(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156133
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】赤外線カメラ、画像処理方法、及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/33 20230101AFI20231017BHJP
G01J 5/48 20220101ALI20231017BHJP
G01J 1/42 20060101ALI20231017BHJP
H04N 25/60 20230101ALI20231017BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20231017BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20231017BHJP
【FI】
H04N5/33
G01J5/48 E
G01J1/42 B
H04N5/357
H04N5/225 400
H04N5/232 290
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065817
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】501497264
【氏名又は名称】西日本高速道路エンジニアリング四国株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和明
(72)【発明者】
【氏名】林 詳悟
【テーマコード(参考)】
2G065
2G066
5C024
5C122
【Fターム(参考)】
2G065AA11
2G065AB02
2G065BA12
2G065BA34
2G065BC11
2G065CA07
2G065CA12
2G065DA01
2G065DA18
2G066AA04
2G066AC02
2G066AC09
2G066BA09
2G066BB02
2G066BB07
2G066BC11
2G066CA02
2G066CA04
5C024AX06
5C024CX04
5C024CX31
5C024EX15
5C024EX51
5C024GY31
5C024GZ36
5C024HX29
5C122DA12
5C122DA16
5C122EA22
5C122FB02
5C122FB17
5C122FH23
5C122HB01
(57)【要約】
【課題】撮像画像のノイズを低減することができる。
【解決手段】赤外線カメラ10は、撮像画像に対して画像処理を実行するための実行部32を備え、実行部32は、撮像画像、及び黒体部で覆われた部分が撮像された撮像画像から抽出されたノイズの成分を取得する取得部322と、撮像画像の全体からノイズの成分を除去する除去部324と、を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像する撮像部と、
前記撮像部が撮像した撮像画像に対して画像処理を実行するための実行部と、を備え、
前記撮像部は、
前記被写体から放射される赤外線を検出する非冷却型の赤外線検出部と、
前記赤外線検出部の一部を覆う黒体部と、を備え、
前記実行部は、
前記撮像画像、及び前記黒体部で覆われた部分が撮像された前記撮像画像から抽出されたノイズの成分を取得する取得部と、
前記撮像画像の全体から前記ノイズの成分を除去する除去部と、を備えている、赤外線カメラ。
【請求項2】
前記黒体部は、前記赤外線検出部のうち、前記ノイズが発生する方向に交差する方向に延長させた部分を覆う、
請求項1に記載の赤外線カメラ。
【請求項3】
前記黒体部は、前記赤外線検出部のうち、前記ノイズが発生する方向と直交する方向を全て覆い、前記ノイズが発生する方向と平行である方向は一部のみ覆う、
請求項2に記載の赤外線カメラ。
【請求項4】
偏光子と、前記偏光子を回転させるための駆動部と、を更に備え、
前記実行部は、回転部及び推定部を更に備え、
前記回転部は、前記駆動部を制御することで前記偏光子を180度以上回転させ、
前記取得部は、前記偏光子の回転中に、同一の前記被写体を撮像した複数の前記撮像画像を取得し、
前記推定部は、前記複数の撮像画像から検出された前記被写体の検出温度、及び当該検出温度を検出した場合における前記偏光子の回転角度に基づいて、前記被写体の温度を推定する余弦関数で表された温度推定モデルを推定し、前記被写体に反射した前記赤外線を最も除去した状態における前記検出温度を、前記温度推定モデルに基づいて推定する、
請求項1に記載の赤外線カメラ。
【請求項5】
前記回転部は、前記偏光子を一定の速度で回転させる、
請求項4に記載の赤外線カメラ。
【請求項6】
前記推定部は、前記被写体に反射した前記赤外線を全て除去した状態における前記検出温度を、前記温度推定モデルに基づいて推定する、
請求項4に記載の赤外線カメラ。
【請求項7】
前記推定部は、前記温度推定モデルにおけるオフセットから振幅の絶対値の差分をとった値を、前記被写体に反射した前記赤外線を最も除去した状態における前記検出温度として推定する、
請求項4に記載の赤外線カメラ。
【請求項8】
