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特開2023-156180中空糸処理システム、中空糸処理剤および中空糸処理方法並びにポリサルフォン樹脂組成物
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  • 特開-中空糸処理システム、中空糸処理剤および中空糸処理方法並びにポリサルフォン樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156180
(43)【公開日】2023-10-24
(54)【発明の名称】中空糸処理システム、中空糸処理剤および中空糸処理方法並びにポリサルフォン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/00 20060101AFI20231017BHJP
   C08L 39/06 20060101ALI20231017BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20231017BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20231017BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C08J11/00
C08L39/06
C08L81/06
C08K5/524
B29B17/04 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065893
(22)【出願日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】503471695
【氏名又は名称】リファインバース株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520303232
【氏名又は名称】三菱ガス化学トレーディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】玉城 五郎
(72)【発明者】
【氏名】長井 聡
(72)【発明者】
【氏名】戸田 雄士
【テーマコード(参考)】
4F401
4J002
【Fターム(参考)】
4F401AA24
4F401AA40
4F401AC20
4F401AD20
4F401BA13
4F401BB12
4F401CA14
4F401CA84
4F401CB01
4F401CB18
4F401DC02
4F401EA70
4F401EA78
4F401FA07Z
4J002BJ00X
4J002CN03W
4J002EJ026
4J002EW066
4J002GB00
4J002GD00
4J002GE00
(57)【要約】
【課題】中空糸からより高品質な再生材料を生成すること。
【解決手段】ポリビニルピロリドンを含む中空糸の再生処理を行う中空糸処理システムであって、中空糸を、細断する細断装置と、中空糸に含まれるポリビニルピロリドン0.2~5重量部に対して、同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物を0.03~1重量部加える混練装置と、混練装置によって化合物が添加された中空糸小片からペレットを整形する造粒装置と、を備えた中空糸処理システム。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルピロリドンを含む中空糸の再生処理を行う中空糸処理システムであって、
前記中空糸を、細断する細断装置と、
前記中空糸に含まれるポリビニルピロリドン0.2~5重量部に対して、同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物を0.03~1重量部加える混練装置と、
前記混練装置によって前記化合物が添加された中空糸小片からペレットを整形する造粒装置と、
を備えた中空糸処理システム。
【請求項2】
ポリビニルピロリドンを含む中空糸の安定化処理を行う中空糸処理用の化合物であって、
同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物。
【請求項3】
下記の構造式を有する請求項2に記載の化合物。
【化1】
[式中、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基または炭素数7~12のフェニル基を表し、R3は水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。Xは単結合、イオウ原子または-CHR6-基を表す。R6は水素原子、炭素数1~8のアルキル基または炭素数5~8のシクロアルキル基を表す。Aは炭素数2~8のアルキレン基または*-COR7-基を表す。R7は単結合または炭素数1~8のアルキレン基を表し、*印を付したCOは上記構造式におけるフォスファイト構造の酸素原子と結合していることを表す。YおよびZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1~8のアルコキシ基または炭素数7~12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。]
【請求項4】
