の差異は大きくないようにも見えるが、これらのスランプフロー変化量は9.5cmとなり、コンクリート(水硬性組成物)の性状としては大きな違いである。
【0155】
以下に、具体的なコンクリート(水硬性組成物)の調製方法を示す。表7に示した配合条件で、20℃の試験室内で50Lのパン型強制練りミキサーに、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、宇部三菱セメント社製、及び住友大阪セメント社製等量混合、密度=3.16g/cm)からなる水硬性結合材と、細骨材として陸砂(大井川水系産、密度=2.58g/cm)と、微粒成分等として、ベントナイト(クニミネ工業社製、クニピア-F、真比重=2.6g/cm)、カオリナイト(竹原化学工業社製、RC-1、真比重=2.6g/cm)、または細骨材微粒分と、粗骨材として砕石(岡崎産砕石、密度=2.68g/cm)と、を投入した。なお、細骨材微粒分は、細骨材に含まれる成分であり、JIS A 1103に規定された75μmふるいを通過したもの(密度=2.58g/cmとして計算)を用いた。
【0156】
更に、水硬性組成物用減水剤、及び水硬性組成物用添加剤(表5参照)を表8、表9に示す使用量で配合し、更に、所定の空気量となるように、消泡剤「AFK-2(竹本油脂社製)」を練混ぜ水(蒲郡市上水道水)の一部として計量してミキサーに投入して90秒間練り混ぜた。そして、スランプが21±1cm、連行空気量が2.0%以下の範囲となるようコンクリート組成物(水硬性組成物)を調製した。なお、水硬性組成物用減水剤は、ポリカルボン酸系減水剤(P-1)/ポリカルボン酸系減水剤(P-2)/ポリカルボン酸系減水剤(P-3)/グルコン酸ナトリウム=25/25/25/25(質量比)として混合したものを使用した。
【0157】
次に、コンクリートの基本評価の評価方法は、以下の通りである。
【0158】
・スランプ(cm):
練り混ぜ直後のコンクリートについて、JIS A 1101に準拠して測定した。
【0159】
・スランプフロー(cm):
練り混ぜ直後のコンクリートについて、JIS A 1150に準拠して測定した。
【0160】
・空気量(容積%):
スランプ及びスランプフローの測定と同時に、JIS A 1128に準拠して測定した。
【0161】
次に、添加剤の使用量の評価、コンクリートの粘性、及びスランプフロー変化量の各評価の評価方法は、以下の通りである。なお、添加剤の使用量の評価及びコンクリートの粘性は、微粒成分等の含有量が多い多量配合パターンの配合時のものを採用して評価を行っている。
【0162】
・添加剤の使用量の評価
所定の空気量となるように水硬性組成物を調製した際における水硬性組成物用添加剤の使用量について、評価を行った。
【0163】
評価基準は、以下の通りである。水硬性組成物用添加剤の使用量が0.06%以上で0.07%未満である場合を「S」とした。上記使用量が0.07%以上で0.08%未満である場合を「A」とした。上記使用量が0.08%以上で0.09%未満である場合を「B」とした。上記使用量が0.09%以上で0.10%未満である場合を「C」とした。上記使用量が0.10%以上である場合を「D」とした。
【0164】
・コンクリートの粘性
コンクリートの粘性は、5人の試験者による官能評価で確認した。具体的には、得られたコンクリートをスコップで切り返してもらい、目視による印象及びハンドリング性に基づいて最高10点(1~10点の10段階評価)で採点した。その後、試験者の平均値(得点平均)を0.5点刻みで示し、この得点平均に応じて評価した。
【0165】
評価基準を以下に示す。9.0点以上で10.0点以下の場合、粘性が最も低いとして「S」とした。8.0点以上で9.0点未満の場合、粘性が特に低いとして「A」とした。7.0点以上で8.0点未満の場合、粘性が低いとして「B」とした。7.0点未満の場合、粘性が高いとして「C」とした。
【0166】
・スランプフロー変化量
多量配合パターンにおけるスランプフローと少量配合パターンにおけるスランプフローの差(式:「少量配合パターンにおけるスランプフロー」-「多量配合パターンにおけるスランプフロー」)を算出し、スランプフロー変化量とした。この変化量について評価を行った。変化量の値が小さい程、一定の性状が維持されることを示す。
【0167】
評価基準を以下に示す。スランプフロー変化量が±3cm未満である場合を「S」とした。スランプフロー変化量が±3cm以上で±5cm未満である場合を「A」とした。スランプフロー変化量が±5cm以上で±7cm未満である場合を「B」とした。スランプフロー変化量が±7cm以上である場合を「C」とした。
【0168】
【表7】
【0169】
なお、表7中、細骨材率は、ベントナイト、カオリナイト、及び細骨材微粒分を細骨材として見積もって計算した。
【0170】
【表8】
【0171】
【表9】
【0172】
なお、表9中、「※」で示す比較例7の添加剤は、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)であり、質量平均分子量は100,000である。
【0173】
表8、表9中、水硬組成物用減水剤及び水硬性組成物用添加剤の使用量は、全て固形分表記とした。
【0174】
【表10】
【0175】
【表11】
【0176】
(結果)
表10、表11に示すように、本実施例の水硬性組成物用添加剤を水硬性組成物に配合することで、品質が十分でなく粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られることが確認された。更に、その使用量が少なくても十分に効果が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、コンクリート等の水硬性組成物に添加される添加剤として利用することができる。また、本発明の水硬性組成物は、コンクリート等の硬化物を作製するものとして利用することができる。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸系減水剤と併用され、
下記一般式(1)で示されるA成分と、
下記一般式(2)で示されるB成分と、を含有し、
前記A成分及び前記B成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記A成分を15~85質量部の割合で含有し、前記B成分を15~85質量部の割合で含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【化1】
(一般式(1)において、Rは、水素原子、または炭素数1~30の1~3価アルコールから水酸基を除いた残基である。ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。Rは、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。mは、1~200の数である。aは、1~3の整数である。a×mは、ROの平均付加モル数であり、1~200を満たす。)
【化2】
(一般式(2)において、Rは、炭素数13~27のベンジルフェニル基、炭素数14~30のスチレン化フェニル基、またはp-クミルフェノールから水酸基を除いた残基である。ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。Rは、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。nは、ROの平均付加モル数であり、1~150の数である。)
【請求項2】
前記一般式(1)におけるROは、全オキシアルキレン基中の15~90モル%が炭素数2のオキシエチレン基であり、全オキシアルキレン基中の10~85モル%が炭素数3のオキシプロピレン基である、請求項1に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項3】
前記B成分は、前記一般式(2)におけるRが炭素数14のモノスチレン化フェニル基であるもの、前記一般式(2)におけるRが炭素数22のジスチレン化フェニル基であるもの、及び、前記一般式(2)におけるRが炭素数30のトリスチレン化フェニル基であるものから選択される少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項4】
前記B成分は、前記一般式(2)におけるRが炭素数30のトリスチレン化フェニル基であるものを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項5】
更に、下記一般式(3)で示されるC成分、及び、下記一般式(4)で示されるD成分から選択される少なくとも1つを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤。
【化3】
(一般式(3)において、Rは、炭素数1~30のアルキル基または炭素数2~30のアルケニル基である。RO,ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。pは、0~100の数である。qは、0~100の数である。p+qは、RO及びROで示される炭素数2~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、0≦p+q≦100の条件を満たす。RO及びROの合計のオキシアルキレン基中の50モル%以上が、炭素数2のオキシエチレン基である。)
