(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156169
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】微小振動体の実装構造
(51)【国際特許分類】
G01C 19/5691 20120101AFI20231017BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20231017BHJP
B81B 7/02 20060101ALI20231017BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
G01C19/5691
B81B3/00
B81B7/02
H01L29/84 A
H01L29/84 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065865
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 英昭
(72)【発明者】
【氏名】川合 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 優輝
(72)【発明者】
【氏名】原田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 勝昭
【テーマコード(参考)】
2F105
3C081
4M112
【Fターム(参考)】
2F105AA02
2F105BB02
2F105BB03
2F105BB13
2F105BB14
2F105CC04
2F105CD03
2F105CD05
2F105CD13
3C081AA01
3C081BA01
3C081BA42
3C081BA46
3C081BA48
3C081BA75
3C081BA76
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3C081CA29
3C081CA33
3C081CA36
3C081DA06
3C081EA02
4M112AA02
4M112BA07
4M112CA22
4M112DA03
4M112DA04
4M112DA06
4M112DA09
4M112EA02
(57)【要約】
【課題】三次元曲面形状およびこれを覆う表面電極を有する微小振動体が実装基板に接合された実装構造にて、電極部のうち微小振動体と対向する面以外の面に起因するノイズを低減する。
【解決手段】環状曲面を有する曲面部21と、曲面部から曲面部の内側中心に延設された接続部22とを有する微小振動体2が搭載される実装基板3は、微小振動体2を囲むと共に、ガード電極534を有する複数の第1電極部53を備える。複数の第1電極部53は、曲面部21のうち接続部22とは反対側の端部であるリム211と対向する対向面531aを有する。複数の第1電極部53のうち対向面531aとは異なる面であって、少なくとも実装基板3とは反対側の上面531bを含む部分は、絶縁膜533と、絶縁膜533の上に形成され、第1電極部53とは電気的に独立したガード電極534と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小振動体の実装構造であって、
環状曲面を有する曲面部(21)と、前記曲面部から前記曲面部の内側中心に延設された接続部(22)とを有する微小振動体(2)と、
前記曲面部のうち前記接続部とは反対側の端部をリム(211)として、前記リムと対向すると共に、前記リムを囲みつつ、互いに距離を隔てて配置される複数の電極部(53)を有する実装基板(3)と、を備え、
前記微小振動体は、前記接続部が前記実装基板に接合されると共に、前記曲面部が他の部材と接触しない中空状態であり、
複数の前記電極部は、前記リムと向き合う対向面(531a)を有する基部(531)と、前記基部のうち前記対向面とは異なる面であって、少なくとも前記実装基板とは反対側の上面(531b)を含む部分を覆う絶縁膜(533)と、前記絶縁膜の上に形成され、少なくとも前記上面を覆うと共に、前記基部とは電気的に独立したガード電極(534)と、を有する、微小振動体の実装構造。
【請求項2】
複数の前記電極部は、前記基部を第1基部として、前記第1基部を挟んで前記リムとは反対側に配置される第2基部(532)をさらに有し、
前記第2基部は、少なくとも前記実装基板とは反対側の一面(532a)の上に前記絶縁膜および前記ガード電極がこの順で積層されると共に、導電層(43)により前記第1基部と電気的に接続されており、
前記ガード電極は、前記第2基部とは電気的に独立している、請求項1に記載の微小振動体の実装構造。
【請求項3】
前記第2基部は、前記第1基部と同一の材料で構成されている、請求項2に記載の微小振動体の実装構造。
【請求項4】
前記絶縁膜は、前記第2基部の前記一面の一部を露出させるコンタクトホール(533a)を有し、
前記コンタクトホールの内側には、前記第2基部のうち前記絶縁膜から露出する部分を覆いつつ、前記ガード電極とは電気的に独立した取り出し電極(535)が形成されている、請求項3に記載の微小振動体の実装構造。
【請求項5】
微小振動体の実装構造であって、
環状曲面を有する曲面部(21)と、前記曲面部から前記曲面部の内側中心に延設された接続部(22)とを有する微小振動体(2)と、
前記曲面部のうち前記接続部とは反対側の端部をリム(211)として、前記リムと対向すると共に、前記リムを囲みつつ、互いに距離を隔てて配置される複数の電極部(53)および複数のガード電極(55)と、を有する実装基板(3)と、を備え、
前記微小振動体は、前記接続部が前記実装基板に接合されると共に、前記曲面部が他の部材と接触しない中空状態であり、
複数の前記ガード電極は、隣接する前記電極部の間に少なくともと1つで配置されている、微小振動体の実装構造。
【請求項6】
複数の前記電極部は、前記リムと向き合う部分である対向部(5311)と、前記対向部を挟んで前記リムとは反対側に配置される端子部(5313)と、前記対向部と前記端子部とを繋ぐ部分であって、前記対向部および前記端子部よりも幅が狭い狭幅部(5312)とを有する基部(531)を備え、
前記対向部は、前記リムの側の端部の幅が前記狭幅部の側の端部よりも大きく、かつ前記狭幅部の側の端部の幅が最も小さい、請求項5に記載の微小振動体の実装構造。
【請求項7】
複数の前記ガード電極を第1ガード電極として、複数の前記電極部は、前記リムと向き合う対向面(531a)とは異なる面であって、少なくとも前記実装基板とは反対側の上面(531b)を含む部分を覆う絶縁膜(533)と、前記絶縁膜の上に形成され、少なくとも前記上面を覆うと共に、前記基部とは電気的に独立した第2ガード電極(534)と有する、請求項6に記載の微小振動体の実装構造。
【請求項8】