赤外線カメラに備えられた撮像部が撮像した撮像画像と、前記撮像部に備えられ、かつ被写体から放射される赤外線を検出する非冷却型の赤外線検出部のうち、黒体部によって覆われた部分が撮像された前記撮像画像から抽出されたノイズの成分と、を取得し、
前記撮像画像の全体から前記ノイズの成分を除去する、
処理をコンピュータが実行する画像処理方法。
【請求項9】
赤外線カメラに備えられた撮像部が撮像した撮像画像と、前記撮像部に備えられ、かつ被写体から放射される赤外線を検出する非冷却型の赤外線検出部のうち、黒体部によって覆われた部分が撮像された前記撮像画像から抽出されたノイズの成分と、を取得し、
前記撮像画像の全体から前記ノイズの成分を除去する、
処理をコンピュータに実行させる画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線カメラ、画像処理方法、及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、赤外線カメラによって構造物の表面を撮影し、撮影した構造物表面の温度分布に基づいて構造物内部の損傷状態を調査するようにした赤外線カメラによる構造物調査方法が開示されている。この構造物調査方法においては、構造物内部の損傷部の深さおよび形状を異ならせた複数の損傷パターンを定め、複数の損傷パターン毎に、構造物表面の所定軸方向の温度分布形状を予め対応づけておき、赤外線カメラによって構造物の表面を撮影する。そして、この構造物調査方法においては、撮影結果から構造物表面の所定軸方向の温度分布を求め、求められた温度分布に一致する温度分布形状を判定し、この判定された温度分布形状に対応する損傷パターンが実際の構造物の損傷状態であると判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
赤外線サーモグラフィ法によるコンクリート構造物の内部損傷に起因して発生する温度差は相対的に小さい。また、マイクロボロメータを検出素子として搭載する非冷却型の赤外線検出部を有する赤外線カメラ(以下、「非冷却型カメラ」ともいう。)は、冷却型の赤外線検出部を有する赤外線カメラ(以下、「冷却型カメラ」ともいう。)と比較して、感度が低く、撮像画像にノイズが多く発生する。したがって、非冷却型カメラは、コンクリート構造物の内部損傷を検出できない場合がある。
【0005】
本開示は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、従来と比較して撮像画像のノイズを低減することができる非冷却型カメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1態様に係る赤外線カメラは、被写体を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像した撮像画像に対して画像処理を実行するための実行部と、を備え、前記撮像部は、前記被写体から放射される赤外線を検出する非冷却型の赤外線検出部と、前記赤外線検出部の一部を覆う黒体部と、を備え、前記実行部は、前記撮像画像、及び前記黒体部で覆われた部分が撮像された前記撮像画像から抽出されたノイズの成分を取得する取得部と、前記撮像画像の全体から前記ノイズの成分を除去する除去部と、を備えている。
【0007】
また、第2態様に係る赤外線カメラは、第1態様に係る赤外線カメラにおいて、前記黒体部は、前記赤外線検出部のうち、前記ノイズが発生する方向に交差する方向に延長させた部分を覆う。
【0008】
また、第3態様に係る赤外線カメラは、第2態様に係る赤外線カメラにおいて、前記黒体部は、前記赤外線検出部のうち、前記ノイズが発生する方向と直交する方向を全て覆い、前記ノイズが発生する方向と平行である方向は一部のみ覆う。
【0009】
また、第4態様に係る赤外線カメラは、第1態様から第3態様のうち何れか1態様に係る赤外線カメラにおいて、偏光子と、前記偏光子を回転させるための駆動部と、を更に備え、前記実行部は、回転部及び推定部を更に備え、前記回転部は、前記駆動部を制御することで前記偏光子を180度以上回転させ、前記取得部は、前記偏光子の回転中に、同一の前記被写体を撮像した複数の前記撮像画像を取得し、前記推定部は、前記複数の撮像画像から検出された前記被写体の検出温度、及び当該検出温度を検出した場合における前記偏光子の回転角度に基づいて、前記被写体の温度を推定する余弦関数で表された温度推定モデルを推定し、前記被写体に反射した前記赤外線を最も除去した状態における前記検出温度を、前記温度推定モデルに基づいて推定する。
【0010】
また、第5態様に係る赤外線カメラは、第4態様に係る赤外線カメラにおいて、前記回転部は、前記偏光子を一定の速度で回転させる。
【0011】
また、第6態様に係る赤外線カメラは、第4態様又は第5態様に係る赤外線カメラにおいて、前記推定部は、前記被写体に反射した前記赤外線を全て除去した状態における前記検出温度を、前記温度推定モデルに基づいて推定する。
【0012】
また、第7態様に係る赤外線カメラは、第4態様から第6態様のうち何れか1態様に係る赤外線カメラにおいて、前記推定部は、前記温度推定モデルにおけるオフセットから振幅の絶対値の差分をとった値を、前記被写体に反射した前記赤外線を最も除去した状態における前記検出温度として推定する。
【0013】
