(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156140
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】集塵カップ及び電動工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20231017BHJP
B25D 17/18 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B25F5/00 Z
B25D17/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065827
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】山本 瑞貴
(72)【発明者】
【氏名】町田 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】吉兼 聖展
【テーマコード(参考)】
2D058
3C064
【Fターム(参考)】
2D058AA14
2D058CA06
2D058CB07
2D058CB14
2D058DA23
3C064AA04
3C064AB01
3C064AB02
3C064AC02
3C064AC10
3C064BA11
3C064BA12
3C064BA14
3C064BA32
3C064BB32
3C064BB82
3C064CA03
3C064CA08
3C064CA29
3C064CA53
3C064CA60
3C064CA61
3C064CA62
3C064CB06
3C064CB08
3C064CB17
3C064CB63
3C064CB71
3C064CB82
3C064CB92
(57)【要約】
【課題】取り外しや交換の必要なくビット先端の視認性を確保する。
【解決手段】集塵カップ1は、ハンマドリル30の前筒部45に装着可能で、当該装着状態で前筒部45に取り付けられたビットBが貫通する筒状である。そして、集塵カップ1の本体部3の略全部が、任意の長さを保持可能な伸縮部16となっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具の前端部に装着可能で、当該装着状態で前記前端部に取り付けられたビットが貫通する筒状の集塵カップであって、
少なくとも軸線方向の一部が任意の長さを保持可能な伸縮部となっていることを特徴とする集塵カップ。
【請求項2】
前記前端部への装着部と、前記装着部に繋がる本体部と、前記本体部に繋がって前方へ開口する吸引部と、を含み、前記本体部の少なくとも一部が前記伸縮部であることを特徴とする請求項1に記載の集塵カップ。
【請求項3】
前記本体部の略全部が前記伸縮部であることを特徴とする請求項2に記載の集塵カップ。
【請求項4】
前記本体部は、前記装着部に対して着脱可能であることを特徴とする請求項2又は3に記載の集塵カップ。
【請求項5】
前記伸縮部を前記軸線方向に最短とした前記本体部の長さは、前記伸縮部を前記軸線方向に最長とした前記本体部の長さの1/2以下であることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の集塵カップ。
【請求項6】
前記伸縮部は、複数の山部を前記軸線方向に連続形成してなる蛇腹形状であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の集塵カップ。
【請求項7】
各前記山部は、軸線方向に圧縮力が加わると、頂点を境とした前半部と後半部との何れか一方が他方側へ重なる折り畳み形状を保持することを特徴とする請求項6に記載の集塵カップ。
【請求項8】
前記伸縮部の後方に、外部の集塵ホースとの接続口が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の集塵カップ。
【請求項9】
ビットが取り付けられる前端部に、請求項1乃至8の何れかに記載の集塵カップを装着してなる電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハンマドリル等の電動工具へ集塵用に取り付けられる集塵カップと、当該集塵カップを装着した電動工具とに関する。
