(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001562
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20221226BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20221226BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102367
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】598005878
【氏名又は名称】吉川工業アールエフセミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】石井 英一
(57)【要約】
【課題】給電電力値を検出することができる非接触給電装置を提供する。
【解決手段】非接触給電装置は、非接触給電を行うための給電コイルL1と前記給電コイルに接続される共振コンデンサC1と前記給電コイルを駆動する駆動部123を有する駆動回路122と、前記駆動回路に動作電力を供給する電源119と、前記電源の電圧値と前記電源の電流値を基に、前記電源の供給電力値を演算する供給電力演算部111,115と、前記電源の電流値と前記駆動回路の損失抵抗値を基に、前記駆動回路での損失電力値を演算する損失電力演算部112,113,116と、前記電源の供給電力値から前記損失電力値を減算することにより、給電電力値を出力する減算部117とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触給電を行うための給電コイルと前記給電コイルに接続される共振コンデンサと前記給電コイルを駆動する駆動部を有する駆動回路と、
前記駆動回路に動作電力を供給する電源と、
前記電源の電圧値と前記電源の電流値を基に、前記電源の供給電力値を演算する供給電力演算部と、
前記電源の電流値と前記駆動回路の損失抵抗値を基に、前記駆動回路での損失電力値を演算する損失電力演算部と、
前記電源の供給電力値から前記損失電力値を減算することにより、給電電力値を出力する減算部と
を有することを特徴とする非接触給電装置。
【請求項2】
さらに、前記電源と前記駆動部の間の電流検出用抵抗と、
前記電流検出用抵抗の両端間の電圧値に比例した信号を出力する第1のアンプとを有し、
前記供給電力演算部は、
前記第1のアンプが出力する信号と前記電源の電圧値に応じた値とを掛け算する第1の掛け算部と、
前記第1の掛け算部の出力信号をローパスフィルタリングすることにより、前記電源の供給電力値の平均値を示す信号を出力する第1のローパスフィルタとを有することを特徴とする請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項3】
さらに、前記電源と前記駆動部の間の電流検出用抵抗を有し、
前記供給電力演算部は、
前記電流検出用抵抗の両端間の電圧をローパスフィルタリングする第1のローパスフィルタと、
前記第1のローパスフィルタの出力信号に比例する信号を出力する第1のアンプと、
前記第1のアンプが出力する信号と前記電源の電圧値に応じた値とを掛け算することにより、前記電源の供給電力値の平均値を示す信号を出力する第1の掛け算部とを有することを特徴とする請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項4】
さらに、前記電源と前記駆動部の間の電流検出用抵抗と、
前記電流検出用抵抗の両端間の電圧値に比例した信号を出力する第1のアンプとを有し、
前記損失電力演算部は、
前記第1のアンプが出力する信号の2乗に応じた信号を出力する第2の掛け算部と、
前記第2の掛け算部の出力信号に対して、前記損失抵抗値又は前記損失抵抗値の2倍の値に応じた値を掛ける第3の掛け算部と、
前記第3の掛け算部の出力信号をローパスフィルタリングすることにより、前記損失電力値の平均値を示す信号を出力する第2のローパスフィルタとを有することを特徴とする請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項5】
さらに、前記電源と前記駆動部の間の電流検出用抵抗と、
前記電流検出用抵抗の両端間の電圧値に比例した信号を出力する第1のアンプとを有し、
前記損失電力演算部は、
前記第1のアンプが出力する信号の2乗に応じた信号に対して、前記駆動回路の損失抵抗値又は前記損失抵抗値の2倍の値に応じた値を掛け算した値に応じた信号を出力する第2の掛け算部と、
前記第2の掛け算部の出力信号をローパスフィルタリングすることにより、前記損失電力値の平均値を示す信号を出力する第2のローパスフィルタとを有することを特徴とする請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項6】
さらに、前記電源の電流に比例する信号を出力する電流プローブを有し、
前記供給電力演算部は、
前記電流プローブの出力信号をローパスフィルタリングする第1のローパスフィルタと、
前記第1のローパスフィルタの出力信号と前記電源の電圧値に応じた値とを掛け算することにより、前記電源の供給電力値の平均値を示す信号を出力する第1の掛け算部とを有することを特徴とする請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項7】
さらに、前記電源の電流に比例する信号を出力する電流プローブを有し、
前記供給電力演算部は、
前記電流プローブの出力信号と前記電源の電圧値に応じた値とを掛け算する第1の掛け算部と、
前記第1の掛け算部の出力信号をローパスフィルタリングすることにより、前記電源の供給電力値の平均値を示す信号を出力する第1のローパスフィルタとを有することを特徴とする請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項8】
さらに、前記電源の電流に比例する信号を出力する電流プローブを有し、
前記損失電力演算部は、
前記電流プローブの出力信号の2乗に応じた信号に対して、前記駆動回路の損失抵抗値又は前記損失抵抗値の2倍の値に応じた値を掛け算した値に応じた信号を出力する第2の掛け算部と、