前記絶縁膜は、複数の前記第1ガード電極のうち少なくとも前記実装基板とは反対側の上面(55a)も覆うと共に、複数の前記電極部の前記上面の一部を露出させる第1のコンタクトホール(533b)と、複数の前記第1ガード電極の前記上面の一部を露出させる第2のコンタクトホール(533c)を有し、
前記第1のコンタクトホールの内側には、複数の前記電極部のうち前記絶縁膜から露出する部分を覆いつつ、前記第2ガード電極とは電気的に独立した取り出し電極(535)が形成されており、
前記第2のコンタクトホールの内側には、複数の前記第1ガード電極のうち前記絶縁膜から露出する部分を覆う端子電極(551)が形成されている、請求項7に記載の微小振動体の実装構造。
【請求項9】
前記微小振動体は、前記リム、および前記接続部のうち前記実装基板と向き合う実装面(22b)を覆う表面電極(23)を有し、
前記実装基板は、複数の前記電極部とは電気的に独立した配線(42)を有し、
前記表面電極は、前記配線と電気的に接続されている、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の微小振動体の実装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元曲面形状を有する微小振動体の実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の自動運転のシステム開発が進められており、この種のシステムでは、高精度の自己位置の推定技術が必要である。例えば、いわゆるレベル3の自動運転向けに、GNSS(Global Navigation Satellite Systemの略)とIMU(Inertial Measurement Unitの略)とを備える自己位置推定システムの開発が進められている。IMUは、例えば、3軸のジャイロセンサと3軸の加速度センサから構成される6軸の慣性力センサである。将来的に、いわゆるレベル4以上の自動運転を実現するためには、現状よりもさらに高感度のIMUが求められる。
【0003】
このような高感度のIMUを実現するためのジャイロセンサとしては、BRG(Bird-bath Resonator Gyroscopeの略)が有力視されており、ワイングラスモードで振動する略半球形状の三次元曲面を有する微小振動体が実装基板に搭載されてなる。この微小振動体は、振動の状態を表すQ値が106以上に達するため、従来よりも高感度が見込まれる。
【0004】
この種の微小振動体と実装基板との実装構造としては、例えば、特許文献1に記載のものが挙げられる。この実装構造は、微小振動体のうち略半球形の三次元曲面の頂点付近からその半球の内側中心に向かって延設された柱状の接合部が、実装基板のうち略環状枠体に囲まれた接合領域に挿入されている。この実装構造は、微小振動体の全面を覆う表面電極と実装基板の接合領域に形成された配線とが接合されており、実装基板の当該配線を介して微小振動体の表面電極に所定の電圧を印加可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第107036705号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このBRGは、実装基板に形成された配線を介して、当該配線と電気的に接続された接合領域に接合された微小振動体の表面電極に電圧を印加して微小振動体を振動させつつ、対向する微小振動体の表面電極と実装基板の電極部との間の静電容量を検出する。しかし、本発明者らの鋭意検討によれば、実装基板の電極部のうち微小振動体と対向する面以外からも微小振動体の側面に対して電気的な影響を及ぼしており、検出される静電容量にノイズとして重畳されることが懸念される。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑み、三次元曲面形状およびこれを覆う表面電極を有する微小振動体が実装基板に接合された実装構造にて、電極部のうち微小振動体と対向する面以外の面に起因するノイズを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の微小振動体の実装構造は、微小振動体(2)の実装構造であって、環状曲面を有する曲面部(21)と、曲面部から曲面部の内側中心に延設された接続部(22)とを有する微小振動体と、曲面部のうち接続部とは反対側の端部をリム(211)として、リムと対向すると共に、リムを囲みつつ、互いに距離を隔てて配置される複数の電極部(53)を有する実装基板(3)と、を備え、微小振動体は、接続部が実装基板に接合されると共に、曲面部が他の部材と接触しない中空状態であり、複数の電極部は、リムと向き合う対向面(531a)を有する基部(531)と、基部のうち対向面とは異なる面であって、少なくとも実装基板とは反対側の上面(531b)を含む部分を覆う絶縁膜(533)と、絶縁膜の上に形成され、少なくとも上面を覆うと共に、基部とは電気的に独立したガード電極(534)と、を有する。
【0009】
この実装構造は、三次元曲面を有する微小振動体と、実装基板に配置され、微小振動体のリムを囲みつつ、互いに離れて配置された複数の電極部とを有し、複数の電極部の一部が当該電極部とは電気的に独立したガード電極に覆われている。このガード電極は、複数の電極部のうち微小振動体のリムと対向する対向面とは異なる面であって、実装基板とは反対側の面である上面を少なくとも覆っている。これにより、複数の電極部に電圧を印加した際に、複数の電極部の上面から微小振動体に向かう電気力線がガード電極により遮蔽され、当該上面に起因する微小振動体への電気的影響が低減される。そのため、この実装構造は、複数の電極部のうち微小振動体と対向する面以外の面に起因するノイズが低減される。
【0010】
請求項5に記載の微小振動体の実装構造は、微小振動体(2)の実装構造であって、環状曲面を有する曲面部(21)と、曲面部から曲面部の内側中心に延設された接続部(22)とを有する微小振動体と、曲面部のうち接続部とは反対側の端部をリム(211)として、リムと対向すると共に、リムを囲みつつ、互いに距離を隔てて配置される複数の電極部(53)および複数のガード電極(55)と、を有する実装基板(3)と、を備え、微小振動体は、接続部が実装基板に接合されると共に、曲面部が他の部材と接触しない中空状態であり、複数のガード電極は、隣接する電極部の間に少なくとも1つ配置されている。
【0011】