【背景技術】
【0002】
ハンマドリル等の電動工具においては、前端部に装着したビットを回転させて穿孔作業等を行う際、被加工材から生じる粉塵を飛散させないように、前端部に筒状の集塵カップが装着される。この集塵カップは、例えば特許文献1に開示されるように、電動工具の前端部に装着される装着部と、装着部の前側に取り付けられてビットの周囲を覆う蛇腹形状の本体部とを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハンマドリルにブルポイント等のビットを装着してハツリ作業を行う場合、ビット先端を視認する必要がある。しかし、上記従来の集塵カップにおいては、被加工材に押しつけない状態では本体部が伸長状態となってビットの先端を覆ってしまうため、視認性を得るためには、集塵カップを取り外したり、本体部が短いハツリ用の集塵カップに交換したりする必要が生じる。
【0005】
そこで、本開示は、取り外しや交換の必要なくビット先端の視認性を確保することができる集塵カップ及び電動工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の構成は、電動工具の前端部に装着可能で、当該装着状態で前端部に取り付けられたビットが貫通する筒状の集塵カップであって、
少なくとも軸線方向の一部が任意の長さを保持可能な伸縮部となっていることを特徴とする。
本開示の第2の構成は、電動工具であって、ビットが取り付けられる前端部に、第1の構成の何れかに記載の集塵カップを装着してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ビットの種類や作業に応じて本体部の軸線方向の長さを任意に調整可能となる。よって、ハツリ作業等を行う際、集塵カップを取り外したり交換したりすることなくビット先端の視認性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】集塵カップを取り付けたハンマドリルの側面図である。
【
図2】集塵カップを取り付けたハンマドリルの中央縦断面図である。
【
図6】最短長さとした本体部の説明図で、
図6Aは側面、
図6Bは中央縦断面をそれぞれ示す。
【
図7】最長長さとした本体部の説明図で、
図7Aは側面、
図7Bは中央縦断面をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態において、集塵カップは、前端部への装着部と、装着部に繋がる本体部と、本体部に繋がって前方へ開口する吸引部と、を含み、本体部の少なくとも一部が伸縮部であってもよい。
この構成によれば、本体部を操作して軸線方向の長さを容易に調整することができる。
本開示の一実施形態において、本体部の略全部が伸縮部であってもよい。
この構成によれば、軸線方向の最短長さを短くでき、調整できる軸線方向の長さの幅が広くなる。
なお、ここで「略全部」とは、文字通り軸線方向の全長が伸縮部である場合と、装着部や吸引部との結合部分等の一部を除いて伸縮部となっている場合とを含む。
本開示の一実施形態において、本体部は、装着部に対して着脱可能であってもよい。
この構成によれば、本体部の長さや伸縮部の形態、吸引部の形態等が異なるタイプの本体部に交換して使用可能となる。
【0010】
本開示の一実施形態において、伸縮部を軸線方向に最短とした本体部の長さは、伸縮部を軸線方向に最長とした本体部の長さの1/2以下であってもよい。
この構成によれば、調整できる軸線方向の長さの幅がより広くなり、使い勝手が向上する。
本開示の一実施形態において、伸縮部は、複数の山部を軸線方向に連続形成してなる蛇腹形状であってもよい。
この構成によれば、伸縮部が簡単に形成可能となる。
本開示の一実施形態において、各山部は、軸線方向に圧縮力が加わると、頂点を境とした前半部と後半部との何れか一方が他方へ重なる折り畳み形状を保持するものであってもよい。
この構成によれば、選択した軸線方向長さを容易に保持できる。
本開示の一実施形態において、伸縮部の後方に、外部の集塵ホースを接続するための接続口が設けられていてもよい。