前記第2の掛け算部の出力信号をローパスフィルタリングすることにより、前記損失電力値の平均値を示す信号を出力する第2のローパスフィルタとを有することを特徴とする請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項9】
さらに、前記電源の電流に比例する信号を出力する電流プローブを有し、
前記損失電力演算部は、
前記電流プローブの出力信号の2乗に応じた信号を出力する第2の掛け算部と、
前記第2の掛け算部の出力信号に対して、前記損失抵抗値又は前記損失抵抗値の2倍の値に応じた値を掛ける第3の掛け算部と、
前記第3の掛け算部の出力信号をローパスフィルタリングすることにより、前記損失電力値を示す信号を出力する第2のローパスフィルタとを有することを特徴とする請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項10】
前記駆動部は、
前記給電コイル及び前記共振コンデンサの直列接続回路の一端と、前記電源との間に接続される第1のスイッチと、
前記給電コイル及び前記共振コンデンサの直列接続回路の一端と、基準電位ノードとの間に接続される第2のスイッチとを有することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の非接触給電装置。
【請求項11】
前記駆動部は、さらに、
前記給電コイル及び前記共振コンデンサの直列接続回路の他端と、前記電源との間に接続される第3のスイッチと、
前記給電コイル及び前記共振コンデンサの直列接続回路の他端と、前記基準電位ノードとの間に接続される第4のスイッチとを有することを特徴とする請求項10に記載の非接触給電装置。
【請求項12】
前記電源は、前記給電電力値を基に、前記電源の電圧を制御することを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電源に接続される給電コイルを備える給電部を有し、給電コイルと負荷に接続される受電コイルとが電磁結合することにより、電源より負荷へ電力を供給する非接触給電装置が記載されている。給電部は、交流印加回路と給電ユニット装着部とを有するソケット部と、給電コイルを有する給電コイルユニット部とを備える。給電コイルユニット部は、給電ユニット装着部に交換可能に装着される。
【0003】
特許文献2には、高周波電力を出力するインバータと、インバータを制御する制御部と、インバータの出力に接続され高周波電力が供給される送電側コンデンサと、送電側コンデンサに接続された送電コイルとを有する送電装置が記載されている。送電装置は、インバータの入力電力を検出する入力電力検出部と、インバータの出力電圧と出力電流の位相差を検出する位相差検出部とを有する。制御部は、インバータの入力電力および位相差検出部が検出した位相差に基づいて、インバータの入力電力を一定に保ちながら、位相差を0にするように、インバータの駆動周波数とインバータの出力デューティを変化させる。
【0004】
特許文献3には、充電場所に設置された給電部に空間を介して電磁気的に通電され給電部から電力が伝送される受電部が電動車両に設けられ、二次電池を充電する受電制御装置が記載されている。受電制御装置は、受電部を給電部に対して接近離反移動する受電部駆動手段と、給電部から出力される給電電力を検出する給電電力検出手段と、給電電力が二次電池の受電容量を超えているときに、受電部駆動手段を駆動させて、受電部を受電可能範囲に移動させる制御手段とを有する。
【0005】
特許文献4には、送電装置から受電装置に非接触で高周波電力を供給する非接触給電システムが記載されている。送電装置は、高周波電力を発生させる高周波発生手段と、送電コイル、および、送電コイルに接続された共振コンデンサを有し、高周波発生手段から入力される高周波電力を非接触で送電する送電ユニットと、受電装置によって反射された反射波電力を検出する電力検出手段と、反射波電力に基づき、高周波電力の送電を停止させる送電装置側制御手段とを有する。受電装置は、送電コイルに磁気的に結合される受電コイル、および、受電コイルに接続された共振コンデンサを有し、送電ユニットから送電された高周波電力を非接触で受電する受電ユニットと、受電ユニットが受電した高周波電力を直流電力に変換する整流回路と、整流回路から出力される直流電力により充電される蓄電手段と、整流回路から出力される直流電力を蓄電手段に供給するか遮断するかを切り替えるスイッチと、蓄電手段の充電状況に基づき、蓄電手段の充電が完了すると、整流回路から蓄電手段への直流電力を遮断するようにスイッチを切り替え、蓄電手段の充電を停止させる受電装置側制御手段とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-211863号公報
【特許文献2】特開2015-216739号公報
【特許文献3】特開2016-73080号公報
【特許文献4】特開2017-131020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
給電装置は、受電装置に対して、非接触給電することができる。給電装置が受電装置に給電する給電電力は、給電装置と受電装置との間の距離等により変化する。受電装置は、給電電力を検出することが可能である。しかし、給電装置は、給電装置と受電装置との間の距離が分からず、給電電力を検出することが困難である。
【0008】
本発明の目的は、給電電力値を検出することができる非接触給電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
非接触給電装置は、非接触給電を行うための給電コイルと前記給電コイルに接続される共振コンデンサと前記給電コイルを駆動する駆動部を有する駆動回路と、前記駆動回路に動作電力を供給する電源と、前記電源の電圧値と前記電源の電流値を基に、前記電源の供給電力値を演算する供給電力演算部と、前記電源の電流値と前記駆動回路の損失抵抗値を基に、前記駆動回路での損失電力値を演算する損失電力演算部と、前記電源の供給電力値から前記損失電力値を減算することにより、給電電力値を出力する減算部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