また、第8態様に係る画像処理方法は、赤外線カメラに備えられた撮像部が撮像した撮像画像と、前記撮像部に備えられ、かつ被写体から放射される赤外線を検出する非冷却型の赤外線検出部のうち、黒体部によって覆われた部分が撮像された前記撮像画像から抽出されたノイズの成分と、を取得し、前記撮像画像の全体から前記ノイズの成分を除去する、処理をコンピュータが実行する。
【0014】
また、第9態様に係る画像処理プログラムは、赤外線カメラに備えられた撮像部が撮像した撮像画像と、前記撮像部に備えられ、かつ被写体から放射される赤外線を検出する非冷却型の赤外線検出部のうち、黒体部によって覆われた部分が撮像された前記撮像画像から抽出されたノイズの成分と、を取得し、前記撮像画像の全体から前記ノイズの成分を除去する、処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、従来と比較して撮像画像のノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態に係る赤外線カメラの構成の一例を示す模式図である。
【
図2】第1の実施形態に係る赤外線カメラの電気系の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る赤外線検出部の構成の一例を示す模式図である。
【
図4】実施形態に係る実行部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】第1の実施形態に係る実行部の一例を示す機能ブロック図である。
【
図6】第1の実施形態に係る画像処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】第1の実施形態に係る画像処理の一例を説明する模式図である。
【
図8】第1の実施形態に係る赤外線カメラにおいて画像処理を実行せずに露光時間のみを変更して取得した撮像画像の一例である。
【
図9】冷却型カメラと、第1の実施形態に係る赤外線カメラと、を用いて、一定の温度の被写体を撮像した場合における検出温度の一例を示すグラフである。
【
図10】平均化枚数に対する、評価領域の標準偏差の一例を示すグラフである。
【
図11】冷却型カメラと、第1の実施形態に係る赤外線カメラと、を用いて、一定の温度の被写体を撮像した場合における検出温度の一例を示すグラフである。
【
図12】冷却型カメラと、第1の実施形態に係る赤外線カメラと、を用いて、撮像した撮像画像の一例である。
【
図13】第2の実施形態に係る赤外線カメラの構成の一例を示す模式図である。
【
図14】第2の実施形態に係る赤外線カメラの電気系の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図15】第2の実施形態に係る偏光子を回転させた状態の一例を示す模式図である。
【
図16】第2の実施形態に係る偏光子の機能を説明するための模式図の一例である。
【
図17】第2の実施形態に係る偏光子の回転角度に対する被写体の検出温度の一例を示すグラフである。
【
図18】第2の実施形態に係る実行部の一例を示す機能ブロック図である。
【
図19】第2の実施形態に係る画像処理の一例を示すフローチャートである。
【
図20】第2の実施形態に係る供試体が内蔵された構造物の一例を示す模式図である。
【
図21】冷却型カメラと、第2の実施形態に係る赤外線カメラと、を用いて、撮像した撮像画像の一例である。
【
図22】第1の実施形態に係る赤外線カメラと第2の実施形態に係る赤外線カメラと、を用いて、反射光を含む被写体を撮像した撮像画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
図1に示されるように、本実施形態に係る赤外線カメラ10は、赤外線を赤外線カメラ10に入射するための入射口14、レンズ16、赤外線検出部18、及び黒体部18Aを備えている。なお、本実施形態に係る赤外線カメラ10は、固定式の赤外線カメラである。しかし、この例に限られない。赤外線カメラ10は、固定式でない赤外線カメラであってもよい。
【0019】
赤外線検出部18は、被写体から放射される赤外線を検出する。本実施形態に係る赤外線検出部18は、非冷却型であってマイクロボロメータにより構成されている。なお、赤外線とは、光の一種であり、人間が見ることができる可視光(例えば、波長が360nmから830nm)よりも長い波長域に区分される。本実施形態に係る赤外線カメラ10が検出する波長は、8μmから14μmまでの波長である。赤外線カメラ10が検出する波長が3μmから5μmまでの波長の場合、反射光の影響を受けづらいという長所があるものの、太陽光の影響を受けるため、昼間の調査に適用しづらいという欠点があるためである。
【0020】
黒体部18Aは、赤外線検出部18の一部を覆う。
【0021】
次に、本実施形態に係る赤外線カメラ10の電気系の要部構成について説明する。
図2に示されるように、本実施形態に係る赤外線カメラ10は、撮像部30、実行部32、表示部35、及び記録部36の各構成を有する。
【0022】
撮像部30は赤外線検出部18を備えている。撮像部30は、赤外線検出部18で検出された熱画像である撮像画像のデータを、実行部32に入力する。
【0023】
実行部32は、撮像部30が撮像した撮像画像に対して画像処理を実行するための構成である。具体的に、実行部32は、後述する画像処理プログラム300を読み出し、後述する画像処理を実行する。