請求項3に記載の構造式におけるYがヒドロキシル基であるときは、R4およびR5の一方は炭素数3~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基またはフェニル基を表す請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
請求項3に記載の構造式における2個のR1、2個のR2、2個のR3がそれぞれ異なる請求項3または4に記載の化合物。
【請求項6】
6-tert-ブチル-4-[3-[(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ]プロピル]-2-メチルフェノールである請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
ポリビニルピロリドン0.2~5重量部を含む中空糸の粉砕物に対して、
請求項2に記載の化合物を0.03~1重量部加える中空糸処理方法。
【請求項8】
ポリビニルピロリドン0.2~5重量部を含む中空糸の粉砕物に対して、
請求項2に記載の化合物を0.3~1重量部加える中空糸処理方法。
【請求項9】
ポリサルフォン100重量部と、
ポリビニルピロリドン0.2~5重量部と、
同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物0.01~1重量部と、
を含むポリサルフォン樹脂組成物。
【請求項10】
前記化合物は、下記の構造式を有する請求項9に記載のポリサルフォン樹脂組成物。
【化2】
[式中、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基または炭素数7~12のフェニル基を表し、R3は水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。Xは単結合、イオウ原子または-CHR6-基を表す。R6は水素原子、炭素数1~8のアルキル基または炭素数5~8のシクロアルキル基を表す。Aは炭素数2~8のアルキレン基または*-COR7-基を表す。R7は単結合または炭素数1~8のアルキレン基を表し、*印を付したCOは上記構造式におけるフォスファイト構造の酸素原子と結合していることを表す。YおよびZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1~8のアルコキシ基または炭素数7~12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。]
【請求項11】
請求項10に記載の構造式におけるYがヒドロキシル基であるときは、R4およびR5の一方は炭素数3~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基またはフェニル基を表す請求項10に記載のポリサルフォン樹脂組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の構造式における2個のR1、2個のR2、2個のR3がそれぞれ異なる請求項10に記載のポリサルフォン樹脂組成物。
【請求項13】
6-tert-ブチル-4-[3-[(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ]プロピル]-2-メチルフェノールである請求項10に記載のポリサルフォン樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸処理システム、中空糸処理剤および中空糸処理方法並びにポリサルフォン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、ダイアライザに用いられるポリサルフォン製の中空糸の端材を再生利用しようとする要望がある。ポリサルフォンの再利用方法については、特許文献1に開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平02-121806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ダイアライザに用いられる中空糸には、ポリビニルピロリドンが添加されているため、高品質な再生材料を生成することが難しかった。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る中空糸処理システムは、
ポリビニルピロリドンを含む中空糸の再生処理を行う中空糸処理システムであって、
前記中空糸を、細断する細断装置と、
前記中空糸に含まれるポリビニルピロリドン0.2~5重量部に対して、同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物を0.03~1重量部加える混練装置と、
前記混練装置によって前記化合物が添加された中空糸小片からペレットを整形する造粒装置と、
を備えた。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る化合物は、
ポリビニルピロリドンを含む中空糸の安定化処理を行う中空糸処理用の化合物であって、
同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る中空糸処理方法は、
ポリビニルピロリドン0.2~5重量部を含む中空糸の粉砕物に対して、
上記化合物を0.03~1重量部加える。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るポリサルフォン樹脂組成物は、
ポリサルフォン100重量部と、
ポリビニルピロリドン0.2~5重量部と、
同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物0.01~1重量部と、