この構成によれば、集塵した粉塵等を効率よく集塵機等に回収可能となる。
【実施例0011】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、第1の構成に係る集塵カップの一例と、第2の構成に係る電動工具の一例であるハンマドリルとを示す側面図である。
図2は、
図1の中央縦断面図である。
図3は、
図2における集塵カップ部分の拡大図である。
集塵カップ1は、後方から、装着部2と、本体部3と、吸引部4とを備えている。
装着部2は、樹脂製の円筒状で、ハンマドリル30の前筒部45にバヨネット結合等によって前方から着脱可能に装着される。装着部2の前端には、シール板5が設けられている。シール板5の中心には、ビットBが貫通する貫通孔6が形成されている。装着部2の前端には、シール板5の前面に当接する4つの前受け部7,7・・が、周方向に等間隔をおいて設けられている。前受け部7の後方で装着部2の内周には、シール板5の後端に当接する4つの後受け部8,8・・が、周方向に等間隔をおいて設けられている。よって、シール板5は、装着部2の前端で前受け部7及び後受け部8によって位置決めされ、貫通孔6を除いて装着部2の前端を閉塞する。
【0012】
装着部2の前部には、本体部3の取付部9が一体に形成されている。取付部9は、装着部2の前端よりも大径の円形リング状である。取付部9は、軸線A2が装着部2の軸線A1(ビットBの軸線)から装着部2の径方向(ビットBの径方向)で下方へ偏心する位置に配置されている。取付部9の後方には、閉塞部10が形成されている。閉塞部10には、斜め後向きに突出する筒部11が設けられている。筒部11の先端には、栓12が着脱可能に被せられている。閉塞部10を除く装着部2の周面には、一対の窓13,13が形成されている。
取付部9の外周面には、前端が開放して周方向に延びる3つの係止凹部14,14・・が形成されている。
【0013】
本体部3は、装着部2よりも薄肉の樹脂で形成される円筒状である。本体部3は、装着部2と別体に形成されて、装着部2に対して着脱可能となっている。
本体部3は、キャップ部15と、伸縮部16とを備えている。
キャップ部15は、
図4にも示すように、前面に伸縮部16の後端が結合されて後方に開口している。但し、キャップ部15は、
図5に示すように、ビットBの径方向で軸線A4が伸縮部16の軸線A3から偏心する位置に配置されている。この偏心量は、装着部2の軸線A1と取付部9の軸線A2との偏心量と同じである。
キャップ部15は、内径が装着部2の取付部9の外径よりもやや大きく形成されて、取付部9に前方から被せることができる。キャップ部15の内周面には、突条17,17・・が中心側へ向けて突設されている。各突条17は、キャップ部15の周方向に延びている。各突条17は、装着部2の取付部9に設けた各係止凹部14の前端から進入して取付部9にバヨネット結合可能となっている。
【0014】
伸縮部16は、複数の山部20,20・・を軸線方向に連続形成した蛇腹形状となっている。各山部20は、後端から頂点へ向かうに従って拡開する後半部21と、頂点から前端へ向かうに従って縮径する前半部22とを有している。ここでは後半部21の前後幅よりも前半部22の前後幅の方が小さくなる前後非対称形となっている。
各山部20は、伸長形状から軸線方向に圧縮力が加わると、前半部22のみが後方へ湾曲状に変形して後半部21に重なり、元の伸長形状へ弾性復帰しない折り畳み形状を保持するようになっている。
こうして軸線方向に隣接する複数の山部20,20・・が折り畳み形状となると、伸縮部16は、軸線方向に短縮された状態を保持する。
図3及び
図4では、伸縮部16の後部の複数の山部20のみが折り畳み形状となった状態を示している。
図6は、伸縮部16の全ての山部20が折り畳み形状となった状態を示している。
図7は、伸縮部16の全ての山部20が伸長形状となった状態を示している。
【0015】
このように、伸縮部16での山部20の伸長形状と折り畳み形状との選択により、伸縮部16は、
図6に示す最短長さと、
図7に示す最長長さとの間で任意の長さを選択して保持可能となっている。折り畳み形状とする山部20の位置及び数は任意に選択できる。
ここでは、伸縮部16が最短長さとなる