【化4】
(一般式(4)において、R10は、炭素数10~20のアルキル基、または炭素数10~20のアルケニル基である。R11O,R12Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。R13は、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基である。R14は、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基である。rは、0~100の数である。sは、0~100の数である。r+sは、R11O及びR12Oで示される炭素数2~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、20≦r+s≦100の条件を満たす。R11O及びR12Oの合計のオキシアルキレン基中の65モル%以上が、炭素数3または4のオキシアルキレン基である。)
【請求項6】
前記A成分、前記B成分、及び前記C成分を含み、前記A成分、前記B成分、及び前記C成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を10~80質量部、前記B成分を10~80質量部、及び前記C成分を0.1~40質量部の割合で含有する、請求項に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項7】
前記A成分、前記B成分、及び前記D成分を含み、前記A成分、前記B成分、及び前記D成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を10~80質量部、前記B成分を10~80質量部、及び前記D成分を0.1~20質量部の割合で含有する、請求項に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項8】
前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分を含み、前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を10~80質量部、前記B成分を10~80質量部、前記C成分を0.1~40質量部、及び前記D成分を0.1~20質量部の割合で含有する、請求項に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項9】
下記ポリカルボン酸系減水剤と併用される、請求項1~に記載の水硬性組成物用添加剤。
ポリカルボン酸系減水剤:下記の一般式(5)で示される化合物から形成される構成単位1、及びビニル基を有するカルボン酸単量体から形成される構成単位2を含み、分子中に占める前記構成単位1及び前記構成単位2の構成割合の合計を100質量%としたとき、前記構成単位1が1~99質量%、及び前記構成単位2が99~1質量%であり、更に、質量平均分子量が1,000~1,000,000であるビニル共重合体。
【化5】
(一般式(5)において、R15,R16,R17は、水素原子、メチル基、及び-(CHCOOMで示される有機基(但し、tは0~2の整数であり、Mは水素原子、または金属原子である)である。但し、R15,R16,R17のうち少なくとも1つは、水素原子またはメチル基である。R18Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。R19は、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。xは0~5の整数である。yは0または1の整数である。zは、R18Oの平均付加モル数であり、1~300の数である。)
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤を含有することを特徴とする水硬性組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物に関する。更に詳しくは、コンクリート等の水硬性組成物に添加される水硬性組成物用添加剤及びこれが添加された水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、川砂等における良質な細骨材が枯渇しつつあり、それに起因して、以前は使用されていなかった品質が十分でない細骨材が採用される傾向がある。つまり、細骨材として、粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きいものが使用される傾向がある。このような細骨材を用いると、得られる水硬性組成物は、例えば、通常の水セメント比(W/C)であってもフレッシュ状態(粘性、流動性等)がばらつき、作業性が低下する。
【0003】
このようなフレッシュ状態のばらつきは、水硬性組成物用減水剤として汎用的に使用されているポリカルボン酸系共重合体が特に顕著な影響を受けるために生じることが分かっている。そして、これが、近年の水硬性組成物の品質安定性の低下の原因の一つとなっている。
【0004】
そこで、粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きい細骨材を使用する場合にも、流動保持性やフレッシュ時の粘性やモルタルの状態を改善でき、コンクリート等の水硬性組成物に優れた性状を与えることのできる水硬性組成物用添加剤(例えば、特許文献1参照)等が報告されている。
【0005】
また、流動性が高い生コンクリートや生モルタルを製造するために、球状凝固体からなる特定の細骨材を使用することが報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-45010号公報
【特許文献2】特開2004-091305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の水硬性組成物用添加剤は、更なる改良の余地があり、また、特許文献2の記載の細骨材を採用することは、細骨材の供給面や費用面等から現実的でない。そのため、品質が十分でなく粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、粘性、流動性等の性状が維持される新たな水硬性組成物用添加剤の開発が求められていた。
【0008】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、品質が十分でなく粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、その使用量が少なくても良い水硬性組成物用添加剤の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、所定のA成分及びB成分を配合することによって上記課題を解決できることを見出した。本発明によれば、以下の水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物が提供される。
【0010】
[1] ポリカルボン酸系減水剤と併用され、
下記一般式(1)で示されるA成分と、
下記一般式(2)で示されるB成分と、を含有し、
前記A成分及び前記B成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記A成分を15~85質量部の割合で含有し、前記B成分を15~85質量部の割合で含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【0011】
【化1】
(一般式(1)において、Rは、水素原子、または炭素数1~30の1~3価アルコールから水酸基を除いた残基である。ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。Rは、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。mは、1~200の数である。aは、1~3の整数である。a×mは、ROの平均付加モル数であり、1~200を満たす。)
【0012】
【化2】
(一般式(2)において、Rは、炭素数13~27のベンジルフェニル基、炭素数14~30のスチレン化フェニル基、またはp-クミルフェノールから水酸基を除いた残基である。ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。Rは、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。nは、ROの平均付加モル数であり、1~150の数である。)
【0013】
[2] 前記一般式(1)におけるROは、全オキシアルキレン基中の15~90モル%が炭素数2のオキシエチレン基であり、全オキシアルキレン基中の10~85モル%が炭素数3のオキシプロピレン基である、前記[1]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0014】
[3] 前記B成分は、前記一般式(2)におけるRが炭素数14のモノスチレン化フェニル基であるもの、前記一般式(2)におけるRが炭素数22のジスチレン化フェニル基であるもの、及び、前記一般式(2)におけるRが炭素数30のトリスチレン化フェニル基であるものから選択される少なくとも1つを含む、前記[1]または[2]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0015】