給電電力値を検出することができる非接触給電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1の実施形態による給電システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、給電電力値が5Wになるように制御する場合の給電装置のパラメータの例を示す図である。
【
図3】
図3(A)~(F)は、給電コイルの電圧と可変直流電源の出力端子が駆動回路に供給する電流の波形例を示す図である。
【
図4】
図4(A)~(F)は、給電コイルに流れる電流と受電コイルの両端の電圧の波形例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態による給電システムの構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、第3の実施形態による給電システムの構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、第4の実施形態による給電システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による給電システム100の構成例を示す図である。給電システム100は、非接触給電システムであり、給電装置101と受電装置102を有する。
【0013】
給電装置101は、非接触給電装置であり、掛け算回路111~113と、DCバイアス源114と、ローパスフィルタ115,116と、減算回路117と、制御部118と、可変直流電源119と、駆動信号源120と、差動アンプ121と、駆動回路122と、電流検出用抵抗Rsを有する。駆動回路122は、駆動部123と、磁性材124と、損失抵抗Raと、給電コイルL1と、共振コンデンサC1を有する。駆動部123は、ハーフブリッジ駆動回路であり、スイッチSW1及びSW2を有する。
【0014】
損失抵抗Raは、等価損失抵抗である。損失抵抗Raは、スイッチSW1,SW2のオン抵抗と、給電コイルL1の等価直列抵抗と、周囲の構造物に誘導電流が流れるために発生する損失電力を等価的に給電コイルL1の等価直列抵抗の上昇抵抗成分との合計を表現する等価抵抗である。
【0015】
可変直流電源119は、基準電位ノード(グランド電位ノード)に接続され、制御部118の制御信号に応じて、出力端子OUTから直流の電源電圧V1を出力する。電源電圧V1は、制御信号に応じて、変化する。駆動信号源120は、可変直流電源119から電源電圧V1の供給を受け、スイッチSW1及びSW2に対して制御信号を出力する。
【0016】
電流検出用抵抗Rsは、可変直流電源119の出力端子OUTとスイッチSW1との間に接続される。スイッチSW1は、電流検出用抵抗RsとスイッチSW2との間に接続され、駆動信号源120の制御信号に応じて、オン又はオフする。スイッチSW2は、スイッチSW1と基準電位ノードとの間に接続され、駆動信号源120の制御信号に応じて、オン又はオフする。損失抵抗Raは、等価損失抵抗であり、スイッチSW1及びSW2の相互接続点と、給電コイルL1との間に接続される。磁性材124は、給電コイルL1の背面に設けられる。共振コンデンサC1は、給電コイルL1と基準電位ノードとの間に接続される。給電コイルL1と共振コンデンサC1は、共振回路である。
【0017】
スイッチSW1がオンであり、スイッチSW2がオフである状態と、スイッチSW1がオフであり、スイッチSW2がオンである状態とが交互に繰り返される。駆動部123は、高周波数の交流電圧を、給電コイルL1及び共振コンデンサC1に供給する。
図3(A)は、給電コイルL1の電圧VL1と、可変直流電源119の出力端子OUTが駆動回路122に供給する電流I1の例を示す。電圧VL1は、給電コイルL1及び共振コンデンサC1の共振により、正弦波となる。電流I1は、正弦波を半波整流した波形に相当する。スイッチSW1がオンであり、スイッチSW2がオフである期間では、電流I1は、正弦波になる。スイッチSW1がオフであり、スイッチSW2がオンである期間では、電流I1は、0[A]になる。
【0018】
受電装置102は、受電コイルL2と、負荷RLを有する。負荷RLは、例えば60Ωであり、受電コイルL2に接続される。給電コイルL1と受電コイルL2は、結合度Kで磁界結合されている。給電コイルL1は、受電コイルL2に対して、磁界結合により非接触給電する。
【0019】
給電コイルL1と受電コイルL2の結合度Kは、給電コイルL1と受電コイルL2の間の距離や、給電コイルL1又は受電コイルL2の位置ずれや傾きにより、変化する。例えば、給電コイルL1と受電コイルL2の間の距離が基準値から遠退くと、結合度Kが小さくなり、給電装置101が受電装置102に給電する給電電力が小さくなる。逆に、給電コイルL1と受電コイルL2の間の距離が基準値に近付くと、結合度Kが大きくなり、給電装置101が受電装置102に給電する給電電力が大きくなる。給電装置101は、受電装置102に対して、一定の給電電力を給電する必要がある。可変直流電源119は、給電電力値Poutが一定になるように、電源電圧V1を制御する。具体的には、可変直流電源119は、給電電力値Poutが目標値より小さい場合には、電源電圧V1を高くし、給電電力値Poutが目標値より大きい場合には、電源電圧V1を低くする。そのため、給電装置101は、受電装置102に給電している給電電力値Poutを検出する必要がある。以下、給電電力値Poutの検出方法を説明する。
【0020】
給電電力値Poutは、供給電力値Pinと損失電力値Plossと放射電力値Pantを基に、次式により表される。
Pout=Pin-Ploss-Pant
【0021】
供給電力値Pinは、可変直流電源119の供給電力値であり、可変直流電源119が駆動回路122に供給する電力値である。供給電力Pinは、可変直流電源119が供給する電圧V1と電流I1との積の平均値で表される。
【0022】
損失電力値Plossは、駆動回路122内の損失電力値と、周囲の構造物に誘導した電流により発生する損失電力値との合計である。損失電力値Plossは、損失抵抗Raに流れる電流の2乗と損失抵抗Raとの積の平均値で表される。
【0023】
損失抵抗Raは、等価損失抵抗である。損失抵抗Raは、スイッチSW1,SW2のオン抵抗と、給電コイルL1の等価直列抵抗と、周囲の構造物に誘導電流が流れるために発生する損失電力を等価的に給電コイルL1の等価直列抵抗の上昇抵抗成分との合計を表現する等価抵抗である。