この実装構造は、三次元曲面を有する微小振動体と、実装基板に配置され、微小振動体のリムを囲みつつ、互いに離れて配置された複数の電極部および複数のガード電極とを有し、ガード電極が隣接する電極部の間に少なくとも1つ配置されている。隣接する電極部の間に少なくとも1つのガード電極が配置されることで、複数の電極部のうち微小振動体のリムと対向する対向面とは異なる面であって、実装基板とは反対側の面である上面の面積が、当該ガード電極を有しない場合に比べて相対的に小さくなる。その結果、複数の電極部に電圧を印加した際に、当該上面から微小振動体に向かう電気力線が上面の面積減少分だけ減少し、電気的影響が低減される。これにより、この実装構造は、複数の電極部のうち微小振動体と対向する面以外の面に起因するノイズが低減される。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の慣性センサを示す斜視図である。
【
図2】
図1の慣性センサの一断面を含む斜視断面図である。
【
図5A】比較例の実装構造における電極部の上面に起因するノイズ発生を説明するための説明図である。
【
図5B】比較例の実装構造における微小振動体の励振に伴う電気力線の変化を説明するための説明図である。
【
図6A】微小振動体の形成工程のうち部材の用意工程を示す断面図である。
【
図6B】
図6Aに続く微小振動体の形成工程を示す断面図である。
【
図6C】
図6Bに続く微小振動体の形成工程を示す断面図である。
【
図7A】第1実施形態の慣性センサの製造工程のうち実装基板の形成の一工程を示す断面図である。
【
図10】第2実施形態の慣性センサを示す上面レイアウト図である。
【
図12】
図11に相当する図であって、第2実施形態の慣性センサの変形例を示す断面図である。
【
図13】他の実施形態に係る慣性センサの一例を示す上面レイアウト図である。
【
図14】他の実施形態に係る慣性センサの一例を示す上面レイアウト図である。
【
図15】
図3に相当する図であって、他の実施形態に係る慣性センサの一例を示す断面図である。
【
図16】
図2に相当する図であって、他の実施形態に係る慣性センサの一例を示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態の実装構造1について、図面を参照して説明する。本実施形態の実装構造1は、ワイングラスモードで振動する微小振動体2を有し、微小振動体2の振動特性を利用した各種デバイス、例えば、BRG等のジャイロセンサ等の慣性センサに適用されると好適である。本明細書では、実装構造1がBRGに適用された場合を代表例として説明するが、この用途に限定するものではない。
【0016】
図1では、後述する微小振動体2および実装基板3の構成を分かり易くするため、微小振動体2および実装基板3の外郭のうち
図1、2に示す角度から見えない部分については破線もしくは二点鎖線で示している。
【0017】
以下、説明の便宜上、
図1に示すように、実装基板3のなす平面方向における一方向であって、外郭の一辺に沿った方向を「x方向」と、同平面方向においてx方向に直交する方向を「y方向」と、xy平面に対する法線方向を「z方向」と、それぞれ称する。
図2以降の図中のx、y、z方向は、
図1のx、y、z方向にそれぞれ対応するものである。また、本明細書における「上」とは、図中のz方向に沿った方向であって、矢印側を意味し、「下」とは上の反対側を意味する。さらに、本明細書では、z方向上側から実装構造1または実装基板3を見た状態を「上面視」と称することがある。
【0018】
本実施形態の実装構造1は、例えば
図1に示すように、微小振動体2と、実装基板3とを備え、微小振動体2の一部が実装基板3に接合されてなる。実装構造1は、ワイングラスモードで振動することが可能な薄肉の微小振動体2と実装基板3のうち後述する複数の電極部53との間における静電容量の変化に基づき、実装構造1に印加された角速度を検出する構成となっている。
【0019】
微小振動体2は、例えば
図2ないし
図4に示すように、半球形状の三次元曲面の外形を含む曲面部21と、曲面部21のなす仮想半球の頂点側から当該半球の内側中心に向かうように延設された接続部22とを備える。接続部22は、例えば、有底筒状の凹部となっている。微小振動体2は、例えば、曲面部21が椀状の三次元曲面を有し、その振動のQ値が10
5以上となっている。
【0020】
曲面部21のうち接続部22とは反対側の端部をリム211として、リム211は、例えば、略円筒形状とされる。微小振動体2は、例えば、実装基板3に搭載された際に、リム211が、表面2a側が実装基板3のうち後述する複数の電極部53と向き合うと共に、複数の電極部53の間隔が等間隔となるように搭載される。微小振動体2は、実装基板3への実装時において、リム211を含む曲面部21が他の部材とは接触しない中空状態となっている。微小振動体2は、実装基板3に搭載されたとき、複数の電極部53への電圧印加により、中空状態のリム211がワイングラスモードで振動可能な構造となっている。
【0021】
微小振動体2は、例えば、
図3や
図4に示すように、外径が大きいほうの面を表面2aとし、その反対面を裏面2bとして、この両面の一部または全部を覆う表面電極23を有する。微小振動体2は、接続部22のうち裏面2b側の面が実装基板3と向き合う実装面22bとなっている。微小振動体2は、本実施形態では、接続部22の底面のうち実装面22bとは反対の面が微小振動体2の吸着搬送に用いられる吸着面22aとなっている。
【0022】
表面電極23は、例えば、限定するものではないが、下地側からCr(クロム)あるいはTi(チタン)と、Au(金)やPt(白金)等の任意の導電性材料との積層膜、またはTiN(窒化チタン)等の基材と密着性のある導電性材料の単層膜で構成される。表面電極23は、例えば、スパッタリングや蒸着、ALD(原子層堆積法)等の任意の成膜法により微小振動体2の表面2aおよび裏面2bに成膜される。表面電極23は、本実施形態では、少なくとも実装面22b、およびリム211の表面2aもしくは裏面2bに成膜され、これらの部位が電気的に接続される構成となっている。表面電極23は、微小振動体2の表裏面の全域を覆うベタ形状であってもよいし、前述の構成となるようにパターニングされ、表裏面の一部を覆うパターン形状であってもよい。微小振動体2は、表面電極23のうち接続部22の実装面22bを覆う部分が、実装基板3のうち後述するブリッジ配線42と接合部材52を介して接続される。
【0023】
微小振動体2は、例えば、石英、ホウケイ酸ガラスなどの添加物含有のガラス、金属ガラス、シリコンやセラミック等の材料で構成される。なお、微小振動体2は、三次元曲面形状とされた曲面部21および接続部22を形成でき、ワイングラスモードでの振動が可能なものであればよく、前述の材料に限定されない。微小振動体2は、例えば、後述する形成工程により、上記した材料で構成された薄肉基材を加工して形成されることで、曲面部21および接続部22の厚みが10μm~100μmといった具合のマイクロメートルオーダーの薄肉部材となっている。微小振動体2は、例えば、実装基板3の厚み方向に沿った方向を高さ方向として、高さ方向の寸法が2.5mm、リム211の表面2a側の外径が5mmといったミリサイズの形状となっている。微小振動体2の形成工程については、後述する。