【0024】
表示部35は、実行部32から画像信号が入力されることで、撮像部30で撮像する画像、及び後述する画像処理が実行された撮像画像などを表示する。記録部36は、実行部32から画像信号が入力されることで、撮像部30で撮像する画像、及び後述する画像処理が実行された撮像画像などを記録する。
【0025】
次に、赤外線検出部18の構成について説明する。非冷却型の赤外線検出部18は、撮像画像に縦方向のノイズを発生させる傾向がある。そこで、
図3に示すように、本実施形態に係る赤外線検出部18は、ノイズが発生する方向(縦方向)に交差する方向に延長させた部分である上端部及び下端部に黒体部18Aを備えている。具体的に、本実施形態に係る黒体部18Aは、赤外線検出部18のうち、ノイズが発生する方向と直交する方向を全て覆い、ノイズが発生する方向と平行である方向は一部のみ覆っている。これにより、上端部及び下端部から赤外線検出部18に赤外線が入射することを防ぐことができるため、赤外線カメラ10は縦方向のノイズの成分を抽出できる。
【0026】
しかし、この例に限られない。例えば、赤外線検出部18は、上端部のみ、又は下端部のみに黒体部18Aを備えていてもよい。または、赤外線検出部18は、上端部及び下端部に加えて、複数の黒体部18Aを備えていてもよい。また、赤外線検出部18が撮像画像に横方向のノイズを発生させる傾向がある場合は、左端部及び右端部のうち少なくとも一方に黒体部18Aを備えることで、赤外線カメラ10は横方向のノイズの成分を抽出できる。
【0027】
次に、実行部32のハードウェア構成について説明する。
図4に示すように、実行部32は、CPU(Central Processing Unit)32A、ROM(Read Only Memory)32B、RAM(Random Access Memory)32C、及び通信I/F(インタフェース)32Dを有する。各構成は、バス32Eを介して相互に通信可能に接続されている。
【0028】
CPU32Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU32Aは、ROM32Bからプログラムを読み出し、RAM32Cを作業領域としてプログラムを実行する。CPU32Aは、ROM32Bに記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM32Bには、画像処理プログラム300が格納されている。
【0029】
ROM32Bは、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM32Cは、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。
【0030】
通信I/F32Dは、撮像部30、表示部35、及び記録部36等の他の構成と通信するためのインタフェースである。
【0031】
次に、実行部32の機能構成について説明する。
【0032】
図5に示すように、実行部32は、機能構成として、取得部322、除去部324、及び表示部328を有する。各機能構成は、CPU32AがROM32Bに記憶された画像処理プログラム300を読み出し、実行することにより実現される。
【0033】
取得部322は、撮像部30から撮像画像を取得する。また、取得部322は、黒体部18Aが撮像された上記撮像画像からノイズの成分(以下、「ノイズ成分」という。)を取得する。具体的に、取得部322は、黒体部18Aの検出温度から黒体部18Aの平均検出温度を減算した値をノイズ成分として取得する。
【0034】
除去部324は、取得部322が取得した撮像画像の全体から、取得部322が取得したノイズ成分を除去する。
【0035】
表示部328は、除去部324がノイズ成分を除去した撮像画像を表示部35に表示する。
【0036】
次に、実行部32の作用について説明する。
【0037】
図6は、本実施形態に係る実行部32による画像処理の流れを示すフローチャートである。CPU32AがROM32Bから画像処理プログラム300を読み出して、RAM32Cに展開して実行することにより、画像処理が行なわれる。
【0038】
図6のステップS100において、CPU32Aは、撮像部30から撮像画像を取得する。以下では、ステップS100において、CPU32Aが取得した撮像画像を取得画像という。
【0039】
ステップS102において、CPU32Aは、黒体部18Aで覆われた部分が撮像された取得画像からノイズ成分を取得する。以下では、CPU32Aが取得したノイズ成分を取得ノイズという。
【0040】
ステップS104において、CPU32Aは、取得画像の全体から取得ノイズを除去する。
【0041】
ステップS106において、CPU32Aは、ステップS104において取得ノイズを除去した取得画像であるノイズ除去画像を表示部35に表示し、本画像処理を終了する。
【0042】
図7は、本実施形態に係る画像処理を説明する模式図である。
図7において、左図が取得画像、中央の図が取得ノイズ、右図がノイズ除去画像の一例を示す。CPU32Aは、取得画像のうち、黒体部18Aで覆われた部分におけるノイズを抽出する。本実施形態では、ノイズは縦方向に延びて表れるため、黒体部18Aで覆われた部分から抽出したノイズを延長(補完)することにより、取得画像全体におけるノイズが取得できる。これが取得ノイズである。CPU32Aは、取得画像から、取得ノイズを除去することで差分処理を実行し、ノイズ除去画像を表示部35に表示する。
