IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-運転支援装置 図1
  • 特開-運転支援装置 図2
  • 特開-運転支援装置 図3
  • 特開-運転支援装置 図4
  • 特開-運転支援装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156167
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231017BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20231017BHJP
   G10L 15/22 20060101ALI20231017BHJP
   G10L 15/10 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/00 D
G10L15/22 300Z
G10L15/10 200W
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065862
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】北村 隆正
(72)【発明者】
【氏名】山内 徹
(72)【発明者】
【氏名】友松 史幸
(72)【発明者】
【氏名】黒木 大陽
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB12
5H181BB13
5H181BB20
5H181CC02
5H181CC04
5H181CC11
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF27
5H181LL04
5H181LL07
(57)【要約】
【課題】煽り運転を効果的に抑制可能な運転支援装置を提供する。
【解決手段】運転支援装置1は、車両の運転者が、他の車両を煽る煽り運転状態であるか否かを判定する煽り運転判定部42と、前記運転者との音声による問い掛けを行う問い掛け部30と、前記運転者の発話による音声を受け付ける音声受付部20とを備え、問い掛け部30から前記運転者に対して所定の問い掛けを行うと共に、音声受付部20による前記運転者からの音声を受け付けることにより、前記運転者との対話を行う音声チャットを実行可能なものとされている。運転支援装置1は、煽り運転判定部50において、前記運転状態が煽り運転であると判定されたことを条件として、前記音声チャットの実行を許可する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者が、他の車両を煽る煽り運転状態であるか否かを判定する煽り運転判定部と、
前記運転者との音声による問い掛けを行う問い掛け部と、
前記運転者の発話による音声を受け付ける音声受付部と、
を備え、
前記問い掛け部から前記運転者に対して所定の問い掛けを行うと共に、前記音声受付部による前記運転者からの音声を受け付けることにより、前記運転者との対話を行う音声チャットを実行可能であり、
前記煽り運転判定部において、前記運転状態が煽り運転であると判定されたことを条件として、前記音声チャットの実行を許可すること、を特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記煽り運転判定部は、前記音声受付部で受け付けた前記運転者の発話に所定のキーワードが含まれることを条件として、前記運転者が煽り運転状態にあると判定すること、を特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
少なくとも前記運転者の顔を含む画像を取得する画像取得部と、
前記画像を処理することにより、前記運転者の少なくとも顔の表情を認識する画像処理部と、
を備え、
前記煽り運転判定部は、