【0024】
放射電力値Pantは給電コイルL1から電波として放射される電力値である。給電電力値Poutは、給電装置101が受電装置102に磁界結合により給電する電力値である。給電電力値Poutは、受電装置102の消費電力値と同じ値である。
【0025】
次に、放射電力値Pantが無視できる程度の微小値であることを説明する。給電電力の周波数が100kHzである場合、給電電力の波長は3000m程度である。給電コイルL1の寸法は、この給電電力の波長より十分小さい。そのため、放射電力値Pantを無視することができる。
【0026】
放射電力値Pantは、給電コイルL1に流れる電流の2乗と放射抵抗Rrとの積で表される。放射抵抗Rrは、給電コイルL1に流れる電流が電波として放射されることによる損失電力を等価的に表現する抵抗であり、次式により表される。
Rr=Zo×Ko4×N2×π×r4 /24
【0027】
ここで、Zoは、空間のインピーダンスであり、120πΩである。Koは、波数(伝搬定数)であり、2π/λである。λは、波長であり、例えば3000mである。Nは、給電コイルL1の巻き数である。rは、給電コイルL1の半径(m)である。この場合、放射抵抗Rrは、次式で表される。
Rr=5π×(2π/3000)4×N2×π×r4
【0028】
ここで、巻き数Nが30であり、半径rが1mである場合、放射抵抗Rrは0.85μΩとなる。この場合、給電コイルL1に10A(実効値)の電流が流れると、放射電力値Pantは85μWにしかならない。したがって、放射電力値Pantは無視することができる。その場合、給電電力Poutは、次式で表される。
Pout=Pin-Ploss
【0029】
次に、給電装置101は、給電電力値Poutが5W一定になるように給電を制御する例を説明する。可変直流電源119は、出力端子OUTから直流の電源電圧V1を供給する。電流検出用抵抗Rsは、例えば1mΩである。スイッチSW1がオンの期間では、電流検出用抵抗Rsに流れる電流は、損失抵抗Raに流れる電流と同じである。可変直流電源119は、制御部118の制御信号に応じて、3~15Vの範囲の直流の電源電圧V1を供給することができる。駆動信号源120の制御信号の周波数は、120kHzである。
【0030】
スイッチSW1は、ハイサイドのスイッチであり、オン抵抗が数mΩ以下である。スイッチSW2は、ローサイドのスイッチであり、オン抵抗が数mΩ以下である。スイッチSW1及びSW2のオン抵抗は、給電コイルL1の等価直列抵抗より十分小さい。
【0031】
駆動部123の出力端子は、給電コイルL1と共振コンデンサC1の直列回路を介して、基準電位ノードに接続される。受電コイルL2は、給電コイルL1に対向している。給電コイルL1と受電コイルL2との結合度Kを上げるために、給電コイルL1と受電コイルL2の間の距離を短くできるように、給電コイルL1と受電コイルL2は、平面コイルである。
【0032】
磁性材124は、給電コイルL1の背面に設けられ、給電コイルL1の磁界を受電コイルL2側に集中させることができる。給電コイルL1は、給電コイルL1の損失抵抗を低く抑えるため、リッツ線を用いる。給電コイルL1のQ値は、200程度である。給電コイルL1は、23.87μHである。損失抵抗Raは、180mΩである。
【0033】
結合度Kが0.05~0.95の範囲で変化しても、共振コンデンサのC1の容量値を固定のままとしている。受電コイルL2は、同調を取っていない。共振コンデンサC1は、給電コイルL1と受電コイルL2の結合度Kが0.05以下の疎結合の場合に、共振周波数が駆動信号源120の制御信号の周波数(120kHz)と同じとなるようにしている。共振コンデンサC1は、0.07368μFである。共振コンデンサC1は、高耐圧である。共振コンデンサC1の損失電力は、給電コイルL1の損失電力より十分小さい。
【0034】
受電コイルL2は、23.87μHであり、損失抵抗が500mΩである。受電コイルL2のQ値は、36である。負荷RLは、60Ωである。
【0035】
駆動信号源120は、駆動部123を駆動する。電流検出用抵抗Rsに流れる電流I1は、例えば
図3(E)に示すように、可変直流電源119の出力端子OUTから駆動回路122に流出する正の電流、又は駆動回路122から戻ってくる負の電流である。電流検出用抵抗Rsの両端の電圧は、電流検出用抵抗Rsに流れる電流I1に比例し、電流I1と電流検出用抵抗Rsの積で表される。差動アンプ121は、電流検出用抵抗Rsの両端の電圧を増幅し、電流検出用抵抗Rsの両端の電圧に比例した電圧を出力する。例えば、電流検出用抵抗Rsは1mΩであり、差動アンプ121の増幅率は1000である。差動アンプ121の出力電圧値は、電流検出用抵抗Rsを流れる電流I1の値に相当する。
【0036】
掛け算回路111は、差動アンプ121の出力電圧値と、可変直流電源119の電源電圧V1の値とを掛け算し、供給電力値を示す電圧を出力する。ローパスフィルタ115は、掛け算回路111の出力電圧をローパスフィルタリングすることにより、掛け算回路111の出力電圧を平均化した供給電力値Pinを示す電圧を出力する。
【0037】
掛け算回路112は、差動アンプ121の出力電圧を2つの入力端子IN1及びIN2に入力し、差動アンプ121の出力電圧値の2乗の値を示す電圧を出力する。掛け算回路112の出力電圧値は、電流I1の値の2乗の値に相当する。
【0038】
DCバイアス源114は、損失抵抗Raの値の2倍の値を示す直流電圧を出力する。掛け算回路113は、掛け算回路112の出力電圧値と、DCバイアス源114の出力電圧値とを掛け算し、損失電力を示す電圧を出力する。例えば、
図3(A)の電流I1の1周期は、電流I1が流れる期間と、電流I1が流れない期間に分けられる。可変直流電源119の内部抵抗、電流検出用抵抗Rs、スイッチSW1のオン抵抗、スイッチSW2のオン抵抗が、損失抵抗Raより十分小さいため、給電コイルL1に流れる電流IL1の波形は、電流検出用抵抗Rsに電流が流れる期間と流れない期間で対称となっている。電流検出用抵抗Rsに電流が流れる期間では、可変直流電源119からの電流は、電流検出用抵抗RsとスイッチSW1を介して、損失抵抗Raと給電コイルL1と共振コンデンサC1の直列回路に流れるので、電流検出用抵抗Rsと損失抵抗Raに流れる電流は等しい。損失抵抗Raにおける損失電力は、I1