[4] 前記B成分は、前記一般式(2)におけるRが炭素数30のトリスチレン化フェニル基であるものを含む、前記[1]~[3]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0016】
削除
【0017】
] 更に、下記一般式(3)で示されるC成分、及び、下記一般式(4)で示されるD成分から選択される少なくとも1つを含有する、前記[1]~[4]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0018】
【化3】
(一般式(3)において、Rは、炭素数1~30のアルキル基または炭素数2~30のアルケニル基である。RO,ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。pは、0~100の数である。qは、0~100の数である。p+qは、RO及びROで示される炭素数2~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、0≦p+q≦100の条件を満たす。RO及びROの合計のオキシアルキレン基中の50モル%以上が、炭素数2のオキシエチレン基である。)
【0019】
【化4】
(一般式(4)において、R10は、炭素数10~20のアルキル基、または炭素数10~20のアルケニル基である。R11O,R12Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。R13は、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基である。R14は、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基である。rは、0~100の数である。sは、0~100の数である。r+sは、R11O及びR12Oで示される炭素数2~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、20≦r+s≦100の条件を満たす。R11O及びR12Oの合計のオキシアルキレン基中の65モル%以上が、炭素数3または4のオキシアルキレン基である。)
【0020】
] 前記A成分、前記B成分、及び前記C成分を含み、前記A成分、前記B成分、及び前記C成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を10~80質量部、前記B成分を10~80質量部、及び前記C成分を0.1~40質量部の割合で含有する、前記[]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0021】
] 前記A成分、前記B成分、及び前記D成分を含み、前記A成分、前記B成分、及び前記D成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を10~80質量部、前記B成分を10~80質量部、及び前記D成分を0.1~20質量部の割合で含有する、前記[]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0022】
] 前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分を含み、前記A成分、前記B成分、前記C成分、及び前記D成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を10~80質量部、前記B成分を10~80質量部、前記C成分を0.1~40質量部、及び前記D成分を0.1~20質量部の割合で含有する、前記[]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0023】
] 下記ポリカルボン酸系減水剤と併用される、前記[1]~[]に記載の水硬性組成物用添加剤。
ポリカルボン酸系減水剤:下記の一般式(5)で示される化合物から形成される構成単位1、及びビニル基を有するカルボン酸単量体から形成される構成単位2を含み、分子中に占める前記構成単位1及び前記構成単位2の構成割合の合計を100質量%としたとき、前記構成単位1が1~99質量%、及び前記構成単位2が99~1質量%であり、更に、質量平均分子量が1,000~1,000,000であるビニル共重合体。
【0024】
【化5】
(一般式(5)において、R15,R16,R17は、水素原子、メチル基、及び-(CHCOOMで示される有機基(但し、tは0~2の整数であり、Mは水素原子、または金属原子である)である。但し、R15,R16,R17のうち少なくとも1つは、水素原子またはメチル基である。R18Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。R19は、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。xは0~5の整数である。yは0または1の整数である。zは、R18Oの平均付加モル数であり、1~300の数である。)
【0025】
10] 前記[1]~[]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤を含有することを特徴とする水硬性組成物。
【発明の効果】
【0026】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、品質が十分でなく粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、その使用量が少なくてもよいという効果を奏するものである。
【0027】
本発明の水硬性組成物は、水硬性組成物用添加剤の使用量が少なく、更に、品質が十分でなく粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0029】
(1)水硬性組成物用添加剤:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、ポリカルボン酸系減水剤と併用され、一般式(1)で示されるA成分と、一般式(2)で示されるB成分と、を含有するものである。
【0030】
このような水硬性組成物用添加剤は、品質が十分でなく粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られる。つまり、ロバスト性の高いものである。更に、その使用量が少なくても良好な効果が発揮されるものである。
【0031】
具体的には、従来、粘土質(泥分)を含む微粒成分等を含有する骨材を水硬性組成物に使用した場合、この水硬性組成物の流動性が低下することがある。また、微粒成分等を含む水硬性組成物は、その粘性が上昇し、ポンプ圧送性等の作業性が低下するという問題がある。このような問題に対して、本発明の水硬性組成物用添加剤は、上記構成を採用することにより、水硬性組成物の流動性の低下を抑制するとともに、粘性を低減することで作業性を確保できるものである。更には、骨材の品質にばらつきがあると、それに起因して、得られる水硬性組成物の品質にも差が生じてしまうが、本発明の水硬性組成物用添加剤によれば、水硬性組成物の品質の安定化を図ることができる。
【0032】
ここで、「微粒成分等の含有量にばらつきがある」とは、コンクリート等の水硬性組成物において、その流動性等の性状に大きな差異を生じるような「含有量のばらつき」があることを意味する。つまり、微粒成分等の具体的な含有量の大小に着目するのではなく、水硬性組成物の流動性等の性状を大きく変化させる程に含有量に振れ幅がある場合、「含有量にばらつきがある」ということになる。
【0033】
(1-1)A成分:
A成分は、一般式(1)で示される化合物である。このA成分をB成分とともに配合することで、微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られる。更に、その使用量が少なくても良好な効果が発揮されるという効果が発揮される。
【0034】
【化6】
(一般式(1)において、Rは、水素原子、または炭素数1~30の1~3価アルコールから水酸基を除いた残基である。ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。Rは、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。mは、1~200の数である。aは、1~3の整数である。a×mは、ROの平均付加モル数であり、1~200を満たす。)
【0035】
は、水素原子、または炭素数1~30の1~3価アルコールから水酸基を除いた残基である。
【0036】