図7の右図は、
図7の左図と比較して、縦方向のノイズが低減している。
【0043】
次に、画像処理以外の、撮像画像に発生するノイズを低減するための処理について説明する。
【0044】
まず、露光時間を延長する処理について説明する。
図8に、本実施形態に係る赤外線カメラ10において画像処理を実行せずに露光時間のみを変更して取得した撮像画像を示す。
図8(A)に露光時間を標準的な43μmにして取得した撮像画像を示し、
図8(B)に露光時間を100μmにして取得した撮像画像を示す。
図8(B)に示す撮像画像は、
図8(A)に示す撮像画像と比較して、縦方向のノイズが低減している。また、
図8の白い線で示された評価ラインにおける検出温度の標準偏差は、
図8(A)では0.312、
図8(B)では0.096であった。したがって、露光時間の延長は、ノイズの低減に効果がある。
【0045】
図9に、冷却型カメラと、本実施形態に係る赤外線カメラ10と、を用いて、一定の温度の被写体を撮像した場合における検出温度を示す。冷却型カメラは、非冷却型カメラと比較して温度分解能が高いためノイズを低減できるものの、非冷却型カメラと比較して価格が高い、という課題がある。
図9の最上段のグラフは、冷却型カメラが撮像した場合の検出温度である。また、
図9の上から2番目のグラフは、露光時間が100μmで画像処理を実行せずに本実施形態に係る赤外線カメラ10が撮像した場合の検出温度である。また、
図9の最下段のグラフは、露光時間が43μmで画像処理を実行せずに本実施形態に係る赤外線カメラ10が撮像した場合の検出温度を示す。
図9より、画像処理を実行していない本実施形態に係る赤外線カメラ10は、露光時間を延長しても、冷却型カメラと同程度にノイズを低減できないことがわかる。
【0046】
次に、複数の撮像画像を平均化する処理(以下、「平均化処理」という。)について説明する。
図10に、本実施形態に係る赤外線カメラ10において画像処理を実行せずに平均化処理を行った撮像画像の枚数(以下、「平均化枚数」という。)に対する、評価ラインにおける検出温度の標準偏差(以下、「評価領域の標準偏差」という。)を示す。
図10において、露光時間が43μmの場合の評価領域の標準偏差が丸印で、露光時間が100μmの場合の評価領域の標準偏差が三角形でプロットされている。また、
図10において、露光時間が150μmの場合の評価領域の標準偏差が四角形で、露光時間が200μmの場合の評価領域の標準偏差がバツ印でプロットされている。
図10より、露光時間に関係なく、平均化枚数が増えるほど、評価領域の標準偏差は低減する。しかし、平均化枚数が10枚以上の場合、平均化枚数を1枚増加することにより低減する評価領域の標準偏差は、平均化枚数が10枚未満の場合と比較して小さい。したがって、平均化枚数を10枚以上にしても、ノイズの低減効果は平均化枚数が10枚の場合と変わらないことがわかる。
【0047】
次に、画像処理及び平均化処理の実行によるノイズ低減の効果について説明する。
図11に、冷却型カメラと、本実施形態に係る赤外線カメラ10とを用いて、一定の温度の被写体を撮像した場合における検出温度を示す。
図11の最上段のグラフは、冷却型カメラが撮像した場合の検出温度である。また、
図11の上から2番目のグラフは、露光時間が100μmの本実施形態に係る赤外線カメラ10において画像処理及び平均化処理を実行した場合の検出温度を示す。また、
図11の最下段のグラフは、露光時間が100μmの本実施形態に係る赤外線カメラ10において平均化処理のみを実行した場合の検出温度を示す。
図11より、本実施形態に係る赤外線カメラ10(すなわち、非冷却型の赤外線検出部を有する赤外線カメラ)において露光時間を延長し、かつ画像処理及び平均化処理を実行しても、冷却型カメラと同程度に検出温度の標準偏差を低減できないことがわかる。
【0048】
図12に、冷却型カメラと、本実施形態に係る赤外線カメラ10とを用いて、撮像した撮像画像を示す。
図12(A)に、本実施形態に係る赤外線カメラ10で露光時間を100μmにして平均化処理のみを実行した場合の撮像画像を示す。また、
図12(B)に、本実施形態に係る赤外線カメラ10で露光時間を100μmにして画像処理及び平均化処理を実行した場合の撮像画像を示す。また、
図12(C)に、冷却型カメラを使用して撮像した撮像画像を示す。
図12の白い線で示された評価ラインにおける検出温度の標準偏差は、
図12(A)では0.047、
図12(B)では0.045、
図12(C)では0.028であった。したがって、本実施形態に係る赤外線カメラ10において露光時間を延長し、かつ画像処理及び平均化処理を実行しても、冷却型カメラと同程度に検出温度の標準偏差を低減できないことがわかる。一方、
図12(B)に示す撮像画像は
図12(A)に示す撮像画像と比較して、縦方向のノイズが低減している。また、
図12(B)に示す撮像画像は
図12(C)に示す撮像画像と比較して、縦方向のノイズが変わらない。したがって、本実施形態に係る赤外線カメラ10において露光時間を延長し、かつ画像処理及び平均化処理を実行すれば、外見上は、冷却型カメラと同程度にノイズを低減できることがわかる。