を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中空糸からより高品質な再生材料を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る中空糸処理システムの構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る中空糸処理システムの処理の流れをフローチャートである。
図3】第1実施形態に係る中空糸処理方法での実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての中空糸処理システム100について、図1を用いて説明する。図1のように、中空糸処理システム100は、細断装置101と混練装置102と造粒機103とを備える。
【0014】
細断装置101は、ダイアライザ製造工程で端材として廃棄されるポリサルフォン(Poly arylether-aryl sulfone/PSF)製の中空糸110やその端材を小さく(例えば、10mm~30mm)切断する。ポリサルフォン中空糸110やその端材は、製造時に添加されるポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone、略称PVP)を1~5wt%含有している。
【0015】
混練装置102は、細断されたポリサルフォン小片130に特定の化合物を混練させることによりポリサルフォン樹脂成形材料を生成し、ポリサルフォンに添加されたポリビニルピロリドンを安定化させる。
ポリビニルピロリドンが添加されたポリサルフォンと安定剤は、共に固体であり、一般的にタンブラー、ブレンダー、ミキサー等の混合機を用いて、樹脂を溶融させずに混合する。
この段階ではポリビニルピロリドンが添加されたポリサルフォンと安定剤は不均一に混合された状態となる。
このポリビニルピロリドンは、後段の造粒加工(押出成形加工)における約300℃の高温条件(ポリサルフォンの溶融温度)に対して、十分な耐熱性を有していない。すなわち、押出成形加工中に分解し、樹脂の変色や臭気発生の原因となっていた。そこで、この変色、臭気を低減させるべく種々の安定剤を検討した結果、同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物が特に効果があることを見出した。そこで、混練押出装置102が添加する安定剤として、同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物を選択している。
【0016】
造粒機103は、安定剤を添加されたポリサルフォン樹脂成形材料を溶融し、押出成形によりペレット化する。この工程で安定剤はポリサルフォン樹脂中に均一に分散しポリビニルピロリドンの変質を防止する。
【0017】
これにより、ダイアライザ製造工程で廃棄されるポリサルフォン中空糸は、耐熱性の成形材料として再利用可能となる。本実施形態によれば、ペレット製造中の変色や臭気を抑制することができ、高品質な再生材料を提供することが可能となる。
【0018】
[ポリサルフォン樹脂成形材料]
ポリサルフォン樹脂成形材料は、
中空糸粉砕品100重量部に対して、
ポリビニルピロリドンが0.2~5重量部含まれており、
さらに安定剤を0.03~1重量部添加したものである。
【0019】
(安定剤)
本実施形態で用いた安定剤は、同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物であって、例えば、6-tert-ブチル-4-[3-[(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ]プロピル]-2-メチルフェノールである。
【0020】
この例は、下記の構造式で表される。
【化1】
[式中、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基または炭素数7~12のフェニル基を表し、R3は水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。Xは単結合、イオウ原子または-CHR6-基を表す。R6は水素原子、炭素数1~8のアルキル基または炭素数5~8のシクロアルキル基を表す。Aは炭素数2~8のアルキレン基または*-COR7-基を表す。R7は単結合または炭素数1~8のアルキレン基を表し、*印を付したCOは上記構造式におけるフォスファイト構造の酸素原子と結合していることを表す。YおよびZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1~8のアルコキシ基または炭素数7~12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。]
構造式におけるYがヒドロキシル基であるときは、R4およびR5の一方は炭素数3~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基またはフェニル基を表す。
【0021】
構造式における2個のR1、2個のR2、2個のR3は、同じでもよいが、それぞれ異なってもよい。
【0022】
(上記安定剤によってポリビニルピロリドンを安定化する原理)