の炭素数1~30の1~3価アルコールから水酸基を除いた残基としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2-エチル-ヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、2-プロピル-ヘプチルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、2-ブチル-オクチルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、イソオクタデシルアルコール、オクタデセニルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール、テトラコシルアルコール、ヘキサコシルアルコール、オクタコシルアルコール、トリアコンチルアルコール、メチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、デシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-ペンタトリオールから水酸基を除いた残基等を挙げることができる。
【0037】
Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)であり、炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられる。
【0038】
Oが、2種以上の場合は、ランダム付加体、ブロック付加体、交互付加体のいずれの形態であっても良い。
【0039】
このROは、全オキシアルキレン基中の15~90モル%が炭素数2のオキシエチレン基であることが好ましく、全オキシアルキレン基中の10~85モル%が炭素数3のオキシプロピレン基であることが好ましい。更に、ROは、全オキシアルキレン基中の15~80モル%が炭素数2のオキシエチレン基であることが更に好ましく、全オキシアルキレン基中の20~85モル%が炭素数3のオキシプロピレン基であることが更に好ましい。このような割合であると、水硬性組成物において更に一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、添加剤の使用量がより少なくても良好な効果が得られる。
【0040】
は、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基であり、水素原子であることが好ましい。
【0041】
の炭素数1~20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、エチニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等を挙げることができる。
【0042】
mは、1~200の数であり、10~200の数であることが好ましい。なお、mは、ROの数を示し、式:m=平均付加モル数/aで算出される値である。
【0043】
aは、1~3の整数である。
【0044】
a×mは、ROの平均付加モル数であり、1~200を満たし、30~200を満たすことが好ましく、60~200を満たすことがより好ましい。このような範囲を満たすことにより、水硬性組成物において更に一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、添加剤の使用量がより少なくても良好な効果が得られる。一方、a×m(即ち、ROの平均付加モル数)が200超であると、得られる水硬性組成物の粘性が上昇してしまい、作業性が低下する。
【0045】
本明細書において「平均付加モル数」は、製造時の各原料の仕込み比から計算される、ヒドロキシ基や、アミノ基等を有する出発物質(アルコール類、アミン類)1モル当たりに対する、アルキレンオキシドのモル数を意味するものとする。
【0046】
平均付加モル数は、H-NMRを用いて求めることもできる。
【0047】
A成分は、公知の方法を採用して適宜作製することができる。
【0048】
(1-2)B成分:
B成分は、一般式(2)で示される化合物である。このB成分をA成分とともに配合することで、微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られる。更に、その使用量が少なくても良好な効果が発揮されるという効果が発揮される。
【0049】
【化7】
(一般式(2)において、Rは、炭素数13~27のベンジルフェニル基、炭素数14~30のスチレン化フェニル基、またはp-クミルフェノールから水酸基を除いた残基である。ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。Rは、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。nは、ROの平均付加モル数であり、1~150の数である。)
【0050】
は、炭素数13~27のベンジルフェニル基、炭素数14~30のスチレン化フェニル基、またはp-クミルフェノールから水酸基を除いた残基である。このような残基であると、得られる水硬性組成物は一定の性状(粘性、流動性等)が得られる。
【0051】
このB成分は、一般式(2)におけるRが炭素数14のモノスチレン化フェニル基であるもの、一般式(2)におけるRが炭素数22のジスチレン化フェニル基であるもの、及び、一般式(2)におけるRが炭素数30のトリスチレン化フェニル基であるものから選択される少なくとも1つを含むものであることが好ましい。このようにRが所定のスチレン化フェニル基を含むものであると、得られる水硬性組成物はより一定の性状(粘性、流動性等)が得られる。
【0052】
また、B成分は、一般式(2)におけるRが炭素数30のトリスチレン化フェニル基であるものを含んでいることが好ましい。つまり、スチレン化フェニル基は、モノ体、ジ体、トリ体が有るが、これらのうちでも、上記トリ体を含んでいることがよい。
【0053】
更には、B成分は、一般式(2)におけるRが炭素数14のモノスチレン化フェニル基であるもの(b1成分)、及び、一般式(2)におけるRが炭素数22のジスチレン化フェニル基であるもの(b2成分)から選択される少なくとも1つと、一般式(2)におけるRが炭素数30のトリスチレン化フェニル基であるもの(b3成分)と、を含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析において、b1成分、b2成分、及び、b3成分のピーク面積の総和に占めるb3成分のピーク面積の割合が30%以上であることが好ましく、50%以上であることが更に好ましい。このような条件を満たすことにより、水硬性組成物用添加剤の使用量がより少なくても良好な効果が発揮される。
【0054】
スチレン化フェニル基において、モノ体であるもの(b1成分)、ジ体であるもの(b2成分)、トリ体であるもの(b3成分)の構成比の測定は、上記のようにゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって行うことができる。
【0055】
Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)であり、炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられる。
【0056】
Oが、2種以上の場合は、ランダム付加体、ブロック付加体、交互付加体のいずれの形態であっても良い。
【0057】
このようなROは、全オキシアルキレン基中の15~99モル%が炭素数2のオキシエチレン基であることが好ましく、全オキシアルキレン基中の1~85モル%が炭素数3のオキシプロピレン基であることが好ましい。このような割合であると、水硬性組成物において更に一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、添加剤の使用量がより少なくても良好な効果が得られる。
【0058】
は、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基であり、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0059】
の炭素数1~20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、エチニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等を挙げることができる。
【0060】
nは、ROの平均付加モル数であり、1~150の数であり、1~100の数であることが好ましく、1~50の数であることがより好ましい。このような範囲を満たすことにより、水硬性組成物において更に一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、添加剤の使用量がより少なくても良好な効果が得られる。一方、nが150超であると、得られる水硬性組成物の粘性が上昇してしまい、作業性が低下する。
【0061】
B成分は、公知の方法を採用して適宜作製することができる。
【0062】
(1-3)C成分及びD成分:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、更に、下記一般式(3)で示されるC成分、及び、下記一般式(4)で示されるD成分から選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。このようなC成分またはD成分、或いは、C成分とD成分の両方を含有することで、微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が更に抑制され、より安定した性状(粘性、流動性等)の水硬性組成物が得られる。更に、添加剤の使用量がより少なくても良好な効果が得られる。