【0049】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る赤外線カメラ10は、被写体を撮像する撮像部30と、撮像画像に対して画像処理を実行するための実行部32と、を備えている。撮像部30は、被写体から放射される赤外線を検出する非冷却型の赤外線検出部18と、赤外線検出部18の一部を覆う黒体部18Aと、を備えている。また、実行部32は、撮像画像、及び黒体部18Aで覆われた部分が撮像された撮像画像から抽出されたノイズの成分を取得する取得部322と、撮像画像の全体からノイズの成分を除去する除去部324と、を備えている。これにより、冷却型カメラと比較して安価な非冷却型カメラは、従来と比較して撮像画像のノイズを低減することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る赤外線カメラ10が検出する波長は、8μmから14μmまでの波長であるため、昼夜を問わずに赤外線カメラ10を使用することができる。
【0051】
なお、第1の実施形態に係る赤外線カメラ10は、赤外線検出部18の一部を覆う黒体部18Aを備えていた。しかし、この例に限られない。第1の実施形態に係る赤外線カメラ10は、黒体部18Aを備えていなくてもよい。この場合、取得部322は、平均化フィルタにより撮像画像からボケ画像を作成し、当該撮像画像からボケ画像を差分することで、ノイズ成分を取得する。そして、除去部324は、撮像画像の全体から取得したノイズの成分を除去する。
【0052】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、赤外線カメラ10が偏光子を備えていなかった。本実施形態では、偏光子を回転させて温度を測定すると余弦波(コサイン波)に近似することを用いて、赤外線カメラ10が、被写体に反射した赤外線(以下、「反射光」という)を除去する。以下、第1の実施形態との相違点について説明する。
【0053】
図13に示すように、本実施形態に係る赤外線カメラ10は、偏光子20、支持板22、及びモータ24を有する点が第1の実施形態と異なる。
【0054】
偏光子20は、一方向のみに振動する光だけを透過し、当該一方向以外の方向に振動する光を遮断する性質を持つ光学素子である。偏光子20は、
図15に示すように、所定の方向に沿って配置された細かな縦筋状のワイヤグリッド20Aを備えている。複数のワイヤグリッド20Aは、平行に配置されている。
【0055】
支持板22は、例えば円盤状とされており、偏光子20を支持した状態で回転する。
【0056】
駆動部としてのモータ24は、円盤状の支持板22の外周を駆動することで、偏光子20を回転させる。
【0057】
なお、本実施形態に係る赤外線カメラ10は、第1の実施形態に係る赤外線カメラ10と異なり、非冷却型カメラに限定されない。すなわち、本実施形態に係る赤外線カメラ10として、冷却型カメラを適用してもよい。
【0058】
次に、本実施形態に係る赤外線カメラ10の電気系の要部構成について説明する。
図14に示すように、本実施形態に係る赤外線カメラ10は、モータ24を有する点が第1の実施形態と異なる。
【0059】
実行部32は、モータ24を制御することで、支持板22に支持された偏光子20を回転させる。
【0060】
図15に、偏光子20を回転させた状態を示す。
図15(A)は、偏光子20の回転角度が0度の状態であり、この偏光子20の位置が基準位置となる。
図15(B)は、基準位置に対する偏光子20の回転角度が45度の状態である。
図15(C)は、基準位置に対する偏光子20の回転角度が90度の状態である。
図15(D)は、基準位置に対する偏光子20の回転角度が135度の状態である。回転角度が0度の場合、反射光の振幅方向(以下、「反射振幅方向」という)がワイヤグリッド20Aの方向と直交するため、偏光子20は反射光を透過する。一方、回転角度が90度の場合、反射振幅方向はワイヤグリッド20Aの方向と平行であるため、偏光子20は反射光を除去する。
【0061】
図16は、偏光子20の機能を説明するための模式図である。
図16において、偏光子20の回転角度は0度である。
図16に示されるように、反射振幅方向がワイヤグリッド20Aの方向と直交するため、偏光子20は反射光Wを透過している。
【0062】
図17に、偏光子20の回転角度に対する被写体の検出温度の一例を示す。
図17における丸印が、偏光子20を360度回転して撮像した複数の撮像画像から検出された検出温度を示す。そして、
図17における余弦波(コサイン波)が検出温度を推定する温度推定モデルを示す。温度推定モデルは、式(1)で表された余弦関数である。式(1)において、Ynが検出温度、Aが振幅、δが位相差、θが偏光子20の回転角度、nが周波数、Bがオフセットを示す。
【0063】
【0064】
図17より、回転角度が0度、180度、及び360度の場合に、偏光子20が反射光を最も透過しているため最も検出温度が高く、回転角度が90度及び270度の場合に、偏光子20が反射光を除去しているため最も検出温度が低いことがわかる。そこで本実施形態に係る赤外線カメラ10は、温度推定モデルにおけるオフセットBから、振幅Aの絶対値の差分をとることで、回転角度が90度及び270度の場合、すなわち反射光を最も除去した状態における検出温度を推定する。なお、赤外線カメラ10は、温度推定モデルにおけるθに90度又は270度を代入して、反射光を最も除去した状態における検出温度を推定してもよい。以下では、反射光を最も除去した状態における検出温度の推定値を「推定温度」という。なお、偏光子20が全ての反射光を除去可能な場合、検出温度は、反射光を全て除去した状態における検出温度となる。