前記顔の表情が、予め定めた基準と合致することを条件として、前記運転者が煽り運転状態にあると判定すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記問い掛け部は、予め登録された前記運転者の近親者の発話による音声により問い掛けを行うものであること、を特徴とする請求項1又は2に記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の運転者による煽り運転が社会問題化している。そこで、煽り運転を抑制するために、運転者が煽り運転状態にあると判定された場合は、アクセルペダル反力を調整して運転者に警告を行う運転支援装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-22012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載の発明は、車速や先行車両との車間に基づいて運転者の煽り運転状態を判定するものとされており、運転者が煽り運転状態であると判定された場合に、運転者に対しての警告を行うものとされている。すなわち、上述した特許文献1に記載の発明は、運転者に対して一方的に警告を行うものとされている。しかしながら、煽り運転状態にある運転者は、興奮状態にあることから、特に一人で運転している場合には、上述した警告だけでは煽り運転を抑制できない懸念がある。そのため、上述した特許文献1に記載の発明は、運転者の気持ちを考慮した適切な煽り運転抑制を行うことができない問題がある。
【0005】
また、上述した特許文献1に記載の発明は、道路状況によっては、運転者が煽っていないにもかかわらず、煽り運転状態にあると誤判定される懸念があった。かかる場合に警告等がなされると、運転者の不満が高まる懸念があった。そこで、本発明は、煽り運転を効果的に抑制可能な運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の運転支援装置は、車両の運転者が、他の車両を煽る煽り運転状態であるか否かを判定する煽り運転判定部と、前記運転者との音声による問い掛けを行う問い掛け部と、前記運転者の発話による音声を受け付ける音声受付部と、を備え、前記問い掛け部から前記運転者に対して所定の問い掛けを行うと共に、前記音声受付部による前記運転者からの音声を受け付けることにより、前記運転者との対話を行う音声チャットを実行可能であり、前記煽り運転判定部において、前記運転状態が煽り運転であると判定されたことを条件として、前記音声チャットの実行を許可すること、を特徴とするものである。
【0007】
上述した運転支援装置は、問い掛け部からの運転者に対する問い掛けと、音声受付部による運転者からの音声の受け付けとにより、運転者との対話による音声チャットの実行が可能なものとされている。そのため、上述した運転支援装置は、音声チャットを用いて、例えば、運転者が和むような問い掛けを行うことができる。これにより、運転者の興奮状態を鎮める効果が期待できる。また、上述した運転支援装置は、煽り運転判定部において、煽り運転であると判定されたことを条件として、音声チャットの実行が許可されるものとされている。そのため、上述した運転支援装置は、運転者が煽り運転状態でない場合に音声チャットが実行されることを抑制できる。これにより、上述した運転支援装置は、煩雑に音声チャットが実行されることを抑制できるので、運転者の気持ちを害することを抑制できる。
【0008】
(2)上述した本発明の運転支援装置において、前記煽り運転判定部は、前記音声受付部で受け付けた前記運転者の発話に所定のキーワードが含まれることを条件として、前記運転者が煽り運転状態にあると判定するとよい。
【0009】
上述した運転支援装置は、かかる構成とすることにより、より精度良く煽り運転状態の判定を行うことができる。これにより、上述した運転支援装置は、運転者に対して煩雑に問い掛けが行われることをより一層低減できるので、運転者の気持ちを害することをより抑制できる。ここで、所定のキーワードには、「遅い」、「イライラする」、「早く」、「行け」、「クソー」、「ボケ」などが例示される。
【0010】
(3)上述した本発明の運転支援装置は、少なくとも前記運転者の顔を含む画像を取得する画像取得部と、前記画像を処理することにより、前記運転者の少なくとも顔の表情を認識する画像処理部と、を備え、前記煽り運転判定部は、前記顔の表情が、予め定めた基準と合致することを条件として、前記運転者が煽り運転状態にあると判定するとよい。
【0011】
上述した運転支援装置は、かかる構成とすることにより、運転者の顔の表情に基づいて煽り運転状態の判定を行うことができるので、より一層精度良く煽り運転状態の判定を行うことができる。これにより、上述した運転支援装置は、運転者に対して煩雑に問い掛けが行われることをより一層低減できるので、運転者の気持ちを害することをより抑制できる。ここで、煽り運転判定部による顔の表情の判定は、例えば、人が怒ったときの顔についてAI(人工知能)により判定するものや、人が怒ったときの表情の特徴点等を予め取得しておき、前記画像と前記特徴点とをパターンマッチングして判定するものなど、各種の手法を用いて行うことができる。