ポリビニルピロリドンはオレフィン系重合体に分類される。ポリサルフォンの加工温度の様な極端な高温状態、酸素含有雰囲気下で、ポリビニルピロリドンは容易に分解反応が起こる。1次酸化防止剤で生成した準安定構造物質(ヒドロペルオキシド)が、(1)2次酸化防止剤と反応して安定な構造になるか、(2)熱でヒドロペルオキシドが再び活性なヒドロオキシラジカルやアルコキシラジカルを生成し分解の連鎖反応が開始するかの競争反応である。ポリサルフォン加工温度の300℃以上というのは、通常のオレフィンの加工温度150-230℃より高い為に、ヒドロペルオキシドの分解反応が極めて速くなっていると推察される。そこで、2次酸化防止剤がヒドロペルオキシドの近傍に有る方が、この競争反応に対し時間的に優位であり、生成したヒドロペルオキシドを速やかに安定化すると考えられる。それ故に、1次酸化防止剤の構造と2次酸化防止剤の構造の両方を分子内に持っている安定剤(例えば、Sumilizer GP)の方が、1次酸化防止剤と2次酸化防止剤を組合せて使用するよりも効率的に安定化できると考えられる。
【0023】
(ポリサルフォン樹脂成形材料の製造方法)
ダイアライザの端材からポリサルフォンペレットを製造する方法は特に制限されるものではなく、例えば図2のフローチャートに示す方法を適用することができる。
【0024】
ステップS201において、ポリサルフォンと、耐熱剤である安定剤と、その他任意成分を、一括して、または必要に応じ複数に分けて混合する。すなわち、単軸、2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、およびミキシングロールなどの溶融混練機のシリンダーに投入する。
【0025】
次にステップS202において、溶融混練機のヒーターを用いて、シリンダー内で投入された成分を加熱し、ポリサルフォンを溶融する。
【0026】
ステップS203では、溶融されたポリサルフォンと安定剤とを、溶融混練機のスクリューの回転により混練し、投入した成分が十分に混合された混練物とする。この際、安定剤が、ポリビニルピロリドンの分解を抑制し、臭気および変色を抑える。
【0027】
ステップS204では、混練物をダイより押し出し、紐状のストランドとする。
【0028】
次にステップS205において、ストランドを水槽に浸漬して直ちに冷却する。
【0029】
最後に、ステップS206において、冷却されたストランド状の混練物をペレタライザーでペレット化し、ペレット化されたポリサルフォン樹脂成形材料を得る。
【0030】
以上、本実施形態によれば、より高品質なポリサルフォン樹脂成形材料を得ることができる。
【0031】
(実験設備および条件)
以上の中空糸処理システムを前提として、以下のような実験設備および条件により実験を行った。
【0032】
押出機:株式会社プラエンジ製単軸押出機PSV-30mm
加工温度:320-330℃
スクリュー回転数:80rpm
成形機:ファナック株式会社製 Roboshot α-S50iA
中空糸粉砕品A:ポリサルフォン98.0wt%+PVP 含有量 2.0wt%
中空糸粉砕品B:ポリサルフォン97.6wt%+PVP 含有量 2.4wt%
ここで、PVP含有量は、三菱化学アナリテック株式会社製微量全窒素分析装置TN-2100Hによる分析による全窒素量からの換算値である
L値測定器:コニカミノルタ株式会社製 分光測色計 CM-3600A
MFR(melt flow rate):340℃における溶融時の流動性
荷重:2.16kg
臭気:安定剤ブレンド材料を押出機で溶融混錬する際の押出機周辺の臭気を少ない方から○、△、×で区分
【0033】
(実施例1)
中空糸粉砕品A100重量部に対して、安定剤として同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物(ここでは一例としてSumilizer GP)を0.03重量部添加した。L値は、56.7で、やや明るく、臭気は、安定剤を添加しない場合(比較例1、2)や、フォスファイト構造のみを有する安定剤2、3を添加した場合(比較例3~6)や、ヒンダードフェノール構造のみを有する安定剤4,5を加えた場合(比較例7、8)や、それらの安定剤を混ぜて用いた場合(比較例9、10)に比べて少なかった。
【0034】
(実施例2)
中空糸粉砕品A100重量部に対して、安定剤として同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物(ここでは一例としてSumilizer GP)を0.05重量部添加した。L値は、58.2で、実施例1に比べて明るく、臭気は、安定剤を添加しない場合(比較例1、2)や、フォスファイト構造のみを有する安定剤2、3を添加した場合(比較例3~6)や、ヒンダードフェノール構造のみを有する安定剤4,5を加えた場合(比較例7~10)に比べて少なかった。
【0035】
(実施例3)
中空糸粉砕品A100重量部に対して、安定剤として同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物(ここでは一例としてSumilizer GP)を0.1重量部添加した。L値は、58.5で、実施例2に比べて明るく、臭気は、安定剤を添加しない場合(比較例1、2)や、フォスファイト構造のみを有する安定剤2、3を添加した場合(比較例3~6)や、ヒンダードフェノール構造のみを有する安定剤4,5を加えた場合(比較例7~10)に比べて少なかった。
【0036】
(実施例4)
中空糸粉砕品A100重量部に対して、安定剤として同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物(ここでは一例としてSumilizer GP)を0.15重量部添加した。L値は、59.2で、実施例3に比べて明るく、臭気は、安定剤を添加しない場合(比較例1、2)や、フォスファイト構造のみを有する安定剤2、3を添加した場合(比較例3~6)や、ヒンダードフェノール構造のみを有する安定剤4,5を加えた場合(比較例7~10)に比べて少なかった。