【0065】
次に、実行部32の機能構成について説明する。
【0066】
図18に示すように、実行部32は、回転部320及び推定部326を備えている点が第1の実施形態と異なる。
【0067】
回転部320は、モータ24を制御することで、支持板22に支持された偏光子20を180度以上回転させる。本実施形態では、回転部320は、偏光子20が一定速度で周方向に回転するようにモータ24を制御する。
【0068】
取得部322は、偏光子20の回転中に、同一の被写体を撮像した複数の撮像画像を取得する点が第1の実施形態と異なる。本実施形態では、取得部322は、偏光子20が所定の角度(例えば、40度)回転する度に撮像画像を取得する。しかし、この例に限られない。例えば、偏光子20が一定速度で回転していれば、取得部322は、偏光子20の角度に関係なく所定の時間(例えば、0.1秒)が経過する度に撮像画像を取得してもよい。
【0069】
また、取得部322は、複数の撮像画像から、被写体の検出温度、及び当該検出温度を検出した場合における偏光子20の回転角度を画素毎に取得する点が第1の実施形態と異なる。
【0070】
推定部326は、取得部322が取得した被写体の検出温度、及び当該検出温度を検出した場合における偏光子20の回転角度に基づいて温度推定モデルを推定し、温度推定モデルに基づいて推定温度を推定する。
【0071】
次に、実行部32の作用について説明する。
【0072】
図19は、本実施形態に係る実行部32による画像処理の流れを示すフローチャートである。CPU32AがROM32Bから画像処理プログラム300を読み出して、RAM32Cに展開して実行することにより、画像処理が行なわれる。
【0073】
図19のステップS200において、CPU32Aは、モータ24を制御することで偏光子20を180度以上回転させる。
【0074】
ステップS202において、CPU32Aは、偏光子20の回転中に、同一の被写体が撮像された複数の撮像画像を取得する。以下では、ステップS202において、CPU32Aが取得した撮像画像を回転画像という。
【0075】
ステップS204において、CPU32Aは、黒体部18Aで覆われた部分が撮像された回転画像から取得ノイズを取得する。
【0076】
ステップS206において、CPU32Aは、全ての回転画像の全体から取得ノイズを除去する。
【0077】
ステップS208において、CPU32Aは、取得した全ての回転画像から、画素毎の検出温度、及び当該検出温度を検出した場合の偏光子20の回転角度を取得する。
【0078】
ステップS210において、CPU32Aは、ステップS208において取得した検出温度、及び偏光子20の回転角度に基づいて非線形回帰を行うことにより、温度推定モデルを推定する。
【0079】
ステップS212において、CPU32Aは、ステップS210において推定した温度推定モデルにおけるオフセットBから、振幅Aの絶対値の差分をとることで、推定温度を推定する。
【0080】
ステップS214において、CPU32Aは、回転画像の全ての画素における推定温度を推定したか否かを判定する。CPU32Aは、回転画像の全ての画素における推定温度を推定した場合(ステップS214:YES)、ステップS216に移行する。一方、CPU32Aは、回転画像の全ての画素における推定温度を推定していない場合(ステップS214:NO)、ステップS210に戻る。
【0081】
ステップS216において、CPU32Aは、推定した推定温度の熱画像を、撮像部30が撮像した撮像画像として表示部35に表示し、本画像処理を終了する。
【0082】
次に、本実施形態に係る画像処理の実行によるノイズの低減効果について説明する。
図20に、供試体Tが内蔵された構造物Sを示す。
図20において点線で供試体Tを、実線で構造物Sを示す。
図20(A)にかぶり厚が2cmの位置に、
図20(B)にかぶり厚が3cmの位置に、
図20(C)にかぶり厚が4cmの位置に、それぞれ供試体Tが内蔵されている状態を示す。なお、供試体Tの幅及び高さは150mmである。
【0083】
図21に、冷却型カメラ及び本実施形態に係る赤外線カメラ10を用いて、
図20に示した構造物Sを撮像した場合における撮像画像を示す。
図21(A)に赤外線カメラ10において本実施形態に係る画像処理を実行せずに撮像した撮像画像を示す。また、
図21(B)に赤外線カメラ10において本実施形態に係る画像処理を実行して撮像した撮像画像を示す。なお、画像処理において推定される温度推定モデルの初期値は、周波数nを偏光子20の回転数を2倍にした値、位相差δを0、振幅Aを検出温度Ynの較差、オフセットBを検出温度の平均値として設定している。また、
図21(C)に冷却型カメラで撮像した撮像画像を示す。
【0084】
図21(A)に示された撮像画像は、
図21(B)及び
図21(C)に示された撮像画像と比較してノイズが多い。また、