【0012】
(4)上述した本発明の運転支援装置は、前記問い掛け部が、予め登録された前記運転者の近親者の発話による音声により問い掛けを行うものであるとよい。
【0013】
上述した運転支援装置は、かかる構成とすることにより、運転者の気持ちをより落ち着かせることができる。これにより、上述した運転支援装置は、煽り運転をより効果的に抑制できる。
【0014】
(5)上述した本発明の運転支援装置は、前記車両の速度を検知する速度検知部、及び前記車両の加速度を検知する加速度検知部の少なくとも一方を備え、前記煽り運転判定部は、前記速度検知部において検知した前記車両の速度変化が所定の速度変化の範囲を超えるもの、又は前記加速度検知部において検知した前記車両の加速度変化が所定の加速度変化の範囲を超えるものであることを条件として、前記運転者が煽り運転状態にあると判定するとよい。
【0015】
上述した運転支援装置は、かかる構成とすることにより、車両の挙動変化も含めて煽り運転の判定を行うことができるので、より精度良く運転者の煽り運転状態を検知することができる。これにより、上述した運転支援装置は、運転者に対して煩雑に問い掛けが行われることをより一層低減できるので、運転者の気持ちを害することをより一層抑制できる。
【0016】
(6)上述した本発明の運転支援装置は、前記問い掛け部が、AIを用いたチャット又はチャットボットにより構成されているとよい。
【0017】
上述した運転支援装置は、かかる構成とすることにより、自動的に運転者との音声チャットによる対話を実現できる。これにより、上述した運転支援装置は、円滑に運転者との対話を実現できる。また、上述した運転支援装置は、人手に頼らず音声チャットによる対話を実現できるので、コストの低減が期待できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、煽り運転を効果的に抑制可能な運転支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る運転支援装置の構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る運転支援装置のフロー図である。
図3】本発明の変形例に係る運転支援装置の構成図である。
図4】本発明の変形例に係る運転支援装置のフロー図である。
図5図2及び図4のフロー図における音声処理(サブルーチン)のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る運転支援装置1について、図1を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では車両が、自動車である場合を例として説明する。また、本実施形態では、車両の運転席において運転者が運転していることを前提として説明する。
【0021】
運転支援装置1は、画像取得部10と、音声受付部20と、問い掛け部30と、制御部40(画像処理部41及び煽り運転判定部42を含む)と、を備えている。また、運転支援装置1は、前記の他、表示部50、記憶媒体51、及び通信部52等を備えている。
【0022】
画像取得部10は、例えば、ドライブレコーダやカメラ(ビデオカメラを含む)等の撮影装置で構成されている。画像取得部10は、例えば、車室内に設けられており、運転者における少なくとも顔に係る画像を取得できる。画像取得部10は、夜間や周囲が暗い状況でも、運転者を撮影可能なように赤外線撮影が可能なカメラを好ましく利用できる。画像取得部10で取得された画像は、後述する制御部40において画像処理される。
【0023】
音声受付部20は、例えば、マイクロフォン等で構成されており、運転者の発話による音声を受け付けるものとされている。また、音声受付部20は、運転者の発話による音声を検知可能なように、例えば、車両におけるハンドルの周辺等に配置されている。音声受付部20で受け付けた音声は、制御部40において音声処理され、音声チャットの実行に供される。
【0024】