【0037】
(実施例5)
中空糸粉砕品A100重量部に対して、安定剤として同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物(ここでは一例としてSumilizer GP)を0.3重量部添加した。L値は、61.9で、実施例4に比べても明るく、臭気は、安定剤を添加しない場合(比較例1、2)や、フォスファイト構造のみを有する安定剤2、3を添加した場合(比較例3~6)や、ヒンダードフェノール構造のみを有する安定剤4,5を加えた場合(比較例7~10)に比べてまなり少なかった。
【0038】
(実施例6)
中空糸粉砕品A100重量部に対して、安定剤として同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物(ここでは一例としてSumilizer GP)を0.6重量部添加した。L値は、63.9で、実施例5に比べてもさらに明るく、臭気は、安定剤を添加しない場合(比較例1、2)や、フォスファイト構造のみを有する安定剤2、3を添加した場合(比較例3~6)や、ヒンダードフェノール構造のみを有する安定剤4,5を加えた場合(比較例7~10)に比べてかなり少なかった。
【0039】
(実施例7)
中空糸粉砕品A100重量部に対して、安定剤として同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物(ここでは一例としてSumilizer GP)を1重量部添加した。L値は、64.6で、実施例6に比べてもさらに明るく、臭気は、安定剤を添加しない場合(比較例1、2)や、フォスファイト構造のみを有する安定剤2、3を添加した場合(比較例3~6)や、ヒンダードフェノール構造のみを有する安定剤4,5を加えた場合(比較例7~10)に比べてかなり少なかった。
【0040】
(実施例8)
中空糸粉砕品B100重量部に対して、安定剤として同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物(ここでは一例としてSumilizer GP)を0.3重量部添加した。L値は、60.9で明るく、臭気は、安定剤を添加しない場合(比較例1、2)や、フォスファイト構造のみを有する安定剤2、3を添加した場合(比較例3~6)や、ヒンダードフェノール構造のみを有する安定剤4,5を加えた場合(比較例7~10)に比べてかなり少なかった。
【0041】
(実施例9)
中空糸粉砕品B100重量部に対して、安定剤として同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物(ここでは一例としてSumilizer GP)を0.6重量部添加した。L値は、61.8で明るく、臭気は、安定剤を添加しない場合(比較例1、2)や、フォスファイト構造のみを有する安定剤2、3を添加した場合(比較例3~6)や、ヒンダードフェノール構造のみを有する安定剤4,5を加えた場合(比較例7~10)に比べてかなり少なかった。
【0042】
(比較例1、2)
中空糸粉砕品Aまたは中空糸粉砕品B100重量部に対して、安定剤を添加せずペレットを生成した。L値は、それぞれ55.6、54.2で暗く、臭気は強かった。
【0043】
(比較例3)
中空糸粉砕品A100重量部に対して、フォスファイト構造のみを有するリン系安定剤2を0.05重量部添加した。L値は、43.5でかなり暗く、臭気は強かった。
【0044】
(比較例4~6)
中空糸粉砕品A100重量部に対して、フォスファイト構造のみを有するリン系安定剤3を0.05~0.15重量部添加した。L値は、55.7~54.5で暗く、臭気は強かった。
【0045】
(比較例7~8)
中空糸粉砕品A100重量部に対して、ヒンダードフェノール構造のみを有する安定剤4,5を0.3重量部添加した。L値は、60.6、57.5で明るかったが、臭気は強かった。
【0046】
(比較例9~10)
中空糸粉砕品A100重量部に対して、フォスファイト構造のみを有するリン系安定剤3を0.05重量部添加し、さらにヒンダードフェノール構造のみを有する安定剤4,5を0.3重量部添加した。L値は、60.4、57.8で明るかったが、臭気は強かった。
【0047】
(実験結果)
図3は、上記の実施例および比較例の結果を一つの図面にまとめたものである。上記の実施例および比較例から、同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物を用いることにより、高品質な中空糸の再生材料を得ることができることが確認できた。
【0048】
<用途>
上述した方法により生成されたポリサルフォン樹脂成形材料は、医療系では、人工呼吸器や人工義歯、内視鏡部品などに使用できる。また、食品関係では、電子レンジ部品やコーヒーメーカー、冷解凍用トレイ、調理器などに使用できる。その他、自動車関係ではオートフェーズやライト部品に使用でき、電子関係では、コネクターやスイッチ、コイルボビン、ICキャリア、ブッシュなどに使用できる。
【0049】
このような再生材料の利用により、中空糸の製造から利用、廃棄に至るライフサイクルにおける環境負荷(温室効果ガス発生)を低減することができる。
【0050】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
図1
図2
図3