2×Ra=IL1
2×Raで表される。
【0039】
給電コイルL1に流れる電流IL1の波形は、電流検出用抵抗Rsに電流が流れる期間と流れない期間で対称となっているので、電流検出用抵抗Rsに電流が流れない期間の損失抵抗Raにおける損失電力は、電流検出用抵抗Rsに電流が流れる期間の損失電力と同じになっている。したがって、損失抵抗Raにおける損失電力は、2×I12×Raである。掛け算回路113の出力電圧値は、2×I12×Raの損失電力を示す電圧を出力する。
【0040】
ローパスフィルタ116は、掛け算回路113の出力電圧をローパスフィルタリングすることにより、掛け算回路113の出力電圧値を平均化した損失電力値Plossを示す電圧を出力する。
【0041】
減算回路117は、給電電力値Pinを示す電圧値から損失電力値Plossを示す電圧値を減算することにより、給電電力値Poutを示す電圧を制御部118に出力する。給電電力値Poutは、Pin-Plossで表される。
【0042】
制御部118は、例えばCPUであり、給電電力値Poutを示す電圧を基に、給電電力値Poutが5Wになるように、制御信号を可変直流電源119に出力する。可変直流電源119は、供給電力値Poutが5Wになるように、電源電圧V1を制御する。具体的には、可変直流電源119は、給電電力値Poutが5Wより小さい場合には、電源電圧V1を高くする。また、可変直流電源119は、給電電力値Poutが5Wより大きい場合には、電源電圧V1を低くする。
【0043】
なお、差動アンプ121の増幅率を小さくし、掛け算回路111及び112が差動アンプ121の出力電圧を係数倍してもよい。電流I1は、電流検出用抵抗Rsの両端の電圧を電流検出用抵抗Rsの値で除算した値である。そこで、差動アンプ121の増幅率と掛け算回路111,112の係数倍の合計が1/Rsの値に相当する値になるようにすればよい。
【0044】
図2は、給電電力値Poutが5Wになるように制御する場合の給電装置101のパラメータの例を示す図であり、結合度Kが変化した場合の給電装置101のパラメータを示す。
【0045】
まず、結合度Kが0.05の場合を説明する。給電電力値Poutを5Wにするために、可変直流電源119の電源電圧V1は、8.4Vに制御される。電流検出用抵抗Rsに流れる電流I1の波形は、
図3(A)に示す通りである。電流I1のピーク値は27.4Aであり、電流I1の平均値は8.8Aである。給電コイルL1の両端の電圧VL1の波形は、
図3(A)に示す通りである。電圧VL1の最高値と最低値との差は、1020Vである。給電コイルL1に流れる電流IL1の波形は、
図4(A)に示す通りである。電流IL1の最大値と最小値との差は、54.8Aである。受電コイルL2の両端の電圧VL2の波形は、
図4(A)に示す通りである。電圧VL2の最高値と最低値との差は、48.4Vである。供給電力値Pinは、V1×I1=8.4V×8.8A≒74Wである。損失電力値Plossは、69Wである。効率は、Pout/Pin=5W/74W≒6.7%である。
【0046】
次に、結合度Kが0.1の場合を説明する。給電電力値Poutを5Wにするために、可変直流電源119の電源電圧V1は、5Vに制御される。電流検出用抵抗Rsに流れる電流I1の波形は、
図3(B)に示す通りである。電流I1のピーク値は13.8Aであり、電流I1の平均値は4.5Aである。給電コイルL1の両端の電圧VL1の波形は、
図3(B)に示す通りである。電圧VL1の最高値と最低値との差は、510Vである。給電コイルL1に流れる電流IL1の波形は、
図4(B)に示す通りである。電流IL1の最大値と最小値との差は、27.6Aである。受電コイルL2の両端の電圧VL2の波形は、
図4(B)に示す通りである。電圧VL2の最高値と最低値との差は、48.6Vである。供給電力値Pinは、V1×I1=22.7Wである。損失電力値Plossは、17.7Wである。効率は、Pout/Pin=22%である。
【0047】
次に、結合度Kが0.2の場合を説明する。給電電力値Poutを5Wにするために、可変直流電源119の電源電圧V1は、4.2Vに制御される。電流検出用抵抗Rsに流れる電流I1の波形は、
図3(C)に示す通りである。電流I1のピーク値は6.8Aであり、電流I1の平均値は2.2Aである。給電コイルL1の両端の電圧VL1の波形は、
図3(C)に示す通りである。電圧VL1の最高値と最低値との差は、260Vである。給電コイルL1に流れる電流IL1の波形は、
図4(C)に示す通りである。電流IL1の最大値と最小値との差は、14Aである。受電コイルL2の両端の電圧VL2の波形は、
図4(C)に示す通りである。電圧VL2の最高値と最低値との差は、48Vである。供給電力値Pinは、V1×I1=9.2Wである。損失電力値Plossは、4.2Wである。効率は、Pout/Pin=54%である。
【0048】
次に、結合度Kが0.5の場合を説明する。給電電力値Poutを5Wにするために、可変直流電源119の電源電圧V1は、6.5Vに制御される。電流検出用抵抗Rsに流れる電流I1の波形は、
図3(D)に示す通りである。電流I1のピーク値は2.76Aであり、電流I1の平均値は0.86Aである。給電コイルL1の両端の電圧VL1の波形は、
図3(D)に示す通りである。電圧VL1の最高値と最低値との差は、102Vである。給電コイルL1に流れる電流IL1の波形は、
図4(D)に示す通りである。電流IL1の最大値と最小値との差は、5.52Aである。受電コイルL2の両端の電圧VL2の波形は、
図4(D)に示す通りである。電圧VL2の最高値と最低値との差は、48.4Vである。供給電力値Pinは、V1×I1=5.59Wである。損失電力値Plossは、0.6Wである。効率は、Pout/Pin=90%である。
【0049】
次に、結合度Kが0.8の場合を説明する。給電電力値Poutを5Wにするために、可変直流電源119の電源電圧V1は、9.7Vに制御される。電流検出用抵抗Rsに流れる電流I1の波形は、
図3(E)に示す通りである。電流I1のピーク値は1.7Aであり、電流I1の平均値は0.53Aである。給電コイルL1の両端の電圧VL1の波形は、
図3(E)に示す通りである。電圧VL1の最高値と最低値との差は、63Vである。給電コイルL1に流れる電流IL1の波形は、