問い掛け部30は、例えば、スピーカで構成されており、車両の車内に配置されている。問い掛け部30は、運転者に対して音声による問い掛けを行うものとされている。問い掛け部30は、音声受付部20により受け付けた運転者からの音声に基づいて、当該運転者との対話を行う音声チャットの実行が可能なものとされている。具体的には、問い掛け部30は、例えば、「どうしましたか?」、「煽り運転になっていますよ」、「落ち着いて下さい。」、あるいは、「安全運転で行きましょう。」などの発話による音声の出力を行うことができる。問い掛け部30における音声チャットによる発話は、例えば、予め登録されたものや、音声受付部20で受け付けた音声をAI(人工知能)で処理することにより生成されたものなどを用いて行われる。なお、音声チャットは、チャットボットと称されるロボットを介して行うものや、後述する通信部52を介して、音声チャットサービス(例えば、コネクトサービス)を通じて行うものなど、各種の手段を用いて実現することが可能である。
【0025】
このように、上述した運転支援装置1は、問い掛け部30が、AIを用いたチャット又はチャットボットにより構成されているので、自動的に運転者との音声チャットによる対話を実現できる。これにより、上述した運転支援装置1は、円滑に運転者との対話を実現できる。また、上述した運転支援装置1は、人手に頼らず音声チャットによる対話を実現できるので、コストの低減が期待できる。
【0026】
制御部40は、例えば、マイコンなどのコンピュータで構成されている。制御部40は、画像取得部10、音声受付部20、及び問い掛け部30の制御を行うと共に、運転支援装置1における全体の制御を行うことができる。また、制御部40は、画像処理部41と、煽り運転判定部42と、を備えるものとされている。また、制御部40は、問い掛け部30により出力する音声内容や煽り運転判定部42における判定キーワード等を記憶(登録)することができる。なお、画像処理部41及び煽り運転判定部42は、制御部40と独立して設けられていてもよい。
【0027】
画像処理部41は、画像取得部10で取得した少なくとも運転者の顔の画像を処理して運転者の顔の表情を認識するものとされている。具体的に説明すると、画像処理部41は、運転者の顔の画像をAIにより解析することにより、例えば、運転者が怒っている表情か、それ以外の表情(例えば、通常の表情、笑っている表情等)かを認識するものとされている。なお、顔の表情の認識は、AIによるものだけではなく、例えば、運転者の顔の画像の特徴点を算出し、当該特徴点と予め登録した特徴点とを画像マッチングにより比較して行うものでもよい。
【0028】
煽り運転判定部42は、車両の運転者が、他の車両を煽る煽り運転状態であるか否かを判定するものとされている。また、煽り運転判定部42において、煽り運転状態にあると判定されたことを条件として、音声チャットの実行が許可されるものとされている。以下、煽り運転判定部42における具体的な煽り運転状態の判定について説明する。
【0029】
煽り運転判定部42は、運転者の顔の表情が、予め定めた基準と合致することを条件として、運転者が煽り運転状態にあると判定するものとされている。ここで、予め定めた基準は、例えば、運転者の顔の表情が怒っている表情である場合とされている。
【0030】
また、煽り運転判定部42は、音声受付部20で受け付けた運転者の発話に所定のキーワードが含まれることを条件として、当該運転者が煽り運転状態にあると判定するものとされている。ここで、所定のキーワードには、「遅い」、「イライラする」、「早く」、「行け」、「クソー」、「ボケ」などが例示される。すなわち、煽り運転判定部42は、運転者が興奮状態で発するキーワードに基づいて煽り運転状態の判定を行うものとされている。これらのキーワードは、予め登録しておいたり、AIによる学習等により設定される。
【0031】
表示部50は、例えば、インストルメントパネルやカーナビゲーションシステムの画面等で構成されている。表示部50は、警告画像の表示や予め登録された近親者の写真等を表示することができる。このように、本実施形態に係る運転支援装置1は、表示部50により運転者に対して視覚に訴える画像等で運転者の興奮状態を和ませることができる。
【0032】