図6の本体部3の軸線方向の長さL2は、伸縮部16が最長長さとなる
図7の本体部3の軸線方向の長さL1の1/2以下となる。
吸引部4は、伸縮部16の前端へ一体に結合されて、前方へ向かうに従って拡開する曲面テーパ状となっている。
【0016】
この本体部3のキャップ部15を、装着部2の取付部9に被せてバヨネット結合すると、キャップ部15に対して偏心している伸縮部16が、キャップ部15の軸線A4を中心に円弧移動する。よって、伸縮部16は、軸線A3が装着部2の軸線A1と同軸となる位置に到達する。このとき伸縮部16は、後端開口が各前受け部7に当接することで、後方への移動が規制された状態となる。
バヨネット結合された状態で、伸縮部16の後端開口とシール板5の前面との間には、前受け部7によって前後方向に隙間が形成される。この隙間は、前受け部7,7の間を介して取付部9及び閉塞部10の内側空間と連通し、さらに筒部11と連通している。
【0017】
一方、ハンマドリル30は、
図1,2に示すように、本体ハウジング31と、後ハウジング32と、前ハウジング33とを備えている。
本体ハウジング31は、下部にモータ34を収容し、上部に前ハウジング33を連結している。モータ34は、回転軸35を上下方向に向けた姿勢で収容されている。回転軸35の上端には、ピニオン36が上向きに取り付けられている。
後ハウジング32は、上下方向に延びるグリップ部37を備えて本体ハウジング31とループ状に繋がっている。グリップ部37の上部には、トリガ39を前方に突出させたスイッチ38が設けられている。グリップ部37の下部には、バッテリ装着部40が形成されている。バッテリ装着部40には、後方からバッテリパック41がスライド装着されている。バッテリ装着部40内には、バッテリパック41と電気的に接続される端子台42が保持されている。端子台42の上側には、コントローラ43が収容されている。
【0018】
前ハウジング33は、筒状で、後筒部44と前筒部45とを備えている。後筒部44は、本体ハウジング31の上部に前方からネジ止めされる。前筒部45は、後筒部44の上方への偏心位置から前方へ突出している。後筒部44の左側面には、動作モードの切替ツマミ(図示略)が設けられている。
本体ハウジング31内の上部には、後筒部44に組み付けられるインナハウジング46が設けられている。前ハウジング33とインナハウジング46との内部には、回転/打撃部50が設けられている。
回転/打撃部50には、中間軸51とツールホルダ52とがそれぞれ前後方向に設けられている。中間軸51は、前ハウジング33及びインナハウジング46の内部下側で回転可能に支持されている。中間軸51には、後方から、第1ギヤ53、ボススリーブ54、クラッチ55、第2ギヤ56が設けられている。回転軸35のピニオン36は、インナハウジング46を下方から貫通して第1ギヤ53と噛合している。
【0019】
ツールホルダ52は、筒状で、中間軸51の上方で前筒部45と同軸で回転可能に支持されている。ツールホルダ52の中間部には、第3ギヤ57が設けられている。第3ギヤ57は、中間軸51の第2ギヤ56と噛合している。ツールホルダ52の前端は、前筒部45から前方へ突出して、ビットBを結合するチャック部58を備えている。前筒部45の前方には、チャック部58によってビットBを着脱操作するための操作スリーブ59が設けられている。
ツールホルダ52の後部には、ピストンシリンダ60が前後移動可能に遊挿されている。ピストンシリンダ60の後端には、アーム61が連結されている。アーム61は、ボススリーブ54に、軸線を傾けたスワッシュベアリングを介して連結されて、前後に揺動可能となっている。ピストンシリンダ60の内部には、空気室62を介してストライカ63が前後移動可能に収容されている。ピストンシリンダ60の前方でツールホルダ52内には、インパクトボルト64が設けられている。
【0020】