【0024】
実装基板3は、例えば
図1に示すように、下部基板4と、上部基板5とを備え、これらが接合された構成となっている。例えば、実装基板3は、絶縁材料のホウケイ酸ガラスにより構成された下部基板4に、半導体材料のSi(シリコン)により構成された上部基板5を陽極接合することで得られる。実装基板3は、例えば、上部基板5の側に、内枠部51と、内枠部51を囲むように互いに離れて配置された複数の第1電極部53と、電極部53よりも外側において互いに離れて配置された第2電極部54とを備える。また、実装基板3は、下部基板4側に、例えば、内枠部51と複数の第1電極部53とを隔てつつ、内枠部51を囲む円環形状の溝41と、溝41の内側と外側とを跨ぐ複数のブリッジ配線42とを備える。
【0025】
溝41は、例えば、
図3や
図4に示すように、内枠部51と複数の第1電極部53との間に設けられる溝であり、ウェットエッチング等により形成される。溝41は、例えば、微小振動体2のリム211の外径に対応する寸法とされ、微小振動体2を実装基板3に実装したときに、リム211を実装基板3に接触させないために設けられる。
【0026】
ブリッジ配線42は、例えば、複数形成されると共に、Al(アルミニウム)等の導電性材料により構成される。複数のブリッジ配線42は、いずれも、複数の第1電極部53の間を通過する配置とされ、複数の第1電極部53とは電気的に独立している。ブリッジ配線42は、例えば
図3や
図4に示すように、下部基板4においてエッチング溝41を跨ぐと共に、一端側が内枠部51に囲まれた内側領域に配置され、他端が第2電極部54に接続されている。ブリッジ配線42は、一端が内枠部51の内側において微小振動体2の表面電極23に接続されており、表面電極23と第2電極部54とを電気的に接続する。
【0027】
内枠部51は、上面視にて、例えば、全体として1つの円環形状となす形状とされ、その内側には微小振動体2の接続部22が挿入される。内枠部51は、例えば
図3や
図4に示すように、少なくともその外側が微小振動体2に当接しない寸法となっている。なお、内枠部51は、例えば、1つの円環枠体をその周方向に沿って複数個に分割して得られる構成であってもよい。また、内枠部51は、その内側の寸法が微小振動体2の接続部22の裏面2b側における外径および外形に合わせた寸法、形状とされ、微小振動体2を実装基板3に搭載する際の位置決め治具として機能する構成であってもよい。
【0028】
接合部材52は、微小振動体2と実装基板3との接合に用いられる導電性材料であり、ブリッジ配線42の一端と微小振動体2の表面電極23とを電気的に接続する。接合部材52は、例えば、AuSn(金錫)、Ag(銀)、Auなどの導電性材料を有してなるペースト状の導電材とされ、シリンジ等を用いて内枠部51に囲まれた領域に塗布される。
【0029】
複数の第1電極部53は、例えば
図1に示すように、溝41の外周側の位置において、内枠部51および微小振動体2を囲むように互いに離れて配置されている。複数の第1電極部53の一部は、電圧が印加されることで微小振動体2への静電引力を生じさせ、微小振動体2を駆動振動させる駆動電極として機能する。複数の第1電極部53の一部は、微小振動体2のリム211と対向する部位がリム211と共にキャパシタを形成し、キャパシタの静電容量を検出する検出電極として機能する。
【0030】
複数の第1電極部53は、例えば
図2に示すように、リム211と向き合う第1基部531と、第1基部531を挟んでリム211とは反対側に配置された第2基部532とを有する。複数の第1電極部53は、例えば、第1基部531および第2基部532を覆う絶縁膜533と、絶縁膜533上に配置されるガード電極534と、第2基部532上に配置される取り出し電極535とをさらに備える。
【0031】
複数の第1電極部53は、第1基部531のうち少なくともリム211と向き合う対向面531aが絶縁膜533およびガード電極534から露出している。複数の第1電極部53は、例えば
図1に示すように、第1基部531については対向面531aとは異なる部分すべてが絶縁膜533およびガード電極534に覆われている。また、複数の第1電極部53は、例えば、第2基部532については第1基部531とは反対側の面以外の部分すべてが絶縁膜533およびガード電極534に覆われている。第1基部531および第2基部532は、例えば、下部基板4側に形成された導電層43の上に配置されており、導電層43を介して電気的に接続されている。これにより、複数の第1電極部53は、
図3に示すように、第2基部532の一面532a上に設けられた取り出し電極535に電圧を印加することで、導電層43を介して第1基部531に電圧を印加することが可能となっている。
【0032】
第1基部531および第2基部532は、例えば、上部基板5を構成する導電性シリコン基板にエッチングを施すことにより分離形成されるものであり、同一の材料で構成される。第1電極部53を2つの基部に分けた構成とする場合には、1つの大きな基部で第1電極部53を構成する場合に比べて、下部基板4と上部基板5との接合面積が小さくなり、下部基板4にかかる熱応力が低減される効果が得られる。
【0033】
絶縁膜533は、例えば、TEOS(tetra ethoxy silane)などの絶縁性材料により構成されており、プラズマCVD(化学気相成長法)などにより形成される。絶縁膜533は、第1基部531の対向面531aとは異なる領域であって、少なくとも第1基部531の上面531bを含む所定の領域、および第2基部532の表面に形成されている。これにより、ガード電極534と、第1基部531および第2基部532とが電気的に独立した構成となっている。
【0034】
ガード電極534は、絶縁膜533上であって、少なくとも第1基部531の上面531bを覆う導電膜である。ガード電極534は、例えば、AuやAl等の任意の導電性材料により構成され、スパッタリング等により取り出し電極535と同一の工程で形成される。ガード電極534は、例えば、図示しないワイヤ等が接続され、外部からの電位調整が可能となっている。ガード電極534は、第1基部531のうち対向面531aとは異なる面から微小振動体2のリム211への電気的作用を遮蔽し、静電容量の検出におけるノイズを低減させ、静電容量の検出精度を向上させる役割を果たす。言い換えると、ガード電極534は、第1電極部53の対向面531aとリム211とのギャップ間に電場を集中させ、第1電極部53のうち対向面531aとは異なる箇所からの意図しない電場が生じることを抑制する。この詳細については後述する。
【0035】
取り出し電極535は、第2基部532の一面532aのうち絶縁膜533のコンタクトホール533a内に形成される導電膜であり、第2基部532を介した第1基部531の電圧印加および静電容量の検出に用いられる。取り出し電極535は、ガード電極534とは電気的に独立すると共に、図示しないワイヤ等が接続され、外部との電気的なやり取りが可能となっている。