記憶媒体51は、例えば、メモリ(SDカード、SSD等を含む)やハードディスク等で構成されており、前方撮像部15や画像取得部10で取得した画像を記憶することができる。また、記憶媒体51は、音声受付部20で受け付けた音声も併せて記憶することができる。これらにより、記憶媒体51は、車両の運転状態を記録するものとされている。従って、本実施形態では、運転支援装置1が、ドライブレコーダとしての機能も有するものとされている。記憶媒体51は、運転支援装置1に対して着脱可能のものとしてもよいし、制御部40等に内蔵されていてもよい。また、記憶媒体51は、制御部40等に設けられるものや、制御部40等に設けられるものとは別途に設けられるものでもよい。
【0033】
通信部52は、例えば、車載のTCU(テレマティクス・コントロール・ユニット)や運転者等の携帯端末と運転支援装置1とを通信接続するための通信機器として構成されている。通信部52は、TCUや携帯端末を利用して、コネクトサービス等との情報通信が可能となるように構成してもよい。かかる構成とすることにより、運転支援装置1は、コネクトサービス側から問い掛け部30を介して、問い掛けを行うようにすることができる。
【0034】
以上が、本発明の一実施形態に係る運転支援装置1の構成であり、次に本発明の運転支援装置1における動作フローについて図2及び図5を参照しながら説明する。
【0035】
運転支援装置1の動作が開始されると、画像取得部10において運転者の顔の画像の取得が開始される(ステップS10)。ステップS10において画像が取得されると、画像処理部41が、画像処理を開始し、運転者の顔の表情が認識される。
【0036】
続いて、煽り運転判定部42は、画像認識した顔の表情から煽り運転か否かの推定を行う(ステップS11)。ステップS11において、煽り運転ではないと推定した場合は、一連の処理を終了し、処理をステップS10に戻す。一方、ステップS11において、煽り運転であると推定した場合は、音声チャットによる対話が許可される。具体的には、問い掛け部30による問い掛けが行われる(ステップS12)。ここで、問い掛け部30は、「どうしましたか?」といった対話による問い掛けを行うものとされている。
【0037】
続いて、運転者の発話による音声の受け付けが開始され、運転者からの音声に所定のキーワードが含まれるか否かの判定が行われる(ステップS13)。ステップS13において、運転者からの音声に上述した所定のキーワードが含まれていないと判定した場合は、処理がステップS10に戻される。一方、ステップS13において、運転者からの音声に上述した所定のキーワードが含まれていると判定した場合は、煽り運転であると断定する(ステップS14)。
【0038】
続いて、音声対話処理(ステップS100)のサブルーチン処理が行われる。図5に示すように、ステップS100における音声対話処理では、音声アシスタント発話が行われる。具体的には、問い掛け部30が、「煽り運転になっていますよ」、「落ち着いて下さい」、「安全運転で行きましょう」等の発話による問い掛けを行うものとされている(ステップS101)。なお、ステップS101は、必要に応じて、上記の発話を複数回繰り返すことができる。また、ステップS101における発話は、予め録音(登録)された家族(近親者)の声を再生するものでもよい。家族の声の再生では、例えば、「パパ。安全運転お願いね。」といった音声が再生される。
【0039】
以上の処理が終了すると、処理がステップS10に戻される。なお、一連の処理を終了させる場合は、処理をステップS10に戻さずに、運転支援装置1の動作を終了させればよい。
【0040】
以上が、本発明に係る運転支援装置1の構成及び動作フローの一実施形態であり、次に本発明に係る運転支援装置1の作用効果について説明する。
【0041】
上述したように本発明の運転支援装置1は、問い掛け部30からの運転者に対する問い掛けと、音声受付部20による運転者からの音声の受け付けとにより、運転者との対話による音声チャットの実行が可能なものとされている。そのため、上述した運転支援装置1は、音声チャットを用いて、例えば、運転者が和むような問い掛けを行うことができる。これにより、運転者の興奮状態を鎮める効果が期待できる。また、上述した運転支援装置1は、煽り運転判定部42において、煽り運転であると判定されたことを条件として、音声チャットの実行が許可されるものとされている。そのため、上述した運転支援装置1は、運転者が煽り運転状態でない場合に音声チャットが実行されることを抑制できる。これにより、上述した運転支援装置1は、煩雑に音声チャットが実行されることを抑制できるので、運転者の気持ちを害することを抑制できる。
【0042】