図4(E)に示す通りである。電流IL1の最大値と最小値との差は、3.4Aである。受電コイルL2の両端の電圧VL2の波形は、
図4(E)に示す通りである。電圧VL2の最高値と最低値との差は、52Vである。供給電力値Pinは、V1×I1=5.17Wである。損失電力値Plossは、0.2Wである。効率は、Pout/Pin=97%である。
【0050】
次に、結合度Kが0.95の場合を説明する。給電電力値Poutを5Wにするために、可変直流電源119の電源電圧V1は、11.2Vに制御される。電流検出用抵抗Rsに流れる電流I1の波形は、
図3(F)に示す通りである。電流I1のピーク値は1.44Aであり、電流I1の平均値は0.45Aである。給電コイルL1の両端の電圧VL1の波形は、
図3(F)に示す通りである。電圧VL1の最高値と最低値との差は、53Vである。給電コイルL1に流れる電流IL1の波形は、
図4(F)に示す通りである。電流IL1の最大値と最小値との差は、2.88Aである。受電コイルL2の両端の電圧VL2の波形は、
図4(F)に示す通りである。電圧VL2の最高値と最低値との差は、58Vである。供給電力値Pinは、V1×I1=5.07Wである。損失電力値Plossは、0.1Wである。効率は、Pout/Pin=99%である。
【0051】
図3(A)に示すように、結合度Kが低い場合、給電コイルL1と共振コンデンサC1が共振しているため、可変直流電源119が供給する電流I1は、正弦波を半波整流した波形である。その電流I1は、可変直流電源119から流出する正の電流だけであり、駆動回路122から戻ってくる負の電流がない。
図3(A)の電圧VL1と
図4(A)の電流IL1及び電圧VL2の波形は、ほぼ正弦波であり、歪みが小さい。
【0052】
図3(F)に示すように、結合度Kが高い場合、給電コイルL1は、受電コイルL2との結合で共振がずれてしまうため、可変直流電源119が供給する電流I1は、歪んだ波形となる。その電流I1は、可変直流電源119から流出する正の電流だけでなく、駆動回路122から戻ってくる負の電流もある。
図3(F)の電圧VL1と
図4(F)の電流IL1及び電圧VL2の波形は、歪みが大きい。
【0053】
スイッチSW1及びSW2のオン抵抗は、給電コイルL1の損失抵抗より十分低いため、給電コイルL1に流れる電流IL1の波形は、正負方向で対象な形をしている。スイッチSW1がオンであり、スイッチSW2がオフである期間に、給電コイルL1に流れる電流IL1による損失電力と、スイッチSW1がオフであり、スイッチSW2がオンである期間に、給電コイルL1に流れる電流IL1による損失電力は同じである。そこで、掛け算回路113は、スイッチSW1がオンであり、スイッチSW2がオフである期間の損失電力値を2倍した損失電力値を演算する。これにより、ローパスフィルタ116は、適切な損失電力値Plossを出力することができる。
【0054】
以上のように、給電装置101は、非接触給電を行うための給電コイルL1と給電コイルL1に接続される共振コンデンサC1と給電コイルC1を駆動する駆動部123を有する駆動回路122と、駆動回路122に動作電力を供給する可変直流電源119とを有する。スイッチSW1は、給電コイルL1及び共振コンデンサC1の直列接続回路の一端と、可変直流電源119との間に接続される。スイッチSW2は、給電コイルL1及び共振コンデンサC1の直列接続回路の一端と、基準電位ノードとの間に接続される。給電コイルL1及び共振コンデンサC1の直列接続回路の他端は、基準電位ノードに接続される。
【0055】
供給電力演算部は、掛け算回路111とローパスフィルタ115を有し、可変直流電源119の電源電圧V1の値と可変直流電源119の電流I1の値を基に、可変直流電源119の供給電力値Pinを演算する。損失電力演算部は、掛け算回路112,113とDCバイアス源とローパスフィルタ116を有し、可変直流電源119の電流I1の値と駆動回路122の損失抵抗Raの値を基に、駆動回路122での損失電力値Plossを演算する。減算回路117は、減算部であり、供給電力値Pinから損失電力値Plossを減算することにより、給電電力値Poutを出力する。
【0056】
電流検出用抵抗Rsは、可変直流電源119と駆動部123との間に接続される。差動アンプ121は、電流検出用抵抗Rsの両端間の電圧値に比例した信号を出力する。差動アンプ121が出力する信号は、可変直流電源119の電流I1の値又は電流I1の値に比例する値を示す。
【0057】
掛け算回路111は、掛け算部であり、差動アンプ121が出力する信号と電源電圧V1に応じた値とを掛け算する。ローパスフィルタ115は、掛け算回路111の出力信号をローパスフィルタリング(平均化)することにより、供給電力値Pinを示す信号を出力する。
【0058】
掛け算回路112は、掛け算部であり、差動アンプ121が出力する信号の2乗に応じた信号を出力する。掛け算回路113は、掛け算部であり、掛け算回路112の出力信号に対して、損失抵抗Raの値の2倍の値に応じた値を掛ける。ローパスフィルタ116は、掛け算回路113の出力信号をローパスフィルタリング(平均化)することにより、損失電力値Plossを示す信号を出力する。
【0059】
減算回路117は、供給電力値Pinを示す信号から損失電力値Plossを示す信号を減算することにより、給電電力値Poutを示す信号を出力する。可変直流電源119は、給電電力値Poutを示す信号を基に、電源電圧V1を制御する。
【0060】
本実施形態によれば、可変直流電源119からの電源電圧V1に含まれるリップル電圧が大きくても、電源電圧V1と電流I1を掛けてから平均化しているため、給電装置101は、給電電力値Poutを検出し、給電電力値Poutを基に電源電圧V1を制御することにより、一定の給電電力値Poutの電力を給電することができる。
【0061】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態による給電システム100の構成例を示す図である。
図5の給電システム100は、
図1の給電システム100に対して、掛け算回路113とローパスフィルタ115とDCバイアス源114と差動アンプ121を削除し、ローパスフィルタ501と差動アンプ502,503を追加したものである。以下、第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。