このハンマドリル30では、トリガ39を押し込み操作する。すると、スイッチ38がONしてコントローラ43がモータ34を駆動させる。よって、回転軸35がピニオン36と共に回転し、第1ギヤ53を介して中間軸51が回転する。このとき、後筒部44の側面に設けた切替ツマミを操作することでクラッチ55をスライドさせる。すると、クラッチ55が第2ギヤ56のみと係合する前進位置(ドリルモード)、クラッチ55がボススリーブ54のみと係合する後退位置(ハンマモード)、クラッチ55が第2ギヤ56及びボススリーブ54と同時に係合する中間位置(ハンマドリルモード)の何れかを選択することができる。ドリルモードでは、第3ギヤ57を介してツールホルダ52が回転してビットBを回転させる。ハンマモードでは、アーム61の揺動によってピストンシリンダ60が往復動する。よって、空気室62を介してストライカ63が連動して往復動する。すると、ストライカ63がインパクトボルト64を介してビットBを打撃する。ハンマドリルモードでは、ツールホルダ52の回転とインパクトボルト64の打撃とが同時に行われる。
【0021】
以上の如く構成された集塵カップ1及びハンマドリル30において、集塵カップ1を使用してハツリ作業を行う際、装着部2を、前筒部45に前方から被せてバヨネット結合する。
この状態でハツリ用のビットB(
図1,2ではブルポイントを示す)を、集塵カップ1に後端から差し込み、シール板5の貫通孔6を貫通させてチャック部58に装着する。操作スリーブ59の操作は、装着部2に形成した窓13を介して行うことができる。装着されたビットBは、本体部3及び吸引部4に同軸で囲まれる。この本体部3内のビットB周りの空間は、前受け部7で囲まれるシール板5の前側空間と連通している。この前側空間は、前受け部7,7の間から取付部9及び閉塞部10内を介して筒部11と連通することになる。
【0022】
そして、
図1,2に示すように、本体部3の伸縮部16において、任意の山部20(
図1,2では後部の複数の山部20,20・・)を折り畳み形状とする。すると、伸縮部16が軸線方向に収縮して吸引部4が後退し、ビットBの先端が吸引部4から前方へ突出した状態となる。よって、露出したビットBの先端をハツリ位置へ容易に位置決めすることができる。
この状態でハンマモードを選択してハンマドリル30を作動させると、ビットBが打撃されてハツリ作業が行われる。このときビットBの先端は露出したままであるため、作業者はビットBの先端を視認しながら作業を行うことができる。
【0023】
一方、穿孔作業を行う場合、ドリル用のビットをチャック部58に装着して、本体部3の伸縮部16を伸長させる。そして、吸引部4を被加工材に押し当ててビットの先端を穿孔位置に位置決めする。この状態でドリルモード或いはハンマドリルモードでハンマドリル30を作動させると、ビットが回転して被加工材を穿孔する。伸縮部16は、ビットの穿孔に連れて収縮してハンマドリル30及び装着部2の前進を許容する。このとき伸縮部16の後端は、装着部2の4つの前受け部7に当接しているので、圧縮に伴う反発力が4つの前受け部7によって均等に受けられる。よって、伸縮部16は、ビットに対して傾きにくくなり、軸線方向へ直線状に圧縮される。
【0024】
穿孔により被加工材から発生した粉塵は、本体部3内に貯留する。外部の集塵機を使用しない場合は、筒部11に栓12を装着しておけば、本体部3内に貯留した粉塵が筒部11から漏れ出ることはない。作業終了後は、栓12を外して粉塵を筒部11から、或いは吸引部4の前端から排出することができる。
一方、外部の集塵機を使用する場合は、筒部11に、栓12に代えて外部の集塵機のフレキシブルホースを接続する。よって、集塵機を作動させれば、発生した粉塵が空気と共に、本体部3から装着部2の取付部9、閉塞部10、筒部11を通り、フレキシブルホースを介して集塵機に吸い込まれる。よって、穿孔作業と並行して粉塵の排出が効果的に行える。
【0025】
このように、上記実施例の集塵カップ1は、ハンマドリル30の前筒部45(前端部の一例)に装着可能で、当該装着状態で前筒部45に取り付けられたビットBが貫通する筒状である。
そして、集塵カップ1の本体部3(軸線方向の一部の一例)の略全部が、任意の長さを保持可能な伸縮部16となっている。
この集塵カップ1及び当該集塵カップ1を前筒部45に装着したハンマドリル30によれば、ビットBの種類や作業に応じて本体部3の軸線方向の長さを任意に調整可能となる。よって、ハツリ作業等を行う際、集塵カップ1を取り外したり交換したりすることなくビット先端の視認性を確保することができる。
【0026】