また、上述した運転支援装置1は、運転者の発話に所定のキーワードが含まれることを条件として、運転者が煽り運転状態にあると判定するものとされている。従って、上述した運転支援装置1は、より精度良く煽り運転状態の判定を行うことができる。これにより、上述した運転支援装置1は、運転者に対して煩雑に問い掛けが行われることをより一層低減できるので、運転者の気持ちを害することをより一層抑制できる。
【0043】
また、上述した運転支援装置1は、運転者の顔の表情に基づいて煽り運転状態の判定を行うことができるので、より一層精度良く煽り運転状態の判定を行うことができる。これにより、上述した運転支援装置1は、運転者に対して煩雑に問い掛けが行われることをより一層低減できるので、運転者の気持ちを害することをより一層抑制できる。
【0044】
また、上述した運転支援装置1は、問い掛け部30が、予め登録された運転者の近親者の発話による音声により問い掛けを行うものとされている。従って、上述した運転支援装置1は、運転者の気持ちをより落ち着かせることができる。これにより、上述した運転支援装置1は、煽り運転をより効果的に抑制できる。
【0045】
以上が、本発明の一実施形態に係る運転支援装置1の構成及び作用効果であり、次に本発明の変形例に係る運転支援装置100についての詳細を以下に説明する。なお、変形例に係る運転支援装置100は、煽り運転判定手段が追加される以外の構成は、上述した運転支援装置1と同様であるので、同様の部分の説明は省略する。また、上述した運転支援装置1と同一の部品等については、同一の符号を用いていることに留意されたい。
【0046】
≪変形例≫
図3に示すように、変形例に係る運転支援装置100は、煽り運転判定のための情報取得手段として、前方撮像部15、位置情報取得部53、速度検知部54、及び加速度検知部55等を備えている。
【0047】
前方撮像部15は、ドライブレコーダやカメラ(ビデオカメラを含む)等の撮影装置で構成されている。前方撮像部15は、先行車両の画像を撮像するものとされている。なお、前方撮像部15は、先行車両の画像の他、道路標識や信号等の画像を併せて撮像するようにしてもよい。前方撮像部15で撮像された画像は、画像処理部41において画像処理され、例えば、先行車両との車間距離等の算出に供される。
【0048】
位置情報取得部53は、例えば、GPSセンサで構成されている。位置情報取得部53は、GPS信号を受信することにより車両の位置情報を取得することができる。位置情報取得部53で取得された車両の位置情報は、煽り運転判定部42(制御部40)に送られ、煽り運転の判定に供される。なお、位置情報取得部53は、カーナビゲーションシステムに搭載されたGPSセンサを利用することもできる。
【0049】
速度検知部54は、例えば、車両に搭載された車速検知センサで構成されている。速度検知部54は、車速を検知することができる。速度検知部54で検知された車速は、煽り運転判定部42(制御部40)に送られ、煽り運転の判定に供される。なお、車速は、速度検知部54に代えて、位置情報取得部53で取得した位置情報から算出するようにしてもよい。
【0050】
加速度検知部55は、例えば、車両に搭載された加速度検知センサで構成されている。加速度検知部55は、車両に掛かる加速度を検知することができる。加速度検知部55で検知された加速度は、煽り運転判定部42(制御部40)に送られ、煽り運転の判定に供される。
【0051】
なお、煽り運転判定部42に供する車両情報は、上記に加えて、例えば、アクセル開度、ブレーキ作動状態等を含めてもよい。かかる場合は、アクセル開度の急激な変化の繰り返しやブレーキの急激な作動状態の変化の繰り返しなどを煽り運転判定部42における判定条件に加えるとよい。
【0052】
ここで、変形例における煽り運転判定部42は、顔の表情、及び運転者の発話による音声に加えて、位置情報、車速、及び車両の加速度に基づいた煽り運転状態の判定を行うものとされている。以下、位置情報、車速、及び車両の加速度に基づいた煽り運転状態の判定の詳細について説明する。
【0053】
煽り運転判定部42は、位置情報取得部53で取得した位置情報に基づいて、煽り運転状態の判定を行うことができる。具体的には、煽り運転判定部42は、例えば、位置情報により特定された場所が、煽り運転状態となると特に危険な場所であるかや煽り運転状態を誘発しやすいような場所であるか、あるいは、煽り運転状態と見誤るような場所であるかなどの判定を行うものとされている。なお、位置情報は、必要に応じて判定に用いればよく、位置情報を用いずに判定することも可能である。