【0063】
(1-3a)C成分:
C成分は、一般式(3)で示される化合物である。このC成分を含有することにより、更に高いロバスト性を付与することができる。更に、減水剤に対する水硬性組成物用添加剤の溶解性(相溶性)を改善することができる。
【0064】
【化8】
(一般式(3)において、Rは、炭素数1~30のアルキル基または炭素数2~30のアルケニル基である。RO,ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。pは、0~100の数である。qは、0~100の数である。p+qは、RO及びROで示される炭素数2~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、0≦p+q≦100の条件を満たす。RO及びROの合計のオキシアルキレン基中の50モル%以上が、炭素数2のオキシエチレン基である。)
【0065】
は、炭素数1~30のアルキル基または炭素数2~30のアルケニル基であり、炭素数6~22のアルキル基または炭素数6~22のアルケニル基であることが好ましい。
【0066】
の炭素数1~30のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、テトラコシル基、ヘキサコシル基、オクタコシル基、トリアコンチル基等を挙げることができる。Rの炭素数2~30のアルケニル基としては、例えば、エチニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等を挙げることができる。
【0067】
O,ROは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)であり、炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられる。
【0068】
O及びROが、2種以上の場合は、ランダム付加体、ブロック付加体、交互付加体のいずれの形態であっても良い。
【0069】
O及びROは、これらの合計のオキシアルキレン基中の50モル%以上が、炭素数2のオキシエチレン基であり、70モル%以上が炭素数2のオキシエチレン基であることが好ましく、90モル%以上が炭素数2のオキシエチレン基であることが更に好ましい。
【0070】
pは、0~100の数であり、1~50の数であることが好ましい。
【0071】
qは、0~100の数であり、1~50の数であることが好ましい。
【0072】
p+qは、RO及びROで示される炭素数2~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数である。そして、0≦p+q≦100の条件を満たし、2≦p+q≦70の条件を満たすことが好ましく、3≦p+q≦50の条件を満たすことがより好ましい。このような条件を満たすことにより、更に高いロバスト性を付与することができる。
【0073】
(1-3b)D成分:
D成分は、一般式(4)で示される化合物である。このD成分を含有することにより、消泡剤としても作用し、空気量のばらつきを小さくすることができ、更に、流動性を改善することが想定される。
【0074】
【化9】
(一般式(4)において、R10は、炭素数10~20のアルキル基、または炭素数10~20のアルケニル基である。R11O,R12Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。R13は、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基である。R14は、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基である。rは、0~100の数である。sは、0~100の数である。r+sは、R11O及びR12Oで示される炭素数2~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、20≦r+s≦100の条件を満たす。R11O及びR12Oの合計のオキシアルキレン基中の65モル%以上が、炭素数3または4のオキシアルキレン基である。)
【0075】
10は、炭素数10~20のアルキル基、または炭素数10~20のアルケニル基であり、14~18のアルキル基、または炭素数14~18のアルケニル基であることが好ましい。
【0076】
10の炭素数10~20のアルキル基としては、例えば、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等を挙げることができる。R10の炭素数10~20のアルケニル基としては、例えば、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等を挙げることができる。
【0077】
11O,R12Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)であり、炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられる。
【0078】
11O及びR12Oが2種以上の場合は、ランダム付加体、ブロック付加体、交互付加体のいずれの形態であっても良い。
【0079】
11O及びR12Oは、これらの合計のオキシアルキレン基中の65モル%以上が、炭素数3または4のオキシアルキレン基であり、70モル%以上が炭素数3のオキシアルキレン基であることが好ましく、75モル%以上が炭素数3のオキシアルキレン基であることが更に好ましい。
【0080】
13は、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基であり、水素原子であることが好ましい。
【0081】
14は、水素原子、または炭素数1~10の炭化水素基であり、水素原子であることが好ましい。
【0082】
13、R14における炭素数1~10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、エチニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等を挙げることができる。
【0083】
rは、0~100の数であり、1~70の数であることが好ましい。
【0084】
sは、0~100の数であり、1~70の数であることが好ましい。
【0085】
r+sは、R11O及びR12Oで示される炭素数2~4のオキシアルキレン基の平均付加モル数である。そして、20≦r+s≦100の条件を満たし、25≦r+s≦80の条件を満たすことが好ましく、30≦r+s≦70の条件を満たすことがより好ましい。このような条件を満たすことにより、より空気量のばらつきを小さくすることができ、更に流動性を改善することができる。
【0086】
C成分及びD成分は、それぞれ公知の方法を採用して適宜作製することができる。
【0087】
(1-4)各成分の配合割合:
A成分及びB成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、A成分を15~85質量部の割合で含有し、B成分を15~85質量部の割合で含有、A成分を25~75質量部、B成分を25~75質量部の割合で含有することが好ましい。このような範囲とすると、微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が更に抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、その使用量が更に少なくても十分に効果が得られる。
【0088】
A成分、B成分、及びC成分を含み(但し、D成分は含まない場合)、A成分、B成分、及びC成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、A成分を10~80質量部、B成分を10~80質量部、及びC成分を0.1~40質量部の割合で含有することが好ましく、A成分を20~70質量部、B成分を20~70質量部、C成分を0.1~20質量部の割合で含有することが更に好ましい。このような範囲とすると、微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が更に抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、その使用量が更に少なくても十分に効果が得られる。
【0089】
A成分、B成分、及びD成分を含み(但し、C成分は含まない場合)、A成分、B成分、及びD成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、A成分を10~80質量部、B成分を10~80質量部、及びD成分を0.1~20質量部の割合で含有することが好ましく、A成分を20~70質量部、B成分を20~70質量部、D成分を0.1~15質量部の割合で含有することが更に好ましい。このような範囲とすると、微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が更に抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、その使用量が更に少なくても十分に効果が得られる。
【0090】