集塵カップ1は、前筒部45への装着部2と、装着部2に繋がる本体部3と、本体部3に繋がって前方へ開口する吸引部4と、を含み、本体部3の略全部が伸縮部16となっている。
よって、本体部3を操作して軸線方向の長さを容易に調整することができる。
特に、キャップ部15を除く本体部3の略全部が伸縮部16であるため、軸線方向の最短長さを短くでき、調整できる軸線方向の長さの幅が広くなる。
本体部3は、装着部2に対して着脱可能である。
よって、本体部3の長さや伸縮部16の形態、吸引部4の形態等が異なるタイプの本体部3に交換して使用可能となる。
【0027】
伸縮部16を軸線方向に最短とした本体部3の長さL2は、伸縮部16を軸線方向に最長とした本体部3の長さL1の1/2以下となっている。
よって、調整できる軸線方向の長さの幅がより広くなり、使い勝手が向上する。
伸縮部16は、複数の山部20を軸線方向に連続形成してなる蛇腹形状である。
よって、伸縮部16が簡単に形成可能となる。
各山部20は、軸線方向に圧縮力が加わると、頂点を境とした前半部22が後半部21へ重なる折り畳み形状を保持する。
よって、選択した軸線方向長さを容易に保持できる。
伸縮部16の後方に、フレキシブルホース(外部の集塵ホースの一例)を接続するための筒部11(接続口の一例)が設けられている。
よって、集塵した粉塵等を効率よく集塵機等に回収可能となる。
【0028】
以下、本開示の変更例について説明する。
本体部の山部の数は、上記実施例に限らず、適宜増減可能である。山部による蛇腹形状の領域は、上記実施例のようにキャップ部を除いた本体部の略全部に限らない。例えば当該領域は、本体部の前部、中間部、後部の何れかへ部分的に設けてもよい。当該領域は、前部と後部とのように軸線方向に離して設けてもよい。
上記実施例では、山部の後半部の前後幅よりも前半部の前後幅の方が小さくなる前後非対称形としているが、これと逆に、後半部の前後幅よりも前半部の前後幅の方が大きくなる前後非対称形としてもよい。
山部は、圧縮された際の折り畳み形状が維持できれば、前後非対称形以外の構造も採用できる。
伸縮部は、蛇腹形状以外の構造(例えばテレスコープ構造)で軸線方向長さを調整可能としてもよい。
本体部は、装着部に対して着脱可能とせず、一体に設けてもよい。
吸引部の形状は上記実施例に限らない。吸引部は、直線テーパ状であってもよいし、軸線方向で等径の筒であってもよい。吸引部は、本体部と別体にして着脱可能に設けてもよい。
【0029】
装着部と本体部とは、横断面円形に限らない。例えば取付部及びキャップ部は、横断面楕円形等にして接続口を偏心位置に配置してもよい。取付部及びキャップ部は、楕円形以外の多角形等も採用できる。
但し、装着部は、上記実施例のように偏心位置に取付部を設けるものでなくてもよい。よって、本体部も、伸縮部とキャップ部とが同軸で結合されてもよい。
装着部と本体部とは、バヨネット結合以外の構造で結合させてもよい。例えば、装着部と本体部との一方に爪等の係止部を、他方に凹部又は孔等の被係止部をそれぞれ設けて軸線方向に係止させて結合させることができる。装着部と本体部とは、開口同士の単純な嵌合(圧入)でもよい。
装着部の筒部は、上記実施例のように斜め後向きに設けなくてもよい。筒部は、装着部の径方向を軸線とする方向に突出させてもよい。筒部は省略してもよい。
装着部と電動工具の前筒部との結合も、バヨネット結合以外の構造で結合させてもよい。
【0030】
電動工具も、上記実施例のハンマドリルに限らず、回転/打撃部にクランク機構を採用したものであったり、回転部のない電動ハンマであったりしてもよい。すなわち、ハウジングの前端部に本開示の集塵カップが装着可能であれば、他の電動工具にも本開示は適用可能である。
1・・集塵カップ、2・・装着部、3・・本体部、4・・吸引部、11・・筒部、15・・キャップ部、16・・伸縮部、20・・山部、21・・後半部、22・・前半部、30・・ハンマドリル、31・・本体ハウジング、32・・後ハウジング、33・・前ハウジング、34・・モータ、35・・回転軸、43・・コントローラ、44・・後筒部、45・・前筒部、50・・回転/打撃部、51・・中間軸、52・・ツールホルダ、60・・ピストンシリンダ、63・・ストライカ、64・・インパクトボルト、B・・ビット。