【0036】
第2電極部54は、例えば
図1に示すように、実装基板3のうち第1電極部53よりも外周側に配置され、微小振動体2の表面電極23への電圧印加に用いられる。第2電極部54は、例えば
図3に示すように、基部541と、この一部を覆う電極パッド542とを備える。第2電極部54は、例えば、配線42と同数形成されると共に、基部541が配線42のうち微小振動体2とは反対側の他端上に配置されており、配線42と電気的に接続されている。これにより、第2電極部54は、電極パッド542、基部541、配線42および接合部材52を介して、微小振動体2の表面電極23への電圧印加が可能となっている。
【0037】
基部541は、例えば、上部基板5を構成する導電性シリコンにエッチングを施すことにより内枠部51および第1電極部53と分離された部位である。電極パッド542は、例えば、ガード電極534および取り出し電極535と同一の任意の導電性材料により構成され、スパッタリング等によりこれらと同一の工程で形成される。電極パッド542は、例えば、取り出し電極535と同様に、図示しないワイヤ等が接続され、外部との電気的なやり取りが可能となっている。
【0038】
以上が、本実施形態の実装構造1の基本的な構成である。実装構造1は、第1電極部53のうち少なくとも上面531bが、第1基部531とは電気的に独立したガード電極534に覆われることで、上面531bからリム211の上方側面への電気的影響を低減する。
【0039】
〔ガード電極の効果〕
次に、ガード電極534によるノイズ低減について説明する。まず、
図5Aに示すガード電極534を有しない比較例の実装構造100におけるノイズ発生について説明する。
【0040】
比較例の実装構造100は、例えば
図5Aに示すように、微小振動体2が実装基板101に接合され、微小振動体2の曲面部21が他の部材とは接触しない中空状態となっている。実装基板101は、微小振動体2のリム211と所定の距離を隔てて対向する複数の第1電極102を有し、第1電極102が微小振動体2の駆動電極および静電容量の検出電極として機能する。第1電極102は、図示しないワイヤ等が接続され、外部と電気的なやり取りが可能となっているが、上面にガード電極を有していない。
【0041】
比較例の実装構造100は、図示しない配線等により微小振動体2に直流電圧を印加しつつ、第1電極102に交流電圧を印加することで、微小振動体2の曲面部21を励振させつつ、微小振動体2のリム211と第1電極102との静電容量を検出する。
【0042】
電極等に交流電圧、すなわち交流の駆動信号を印加すると、一般に電磁誘導放射ノイズが発生する。ここで、第1電極102の電荷をQ、静電容量をC、電圧をVとすると、Q=CVとなる。また、第1電極102への交流の駆動信号を印加する際における電流をi、時間をtとすると、第1電極102の電荷Qは、以下の式で表される。
【0043】
【数1】
また、数式1を時間tで微分すると、次式が得られる。
【0044】
【数2】
また、電圧Vにはノイズが含まれるため、信号成分をV
Sとし、ノイズ成分をV
nとすると、V=V
S+V
nが成立する。この式を上記の数式2に代入すると、次式が得られる。
【0045】
【数3】
ここで、第1電極102は、例えば
図5Aに示すように、リム211と平行に向き合う面において電気力線E1が生じる一方で、その上面においてリム211のz方向における上方側面に向かう電気力線E2が生じる。第1電極102の静電容量Cおよび電荷Qは、リム211のz方向下端側とのギャップ部分の静電容量C
g、電荷Q
gと、リム211のz方向における上方側面とのフリンジ効果分の静電容量C
f、電荷Q
fとに分けられる。つまり、C=C
g+C
f、Q=Q
g+Q
fと考えることができる。これらの式を数式3に代入すると、次式が得られる。なお、フリンジ効果とは、対向する電極面の周辺部分が電気特性に影響を与える効果であり、「エッジ効果」や「端効果」などとも称される。
【0046】
【数4】
また、電気力線E1、E2は、微小振動体2の励振によりその長さの変化度合いが異なる。具体的には、例えば
図5Bに示すように、励振している微小振動体2の曲面部21が最も第1電極102に近いときの電気力線E1、E2をそれぞれE11、E21とする。また、励振している微小振動体2の曲面部21が最も第1電極102から遠いときの電気力線E1、E2をそれぞれE12、E22とする。
【0047】
なお、
図5Bでは、励振している微小振動体2のうち曲面部21の表面2a側の外郭の一部のみを示すと共に、当該外郭の一部であって、最も第1電極102に近いときのものを実線で、最も第1電極102から遠いときのものを破線で、それぞれ示している。
【0048】
このとき、電気力線E1は、第1電極102の対向面102aとリム211との距離をd1として、d1が短いため、微小振動体2の励振による電気力線E1の長さの変化割合、すなわち電気力線E1全体に対する電気力線E11、E12の差分の割合が大きい。これに対して、電気力線E2は、第1電極102の上面102bとリム211の上方側面との距離をd2として、d2がd1よりも長いため、微小振動体2の励振による電気力線E2の長さの変化割合が電気力線E1に比べて相対的に小さい。電気力線E2の長さの変化割合とは、電気力線E2全体に対する電気力線E21、E22の差分の割合である。そのため、フリンジ効果分の静電容量Cfの時間変化が小さいと仮定し、dCf/dt=0を数式4に代入すると、次式が得られる。
【0049】
【数5】
数式5によれば、比較例の実装構造100は、フリンジ効果分の静電容量C
fがあるため、右辺の第三項のうちC
f・dV
n/dtがノイズ成分となり、電流iに重畳されることとなる。
【0050】
これに対し、第1実施形態の実装構造1は、第1電極部53の第1基部531の上面531bがガード電極534により覆われているため、上面531bからリム211の上方側面に向かう電気力線E2が遮蔽される。そのため、フリンジ効果による静電容量Cfが低減され、ひいてはノイズ成分であるCf・dVn/dtが低減される。その結果、第1電極部53のうち検出電極における電流iに重畳されるノイズ成分が低減され、対向面531aとリム211との静電容量の検出精度が向上する。
【0051】
〔実装構造の製造方法〕
次に、本実施形態の実装構造1の製造方法の一例について説明する。まず、微小振動体2は、例えば、次のような工程により形成される。
【0052】
まず、例えば