【0062】
第2の実施形態は、可変直流電源119の電源電圧V1のリップルが小さい場合に適用される例である。可変直流電源119の電源電圧V1のリップルが小さいのに対し、電流I1の変動だけが大きい。そこで、ローパスフィルタ501は、電流検出用抵抗Rsの両端の電圧を平均化している。差動アンプ502は、ローパスフィルタ501の出力電位と可変直流電源119の出力端子OUTの電位との差に比例した電圧を出力する。掛け算回路111は、差動アンプ502の出力電圧値と可変直流電源119の電源電圧V1の値を掛け算し、給電電力値Poutを示す電圧を出力する。可変直流電源119の電源電圧V1のリップルが小さいので、掛け算回路111の出力にローパスフィルタを接続する必要がない例である。
【0063】
差動アンプ503及び/又は掛け算回路112で、
図1の掛け算回路113の代わりに、損失抵抗Raの値の掛け算も行う。損失抵抗Raの値は、一定である。差動アンプ503の増幅及び/又は掛け算回路112の係数倍が、損失抵抗Raの2倍値の掛け算に相当する。差動アンプ503は、電流検出用抵抗Rsの両端の電圧に比例した電圧を出力する。掛け算回路112は、差動アンプ503の出力電圧値の2乗値を係数倍した値を出力する。この係数は、例えば損失抵抗Raの2倍値に対応する。掛け算回路112は、2×I1
2×Raの損失電力を示す信号を出力する。ローパスフィルタ116は、掛け算回路112の出力信号をローパスフィルタリング(平均化)することにより、損失電力値Plossを示す信号を出力する。
【0064】
以上のように、供給電力演算部は、ローパスフィルタ501と、差動アンプ502と、掛け算回路111を有する。ローパスフィルタ501は、電流検出用抵抗Rsの両端間の電圧をローパスフィルタリング(平均化)する。差動アンプ502は、ローパスフィルタ501の出力信号に比例する信号を出力する。掛け算回路111は、差動アンプ502が出力する信号と可変直流電源119の電源電圧V1に応じた値とを掛け算することにより、供給電力値Pinを示す信号を出力する。
【0065】
損失電力演算部は、差動アンプ503と、掛け算回路112と、ローパスフィルタ116を有する。差動アンプ503は、電流検出用抵抗Rsの両端間の電圧値に比例した信号を出力する。掛け算回路112は、差動アンプ503が出力する信号の2乗に応じた信号に対して、駆動回路122の損失抵抗Raの値の2倍の値に応じた値を掛け算した値に応じた信号を出力する。ローパスフィルタ116は、掛け算回路112の出力信号をローパスフィルタリング(平均化)することにより、損失電力値Plossを示す信号を出力する。
【0066】
減算回路117は、供給電力値Pinを示す信号から損失電力値Plossを示す信号を減算することにより、給電電力値Poutを示す信号を出力する。可変直流電源119は、給電電力値Poutを示す信号を基に、電源電圧V1を制御する。
【0067】
本実施形態によれば、給電装置101は、給電電力値Poutを検出し、給電電力値Poutを基に電源電圧V1を制御することにより、一定の給電電力値Poutの電力を給電することができる。
【0068】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態による給電システム100の構成例を示す図である。
図6の給電システム100は、
図5の給電システム100に対して、電流検出用抵抗Rsとローパスフィルタ501と差動アンプ502,503を削除し、電流プローブ601とローパスフィルタ602を追加したものである。以下、第3の実施形態が第2の実施形態と異なる点を説明する。この例も、可変直流電源119の電源電圧V1のリップルが小さい場合に適用される例である。
【0069】
可変直流電源119の出力端子OUTは、電流プローブ601を介してスイッチSW1に接続される。電流プローブ601は、可変直流電源119とスイッチSW1との間に流れる電流I1を検出し、電流I1に比例する電圧を出力する。ローパスフィルタ602は、電流プローブ601の出力電圧をローパスフィルタリング(平均化)する。ローパスフィルタ602の出力電圧は、
図5の差動アンプ502の出力電圧と同等であり、電流I1の平均値を示す。掛け算回路111は、ローパスフィルタ602の出力電圧値と可変直流電源119の電源電圧V1の値とを掛け算し、供給電力値Pinを示す信号を出力する。
【0070】
電流プローブ601の出力電圧は、
図5の差動アンプ503の出力電圧と同等であり、電流I1の値を示す。掛け算回路112は、電流プローブ601の出力電圧値の2乗値の係数倍の値を示す信号を出力する。係数は、2×Raの値に対応する。ローパスフィルタ116は、掛け算回路112の出力信号をローパスフィルタリングし、損失電力値Plossを示す信号を出力する。
【0071】
以上のように、電流プローブ601は、可変直流電源119の電流I1に比例する信号を出力する。供給電力演算部は、ローパスフィルタ602と掛け算回路111を有する。ローパスフィルタ602は、電流プローブ601の出力信号をローパスフィルタリングする。掛け算回路111は、ローパスフィルタ602の出力信号と可変直流電源119の電源電圧V1に応じた値とを掛け算することにより、供給電力値Pinを示す信号を出力する。
【0072】
損失電力演算部は、掛け算回路112とローパスフィルタ116を有する。掛け算回路112は、電流プローブ601の出力信号の2乗に応じた信号に対して、駆動回路122の損失抵抗Raの値の2倍の値に応じた値を掛け算した値に応じた信号を出力する。ローパスフィルタ116は、掛け算回路112の出力信号をローパスフィルタリングすることにより、損失電力値Plossを示す信号を出力する。
【0073】
減算回路117は、供給電力値Pinを示す信号から損失電力値Plossを示す信号を減算することにより、給電電力値Poutを示す信号を出力する。可変直流電源119は、給電電力値Poutを示す信号を基に、電源電圧V1を制御する。
【0074】
なお、本実施形態は、第1の実施形態に適用することもできる。すなわち、
図1の給電システム100において、電流検出用抵抗Rsと差動アンプ121の代わりに、電流プローブ601を設けることができる。
【0075】