A成分、B成分、C成分、及びD成分を含み、A成分、B成分、C成分、及びD成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、A成分を10~80質量部、B成分を10~80質量部、C成分を0.1~40質量部、及びD成分を0.1~20質量部の割合で含有することが好ましく、A成分を20~70質量部、B成分を20~70質量部、C成分を0.1~20質量部、D成分を0.1~15質量部の割合で含有することが更に好ましい。このような範囲とすると、微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が更に抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られ、更に、その使用量が更に少なくても十分に効果が得られる。
【0091】
(1-5)その他の成分:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、上述したA成分~D成分以外に、効果が損なわれない範囲内で、その他の成分を更に含有していてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、糖類や、オキシカルボン酸塩等からなる凝結遅延成分、リグニンスルホン酸ナトリウム等からなる分散作用を有する成分、陰イオン界面活性剤等からなるAE剤、オキシアルキレン系化合物等からなる消泡剤、アルカノールアミン等からなる硬化促進剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等からなる収縮低減剤、セルロースエーテル系化合物等からなる増粘剤、イソチアゾリン系化合物等からなる防腐剤、亜硝酸塩等からなる防錆剤等を挙げることができる。
【0092】
その他の成分の含有割合としては、例えば、本発明の水硬性組成物用添加剤全体の0~20質量%とすることができる。
【0093】
更に、本発明の水硬性組成物用添加剤は、水や溶剤で希釈された形態で使用してもよい。
【0094】
(1-6)水硬性組成物用添加剤の使用:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、下記ポリカルボン酸系減水剤と併用されることが好ましい。本発明の水硬性組成物用添加剤は、このポリカルボン酸系減水剤と併用することにより、微粒成分等との材料相性を有するポリカルボン酸系減水剤の材料相性を低減させることができ、減水剤の使用量を少なくすることができるとともに、良好な性状(粘性、流動性等)の水硬性組成物が得られる。
【0095】
ポリカルボン酸系減水剤は、下記の一般式(5)で示される化合物から形成される構成単位1、及びビニル基を有するカルボン酸単量体から形成される構成単位2を含み、分子中に占める構成単位1及び構成単位2の構成割合の合計を100質量%としたとき、構成単位1が1~99質量%、及び構成単位2が99~1質量%である。そして、上記ポリカルボン酸系減水剤は、更に、質量平均分子量が1,000~1,000,000のビニル共重合体である。
【0096】
【化10】
(一般式(5)において、R15,R16,R17は、水素原子、メチル基、及び-(CHCOOMで示される有機基(但し、tは0~2の整数であり、Mは水素原子、または金属原子である)である。但し、R15,R16,R17のうち少なくとも1つは、水素原子またはメチル基である。R18Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。R19は、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基である。xは0~5の整数である。yは0または1の整数である。zは、R18Oの平均付加モル数であり、1~300の数である。)
【0097】
(1-6a)構成単位1:
構成単位1は、上記一般式(5)で示される化合物から形成されるものである。具体的には、構成単位1は、一般式(5)で示される化合物であるモノマーを材料の1つとして得られるポリマーを構成する1つの構成単位(一般式(5)で示される化合物に由来する構成単位)である。
【0098】
15,R16,R17は、水素原子、メチル基、及び-(CHCOOMで示される有機基(但し、tは0~2の整数であり、Mは水素原子、または金属原子である)である。但し、R15,R16,R17のうち少なくとも1つは、水素原子またはメチル基である。
【0099】
18Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)であり、炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等が挙げられる。
【0100】
18Oが2種以上の場合は、ランダム付加体、ブロック付加体、交互付加体のいずれの形態であっても良い。
【0101】
19は、水素原子、または炭素数1~20の炭化水素基であり、水素原子、または炭素数1~5の炭化水素基であることが好ましい。
【0102】
19の炭素数1~20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、エチニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等を挙げることができる。
【0103】
xは0~5の整数であり、0~2の整数であることが好ましい。
【0104】
yは0または1の整数である。
【0105】
zは、R18Oの平均付加モル数であり、1~300の数であり、1~200の数であることが好ましく、1~150の数であることがより好ましい。
【0106】
一般式(5)で示される化合物としては、具体的には、α-アリル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アリル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタリル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタリル-ω-アセチル-(ポリ)オキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ブトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-アセチル-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-ブトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-ブトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-ビニル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシブチレン(ポリ)オキシエチレン等を挙げることができる。
【0107】
(1-6b)構成単位2:
構成単位2は、ビニル基を有するカルボン酸単量体から形成されるものである。つまり、構成単位2は、ビニル基を有するカルボン酸単量体を材料の1つとして得られるポリマーを構成する1つの構成単位(ビニル基を有するカルボン酸単量体に由来する構成単位)である。
【0108】
ビニル基を有するカルボン酸単量体としては、具体的には、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸、それらの塩から選ばれるもの等を挙げることができる。
【0109】
(1-6c)構成単位3:
上記ビニル共重合体は、更に、分子中に任意の構成単位として、構成単位1及び構成単位2と共重合可能な構成単位3を含んでいてもよい。構成単位3を形成する単量体としては、例えば、(メタ)アリルスルホン酸およびその塩、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を用いることができる。構成単位3は、1種または2種以上から形成されていてもよい。
【0110】
(1-6d)構成割合:
上記ポリカルボン酸系減水剤は、分子中に占める構成単位1及び構成単位2の構成割合の合計を100質量%としたとき、構成単位1が1~99質量%、及び構成単位2が99~1質量%であり、更に、構成単位1が70~99質量%、構成単位2が1~30質量%とすることができる。また、任意の構成単位である構成単位3の構成割合は、分子中に占める構成単位1、構成単位2及び構成単位3の構成割合の合計を100質量%としたとき、0~20質量%であり、0~10質量%とすることができる。
【0111】
(1-6e)質量平均分子量:
上記ポリカルボン酸系減水剤は、その質量平均分子量が1,000~1,000,000であり、5,000~200,000とすることが好ましく、5,000~100,000とすることがより好ましい。なお、ポリカルボン酸系減水剤の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0112】
(1-6f)製造方法:
上記ポリカルボン酸系減水剤は、従来公知の方法を採用して適宜製造することができる。
【0113】
(2)水硬性組成物:
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤を含有するものである。このような水硬性組成物は、水硬性組成物用添加剤の使用量が少なく、更に、品質が十分でなく粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材が使用されていても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られるものである。
【0114】
本発明の水硬性組成物は、従来公知の水硬性組成物と同様に、結合材、水、細骨材、及び粗骨材を含むものとすることができる。
【0115】
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤の含有割合について特に制限はなく適宜設定することができるが、本発明の水硬性組成物用添加剤の含有割合は、例えば、結合材100質量%に対して、固形分換算で、0.001~3.0質量%の割合とすることができる。
【0116】
結合材としては、例えば、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種のセメントを挙げることができる。
【0117】
更に、結合材は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末、石粉、シリカフューム、膨張材等の各種混和材を上述した各種セメントと併用してもよい。
【0118】
細骨材としては、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、珪砂、砕砂、各種スラグ細骨材等が挙げられるが、粘土質等の微粒成分等を含むものであってもよい。本発明においては、粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きいものであっても良好に使用することができる。
【0119】
ここで、細骨材中における「微粒成分等の含有量にばらつきがある」とは、コンクリート等の水硬性組成物において、その流動性等の性状に大きな差異を生じさせるような「含有量のばらつき」を意味する。つまり、例えば、微粒成分等の含有量が1割程度減少するだけであっても、流動性等の性状が、大きく変化することがある。微粒成分等の許容量の範囲(十分な性状の水硬性組成物が得られる範囲)は、比較的狭く、僅かな含有量の違いであっても、「含有量にばらつきがある」と言えることがある。
【0120】
粗骨材としては、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石、各種スラグ粗骨材、軽量骨材等が挙げられる。
【0121】
本発明の水硬性組成物は、効果が損なわれない範囲内で、適宜その他の成分を更に含有していてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、糖類や、オキシカルボン酸塩等からなる凝結遅延成分、リグニンスルホン酸ナトリウム等からなる分散作用を有する成分、陰イオン界面活性剤等からなるAE剤、オキシアルキレン系化合物等からなる消泡剤、アルカノールアミン等からなる硬化促進剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等からなる収縮低減剤、セルロースエーテル系化合物等からなる増粘剤、イソチアゾリン系化合物等からなる防腐剤、亜硝酸塩等からなる防錆剤等を挙げることができる。
【0122】
その他の成分の含有割合としては、例えば、結合材100質量%に対して、固形分換算で0~5質量%とすることができる。
【0123】
本発明の水硬性組成物は、その水と結合材の比率(水/結合材比)としては従来公知の割合を適宜採用することができるが、例えば、25~70質量%とすることができる。
【実施例0124】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0125】
まず、使用したA成分~D成分について、以下の表1~表4に示す。
【0126】
(A成分)
下記表1には、使用したA成分(A-1~A-6、RA-1)を示す。
【0127】
【表1】
【0128】
(B成分)
下記表2には、使用したB成分(B-1)~(B-6)を示す。
【0129】
【表2】
【0130】
(スチレン化フェノール中のモノ、ジ、トリ体の構成比の測定)
スチレン化フェノール中のモノ、ジ、トリ体の構成比の測定条件について、下記に示す測定条件に従ってゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した。
<測定条件>
装置:HLC-8320GPC(東ソー社製)
検出器:示差屈折計(RI)
カラム:TSK gel SuperH4000+H3000+H2000(東ソー社製)
溶離液:THF
流速:0.5mL/分
カラム温度:40℃
標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
【0131】
(C成分)
下記表3には、使用したC成分(C-1)~(C-5)を示す。
【0132】
【表3】
【0133】
(D成分)
下記表4には、使用したD成分(D-1)~(D-5)を示す。
【0134】
【表4】
【0135】
(作製例1~45)
次に、表5に示すように、各成分を混合して水硬性組成物用添加剤(X-1~X-40、RX-1~RX-5)を作製した。
【0136】
【表5】
【0137】
次に、表6には、ポリカルボン酸系減水剤(P-1)~(P-3)の構成単位について示す。
【0138】
【表6】
【0139】
表6中、L-1~L-4、M-1、及び、M-2は、以下の化合物を示し、各構成単位は当該化合物に由来するものである。
L-1:α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(平均45モル)オキシエチレン
L-2:α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(平均53モル)オキシエチレン
L-3:α-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリ(平均53モル)オキシエチレン
L-4:2-ヒドロキシエチルアクリレート
M-1:メタクリル酸
M-2:アクリル酸
【0140】
以下に、各ポリカルボン酸系減水剤(P-1)~(P-3)の合成方法を説明する。
【0141】
(合成例1)ポリカルボン酸系減水剤(P-1)の合成:
上水道水415.8g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(平均45モル)オキシエチレン346.3g、メタクリル酸44.7g、3-メルカプトプロピオン酸3.9gを、温度計、攪拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込んだ。そして、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃に保持した。
【0142】
次に、上記反応系に1%過酸化水素水溶液54.8gを投入し、2時間かけてラジカル共重合反応を行った。2時間経過後、1%過酸化水素水溶液13.7gを投入し、更に2時間反応を行った後、重合反応を終了した。その後、反応系に30%水酸化ナトリウム水溶液を投入してpHを5に調整し、その後、上水道水にて濃度を40%に調整して反応混合物を得た。
【0143】
この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量が25,000であった。この反応物をポリカルボン酸系減水剤(P-1)とした。
【0144】
(合成例2)ポリカルボン酸系減水剤(P-2)の合成:
上水道水207.4g、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(平均53モル)オキシエチレン456.8gを、温度計、攪拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込んだ。そして、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃に保持した。
【0145】
次に、上記反応系に3.5%過酸化水素水溶液24.8gを3時間かけて滴下し、それと同時に、「上水道水198.6gにアクリル酸39.7gを均一に溶解させた水溶液」を3時間かけて滴下し、更にそれと同時に、「上水道水21.8gにL-アスコルビン酸2.0gと3-メルカプトプロピオン酸3.5gを溶解させた水溶液」を4時間かけて滴下した。その後、反応系の温度を70℃に2時間維持し、重合反応を終了した。その後、反応系に30%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHが5になるように調整し、その後、上水道水を加えて濃度を40%に調整して反応混合物を得た。
【0146】
この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量が35,000であった。この反応物をポリカルボン酸系減水剤(P-2)とした。
【0147】
(合成例3)ポリカルボン酸系減水剤(P-3)の合成:
上水道水231.1g、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリ(平均53モル)オキシエチレン429.2gを、温度計、攪拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込んだ。そして、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃に保持した。