図6Aに示すように、石英板20、三次元曲面形状を形成するための型M0および型M0を冷却するための冷却体C0を用意する。型M0は、例えば、石英板20に三次元曲面形状を形成する際のスペースとなる凹部M1と、凹部M1の中心において、凹部M1の深さ方向に沿って延設され、加工時に石英板20の一部を支える支柱部M2とを備える。型M0は、凹部M1の底面に減圧用の貫通孔M11が形成されている。冷却体C0は、型M0が嵌め込まれる嵌め込み部C1と、嵌め込み部C1の底面に排気用の排気口C11とを備え、石英板20を加工する際に型M0を冷却する役割を果たす。石英板20は、型M0の凹部M1の全域を覆うように配置される。
【0053】
続けて、例えば
図6Bに示すように、石英板20に向けてトーチTから火炎Fを吹きかけ、石英板20を溶融させる。このとき、型M0の凹部M1は、図示しない真空機構により冷却体C0の排気口C11を通じて真空引きされている。これにより、石英板20のうち溶融した部分は、凹部M1の底面に向かって引き延ばされると共に、その中心周辺領域が支柱部M2により支えられた状態となる。その後、石英板20の加熱をやめて冷却することで、石英板20は、略半球形の三次元曲面形状とされた曲面部位201と、曲面部位201の中心近傍で凹むと共に、突起部M21の外形に追従する凹部位202とが形成される。また、石英板20は、凹部M1の外側に位置する部分が、曲面部位201の外周端に位置し、平坦形状とされた端部203となる。
【0054】
次いで、型M0の凹部M1を常圧に戻し、加工後の石英板20を取り外し、例えば
図6Cに示すように、任意の硬化性樹脂材料によりなる封止材Eで石英板20を封止する。その後、例えば、封止材Eを端部203側の面から
図6Cの一点鎖線で示す部分まで研磨およびCMP(Chemical Mechanical Polishingの略)を行い、封止材Eごと端部203を除去する。これにより、石英板20は、環状曲面を有する曲面部21と、曲面部21の頂点から凹んだ接続部22とを有する形状となる。
【0055】
そして、加熱や薬液を用いた溶解等の任意の方法により、封止材Eをすべて除去し、石英板20を取り出す。最後に、例えば、スパッタリングや蒸着等の成膜プロセスにより、上記した加工後の石英板20の表裏面の両面に表面電極23を形成する。表面電極23は、必要に応じて、図示しないマスク等を用いる等の公知の方法によりパターニングされてもよい。
【0056】
なお、微小振動体2は、例えば、上記のような製造プロセスにより製造されるが、この製法例に限定されるものではない。例えば、
図6Bに示す石英板20を溶融するための熱源は、トーチTによる火炎Fに代わって、火炎Fを用いた場合と同等面積で石英板20を加熱できるヒータであってもよい。このように、微小振動体2の製造工程については、適宜変更されてもよく、他の公知の方法が採用されても構わない。
【0057】
また、微小振動体2は、Z方向を回転軸として回転対称な略ハーフトロイダル形状とされるが、曲面部21が椀状の三次元曲面形状を有し、ワイングラスモードで振動可能な構成であればよく、図示したBRの形状にのみ限定されるものではない。例えば、接続部22は、有底筒状の凹部のほか、柱状の形状とされてもよい。なお、BRとは、Bird-bath Resonatorの略である。
【0058】
【0059】
まず、下部基板4となる絶縁性のガラス基板を用意し、例えば
図7Aに示すように、エッチングにより溝41を形成した後に、図示しないマスクを用いたスパッタリング等により配線42および導電層43を形成する。
【0060】
続いて、例えば
図7Bに示すように、導電性シリコン等によりなる上部基板5を用意し、下部基板4のうち溝41等を形成した側の面と陽極接合を行う。
【0061】
その後、例えば
図7Cに示すように、上部基板5にDRIE等によりトレンチエッチングを行い、下部基板4を部分的に露出させ、後ほど形成される複数の第1電極部53の構成要素である複数の第2基部532を含む領域を上部基板5の他の領域から分離させる。なお、DRIEとは、Deep Reactive Ion Etchingの略である。
【0062】
そして、例えば、プラズマCVD法等により、
図7Dに示すように、上部基板5および下部基板4のうち上部基板5から露出する部分を覆うTEOSで構成された絶縁膜533を形成する。
【0063】
次いで、例えば、フォトリソグラフィー法により所定のパターン形状とされた図示しないレジスト膜を成膜し、ドライエッチングを行って絶縁膜533の一部を除去した後に、図示しないレジスト膜を除去する。これにより、例えば
図8Aに示すように、上部基板5を覆う絶縁膜533のうち第2基部532となる領域の一部を露出させるコンタクトホール533aを形成し、上部基板5のうち後の第2電極部54となる領域を絶縁膜533から露出させる。また、このとき、第2基部532の一面532aとなる領域のうち取り出し電極535を形成する予定の領域以外の領域は、例えば
図9Aに示すように、絶縁膜533に覆われた状態となっている。
【0064】
続けて、図示しないマスクを用いてスパッタリング等を行うことにより、例えば
図8Bや
図9Bに示すように、上部基板5および絶縁膜533を覆う金属膜Mを形成する。
【0065】
その後、例えば、フォトリソグラフィーエッチング法により金属膜Mのパターニングを行い、金属膜Mのうち上部基板5のうち絶縁膜533から露出した部分と絶縁膜533を覆う部分とを分離し、これらを電気的に独立した状態とする。これにより、例えば
図8Cや
図9Cに示すように、後の第2電極部54を覆う電極パッド542と、第1基部531となる部分を覆うガード電極534と、第2基部532の一部を覆う取り出し電極535とが形成される。また、電極パッド542、ガード電極534および取り出し電極535は、金属膜Mのうち絶縁膜533を覆う部分とは電気的に絶縁される。なお、このとき、金属膜Mのうち絶縁膜533を覆う部分は、例えば、後の内枠部51および第1基部531となる領域、並びに第1基部531と第2基部532とを跨ぐ部分の上に残された状態とされる。
【0066】
そして、例えば、
図8Dや
図9Dに示すように、絶縁膜533のうち取り出し電極535および電極パッド542の近傍領域を除き、金属膜Mから露出する部分を上記と同様にドライエッチング等により除去し、上部基板5の一部を露出させる。
【0067】
次いで、例えば、DRIE等のトレンチエッチングにより、
図8Eや
図9Eに示すように、上部基板5の不要な部分を除去して下部基板4の一部を露出させつつ、内枠部51と、第1電極部53を構成する第1基部531とを分離させる。これにより、溝41、配線42、第1電極部53および第2電極部54を有する実装基板3が得られる。
【0068】
続けて、例えば、実装基板3を図示しないマウンタ装置に吸着固定し、実装基板3のうち内枠部51に囲まれた領域に接合部材52を配置する。そして、例えば、図示しない搬送装置により微小振動体2を搬送し、接合部材52上に接続部22の実装面22bを接触させ、接合部材52を固化することで微小振動体2を搭載することができる。例えば、微小振動体2の吸着面22aに図示しない搬送装置の真空吸着可能な把持機構を接触させ、真空吸着を行うことで微小振動体2を搬送することができる。また、図示しないマウンタ装置の加熱機構により実装基板3を加熱し、微小振動体2を搭載後に冷却し、接合部材52を固化させることで、微小振動体2が実装基板3に接合される。