【0054】
また、煽り運転判定部42は、速度検知部54で検知した車速に基づいて、煽り運転状態の判定を行うことができる。具体的には、煽り運転判定部42は、速度検知部54において検知した車両の速度変化が所定の速度変化の範囲を超えるものであることを条件として、運転者が煽り運転状態にあると判定するものとされている。より具体的には、煽り運転判定部42は、例えば、急激な車速変化が繰り返し発生している場合などに運転者が煽り運転状態にあると判定する。
【0055】
また、煽り運転判定部42は、加速度検知部55で検知した加速度に基づいて、煽り運転状態の判定を行うことができる。具体的には、煽り運転判定部42は、加速度検知部55において検知した車両の加速度変化が所定の加速度変化の範囲を超えるものであることを条件として、運転者が煽り運転状態にあると判定するものとされている。より具体的には、煽り運転判定部42は、例えば、急激な加速度変化が繰り返し生じている場合などに運転者が煽り運転状態にあると判定する。なお、煽り運転判定部42における判定は、音声受付部20で受け付けた音声や画像取得部10で取得した顔の表情に基づくものだけではなく、位置情報、車速、及び車両の加速度などに基づいて総合的に行うことができる。
【0056】
次に本発明の変形例に係る運転支援装置100の動作フローについて、図4及び図5を参照しながら説明する。なお、上述した実施形態と同様の動作フローについては、説明を一部省略する。
【0057】
図4に示すように、運転支援装置100の動作が開始されると、煽り運転状態の推定が行われる(ステップS20)。ここでの煽り運転状態の推定は、車両側の挙動に基づいて行われる。具体的には、煽り運転状態の推定は、例えば、車両のアクセル開度、ブレーキの作動状態、車速、加速度センサ、車間距離などの情報に基づいて行われる。
【0058】
ステップS20において、煽り運転状態ではないと推定された場合は、処理を終了させ、ステップS20の処理に戻される。ステップS20において、煽り運転状態であると推定された場合は、画像取得部10において運転者の顔の画像の取得が開始される(ステップS21)。ステップS21において画像が取得されると、画像処理部41が、画像処理を開始し、運転者の顔の表情が認識される。
【0059】
続いて、煽り運転判定部42は、画像認識した顔の表情から煽り運転か否かの推定を行う(ステップS22)。ステップS22において、煽り運転ではないと推定した場合は、処理をステップS20に戻す。一方、ステップS22において、煽り運転であると推定した場合は、音声チャットによる対話が許可される。具体的には、問い掛け部30による問い掛けが行われる(ステップS23)。
【0060】
続いて、運転者の発話による音声の受け付けが開始され、運転者からの音声に所定のキーワードが含まれるか否かの判定が行われる(ステップS24)。ステップS24において、運転者からの音声に上述した所定のキーワードが含まれていないと判定した場合は、処理がステップS20に戻される。一方、ステップS24において、運転者からの音声に上述した所定のキーワードが含まれていると判定した場合は、煽り運転であると断定する(ステップS25)。
【0061】
続いて、音声対話処理(ステップS100)のサブルーチン処理が行われる。図5に示すように、ステップS100における音声対話処理では、音声アシスタント発話が行われる。具体的には、問い掛け部30が、「煽り運転になっていますよ」、「落ち着いて下さい」、「安全運転で行きましょう」等の発話による問い掛けを行うものとされている(ステップS101)。なお、ステップS101は、必要に応じて、上記の発話を複数回繰り返すことができる。また、ステップS101における発話は、予め録音(登録)された家族(近親者)の声を再生するものでもよい。家族の声の再生では、例えば、「パパ。安全運転お願いね。」といった音声が再生される。
【0062】
以上のステップS100における音声対話処理のサブルーチン処理が終了すると、処理がメインルーチンにおける処理(図4参照)に戻されると共に、一連の処理が終了して、処理がステップS20に戻される。なお、一連の処理を終了させる場合は、処理をステップS10に戻さずに、運転支援装置100の動作を終了させる。
【0063】
以上が、本発明の変形例に係る運転支援装置100の動作フローであり、次に、変形例に係る運転支援装置100についての作用効果について以下に説明する。なお、上述した運転支援装置1と同様の効果については、説明を省略する。