図21(A)の左図において、かぶり厚が4cmの位置に内蔵された供試体Tと、構造物Sとの温度差は約0.1℃として検出されている。すなわち、本実施形態に係る画像処理を実行しない非冷却型カメラは、ノイズが多いために、かぶり厚が4cmの位置に内蔵された供試体Tを検出することができない。
【0085】
一方、
図21(B)に示された撮像画像は、
図21(A)に示された撮像画像と比較してノイズが少なく、
図21(C)に示された撮像画像と同程度のノイズしか発生していない。また、
図21(B)及び
図21(C)において、かぶり厚が4cmの位置に内蔵された供試体Tと、構造物Sとの温度差は約3.0℃として検出されている。したがって、非冷却型カメラであっても、本実施形態に係る画像処理を実行すれば、冷却型カメラと同様にノイズを除去できることがわかる。
【0086】
また、
図22に、第1の実施形態に係る赤外線カメラと、第2の実施形態に係る赤外線カメラと、を用いて、橋梁内の内部構造であるボイドを撮像した撮像画像を示す。
図22(A)に第1の実施形態に係る赤外線カメラにおいてノイズを除去した撮像画像を示す。また、
図22(B)に本実施形態に係る赤外線カメラ10においてノイズを除去し、かつ偏光子20の回転により反射光を除去する処理を実行した撮像画像を示す。すなわち、
図22(A)と
図22(B)とでは、偏光子20の回転による反射光を除去する処理の実行有無が異なる。また、
図22において白い点線で囲まれた部分は、ボイドがある部分(以下、「ボイド部」という)である。
図21(A)におけるボイド部は反射光と重なっており、ボイドにより生じた温度差を確認することができない。一方、
図22(B)におけるボイド部では反射光を除去できているため、ボイドにより生じた温度差を確認することができる。したがって、本実施形態に係る赤外線カメラ10において画像処理を実行すれば、反射光が発生する場合においても、橋梁内部の構造や損傷の温度差を検出することが可能になる。
【0087】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る赤外線カメラ10は、偏光子20と、偏光子20を回転させるためのモータ24と、を更に備えている。また、第2の実施の形態に係る実行部32は、回転部320及び推定部326を更に備えている。回転部320は、モータ24を制御することで偏光子20を180度以上回転させる。また、取得部322は、偏光子20の回転中に、同一の被写体を撮像した複数の回転画像を取得する。また、推定部326は、複数の回転画像から検出された被写体の検出温度、及び当該検出温度を検出した場合における偏光子20の回転角度に基づいて推定モデルを推定し、推定温度を、温度推定モデルに基づいて推定する。これにより、従来と比較して反射光を低減することができる。したがって、例えば、コンクリート構造物の損傷調査、及びビルの外壁診断等において、調査対象の周辺の熱環境からの反射光が赤外線カメラ10に映りこみ、当該反射光による温度差が内部損傷として誤検出される可能性を低減することができる。また、反射光の映り込みが内部損傷と重なることで、内部損傷を見逃してしまう可能性を低減することができる。
【0088】
なお、本開示は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0089】
例えば、上記各実施形態の実行部32は、赤外線カメラ10に内蔵されていた。しかし、この例に限られない。例えば、実行部32は、赤外線カメラ10と別体で構成されていてもよい。
【0090】
また、上記各実施形態では、黒体部18Aは、赤外線検出部18のうち、ノイズが発生する方向(縦方向)に交差する方向に延長させた部分である上端部及び下端部の2箇所を覆うように設けられている。しかし、これに限定されない。黒体部18Aは、赤外線検出部18を、1箇所又は3箇所以上で覆うように設けられてもよい。また、黒体部18Aは、必ずしも赤外線検出部18の端を覆わなくてもよい。ノイズが発生する方向に交差する方向に延長されていれば、端から離れた場所において赤外線検出部18を覆うように設けられてもよい。また、上記実施形態では、ノイズが図面の縦方向に延びる場合について説明したが、ノイズが横方向に延びる場合、ノイズが伸方向に交差する方向、すなわち、縦方向に延びるように、黒体部18Aが設けられうる。
【0091】
また、上記各実施形態でCPU32Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上記各種処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0092】
また、上記各実施形態では、画像処理プログラム300がROM32Bに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0093】
また、上記各実施形態で説明した処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0094】
その他、上記各実施形態で説明した赤外線カメラ10の各々の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 赤外線カメラ
18 赤外線検出部
18A 黒体部
20 偏光子
20A ワイヤグリッド
24 モータ
30 撮像部
32 実行部
300 画像処理プログラム
320 回転部
322 取得部
324 除去部
326 推定部