その場合、供給電力演算部は、掛け算回路111とローパスフィルタ115を有する。掛け算回路111は、電流プローブ601の出力信号と可変直流電源119の電源電圧V1に応じた値とを掛け算する。ローパスフィルタ115は、掛け算回路111の出力信号をローパスフィルタリングすることにより、供給電力値Pinを示す信号を出力する。
【0076】
損失電力演算部は、掛け算回路112と掛け算回路113とローパスフィルタ116を有する。掛け算回路112は、電流プローブ601の出力信号の2乗に応じた信号を出力する。掛け算回路113は、掛け算回路112の出力信号に対して、DCバイアス源114の電圧値(損失抵抗Raの値の2倍の値に応じた値)を掛ける。ローパスフィルタ116は、掛け算回路113の出力信号をローパスフィルタリングすることにより、損失電力値Plossを示す信号を出力する。
【0077】
減算回路117は、供給電力値Pinを示す信号から損失電力値Plossを示す信号を減算することにより、給電電力値Poutを示す信号を出力する。可変直流電源119は、給電電力値Poutを示す信号を基に、電源電圧V1を制御する。
【0078】
本実施形態によれば、可変直流電源119からの電源電圧V1に含まれるリップル電圧が大きくても、電源電圧V1と電流I1を掛けてから平均化するので、給電装置101は、給電電力値Poutを検出し、給電電力値Poutを基に電源電圧V1を制御することにより、一定の給電電力値Poutの電力を給電することができる。
【0079】
(第4の実施形態)
図7は、第4の実施形態による給電システム100の構成例を示す図である。
図7の給電システム100は、
図5の給電システム100に対して、スイッチSW3及びSW4を追加したものである。以下、第4の実施形態が第2の実施形態と異なる点を説明する。
【0080】
駆動部123は、フルブリッジ駆動回路であり、スイッチSW1、SW2、SW3及びSW4を有する。スイッチSW1は、給電コイルL1及び共振コンデンサC1の直列接続回路の一端と、可変直流電源119との間に接続される。スイッチSW2は、給電コイルL1及び共振コンデンサC1の直列接続回路の一端と、基準電位ノードとの間に接続される。スイッチSW3は、給電コイルL1及び共振コンデンサC1の直列接続回路の他端と、可変直流電源119との間に接続される。スイッチSW4は、給電コイルL1及び共振コンデンサC1の直列接続回路の他端と、基準電位ノードとの間に接続される。
【0081】
駆動部123は、スイッチSW1及びSW4がオンであり、スイッチSW2及びSW3がオフである第1の状態と、スイッチSW1及びSW4がオフであり、スイッチSW2及びSW3がオンである第2の状態とを交互に繰り返す。第1の状態でも第2の状態でも、電流検出用抵抗Rsには、給電コイルL1に流れる電流IL1と同じ電流が流れる。したがって、掛け算回路112は、2×I12×Raの損失電力値ではなく、I12×Raの損失電力値を示す信号を出力する。
【0082】
ローパスフィルタ116は、掛け算回路112の出力信号をローパスフィルタリングすることにより、損失電力値Plossを示す信号を出力する。減算回路117は、供給電力値Pinを示す信号から損失電力値Plossを示す信号を減算することにより、給電電力値Poutを示す信号を出力する。可変直流電源119は、給電電力値Poutを示す信号を基に、電源電圧V1を制御する。
【0083】
なお、本実施形態は、第1の実施形態に適用することができる。すなわち、
図1の給電システム100において、スイッチSW1及びSW2の代わりに、スイッチSW1~SW4を設けることができる。その場合、掛け算回路112は、差動アンプ121が出力する信号の2乗に応じた信号を出力する。DCバイアス源114は、損失抵抗Raの値を示す直流電圧を出力する。掛け算回路113は、掛け算回路112の出力信号に対して、DCバイアス源114の出力電圧値(損失抵抗Raの値に応じた値)を掛ける。ローパスフィルタ116は、掛け算回路113の出力信号をローパスフィルタリングすることにより、損失電力値Plossを示す信号を出力する。可変直流電源119からの電源電圧V1に含まれるリップル電圧が大きくても、電源電圧V1と電流I1を掛けてから平均化するので、供給電力値Pinを検出できる。また、第4の実施形態は、第2及び第3の実施形態に適用することができる。
【0084】
第4の実施形態の給電装置101は、スイッチSW1~SW4を用いることにより、受電装置102に対して、大電力の非接触給電を行うことができる。
【0085】
次に、第1~第4の実施形態の給電システム100の効果を説明する。給電装置101は、給電電力値Poutを検出できるため、結合度Kによらず、給電装置101だけで、給電電力の大きさを制御できる利点がある。給電装置101は、受電装置102に給電する電力量を給電装置101だけで制御できる利点がある。
【0086】
また、給電装置101は、給電コイルL1から給電している給電電力値Poutを検出することで、受電装置102の受電コイルL2が近づいて、結合が良い向きになったことを検出できる。給電装置101は、小電力駆動の連続給電動作あるいは間欠動作で待ち受けているため、給電対象外のものが近接しても給電電力値Poutが増えないので、給電対象のものが接近したことを検出できる利点がある。
【0087】
なお、給電装置101は、駆動コイルL1と共振コンデンサC1の共振回路の電圧を検出することで、共振回路に流れる電流をほぼ検出できる。しかし、結合度Kが高いと、電圧波形が歪んでしまうので、電圧波形の歪成分を補正する必要があり、複雑な処理が必要になる。第1~第4の実施形態によれば、給電装置101は、共振回路の電圧波形によらず、給電電力値Plossを検出できる利点がある。
【0088】
なお、上述の実施形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されない。すなわち、本開示はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0089】
100 給電システム
101 給電装置
102 受電装置
111~113 掛け算回路
114 DCバイアス源
115,116 ローパスフィルタ
117 減算回路
118 制御部
119 可変直流電源
120 駆動信号源
121 差動アンプ
122 駆動回路
123 駆動部
124 磁性材