【0069】
なお、微小振動体2の実装基板3に対する位置合わせについては、例えば、微小振動体2および実装基板3を撮像し、公知の画像処理技術によりエッジ検出により特徴点を抽出することで、相対位置を調整するといった方法で行うことができる。
【0070】
その後、例えば
図8Fや
図9Fに示すように、ガード電極534、取り出し電極535および電極パッド542のそれぞれにワイヤボンディングによりワイヤWを接続する。
【0071】
以上の工程により、本実施形態の実装構造1を有する慣性センサを製造することができる。
【0072】
本実施形態によれば、第1電極部53のうち微小振動体2のリム211と対向する第1基部531の上面531bがガード電極534により覆われ、上面531bからリム211の上方側面に向かう電気力線を遮蔽可能な実装構造1となる。そのため、この実装構造1は、複数の第1電極部53のうち微小振動体2と対向する対向面531a以外の面に起因するノイズが低減され、静電容量の検出精度が向上する効果が得られる。
【0073】
(第2実施形態)
第2実施形態の実装構造1について、図面を参照して説明する。
【0074】
図10では、上面視にて、微小振動体2および実装基板3の外郭のうち視認できない部分を破線で示している。これは、後述する
図13、
図14についても同様である。
【0075】
本実施形態の実装構造1は、例えば
図10に示すように、実装基板3が複数の第1電極部53のうち隣接する第1電極部53の間に少なくとも1つのガード電極55が配置された構成となっている。また、実装基板3は、複数の第1電極部53のうちリム211と対向する部分が、上面視にて、リム211に近くなるほど幅が広くなる形状である。本実施形態の実装構造1は、上記した点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0076】
複数の第1電極部53は、本実施形態では、基部として第1基部531のみを有し、第2基部532を有しない構成である。複数の第1電極部53は、リム211と対向する部分である対向部5311と、対向部5311に接続される狭幅部5312と、狭幅部5312のうち対向部5311とは反対側の端部に接続される端子部5313とを有する。言い換えると、本実施形態では、基部531は、対向部5311と、狭幅部5312と、端子部5313とにより構成されている。
【0077】
対向部5311は、例えば
図11に示すように、リム211と対向する対向面531aを有する部位である。対向部5311は、例えば、上面視にて、略三角形状とされ、リム211側の端部の幅が狭幅部5312側の端部よりも広く、狭幅部5312側の端部の幅が最も小さくなっている。これにより、第1電極部53は、上面531bのうち対向部5311の部分の面積が、狭幅部5312を有しない場合に比べて小さくなり、対向部5311の上面531bに起因する電気力線の影響を低減可能となっている。
【0078】
狭幅部5312は、対向部5311と端子部5313とを繋ぐものであって、第1電極部53のうち上面視にて幅が最も狭い部位である。
【0079】
端子部5313は、上面531bに図示しないワイヤが接続される取り出し電極535が形成されたワイヤ接続領域である。
【0080】
複数のガード電極55は、本実施形態では、実装基板3のうち隣接する第1電極部53の間に少なくとも1つ形成される。例えば、複数のガード電極55は、第1電極部53と交互に配置され、第1電極部53と互い違いの配列とされるが、これに限定されない。複数のガード電極55は、例えば、第1電極部53の第1基部531と同一の材料で構成されており、上部基板5を構成するシリコン基板にエッチングを施すことで電極部53、54から分離した部分である。複数のガード電極55は、第1電極部53および第2電極部54とは距離を隔てて配置され、これらとは電気的に独立している。複数のガード電極55は、例えば
図10や
図11に示すように、それぞれ、実装基板3とは反対側の上面に図示しないワイヤが接続される端子電極551を有する。
【0081】
なお、複数のガード電極55は、複数の第1電極部53および第2電極部54と当接していなければよく、その形状、数や配置等については適宜変更されうる。また、複数のガード電極55は、必要に応じて、上面視にて、隣接する第1電極部53との距離が調整されてもよい。例えば、ガード電極55は、第1電極部53のうち微小振動体2を駆動させる駆動電極との第1距離が、第1電極部53のうち微小振動体2との静電容量を検出する検出電極との第2距離よりも相対的に大きい配置とされうる。
【0082】
本実施形態によれば、複数の第1電極部53の上面531bのうちリム211と対向する部分の面積が、狭幅部5312を有しない場合よりも相対的に小さくなり、リム211の上方側面に向かう電気力線の影響が低減される実装構造1となる。そのため、この実装構造1は、第1電極部53の対向面531aとは異なる面に起因するノイズを低減可能である。
【0083】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態の実装構造1は、例えば
図12に示すように、複数の第1電極部53およびガード電極55が、それぞれの上面531b、55aに絶縁膜533およびガード電極534が積層された構成であってもよい。この場合、ガード電極55を第1ガード電極として、複数の第1電極部53上に形成されたガード電極534は、第2ガード電極として機能する。この場合、絶縁膜533のうち第1電極部53の上面531bに成膜される部分には第1のコンタクトホール533bが形成され、その内側に取り出し電極535が形成される。また、絶縁膜533のうちガード電極55の上面55aを覆う部分には第2のコンタクトホール533cが形成され、その内側に端子電極551が形成される。
【0084】
複数のガード電極55は、一部が、微小振動体2の駆動電極あるいは静電容量の検出電極として用いられてもよい。この場合、複数のガード電極55のうち少なくとも静電容量の検出電極として用いられるものは、リム211と対向する部分が、対向部5311と同様に、リム211側に近いほどその幅が広く、リム211から離れるほどその幅が狭い構成とされることが好ましい。また、この場合、第1電極部53のうち検出電極として用いられる第1ガード電極55に隣接するもの、およびその上面531bに設けられた第2ガード電極534が、フリンジ効果を抑制し、ノイズを低減する役割を果たす。
【0085】
なお、第2ガード電極534は、他の第1電極部53や第1ガード電極55上に配置される他の第2ガード電極534の一部または全部と構造的、電気的に接続されていてもよい。