【0148】
次に、上記反応系に3.5%過酸化水素水溶液29.2gを3時間かけて滴下し、それと同時に、「上水道水42.0gにアクリル酸48.8g、2-ヒドロキシエチルアクリレート9.8gを均一に溶解させた水溶液」を3時間かけて滴下し、更にそれと同時に、「上水道水27.3gにL-アスコルビン酸2.0gと3-メルカプトプロピオン酸4.9gを溶解させた水溶液」を4時間かけて滴下した。その後、反応系の温度を70℃に2時間維持し、重合反応を終了した。その後、反応系に30%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHが5になるように調整し、その後、上水道水にて濃度を40%に調整して反応混合物を得た。
【0149】
この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量が30,000であった。この反応物をポリカルボン酸系減水剤(P-3)とした。
【0150】
(質量平均分子量)
合成したポリカルボン酸系減水剤(P-1)~(P-3)の質量平均分子量の測定におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の条件を以下に示す。
<測定条件>
装置:Shodex GPC-101(昭和電工社製)
カラム:OHpak SB-G+SB-806M HQ+SB-806M HQ(昭和電工社製)
検出器:示差屈折計(RI)
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:0.7mL/分
カラム温度:40℃
試料濃度:試料濃度0.5質量%の溶離液溶液
標準物質:PEG/PEO(アジレント・テクノロジー社製)
【0151】
(実施例1~56、比較例1~7)
次に、作製した水硬性組成物用添加剤(表5参照)を用い、表7に示す配合No.1~3(配合No.1-1、2-1、3-1(多量配合パターン)、及び、配合No.1-2、2-2、3-2(少量配合パターン))を採用して各コンクリート(水硬性組成物)を作製した。なお、表8、表9には、ポリカルボン酸系減水剤の使用量と水硬性組成物用添加剤の使用量を示す。
【0152】
その後、表8、表9に示すように、コンクリートの基本評価を行った。基本評価は、具体的には、多量配合パターンのコンクリートについては、スランプ、スランプフロー、及び、空気量の測定を行った。また、少量配合パターンのコンクリートについては、スランプフロー、及び、空気量の測定を行った。更に、表10、表11には、添加剤の使用量の評価、コンクリートの粘性、及びスランプフロー変化量の各評価結果について示す。
【0153】
各実施例及び比較例では、多量配合パターンと少量配合パターンの両方のパターンで水硬性組成物の調製を行い、スランプフロー変化量の評価を行った。この評価によってコンクリートの流動性が維持されるか否かが分かる。
【0154】
なお、ベントナイト、カオリナイト、細骨材微粒分の微粒成分等の含有量は、多量配合パターンと少量配合パターンで比較すると、1割程度の差異となるが、スランプフロー等の変化には大きな違いを生じさせる。例えば、比較例1では、ベントナイトの配合量が2kg/m(多量配合パターン)と1.8kg/m(少量配合パターン)である。その含有量の差異は大きくないようにも見えるが、これらのスランプフロー変化量は9.5cmとなり、コンクリート(水硬性組成物)の性状としては大きな違いである。
【0155】
以下に、具体的なコンクリート(水硬性組成物)の調製方法を示す。表7に示した配合条件で、20℃の試験室内で50Lのパン型強制練りミキサーに、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、宇部三菱セメント社製、及び住友大阪セメント社製等量混合、密度=3.16g/cm)からなる水硬性結合材と、細骨材として陸砂(大井川水系産、密度=2.58g/cm)と、微粒成分等として、ベントナイト(クニミネ工業社製、クニピア-F、真比重=2.6g/cm)、カオリナイト(竹原化学工業社製、RC-1、真比重=2.6g/cm)、または細骨材微粒分と、粗骨材として砕石(岡崎産砕石、密度=2.68g/cm)と、を投入した。なお、細骨材微粒分は、細骨材に含まれる成分であり、JIS A 1103に規定された75μmふるいを通過したもの(密度=2.58g/cmとして計算)を用いた。
【0156】
更に、水硬性組成物用減水剤、及び水硬性組成物用添加剤(表5参照)を表8、表9に示す使用量で配合し、更に、所定の空気量となるように、消泡剤「AFK-2(竹本油脂社製)」を練混ぜ水(蒲郡市上水道水)の一部として計量してミキサーに投入して90秒間練り混ぜた。そして、スランプが21±1cm、連行空気量が2.0%以下の範囲となるようコンクリート組成物(水硬性組成物)を調製した。なお、水硬性組成物用減水剤は、ポリカルボン酸系減水剤(P-1)/ポリカルボン酸系減水剤(P-2)/ポリカルボン酸系減水剤(P-3)/グルコン酸ナトリウム=25/25/25/25(質量比)として混合したものを使用した。
【0157】
次に、コンクリートの基本評価の評価方法は、以下の通りである。
【0158】
・スランプ(cm):
練り混ぜ直後のコンクリートについて、JIS A 1101に準拠して測定した。
【0159】
・スランプフロー(cm):
練り混ぜ直後のコンクリートについて、JIS A 1150に準拠して測定した。
【0160】
・空気量(容積%):
スランプ及びスランプフローの測定と同時に、JIS A 1128に準拠して測定した。
【0161】
次に、添加剤の使用量の評価、コンクリートの粘性、及びスランプフロー変化量の各評価の評価方法は、以下の通りである。なお、添加剤の使用量の評価及びコンクリートの粘性は、微粒成分等の含有量が多い多量配合パターンの配合時のものを採用して評価を行っている。
【0162】
・添加剤の使用量の評価
所定の空気量となるように水硬性組成物を調製した際における水硬性組成物用添加剤の使用量について、評価を行った。
【0163】
評価基準は、以下の通りである。水硬性組成物用添加剤の使用量が0.06%以上で0.07%未満である場合を「S」とした。上記使用量が0.07%以上で0.08%未満である場合を「A」とした。上記使用量が0.08%以上で0.09%未満である場合を「B」とした。上記使用量が0.09%以上で0.10%未満である場合を「C」とした。上記使用量が0.10%以上である場合を「D」とした。
【0164】
・コンクリートの粘性
コンクリートの粘性は、5人の試験者による官能評価で確認した。具体的には、得られたコンクリートをスコップで切り返してもらい、目視による印象及びハンドリング性に基づいて最高10点(1~10点の10段階評価)で採点した。その後、試験者の平均値(得点平均)を0.5点刻みで示し、この得点平均に応じて評価した。
【0165】
評価基準を以下に示す。9.0点以上で10.0点以下の場合、粘性が最も低いとして「S」とした。8.0点以上で9.0点未満の場合、粘性が特に低いとして「A」とした。7.0点以上で8.0点未満の場合、粘性が低いとして「B」とした。7.0点未満の場合、粘性が高いとして「C」とした。
【0166】
・スランプフロー変化量
多量配合パターンにおけるスランプフローと少量配合パターンにおけるスランプフローの差(式:「少量配合パターンにおけるスランプフロー」-「多量配合パターンにおけるスランプフロー」)を算出し、スランプフロー変化量とした。この変化量について評価を行った。変化量の値が小さい程、一定の性状が維持されることを示す。
【0167】
評価基準を以下に示す。スランプフロー変化量が±3cm未満である場合を「S」とした。スランプフロー変化量が±3cm以上で±5cm未満である場合を「A」とした。スランプフロー変化量が±5cm以上で±7cm未満である場合を「B」とした。スランプフロー変化量が±7cm以上である場合を「C」とした。
【0168】
【表7】
【0169】
なお、表7中、細骨材率は、ベントナイト、カオリナイト、及び細骨材微粒分を細骨材として見積もって計算した。
【0170】
【表8】
【0171】
【表9】
【0172】
なお、表9中、「※」で示す比較例7の添加剤は、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)であり、質量平均分子量は100,000である。
【0173】
表8、表9中、水硬組成物用減水剤及び水硬性組成物用添加剤の使用量は、全て固形分表記とした。
【0174】
【表10】
【0175】
【表11】
【0176】
(結果)
表10、表11に示すように、本実施例の水硬性組成物用添加剤を水硬性組成物に配合することで、品質が十分でなく粘土質等の微粒成分等の含有量のばらつきが大きい骨材を使用しても、微粒成分等の多少に起因する性状の変化が抑制され、一定の性状(粘性、流動性等)が得られることが確認された。更に、その使用量が少なくても十分に効果が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、コンクリート等の水硬性組成物に添加される添加剤として利用することができる。また、本発明の水硬性組成物は、コンクリート等の硬化物を作製するものとして利用することができる。