【0064】
上述した本発明の変形例に係る運転支援装置100は、速度検知部54において検知した車両の速度変化が所定の速度変化の範囲を超えるもの、又は加速度検知部55において検知した車両の加速度変化が所定の加速度変化の範囲を超えるものであることを条件として、運転者が煽り運転状態にあると判定するものとされている。従って、上述した運転支援装置100は、車両の挙動変化も含めて煽り運転の判定を行うことができるので、より精度良く運転者の煽り運転状態を検知することができる。これにより、上述した運転支援装置100は、運転者に対して煩雑に問い掛けが行われることをより一層低減できるので、運転者の気持ちを害することをより一層抑制できる。
【0065】
以上が、本発明の変形例に係る運転支援装置1の動作フロー及び作用効果であるが、本発明の運転支援装置1,100は、上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変形を行うことができる。
【0066】
本実施形態では、煽り運転判定部42において、音声受付部20で受け付けた音声、及び画像取得部10で取得した運転者の顔に係る画像に基づいて運転者が煽り運転状態にあるか否かの判定を行うものとしているが、本発明の運転支援装置1は、これには限定されない。煽り運転判定部42における判定は、各種の煽り運転判定手段を用いて行うことができる。また、煽り運転判定手段は、単一の手段や、複数の手段を組み合わせたものなど各種の形態の手段を用いることができる。
【0067】
また、本変形例では、速度検知部54において検知した前記車両の速度変化が所定の速度変化の範囲を超えるもの、又は加速度検知部55において検知した車両の加速度変化が所定の加速度変化の範囲を超えるものであることを条件として、運転者が煽り運転状態にあると判定することを例示したが、これらの条件は、車両の特性等に応じて適宜変更することができる。
【0068】
また、本実施形態では、音声受付部20で受け付けた運転者の発話に所定のキーワードが含まれることを条件として、運転者が煽り運転状態にあると判定しているが、前記キーワードには、各種の内容のものを採用することができる。
【0069】
また、本実施形態では、煽り運転判定部42において、運転者の怒った表情に基づいて、運転者が煽り運転状態にあると判定しているが、これには限定されず、上述した運転支援装置1は、運転者の各種の表情に基づいて、煽り運転状態の判定を行うことができる。また、本実施形態では、画像取得部10において、運転者の顔の画像を取得するものとしたが、画像取得部10で取得する画像は、運転者の興奮状態を検知できる各種の画像を採用できる。例えば、画像取得部10で取得する画像は、運転者の顔に加えて、あるいは、運転者の顔に代えて、運転者の身体の各種の部位の画像を含めることができる。
【0070】
本実施形態では、問い掛け部30が、予め登録された前記運転者の近親者の発話による音声により問い掛けを行うものを例示したが、近親者の発話による音声を採用するものだけではなく、各種の形態の音声を用いることができる。例えば、問い掛け部30が、運転者が飼育する動物の声等を用いて警報等の音声を発するものとしてもよい。
【0071】
本実施形態では、問い掛け部30が、AIを用いたチャット又はチャットボットにより構成されているものを例示したが、問い掛け部30は、音声チャットやチャットボットがAIを用いるものには限定されず、各種の形態の音声チャットやチャットボットを用いることが可能である。例えば、問い掛け部30が、コネクトサービス等による人為的な音声チャットにより実現されていてもよい。
【0072】
以上が、本発明に係る運転支援装置1,100の各種の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の運転支援システムは、自動車や自動二輪車等の車両における煽り運転の抑制に利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 :運転支援装置
10 :画像取得部
20 :音声受付部
30 :問い掛け部
40 :制御部
41 :画像処理部
42 :煽り運転判定部
50 :表示部
51 :記憶媒体
52 :通信部
53 :位置情報取得部
54 :速度検知部
55 :加速度検知部
図1
図2
図3
図4
図5