【0086】
また、複数の第2ガード電極534は、第1電極部53の第1基部531に代わり、駆動電極として用いられてもよい。この場合、微小振動体2のリム211のうち第2ガード電極534よりもz方向下側に位置する部分を、第2ガード電極534に向かって斜め上方に引っ張る静電引力を生じさせ、微小振動体2の駆動振動モードを変更することが可能となる。この場合、例えば、第1電極部53の第1基部531が検出電極として用いられる。
【0087】
本変形例によっても、上記第2実施形態と同様の効果が得られる実装構造1となる。また、本変形例では、第1電極部53の上面531bを第2ガード電極534で覆っており、第2ガード電極534が上面531bからリム211の上方側面に向かう電気力線を遮蔽するため、対向面531a以外の面に起因するノイズをより低減可能となる。
【0088】
(他の実施形態)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0089】
(1)上記各実施形態およびその変形例では、実装基板3が微小振動体2のリム211と接触することを防止するための溝41を有する構成とされた場合について説明したが、この例に限定されない。例えば、微小振動体2のリム211が実装面22bよりもz方向において高い位置にある構成である場合、すなわちリム211よりも実装面22bのほうが突き出している場合、実装基板3は、溝41を有しない構成であってもよい。
【0090】
(2)上記第1実施形態において、複数の第1電極部53の上面531bを覆うガード電極534は、他の第1電極部53のガード電極534の一部または全部と電気的に接続されていてもよい。この場合、実装基板3は、例えば
図13に示すように、複数の第1電極部53よりも外周側に略円環形状の外周配線44を有し、複数のガード電極534を接続された構成とされる。外周配線44は、例えば、ガード電極534と同一の導電性材料を用いて同一の工程で成膜され、ガード電極534と一体の構成とされる。また、外周配線44は、例えば、絶縁膜533と一体で成膜された図示しない絶縁層が直下に形成されており、ブリッジ配線42等の他の配線とは電気的に独立している。外周配線44は、
図13に示すように、ブリッジ配線42を跨ぐように形成されてもよいし、複数のブリッジ配線42以外の領域に形成され、複数の第1電極部53のガード電極534の一部を接続する構成であってもよく、この配置等については適宜変更される。
【0091】
また、ガード電極534は、上面視にて、絶縁膜533と共に、例えば円環形状とされ、外周配線44によらずに、複数の第1電極部53のガード電極534と一体とされていてもよい。言い換えると、複数の第1電極部53は、1つの共通のガード電極534により覆われた構成とされてもよい。
【0092】
(3)上記第2実施形態において、複数のガード電極55は、例えば
図14に示すように、複数の第1電極部53よりも外周側の領域において接続された構成であってもよい。この場合、端子電極551は、1つのガード電極55につき、少なくとも1つ形成されていればよく、その数や配置等については適宜変更されうる。また、複数の第1電極部53は、例えば、複数のガード電極55の接続領域を確保するため、端子部5313の面積が小さくされる。
【0093】
(4)上記第1実施形態において、微小振動体2は、例えば
図15に示すように、表面電極23が裏面2b側にのみ形成された構成であってもよい。これは、上記第2実施形態およびその変形例においても同様である。この場合、微小振動体2は、表面2aが外部に露出し、表面電極23に覆われる面積が減少することにより、Q値が向上する効果が得られる。
【0094】
(5)上記第1実施形態において、複数の第1電極部53は、例えば
図16に示すように、第2基部532を有さず、第1基部531上に絶縁膜533、ガード電極534が積層された構成であってもよい。この場合、複数の第1電極部53は、上面531bのうち絶縁膜533から露出する部分に取り出し電極535が形成された構成とされる。
【0095】
(6)上記各実施形態およびその変形例において、実装構造1にリッドとも称される蓋材が取り付けられる場合、蓋材の内側に微小振動体2の駆動振動モードを制御するための電極を別途有する構成であってもよい。この場合、実装基板3の第1電極部53に起因するノイズを低減しつつ、微小振動体2の駆動振動モードを所望のものに制御可能となる効果も得られる。
【0096】
(7)上記各実施形態およびその変形例において、実装基板3は、16個の第1電極部53を有する構成とされた場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、実装基板3は、複数の第1電極部53、好ましくは4個以上の第1電極部53を有していればよく、微小振動体2の外径等に応じてその個数について適宜変更されうる。例えば、4個の第1電極部53を有する場合、実装基板3は、2個の第1電極部53が検出電極、残り2個の第1電極部53が駆動電極とされる。
【0097】
(8)上記各実施形態およびその変形例において、実装基板3の第2電極部54は、少なくとも1つ配置され、複数の第1電極部53とは電気的に独立していればよく、その個数、配置や形状等については適宜変更されうる。例えば、第2電極部54は、複数の第1電極部53を囲む1つの枠体形状、あるいは分割された複数の部材からなる枠体形状であってもよい。
【0098】
(9)上記1第実施形態において、実装基板3の内枠部51は、その上面が絶縁膜533と、ガード電極534と同一材料からなる金属膜とに覆われた構成とされているが、絶縁膜533および当該金属膜を有しない構成であってもよい。
【0099】
(10)上記各実施形態およびその変形例の実装構造1は、ガード電極534あるいはガード電極55のすべてに同一の駆動信号を与えることで、微小振動体2をスカラードライブさせるといった駆動モードの制御を実行することも可能である。なお、スカラードライブは、「パラメトリック励振」や「自励振動」とも称される。
【0100】
(11)なお、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0101】
2・・・微小振動体、21・・・曲面部、211・・・リム、22・・・接続部
22b・・・実装面、23・・・表面電極、3・・・実装基板、42・・・配線
43・・・導電層、53・・・電極部、531・・・第1基部、531a・・・対向面
531b・・・上面5311・・・対向部、5312・・・狭幅部
5313・・・端子部、532・・・第2基部、532a・・・一面
533・・・絶縁膜
533a、533b、533c・・・(絶縁膜の)コンタクトホール
534・・・ガード電極、535・・・取り出し電極、55・・・ガード電極
551・・・端子電極